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WAN 仮想化の概要

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WAN 仮想化の概要
ホワイトペーパー
WAN 仮想化の概要
アプリケーションの信頼性を⾼め帯域幅を拡張すると同時
にネットワーキングコストを削減
www.citrix.co.jp
ホワイトペーパー
WAN 仮想化
仮想デスクトップインフラストラクチャー(VDI)、VoIP(Voice-over-IP)、
ビデオ会議などの接続がジッタや通信断により不安定になると、社員の生
産性が急激に低下します。また、クラウドベースのアプリケーションの応
答に時間がかかったり、タイムアウトが発生すると、社員から苦情が寄せ
られ、さらに接続が完全にダウンし、ERP、CRM やその他の企業アプリ
ケーションにアクセスできなくなると、仕事が停止してしまいます。
今日の企業は、ますます増え続ける帯域幅多⽤型のビジネスクリティカルなアプリケーションをサ
ポートするために、広域ネットワーク(WAN)を利⽤しています。これらのアプリケーションは「ビ
ジネスの運⽤」を目的として使⽤されるものであるため、⾼い信頼性とサービス品質を必要としま
す。これらのアプリケーションの速度が数秒でも遅くなると、社員から苦情が寄せられることにな
ります。
WAN の改善におけるジレンマ
不幸なことに、IT 部門のスタッフは自社の WAN の信頼性とキャパシティを改善しようとすると、
あるジレンマに直面します。MPLS(Multiprotocol Label Switching)は信頼できるテクノロジーであ
り一貫した性能を提供しますが、キャパシティの追加には多額な費⽤がかかります。有線や DSL な
どのブロードバンドテクノロジーを通じたインターネット接続の場合、コストは低く抑えられます
が、その信頼性や性能には一貫性がありません。WAN 最適化製品を使⽤すれば、性能を⾼速化し帯
域幅を効果的に増加できますが、基盤となる WAN の信頼性が低く WAN 自体を利⽤できない場合
には、すべての問題を解決できません。
WAN 仮想化の概要
「WAN 仮想化」と呼ばれる新しいアプローチは、このようなジレンマに対する解決策を提供しま
す。このテクノロジーは、複数の MPLS とブロードバンドパスを単一の仮想 WAN へと論理的に結
合します。WAN 仮想化を使⽤すると、サービス品質(QoS)ルール、パス選択、トラフィックシェー
ピングなどの機能を適⽤することにより、優先度の⾼いアプリケーションが常に良好な性能を発揮
できることを保証できます。また、WAN 仮想化を使⽤することで、クリティカルなビジネスプロセ
スをネットワークの機能停止から守ることもできます。単一のパスだけが残っている場合であって
も、主要なアプリケーションをミリ秒単位で切り替えることにより中断のない運⽤を継続できるた
め、エンドユーザーの生産性には目に⾒えるレベルの影響を与えません。
この文書では、シトリックスが提供する仮想 WAN ソリューションである CloudBridge™の概要を
示します。また、本文書では、CloudBridge を使⽤することで、いかに効果的にネットワークキャパ
シティを増加させつつコストを削減できるかについてや、VDI(Citrix XenDesktop®を含む)
、アプリ
ケーション仮想化(XenApp®を含む)
、VoIP、ビデオ会議、ERP、CRM などのビジネスクリティカ
ルなアプリケーションの性能と信頼性をいかに改善できるかについても説明します。
WAN 仮想化を使用するメリットとしては次のことが挙げられます。
基盤となるネットワークの信頼性が低い場合であっても、ビジネスクリティカルなアプリケー
ションが常に良好な性能を発揮することを保証できます。
企業は、⾼額な MPLS キャパシティを使⽤するのではなく、経済的で柔軟性の⾼いブロードバ
ンド接続を使⽤することで、⾼い信頼性および⾼い品質の両者を犠牲にすることなく、WAN 帯
域幅を拡張できます。
