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血中遊離DNAによる癌の高感度遺伝子診断システム に関する基盤研究

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血中遊離DNAによる癌の高感度遺伝子診断システム に関する基盤研究
「血中遊離DNAによる癌の高感度遺伝子診断システム
に関する基盤研究」
事後評価報告書
平成15年2月
新エネルギー・産業技術総合開発機構
技術評価委員会
目
次
1
2
3
4
6
7
はじめに
分科会委員
分科会委員名簿
委員名簿
審議経過
評価概要
技術評価委員会におけるコメント
技術評価委員会委員
技術評価委員会委員名簿
委員名簿
第1章 評価の実施方法
1-1
第2章 プロジェクトの概要
2-1
第3章 評価
1.プロジェクト全体に関する評価
1.1 総論
1.2 各論
2.要素技術に関する評価
3-1
第4章 評点法による評価結果
4-1
参考資料1 プロジェクトの概要説明資料
参考資料2 周辺動向調査
1
参考資料 1-1
参考資料 2-1
はじめに
悪性腫瘍は、我が国の死亡率第一位を占めているが、早期発見・早期治療により
治癒を実現できる可能性が高くなってきており、それによる患者のQOL向上や医
療費の低減が期待されている。早期発見のためには、初期の癌が的確に診断できる
方法の確立が極めて重要な課題である。
担癌患者の末梢血には健常人よりも高濃度の遊離 DNA が存在することが示唆されて
いるため、末梢血中の遊離 DNA を高感度に検出・定量でき、更にその癌特異的遺伝子
異常を総合的に検出できる系を開発し、癌の早期診断を実現する基盤技術を確立する
べく「血中遊離DNAによる癌の高感度遺伝子診断システムに関する基盤研究」プロ
ジェクトは、平成11年度より3年間の計画で開始された。
平成14年度に、新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術評価委員会「血中遊離
DNAによる癌の高感度遺伝子診断システムに関する基盤研究」分科会(分科会長:
大木 操 国立がんセンター研究所 客員研究員)において、当該分野に係わる国内
外の研究開発動向や社会情勢の変化も踏まえつつ、プロジェクトの目的・政策的位置
付け、目標・計画内容、研究開発体制や運営状況、成果の意義、実用化可能性や波及
効果等について事後評価を実施した。
本書は、これらの評価結果をとりまとめたものである。
新エネルギー・産業技術総合開発機構
1
平成15年2月
技術評価委員会
「血中遊離DNAによる癌の高感度遺伝子診断システムに関する基盤研究」
事後評価分科会委員名簿
(平成15年2月現在)
分科会
会長
氏名
所属
大木
操
国立がんセンター研究所
腫瘍ゲノム解析・情報研究部
塚田
俊彦
国立がんセンター研究所
細胞増殖因子研究部(受容体研究室)
渡辺
伸一郎 東京女子医科大学
中央検査部
各員研究員
室長
臨床生化学科
教授
分科会委員
三木
義男
東京医科歯科大学 難治疾患研究所
分子遺伝分野 教授(兼 財団法人
子診断研究部 部長)
癌研究所
遺伝
敬称略、五十音順
2
審議経過
第1回 分科会(平成 14 年 8 月 9 日)10:30∼16:00
公開セッション
1.分科会の公開について
2.評価の在り方と評価の手順について
3.評価の分担及び評価の論点について
4.評価報告書の構成について
5.プロジェクトの概要
6.周辺動向調査について
7.プロジェクトの個別テーマの詳細について
8.コメント、質疑応答(全体について)
第2回 分科会(平成 14 年 6 月 17 日)13:00∼16:15
公開セッション
1.評価の進め方について
2.評価報告書(案)の審議及び確定
第7回 技術評価委員会(平成 15 年 2 月 10 日)14:00∼16:30
1.評価報告書の審議/報告
3
評価概要
1.プロジェクト全体に関する評価
1.1 総論
(1) 総合評価
Intra-Alu-PCR を基本にした高感度の血中遊離 DNA 定量法ならびに診断システムの
開発は、当初掲げた目標「血中遊離 DNA を高感度に検出・定量でき、さらにその遺伝
子異常を総合的に検出できる技術を開発し、癌の早期診断を実現するための基盤技術
を確立する」に対して、一部不透明な部分は残るものの、おおよそ成功したと評価で
きる。
高感度 DNA 検出システムの開発は既存の技術を組み合わせたものであるが、その技
術を利用することにより血中遊離 DNA による癌の高感度遺伝子診断が有効であること、
および将来、血中遊離 DNA を腫瘍マーカーとして使用することができる可能性を示し
たことは注目すべき研究成果と言え、この技術を用いた癌のスクリーニングシステム
の開発へと発展させることが期待される。
しかし、血液試料取り扱い条件の差による数値変動の問題、および血中遊離 DNA 量
が腫瘍マーカーとして利用できるか否かといった、技術上・医学上の基礎的な問題が
未解決のまま残っていると考えられるため、今後、臨床検体の解析、さらに詳しい臨
床情報との相関を検討する必要がある。また、癌の種類を限定し、そのステージや悪
性度につき層別化して、十分な試料数を用いた、統計的にも信頼しうるデータを出す
ことも必要と考える。
(2) 今後に関する提言
本プロジェクトのユニークな点は、末梢血における遊離 DNA 量のみで癌の検出が出
来るということにあるが、これを汎用性のある技術へ発展させれば血中遊離 DNA を腫
瘍マーカーとして使用し癌患者の病態経過観察を行う、あるいはこの技術による一般
集団を対象とした癌の検診システムを開発することが可能になると考えられ、関連分
野へのインパクトは極めて大きいと思われる。しかし、血中遊離 DNA 定量法が腫瘍マ
ーカーとして臨床検査に応用されるためには、感度が高いということと同時に、特異
性も高くなければならない。
現時点では臨床情報が不十分であり、したがって、さらに臨床検体の解析を進め、
診断可能な癌患者の病期等の詳細な情報を集積し、この技術の臨床的意義や有効性を
確立することが必須であり、DNA 測定量の変動要因、測定された血中遊離 DNA 量の変
化の疾患特異性などについて、さらに臨床情報の収集・解析を進めてもらいたい。
1.2 各論
(1) 事業の目的・政策的位置付けについて
癌の早期発見のための検査法の開発という、国民の健康に直結する公共性の高い独
創的かつ先進的な研究であり、自動化された測定機器が開発されれば、一般的な臨床
検査としての経済効果も高く、医学的・社会的に重要であると考えられる。
また、本プロジェクトは課題名「血中遊離 DNA による癌の高感度遺伝子診断システ
ムに関する基礎研究」が示すごとく、
「癌の診断」という医学研究と「DNA による高感
4
度診断システムの開発」という工学系研究を融合させたもので、これからの生命科学
における基礎的研究の形態に関し重要な方向性を示すものと考える。さらに、目的と
する技術の開発には高額な先端的機器が必須であり、その実用化に向けては企業群の
協力が必要となるもので、NEDO プロジェクトとして極めて妥当と言える。
(2) 研究開発マネージメントについて
医学系・工学系研究者の連携があり、研究体制はほぼ妥当と思われる。本プロジェ
クトの内容は課題名「血中遊離 DNA による癌の高感度遺伝子診断システムに関する基
礎研究」が端的に表しており、この技術開発が癌の新しい検診システムに発展する可
能性が高く、極めて重要で興味ある開発目標と評価できる。
ただし、臨床医学系の腫瘍マーカー専門家が、より一層強く研究方針決定に関与し
ていたほうが良かったのではないかと思われる。また、血中遊離 DNA 濃度について担
癌患者全体としては解析されているが、疾患別で腫瘍径との関係などは解析が十分と
は言えず、各種早期癌患者の臨床例の集積が十分とは言えないなど、遺伝子異常を総
合的に検出可能とする技術を確立するという目標からは、かなり距離をおいたものに
なっており、短期間には開発困難な内容が目標として掲げられていたのではないかと
思われる。
(3) 研究開発成果について
Intra-Alu-PCR 法による末梢血中遊離 DNA の超高感度定量は、血中遊離 DNA 量の測
定による癌の検出という従来からの概念を一歩進め、その可能性をより明確に示した
と言え、新しい癌の検診システムの開発につながる可能性があり、独創性、汎用性が
認められる。
血中遊離 DNA を腫瘍マーカーとして使用することができる可能性を示したことは注
目すべき研究成果であり、血中遊離 DNA 定量解析の自動化も1日当たり最大 180 検体
を解析できるシステムを完成しており、この技術を用いた癌のスクリーニングシステ
ムの開発へと発展させることが期待される。今後の更なる検討、開発がなされれば、
実用化も可能と思われ、その点ではシーズ作りを目的とする本事業の研究開発として
成功したと判断されるが、今後、新しい癌の検診システムの開発等につながるか否か
は、早期癌が検出できるかどうかにかかっているといっても過言ではなく、したがっ
て、臨床検体の解析を進めさらに詳しい臨床情報との相関を検討する必要がある。ま
た、血中遊離 DNA の濃度は採血後の処理方法、時間に大きく影響を受けると思われ、
今までに行ってきた採血から処理までのプロトコールを明記すべきであり、今後、採
血後の影響が出ない詳細な条件等についても言及すべきと考える。疾患特異性に関し
ても、より幅広い疾患について基礎検討を行い、腫瘍マーカーとしての可能性を探る
必要がある。臨床例の集積には時間を要するが、各種早期癌症例を多数集積し、検討
することが必要と思われる。
5
(4) 実用化、事業化の見通しについて
末梢血中の遊離 DNA を超高感度、かつロボットによる自動化により効率的に検出す
るシステムを確立した意義は大きい。現時点では腫瘍マーカーとして利用出来るかど
うかは結論できないが、さらに臨床検体の解析を進め、診断可能な癌患者の病期等の
詳細な情報を集積し、この技術の臨床的意義や有効性が確立されれば、血中遊離 DNA
を腫瘍マーカーとして使用し癌患者の病態経過観察を行う、あるいはこの技術による
一般集団を対象とした癌の検診システム開発に向けて、実用化、事業化の可能性は十
分にあると判断される。
また、癌遺伝子や癌抑制遺伝子の検索、あるいは DNA チップによる診断法などへの
応用も考えられる。
しかしながら、実用化・事業化のためには、採血後の処理時間や温度などを一定条
件として血中遊離 DNA の定量を行い疾患特異性を再検討すること、癌特異性をより一
層高めること、癌疾患のステージや悪性度との関連を含め、十分な臨床検体の解析を
行い、癌の診断を行うための科学的根拠、およびその有用性を確立することが必須で
あると考えられる。
また、遺伝子異常を総合的に検出できる技術の開発が重要であり、このためには開
発、およびその実用化を含め、更なる医学・工学連携型事業により、本プロジェクト
の成果を発展させて行くことが必要であると考える。
6
技術評価委員会におけるコメント
第7回技術評価委員会(平成15年2月10日開催)に諮り、了承された。技術評
価委員からのコメントは特になし。
7
技術評価委員会委員名簿
委 員 長 岸 輝雄
稲田 絋
大滝 義博
大西 匡
垣田 行雄
小柳 光正
瀬田 重敏
曽我 直弘
高村 淑彦
谷 辰夫
冨田 房男
西村 吉雄
丹羽 清
畑村 洋太郎
平澤 泠
三浦 孝一
村上 路一
独立行政法人 物質・材料研究機構理事長
東京大学大学院工学系研究科教授
株式会社バイオフロンティアパートナーズ代表
取締役社長
豊田工機株式会社取締役会長
財団法人日本システム開発研究所専務理事
東北大学大学院工学研究科教授
旭化成株式会社特別顧問
独立行政法人産業技術総合研究所理事
東京電機大学工学部教授
諏訪東京理科大学工学部システム工学部長
北海道大学大学院農学研究科教授
東京大学大学院工学研究科教授
東京大学大学院総合文化研究科教授
工学院大学国際基礎工学科教授
政策研究大学院大学教授
京都大学大学院工学研究科教授
株式会社宇宙情報技術研究所代表取締役副社長
(合計 17名)
(敬称略、五十音順)
8
第1章
評価の実施方法
第1章 評価の実施方法
本評価は、「技術評価実施要領」(平成 13 年 5 月制定)に基づいて技術評価を
実施する。「技術評価実施要領」は、以下の 2 つのガイドラインに定めるところ
によって評価を実施することになっている。
総合科学技術会議にて取りまとめられた「国の研究開発評価に関する大綱
的指針」(平成 13 年 11 月内閣総理大臣決定)
経済産業省にて取りまとめられた「経済産業省技術評価指針」
(平成 14 年
4 月経済産業省告示)
NEDO における技術評価の手順は、以下のように被評価プロジェクト毎に分科
会を設置し、同分科会にて技術評価を行い、評価報告書(案)を策定の上、技術評
価委員会において確定している。
「技術評価委員会設置・運営要領」に基づき技術評価委員会を設置
技術評価委員会はその下に分科会を設置
NEDO
理事長
評価報告書
事務局
技術評価委員会
NEDO
技術評価部
評価報告書(案)
分科会 A
分科会 D
分科会 B 分科会 C
図 1 評価手順
1-1
1.評価の目的
実施要領において、評価の目的は、
評価をする者(評価者)と評価を受ける者(被評価者)が意見交換を通
じ研究開発の意義、内容、達成状況、今後の方向性等について検討し、
より効率的・効果的な研究開発を実施していくこと、
高度かつ専門的な内容を含む研究開発の意義や内容について、一般国民
にわかりやすく開示していくこと、
限られた研究開発リソースの中で、国の政策や戦略に対応した重点分
野・課題へのリソース配分をより効率的に実施していくこと、とされて
いる。
本評価においては、この趣旨を踏まえ、本事業の意義、研究開発目標・計画の妥当
性、計画と比較した達成度、成果の意義、成果の実用化の可能性等について検討・評
価した。
2.評価者
実施要領においては、事業の目的や態様に即した外部の専門家、有識者からなる委
員会方式により評価を行うこととされているとともに、分科会委員選定に当たっては
以下の事項に配慮した選定を行うこととされている。
科学技術全般に知見のある専門家、有識者
当該研究開発の分野の知見を有する専門家
研究開発マネジメントの専門家、経済学、環境問題その他社会的ニーズ
関連の専門家、有識者
産業界の専門家、有識者
また、評価に対する中立性確保の観点から事業の推進側関係者を選任対象から除外
し、また、事前評価の妥当性を判断するとの側面にかんがみ、事前評価に関与してい
ない者を主体とすることとしている。
これらに基づき、分科会委員名簿にある 4 名が選任された。
なお、本分科会の事務局については、新エネルギー・産業技術総合開発機構技術評
価部評価業務課が担当した。
3.評価対象
平成11年度から平成13年度までの計画で実施されている「血中遊離DNAによ
る癌の高感度遺伝子診断システムに関する基盤研究」プロジェクトを評価対象とした。
なお、分科会においては、当該事業の推進部室である新エネルギー・産業技術総合
開発機構 健康福祉技術開発室、及び以下の研究実施者から提出された事業原簿、プ
1-2
ロジェクトの内容、成果に関する資料をもって評価した。
4.評価方法
分科会においては、当該事業の推進部室及び研究実施者からのヒアリングと、それ
を踏まえた分科会委員による評価コメント作成、評点法による評価及び実施者側等と
の議論等により評価作業を進めた。
なお、評価の透明性確保の観点から、知的財産保護の上で支障が生じると認められ
る場合等を除き、原則として分科会は公開とし、研究実施者と意見を交換する形で審
議を行うこととした。
5.評価項目、評価基準
分科会においては、次に掲げる「標準的評価項目・評価基準」(平成 14 年 4 月 9
日、第3回技術評価委員会)に準じて評価を行った。プロジェクト全体に係わる評価
においては、主に事業の目的、計画、運営、達成度、成果の意義や実用化への見通し
等について評価した。各個別技術に係る評価については、主にその目標に対する達成
度等について評価した。
1-3
標準的評価項目・評価基準
【本標準的項目・基準の位置付け(基本的考え方)】
本項目・基準は、あくまでも標準的な評価の視点の例であり、各分科会にお
ける評価項目・評価基準は、被評価プロジェクトの性格、中間・事後評価の別
等に応じて、各分科会において判断すべきものである。
なお、短期間(3年以下)又は少額(予算総額5億円以下)のプロジェクト
に係る事後評価については、以下の「3.」及び「4.」を主たる視点として、
より簡素な評価項目・評価基準を別途設定して評価をすることができるものと
する。
1.事業の目的・政策的位置付けについて
(1)NEDO(国)の事業としての妥当性
単独で立ち上げる事業については、以下の項目により評価することとする。な
お、特定のプログラム制度(研究開発制度)の下で実施する事業の場合、以下の
項目を参照しつつ当該制度の選定基準等への適合性を問うこととする。
【注1】
・「市場の失敗」
(行政改革委員会「行政関与の在り方に関する基準」
(平成 8 年
12 月)参照)に該当しているか。しない場合、民間活動のみでは改善できな
いこと、公共性の高いことが説明されているか。その際、当該事業に必要な資
金規模や研究開発期間、民間企業の資金能力等は示されているか。
・他の類似事業や関連技術動向を踏まえ、NEDO(国)の関与がなかった場合
(放置した場合)と比較して、NEDO(国)が関与することの優位性がより
高いものであるか。
・当該政策目的の達成に当たって当該事業を実施することによりもたらされる政
策効果が、投じた政策資源との比較において効率的・効果的であるか(費用対
効果はどうか)。(知的基盤・標準整備等のための研究開発の場合を除く)
(2)事業目的・政策的位置付けの妥当性
・評価時点或いは事業開始時点の時代背景認識から見て、事業の目的は妥当で、
政策的位置付けは明確か。
・政策課題(問題)の解決に十分資するものであるか。
・国としての国際競争力に資するものであるか。
2.研究開発マネジメントについて
(1)研究開発目標の妥当性
・目標達成のために、具体的かつ明確な開発目標、目標水準を設定しているか。
・目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。
・費用対効果分析が適切に行われているか。(エネルギー特別会計を使用してい
る場合には費用対効果分析を踏まえ定量的なエネルギー政策上の目標が立て
られているか。)
1-4
(2)研究開発計画の妥当性
・目標達成のために妥当なスケジュール、予算(各個別研究テーマ毎の配分を
含む)となっているか。
・目標達成に必要な要素技術を過不足なく取り上げているか。
・研究開発フローにおける要素技術間の関係、順序は適切か。
(3)研究開発実施者の事業体制の妥当性
・目標を達成する上で、事業体制は適切なものか。
・各研究開発実施者の選定等は適切に行われたか。
・関係者間の連携/競争が十分行われるような体制となっているか。
(4)研究開発実施者の運営の妥当性
・意思決定、進捗状況、計画見直し等の検討が適切に行われているか。
・プロジェクトリーダー(サブテーマのリーダーを含む)が有効に機能してい
るか。
・プロジェクト開始後の情勢変化(目標未達が明らかになった場合を含む)へ
の対応は適切であったか。
