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平成27年度エネルギー需給緩和型 インフラ・システム普及
平成27年度エネルギー需給緩和型 インフラ・システム普及等促進事業 「ナイジェリア連邦共和国における発電所新増設 に係る事業実施可能性調査」 提案調査報告書 平成28年3月 経 済 産 業 省 委託先:丸 紅 株 式 会 社 第1章 調査の目的 ··················································· 1 第2章 電力需要状況 ················································· 1 第3章 プロジェクトサイトの選定 ····································· 2 第4章 プロジェクト計画の具体化 ····································· 3 4.1 発電方式の選定 ····················································· 3 4.2 発電所機器構成および機器仕様 ········································ 4 4.3 発電所の性能 ······················································· 5 4.4 発電電力送り出し設備 ················································ 5 4.5 燃料ガスおよび水供給計画 ············································ 6 4.6 プロジェクト実施スケジュール ········································ 7 4.7 プロジェクトコストの試算 ············································ 8 第5章 経済財務分析 ················································· 8 5.1 経済財務分析 ······················································· 8 5.2 資金調達及び返済計画 ················································ 9 第6章 環境社会配慮 ················································ 10 6.1 ナイジェリアの法令に基づく環境影響評価(EIA) ························ 10 6.2 JBIC ガイドラインにおける環境配慮に関する基本的事項 ················· 11 第7章 プロジェクトの実施に伴う経済面及び社会面への影響 ············ 13 添付図面 ······························································· 15 第1章 調査の目的 ナイジェリア連邦共和国(以下、 「ナイジェリア」と記す)は、アフリカ最大となる約 1.82 億 人の人口を擁し、最新の経済統計によれば南アフリカ共和国を抜いて、アフリカ最大の経済大国 となった。ナイジェリアは、アフリカ最大の原油生産量およびアフリカ最大の天然ガス埋蔵量を 誇り、非原油セクターの好調な成長も相まって、堅調な経済成長を遂げている。電力セクターに おいては、過去に電力供給設備の維持管理、更新、新設が十分に行われてこなかった結果、潜在 する電力需要に対して供給能力が圧倒的に不足し、計画停電が日常的に行われている上に、全系 統停電となる事故も頻繁に発生している。 このような状況に対してナイジェリア政府は、政府主導の発電所建設プロジェクト(NIPP)や 電力セクターの民営化を推進しているが、現在の潜在的な電力需要や、今後予想される急速な電 力需要の増加に対応するための電力設備の拡充、及び既存のガスタービン発電設備・火力発電設 備の高効率化が喫緊の課題となっている。電力設備の拡充の一環として、ガス焚き火力発電所の 新設、大型の高効率ガスコンバインドサイクル発電所の建設による効率改善等が求められている。 