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ホワイトペーパー
WAN 仮想化
典型的なデータセンターとブランチ間の WAN 接続における問題点
WAN 最適化について説明する前に、現在のデータセンターと中規模のブランチまたはリモートオ
フィス間のネットワーキングにおける典型的な導入例を⾒てみましょう。ほとんどのトラフィック
(あらゆるビジネスクリティカルなアプリケーションのトラフィックを含む)は、MPLS 接続を通
じてやり取りされるように設定されています。また、主に MPLS リンクがダウンした場合のバック
アップ⽤として、インターネット経由の公衆パスが 1 つまたは 2 つ追加されています(図 1 を参
照)
。
データセンター
アクティブな
MPLS
リモートオフィス
バックアップ⽤の
ブロードバンド
図 1:データセンターとブランチ間のネットワーキングにおける典型的な配備。ブロードバンドは信頼性が低い
ため、バックアップ⽤または優先度の低いアプリケーションでのみ使⽤
このような配備における⽋点としては次のことが挙げられます。
多くの無駄な帯域幅とコンテンション(競合)が存在している:ブロードバンドパスは MPLS リン
クがダウンした場合のバックアップ⽤に予約されているか、ごく少数の優先順位の低いアプリケー
ション⽤にのみ使⽤されます。MPLS パスがキャパシティの限界に達した場合、より大きなパイプ
上で接続を削減するために、ブロードバンド接続経由で MPLS トラフィックを移動するような簡単
な方法は存在しません。
接続がダウンした場合のフェイルオーバーに数秒〜数分かかる場合がある:短期間の通信断であっ
ても、セッションの再起動や再度ログインを強制されるため、社員にとっては非常に不快なものと
なる場合があるほか、企業にとってはビジネス上の損失の原因となる場合があります。
フェイルオーバーの後、クリティカルなアプリケーションの性能が深刻に劣化する:これは、残存
するパスを使⽤しているその他の全アプリケーションにも当てはまります。多くのアプリケーショ
ンが、バックアップ⽤の接続上で限られた帯域幅を巡って競争するため、デスクトップ/アプリケー
ション仮想化、VoIP、ビデオ会議のような遅延に敏感なアプリケーションが利⽤不可能になる場合
があり、その結果、ビジネス上の損失が引き起こされる場合があります。
キャパシティの追加が非常に高コストとなる:インターネット接続が、新しいアプリケーションで
必要とされる信頼性とサービス品質を提供できない場合、企業は非常に⾼額な MPLS ネットワーク
へのアップグレードを検討することになります。
通常、MPLS ネットワークの品質は良好だが、パケットロス、遅延、ジッタが発生する場合がある:
このような問題は、遅延に敏感なアプリケーションに影響を与えるほか、社員の不満やビジネス上
の損失を引き起こす場合があります。
ネットワーク管理が複雑で時間のかかるものとなる:アプリケーショントラフィックは、パスの種
類ごとに別々に構成や監視を⾏う必要があります。リモートオフィスやユーザーへのパスが、別の
ネットワークタイプ経由では複数の「ホップ」を持つ場合、エンドツーエンドの監視とサービス品
質を管理することが非常に困難になります。
図 1 では単一のデータセンターと 1 つのブランチオフィスだけを示しています。複数のデータセン
ターと数⼗〜数百のリモートオフィスを抱えている企業では、上記の問題がさらに拡大されます。
また、クラウドベースのアプリケーションを多⽤している場合、問題はより大きくなります。
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ホワイトペーパー
WAN 仮想化
WAN 仮想化の基本その 1:ネットワークパスの計測と監視
仮想 WAN ソリューションである CloudBridge が、これら 6 つの問題にどのように対処するかを理
解するためには、この新しいテクノロジーが持つ基本的な原理と機能を知る必要があります。
独自の WAN 仮想化ソリューションは、次の機能により実現されます。
1.
ネットワークパスの双方向の計測と監視
2.
アプリケーションへの優先順位の割り当て
3.