(5)情勢変化への対応の妥当性
・技術動向や社会・市場ニーズの変化等に対応して、計画を適切に見直したか。
・計画の見直しに当たっては、時代背景の変化を考慮していたか。
3.研究開発成果について
(1)計画と比較した目標の達成度
・成果は目標値をクリアしているか。
・全体としての目標達成はどの程度か。
・立案時点または計画見直し時点の時代背景認識から見て、事業は研究開発と
して成功したといえるか。また、評価時の時代背景から見てどうか。
(2)要素技術から見た成果の意義
・世界最高水準、世界で初めて、又は国際水準から見て優れた成果があるか。
(ある場合は、その根拠及びインパクトが明確に説明されているか。
)
・新たな技術領域を開拓するような成果の独創性が認められるか。
(認められる場合は、新たな技術領域の内容、その根拠、規模及び発展性はど
うか。)
・新たな市場創造につながるような新規性、先進性が認められるか。
(認められる場合は、新たな市場の内容、その根拠及び発展性はどうか。
)
・汎用性のある(応用分野の広い)技術が開発されているか。
・当初想定していなかったような成果(派生技術等)はあるか。
・将来の時代背景の変化により、重要性の増すあるいは減る成果はどのような
ものか。
1-5
(3)成果の普及、広報
・論文の発表は、質・量ともに十分か。
・特許は適切に取得されているか。
・基本特許が的確に取得されているか。
・特許性は十分あると判断されるか。
・外国特許が適切に出願されているか。
・必要に応じ、成果の規格化に向けた対応が取られているか。
・広報は一般向けを含め十分に行われているか。
(4)成果の公共性【注2】
・成果の公共性を担保するための措置、あるいは普及方策を講じているのか。
(JIS 化、国際規格化等に向けた対応は図られているか、一般向け広報は積極
的になされているか等)
4.実用化、事業化の見通しについて
(1)成果の実用化可能性
・産業技術としての見極め(適用可能性の明確化)ができているか。
・公共財としての需要が実際にあるか。見込みはあるか。
・公共性は実際にあるか。見込みはあるか。
(2)波及効果
・成果は関連分野へのインパクトを期待できるものか。
・当初想定していなかった波及的な成果はあるのか。
・プロジェクトの実施自体が当該分野の研究開発を促進するなどの波及効果を
生じているか。
(3)事業化までのシナリオ
・コストダウン、導入普及、事業化までの期間、事業化とそれに伴う経済効果
等の見通しは立っているか。
【注1】
:
「必要性」の観点からの評価は、政策効果からみて、対象とする政策に係る
行政目的が国民や社会のニーズ又はより上位の行政目的に照らして妥当性
を有しているか、行政関与の在り方からみて当該政策を行政が担う必要が
あるか等を明らかにすることにより行うものとする。
(政策評価に関する基
本方針(閣議決定平成 13 年 12 月)参照)
【注2】:知的基盤・標準整備等のための研究開発のみ。
【全体注】:評価においては、プロジェクトに対する提言を含めて検討を実施するも
のとする。
1-6
(参考資料)
政策立案・評価ガイドライン(抜粋)
(平成 11 年 12 月経済産業省策定)
IV.評価事項
1.事前評価
(1) 施策・制度の必要性[どのような問題が存在するのか、なぜその問題を改善する上で行政の関
与が必要なのか]
民間活動のみでは改善できない問題であって、かつ、行政が関与することにより改善できるも
のが存在することを論証しなければならない。
行政の関与の必要性については、
「市場の失敗
市場の失敗」
「市
市
市場の失敗 と関連付けて説明すべきことを原則とする。
場の失敗」については以下に概念を示すが、より詳しくは、行政改革委員会「行政関与の在り方
場の失敗
に関する基準」
(平成 8 年 12 月 16 日)の「行政関与の可否に関する基準」による。
行政関与の必要性の説明として、
「市場の失敗
市場の失敗」
失敗 に該当しないものも許容するが、その場合には、
上述した問題の存在することの説明や公共性が高いことの根拠はできる限り客観的に明らかにし
なければならない。
<市場の失敗
市場の失敗>…行政改革委員会「行政関与の在り方に関する基準」
(平成 8 年 12 月)による
市場の失敗
(a) 公共財的性格を持つ財・サービスの供給(経済安全保障、市場の整備、情報の生産、
文化的価値を含む)
複数の人が同時に消費できたり、対価の支払いなしに(まま)消費を制限することが
困難である財・サービスのことをいう。
例:市場ルールの形成
(b) 外部性
ある個人・企業の活動が、市場を経ずに他の個人・企業の経営環境に影響すること
をいう。好ましいものを正の外部性、好ましくないものを負の外部性という。
例:負の外部性の例として地球環境問題(正の外部性については、解釈に幅があると
される)
(c) 市場の不完全性
不確実性や情報の偏在(財や価格について取引の当事者間で情報量にばらつきがあ
ること)などがあるために市場取引が成立しないこと。
例:技術開発(不確実性)
、製品事故(情報の偏在)
(d) 独占力
独占力は、一般には、市場におけるマーケット・シェアやライバル企業と異なる品
質の製品を提供することによって生まれる価格設定力である。市場参加者が大きな独
占力を持っている場合には、行政の関与が許容される場合があるとされる。
(e) 自然独占
平均生産費が、市場で需要される産出量を超えても逓減するため、新規参入が利潤
をもたらさず、また 1 社だけ存在することが効率的になるため生ずる独占のことをい
う。
(f) 公平の確保
公平の確保を図るための施策については、機会の均等を図ることを第一とし、事後
的な公平については、所得・資産の多寡を基準とした再分配に原則として限定し、そ
れ以外の施策からは原則として撤退する、とされている。
1-7
第2章
プロジェクトの概要
当該事業の推進部室及び研究実施者から提出された事業原簿をもって、当該プロジェクトの概
要を示す。
「血中遊離DNAによる癌の高感度遺伝子
診断システムに関する基盤研究」
事業原簿
作成者
作成時期
新エネルギー・産業技術総合開発機構
健康福祉技術開発室
H14年7月3日
目
次
0.概要
1.NEDO の関与の必要性・制度への適合性
1.1.NEDO が関与することの意義
1.2.費用対効果
2-1
2-1
2-1
2.事業の背景・目的・位置づけ
2.1.事業の背景・目的・意義
2.2.事業の位置づけ
2-1
2-1
2-1
3.事業の目標
2-2
4.事業の計画内容
4.1.事業全体、個別研究開発項目の計画内容
4.2.研究開発項目毎の内容の詳細
4.3.事業を担う研究開発実施主体の体制
2-3
2-3
2-3
2-5
5.実用化、事業化の見通し
5.1.事業全体についての実用化の見通し
5.2.要素研究開発項目毎の実用化の見通し
2-7
2-7
2-8
6.今後の展開(政策目標達成までのシナリオ)
2-8
7.中間・事後評価の評価項目・評価基準、評価手法及び実施時期
2-8
8.研究開発成果
8.1.事業全体の成果
8.2.要素研究開発項目毎の成果
8.2.1.成果概要一覧
8.2.2.総表
8.2.3.要素研究毎の成果
2-9
2-9
2-11
2-11
2-12
2-12
9.情勢変化への対応
2-20
10.今後の事業の方向性 2-20
11.添付資料
11.1.基本計画
11.2.成果状況一覧
2-21
2-21
2-21
0. 概要
制度名
医学・工学連携型研究事業
事業の概要
事業名
血中遊離DNAによる癌の高感度遺伝子
診断システムに関する基盤研究
悪性腫瘍は、我が国の死亡率第一位を占めているが、早期
発見・早期治療により治癒を実現できる可能性が高くなって
きており、それによる患者のQOL向上や医療費の低減が期
待されている。早期発見のためには、初期の癌が的確に診断
できる方法の確立が極めて重要な課題である。
従来からX線による画像診断や血液中の腫瘍マーカー測
定による診断が実施されているが、多様、多種類の悪性腫瘍
を網羅的診断することはできず、また初期の癌を見逃すこと
も多い。
担癌患者の末梢血には健常人よりも高濃度の遊離 DNA が存
在することが示唆されているため、末梢血中の遊離 DNA を高
感度に検出・定量でき、更にその癌特異的遺伝子異常を総合的
に検出できる系を開発し、癌の早期発見診断を実現するための
医学・工学連携型研究を行なう。
1.NEDO の関与の必要
従来の企業を中心とした工学技術のみのアプローチでは新
性・制度への適合性 たな医療機器・技術を世界に先駆けて開発するには限界が生じ
つつあるとの問題意識を背景に、医学的研究と工学的研究が密
接に連携して行うことが必要であるとして本事業は開始され
た。
本研究は、がんの早期診断に資する新規な遺伝子診断技術に
関する基盤的研究を医学的研究と工学的研究の連携によって
達成しようとするものである。
現在死因の第一位を占める癌死を減少させるために、このよ
うな革新的な研究を行うことは、国のプロジェクトとして緊急
に推進することが必要である。血中遊離 DNA の高感度定量技
術ならびにがんの診断に用いるがん特異的遺伝子異常を検出
可能にすることは、医学的研究を基盤とするもので企業単独の
研究では困難であり、本事業の主旨に合致したものである。
2.事業の背景・目的・ [背景]
位置づけ
癌死は死因の第一位を占め、現在年間約 20 万人となってい
るが、その大きな要因は発見の手遅れによるものである。早期
発見は最も重要な癌死低減化の方法であり、早急な臨床応用が
望まれる。このための腫瘍マーカーは幾つか実用化されている
が、何れも一般性や特異性に問題がある。末梢血中の遊離 DNA
を腫瘍マーカーとして活用するための研究は諸外国において
もなされつつあるものの、未だ高信頼性の方法は確立していな
い。その最大の原因は高感度、高信頼性の DNA 定量法が確立
していなかったことにある。
悪性腫瘍早期診断のために血清で用いられる腫瘍マーカー
は10種を超えるが、多くの固形癌に頻用される CEA(癌胎児
抗原)や CA19-9, AFP (α- フェトプロテイン) でもその有効
性(癌患者の陽性率)は 20 ∼ 60% であり、しかも癌の種類
により大きく異なる。前立腺癌特異抗原として有名な PSA も
陽性率は 14 ∼30% に過ぎない。又多くの腫瘍マーカーは進行
癌において、より高頻度で陽性となる明らかな傾向がある。更
に、幾つかのマーカーは非腫瘍性の過増殖組織をもつ患者でも
高値を示すことがある。このように、早期の癌を広汎に検出す
るための信頼できる腫瘍マーカーは未だ開発されていないと
言って良い状況である。
[目的]
本研究はヒト特異的反復配列を標的とした新しい DNA 定量
法を開発し、癌自体の遺伝子異常検索と連動した新しい癌早期
発見のための末梢血遺伝子診断法を開発して、早期発見? 早期
治療による癌死の低減を目的とし、究極的には癌診療に関する
膨大な国民医療費の削減を図るものである。
[研究の位置付け]
末梢血中の遊離 DNA をヒト反復配列を用いた高感度検出法
で定量して腫瘍マーカーとして用いるという本研究のアイデ
アは極めて独創的なものであり、これまで諸外国で検討された
にも拘わらず成功していなかった試みである。
本研究は末梢血中遊離 DNA が腫瘍マーカーとして有益であ
るか否かの信頼性検討も含んでいるが、その結果信頼性の高い
方法が確定すると、本法または知的所有権を備えたその変法を
民間産業界において創出するための基盤となる。もし癌早期発
見のための集団検診が本研究の成果を採用すると、そのソフ
ト、ハードウエア両面において大きな需要が期待される。この
様に、本研究の成果は極めて公共性と一般性に富むと考えられ
る。
3.事業の目標
全体目標:(平成13年度末)
(全体目標) 末梢血等の中の遊離 DNA を高感度に検出・定量でき、更にそ
の中の遺伝子異常を総合的に検出できる技術を開発して、癌の
早期診断を実現する基盤技術を確立する。
(1)遊離 DNA の高感度検出・定量技術の研究
初期の癌でも検出可能な末梢血遊離 DNA の高感度検出・
定量技術を確立する。(目標値:1 pg/ml)
(2)遺伝子異常の高感度検出技術の研究
微量な末梢血中遊離 DNA を用いて、癌に由来する様々な
遺伝子異常を総合的に検出可能とする技術を確立する。
(3)初期癌の診断に資するため癌自体の遺伝子異常を研究
する。
中間目標:(平成12年度末)
(1)定量的遺伝子診断システムに関しては、多数例のコホ
ート解析結果を分析し、健常人、担癌患者、その他の慢性・
急性疾患患者、などに分類して末梢血遊離 DNA 量と病態
との関連を明確にする。
(2)同じく定量的遺伝子診断システムに関して、初年度の
研究成果を基に既存の機器を改造するなどの方法により、
全自動定量解析装置を試作する。
(3)血中遊離 DNA を用いた潜在癌の定性的遺伝子診断シ
ステムの構築。抽出遊離 DNA を全体として増幅し、その
中の特定の遺伝子領域について構造遺伝子領域の変異、ゲ
ノム不安定性や遺伝子欠失などの遺伝子異常を半自動で検
索するシステムを確立する。
H11fy
H12fy
H13fy
H14fy
H15fy
4.事業の計画内容
総額
(単位:百万円)
(3 年間)
58
58
54
170
一般会計
総予算額(計)
研究開発体制
5.実用化、事業化の見
通し
58
58
54
170
省内担当原課
商務情報政策局サービス産業課医療福祉機
運営機関
器産業室
新エネルギー・産業技術総合開発機構
委託先
岡山大学
再委託先
無し
共同研究先
無し
「末梢血中遊離 DNA 濃度が 25 ng/ml 以上の被験者
は約 70% の確率で担癌患者である可能性があり、さら
にその DNA から変異 K-ras 又は変異 p53 遺伝子が検
出されるとその確率は 90% 以上となる」という結果を
得た。
本研究により、末梢血中遊離 DNA 濃度の健常人と担
癌患者の境界値は約 20∼25 ng/ml であることが明確に
なった。そこで、この境界値前後の値を高信頼度で定量
できれば所期の担癌患者早期発見診断には充分である
ことが考えられる。
この基盤的情報を活用して、より簡便で全自動化に適
した非 PCR 準拠法が想定でき、現在民間企業と実用化
に向けた検討を進めつつある。また、がんの診断に有用
な遺伝子変異情報の活用についても企業と連携して検
討を進めている。
6.今後の展開
実用化のためには特許で守られた新しい産業技術とし
て産業界で実施される必要がある。PCR 法に基づく定量
法は基本特許が存在するため事業展開が困難であり、
PCR 法に依らず、しかも全自動化が容易な方法に変更す
る必要がある。これらの点は現在検討中であり、近い将
来に民間企業との共同研究で具体化する計画である。こ
れらが実現すると、癌検診に新しい分野が登場し、大き
な経済効果が期待される。
さらに、医学的基盤的研究を進めて、各種のがんの診
断に本研究の成果を適用していく。
7.中間・事後評価
平成14年度に事後評価を行なう。
8.研究開発成果
9.情勢変化への対応
10 今後の事業の方向性
1.論文発表数:
14
2.学会発表数:
35
3.特許出願数:
基本計画の変更
0
無し
変更内容
無し
評価履歴
無し
本事業の成果に基づき、民間企業との共同開発によるがんの
遺伝子診断システムの実用化を検討するとともに、さらに基盤
作成日
的研究を進めて各種のがんの診断への適用を検討する。
平成14年7月3日
1.NEDO の関与の必要性・制度への適合性
1.1. NEDO が関与することの意義
従来の企業を中心とした工学技術のみのアプローチでは新たな医療機器・技術を
世界に先駆けて開発するには限界が生じつつあるとの問題意識を背景に、医学的研
究と工学的研究が密接に連携して行うことが必要であるとして本事業は開始され
た。
本研究は、がんの早期診断に資する新規な遺伝子診断技術に関する基盤的研究を
医学的研究と工学的研究の連携によって達成しようとするものである。
現在死因の第一位を占める癌死を減少させるために、このような革新的な研究を、
国のプロジェクトとして緊急に推進することが必要である。
血中遊離 DNA の高感度定量技術ならびにがんの診断に用いるがん特異的遺伝子
異常を検出可能にすることは、医学的研究を基盤とするもので、企業単独の研究で
は困難であり、本事業の主旨に合致したものである。
1.2. 費用対効果
低侵襲性検体を用いた癌の罹患に関する臨床検査法はこれまでに血液(腫瘍マー
カー、血球細胞診)、喀啖(肺癌細胞診)、尿(泌尿器癌細胞診)、便(大腸癌? 便
潜血検査)等が用いられてきたが、必ずしも感度や特異性が高いとは限らず、幅広
い悪性腫瘍に一般的に有効な腫瘍マーカーも知られていない。末梢血中遊離 DNA
の濃度で担癌を診断する本研究の成果はヒトゲノムに関するトランスレーショナ
ルリサーチの典型的な例であり、様々な悪性腫瘍に応用可能であることが示唆され
るため、これまでにない新しい診断技術として注目に値すると考えられる。
臨床検査業界や病院、保健所などにおけるこの検診の潜在的市場規模は現在推計
できていないが、本法が一般の健康診断に採用された場合の経済波及効果は極めて
大きなものになる可能性が高い。
初年度予算, 58,080 千円、3ヵ年計画の研究費により、本研究が末梢血による
癌早期発見遺伝子診断が実用化するための基盤を構築すると、その後の産官学によ
る実用化研究開発を促進し、具体的な臨床応用に直結すると期待される。
2. 事業の背景・目的・位置づけ
2.1. 事業の背景・目的・意義
癌死は死因の第一位を占め、現在年間約 20 万人となっているが、その大きな要
因は発見の手遅れによるものである。早期発見は最も重要な癌死低減化の方法であ
り、早急な臨床応用が望まれる。このための腫瘍マーカーは幾つか実用化されてい
るが、何れも一般性や特異性に問題がある。末梢血中の遊離 DNA を腫瘍マーカー
として活用するための研究は諸外国においてもなされつつあるものの、未だ高信頼
性の方法は確立していない。その最大の原因は高感度、高信頼性の DNA 定量法が
2-1
確立していなかったことにある。本研究はヒト特異的反復配列を標的とした新しい
DNA 定量法を開発し、癌自体の遺伝子異常検索と連動した新しい癌早期発見のた
めの末梢血遺伝子診断法を開発して、早期発見? 早期治療による癌死の低減を目的
とし、究極的には癌診療に関する膨大な国民医療費の削減を図るものである。
2.2. 事業の位置づけ
本研究は基盤研究とあるように、産業技術としての成立性の見極め段階に相当す
るが、他の政府管掌開発研究とは重複していない。又、本研究は超微量定量法、全
自動化という医用工学の側面を含むため、医学、工学、産業界の密接な連携を必要
とする総合研究であり、医学・工学連携型研究事業に最適であると判断された。末
梢血中の遊離 DNA をヒト反復配列を用いた高感度検出法で定量して腫瘍マーカー
として用いるという本研究のアイデアは極めて独創的なものであり、これまで国内
外で別の方法により検討されたにも拘わらず成功していなかった試みに新たな展
開を促すものである。(文献例:Anker, P., Mulcahy, H., Chen, X.Q. & Stroun, M.
Detection of circulating tumour
DNA in the blood (plasma/serum) of cancer
patients. Cancer Metastasis Rev. 18 , 65-73 (1999).