本事業では、既存の電力供給設備の現状および電力設備拡張計画等の基礎的な調査を行い、更 には相手国政府の計画やニーズを踏まえ、我が国の技術を最大限に活用した高効率ガスコンバイ ンドサイクル発電設備の導入計画の策定及び受注に向けた事業実施可能性調査を行う。 第2章 電力需給状況 ナイジェリアでは、潜在的な電力需要に対して電力供給能力が圧倒的に不足するため、日常的 に計画停電が実施され、工場や商業施設、一般家庭では自家発電設備 を使用して停電時もしくは 日常の電力を賄っている。2009 年から 2016 年にかけて、最大発電出力は平均 4.6%/年で伸びてい るが、2016 年時点で 14,630 MW とされるピーク需要に対して、最大発電出力は 5,075 MW と需要 の約三分の一となっている。ナイジェリアの国民一人当たりの電力消費量は、一人当たり GDP が 同等の国と比べて極端に低く(例:ベトナムの約十分の一) 、また、一人当たり GDP がナイジェ リアよりも低いガーナやモザンビークよりも低い。 ナイジェリアエネルギー委員会(ECN:Energy Commission of Nigeria)の予測では、電力需要(電 力量ベース)は 2050 年まで 5.7%/年の伸び率で増加するとされており、現状の不足と将来の需要 -1- の伸びに対応するため、電力供給設備の増強が急務である。 ナイジェリアでは、3 箇所の水力発電所と、22 箇所の火力発電所の合計 25 箇所の発電所が存在 し、定格設備容量の合計は 11,675MW となっている。しかしながら、設備のトラブルやメンテナ ンス等のために、使用可能な発電容量は 7,140MW と定格容量の 61%となっており、更に送電容 量の制約やガス供給制約により発電出力が制限され、実際に発電可能な容量は 3,000~4,000MW 程度となっている。 第3章 プロジェクトサイトの選定 候補サイトの選定に際しては、過去に丸紅が三菱日立パワーシステムズ(MHPS:(旧日立製作 所)製の発電設備を納めた (i) エグビン(Egbin)重油・ガス焚コンベンショナル火力発電所をはじ め、(ii) カラバ(Calabar)ガス焚シンプルサイクルガスタービン発電所、(iii) サペレ(Sapele)ガ ス焚シンプルサイクルガスタービン発電所、および (iv) イホボ(Ihovbor)ガス焚シンプルサイク ルガスタービン発電所の候補地において、必要な要件を満たす最適な候補地を選定する。 プロジェクトサイトが満足すべき条件を、1,300 MW~1,900 MW クラスのガスタービンコンバ インドサイクル発電所の建設を前提に、次のように定めた。 ① 建設用地が 20 ha 以上確保可能であること ② ボイラ補給水の取水が可能であること ③ 天然ガス供給圧が十分なこと 4.5 MPa 以上、および日量 300 MMCFD 以上確保可能であ ること ④ 330 kV 送電線が繋がっており且つ必要に応じ増設が可能であること ⑤ 候補地が電力需要地に近い場所であること ⑥ 候補地が人口密集地から離れていること ⑦ 重量物および大型荷物の輸送に制約の少ないこと 表 3.1 に示す通り、サイト条件の 1~7 項目を評価した結果、ガスタービンコンバインドサイク ル発電設備の建設サイトはエグビン発電所隣接地とするのが最適と判断された。 表 3.1 プロジェクトサイト候補地の評価 項 目 建設用地が 20 ha 以上 確保可能であること エグビン 20 ha 以上可 ◎ 2 ボイラ補給水の取水 が可能であること ◎ 3 天然ガス供給圧が十 分に確保できること ◎ 1 カラバ サペレ イホボ 現在の敷地内不可、現在の敷地内不可、現在の敷地内不可、 敷地拡張要 敷地拡張要 敷地拡張要 △ △ △ × ◎ △ △ (Pipeline の増設 -2- △ (Pipeline の増設 △ (Pipeline の増設 (4.5 MPa 以上、及び 日量 300 MMCFD 以 上確保可能なこと) が必要) が必要) 330 kV 送電線が繋が っており且つ必要に 応じ増設が可能なこ と 候補地が電力需要地 に近いこと 330 kV 6 回線 ◎ 330 kV 4 回線 ○ Lagos ◎ Calabar ○ Bennin ○ Bennin ○ 6 候補地が人口密集地 から離れていること ◎ ◎ ○ ◎ 7 重量物および大型荷 物の輸送に制約の少 ないこと 既設発電所建設の 際 350 トン程度の 実績 ◎ 既設発電所建設の 際 230 トン程度の 実績 ○ 既設発電所建設の 際 230 トン程度の 実績 ○ 既設発電所建設の 際 230 トン程度の 実績 ○ ◎ △ △ △ 4 5 総合評価 第4章 4.1 330 kV 6 回線 ○ (設備が老朽化) が必要) ) 330 kV 4 回線 ○ プロジェクト計画の具体化 発電方式の選定 本プロジェクトに採用可能な新設発電プラントの方式としては、① 高効率大型ガスタービンに よるシンプルサイクルガスタービン発電所の建設、② 大型ガスタービン高効率ガスコンバインド サイクル発電設備の新設 、③ 超臨界圧コンベンショナル型蒸気タービン発電設備の新設、④ 大 型ガスエンジン発電所の新設、の 4 方式がある。以下に、各発電方式の概要を示す。 表 4.1-1 発電方式の比較 No. 発電方式 Type-1 最新型大型ガスタービンによるシ MHPS M701F4 x 6 ユニット ンプルサイクルガスタービン発電 [正味出力: 285 MW x 6 = 1,710MW] 最新型大型ガスタービン高効率ガ MHPS M701F4 2 on 1×2 又は 1on 1×4 スコンバインドサイクル発電設備 [正味出力: 877 MW x 2 = 1,754 MW] Type-2 出力内訳 正味熱効率 39%* 58%* の新設 Type-3 Type-4 超臨界圧コンベンショナル型蒸気 300 MW BTG x 6 ユニット タービン発電設備の新設 [正味出力: 300 MW**×6= 1,800 MW] 大型ガスエンジン発電所の新設 18MW Gas Engine x 100 ユニット 41%* 47% [正味出力: 18MW x 100 = 1,800MW] [備考]*: New & Clean Condition **:ナイジェリアは電力系統規模が小さく、現在発電機の最大容量を 300 MW に制限されている。 -3- 発電方式別の累積発電コストを図 4.1-1 に示す。運転開始後 40,000 時間までは Type-1 シンプ ルサイクルガスタービン発電方式の累積コストが最低となるが約 50,000 時間以降は Type-2 のガ スタービンコンバインドサイクル発電方式が最低となる。よって本プロジェクトでは、Type-2 ガスタービンコンバインドサイクル発電方式を採用する。 図 4.1-1 発電方式別累積運転コスト 4.2 発電所機器構成および機器仕様 本プロジェクトに適用可能なガスタービンコンバインドサイクル発電設備としては、最新型大 型ガスタービンを用いた① One on One 一軸式、② One on One 多軸式、③Two on One 多軸式の 3 方式が可能である。下記の表 4.2-1 に機器構成による比較を行った。 表 4.2-1 コンバインドサイクル機器構成の比較 評価項目 One on One*×4 1. 軸構成 Two on One**×2 一軸式 多軸式 多軸式 2. バイパススタック GTG 単独運転不可、 GTG 単独運転不可、 GTG 単独運転不可、 無/ HRSG 一缶故障 出力 75% 出力 75% 出力 75% ○ ○ GTG 単独運転可、 GTG 単独運転可、 GTG 単独運転可、 ク有/ HRSG 一缶故障 出力約 91% 出力約 91% 出力約 91% 4. バイパススタック GTG 単独運転不可、 GTG 単独運転不可、 GTG 単独運転不可、 無/ STG 一機故障 出力 75% 出力 75% 出力 50% 5. バイパススタック GTG 単独運転可、 GTG 単独運転可、 GTG 単独運転可、 有/ STG 一機故障 出力約 91% ◎ 出力約 91% ◎ 出力約 83% ○ 6. 発電機台数 4台 ◎ 8台 △ 6台 ○ 7. 330kV 引出数量 4 回線 ◎ 8 回線 △ 6 回線 ○ 3. バイパススタッ ○ ◎ ○ -4- ◎ ○ ◎ △ 8. GTG 一台故障 出力 75% ○ 出力 75% ○ 出力 75% ○ 9. 建設コスト 100% ◎ 110% △ 103% ○ 10. O & M の容易さ ◎ ○ ◎ 11. 