パスの計測と監視により得られた知識を適⽤することで、優先度の⾼いアプリケーションの
ネットワークトラフィックの信頼性と性能を最適化する
図 2 に、図 1 と同じ本社とブランチオフィス間のネットワーキング配備を示します。ただし、図 2
では、CloudBridge の WAN 仮想化アプライアンスが、本社とブランチオフィスのそれぞれに導入さ
れています(CloudBridge アプライアンスが片方の側にのみ導入されている場合や、クラウド内に
仮想アプライアンスを導入している場合に、WAN 仮想化のメリットがどれだけ得られるかについ
ては後述します)
。
データセンター
WAN 仮想化
アプライアンス
WAN 仮想化
アプライアンス
アクティブな
MPLS
リモートオフィス
バックアップ⽤の
ブロードバンド
ソースアプライアンスは
すべてのパケットにタグを
追加する
デスティネーションアプライア
ンスはタグを読み取ることで、
転送時間、ジッタ、パケット
ロスなどを計測する
図 2:CloudBridge 仮想 WAN アプライアンスは、転送時間、ジッタ、パケットロスを計測した後、WAN におけ
るすべてのパスの性能と稼働状況に関する「マップ」を作成する。この情報は、各種のトラフィックで最も適切
なパスを選択するために使⽤される。ブロードバンド接続では、すべてのアプリケーションでアクティブに使⽤
ソース(送信側)のアプライアンスは、各パケットに、送信時間とパケットフローにおける順序に
関する情報を含むタグを追加します。デスティネーション(受信側)アプライアンスは、これらの
タグを読み取り、パスの性能と稼働状況に関する各種の情報(転送時間、輻輳、ジッタ、パケット
ロスなど)を計測します。両アプライアンスは、この情報を共有し、キューイング理論と予測動作
統計モデリングを使⽤して、WAN におけるすべてのパスの「マップ」を作成します。この情報は、
直近のパケットに含まれている情報により継続的にアップデートされます。
このようなテクニックを使⽤することで、WAN アプライアンスは、WAN におけるあらゆる MPLS
およびブロードバンド接続の性能、品質、稼働状況を継続的に計測および監視できるようになりま
す。また、これらの計測および監視により得た知識を、QoS の提供、パス選択、トラフィックシェー
ピング、1 秒未満のフェイルオーバー、およびその他のサービスに適⽤できます。
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ホワイトペーパー
WAN 仮想化
WAN 仮想化の基本その 2:アプリケーションフルエンシー(アプリケーションと
対話する能⼒)
CloudBridge 仮想 WAN ソリューションを使うと、企業の IT 部門は、非常にきめ細かなアプリケー
ションの分類を利⽤してアプリケーションごとの優先順位付けに関する意思決定を⾏うことが可能
となります。これにより、最も優先度の⾼いアプリケーションが常に非常に良好な性能を発揮する
ことを保証できます。一方、それ以外のアプリケーションは、それぞれの優先度に従って適切なサー
ビス品質(QoS)を受け取ることになります。
各アプリケーションは、Real-time(リアルタイム)
、Interactive(インタラクティブ)
、Bulk(バルク)
という 3 つの⾼レベルのカテゴリのいずれかに割り当てられます。通常、低い遅延を要求する優先
度の⾼いアプリケーションは、Real-time カテゴリに割り当てられます。これには、VDI およびアプ
リケーション仮想化ソリューション(Citrix XenDesktop や XenApp を含む)
、VoIP およびビデオ会
議アプリケーション、その他の重要な企業アプリケーションが含まれます。優先度の低いアプリケー
ションは、Interactive または Bulk のどちらかのカテゴリに割り当てられます。
これら 3 つのカテゴリでは満足できず、よりきめ細かな分類が必要であると感じる組織の場合、送
信元/宛先 IP アドレス、IP プロトコル、送信元/宛先 IP ポートなどの各要素に基づいてカスタムルー
ルを作成することもできます。
優先度の高いアプリケーション向けに性能を確保:レイテンシアウェアなパス選