本研究は末梢血中遊離 DNA が腫瘍マーカーとして有益であるか否かの信頼性検討
も含んでいるが、その結果信頼性の高い方法が確定すると、本法または知的所有権
を備えたその変法を民間産業界において創出するための基盤となる。もし癌早期発
見のための集団検診が本研究の成果を採用すると、そのソフト、ハードウエア両面
において大きな需要が期待される。この様に、本研究の成果は極めて公共性と一般
性に富むと考えられる。
3. 事業の目標
本研究はヒト特異的反復配列を標的とした新しい DNA 定量法を開発し、癌自体
の遺伝子異常検索と連動した新しい癌早期発見のための末梢血遺伝子診断法を開
発して、早期発見? 早期治療による癌死の低減を目的とし、究極的には癌診療に関
する膨大な国民医療費の削減を図るものである。
3.1. 最終目標
(平成13年度末)
末梢血等の中の遊離 DNA を高感度に検出・定量でき、さらにその中の遺伝子異
常を総合的に検出できる技術を開発して、癌の早期診断を実現する基盤技術を確立
する。
(1)遊離 DNA の高感度検出・定量技術の研究
初期の癌でも検出可能な末梢血遊離 DNA の高感度検出・定量技術を
確立する。(目標値:1 pg/ml)
(2)遺伝子異常の高感度検出技術の研究
微量な末梢血中遊離 DNA を用いて、癌に由来する様々な遺伝子異常を
総合的に検出可能とする技術を確立する。
2-2
(3)初期癌の診断に資するため癌自体の遺伝子異常を研究する。
3.2. 中間目標
(平成12年度末)
(1) 定量的遺伝子診断システムに関しては、多数例のコホート解析結果を分
析し、健常人、担癌患者、その他の慢性・急性疾患患者、などに分類し
て末梢血遊離 DNA 量と病態との関連を明確にする。
(2) 同じく定量的遺伝子診断システムに関して、初年度の研究成果を基に既
存の機器を改造するなどの方法により、全自動定量解析装置を試作する。
(3) 血中遊離 DNA を用いた潜在癌の定性的遺伝子診断システムの構築。抽出
遊離 DNA を全体として増幅し、その中の特定の遺伝子領域について構造
遺伝子領域の変異、ゲノム不安定性や遺伝子欠失などの遺伝子異常を半
自動で検索するシステムを確立する。
4. 事業の計画内容
4.1. 事業全体、個別研究開発項目の計画内容
(1)遊離 DNA の高感度検出・定量技術の研究
初期の癌でも検出可能な末梢血遊離 DNA の高感度検出・定量技術を確立
する。(目標値:1 pg/ml)
(2)遺伝子異常の高感度検出技術の研究
微量な末梢血中遊離 DNA を用いて、癌に由来する様々な遺伝子異常を総
合的に検出可能とする技術を確立する。
(3)初期癌の診断に資するため癌自体の遺伝子異常を研究する。
4.2. 研究開発項目毎の内容の詳細
(1)末梢血中遊離 DNA 高感度検出定量技術の研究
本研究開発計画では、超微量の DNA をヒト DNA 特異的な反復配列中の DNA 配
列に基づくプライマーから PCR (polymerase chain reaction) 法で増幅し、蛍
光標識産物を定量することによって、DNA 抽出操作を必要とせずに、検出感度を
約1万倍以上に上げることを目指している。血中遊離 DNA は癌細胞のアポトー
シスによってもたらされると考えられるが、その DNA 断片は少なくとも数百塩
基対以上の大きさがあり、高頻度ヒト反復配列(約 300 塩基対の Alu ファミリ
ーなど)が含まれている確率が高い。ヒト反復配列を用いることにより、血中
に混在する他の DNA(例えば微生物由来)の影響を排除することができる。 PCR
による DNA の増幅自体は現在汎用技術であり、新規なものではないが、高感度
定量を実現するための最も適した方法であるため採用することが必要であると
判断される。実際の検出感度としては、通常の PCR 増幅度が平均して約1億倍
2-3
であることから、全血流(4リットル)中に 100 個の癌細胞由来 DNA (600 pg)
があれば、その 10 µl を用いて増幅して最終的に 150 ng の DNA を得ることが
できると期待される。仮にその 99 %が分解消失していたとしても、約 1.5 ng の
DNA が得られ、充分に定量可能な範囲である。
具体的な作動要領はヒト DNA 特異的 Alu 配列中に設計した蛍光標識プライマ
ーを用いて PCR 反応を全自動で行うロボットにより DNA を増幅した後、現在既
に実用化されている全自動シングルチャンネル高速液体クロマトグラフィー、
またはキャピラリー電気泳動法によってある程度以上の大きさの DNA 断片分画
の蛍光強度を定量するというアイデアである。定量にはレーザースキャン/光
電子倍増管、または CCD カメラが有効である。定量の信頼性を強化するために
は、既知量の試料を用いた厳密な検量線を作成する必要があり、また定量が PCR
増幅のプラトーに達する以前になされる必要があるため、競合的 PCR による定
量や定量 PCR 装置の導入も考慮されるべきであると考えている。
(2)末梢血中遊離 DNA を用いた遺伝子異常の検索法に関する研究
この機器が最も開発困難なものである。その理由は対象となる遺伝子の種類
が莫大な数に上ること、遺伝子の変異にも多様なものがあり(点変異、欠失、
再編成、挿入、など)これらを完全にカバーする検索法は現在存在しないこと、
などである。これらを勘案すると、将来の検討課題としては、幾つかの特徴的
な癌特異的変異遺伝子に的を絞ること、既知の代表的な種類の変異形式に絞っ
て解析すること、特定の染色体領域の欠失等を検出する方法の開発、などを推
進することであろう。このために、本研究では遺伝子異常を検出する分析手段
としてヘテロ二本鎖 DNA を高感度に検出する方法の検討を行なう。
(3)癌由来の遺伝子異常の研究
以上の研究を効率化するためにも、本研究のような基礎的分子細胞科学的研
究によって癌自体の具体的な遺伝子変異情報を集積し、有効な戦略を立てると
共に、末梢血 DNA の解析結果と関連づける必要がある。実際に本研究代表者ら
はヒト肺癌、腎癌、頭頸部癌など多くの固型癌に共通な新しい癌抑制遺伝子候
補を発見しており、この遺伝子を遺伝子異常の検索標的とすることも計画して
いる。さらに、遺伝子や染色体領域のマイクロサテライト解析のためには前述
の高感度 DNA 検出定量とは別に、DNA 全体を普遍的に増幅して異常領域を検
索 す る こ と も 必 要 で あ る 。 こ の た め の 一 般 的 DNA 増 幅 法 は DNA 不 死 化
(DNA-immortalization ) 法とも呼ばれ、本研究代表者らの研究室及び共同研究
者らによって開発中であるが、Alu 配列に挟まれる領域を増幅する新しい方法
を既に確立しつつある。また、末梢血中に極く少数含まれる遊離癌細胞を検出
する試みも近年多数報じられているが、ビーズ法などで濃縮したこれらの細胞
からの DNA も同様の方法で増量させることができ、定性的な遺伝子異常の検索
に有用である。
2-4
4.3. 事業を担う研究開発実施主体の体制
(1)研究体制及び管理体制(発足当初、何れも岡山大学所属)
管理体制
教育担当副学長
工学部
医学部
学長
研究協力担当副学長
付属病院
事務局
医学部事務
研究組織
第一外科学講座
第二外科学講座
研究代表者
第二内科学講座
医学部病態遺伝子解析部門
・教授(リーダー)
医学部
泌尿器科学講座
病態遺伝子解析部門
臨床検査医学講座
付属病院
中央検査部
工学部
生体情報応用光学講座
2-5
p10 - 11
(研究組織)追加
研究プロジェクト班の構成と分担内容
リーダー(清水憲二)
(病態遺伝子解析部門)
松原長秀
(第一外科)
第一外科
医 第二外科
学
部
第二内科
附
属
病 泌尿器科
院
耳鼻咽喉科
各
臨
床
科
で
の
診
断
・
検
査
と
手
術
医学部附属
分子細胞医学研究施設・
病態遺伝子解析部門
検体
名
蛍光標識の検討
微量定量の検討
自動化の助言
分子遺伝学的
解析全般及び
データ解析
中央検査部
氏
大内田 守
堺 明子
伊藤佐智夫
注)研究代表者の所属する病態遺伝子解析部門
は平成13年度より岡山大学大学院・医歯
学総合研究科・腫瘍制御学講座・分子遺伝
学分野に改組された。
医療情報
所
宍戸昌彦
篠原寛明
生 工
体 学
情 部
報
応
用
工
学
講
座
属
役職
担当研究項目
清水
憲二
医学部病態遺伝子解析部門
教授
研究の総括・方針決定
宍戸
昌彦
工学部生体情報応用工学講座
教授
蛍光測定法の開発
篠原
寛明
工学部生体情報応用工学講座
助教授
蛍光測定法の開発
田中
紀章
医学部第一外科学講座
教授
消化器癌患者の診断
松原
長秀
医学部第一外科学講座
助手
消化器癌患者の診断
清水
信義
医学部第二外科学講座
教授
呼吸器癌患者の診断
青江
基
医学部第二外科学講座
助手
呼吸器癌患者の診断
原田
実根
医学部第二内科学講座
教授
造血器腫瘍患者の診断
公文
裕巳
医学部泌尿器科学講座
教授
泌尿器癌患者の診断
小出
典男
医学部臨床検査医学講座
教授
末梢血検体確保と診断
(附属病院中央検査部長兼任)
大内田
守
医学部病態遺伝子解析部門
助教授
末梢血遺伝子診断
伊藤佐智夫
医学部病態遺伝子解析部門
助手
DNA 塩基配列決定
堺
医学部病態遺伝子解析部門
助手
末梢血 DNA 定量解析
明子
総
計
13名
2-6
(2)他施設からの研究協力者及び協力事項
氏
名
所
属
・
職
研究協力事項
梶谷
文彦
岡山大学大学院医歯学総合研究科・教授
丹羽
太貫
京都大学放射線生物研究センター・教授
医用工学システム設計の助言
DNA 全増幅法開発の助言
(3)岡山大学医学部内研究協力者
氏
名
所
属
・
職
研究協力事項
ナイラ・
医学部病態遺伝子解析部門・
末梢血検体収集と医療情報
マホモテイ
研究機関研究員
の対応及び遺伝子解析
谷野
元彦
医学部病態遺伝子解析部門・大学院生
末梢血 DNA 診断
森山
裕煕
医学部第一外科学講座・大学院生
末梢血 DNA 診断
小林
一泰
医学部第二外科学講座・大学院生
末梢血 DNA 診断
因来
泰彦
医学部第二外科学講座・大学院生
末梢血 DNA 診断
5.実用化、事業化の見通し
5.1 事業全体についての実用化の見通し
「末梢血中遊離 DNA 濃度が 25 ng/ml 以上の被験者は約 70-80% の確率で担癌患
者である可能性があり、さらにその DNA から変異 K-ras 又は変異 p53 遺伝子が検
出されるとその確率は 90% 以上となる」という結果を得た。本研究は実用化のた
めの基盤的方法を開発したが、実用化自体は今後知的所有権を備えた産業技術とし
て民間主導で展開される必要がある。
5.2
要素研究開発項目毎の実用化の見通し
(1)末梢血中遊離 DNA の超高感度定量
本研究により、ヒト反復配列を標的とした定量 PCR 法を用いて末梢血中の遊離
DNA を約 10 pg/ml の感度まで検出・定量できるシステムが構築された。実際の担
癌患者と健常人との境界値は約 25 ng/ml であるため、この値前後を正確に定量で
きれば所期の目的には充分であることも判明した。そのため、特許化が困難な PCR
応用技術ではなく、別の方法を用いて特許化し、実用化を図る必要があると思料さ
れる。この具体的な検討は現在民間企業との共同研究で実施中であり、近い将来に
見通しが得られると考えている。その際の標準化のために、正確で高感度な独立の
測定法が必要なので、本研究で確立された方法を用いる。
(2)末梢血中遊離 DNA の癌特異的遺伝子異常の検出
本研究により、末梢血中の遊離 DNA を用いた特定の遺伝子群の癌特異的遺伝子異
常検索が比較的高感度で行なえるようになった。それらの内、活性化 K-ras 遺伝
子変異の検出は既成の方法があり、末梢血中で癌由来 DNA が1万分の1以下という
条件でも検出可能である。また、多くの癌に共通な癌抑制遺伝子 p53 の不活性化
2-7
変異の検索は変異部位が不特定であるため高感度検索が困難であったが、再分画法
を併用した DHPLC 法で、少なくとも癌由来 DNA が 5% 以上であれば検出可能な方法
を開発した。何れの方法もまず PCR で目的の遺伝子領域を増幅する過程が不可欠で
あるため、現時点では PCR の基本特許を使用せざるをえず、企業化、一般化には困
難な部分がある。PCR 基本特許の時限を待つか、そのライセンスを取得した企業の
参画を期待するか、の何れかの可能性を考慮している。
(3)末梢血中遊離 DNA の自動解析
末梢血中遊離 DNA の定量的解析に関しては本研究でロボットシステムを導入し
た半自動化を達成したが、現在検討中の非 PCR 法を用いる系では単一の機器で自動
化が可能であることが示唆されている。末梢血中遊離 DNA における癌特異的遺伝子
異常の自動解析については、K-ras 遺伝子の活性化変異検索を行なう MASA 法の自
動化が最も可能性が高い。再分画法を併用した DHPLC 法による p53 遺伝子の変異検
索は操作が複雑であるため、現時点では自動化に適合しない。
(4)癌自体の DNA の遺伝子異常の検索
本研究では多様な悪性腫瘍の腫瘍特異的な遺伝子異常をおよそ 10 種の遺伝子に
ついて発見したが、遺伝子変異自体の頻度はそれほど高くなく、特定の染色体領域
の欠失(ヘテロ接合性の消失-LOH)や癌遺伝子の増幅、癌抑制遺伝子群のプロモー
ター配列の高度メチル化がより高頻度に見い出された。特に、癌抑制遺伝子プロモ
ーターの高度メチル化は末梢血中遊離 DNA でも検出されうるため、今後この点に焦
点を絞った研究開発と実用化への検討が必要となる。
6. 今後の展開(政策目標達成までのシナリオ)
本研究で得られた末梢血中遊離 DNA の高感度定量法の実用化のためには、特許で
守られた新しい産業技術として産業界で実施される必要がある。PCR に基づく方法
は基本特許が存在するため展開が困難であり、PCR に依らず、しかも全自動化が容
易な方法に変更する必要がある。これらの点は現在検討中であり、近い将来に民間
との共同研究で具体化する計画である。これらが実現すると、癌検診に新しい分野
が登場し、大きな経済効果が期待される。また、癌自体及び末梢血中 DNA の遺伝子
異常検出も確定診断のためには是非必要な項目であるが、現時点では限られた標的
遺伝子についてのみ可能となった。今後、特に高頻度に見られる癌抑制遺伝子プロ
モーターの高度メチル化を末梢血中 DNA を用いて高感度で検出できる方法の開発
が急務であると考える。
7. 中間・事後評価の評価項目・評価基準、評価手法及び実施時期
平成14年度に事後評価を実施する。
2-8
8. 研究開発成果
8.1
事業全体の成果
[平成11年度]初年度の本委託研究においては、末梢血中遊離 DNA の定量法とし
て、ヒトゲノム内に極めて多くのコピー数で散在する反復配列、Alu ファミリーを
代表マーカーとして PCR 増幅し、全体の DNA 量を測定する方法(Intra-Alu-PCR
法)を確立した。まず、増幅 PCR 断片の蛍光標識法について、工学部の分担研究者
と詳細な検討を行なった。数十種の蛍光物質をスクリーニングして PCR 増幅 DNA
断片の標識に最適な試薬としては「サイバーグリーン」が適当であることが判明し
た。また、この蛍光標識 DNA 断片の定量には、当初計画したシングルフォトン光電
子倍増管による蛍光強度測定は操作が複雑で、かつ余りにも高感度で誤差が大きい
ことが判明したため、工学分野の分担者と検討した結果、蛍光標識定量 PCR 装置に
よる定量法に変更した。結果として、この Intra-Alu-PCR 法の測定感度は従来の方
法の約1万倍にものぼり、当初設定した検出限界目標値である 1 pg/ml に近い値
を達成できたことが判った。また、血液中に存在する PCR 増幅反応の阻害因子の効
果を除外して有効な定量を行うボイル法などの方法や、試料中に内部標準として既
知量のプラスミド DNA を混入する新たな補正法も開発した。さらに、造血器腫瘍や
肺癌の患者の病態や治療の経過と末梢血中 DNA の増減を追跡した結果、造血器腫瘍
や肺癌の治癒に連関してその値が次第に減少すること、末梢血幹細胞移植に伴う移
植片対宿主反応病 (GVHD) において有意にその値が上昇すること、顆粒球コロニー
刺激因子 (G-CSF) 等の投与により骨髄におけるリンパ球の動員がかかると急激な
末梢血中 DNA の増加が見られること、等を発見した。しかしながら、予備的な検討
において、ボイル法を用いて血清から直接 Intra-Alu-PCR 法で定量する限り、健常
人と担癌患者とでそれらの血中遊離 DNA 量に有意差がないという予想外の結果が
明らかになった。以上と並行して、主に膵癌患者由来の検体を用い、末梢血中 DNA
の単一遺伝子 (K-ras)の変異を高感度に検出する系も構築することができた。
[平成12年度]前年度にほぼ確立した Intra-Alu-PCR 法による超高感度定量法
を基礎として、より高信頼性で自動化に適した簡便性を備えた改良法も模索してき
た。まず、末梢血中の遊離 DNA の由来に関しては、そのサイズ分布の解析から細胞
のアポトーシスによって生じたものであることがほぼ確実となった。又、前年度の
予備的な研究で得られた、「ボイル法で定量すると健常人と担癌患者とでそれらの
血中遊離 DNA 量に有意差がない」という予想外の結果をどのように解釈するかが大
問題であった。これまで幾つかの研究グループが担癌患者ではその DNA 量が多いと
報告していたからである。この問題は血清や血漿を簡便な方法で部分精製すること
で解決したと考えている。すなわち、血清、血漿を問わず、精製した標品を用いる
と、確かに担癌患者は健常人より3? 8倍程度高濃度の血中 DNA を持つことが明ら
2-9
かになったのである。しかし、ボイル法の簡便さは自動化に有利であることから捨
て難く、実際にボイル法/ Intra-Alu-PCR 法は骨髄または末梢血幹細胞移植を受
けた患者の予後のモニターに極めて有用であることを確認した。さらに、単一コピ
ー遺伝子を標的としたボイル法/PCR 法によって上記のモニタリング法は大きく
発展する可能性が高く、さらに癌患者特異的末梢血 DNA 定量法、或いは癌患者特異
的定性解析法として復活する可能性もある。
目的の第2として掲げた末梢血中 DNA の定性的遺伝子異常の検出は K-ras, p53
遺伝子のエキソン領域を用いて精力的に検討された。前者は MASA 法、後者は新規
に導入した DHPLC 法により一定の成果を得ることができたが、一般健康診断のスク
リーニングに適用するためには未だ多くの課題を抱えている。
第3の課題であった「癌自体の遺伝子異常の解析」はほかの研究課題とも関連し
ていたため大きく進展し、K-ras 遺伝子の第22コドンにおける新しい活性化点突
然変異の発見、癌抑制遺伝子候補、p107 遺伝子のリンパ腫細胞株における遺伝子
内欠失の発見と詳細な解析、別の癌抑制遺伝子候補、ING1 遺伝子の頭頸部癌にお
ける片座位の欠失と残存遺伝子の癌特異的不活性化変異の初めての発見、など何れ
も世界最初の知見として国際誌に報告することができた。又、軟部腫瘍の分子診断
法として、滑膜肉腫の融合遺伝子発現をパラフィン包埋腫瘍組織からの RNA を用い
た特異的な RTーPCR 法によって検出する系を確立したことは、臨床的遺伝子診断の
分野で意義深いと思われる。
[平成13年度]最終年度の本研究では Intra-Alu-PCR 法による末梢血中遊離 DNA
の定量を様々な癌患者及び健常人対照末梢血について実施し、多様な担癌患者を約
85%の感度と特異性で健常人と鑑別することができた。注目すべきことは、これ