発電機の単機容 約 450MW ◎ ◎ △ ○ 量 300MW 以下 × 総合評価 × [備考]*: One Gas Turbine on One Steam Turbine **: Two Gas Turbines on One Steam Turbine 上記の比較の結果を基に、本プロジェクトでは One on One 多軸式ガスタービンコンバインドサ イクル発電設備(以下 Case-1 とする)4 ブロックまたは Two on One 多軸式ガスタービンコンバ インドサイクル発電設備(以下 Case-2 とする)2 ブロックを検討対象として採用することにし、 エグビン既設発電所の東側遊休地に建設する。新設発電設備は既存発電所に依存しない形で建設 するがガス供給設備、水供給設備、補助蒸気供給設備、消火設備、330 kV 開閉設備等については 既設設備の増設等を行い、一部を共有する。 4.3 発電所の性能 プロジェクトで採用を考えている MHPS 社製ガスタービン (M701F4) の Case-1:One on One 多 軸型および Case-2:Two on One 多軸型 コンバインドサイクル発電設備のサイト設計条件におけ る性能は次のとおりである。 表 4.3-1 ケース別性能比較(サイト条件) 性能項目 Case-1:One on One 多軸型 Case-2:Two on One 多軸型 1,743,200 kW 1,754,000 kW 正味発電端総ブロック出力* 440,800 kW 886,100 kW 正味送電端ブロック出力** 435,800 kW 877,000 kW 送電端熱効率 58.17 % 58.53 % ヒートレート 6,189 kJ/kWh 6,151 kJ/kWh 正味送電端総出力 [備考]*:正味発電端出力 **:正味発電端総出力-所内動力 4.4 発電電力送り出し設備 既設 Egbin 発電所は表 4.4-1 に示す送電線により、発電した電力を送電系統に送り出している。 コンバインドサイクル発電所の増設を行った場合、Case-1 と比較して出力の大きい Case-2 では、 サイト条件において 1,754MW の出力が増加する。このため、送電線の追加無し、330kV 送電線 2 回線追加、330kV 送電線 4 回線追加、ケースで潮流解析を行ない、送電線の過負荷の有無を確認 -5- した。表 4.4-2 に示す通り、送電線の追加が無い場合(ケース 1)でも過負荷は生じないが、最大 負荷率が 93%となり、1 回線に支障が生じた場合に、他の送電線が過負荷となる。このため、2 回線もしくは 4 回線の追加が望ましいが、供給信頼度を高める観点から、4 回線の追加が推奨さ れる。 表 4.4-1 既設 Egbin 発電所の電源線 送電経路 No. 電圧 回線数 1 Egbin 発電所 – Aja 変電所 330kV 2 2 Egbin 発電所 – Benin 330kV 1 3 Egbin 発電所 – Ikeja West 変電所 330kV 1 4 Egbin 発電所 – Oke Aro 変電所 – Ikeja West 変電所 330kV 2 5 Egbin 発電所 – Ikorodu 変電所 132kV 2 表 4.4-2 潮流解析の結果 ケース 発電設備容量(MW) 1 3,074 (1,320+1,754) 6 (既設) 2 3,074 (1,320+1,754) 3 4 4.5 330kV 送電線の回線数 送電線の追加箇所 送電線最大負荷率 追加無し 93% 8(2 回線追加) Egbin – Oke Aro 67% 3,074 (1,320+1,754) 8(2 回線追加) Egbin – Ogijo 68% 3,074 (1,320+1,754) 10 (4 回線追加) Egbin – Ogijo 55% 燃料供給および水供給計画 Egbin 火力発電所では 28 インチパイプ1系列で天然ガスの受け入れを行っている。現在の受け 入れ可能量は日量 366 MMCFD であるが、配管の設計流量は 550 MMCFD であり、220 MW ユニット 9 台分で設計されている。既設発電所への現在の受け入れ圧力は 22 barg であるが、ガス供給ステ ーション P4 の元圧は設計圧力が 65 barg、現在の供給圧力は 35 – 40 barg 程度とされる。