択とパケット複製
CloudBridge 仮想 WAN ソリューションでは、ビジネスクリティカルなアプリケーションで卓越し
た信頼できる性能を保証するために、様々なテクニックを使⽤しています。
その中心となるアプローチが、
「レイテンシアウェアなパス選択」と呼ばれるものです。これは、最
適な WAN パスを使⽤するために、ネットワークセッション内でインテリジェントな負荷分散を実
施することを意味します。利⽤可能なネットワークリンクの「マップ」に含まれている情報に基づ
いて、優先度の⾼いアプリケーションは、その時点で利⽤可能な最もレイテンシの低い(すなわち
最も性能の良い)WAN パスに割り当てられます。アプリケーションの帯域幅要件がそのパスで利⽤
可能な帯域幅を超過している場合、当該アプリケーショントラフィックの一部が、その次に優良な
パスを通じて送信されます(必要ならば、同トラフィックの一部は、3 番目や 4 番目に優良なパス
を通じて送信されます)
。これらのパスでは、MPLS リンクとブロードバンドリンクを混在させるこ
とができます。これにより、いかなる単一パスも過負荷状態にすることなく、優先度の⾼いアプリ
ケーションに最も⾼速なパスを利⽤させることが可能となります。
このパス選択プロセスは動的です。特定のパスが低速になるか、または過剰なジッタやパケットロ
スを検知するようになると、優先度の⾼いトラフィックは、対応するアプリケーションへの割り込
みなしに、より性能の良いパスへと動的に再割り当てされます。より優先度の⾼いセッションが開
始されると、そのトラフィックは、最も性能の良いパスへと割り当てられ、必要ならば、より優先
度の低いアプリケーションが次に優良なパスへと移動されます。
もう 1 つの強化テクニックは、
「パケット複製」と呼ばれるものです。パケット複製では、各パケッ
トを複製したものを複数の異なる独⽴したパスへと送信できます。宛先アプライアンスに最初に到
達したパケットのみが使⽤され、2 番目以降に到着したパケットは破棄されます。このアプローチ
は追加の帯域幅を必要とするものの、考えられる中で最⾼の性能とパケットロスがゼロの状態を保
証できるため、卓越した性能が不可⽋である VoIP やビデオ会議のようなアプリケーションにとっ
て最適です。
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WAN 仮想化
トラフィックシェーピングと動的帯域予約
様々なクラスのアプリケーショントラフィック向けのサービス品質を管理するその他のテクニック
として、トラフィックシェーピングと動的帯域予約(dynamic bandwidth reservation)が挙げられ
ます。
CloudBridge 仮想 WAN ソリューションは、次のような 4 種類のサービスを提供します。
• 仮想パス:CloudBridge 仮想 WAN アプライアンスが導入されている 2 つのロケーション間で⾏
われる通信です(上述したシナリオにおける通信)
。
• イントラネット:CloudBridge 仮想 WAN アプライアンスが導入されているロケーションと、同
アプライアンスが導入されていない別の企業 WAN ロケーション間で⾏われる通信です。
• インターネット:CloudBridge 仮想 WAN アプライアンスが導入されているロケーションからイ
ンターネット上の宛先に対して⾏われる通信です。
• パススルー:ping やトラブルシューティング⽤のトラフィックなどのように、管理者が
CloudBridge 仮想 WAN アプライアンス経由で変更なしの送信を望むトラフィックです。
トラフィックシェーピングを使うと、上記の 4 種類のサービスのそれぞれに関して最小予約帯域幅
を指定できます。これにより、特定パス上において 1 つのサービスがそれ以外のサービスを締め出
すことはなくなります。また、各サービスに関する「シェア」を指定できます。2 つ以上のサービス
が予約された最小値を越える量のキャパシティを巡って競争している場合、各サービスに割り当て
られている相対的なシェアに基づいて、これらのサービス間で帯域幅が割り当てられます。1 つの