らの悪性腫瘍患者が肺癌、大腸癌、肝癌、乳癌、胃癌、膵癌、前立腺癌、膀胱癌、
腎癌、リンパ腫、白血病など極めて多様なものを含んでいることである。即ち、こ
の方法による末梢血診断は広汎な悪性腫瘍に一般的に適用可能であることが示さ
れたことを意味している。更に、健常人の血清および血漿において、それらの遊離
DNA 濃度が女性よりも男性で有意に高いという世界でも初めての発見を得た。これ
は Intra-Alu-PCR 法がこれまでにない超高感度を示すために、初めて得られた知見
である。以上の点から、末梢血中遊離 DNA 量を測定することにより、担癌の可能性
が高い被験者をある程度特定できるシステムを構築したが、気胸、肝硬変、等の炎
症性疾患患者においても高い血中遊離 DNA 濃度を示す場合が見られたため、これ単
独では担癌の確定診断には不足することも明らかになった。この点を補完する情報
として血中遊離 DNA における癌特異的遺伝子異常の検出がある。このための末梢血
中の癌由来の遺伝子異常を検出する研究では、多くの癌の発症に共通に関連する
K-ras , p53 遺伝子を標的としてそれらの変異を高感度で検索する方法を開発した。
即ち、K-ras 遺伝子に関してはその活性化変異特異的増幅法である MASA 法を、p53
遺伝子変異に関しては新しく導入した再分画装置を併用した DHPLC 法を用いるこ
とにより、従来よりも高感度で変異を検出できる系を構築した。更に、工学部の分
2-10
担研究者によるシステム工学的検討と助言を得て、末梢血検体から DNA を分離精製
する工程、DNA から Alu 配列を増幅する反応液作製、PCR 増幅断片の精製とシーケ
ンシング反応の前処理等の各工程をロボットの導入により自動化し、1日当たり最
大 180 検体を解析できるシステムを完成させた。これらの基礎となる癌自体の遺伝
子異常の研究では、遺伝子領域の欠失や変異、遺伝子発現の減少等を9群の腫瘍(肺
癌、骨髄性白血病、脳腫瘍、頭頸部癌、食道癌、大腸癌、腎癌、骨軟部腫瘍、胃癌)
について見い出し、計9種の癌抑制遺伝子候補を特定した。
8.2
要素研究開発項目毎の成果
8.2.1
成果概要一覧
①末梢血中遊離 DNA の超高感度定量
・ Intra-Alu-PCR 法の基本条件の検討と各腫定量技術の比較を行ない、蛍光標識
定量 PCR 装置を用いて 10 pg/ml までの高感度検出法を達成した。
・ボイル法による直接定量法を開発したが、担癌患者と健常人との有意差が
見られなかったため、部分精製後に定量する系に変更し、有意差を検出で
きた。
・ 広汎な担癌患者139名の末梢血を解析して健常人との間に極めて高い有
意差で遊離 DNA 量の差違を見出し、約85%の患者を捕捉できること
を示した。
②末梢血中遊離 DNA の癌特異的遺伝子異常の検出
・ 活性化変異を持つ K-ras, N-ras 遺伝子の高感度検出技術を確立した。
・ P53 癌抑制遺伝子の不活性化変異を広汎に検索する系を開発し、再分画 DHPLC
法で5%までの変異遺伝子を検出する系を構築した。
③末梢血中遊離 DNA の自動解析
・ 定量 PCR 装置が全自動であり、定量技術自体の自動化は完成済みである。
・ 変異特異的 PCR 増幅は装置として全自動であるが、制限酵素処理段階が手動で
あるため、全自動可能な MASA 法に変更した。
・ 全自動ロボットシステムを導入し、血清からの DNA 抽出、PCR 反応液作製、分注
等の操作を自動化して1日当たり最大 180 検体を処理する系を構築した。
④癌自体の DNA の遺伝子異常の検索
・K-ras 遺伝子新規活性化変異の発見
・ P107 遺伝子内部欠失変異の発見
・ 癌抑制遺伝子 ING1 の癌特異的遺伝子欠失と変異を頭頸部癌で発見
・ 癌抑制遺伝子候補 REIC のプロモーターメチル化と発現低下を発見
・ 癌抑制遺伝子 ING3 の高頻度欠失と発現低下を頭頸部癌で発見
2-11
8.2.2 総表
別掲。
8.2.3 要素研究毎の成果
①末梢血中遊離 DNA の超高感度定量
(1)膵癌患者における予備的実験:原発癌組織と末梢血の対検体が得られた
19 名の膵癌患者につき、通常の方法で末梢血から DNA を抽出し、紫外線吸
収法で定量したところ、健常人6名の検体の約5倍の値を示した(平均値)。
(2)Intra-Alu-PCR 法の予備実験:精製したヒト高分子 DNA を用いて Alu 配列
内部に設定したプライマーから 222 塩基対の PCR 産物を増幅する系を構築
して様々な予備的検討を行ない、最適増幅条件を確定した。
(3)PCR 産物の定量方法の検討:当初の計画では PCR 反応を蛍光標識下で行な
い、それらの産物を高感度蛍光検出装置を用いて測定する予定であった。
工学分野の研究分担者が開発していたシングルフォトン光電子倍増管は測
定自体は全自動で簡便であるが、複雑な試料の前処理が必要で、かつ余り
にも高感度であるため、バックグラウンドからの誤差が大きいことが判明
した。このような状況から工学分野の分担者と検討した結果、定量法を蛍
光標識定量 PCR 装置による方法に変更した。後述の様に、結果として、こ
の Intra-Alu-PCR 法の測定感度は従来の方法の約1万倍にものぼり、当初
設定した検出限界目標値に近い 10 pg/ml を達成できたことが判った。
(4)健常人の末梢血を用いて多くの予備的検討を行なった。まず、4 ? ? ? 採
血管を用いて、血清と血漿とを比較したところ、血清の方が高い値を示し
た。血清中の DNA を精製せずに直接定量できれば自動化等に有利なため、
直接 PCR 法の条件を検討した。血清中には PCR 阻害因子が含まれているた
め、6 通りの除去操作を試み、99℃で 5 分間加熱後遠心するだけのボイル
法が最も優れていることを見い出した。又、血液検体からボイル法で試料
を調製する際の回収率が問題となるが、血液に既知量のプラスミド DNA を
混入し、プラスミド DNA に特異的なプライマーを用いた PCR によってその
回収率を算定する新たな標準化法を考案した。採用した方法から求めた回
収率は 45±2%と極めて再現性のある結果であった。ボイル法による検体を
Intra-Alu-PCR による蛍光定量 PCR 装置で定量し、その再現性、感度、測
定の直線性、他の非 PCR 定量法との一致(信頼性)、被験者の状態による変
化(食事や運動の影響、日周期、カゼの影響、性差、年齢差)などを詳細
に検討したところ、何れも大きな問題とならないことが確認された。特に、
定量の再現性は誤差範囲約 2% 以内であり、非常に信頼性が高いこと、最
2-12
低検出限界が絶対量で 8 fg (8 x 10-15 g), 血清中の値で 8 pg/ml と極め
て高感度であることが証明された。この感度は従来の紫外線吸収法の約1
万倍に達するものである。当初設定した目標値である 1 pg/ml には及ばな
いが、PCR での自然バックグラウンドが約 5 pg/ml であるため、ここで達
成された値は事実上理論的な最高感度とみなすことができる。また信頼で
きる検出範囲(直線性)は 10 pg/ml? 1 µg/ml と約 5 桁に及ぶことも確認
された。更に、PCR を用いない方法の中で最高の感度を示すピコグリーン
染色法と Intra-Alu-PCR 法とを比較したところ、一定濃度以上では両者は
良く一致した測定値を示したので、客観的な信頼性も高いと結論された。
因みに、ピコグリーン法は Intra-Alu-PCR 法の約百分の一の検出感度であ
った。ただ血清の調製法によって測定値が大きく変動することが観察され
たため、調製法が一定になるように定めた。なお、この検討に際し、標準
となる DNA 標品としては、精製したヒト癌細胞株由来高分子 DNA をヒト
Alu 配列を切断しない 4 塩基認識制限酵素 Rsa I で消化し、再精製して厳
密に定量したものを終始用いることとした。この標準 DNA のサイズ分布は
末梢血中の遊離 DNA のサイズ分布と近似したものである。
(5)Intra-Alu-PCR(ボイル法)による担癌患者血中遊離 DNA 量の経時的変化
のモニタリング:造血器腫瘍患者4例と外科手術不適応の肺癌患者7例を
対象として、入院中の治療経過を追って血中遊離 DNA 量を Intra-Alu-PCR
(ボイル法)によって測定した。加療前に血中 DNA 量が高く、化学療法に
より改善が見られた患者ではその値が次第に減少することが明らかになっ
た。一方、化学療法に耐性を示した患者ではこの減少が見られずむしろ上
昇する傾向を示し、経過観察中に死亡する例が多かった。以上の様に、血
中 DNA の値は担癌患者の病態経過と密接に関連することが明白となった。
さらに、これらの患者群のうち、末梢血幹細胞移植を受けた例では移植片
対宿主病(GVHD)に際して血中 DNA の増大を認めた。また、肺癌患者の治
療としてよく行なわれる顆粒球コロニー刺激因子 (G-CSF) 等の投与によ
り骨髄におけるリンパ球の動員がかかると急激な末梢血中 DNA の増加が見
られることも判明した。何れの場合も、末梢血中 DNA 量と白血球数との間
に相関が示唆された。
(6)Intra-Alu-PCR(ボイル法)による健常人と担癌患者検体の比較:簡便な
ボイル法によって、約 100 名の健常人と 130 名の担癌患者(手術前)の血
清から遊離 DNA 濃度を測定し、比較したところ、予想に反して両者の間に
有意差を見い出せなかった。この原因を追究したところ、血清からキアゲ
ンカラム法で DNA を精製すると、健常人の値が大幅に減少し、平均して約
8 倍の値を示す担癌患者との明確な有意差が得られた(P = 0.0000013)。
諸外国の報告例でもすべて何らかの精製操作を経た検体を測定しており、
それらの結果と合致する結果となった。健常人の血清にはキアゲンカラム
に吸着しない微小な DNA 断片が多数含まれていると
考えられ、これは
2-13
生理的アポトーシスによる極めてサイズの小さい DNA 断片(約 180 塩基対
以下)であることを示唆する。健常人と担癌患者の DNA サイズの分散の差
は、おそらく各々の DNA の由来の違いを反映しているものと考えられ、重
要な知見のひとつと評価される。この事実から、これ以降はカラム精製を
経た DNA 標品について定量化するように統一した。
(7)末梢血中遊離 DNA の起源:上記の仮説を検証するために、血中 DNA のサ
イズ分布を検討した。まず、キアゲン精製 DNA を酵素的に 32 P で 5’-末端標
識し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動/オートラジオグラフィーでその
サイズを測定したところ、大部分は約 180 塩基対のアポトーシス断片長に
相当するものであった。キアゲン精製以前のサンプルは更に圧倒的大部分
がこの画分に属するものと考えられる。次に、精製した血中 DNA をアガロ
ース電気泳動法で分画し、サイズ毎にゲルを切り分けて DNA を回収後、
Intra-Alu-PCR 法で定量したところ、健常人、担癌患者由来共に、およそ
50-80% が 1.8 kbp(1,800 塩基対)以下の大きさであった。これらのこと
から、末梢血中遊離 DNA の起源は主に細胞のアポトーシスによるものであ
ることが示唆された。
(8)キアゲンカラム精製標品を用いた健常人末梢血遊離 DNA の定量:第6)項
で述べた様に、部分精製した標品を用いると血中 DNA 量が担癌患者におい
て有意に高いという結果が得られたので、本格的に多数の健常人及び担癌
患者検体を用いて実証的検討を行なった。まず、計 76 名の健常人検体(血
清)からキアゲン精製した DNA を定量したところ、平均値 14.0 ng/ml,中
央値 12.3 ng/ml が得られた。年齢や生活習慣、体型 (BMI)等との相関は
見られなかったが、若年層で若干高い値を示す傾向があった。興味深いこ
とに、何れの年齢層でも血中 DNA の値は男性のほうが女性より有意に高く
(P = 0.02 /血清;P = 0.0009/血漿)、男性における基礎的細胞代謝の高
さが示唆された。この発見はこれまで世界中の研究報告になかったもので、
本法の極めて高い検出/定量感度を実証するものと考えられる。
(9)キアゲンカラム精製標品を用いた末梢血遊離 DNA の担癌患者における
増加の実証:次に、広汎な悪性腫瘍患者計 139 名の血清についてキアゲン
精製後 Intra-Alu-PCR によって定量したところ、平均値 66.7 ng/ml. 中央
値 54.5 ng/ml が得られた。全患者のうち約 20% は 100 ng/ml 以上の値を
示し、最高値は肺癌患者の 360 ng/ml であった。これらの値を健常人と比
較すると、悪性腫瘍患者は健常人の平均約 5 倍の血中 DNA を含むことにな
り、その有意差は P = 5.77 x 10 ? 22 という統計学的に極めて有意な値
となる。更に、測定値に 25 ng/ml という閾値を設定すると、血中 DNA 濃
度がこの値以上であったのは健常人 76 名中わずか 7 名
(9.2%) に対し、
悪性腫瘍患者では 139 名中 123 名 (88.5%) が該当した。即ち、このシステ
ムは、約 9% の偽陽性危険率でおよそ 90% の感度と特異性で担癌患者を捕
捉できることを示している。この成績は既知の如何なる腫瘍マーカーも達
2-14
成できなかったレベルの有用性を示している。更にここで解析した悪性腫
瘍患者は肺癌(非小細胞性、小細胞性)? 大腸癌、乳癌、胃癌、膵癌、肝
癌、前立腺癌、腎癌、頭頸部癌、膀胱癌、非ホジキンリンパ腫、白血病、
等多様なものを網羅していることは注目に値し、この解析が多様な悪性腫
瘍全般に適用可能であることを示唆する。なお、解析した結果では、血中
DNA 濃度は癌の種類や大きさ(進行度)、分化度、組織型等と一義的な相関
は見られなかった。このことは、癌由来の DNA がアポトーシスによるもの
であるとすれば、癌の進行に拘わらず一定の量の細胞がアポトーシスを起
こしていることを示唆する。但し、肺癌の場合は、手術不適応の進行癌(第
II, III 期)患者は手術適応例の術前待機患者(第 I, II 期)よりも有意
に血中 DNA 濃度が高いという結果が得られ、抗癌剤の影響でなければ進行
度との関係もありうると考えられる。又、これらとは別に、62 名の肝癌患
者と 37 名の慢性肝炎患者の血漿を用いて遊離 DNA 濃度を測定した結果、ど
ちらも健常人の平均値の 1.6 倍以上の値を示したが、肝癌患者は慢性肝炎
患者の平均2倍の値であり、統計的に有意(P = 0.00007)の差異を示した。
上記の結果から本法の臨床応用は期待できるものと考えられたが、並行し
て行なった非腫瘍性疾患、例えば気胸(2 名)、甲状腺機能昂進症(1 名)、
肝硬変(13 名)の患者群でも腫瘍患者平均の 6 10 割程度の血中 DNA 濃度
を示したため、血中遊離 DNA 濃度の上昇のみで担癌を診断するには不充分
であることも判明した。それにも拘わらず、本法は悪性腫瘍を含む重篤な
疾病の患者群を自覚症状の出る前に捕捉するためには充分有用であること
が期待される。即ち、癌検診の一次スクリーニング法として、危険率の高
い個人を抽出する目的に応用することが可能であると考えられる。より信
頼度の高い担癌患者の診断には、次項で述べる癌特異的遺伝子異常の検出
を併用する必要がある。
② 梢血中遊離 DNA の癌特異的遺伝子異常の検出
(1)活性化 K-ras 変異遺伝子の検出:前項1)で述べた膵癌患者における予備
実験で、19 名の膵癌患者中 13 名の原発癌組織で K-ras 第 12 コドンに活性
化変異が見い出された(73%)。この13名の患者群で末梢血検体からの DNA
でも同じ変異が検出されたのは 7 名 (54%)であった。このように、膵癌に
関しては活性化 K-ras 遺伝子変異が末梢血遊離 DNA でも約半数の割で検出
されることが判明し、少なからず有用であることが示唆された。この解析
は変異領域に制限酵素認識配列を附加した PCR 産物を正常型特異的に分解
する、いわゆる変異特異的 PCR 法によったが、長時間かかる煩雑な操作が
あるため、以後の解析には変異した塩基に特異的な複数のプライマーを用
いる MASA 法を採用することにした。
活性化 K-ras 遺伝子は膵癌の約 80%, 大腸癌の約 40%, 肺癌の約 30%
2-15
に見られ、活性化 N-ras 遺伝子が骨髄球系腫瘍の約 30%に見られるため、
これらの腫瘍患者に限定して K-ras, N-ras 遺伝子の活性化変異を末梢血
DNA から検索した。結果は原発腫瘍にこの様な変異をもつ患者のおよそ半
数において、その末梢血 DNA から同じ変異が検出された。健常人や非腫瘍
性疾患の患者からはこの様な活性化変異は全く検出されなかった。以上の
様に、活性化 ras 遺伝子の検出は必ずしも全ての陽性患者を捕捉すること
はできないが、陽性を示した患者は殆どがその変異をもつ腫瘍を発症して
いると結論することができる。従って活性化 ras 遺伝子の検出は、感度は
優れているとは言い難いが、特に早期発見の困難な膵癌をはじめ大腸癌や
骨髄系腫瘍の確定診断に直結する信頼度の高い遺伝子診断が可能であると
考えられる。末梢血中 DNA 量が 50 ng/ml の閾値を用いると、偽陽性の危険
率 0% で担癌患者の約 60% を捕捉でき、更に K-ras 活性化変異が検出され
ると、担癌の可能性は 90% 以上に達すると考えられる。
(2)p53 遺伝子変異の検出:ras 遺伝子群と異なり、広汎な悪性腫瘍の発症に関
与する癌抑制遺伝子 p53 の不活性化変異は全ての腫瘍の約 70% に見られる
という報告があり、癌早期発見遺伝子診断の標的遺伝子としては現在最も
有力なものである。しかしながら、本遺伝子の変異の大部分は 10 個のエク
ソンのうち第 4? 第 9 エクソンに広く分布しているため、ras 遺伝子で可能
であったような変異特異的検出法が適用できないという難点があった。そ
こで、本研究では多様な種類の変異を各エクソン毎にではあるが、一般的
に検出するシステムを検討した。変異検出によく用いられる PCR-SSCP
(PCR-単鎖 DNA 構造多型) 法は変異遺伝子が正常型遺伝子を含む全体の 20%
程度以下の場合は殆ど検出できないし、全てのタイプの変異を必ずしも検
出可能であるとは限らない。従って、変異遺伝子の割合が 10% 以下の場合
でも解析可能な方法を開発するための検討を行なった。この要請に適合で
きる可能性のある方法は変異型と正常型とのヘテロ二本鎖 DNA 断片を検出
する DHPLC 法(WAVE システム)であった。
P53 遺伝子の既知の変異遺伝子をヒト胃癌細胞株から同定し、それと正
常遺伝子の対応するエクソン PCR 断片を適宜な割合で混合して変異遺伝子
がどの程度の割合まで検出可能であるかという再構成実験を DHPLC 装置を
用いて行なった。第 4 エクソンの点突然変異を例として行なった結果、変
異遺伝子の割合が 20% 以上であればほぼ確実に検出可能であることが実証
されたが、それ以下の場合は困難であった。そこで、初回の解析結果を基
にしてヘテロ二本鎖 DNA のピークをフラクションコレクター(分画装置)
で分取し、それを再度 PCR 増幅して解析を繰り返す、「再分画 DHPLC 法」
を試みた。この結果は予想した成果をもたらし、変異遺伝子の割合が約 5%
の場合も変異を検出することができた。担癌患者では末梢血中の遊離 DNA