新規 のガスタービンコンバインドサイクル設備では 45 barg の受け入れ圧力が必要なため、元圧のま ま送給する配管を新設し、既設の配管と併用させることが必要となる。 復水器用冷却水はラゴスラグーンから取水し、ラグーン内での温排水の循環が起きないように 止水壁が設けられている。冷却水ポンプは各タービンユニットに 2 台ずつ設置されている。ラグ ーンからは消火用水も取水されており、電動消火ポンプとディーゼルエンジン駆動消火ポンプが 設置されている。除塵レーキとロータリースクリーンが設けられているが、ラグーン内のためご みは比較的少なく、雨季中に水草が増える程度である。 既設ユニットの増設用に 3 ユニット用 の冷却水ポンプ用の取水設備コンクリート構造物が設置済みであり、新設のコンバインドサイク ルプラントでも使用は可能と思われる。また放水路も十分な余裕を持っており新設コンバインド サイクルからの冷却水の放流も十分可能である。 -6- 4.6 プロジェクト実施スケジュール Case-1 及び Cas-2 のプロジェクト全体工程を表 4.6-1 と表 4.6-2 に示す。Case-1 では、初号機の シンプルサイクルガスタービンの運転開始が 2019 年 12 月、発電所全体の完成が 2022 年 6 月とな る。Case-2 では、初号機のシンプルサイクルガスタービンの運転開始が 2019 年 12 月、発電所全 体の完成が 2021 年 6 月となる。 表4.6-1 プロジェクト全体工程 [Case-1] 2015 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 2016 FS調査 EIA調査レポート準備および 認可の取得 EPCプロポーサルおよび評価 契約ネゴ EPC契約調印および期間 No.1 Block-SC運開 No.1 Block-CC運開 No.2 Block-SC運開 No.2 Block-CC運開 No.3 Block-SC運開 No.3 Block-CC運開 No.4 Block-SC運開 No.4 Block-CC運開 2017 2018 2019 2020 2022 2021 2023 ∆ ∆ ∆ ∆ ∆ ∆ ∆ ∆ ∆ 表4.6-2 プロジェクト全体スケジュール [Case-2] 2015 1 2 3 4 5 6 7 8 9 FS調査 EIA調査レポート準備および 認可の取得 EPCプロポーサルおよび評価 契約ネゴ EPC契約調印および期間 No.1 Block-SC運開 No.1 Block-CC運開 No.2 Block-SC運開 No.2 Block-CC運開 2016 2017 2018 2019 2020 2021 ∆ ∆ ∆ ∆ ∆ -7- 2022 2023 4.7 プロジェクトコストの試算 プロジェクトコストは大きく分けて (1) 発電設備建設費と (2) 操業準備費に分けることがで きる。これらのプロジェクトコストの試算結果を表 4.7-1 に示す。 表 4.7-1 プロジェクトコスト試算結果 項 目 Case-1:1 on 1 x 4 Blocks Case-2:2 on 1 x 2 Block (1) 発電設備建設費 (EPC コスト) 発電設備および補機費用 126,510 百万円 120,500 百万円 運搬・据え付けおよび試運転費用 46,000 百万円 43,750 百万円 土木・建築費用 57,500 百万円 54,800 百万円 230,010 百万円 219,050 百万円 (eq. USD 2,000.09 million) (eq. USD 1,904.78 million) [USD 1,046 / kW] [USD 993 / kW] 合計(1) (2) エンジニアリングおよびプロジェクト管理費用 エンジニアリングおよびプロジェ 2,500 百万円 2,500 百万円 予備品: 1,500 百万円 1,500 百万円 合計: 4,000 百万円 4,000 百万円 総合計 234,010 百万円 223,050 百万円 (eq. USD 2,034.87 million) (eq. USD 1,939.56 million) クト管理費 Note: USD 1.00 = JPY 115 第5章 5.1 経済財務分析 経済財務分析 以下に示す条件で本プロジェクトの経済財務分析を行ったところ、表 5.1-1 に示す通り Case-1、 Case-2 とも FIRR は事業の機会費用である 10%を上回り、また B/C Ratio も 1 より大きい。