サービスが帯域幅のシェアを越えた場合には、そのサービス内部における優先度の低いトラフィッ
クがキューイングされ、予備のキャパシティが利⽤可能となった時点で送信されます。
仮想パスサービス(2 つの CloudBridge 仮想 WAN アプライアンス間でのトラフィック)は、宛先ア
プライアンスが送信元アプライアンスの「バックプレッシャー」を⾏えるようにする、より洗練さ
れたタイプのトラフィックシェーピングを提供します。この場合、送信元アプライアンスは、サー
ビスタイプ間で帯域幅を割り当てるだけでなく、宛先アプライアンスでの負荷もチェックします。
宛先アプライアンスが利⽤可能なキャパシティを持たない場合、送信元アプライアンスはその宛先
向けのトラフィックに関する処理を⾏わずに、その結果得られる空き帯域幅を利⽤してパケットを
別の場所に送信します。これにより、全体的な帯域幅をより効率的に利⽤することが可能となりま
す。
トラフィックシェーピングと帯域予約を使うと、優先度の⾼いアプリケーションで適切な量の帯域
幅が常に利⽤可能となることを保証できます。また、トラフィックシェーピングは動的に管理され
るため、CloudBridge 仮想 WAN ソリューションを使うことで、利⽤可能なキャパシティが常に最適
に利⽤されることを保証できます。
これらの機能を、WAN 仮想化のその他の機能と組み合わせて使⽤することで、基盤となる接続が⾼
品質でない場合であっても、優先度の⾼いアプリケーションに関しては、ブロードバンド接続上で
MPLS と同レベルの品質と信頼性を保証できます。これは、企業が、はるかに⾼コストの MPLS キャ
パシティに投資するのではなく、安価で柔軟なブロードバンド接続を使⽤することで、自社の WAN
帯域幅を拡張できることを意味します(図 3 を参照)
。
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データセンター
WAN 仮想化
アクティブな
MPLS
リモートオフィス
アクティブなブ
ロードバン(拡
張)
図 3:CloudBridge 仮想 WAN ソリューションを使うと、企業は、MPLS キャパシティの代わりにブロードバン
ド接続を追加することで WAN 帯域幅を拡張
フェイルオーバーとサバイバビリティ
フェイルオーバーとサバイバビリティのプロビジョニングは、WAN 仮想化の重要な要素です。
CloudBridge 仮想 WAN アプライアンスを使うと、シーケンス番号をパケットにタギングすること
や、フォローするパケットに関する情報を同パケットにタギングすることができます。これにより、
宛先アプライアンスは、2〜3 件のパケットロスの発生を⾒つけただけで、パスの機能停止を検出で
きます。通信断に関する情報は、即座に他のすべてのアプライアンスと共有されます。これらのア
プライアンスは、すべての WAN リンクに関する可視性を持つため、次に最も良好な利⽤可能パス
に対してトラフィックを即座に再ルーティングできます。
このアプローチにより、新しいパスを使⽤するアプリケーションが気付かないような、1 秒未満の
シームレスなフェイルオーバーを実現できます。現時点では、いかなる競合ソリューションも、こ
のようなレベルのフェイルオーバー性能は提供できていません。
WAN 仮想化が提供するフェイルオーバー後のもう 1 つのメリットとして、アプリケーションが均
等には劣化しないことが挙げられます。それどころか、優先度の⾼いアプリケーションには残りの
パスにおいて最も多くの帯域幅が与えられるため、多くの場合、優先度の⾼いアプリケーションの
ユーザーはネットワークの通信断が発生したことも気付きません。
さらに、通信断を検出すると、CloudBridge 仮想 WAN アプライアンスは、障害が起きたパスの稼働
状況を確認するために周期的なプローブを送信します。障害が起きたパスが正常な状態に復帰した
場合、同アプライアンスは 1 秒未満でそのパスの利⽤を再開します。
パケットの並べ替えとパケットロスの軽減
アプリケーション性能を改善できる WAN 仮想化のもう 1 つの要素として、パケットの並べ替えが
挙げられます。宛先アプライアンスがシーケンス外のパケットを受信した場合、同アプライアンス