の約 10
70% は癌細胞に由来するという報告があり、我々の解析結果も
それに近いデータであったため、10% の癌由来 DNA があれば変異 p53 遺伝
2-16
子の割合は約 5% となることが期待される。このモデル実験の方法はまだ
実際の担癌患者に応用を試みていないが、原発癌で p53 遺伝子変異が確認
された担癌患者の術前末梢血が入手できれば、実証可能であると考えられ
る。この系は将来非常に重要なものとなることが予想されるため、今後慎
重に例数を増やして解析を進める必要がある。
③ 末梢血中遊離 DNA の自動解析
(1)定量的解析の自動化:本研究の提案時から自動化を目指す計画があり、研
究計画第3年目から実際の検討を開始した。末梢血中 DNA の定量解析で最
も労力を要する段階は血清からキアゲンカラム法で DNA を精製するステッ
プである。本研究ではその他の操作も自動化の対象として検討するために、
単なる DNA 自動抽出装置ではなく、汎用のロボットシステムを自動化ライ
ンの中に組み込むシステム工学を工学系研究分担者と検討した。まず、血
清から DNA を自動的に抽出するステップを 96 穴マイクロプレートモジュー
ルで試みた。抽出の各段階で吸引ろ過、或いは遠心法による相分離過程を
検討したが、遠心法がより簡便であった。初期には回収率が手動の場合よ
りかなり低い結果が出たが、クリアランス及び撹拌条件を再設定すること
で解決でき、手動と自動法による DNA 回収率は最終的には±20% の範囲で
ほぼ一致させることができた。96 名の被験者血清から、こうして得られた
DNA 標品を用いて Intra-Alu-PCR の反応混液を全自動で作製し、全自動定
量 PCR 装置によって最終的な DNA 量を測定した結果、手動による結果と±
40% の範囲でほぼ同様の数値を得ることができた。ここまでの全所要時間
は 90 検体分で約 6 時間であった。DNA 抽出操作は 192 検体分でも同時処理
可能なので、最終的な定量までの1日最大処理数はおよそ 180 検体/8 時
間ということになる(12 検体の既知 DNA 濃度標準サンプルを含む)。最
初の血清検体の分注、撹拌、遠心操作、PCR プレミックス作製、などが手
動操作を含むため全自動ではないが、定量解析の半自動化システムはほぼ
構築できたといえる。
(2)定性的解析の自動化:MASA 法による ras 遺伝子群の変異検出は通常の
PCR とほぼ同じ操作であるため、ロボットによる自動反応混液作製が可能
である。PCR 産物の解析には定量 PCR 装置またはキャピラリーDNA 断片
解析装置(何れも全自動)が使用可能である。
再分画 DHPLC 法による p53 遺伝子エクソン4? 9の変異検索は DNA
の精製、PCR 反応混液作製と増幅操作、DHPLC 解析等のステップは自動
化できるが、それ以外の段階、特にピーク分画操作などは現時点では自動
化困難である。
④ 癌自体の DNA の遺伝子異常の検索
2-17
癌自体の遺伝子異常の解析は大きく進展し、様々な悪性腫瘍における新規及
び既知遺伝子の腫瘍特異的な変化を発見することができた。これらの多くは世
界でも初めての発見であり、平成11年度以来約 14 編の論文として発表して
いる。
(1)K-ras 遺伝子の第22コドンにおける新しい活性化点突然変異の発見:
ヒト原発結腸癌よりこれまでに知られていなかった K-ras 遺伝子第 22
コドンにおける活性化変異を発見し、この変異遺伝子が実際に細胞を癌
化させる活性を示すことを実証した。これまでに知られていた ras 遺伝
子群のヒト癌における活性化変異は第 12, 61 番目のコドンにほぼ限定さ
れていたが、本研究によりその他の場合もあることが実証された。(発表
論文3)
(2)癌抑制遺伝子候補、p107 遺伝子のリンパ腫細胞株における遺伝子内欠 失
の発見と構造解析:p107 遺伝子は網膜芽細胞腫主因遺伝子 RB の類縁遺伝
子であるが、RB と異なりこれまでヒト腫瘍における遺伝子異常が全く知
られていなかった。本研究でヒト B 細胞リンパ腫の細胞株と原発リンパ
腫検体から本遺伝子の構造異常が初めて発見された。更に、本遺伝子が
22 個のエクソンから成ること、観察された遺伝子異常は遺伝子内の 5 個
のエクソンを含む 15 kbp の領域が Alu 配列を介した異常組み換えにより
欠損した結果生じたことを明らかにした。(発表論文4)
(3)癌抑制遺伝子、ING1 の頭頸部癌における欠失と癌特異的不活性化変異 の
初めての発見:頭頸部癌において染色体 13q33 領域の高頻度な欠失(ヘ
テロ接合性の消失—LOH)とそこに位置する ING1 癌抑制遺伝子候補の残
存対立遺伝子に ING1 蛋白質の活性を喪失させるような癌特異的変異を発
見した。これはこれまで癌抑制遺伝子候補であったものの癌特異的変異
が知られていなかった ING1 遺伝子をまさに癌抑制遺伝子であるとして決
定づける貴重な発見となった。(発表論文5)
(4)転写因子 E2F4 遺伝子の活性化変異:平成 10 年度に我々は遺伝的不安 定
性を示す大腸癌や胃癌の約 60% に細胞周期制御に関与する転写因子 E2F4
遺伝子内のコーデイングマイクロサテライト( (CAG)13 反復配列)の癌
特異的変異((CAG)11 12)を発見していた。この変異が特に消化器多重
癌などの遺伝的不安定性を示す癌において非常な高頻度で見い出される
こと、変異 E2F4 は実際に癌遺伝子としての性質を示し、転写活性化能が
大幅に昂進すること等を明らかにした。(発表論文 6, 10)
(5)ヒト肺癌抑制新規遺伝子候補、HD-PTP の発見:多くの固形癌で高頻度の
欠失を示す染色体 3p21 の領域に新しいチロシン脱リン酸化酵素遺伝子で
ある HD-PTP を発見した。この領域は肺癌をはじめ多くの癌で高頻度欠失
を示し、有力な癌抑制遺伝子が存在すると思われていた。本遺伝子の産
物は癌遺伝子産物の典型であるチロシンキナーゼ(チロシンリン酸化酵
2-18
素)の作用を逆行させる反応を促し、アポトーシスの制御に関与するな
ど癌抑制遺伝子としての有力な候補であることが判明した。(発表論文
7)
(6)骨軟部腫瘍の新しい遺伝子診断法の確立:骨軟部腫瘍、特に病理診断の
困難な滑膜肉腫の診断に、固定標本からの RNA を RT-PCR により解析し、
特異的な SYT-SSX 融合遺伝子などを検出する系を構築して新しい遺伝子
診断法を確立した。(発表論文8)
(7)精巣及び腫瘍で高発現する新しい WD 蛋白質遺伝子の発見:癌遺伝子 raf
の研究から派生した研究で、蛋白質間の相互作用に関わる WD40 リピート
構造を持ち、減数分裂期の精細胞、リンパ球の成熟組織である胸腺や脾
臓において高発現する新規な遺伝子を発見した。DNA の組み換えに関与す
ることが強く示唆されるが、この遺伝子は様々な癌細胞株でも高発現し
ているため、癌との関係も示唆された。(発表論文9)
(8)早期大腸癌における遺伝子不安定性と遺伝子欠失の研究:粘膜下浸潤早
期大腸癌 110 例を対象として、染色体の欠失領域やマイクロサテライト
不安定性を詳細に検討した。早期大腸癌では低頻度遺伝子不安定性を示
す例が進行大腸癌よりも有意に多いことが初めて明らかになった。これ
は初期の大腸癌から進行癌に進展する際の経路が複数存在し、癌組織中
の遺伝的に安定な限られたクローンから進行癌が生じることを示したも
ので、国際的にも注目すべき知見である。更に、ある特定の染色体領域
の欠失 (LOH) が患者の予後に密接に関連することを明らかにし、大腸癌
患者の術後ケアに重要な情報をもたらした。(発表論文11)
(9)細胞の不死化や癌抑制に関与する REIC 遺伝子の癌特異的発現異常:REIC
(DKK3) 遺伝子は不死化した細胞株や癌細胞株でその発現が著しく減少す
る遺伝子として発見された。本研究で様々な癌組織における発現を検討
した結果、肺癌や胃癌の原発癌の約半数でも発現の減少が実証された。
更に、この発現の低下は遺伝子の発現制御に関わるプロモーター領域の
高度メチル化によることを実証した。(発表論文12)
(10)染色体 7q31 に位置する癌抑制遺伝子候補 ING3 の研究:頭頸部癌をはじ
め多くの固形癌で高頻度の欠失を示す 7q31 領域に癌抑制遺伝子 ING1 と
極めて類似した ING3 遺伝子を発見し、そのゲノム構造を明らかにした。
更に、頭頸部癌の約 60% において、この領域に欠失を持つことを実証す
ると共に、本遺伝子の大幅な発現低下が見られることを発見し、ING3 が
有力な癌抑制遺伝子候補であることを示した。(発表論文 13)この場合も
プロモーターのメチル化が重要な因子となっていることが予想され、癌
特異的遺伝子変化の診断標的として応用可能であることが期待される。
(11)脳腫瘍(グリオーマ)における染色体 10q の欠失領域の研究と予後:グリ
オーマでは 10q 領域に高頻度の欠失が観察されるが、この領域に想定さ
れている 3 種の癌抑制遺伝子の欠失と脳腫瘍患者の病態や予後との関連
2-19
を詳細に解析したところ、特に PTEN 領域の欠失が最も予後との相関が高
かった。(発表論文14)
以上の他にも遺伝子領域の欠失や変異、遺伝子発現の減少等を9群の腫瘍(肺
癌、骨髄性白血病、脳腫瘍、頭頸部癌、食道癌、大腸癌、腎癌、骨軟部腫瘍、胃
癌)について研究を推進しつつあり、これまでに計 26 箇所の染色体高度欠失領
域を特定することができ、更に9種の癌抑制遺伝子候補を特定している。
(参考図)本研究から判明した担癌患者実用診断のための必要充分定量範囲
DNA 濃度/ ml
1 µg
担癌患者 ( > 85 % )
100 ng
25 ng
閾値
10 ng
健常人 ( > 90 % )
実用診断のための
定量範囲
1 ng
100 pg
Intra-Alu-PCR による
定量範囲
10 pg
大
小
担 癌 確 率
9. 情勢変化への対応
国内外の技術の動向調査を継続的に行なうと共に、NEDO 健康福祉技術開発室技
術審議委員会において医学系及び工学系の委員とのディスカッションを行いつつ
研究開発を進めてきたが、客観情勢に大きな変化はなかった。
10. 今後の事業の方向性
本事業の成果に基づき、民間企業との共同開発によるがんの遺伝子診断システム
2-20
の実用化を検討するとともに、さらに基盤的研究を進めて各種のがんの診断への適
用を検討する。
11. 添付資料
11.1 基本計画
「血中遊離DNAによる癌の高感度遺伝子診断システムに関する基盤研究」
基本計画
1.研究開発期間:平成11年度から3年間
2.研究開発の目的と内容
悪性腫瘍は、我が国の死亡率第一位を占めているが、早期発見・早期治療に
より治癒を実現できる可能性が高くなってきており、それによる患者のQOL
向上や医療費の低減が期待されている。早期発見のためには、初期の癌が的確
に診断できる方法の確立が極めて重要な課題である。従来からX線による画像
診断や血液中の腫瘍マーカー測定による診断が実施されているが、多様、多種
類の悪性腫瘍を網羅的に診断することはできず、また初期の癌を見逃すことも
多い。初期の癌から診断できる高感度検出技術の開発が望まれている。
2−1.目標
末梢血等の遊離DNAを高感度に検出・定量でき、さらにその遺伝子異常を
総合的に検出できる技術を開発し、癌の早期診断を実現するための基盤技術を
確立する。
2−2.内容
(1)遊離DNAの高感度検出技術の研究
初期の癌においても検出可能な末梢血遊離DNAの高感度検出・定量技術を
研究する。
(2)遺伝子異常の高感度検出技術の研究
微量な末梢血等の遊離DNAを増幅し、癌に由来する様々な遺伝子異常を総
合的に検出可能な技術を研究する。
(3)癌由来の遺伝子異常の研究
初期癌の診断に資するため、癌自体の遺伝子異常を研究する。
2−3.研究開発の具体的内容
(1)遊離DNAの高感度検出技術の研究
遊離DNAの高感度検出・定量を実現するために、増幅法、標識法、検出法
等を研究する。
目標感度:血中遊離DNA濃度 1 pg/ml 以下が検出可能なこと。
(2)遺伝子異常の高感度検出技術の研究
微量の遊離DNAを増幅する等の方法により、癌特異的遺伝子異常を高感度
2-21
に検出する方法を研究する。
目標感度:DNA濃度 1ng/ml の血漿 10 ml 以下で遺伝子異常が検出可能な
こと。
(3)癌由来の遺伝子異常の研究
癌組織自体を用いて既知の遺伝子異常や新規な癌由来の遺伝子異常を検索し、
癌の診断に利用できる標的遺伝子を見いだす。
3.研究開発体制
NEDOが選定する大学、企業等に委託して実施する。なお、医学・工学が
連携した研究開発体制を構築する。
4.4. 成果状況一覧
(1)研究項目別論文、特許、報道の件数
要素技術検討
血中 DNA 定量・定性的解
析技術
要素技術検討
癌自体の遺伝子異常の解
析技術及び成果
トータルシステム
学術論文発表数
0
14
0
口頭発表数
5
30
3
特許出願件数
0
0
0
新聞報道数
2
2
2
(2)年度別論文、特許、報道の件数
平成11年
平成12年
平成13年
平成14年
学術論文発表数
1
7
3
3
口頭発表数
12
7
11
5
特許出願件数
0
0
0
0
新聞報道数
1
0
1
2
(3) 発表論文リスト
1.
Tanino, M., Matsuo, M., Uenaka, A., Tsukuda, K., Ouchida, M., Nakayama,
E. and Shimizu, K.: Transforming Activity of the RL-akt Gene, a c-akt
Gene Activated by Long Terminal Repeat Insertion in Murine Leukemia RL
♂1 Cells. Mol. Carcinogenesis, 26, 286-297, 1999.
2.
渡辺和英、谷口律子、川上英治、荒木博陽、五味田裕、清水憲二:
CYP2C 遺伝子型判定における制限酵素消化の陽性対照の設計
2-22
TMD 研究、17 (1), 17-23, 2000.
3.
Tsukuda, K., Tanino, M., Shimizu, N. and Shimizu, K.: A novel activating
mutation of the K-ras gene in human primary colon adenocarcinoma.
Biochem. Biophys. Res. Commun., 278 (3):653-658, 2000
4.
Ichimura, K., Hanafusa, H., Takimoto, H., Akagi, T. and Shimizu, K.:
Structure of the human
retinoblastoma-related p107 gene and its
intragenic deletion in a B-cell lymphoma cell line. Gene, 251, 37-43,
2000.
5. Gunduz, M., Ouchida, M., Fukushima, K., Hanafusa, H., Etani, T., Nishioka,
S., Nishizaki, K. and Shimizu, K.: Genomic Structure of the Human
ING1 Gene and Tumor- specific Mutations Detected in Head and Neck
Squamous Cell Carcinomas.
Cancer Res., 60 , 3143-3146, 2000.
6.
Matsubara N, Yoshitaka T, Matsuno T, Ikeda M, Isozaki H, Tanaka N, and
Shimizu, K. : Multiple tumors and a novel E2F-4 mutation. a case report.
Digestion, 62 (2-3): 213-216. 2000.
7.
Toyooka, S., Ouchida, M., Jitsumori, Y., Tsukuda, K., Sakai, A., Nakamura,
A., Shimizu, N. and Shimizu, K.: HD-PTP: A Novel Protein Tyrosine
Phosphatase Gene on Human Chromosome 3p21.3.
Biochem. Biophys. Res. Commun., 278 , 671-678, 2000.
8.
Naito, N., Kawai, A., Ouchida, M., Dan'ura, T., Morimoto, Y., Ozaki, T.,
Shimizu, K, and Hajime Inoue.: A Reverse Transcriptase-Polymerase
Chain Reaction Assay in the Diagnosis of Soft Tissue Sarcomas.
Cancer, 89 (8), 1992-1998, 2000.
9.
Ito, S., Sakai, A., Nomura, T., Miki, Y., Ouchida, M., Sasaki, J. and Shimizu,
K.: A Novel WD40 Repeat Protein, WDC146, Highly Expressed during
Spermatogenesis in a Stage-specific Manner.
Biochem. Biophys. Res. Commun., 280 , 656-663, 2001.
10. Takashima, H., Matsumoto, Y., Matsubara, N., Shirakawa, Y., Kawashima,
R., Tanino, M., Ito, S., Isozaki, H., Ouchida, M., Meltzer, S. J., Tanaka, N.
and Shimizu, K.:Effect of naturally occurring E2F-4 alterations on
transcriptional activation and proliferation in transfected cells.
2-23
Lab. Investig., 81 , 1565-1573,
2001.
11. Kambara, T., Matsubara, N., Nakagawa, H., Nagasaka, T., Notohara, K.,
Yoshino, T., Isozaki, H., Sharp, G., Jass, J., Shimizu, K. and Tanaka, N.:
High frequency of low level microsatellite instability in early colorectal
cancer with invasion limited to submucosa.
Cancer Res., 61 , 7743-7746, 2001.
12. Kobayashi, K., Ouchida, M., Tsuji , T., Hanafusa, H., Miyazaki , M., Namba,
M., Shimizu, N. and Shimizu, K.: Reduced expression of the REIC/Dkk-3
gene by promoter-hypermethylation in human tumor cells.