よって 本プロジェクトは、財務評価指標による妥当性があり、財務的な投資基準に達している。 【経済財務分析の前提条件】 (1) 発電所の年間運転時間:8,000 時間 (2) 発電所の年負荷率:80% (3) 固定運転保守費:発電所建設費の 0.5%/年 (4) 変動運転保守費:USD2.00/MWh(日本円換算:240 円/MWh) (5) 燃料費:USD 3.30/MMBtu(日本円換算:375 円/GJ) (6) 電力販売価格:US¢7.22/kWh(日本円換算:8.66 円/kWh) -8- 表 5.1-1 経済財務分析の評価指標 評価指標 FIRR B/C Ratio (割引率:10%) Case-1 17.2% 1.63 Case-2 19.7% 1.72 ケース 5.2 資金調達及び返済計画 (1) 資金調達と資金拠出先候補の検討 本プロジェクトの設備投資資金と運営費用に必要な資金は自己資金割合が 15%、外国からの対 外借入金が 85%で資金調達手当するものとする。対外借入金は開発途上国の道路、鉄道、発電所 などの特定の開発プロジェクトを実施するために供与される「プロジェクト借款」として、国際 的な政策金融機関、および民間金融機関より資金は拠出されるものとする。また、対外借入金に 占める政策金融機関の融資比率は 85%、民間金融機関は 15%とする。 (2) 借入金の前提条件 資金は開発援助資金の性質に基づき、長期の緩やかな条件にて貸付けられるものとする。また、 建中金利については、プロジェクト実施機関が自己資金で支払うものとする。 金利: 円固定金利 3.72% 国際協力銀行による輸出金融の標準的融資条件に従い、融資承諾時金利固定 1.03%(2016 年 1 月 時点)+ 輸出契約成立前上乗せ金利 0.20% + リスクプレミアム 2.49% = 3.72% を適用する。 借入期間: 返済猶予期間 4 年、その後の元本均等返済期間を 12 年とする。 (3) 借入金額の算定 借入金額は以下の時点でピークとなり、2021 年より元本均等返済が開始となる。 Case-1: 2020 年 Jpy138,390 百万円 元本均等返済額 Jpy11,533 百万円 Case-2: 2020 年 Jpy128,198 百万円 元本均等返済額 Jpy10,683 百万円 (4) 返済計画 元本返済と金利支払に必要な資金はプロジェクトによる電力販売収入を充当することにより、 借入金は 2032 年に完済することが可能と算定した -9- 第6章 6.1 環境社会配慮 ナイジェリアの法令に基づく環境影響評価(EIA) (1) 概要 ナイジェリアでは、Environment Impact Assessment Act(以下、 「EIA 法」)にて、環境に負の影 響を与える恐れのあるすべての開発プロジェクトに対して、環境アセスメントの実施を義務付け ている。また、EIA に関して以下のガイドラインが策定されている。 ・ EIA Procedural Guideline(1992) 事業の計画開始から実施までの手順と EIA 認可の手順を規定。 ・ EIA Guidelines for Power Sector 電力セクターに特化した EIA ガイドラインが 2013 年に策定されており、現在設置されて いる或いは将来設置の可能性がある電力施設(※)に適用するものとしている。 ※水力発電、火力発電(ボイラー(蒸気タービン)、レシプロエンジン、燃焼タービン、コン バインドサイクル、コジェネレーション)、風力発電、原子力発電、送電線、地方電化、太 陽光発電、バイオマス発電、潮力発電、地熱発電。 (2) 事業のカテゴリ分類 EIA 法によれば、すべての開発事業は、環境への影響の内容・程度等を考慮して、以下の 3 つ に分類されている。 ・ カテゴリ I:本格的 EIA 調査に基づく認可が必要(JBIC ガイドラインのカテゴリ A に相当) ・ カテゴリ II:IEE レベル調査に基づく認可が必要 (同上、カテゴリ B に相当) ・ カテゴリ III:EIA または IEE 調査の必要なしに認可 電力セクターについては、EIA 法の附則にて以下事業における EIA 実施を要求している。