はパケットヘッダ内にあるシーケンス番号を使⽤することでパケットの並べ替えが⾏えます。これ
により、並べ替えタスクをアプリケーションからオフローディングできるため、結果としてより良
好で一貫したアプリケーション性能を実現できます。
また、アプライアンスによるパケットロスの軽減によっても、性能を改善できます。宛先アプライ
アンスがパケットロスの発生を検出すると、同アプライアンスは送信元アプライアンスに連絡する
ことで⽋落したパケットの再送を要求します。これにより、再送タスクをアプリケーションからオ
フローディングできるほか、性能の急激な低下を引き起こす TCP ウィンドウサイズの自動調整を
回避できます。
片方にしかアプライアンスがないロケーション間での通信
CloudBridge 仮想 WAN ソリューションは、両方の側にアプライアンスが存在するロケーション間
で最適な結果を提供します。しかし、片方の側にしかアプライアンスがない場合であっても、同ソ
リューションは大きなメリットを提供できます。
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ホワイトペーパー
WAN 仮想化
先述したように、
CloudBridge 仮想 WAN は 4 つの種類のサービスを提供しますが、
このうち Intranet
(イントラネット)サービスと Internet(インターネット)サービスは、片方の側にしかアプライア
ンスがないロケーション間で通信を⾏うために設計されています(図 4 を参照)このようなタイプ
のトラフィックに対して、送信元のアプライアンスは次の機能を提供します。
• トラフィックシェーピング:各サービスに最小帯域幅割り当てを提供することで、特定タイプの
サービスが他のサービスを締め出さないようにします。
• レイテンシアウェアなパス選択:1 つのセッションを 2 つ以上のパスを通じて拡張できるように
します。
• フェイルオーバー:あるパス上で通信断を検出した場合、アクティブセッションを別のパスへと
シームレスに切り替えます。また、障害が発生したパスが修復された場合には、アクティブセッ
ションを即座に元のパスに戻します。
アプライアンスあり
(いわゆる「コン
ジットサービス」)
データセンター
アクティブな
MPLS
アクティブな
ブロードバンド
アプライアンスなし
(いわゆる「イント
ラネットサービス」)
図 4:両側にアプライアンスが存在するロケーション間では、すべての WAN 仮想化機能を含む「仮想パス」サー
ビスを利⽤できる。一方、片側にしかアプライアンスがないロケーション間では、トラフィックシェーピング、
負荷分散、フェイルオーバーなどの機能を含む「イントラネット」サービスを利⽤
パブリック/プライベートクラウドとの統合
ますます多くの企業が、パブリッククラウドおよびプライベートクラウド内で実⾏されているアプ
リケーションを利⽤するようになっています。しかし残念ながら、いったんアプリケーショントラ
フィックがクラウドベースのデータセンターに入ると、
同トラフィックは WAN 境界を離れるため、
企業の IT 部門からは不可視となります。
この問題に対処するために、CloudBridge 仮想 WAN ソリューションでは、Amazon Web Services
(AWS)リージョン内で動作する仮想アプライアンスを提供しています。これを使⽤することによ
り、AWS を含めるように WAN 境界を効果的に拡張できます。CloudBridge 仮想 WAN アプライア
ンスと、AWS リージョン内の仮想アプライアンスを使⽤すると、複数のブロードバンド接続リンク
と AWS へのダイレクト接続リンクをアグリゲートすることで、レイテンシアウェアなパス選択、
パケット複製、シームレスなフェイルオーバーを実現できます(図 5 を参照)
。
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WAN 仮想化
仮想アプライアンス
データセンター
ブロードバンド
リモートオフィス
図 5:仮想アプライアンスにより、Amazon Web Services(AWS)リージョンに対する可視性と制御を提供
管理や分析の簡素化