Gene, 282 , 151-158, 2002.
13. Gunduz, M., Ouchida, M., Fukushima, K., Ito, S., Jitsumori, Y., Nakashima,
Y., Nagai, N., Nishizaki, K. and Shimizu, K.: Allelic loss and reduced
expression of the ING3, a candidate tumor suppressor gene at 7q31, in
human head and neck cancers.
Oncogene, (in press)
14. Terada, K., Tamiya, T., Daido, S., Kambara, H., Tanaka, H., Ono, Y.,
Matsumoto,K., Ito, S., Ouchida, M., Ohmoto, T. and Shimizu, K.:
Prognostic value of loss of
heterozygosity around three candidate
tumor suppressor genes on chromosome
10q in astrocytomas. J.
Neuro-Oncol., (in press)
(4)口頭発表リスト
国際学会
1.
2.
3.
Matsubara, N., Nasu, K., Takashima,H., Kawashima, T., Tanaka, N.
and Shimizu, K.: Role of E2F-4 mutations in chemosensitivity. The
90th Annual Meeting of the American Association for Cancer
Research. Philadelphia, April, 1999.
Moriyama, H., Matsubara, N., Matsuoka,J., Hoshijima, N., Tanaka, N.
and Shimizu, K.:Acquired alterations of microsatellites in plasma DNA
from cancer patients. The 90th Annual Meeting of the
American
Association for Cancer Research. Philadelphia, April, 1999.
Takashima, H., Matsumoto, Y., Matsubara, N., Tanino, M., Ouchida,
M., Ito, S., Nasu, K., Tanaka, N. and Shimizu, K.: Properties of the
mutant E2F-4 detected in gastrointestinal cancers on growth control
2-24
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
and transactivation. The 91st Annual Meeting of the American
Association for Cancer Research. San Francisco, April, 2000.
Kambara, T., Matsubara, N., Yoshino, T., Matsumoto, Y., Ozaki, K.,
Matsuoka, J., Isozaki, H., Tanaka, N. and Shimizu, K.: Novel
microsatellite instability-low oathway in
early colorectal cancer.
The 91st Annual Meeting of the American Association for Cancer
Research. San Francisco, April, 2000.
Matsubara, N., Baba, S., Meltzer, SJ., Lynch, HT., Tanaka, N. and
Shimizu, K.: E2F-4 mutation in hereditary non-polyposis colorectal
cancer. The 12th ICG-HNPCC Meeting, Tiberias, Galilee, Israel,
September, 2000.
Kambara, T., Matsubara, N., Nakagawa, H., Hoshijima, N., Notohara,
K., Nagasaka,
T., Sasamoto, H., Matsumoto, Y., Isozaki, H.,
Tanaka, N., and Shimizu, K.: MSI- L is a major carcinogenesis
pathway for early colorectal cancer with submucosal invasion. The
92nd Annual Meeting of the American Association for Cancer
Research. New Orleans, LA, March, 2001.
Ozaki, K., Matsubara, N., Matsumoto, Y., Kambara, T., Matsuoka, J.,
Notohara, Isozaki, H., Tanaka, N., and Shimizu, K.: Chromosome 18q
loss starts from premalignant epithelial gland in ulcerative colitis
associated cancer. The 92nd Annual Meeting of the American
Association for Cancer Research. New Orleans, LA, March, 2001.
Kambara, T., Matsubara, N., Nakagawa, H., Ozaki, K., Nagasaka, T.,
Matsumoto, Y., Sasamoto, H., Takeda, M., Murakami, J., Isozaki, H.,
Shimizu, K., and Tanaka, N.: Prognostic significance of allelic loss on
chromosome 1p for colorectal cancer. The 93rd Annual Meeting of the
American Association for Cancer Research. San Francisco, CA, April,
2002.
Matsumoto, Y., Matsubara, N., Nagasaka, T., Kambara, T., Nakagawa,
H., Sasamoto, H., Hosokawa, M., Naomoto, Y., Isozaki, H., Shimizu,
K., and Tanaka, N.: Correlation
between microsatellite instability
and clinicopathological features in esophageal squamous cell cancer.
The 93rd Annual Meeting of the American Association for Cancer
Research. San Francisco, CA, April, 2002.
Gunduz, M., Ouchida, M., Nagatsuka, H., Tsujigiwa, H., Gunduz, E.,
Ito, S., Fukushima, K., Beder, L., Yamatsuji, T., Haisa, M., Naomoto,
Y., Nishizaki, K., Shimizu, K., and Nagai, N.:Allelic loss and reduced
expression of the ING3, a
candidate tumor suppressor gene
at 7q31, in human head and neck cancers. The 93rd Annual Meeting
2-25
of the American Association for Cancer Research. San Francisco, CA,
April, 2002.
国内学会
(特別講演・シンポジウム等)
1)清水憲二:ヒト癌の遺伝子診断、第6回岡山医用工学会総会、(特別講演)
岡山、1999年5月
2)清水憲二:癌細胞におけるミスマッチ修復系遺伝子の変異、
第3回日本がん分子標的治療研究会総会、(ワークショップ)
福岡、1999年6月
3)森山裕煕、松原長秀、松岡順治、佐藤四三、甲斐恭平、田中紀章、
清水憲二:Plasma DNA の遺伝子解析による消化器癌の存在診断および予後
診断としての意義、第10回日本消化器癌発生学会総会シンポジウム、1
999年9月、熊本
4) 清水憲二:がんにおける遺伝子異常の総合的解析、
第58回日本癌学会総会サンライズセミナー、1999年9月、広島
5) 神原健、松原長秀、青山正博、秋山隆、吉野正、高岡宗徳、尾崎和秀、
松本祐介、磯崎博司、田中紀章、清水憲二:MSI-L 癌を中心とした早期散
発性大腸癌の新しい発癌メカニズム、
第59回日本癌学会総会ミニシンポジウム、2000年10月、横浜
6) 清水憲二、神原健、中川仁志、能登原憲司、尾崎和秀、松本祐介、
永坂岳司、吉野正、松原長秀、田中紀章:ミスマッチ修復と発がん、
第60回日本癌学会総会シンポジウム、2001年9月、横浜
(一般発表)
7) 高嶌寛年、松原長秀、大内田守、田中紀章、清水憲二:消化器癌で発見さ
れた変異 E2F4 による発癌機構、 第58回日本癌学会総会、1999年
9月、広島
8) 豊岡伸一、大内田守、堺明子、仲村聡夫、佃和憲、清水信義、清水憲二:
HD-PTP: 3p21.3 に位置する新たなヒトチロシンホスファターゼ癌抑制遺伝
子候補、
第58回日本癌学会総会、1999年9月、広島
9) 賀来春紀、江原伸、藤原田鶴子、堺明子、大内田守、那須保友、津島知靖、
2-26
公文裕巳、清水憲二:腎癌における染色体 14q での微小欠失の検討、
第58回日本癌学会総会、1999年9月、広島
10) 幡英典、上中明子、渋谷彰、坂本典久、太田誠介、小野俊朗、清水憲二、
中山睿一:CTL 認識マウスミエローマ抗原の検索、
第58回日本癌学会総会、1999年9月、広島
13) 久木田明子、久木田敏夫、大内田守、小峯光徳、小橋修:破骨細胞で発
現する POZ-Zn フィンガー型蛋白質 OCZF の転写活性の解析、
第22回日本分子生物学会年会、1999年12月、福岡
12) 伊藤佐智夫、堺明子、大内田守、野村貴子、佐々木順造、清水憲二:WDC-146
の遺伝子構造と転写調節機構の解析、第22回日本分子生物学会年会、
1999年12月、福岡
13) 尾崎和秀、松原長秀、磯崎博司、田中紀章、能登原憲司、清水憲二:潰瘍
性大腸炎の発癌に対する MSI 解析と Chromosome 18q の LOH の関与につい
て、第59回日本癌学会総会、2000年10月、横浜
14) 大内田守、Gunduz, M、福島邦博、花房裕子、清水憲二:ヒト ING1 遺伝子
のゲノム構造と頭頸部癌における癌部特異的遺伝子変異の解析、
第23回日本分子生物学会年会、2000年12月、神戸
15) 伊藤佐智夫、内藤訓子、大内田守、清水憲二:BTB/POZ domain と Zinc-Finger
をもつ新規遺伝子、OSZF の解析、
第23回日本分子生物学会年会、2000年12月、神戸
16) 神原健、松原長秀、中川仁志、磯崎博司、田中紀章、清水憲二:進行大腸
癌における予後予測因子としての 1p および 8p の重要性、
第60回日本癌学会総会、2001年9月、横浜
17) 伊藤佐智夫、内藤訓子、大内田守、清水憲二:BTB/POZ domain と Zinc-Finger
をもつ新規遺伝子、OSZF の解析、
第60回日本癌学会総会、2001年9月、横浜
18) 大内田守、Gunduz Mehmet、花房裕子、清水憲二:ヒト癌組織特異的 ING1
変異型遺伝子の解析、 第60回日本癌学会総会、2001年9月、横浜
19) Gunduz Mehmet、大内田守、伊藤佐智夫、永井教之、清水憲二:染色体 7q31
2-27
に位置する癌抑制遺伝子候補 ING3 の頭頸部癌におけるヘテロ接合性の消
失と発現の解析、第60回日本癌学会総会、2001年9月、横浜
20) 松本祐介、松原長秀、猶本良夫、白川靖博、尾崎和秀、神原健、細川正夫、
大内田守、田中紀章、清水憲二:食道扁平上皮癌における 17q のヘテロ接
合性欠失の意義、 第60回日本癌学会総会、2001年9月、横浜
21) 小林一泰、因来泰彦、重松久之、田中規幹、清水信義、清水憲二:Non-small
cell lung carcinoma における Alix/AIP1 の SNP 解析、
第60回日本癌学会総会、2001年9月、横浜
22) 堺明子、谷野元彦、大内田守、小出典男、石丸文彦、清水信義、清水憲二:
末梢血遊離 DNA による癌の高感度遺伝子診断に関する基礎的研究、
第60回日本癌学会総会、2001年9月、横浜
23) 内藤訓子、川井章、森本裕樹、吉田晶、杉原進介、大内田守、清水憲二、
井上一:滑膜肉腫培養細胞に対する Bcl-2 アンチセンスオリゴヌクレオ
チドの効果、第60回日本癌学会総会、2001年9月、横浜
24) 大同茂、田宮隆、小野恭裕、大塚真司、松下博和、黒住和彦、大本堯史、
伊藤佐智夫、大内田守、清水憲二:Astrocytoma における 10 番染色体長腕
遺伝子異常と悪性度との関連、 第20回日本脳腫瘍病理学会、
2002年5月、広島
25) 堺明子、谷野元彦、大釜陽一郎、賀来春樹、小林一泰、青江基、大内田守、
清水信義、小出典男、清水憲二:末梢血遊離 DNA による担癌患者の高感度
早期発見分子診断法、 第3回日本がん分子疫学研究会、
2002年5月、鹿児島
(5)特許出願リスト
該当なし。但し、非 PCR 的方法による末梢血中遊離 DNA の定量法とその中の
癌特異的な癌抑制遺伝子変異を高感度で検出する新しい方法について、新規特
許申請を検討中である。
(6)その他報道等の概要
新聞報道:
1)「がん、遺伝子分析で早期発見」1999年9月14—15日
山陽新聞、毎日新聞、朝日新聞、読売新聞、
(岡山大学医学部倫理委員会承認を受けて公表された本研究の紹介)
2-28
2)「明日への医療」遺伝子診断、2001年1月17日
山陽新聞(末梢血遊離 DNA 定量による遺伝子診断の紹介)
3)「肺癌発生の高い遺伝子発見」2002年3月7日
朝日新聞、山陽新聞、ほか、
(遺伝子微小変異の解析による癌体質遺伝診断の紹介)
4)「がん予防へ遺伝子調査」2002年3月16日
毎日新聞、(同上、詳しい解説)
2-29
表3
目的・意義
年
度
研究目標
研究内容
(研究成果)
平成11年度
平成12年度
末梢血中遊離 DNA 量の高感度定量法
末梢血中有利 DNA 量と癌の病態との
を開発し、担癌患者の早期診断に応
関連を明確にし、自動解析装置を開
用可能であることを示す。又遺伝子
発する。遺伝子異常解析の半自動化
自体の異常も検出する系の開発を
も試みる。
開始する。
(1)要素技術検討 ①末梢血中遊離 DNA 超高感度定量技術
Intra-Alu-PCR 法の基本条件の検討 ボイル法による直接定量法を開発し
と各腫定量技術の比較を行ない、蛍 たが、担癌患者と健常人との有意差
光標識定量 PCR 装置を用いて最低 10 が見られなかったため、部分精製後
pg/ml までの高感度検出法を達成し に定量する系に変更し、有意差を検
た。
出できた。
(1)要素技術検討 ②末梢血中遊離 DNA の癌特異的遺伝子異常の検出技術
Ras 遺伝子群の活性化変異を高感度
に検出する方法を検討した。
(1)要素技術検討
(1)要素技術検討
度
表
末梢血中遊離 DNA の定量的、定性的解析により癌の早期診断を行う診断システムの基盤的研究を行う。
活性化変異を持つ K-ras, N -ras 遺伝
子の高感度検出技術を確立した。
平成13年度
14年度
末梢血を用いて担癌患者の早期発
見が可能な遺伝子診断法を開発し、
自動化システムの構築の基盤を提
供する。
広汎な担癌患者139名の末梢血
を解析して健常人との間に極めて
高い有意差で遊離 DNA 量の差違を見
い出し、約85%の患者を捕捉でき
ることを示した。
P53 癌抑制遺伝子の不活性化変異を
広汎に検索する系を開発し、再分画
DHPLC 法で5%までの変異遺伝子を
検出する系を構築した。
③末梢血中遊離 DNA の自動解析
定量 PCR 装置が全自動であるため、
定量技術自体の自動化は完成済み
である。
年
総
変異特異的 PCR 増幅は装置として全
自動であるが、制限酵素処理段階が
手動であるため、全自動可能な MASA
法に変更した。
全自動ロボットシステムを導入し、
血清からの DNA 抽出、PCR 反応液作
製、分注等の操作を自動化して1日
当たり最大 180 検体を処理する系を
構築した。
④癌自体の遺伝子異常の検索
K-ras 遺伝子新規活性化変異の発見
P107 遺伝子内部欠失変異の発見
癌抑制遺伝子 ING1 の癌特異的遺伝子
欠失と変異を頭頸部癌で発見
平成11年度
平成12年度
2-30
癌抑制遺伝子候補 REIC のプロモー
ターメチル化と発現低下を発見
癌抑制遺伝子 ING3 の高頻度欠失と
発現低下を頭頸部癌で発見
平成13年度
14年度
(2)トータルシステムの研究
研究内容
(研究成果)
研究予算(百万円)
研究担当人員
学術論文発表数
口頭発表数
特許出願数
新聞報道数
外部展示
定量の自動化のため、定量 PCR 法を
検討した。Ras 遺伝子活性化変異の
高感度検出法を確立した。
(3)総合評価
トータルシステムとして評価すべ
き項目の洗い出しを実施し、
Intra-Alu-PCR 法の優位性を確認し
た。
58
18名
1
12
0
1
0
血清からの直接法でなく、キアゲン
精製後に定量する系に変更した。P53
遺伝子の変異を広汎に検出する系を
モデル系として確立した。
定量 PCR 装置の優位性を認めた。又
血中 DNA 中の遺伝子異常を高感度で
検出する基本的戦略を検討した。
58
17名
7
7
0
0
0
2-31
大規模コホート研究より、担癌患者
の血清中 DNA が健常人より有意に高
い事を示した。定量のための半自動
化システムを完成させた。
定量的検討で、担癌患者の約8
割を捕捉する系を完成させた。
事後評価
血中遊離 DNA による遺伝子異
常の検出を可能にした。
54
17名
3
3
11
5
0
0
1
2
0
0
事業原簿ー参考;用語解説
1)腫瘍マーカー
体内に悪性腫瘍をもつ被験者を末梢血(血清)検査で特定するための特異蛋白質のことを指し、
腫瘍細胞が特異的に産生する抗原が良く用いられる。代表的なものは癌胎児性蛋白質の CEA
(Carcino-Embryonic Antigen), AFP ( α-FetoProtein),
癌特異的抗原の CA19-9, CA125, CA72-4,
PSA (Prostate-Specific Antigen),などがある。何れも血清中の量を特異的な抗体を用いて定量
し、診断に用いる。以上の腫瘍マーカーは何れも癌特異性が約 15
60 % といわれ、PSA は前立
腺癌の診断に、その他は多くの固形癌(胃癌、大腸癌、膵癌、肝癌、食道癌、など)の診断に用
いられるが、偽陽性の場合も多い。
2)アポトーシス
元来は正常組織の発生や組織更新の際に起こる秩序立ったプログラム細胞死を意味し、正常な
発生や自己免疫病防止のために極めて重要な機能である。壊死(ネクローシス)とは異なり、ア
ポトーシスは炎症を起こさず、穏やかに細胞死が起こり、DNA が細断されて(約 140 180 塩基対
DNA ) 周囲の細胞(マクロファージなど)に吸収される。発癌に際しても癌細胞を生体から除去
するための重要な機構とされ、アポトーシスが起こらなくなると発癌の危険が飛躍的に増加する。
実際に、アポトーシスを抑制する遺伝子群は始めは癌遺伝子として発見された。多くのアポトー
シス誘導因子遺伝子群は癌抑制遺伝子として機能するが、有名な癌抑制遺伝子産物である p53 は
このアポトーシスの
重要な誘導因子でもある。初期の癌からその進展に伴って、ある割合の癌
細胞がアポトーシスを起こし、分解された DNA の一部が血液中に溶出されると考えられている。
3)PCR プライマー
ポリメラーゼ連鎖反応を用いて DNA を増幅する際に、DNA の特定の位置から合成反応を開始さ
せるために、配列が判明している DNA 領域のある長さ(通常は 18
24 塩基)を化学合成した1
本鎖 DNA 断片を用いる。これをプライマーと呼び、配列が判明していれば任意の位置から数百?
