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PJ-4-3A

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PJ-4-3A
PJ-4-3A
閉じこもり高齢者に囲碁を通じて生活機能が改善した事例
A case study that homebound elderly people's functioning has improved through
Igo
細田 明 (OT)
特別養護老人ホーム ゆかり八街西林
Key words: 生活機能,閉じこもり,余暇活動
【はじめに】介護保険制度改革により生活期のリハビリテーションは,単に高齢者の運動・口腔機能,
栄養状態といった心身機能の改善だけを目指すものではなく「心身機能」「活動」「参加」のそれぞ
れの要素にバランスよく働きかけることが重要であり,日常生活の活動を高め,家庭や社会への参加を
促し,生きがいや自己実現のため取り組みを支援していく必要が求められた1).活動範囲の狭さから生活
不活発化となった男性対象者が通所介護利用を通じて,興味のある作業である「囲碁」を道具となる
「パソコン」で行い,その人が経験した余暇的生活行為による効果や可能性について報告する.なお対
象者より同意の上で記載する.
【事例紹介】80歳代,男性,既往歴:肺気腫・糖尿病・腰部脊柱管狭窄症,要介護1,職歴:団体職員で技
術職,定年後は妻と2人暮らし. 社交的な性格であったが,X年より妻の認知症発症による在宅介護中心
の生活から外出機会が激減し閉じこもりがちになり自発性も減少.生活不活発化を懸念する娘の依頼で
週3回通所介護の利用となった.
【評価】障害高齢者の日常生活自立度A2,認知症高齢者の日常生活自立度正常,Barthel Index(BI)90
点,老研式活動能力指標6点,改訂版Frenchay Activities Index(FAI)9点. 易疲労感を訴え受動的態度
であった.作業目標の聞き取りでは,興味・関心チェックシートから,してみたい項目“囲碁”興味があ
る項目“パソコン”の希望が聞かれた. そして生活行為聞き取りシートにて「パソコンで囲碁を打
つ」という合意した目標に至った.自己評価での実行度・満足度は共に1であった.
【介入の基本方針】心身機能は易疲労感の改善.活動・参加は囲碁を通じた余暇的生活行為の場を得る
ことで,生活機能の改善をはかる.
【実施計画】個別機能訓練での基本練習として体力向上練習.応用・社会適応練習としてパソコンの囲
碁ソフトを介し,未経験の作業療法士が対局相手となり対象者が囲碁を教えながら,またパソコンの操
作方法については,初心者である対象者に作業療法士が教えることとした.
【経過と結果】筋力増強訓練を軸にした体力向上練習導入後,易疲労感の訴えは減少.パソコンでの囲
碁はマウス操作の不慣れ,起動や囲碁ソフトへのアクセス手順をミスするも,繰り返し行うことで操作
を習得.また自宅でも囲碁を打ち始めた. 2ヶ月後の再評価では,障害高齢者の日常生活自立度J2,認知症
高齢者の日常生活自立度正常,BI95点,老研式活動能力指標10点,FAI22点, 実行度6・満足度は8であっ
た.通所介護参加にて外出機会が増えJ2に改善.FAIから外出,屋外歩行,趣味,庭仕事,読書を行う頻度が
増えた.作業療法士に囲碁を教える楽しみを見出し,他スタッフにも教える社会性を見せた.結果閉じこ
もりを解消し囲碁を通じて生活機能の向上に繋がった.
【考察】対象者は囲碁のスキルを発揮して,相互に教え合う対等な関係が構築され,能動的かつ社会性
の回復を見せる.勝敗のあるゲームでは「うまく勝つ,負ける」ということから,ひとと共に生活するの
に必要とされる適度な対人的距離を身につける2) .またパソコンという道具を使うことで,有能感を満た
しながら自信を取り戻したり,新たな生活の技能を身につける学習の手段としてもちいる3) . そして役
割の転換から,自尊心を保ち元気でいられると考える.今回の事例では,対象者がいきいきと囲碁を教え
る姿から改めて作業の可能性に気づいた.
【引用文献】
1)日本作業療法士協会編:事例で学ぶ生活行為向上マネジメント.医歯薬出版,2015,58頁
2)山根寛:ひとと作業・作業活動.三輪書店,2015,27頁
3)山根寛:精神障害と作業療法.三輪書店,2003,66頁
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