本プ ロジェクトは以下の「コンバインドサイクル発電」に該当し、EIA の実施が必要となる。 ・ 火力発電:10MW 以上 ・ 水力発電:ダム高 15m 以上及び付帯施設の総面積 40ha 以上、或いは貯水池面積 400ha 以上 ・ コンバインドサイクル発電 ・ 原子力発電 - 10 - 6.2 JBIC ガイドラインにおける環境配慮に関する基本的事項 (1) 基本的事項 JBIC ガイドラインでは、プロジェクトがもたらす環境への影響について、プロジェクトの計画 段階で、できる限り早期から調査・検討を行い、これを回避・最小化するような代替案や緩和策 を検討し、その結果を計画に反映しなければならないとされている。また、その検討結果は、代 替案や緩和策も含め独立の文書あるいは他の文書の一部として表されていなければならず、本プ ロジェクトのようなカテゴリ A に該当するプロジェクトについては、環境社会影響評価報告書が 作成されなければならない。 (2) 対策の検討 JBIC ガイドラインでは、プロジェクトによる負の影響を回避・最小化し、環境社会配慮上より よい案を選択するため、複数の代替案が検討されなければならないとされている。対策の検討に あたっては、まず、影響の回避を優先的に検討し、これが可能でない場合には影響の最小化・軽 減措置を検討することとなっている。また、代償措置は、回避措置や最小化・軽減措置をとって もなお影響が避けられない場合に限り検討が行われるものとなっている。特に、カテゴリ A プロ ジェクトでは、詳細なモニタリング計画、環境管理計画など適切なフォローアップの計画や体制、 そのための費用及びその調達方法が計画されていなければならない。 (3) JBIC ガイドラインの火力発電所建設に関連する環境配慮事項 JBIC ガイドラインで示されている環境配慮事項のチェック項目、およびそれらに対する予備的 な環境影響予測・評価の結果を以下の表 6.2-1 に示す。 汚染対策の中で、特に大きな影響が予測される項目としては大気質への影響が挙げられ、継続 的な環境モニタリング、排ガスの排出基準を満たす設備の導入と適切な維持管理等の対策が必要 である。また、水質、廃棄物、騒音・振動、悪臭についても、継続的な環境モニタリングや機器 の維持管理・点検等の対策を講じる必要がある。なお、土壌汚染および地盤沈下については、影 響を予測する上で必要となる現地の実態がつかめていないことから、今後の現地調査を通した現 状把握と、現状に応じた適切な対策の実施、管理体制の構築等が求められる。 自然環境については、発電所の増設に伴うサイト内・周辺の生態系・生物相への影響が見込ま れ、特に前述の汚染源への適切な対策がなされない場合に、負の影響が増大することが予想され る。また、水象及び地形・地質への影響を見極めるには、今後の現地調査を通した現状把握が必 要となる。 社会環境・その他については、サイト周辺コミュニティに対して、工事時の工事車両の通行等 に伴う地域経済・インフラへの一時的な負の影響、工事に伴う騒音・振動の影響等が見込まれる。 - 11 - ただし、より詳細にそれらの影響を見極めるには、周辺コミュニティも含めた現地調査を通した 実態把握が必要であり、その結果を踏まえ、経済活動の阻害要因の緩和、地域交通への配慮、工 事時間規制といった対策を講じる必要がある。 表 6.2-1 予備的な環境影響予測・評価の結果 分類 影響予測・評価 チェック 項目 大 小 なし 予測・評価理由 不明 NOx を含む排ガス放出量の増 大気質 ● 大による大気質への影響が見 込まれる 水質 廃棄物 汚染対策 ● ● 騒音・振動 ● ● 地盤沈下 グ、排水基準を満たす設備 の導入と適切な維持管理 現地調査による現状把握、 取り組みの有無等が不明 汚染物質管理体制の構築 工事時および発電所の稼働に 継続的な環境モニタリン 伴うサイト内・周辺での騒音 グ、騒音を低減する設備の が見込まれる 導入、工事時間規制 現状の地盤条件が不明 現地調査による現状把握 れる ● 保護区 ● 生態系・ 生物相 自然環境 底質に影響を及ぼす行為は想 定されない 保護区はサイト近辺には立地 していない ● ● ● グ、定期的な設備点検によ る漏洩の防止 なし なし 継続的な環境モニタリン 述の汚染源による生態系・生 グ、上述の各種汚染対策の 物相への影響が見込まれる 実施 量・排水量の増加による影響 