数千塩基対の範囲で2本のプライマーで挟まれた同じ配列を数兆コピー以上得ることができ、遺
伝子クローニングに代わる方法として分子生物学に革命的な進展をもたらした。
4)Alu 反復配列
1980 年に発見されたヒト DNA 中に多コピー存在する散在性反復配列(繰り返し配列)の代表
で、配列中に制限酵素(配列特異的な DNA 切断酵素)Alu I の認識配列を含むためにこの名前で
呼ばれる。Alu 配列はヒト DNA(ゲノム)中に約 50
の配列で、平均 4000
60 万コピー存在するおよそ 300 塩基対
5000 塩基対の DNA 領域に一つの割合で分布する。ヒト DNA に特徴的で
あるため、他の DNA とヒト DNA とを区別するために役に立つ。本研究ではその多コピーに着目し
て DNA 定量の高感度化を図った。Alu 配列間の相似性は極めて高く、約 85 % が共通の配列であ
るため、一組みのプライマーからの PCR 増幅で多くの Alu 配列が同時に増幅される。従って、単
2-32
一遺伝子領域を増幅する場合に比べて、原理的にはおよそ 100,000 倍の DNA が増幅されることが
期待される。
5)マイクロサテライト
ゲノム DNA 中に散在する1塩基から6塩基対を単位とする繰り返し配列で、特に2塩基の反復
配列(例えば CACACACACACA--- )が多い。この反復配列を挟む両端のユニーク配列部分に内向き
の2本のプライマーを設計すると、特異的なマイクロサテライトを PCR 増幅できる。このような
マイクロサテライトはヒトゲノム中に数千カ所以上散在し、ゲノムの地図作製や塩基配列決定の目
印に有用であった。また、これらのマイクロサテライトはその2塩基繰り返し数が個人によって
異なるため(遺伝的多型)、個人識別や親子鑑定、さらに癌における遺伝子領域の欠失解析等に非
常に役立つことが判り、世界中で多用されている。今、両親に由来する相同染色体上のある遺伝
子領域のマイクロサテライト配列が異なっている場合は、この相同染色体領域を父親由来か母親
由来か区別できることになる。例えばこの人の正常細胞では両親由来の遺伝子が二つ検出できる
のに、この人の癌細胞では父親由来の遺伝子が検出されない場合、相同染色体の何れか一方のあ
る 領 域 に 欠 失 が 生 じ て い る こ と を 意 味 す る 。 こ れ を ヘ テ ロ 接 合 性 の 消 失 (LOH; loss of
heterozygosity)と呼び、染色体欠失の有用な解析法となる。癌における欠失領域にはその癌の発
症に関与した癌抑制遺伝子が存在すると考えられる。
6)プロモーターメチル化
遺伝子の発現制御に関わる遺伝子の先頭部分をプロモーターと呼び、組織特異的な遺伝子発現
の調節など極めて重要な要素となっている。この領域にシトシンとグアニンが隣り合って分布す
る CpG 配列が特に多いことが判明したが、このシトシンがメチル化されると遺伝子発現が大幅に
低下する。このようなプロモーターメチル化による遺伝子発現の消失は場合によっては発癌に至
ることも考えられる。ちょうど遺伝子欠損による癌抑制遺伝子不活性化と同じ効果が起こること
になる。最近の知見ではこの機構による癌抑制遺伝子失活が予想外に多いことが判明し、新しい
研究分野となっている。
7)統計学的有意差検定
P 値
ある現象の因果関係を検討する統計的なデータに関して、比較したい二つの群間で統計学的に
意味のある差であるか否かを検定する必要がある。このために種々の統計処理を行ない、その有
意差の目安として P 値を算出することが多い。P 値はその現象が偶然に差を示す危険率を表わし、
通常はこの値が 0.05 以下の場合に有意差があるとみなされる。この値が小さいほどその現象の
因果関係は強く、例えば P = 0.005 の場合は偶然の一致の確率が 0. 5% 程度であることを意味
する。
8)エクソン、イントロン
高等生物の遺伝子の多くはタンパク質の情報を含む領域(エクソン)が通常これより遥かに大
きいイントロン(タンパク質の情報を含まない領域)によって分断され、2個から数十個のエク
2-33
ソンとして不連続につながっている。転写はこれらの全てのエクソンを含む領域をカバーして行
なわれるが、そのあとスプライシングによってイントロン部分が除去され、エクソン領域のみが
つながった伝令 RNA (mRNA) が形成される。そのあとで細胞質に運ばれた mRNA の情報からリボ
ソーム上でアミノ酸が連結され、各タンパク合成が行なわれる。
9)ras
遺伝子群の活性化変異
ras 遺伝子群はヒト癌細胞から本研究代表者らが 1982-1983 年にかけて米国で世界最初に分離
した癌遺伝子である。膀胱癌から H-ras, 肺癌から K-ras, 神経芽細胞腫から N-ras を分離した
が、何れもタンパク質の先頭から 12 番目,または 61 番目のアミノ酸が置き換わるようなエクソ
ン上の点突然変異(1塩基の変異)によって正常遺伝子が癌遺伝子に活性化されたものであった。
ヒトの多くの腫瘍でこれら3種の ras 遺伝子の何れかが活性化変異を起こしたものが見い出さ
れており、全腫瘍平均では約 30% の頻度である。高頻度のものは、K-ras 遺伝子の活性化が膵癌
(80%), 大腸癌 (40%) , 肺癌 (25 30%), H-ras が口腔癌 (30-40%), N-ras が骨髄球系腫瘍(白
血病)で約 30% となっている。これらの活性化変異は場所が決まっているために、特定のプライ
マーを用いた高感度検出法が考案され、末梢血中 DNA でも応用されつつある。ras 遺伝子の活性
化変異は既知の癌遺伝子の変化の中では最も高頻度であり、これに次ぐものは癌遺伝子 NEU の増
幅及び高発現である(乳癌など)。
10)p53 遺伝子の不活性化変異
p53 遺伝子は癌抑制遺伝子の代表的なものである。p53 遺伝子は生存に不可欠な遺伝子ではな
いが、ゲノム DNA の安定性を保守するための重要な因子であり、ゲノムの損傷時に細胞周期を一
時停止させて修復を図ると共に、修復不能の場合は積極的に細胞自体を自殺させる(アポトーシ
ス)ように作用する。
したがって、p53 遺伝子が両方の対立遺伝子共に機能を失うと、遺伝子に異常をきたした細胞が
生き残り、発癌の危険度が大幅に増大することになる。この遺伝子が位置する染色体 17 番短腕
の欠失は癌全体のの約 7 割で観察され、残った p53 遺伝子上にこれまでに多くの不活性化変異
が発見されている。但し、ras 遺伝子群と異なり、p53 遺伝子の変異部位は 10 個のエクソン中、
第4? 第9、特に第5? 第8の4個のエクソンに集中してはいるが、約 200 カ所の異なる位置に
分布している。このため、p53 遺伝子では ras 遺伝子群のような変異特異的濃縮が不可能であり、
高感度検索が実現できていなかった。
2-34
第3章
評価
1.プロジェクト全体に関する評価
1.1 総論
1)総合評価
Intra-Alu-PCR を基本にした高感度の血中遊離 DNA 定量法ならびに診断システムの
開発は、当初掲げた目標「血中遊離 DNA を高感度に検出・定量でき、さらにその遺伝
子異常を総合的に検出できる技術を開発し、癌の早期診断を実現するための基盤技術
を確立する」に対して、一部不透明な部分は残るものの、おおよそ成功したと評価で
きる。
高感度 DNA 検出システムの開発は既存の技術を組み合わせたものであるが、その技
術を利用することにより血中遊離 DNA による癌の高感度遺伝子診断が有効であること、
および将来、血中遊離 DNA を腫瘍マーカーとして使用することができる可能性を示し
たことは注目すべき研究成果と言え、この技術を用いた癌のスクリーニングシステム
の開発へと発展させることが期待される。
しかし、血液試料取り扱い条件の差による数値変動の問題、および血中遊離 DNA 量
が腫瘍マーカーとして利用できるか否かといった、技術上・医学上の基礎的な問題が
未解決のまま残っていると考えられるため、今後、臨床検体の解析、さらに詳しい臨
床情報との相関を検討する必要がある。また、癌の種類を限定し、そのステージや悪
性度につき層別化して、十分な試料数を用いた、統計的にも信頼しうるデータを出す
ことも必要と考える。
<肯定的意見>
○ 疑問点が残るものの診断に本技術が使えるかもしれないということを示した。
実用化へ向けては<問題点・改善すべき点>で挙げた点についての組織的
かつ厳格な検討が必要と考える。
○ 癌の早期発見に役立つ可能性がある高感度の血中遊離 DNA 定量法の開発に成功し
ており、目的の一部は達成された。
○ 本プロジェクトは課題名「血中遊離 DNA による癌の高感度遺伝子診断システムに
関する基礎研究」が示すごとく、「癌の診断」という医学研究と「DNA による高感
度診断システムの開発」という工学系研究を融合させたもので、これからの生命
科学における基礎的研究の形態に関し重要な方向性を示すものと考える。また、
参加者、実施体制を見てもその目標が十分に反映されたものと判断できる。
Alu-PCR を基本にした高感度 DNA 検出システムの開発は工学系研究の重要な結果
で、その技術を利用することにより血中遊離 DNA による癌の高感度遺伝子診断が
有効であること、および将来、血中遊離 DNA を腫瘍マーカーとして使用すること
ができる可能性を示したことは注目すべき研究成果であり、この技術を用いた癌
のスクリーニングシステムの開発へと発展させることが期待される。血中遊離 DNA
の抽出、および高感度 DNA 検出システムはロボットによる自動化が可能であると
思われ、実施者もすでに半自動化を試みている。したがって、本プロジェクトで
開発された高感度遺伝子診断システムの臨床的意義や有効性を確立するために、
さらに臨床検体の解析を進め、診断可能な癌患者の病期等の詳細な情報が集積さ
れれば、血中遊離 DNA を腫瘍マーカーとして使用し癌患者の病態経過観察を行う、
あるいはこの技術による一般集団を対象とした癌の検診システム開発に向けて、
実用化、事業化の可能性は十分に認められると判断する。総合的に、全体として
3-1
の目標達成度は 60−70%であるが、今後の更なる検討、開発がなされれば、実用化
も可能と思われ、その点ではシーズ作りを目的とする本事業の研究開発として成
功したと判断する。
○ 本研究では癌の早期発見、・早期治療による癌死の低減を目的に新しい血中遊離
DNA 定量法とその全自動化の開発が行われた。この血中遊離 DNA 定量法は最小測定
感度 1 pg/ml という従来法の約一万倍という超高感度の定量法で、血中遊離 DNA
濃度が担癌患者で有意に高値を示すことを明らかにした。また、この血中遊離 DNA
濃度には性差があることを世界で初めて発見した。末梢血中遊離 DNA から膵臓癌
などに認められる癌遺伝子、癌抑制遺伝子の変異を検出することにも成功した。
さらに、血中遊離 DNA 定量解析の自動化も1日当たり最大 180 検体を解析できる
システムを完成した成果は大きい。
<問題点・改善すべき点>
● 分科会でも指摘があったようにステージとの関連、悪性度との関連は明確な答え
が出されていない。本テーマでは全ての癌種が対象となっていたが、出されたデ
ータでは癌の種類によって遊離 DNA 量に差があった。これらの点を考慮し、まず
癌の種類を限定しステージや悪性度につき層別化し十分な試料数を用い統計的に
も信頼しうるデータをまず出すことが必要と考える。
● 開発された血中遊離 DNA 定量法における血液試料取り扱い条件の差による数値変
動の問題、および血中遊離 DNA 量が腫瘍マーカーとして利用できるか否かといっ
た問題のように、技術上・医学上の基礎的な問題が未解決のまま残っている。
● 事業の目標の1つに「遺伝子異常の高感度検出技術の研究—微量な末梢血中遊離
DNA をもちいて、癌に由来する様々な遺伝子異常を総合的に検出可能とする技術を
確立する」とあるが、これは極めて重要かつ実用化すれば非常に有用な技術で、
それゆえ容易ではないと推測される。事実、実施者も「末梢血中遊離 DNA を用い
た遺伝子異常の検索法に関する研究—この機器が最も開発困難なものである。
・・・
いくつかの特徴的な癌特異的変異遺伝子に的を絞ること、既知の代表的な種類の
変異形式に絞って解析すること、
・・・・」と説明し、結果として遺伝子異常を総
合的に検出するという目標からかなり離れたものとなってしまっており、短期間
に開発困難な内容が目標に含まれていると考える。また、別の事業目標に「(3)初
期癌の診断に資するための癌自体の遺伝子異常を研究する」とあるが、遊離 DNA
を用い癌のスクリーニングを行う場合、癌に高頻度に検出される遺伝子変異を同
定する必要がある。しかし、世界中の多くの研究者がそのような遺伝子変異を追
究し研究を重ねてきた現在でも多くは発見されていない事実から、本プロジェク
ト内の短期間に容易に達成できるものではないと推測される。また、実施者がこ
の目標の中で掲げた具体的事項は達成されていない。結論として、事業の目標「(3)
初期癌の診断に資するための癌自体の遺伝子異常を研究する」のこのプロジェク
トにおける意義が理解しがたい。
遊離 DNA の高感度検出・定量技術の研究に
関し、10pg/ml までの高感度検出法を達成し、これは工学系研究の重要な成果と評
価できるが、この技術を用いた臨床検体の解析が不十分である。詳細な解析は肺
癌のみであり、しかも病期との相関解析は腫瘍の大きさ、転移の有無のみが独立
して検討されているだけである。本プロジェクトの中で注目すべきこの技術が、
新しい癌の検診システムの開発等につながるか否かは、早期癌が検出できるかど
3-2
うかにかかっているといっても過言ではない。したがって、臨床検体の解析を進
めさらに詳しい臨床情報との相関を検討する必要がある。
● この新しい高感度の血中遊離 DNA 定量法では、ある種の病態において癌細胞以外
の細胞に由来する DNA も補足し得るため、より癌細胞に特異的な測定系への改良
が必要である。また、血中遊離 DNA 濃度の測定に用いる検体が血清と血漿ではそ
の濃度にかなりの違いがあることから、今後は血漿検体に絞って検討することが
望ましいと考えられる。
3-3
Ⅰ-2 今後に対する提言
本プロジェクトのユニークな点は、末梢血における遊離 DNA 量のみで癌の検出が出
来るということにあるが、これを汎用性のある技術へ発展させれば血中遊離 DNA を腫
瘍マーカーとして使用し癌患者の病態経過観察を行う、あるいはこの技術による一般
集団を対象とした癌の検診システムを開発することが可能になると考えられ、関連分
野へのインパクトは極めて大きいと思われる。しかし、血中遊離 DNA 定量法が腫瘍マ
ーカーとして臨床検査に応用されるためには、感度が高いということと同時に、特異
性も高くなければならない。
現時点では臨床情報が不十分であり、したがって、さらに臨床検体の解析を進め、
診断可能な癌患者の病期等の詳細な情報を集積し、この技術の臨床的意義や有効性を
確立することが必須であり、DNA 測定量の変動要因、測定された血中遊離 DNA 量の変
化の疾患特異性などについて、さらに臨床情報の収集・解析を進めてもらいたい。
○ 本プロジェクトのユニークさは遊離 DNA 量のみで癌の検出が出来るということに
ある。p53 や K-RAS の mutaion が増幅により検出できるということは従来行われ
てきた研究の域を出ない。従って遊離 DNA の検出に関する検討を<問題点・改善
すべき点>で挙げたものを中心に集中して行い説得力のあるものに仕上げて欲し
い。
○ 血中遊離 DNA 定量法による DNA 測定量の変動要因、および測定された血中遊離 DNA
量の変化の疾患特異性などについてさらに基礎検討を行った上で、本法で測定さ
れた DNA 量が腫瘍マーカーとして利用できる可能性があれば、実用化に向けて研
究を進めるべきである。
○ 実施者も述べているように「末梢血中遊離 DNA 濃度が 25 ng/ml 以上の被験者は約
70-80% の確率で担癌患者である可能性があり、さらにその DNA から変異 K-RAS 又
は変異 p53 遺伝子が検出されるとその確率は 90% 以上となる」ということが本プ
ロジェクトの結果であり、これを汎用性のある技術へ発展させ、血中遊離 DNA を
腫瘍マーカーとして使用し癌患者の病態経過観察を行う、あるいはこの技術によ
る一般集団を対象とした癌の検診システムを開発することは十分に可能であると
判断する。また、これが実用化されれば、癌診療へ大きく貢献することは明白で
あり、関連分野へのインパクトは極めて大きいと思われる。しかし、現時点では
臨床情報が極めて不十分であり、したがって、さらに臨床検体の解析を進め、診
断可能な癌患者の病期等の詳細な情報を集積し、この技術の臨床的意義や有効性
を確立することが必須である。技術的には血中遊離 DNA の抽出、および高感度 DNA
検出システムのロボットによる自動化が可能であると思われ、実用化、事業化の
可能性は十分に認められると判断する。p53、k-ras 遺伝子異常の検出は既に開発
された技術の応用で可能だが、遺伝子異常を総合的に検出する技術の開発が今後、
重要であり、このために開発、およびその実用化を含め更なる医学・工学連携型
事業が行われることを期待する。
○ 血中遊離 DNA 定量法が腫瘍マーカーとして臨床検査に応用されるためには、感度
が高いということと同時に、特異性も高くなければならない。本法が癌特異性が
高いという臨床的なデータが明確になれば実用化は容易といえよう。また、末梢
血から癌細胞由来の DNA を特異的に検出できる方法の開発は、現在急速に進んで
いる癌の遺伝子診断に大きなインパクトを与えることは確実であり、他の遺伝子
技術を駆使した新しい診断法の開発にも繋がる重要な研究領域と考える。
3-4
Ⅱ.各論
Ⅱ-1 事業の目的・政策的位置付けについて
癌の早期発見のための検査法の開発という、国民の健康に直結する公共性の高い独
創的かつ先進的な研究であり、自動化された測定機器が開発されれば、一般的な臨床
検査としての経済効果も高く、医学的・社会的に重要であると考えられる。
また、本プロジェクトは課題名「血中遊離 DNA による癌の高感度遺伝子診断システ
ムに関する基礎研究」が示すごとく、
「癌の診断」という医学研究と「DNA による高感
度診断システムの開発」という工学系研究を融合させたもので、これからの生命科学
における基礎的研究の形態に関し重要な方向性を示すものと考える。さらに、目的と
する技術の開発には高額な先端的機器が必須であり、その実用化に向けては企業群の
協力が必要となるもので、NEDO プロジェクトとして極めて妥当と言える。
○ 癌の早期発見のための腫瘍マーカーの開発は、医学的・社会的に重要である。
○ 本プロジェクトは課題名「血中遊離 DNA による癌の高感度遺伝子診断システムに
関する基礎研究」が示すごとく、「癌の診断」という医学研究と「DNA による高感
度診断システムの開発」という工学系研究を融合させたもので、これからの生命
科学における基礎的研究の形態に関し重要な方向性を示すものと考える。また、
目的とする技術の開発には高額な先端的機器が必須であり、その実用化に向けて
は企業群の協力が必要となるもので、NEDO プロジェクトとして極めて妥当と考え
る。
○ 癌の早期発見のための検査法の開発という国民の健康に直結する公共性の高い独
創的かつ先進的な研究であり、自動化された測定機器が開発されれば、一般的な
臨床検査としての経済効果も高い。
3-5
Ⅱ-2 研究開発マネージメントについて
医学系・工学系研究者の連携があり、研究体制はほぼ妥当と思われる。本プロジェ
クトの内容は課題名「血中遊離 DNA による癌の高感度遺伝子診断システムに関する基
礎研究」が端的に表しており、この技術開発が癌の新しい検診システムに発展する可