複数のネットワークタイプを使⽤する WAN では管理が困難になる場合があります。CloudBridge 仮
想 WAN ソリューションを使うと、このような WAN の管理や分析を簡素化できます。
Citrix Command Center を使うと、一連のデバイスを個々に設定するのではなく、WAN 全体を設定
できるため、CloudBridge 仮想 WAN アプライアンスやポリシーの設定が直観的に⾏えるようにな
ります。また、Citrix Command Center は、ネットワーク上にあるすべての CloudBridge 仮想 WAN
アプライアンスを自動的に検出するため、管理者は Command Center を使⽤することで、非常に短
時間ですべてのアプライアンスに対して設定の変更をプッシュできるようになります。
Citrix Insight Center には、カスタマイズ可能なダッシュボードが含まれており、このダッシュボー
ドでは、ネットワーク上の WAN パスの稼働状態や性能を表す主要なファクトやイベントを表示す
るチャート、マップ、ダイアグラムなどを利⽤できます。独自の再生機能を使うと、トラフィック
フローを何度も表示できるほか、ネットワークの状態やアプリケーションの需要における変化を強
調できます。
現時点では、WAN 経由のアプリケーショントラフィックに関してこのようなレベルの情報を提供
できるソリューションは CloudBridge 仮想 WAN ソリューションだけです。
クリティカルなアプリケーションの高い性能を確保しつつネットワーキングコス
トを削減
先述した「典型的なデータセンターとブランチ間の WAN 接続における問題点」のセクションでは、
現在の典型的な WAN 接続における 6 つの問題点(無駄な帯域幅、低速なフェイルオーバー、フェ
イルオーバー後の⾼優先度アプリケーションの性能の劣化、⾼額なキャパシティ追加、MPLS ネッ
トワークにおけるパケットロスやジッタの発生、複雑で時間のかかる管理)を紹介しました。
CloudBridge の WAN 仮想化機能を使うと、これらの問題をすべて解決できます。
無駄な帯域幅を一掃できる
あらゆる接続タイプを通じてレイテンシアウェアなパス選択を実施することで、すべての帯域幅を
常に利⽤できることを保証できます。バックアップ専⽤のブロードバンド接続を保持する必要はな
くなります。さらに、最も優先度の⾼いアプリケーショントラフィックは、最も性能が⾼く最もパ
ケットロスが少ないパスに割り当てられます。パスの割り当ては、各アプリケーションに関するき
め細かな分類と、WAN における各パスの性能と稼働状況に関するリアルタイム情報に基づいて、動
的に実施されます。このような動的なパス選択は自動的に実⾏されるため、ネットワーク管理者は
ネットワークリンクの分析や管理を⾏う必要もなければ、アプリケーションをパスに割り当てる必
要もありません。
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WAN 仮想化
フェイルオーバーとフェイルバックをどちらも 1 秒未満で実現
CloudBridge 仮想 WAN アプライアンスは、2〜3 件のパケットロスの発生を⾒つけただけで、パス
の機能停止を検出できます。これにより、次の最も良好なパスにアプリケーショントラフィックを
切り替えるためのシームレスなフェイルオーバーを 1 秒未満で実⾏できます。ワーカーがセッショ
ンの再起動、通話のリダイヤル、アプリケーションへの再ログインなどを強制されることはありま
せん。また、同アプライアンスは、接続がオンライン状態に復帰した時点で、それを即座に検出し、
修復された元のパスへとトラフィックをシームレスに戻します。
フェイルオーバー後も優先度の⾼いアプリケーションの性能を良好に保つ
接続がダウンした場合、トラフィックシェーピングとレイテンシアウェアなパス選択は、優先度の
⾼いアプリケーションに対して、最良の性能を持つ残りのパス上で適切な帯域幅が与えられること
を保証します。優先度の低い「Bulk(バルク)
」カテゴリに分類されるアプリケーション⽤のパケッ
トは必要に応じてキューイングされ、帯域幅が利⽤可能になった時点で送信されます。ほとんどの