が不明 地形・地質 継続的な環境モニタリン サイト内・周辺において、上 ラ グ ーン ・発 電 所間 の取 水 水象 工事時の廃棄物処理の実施 土壌汚染の現状、汚染制御の 用による悪臭の発生が見込ま 底質 持管理 る 排出、アンモニアや塩素の使 ● たす設備の導入と適切な維 ーン水質への影響が見込まれ 発電所の稼働に伴う排ガスの 悪臭 グ、排ガスの排出基準を満 継続的な環境モニタリン 込まれる 土壌汚染 継続的な環境モニタリン 排水排出量の増大によるラグ 建設工事時の廃棄物発生が見 ● 対策・対処方針 現状の地形・地質条件が不明 現地調査による現状把握、 継続的な環境モニタリング 現地調査による現状把握 本プロジェクトにおいて既存 ● 跡地管理 施設の撤去やその跡地管理は なし 見込まれていない。 サイトは Egbin 発電所所有の ● 住民移転 遊休地であり、住民移転は発 なし 生しない 社会環境 工事車両の通行等に伴う地域 生活・生計 ● 経済・インフラへの一時的な 負の影響が見込まれる 文化遺産 ● 文化遺産はサイト近辺には立 - 12 - サイト周辺のコミュニティ も含めた現地調査による現 状確認、現状を踏まえた影 響緩和策の検討 なし 地していない 増設する発電所の建屋、煙突 景観 ● 等が景観を阻害する恐れがあ る 少数民族・ 少数民族・先住民族はサイト ● 先住民族 内・周辺には居住していない 現状の労働環境や、労働安全 労働環境・ ● 労働安全 に係る NERC のマニュアル・ 規則の遵守状況が不明 地域社会の ● 衛生・ 安全・保安 サイト周辺のコミュニティへ の現状が不明 工事車両の通行等に伴う地域 工事中の 影響 経済・インフラへの一時的な ● 負の影響、工事に伴う騒音・ 振動の影響が見込まれる その他 事故防止 対策 モニタ リング 第7章 ● ● サイト内・周辺への植林な どによる景観への影響緩和 なし 既設発電所の労働者等への 労働環境の聞き取り調査、 NERC マニュアル・規則の 遵守状況の確認 現地調査を通した、周辺コ ミュニティの現状と予測さ れる影響の確認 サイト周辺のコミュニティ も含めた現地調査での現状 確認、経済活動の阻害要因 の緩和、地域交通への配慮、 工事時間規制 労働者に対する事故防止の訓 現地調査による現状把握、 練等の実施有無が不明 労働者への訓練の実施 社会面のモニタリングの実施 有無が不明 社会面も含めたモニタリン グ対象項目の拡大、実施中 の環境モニタリングの継続 プロジェクトの実施に伴う経済面及び社会面への影響 ナイジェリアでは、潜在的な電力需要に対して電力供給能力が圧倒的に不足しており、計画停 電が日常的に行われていることから、工場や商業施設、一般家庭では自家発電設備を使用して停 電時もしくは日常の電力を賄っている。このような自家発電のコストは、電力系統から供給され る電力の二倍から三倍近くとなっており、製造業のコスト上昇、産業誘致への悪影響、国民の経 済的負担の増加に繋がっている。更に、自家発電のコストを負担できない経済的弱者は、頻繁に 発生する停電を甘んじて受け入れざるをえない状況となっている。 ナイジェリアでは、22 箇所の火力発電所のうち 15 箇所が効率の低いシンプルサイクルガスタ ービン発電所となっており、温暖化ガス排出削減とエネルギー有効利用の観点から、より効率の 高いコンバインドサイクル発電への転換が求められている。 以上の観点から、電力供給能力を増強し、かつ高効率な発電システムを導入する本プロジェク トは、ナイジェリア電力セクターにとって極めて重要であり、経済面、社会面にプラスの影響を 及ぼすものと判断される。また、天然ガスを燃料とする本プロジェクトは、適切な回避・緩和策 を講じることで、著しい環境への負の影響は避けられるとともに、工事期間中は雇用創出など社 - 13 - 会面のプラスの影響が期待される。 - 14 - #1-1 PLOT PLAN DRAWING (Case-1 M701F4 1 on 1 x 4) #1-2 TYPICAL PLOT PLAN (Case-1 M701F4 1 on 1 x 4) #2-1 PLOT PLAN DRAWING (Case-1 M701F4 2 on 1 x 2) #2-2 TYPICAL PLOT PLAN (Casr-2 M701F4 2 on 1 x 2) - 15 -