ケースでは、VoIP のような遅延に敏感なアプリケーションを使⽤している場合であっても、ワー
カーが機能停止に気付くことはありません。
キャパシティ拡張にかかる費⽤を大幅に削減
WAN 仮想化を使⽤すると、ブロードバンド接続において、非常に⾼額な MPLS ネットワークにお
ける信頼性およびサービス品質と同じレベルのものを、優先度の⾼いアプリケーションに提供でき
るようになります。これは、企業が、安価で柔軟なブロードバンド接続を使⽤して自社の WAN キャ
パシティを拡張できること、およびそれらの接続を既存の MPLS ネットワークとシームレスに連携
できることを意味します。実際に、MPLS をすべて廃止し、ブロードバンドリンクのみを使⽤して
⾼品質の WAN を構築した企業もあります。
あらゆるアプリケーションタイプで品質を改善
CloudBridge 仮想 WAN アプライアンスは、すべての WAN 接続について遅延、ジッタ、パケットロ
スの計測と監視を継続的に実施します。同アプライアンスは、可能な限り最良の品質のパスを使⽤
するようにルーティングを動的に決定します。品質の低いパスは、優先度の低いアプリケーション
向けに、必要な場合にのみ使⽤されます。また、パケットの並べ替え機能やパケットロスの軽減機
能を使⽤すると、ジッタやパケットロスの発生を減らすことにより、ブロードバンド接続の品質だ
けでなく MPLS の品質も改善できます。
シンプルなエンドツーエンドの管理および監視を提供
CloudBridge 仮想 WAN ソリューションを使うと、複数の MPLS 接続とブロードバンド接続を組み
合わせた WAN 上での性能および品質の管理と監視を簡素化できます。管理者は、一連のデバイス
を個々に設定するのではなく、WAN 全体を設定できるようになります。また、Amazon Web Services
(AWS)リージョン内で動作する仮想アプライアンスを使⽤することで、WAN に対する可視性と
管理をクラウド環境にまで拡張できます。
CloudBridge 仮想 WAN ソリューションの詳細については、www.citrix.com/cloudbridge をご覧にな
るか、各地域のシトリックス販売代理店または認可済みのリセラーにお問い合わせください。
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ホワイトペーパー
WAN 仮想化
Citrix について
Citrix Systems, Inc.(NASDAQ:CTXS)は、新しい快適なワークスタイルを実現する仮想化、ネットワーキング、クラウドイン
フラストラクチャのリーディングカンパニーです。多くの企業および組織の IT 部門やサービスプロバイダーが、仮想化、モバ
イル化されたワークスペースの構築、管理、セキュリティ確保のために、シトリックスのソリューションを利⽤しています。仮
想化、モバイル化されたワークスペースでは、デバイス、ユーザー、利⽤するネットワークやクラウドを問わず、アプリケーショ
ン、デスクトップ、データ、サービスをシームレスに利⽤することができます。シトリックスは今年、創設 25 周年を迎えます
が、今後も革新に取り組み、モバイルワークスタイルにより IT をさらにシンプルにするとともに生産性の向上に貢献していき
ます。シトリックスの 2013 年度の年間売上⾼は 29 億ドルで、その製品は世界中の 33 万以上の企業や組織において、1 億人以
上の人々に利⽤されています。シトリックスの詳細については www.citrix.co.jp をご覧ください。
©2015 Citrix Systems, Inc. All rights reserved. Citrix、XenDesktop、XenApp および CloudBridge は、Citrix Systems, Inc.または
その子会社の登録商標であり、米国の特許商標局およびその他の国に登録されています。その他の商標や登録商標はそれぞれの
各社が所有権を有するものです。
E0115/PDF
J0215/PDF
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