能性が高く、極めて重要で興味ある開発目標と評価できる。
ただし、臨床医学系の腫瘍マーカー専門家が、より一層強く研究方針決定に関与し
ていたほうが良かったのではないかと思われる。また、血中遊離 DNA 濃度について担
癌患者全体としては解析されているが、疾患別で腫瘍径との関係などは解析が十分と
は言えず、各種早期癌患者の臨床例の集積が十分とは言えないなど、遺伝子異常を総
合的に検出可能とする技術を確立するという目標からは、かなり距離をおいたものに
なっており、短期間には開発困難な内容が目標として掲げられていたのではないかと
思われる。
○ チームとして同大学工学部のグループを組み入れ、独自の検出系や自動化システ
ムの開発を行える体制をつくった。しかし現実的にはうまく機能したとは考えに
くい。一般に本プロジェクトで考えられるような技術開発は企業の方が進んでお
り、また向いている。どこかの企業をチームに入れるべきであった。
○ 医学系・工学系研究者の連携があり、研究体制はほぼ妥当と思われる。ただし、
臨床医学系の腫瘍マーカー専門家が、より一層強く研究方針決定に関与していた
ほうが良かったのではないかと思われる。
○ 本プロジェクトの内容は課題名「血中遊離 DNA による癌の高感度遺伝子診断シス
テムに関する基礎研究」が端的に表しており、この技術開発が癌の新しい検診シ
ステムに発展する可能性が高く、極めて重要で興味ある開発目標と評価できる。
また、参加者、実施体制を見ても医学・工学連携型研究事業の目的が十分に反映
されたものと判断できる。事業原簿に記載されている事業の目標の中に「・・・
癌自体の遺伝子異常検索と連動した新しい癌早期発見のための末梢血遺伝子診断
法を開発して・・・」とあり、また、その具体的な説明では「(2)遺伝子異常の高
感度検出技術の研究—微量な末梢血中遊離 DNA をもちいて、癌に由来する様々な遺
伝子異常を総合的に検出可能とする技術を確立する」とあるが、これは極めて重
要かつ実用化すれば非常に有用な技術であることは明白であるが、それゆえ容易
ではないと推測される。事実、実施者も研究開発項目毎の内容の詳細の中で「末
梢血中遊離 DNA を用いた遺伝子異常の検索方に関する研究—この機器が最も開発困
難なものである。・・・いくつかの特徴的な癌特異的変異遺伝子に的を絞ること、
既知の代表的な種類の変異形式に絞って解析すること、
・・・・」説明し、結果と
して遺伝子異常を総合的に検出可能とする技術を確立するという目標からかなり
距離をおいたものになっており、短期間に開発困難な内容が目標の中に含まれて
いると考える。
○ 血中遊離 DNA 濃度について、担癌患者全体としては解析されているが、疾患別で
腫瘍径との関係などは解析が十分とは言えない。また、各種早期癌患者の臨床例
の集積が十分とは言えない。
3-6
Ⅲ-3 研究開発成果について
Intra-Alu-PCR 法による末梢血中遊離 DNA の超高感度定量は、血中遊離 DNA 量の測
定による癌の検出という従来からの概念を一歩進め、その可能性をより明確に示した
と言え、新しい癌の検診システムの開発につながる可能性があり、独創性、汎用性が
認められる。
血中遊離 DNA を腫瘍マーカーとして使用することができる可能性を示したことは注
目すべき研究成果であり、血中遊離 DNA 定量解析の自動化も1日当たり最大 180 検体
を解析できるシステムを完成しており、この技術を用いた癌のスクリーニングシステ
ムの開発へと発展させることが期待される。今後の更なる検討、開発がなされれば、
実用化も可能と思われ、その点ではシーズ作りを目的とする本事業の研究開発として
成功したと判断されるが、今後、新しい癌の検診システムの開発等につながるか否か
は、早期癌が検出できるかどうかにかかっているといっても過言ではなく、したがっ
て、臨床検体の解析を進めさらに詳しい臨床情報との相関を検討する必要がある。ま
た、血中遊離 DNA の濃度は採血後の処理方法、時間に大きく影響を受けると思われ、
今までに行ってきた採血から処理までのプロトコールを明記すべきであり、今後、採
血後の影響が出ない詳細な条件等についても言及すべきと考える。疾患特異性に関し
ても、より幅広い疾患について基礎検討を行い、腫瘍マーカーとしての可能性を探る
必要がある。臨床例の集積には時間を要するが、各種早期癌症例を多数集積し、検討
することが必要と思われる。
<肯定的意見>
○ 血中遊離 DNA 量の測定により癌を検出できる可能性を従来のものより、より明確
に示した。
○ 癌の早期発見に役立つ可能性がある高感度の血中遊離 DNA 定量法の開発に成功し
ており、測定値の変動要因や疾患特異性に関しても、一定の検討がなされている。
○ (1)Intra-Alu PCR を基本にした高感度 DNA 検出システムの開発は 10pg/ml まで
の高感度検出法を達成し工学系研究の重要な結果で、その技術を利用することに
より血中遊離 DNA による癌の高感度遺伝子診断が有効であること、および将来、
血中遊離 DNA を腫瘍マーカーとして使用することができる可能性を示したことは
注目すべき研究成果であり、この技術を用いた癌のスクリーニングシステムの開
発へと発展させることが期待される。解析した癌腫は肺癌(非小細胞性、小細胞
性)大腸癌、乳癌、胃癌、膵癌、肝癌、前立腺癌、腎癌、頭頸部癌、膀胱癌、非
ホジキンリンパ腫、白血病、等多様なものを網羅し、血中 DNA 濃度は癌の種類や
大きさ(進行度)、分化度、組織型等と一義的な相関は見られなかったことは、こ
の技術による診断法が多種の癌の様々な病期のものを検出できる可能性を示唆す
るもので目標はクリアしていると判断する。
「末梢血中遊離 DNA の癌特異的遺伝子
異常の検出」に関し、p53,Ras 遺伝子の癌における代表的変異に対し DHPLC-再分
画法、Enriched PCR 法などによる検出システムを構築した。しかし、総合的検出
技術という点では目標を達成できたと判断できない。「癌由来の遺伝子異常の研
究」について、他の研究課題と関連させ、様々な悪性腫瘍における新規及び既知
遺伝子の腫瘍特異的な変化を発見し、これらの多くは世界でも初めての発見であ
り、平成 11 年度以来約 14 編の論文として発表している。しかし、目標では(i) す
でに研究代表者が発見していたヒト肺癌、腎癌、頭頸部癌など多くの固型癌に共
通な新しい癌抑制遺伝子候補を遺伝子異常の検索標的とする計画、(ii) 遺伝子や
3-7
染色体領域のマイクロサテライト解析のためには DNA 全体を普遍的に増幅して異
常領域を検索することも必要でありこのための一般的 DNA 増幅法は DNA 不死化
(DNA-immortalization ) 法とも呼ばれ、本研究代表者らの研究室及び共同研究者
らによって開発中である、となっており、これが非常に重要な目標と思われるが
達成されていない。
したがって、全体としての目標達成度は 60−70%であるが、今後の更なる検討、開
発がなされれば、実用化も可能と思われ、その点ではシーズ作りを目的とする本
事業の研究開発として成功したと判断する。
(2)Intra-Alu-PCR 法による末梢血中遊離 DNA の超高感度定量は、新しい癌の
検診システムの開発につながる可能性があり、独創性、汎用性が認められる。健
常人の血清および血漿において、それらの遊離 DNA 濃度が女性よりも男性で有意
に高いという知見も世界で初めてであり、また、様々な悪性腫瘍における新規及
び既知遺伝子の腫瘍特異的な変化を発見し、これらの多くは世界でも初めての発
見であり、平成 11 年度以来約 14 編の論文として発表している。
(3)論文は平成 11 年度以来約 14 編を発表しており、評価できるものと思われ
る。
○ 本研究では癌の早期発見、
・早期治療による癌死の低減を目的として、ヒト特異的
反復配列を標的とした新しい血中遊離 DNA 定量法とその全自動化の開発が行われ
た。この血中遊離 DNA 定量法はヒト特異的反復配列(Alu 配列)を標的とした
Intra-Alu-PCR 法で、最小測定感度 1 pg/ml という従来法の約一万倍という超高感
度の定量法の開発に成功し、血中遊離 DNA 濃度が健常者と比較して担癌患者で有
意に高値で、その約 85%に異常値が認められることを明らかにした。また、この血
中遊離 DNA 濃度には性差があり、男性が女性より有意に高値であることを世界で
初めて発見した。末梢血中遊離 DNA から膵臓癌、大腸癌、肺癌などに認められる
癌遺伝子、癌抑制遺伝子の変異を検出することにも成功した。さらに、本研究の
主要な目的の一つである事業化に向けての血中遊離 DNA 定量解析の自動化も1日
当たり最大 180 検体を解析できるシステムを完成した。
<問題点・改善すべき点>
● ステージや悪性度との関連が十分に解析されていない。
● 開発された血中遊離 DNA 定量法では、特に血清中の遊離 DNA 量が採血後の静置時
間による影響を強く受けることから、血清分離までの時間や温度の条件を正確に
一定として、疾患群と健常群を比較する必要があるように思われる。疾患特異性
に関しても、より幅広い疾患について基礎検討を行い、腫瘍マーカーとしての可
能性を探る必要がある。
● 遊離 DNA の高感度検出・定量技術の研究に関し、10pg/ml までの高感度検出法を達
成し、これは工学系研究の重要な成果と評価できるが、この技術を用いた臨床検
体の解析が不十分である。
「解析した癌腫は肺癌(非小細胞性、小細胞性)大腸癌、
乳癌、胃癌、膵癌、肝癌、前立腺癌、腎癌、頭頸部癌、膀胱癌、非ホジキンリン
パ腫、白血病、等多様なものを網羅し、血中 DNA 濃度は癌の種類や大きさ(進行
度)、分化度、組織型等と一義的な相関は見られなかった」と記載はあるが、詳細
な解析は肺癌のみであり、しかも病期との相関解析は腫瘍の大きさ、転移の有無
のみが独立して検討されているだけである。本プロジェクトで開発された技術の
中で注目すべきこの技術が新しい癌の検診システムの開発等につながるか否かは、
3-8
早期癌が検出できるかどうかにかかっているといっても過言ではない。したがっ
て、臨床検体の解析を進めさらに詳しい臨床情報との相関を検討する必要がある。
また、血中遊離 DNA の濃度は採血後の処理方法、時間に大きく影響を受けると思
われ、今までに行ってきた採血から処理までのプロとコールを明記すべきであり、
今後、採血後の影響が出ない詳細な条件等についても言及すべきと考える。また、
事業の目標の一つに「(3)初期癌の診断に資するための癌自体の遺伝子異常を研究
する」とあるが、遊離 DNA を用い癌のスクリーニングを行う場合、癌に高頻度に
検出される遺伝子変異を同定する必要がある。しかし、世界中の多くの研究者が
そのような遺伝子変異を追究し研究を重ねてきた現在でも、多くは発見されてい
ない事実から、本プロジェクト内の短期間に容易に達成できるものではないと推
測される。あるいは、目標(3)が、事業の目標(2)「・・いくつかの特徴的な癌特
異的変異遺伝子に的を絞ること、既知の代表的な種類の変異形式に絞って解析す
ること、
・・・」を行うための遺伝子または遺伝子変異を絞り込むことを目的とす
るならば、あえて目標(3)を計画しなくとも既知の遺伝子あるいは遺伝子変異の中
から候補を選択することが可能である。結論として、このプロジェクトにおける
事業の目標「(3)初期癌の診断に資するための癌自体の遺伝子異常を研究する」の
意義が理解しがたく、また、実施者がこの目標の中で掲げた具体的事項は、<肯
定的意見>でも述べたように達成されていない。
「末梢血中遊離 DNA を用いた遺伝子異常の検索法に関する研究」に関し、既知の
遺伝子異常に対しその検出のために様々な検討が加えられているが、既に開発さ
れた手技を用いての検討であり、ここに医学・工学連携型事業の特性が見られる
ような研究開発を行うべきと考える。
● 血中遊離 DNA 濃度は癌以外の良性疾患でも病態によっては上昇することが認めら
れるので、癌特異性を高めるという面での改良が必要である。また、この DNA 濃
度は検体として血清を用いた場合と血漿を用いた場合では大きな差があり、血清
の場合では血清分離までの静置時間や温度による変化が大きいことから、血清を
用いるには限界があると考えられ、今後は血漿検体に絞って臨床的な検討を行う
ことが望ましいと思われる。臨床例の集積には時間を要するが、各種早期癌症例
を多数集積し、検討することが必要と思われる。
3-9
Ⅲ-4 実用化、事業化の見通しについて
末梢血中の遊離 DNA を超高感度、かつロボットによる自動化により効率的に検出す
るシステムを確立した意義は大きい。現時点では腫瘍マーカーとして利用出来るかど
うかは結論できないが、さらに臨床検体の解析を進め、診断可能な癌患者の病期等の
詳細な情報を集積し、この技術の臨床的意義や有効性が確立されれば、血中遊離 DNA
を腫瘍マーカーとして使用し癌患者の病態経過観察を行う、あるいはこの技術による
一般集団を対象とした癌の検診システム開発に向けて、実用化、事業化の可能性は十
分にあると判断される。
また、癌遺伝子や癌抑制遺伝子の検索、あるいは DNA チップによる診断法などへの
応用も考えられる。
しかしながら、実用化・事業化のためには、採血後の処理時間や温度などを一定条
件として血中遊離 DNA の定量を行い疾患特異性を再検討すること、癌特異性をより一
層高めること、癌疾患のステージや悪性度との関連を含め、十分な臨床検体の解析を
行い、癌の診断を行うための科学的根拠、およびその有用性を確立することが必須で
あると考えられる。
また、遺伝子異常を総合的に検出できる技術の開発が重要であり、このためには開
発、およびその実用化を含め、更なる医学・工学連携型事業により、本プロジェクト
の成果を発展させて行くことが必要であると考える。
<肯定的意見>
○ 方法は簡便であり確立されたら意義は大きい。癌の種類によっては使えるものに
なるかもしれない。
○ 血中遊離 DNA 量が腫瘍マーカーとして利用できるか否か、現時点では結論できな
いが、これが何らかの病態を反映するものである可能性があり、そのような病態
の把握のための検査法として、この定量法を実用化できる可能性は残されている。
○ 実施者も述べているように「末梢血中遊離 DNA 濃度が 25 ng/ml 以上の被験者は約
70-80% の確率で担癌患者である可能性があり、さらにその DNA から変異 K-ras 又
は変異 p53 遺伝子が検出されるとその確率は 90% 以上となる」ということが本プ
ロジェクトの結果であり、これを汎用性のある技術として利用するためには血中
遊離 DNA の抽出、および高感度 DNA 検出システムのロボットによる自動化が必要
であると思われ、実施者はすでに半自動化を試みている。したがって、さらに臨
床検体の解析を進め、診断可能な癌患者の病期等の詳細な情報を集積し、この技
術の臨床的意義や有効性が確立されれば、血中遊離 DNA を腫瘍マーカーとして使
用し癌患者の病態経過観察を行う、あるいはこの技術による一般集団を対象とし
た癌の検診システム開発に向けて、実用化、事業化の可能性は十分に認められる
と判断する。また、この技術が一般集団を対象とした癌の検診システムとして実
用化されれば、癌診療へ大きく貢献することは明白であり、関連分野へのインパ
クトは極めて大きいと思われる。p53、k-ras 遺伝子異常の検出は既に開発された
技術の応用であるため、その実用化はその技術を所有する民間企業との共同で行
うことが最善であり、それが可能となるための重要性は十分認められる。
○ 末梢血中の遊離 DNA を超高感度に検出できることから、癌のスクリーニングだけ
ではなく、末梢血から得られるこの DNA を用いた癌遺伝子や癌抑制遺伝子の検索、
あるいは DNA チップによる診断法などへの応用も考えられる。
3-10
<問題点・改善すべき点>
● ステージや悪性度との関連が十分に解析されていない。
● 実用化・事業化に進む前に、採血後の処理時間や温度などを一定条件として血中
遊離 DNA の定量を行い、疾患特異性を再検討する必要があるように思われる。ま
た、治癒可能な早期の癌でも検出できるか否かについて、さらに基礎検討を行う
必要があると思われる。
● <肯定的意見>でも述べたように、優れた成果が認められるも、その技術の臨床
的意義や有効性が十分には確立されていない。従って実用化と同時に、あるいは
先行して十分な臨床検体の解析を行い、癌の診断を行うための科学的根拠、およ
びその有用性を確立することが必須であると考える。p53、k-ras 遺伝子異常の検
出は既に開発された技術の応用で可能だが、遺伝子異常を総合的に検出できる技
術の開発が重要であり、このためには開発、およびその実用化を含め更なる医学・
工学連携型事業で行われる必要がある。
● 本研究の成果を実用化、事業化するためには、本法の癌特異性をより一層高める
ことが重要である。
3-11
第4章
評点法による評価結果
第4章 評点法による評点結果
1. 経緯
(1)評点法の試行
通商産業省(当時)において、平成 11 年度に実施されたプロジェクトの評
価(39 件)を対象に、評点法を試行的に実施した。その結果を産業技術審議
会評価部会に諮ったところ、以下の判断がなされた。
l 数値の提示は評価結果の全体的傾向の把握に有効
l 評価者が異なっていてもプロジェクト間の相対的評価がある程度可能
(2)評点法の実施
平成 12 年 5 月の通商産業省技術評価指針改訂にて「必要に応じ、評点法の
活用による評価の定量化を行うこととする」旨規定された。
以降、プロジェクトの中間・事後評価において、定性的な評価に加え各評
価委員の概括的な判断に基づく評点法が実施されており、NEDO においても
平成 13 年度のプロジェクト評価開始以来、評点法を実施してきた。(当初は
1,3,5 の3段階評価)
2.評点法の目的
l 評価結果を分かりやすく提示すること
l プロジェクト間の相対評価がある程度可能となるようにすること
3.評点の利用
l 評価報告書を取りまとめる際の議論の参考
l 評価報告書を補足する資料
l 分野別評価、制度評価の実施において活用
4.評点方法
(1)の付け方
l 各評価項目について4段階(A、B、C、D)で評価する。
(2)点法実施のタイミング
l 第 1 回分科会において、各委員へ評価コメント票とともに上記(1)の点数の
記入を依頼する。
l 評価報告書(案)を審議する前に、評点結果を委員に提示、議論の際の参
考に供する。
l 上記審議を行った分科会終了後、当該分科会での議論等を踏まえた評点の
修正を依頼する。
l 評価報告書(案)の確定に合わせて、評点の確定を行う。
4-1
(3)評点結果の開示
l 評点法による評点結果を開示するが、個々の委員記入の結果(素点)につ
いては、「参考」として公表(匿名)する。
l 評点法による評価結果の開示については、あくまでも補助的な評価である
ことを踏まえ、評点のみが一人歩きすることのないように慎重に対応する。
l 具体的には、図表による結果の掲示等、評価の全体的な傾向がわかるよう
な形式をとることとする。
4-2
5.評点結果
2.5
1.事業の目的・政策的位置付け
2.0
2.研究開発マネジメント
1.5
3.研究開発成果
1.3
4.実用化・事業化の見通し
0.0
1.0
評価項目
2.0
平均値
3.0
※素点
1.事業の目的・政策的位置付け
2.5
B
A
B
A
2.研究開発マネジメントについて
2.0
B
B
B
B
3.研究開発成果について
1.5
C
C
B
B
4.実用化・事業化の見通しについて
1.3
C
D
B
B
(注)A=3,B=2,C=1,D=0として数値に換算。
4-3
<参考>
評点法による評価シート
【記入方法、結果取扱いについて】
・各委員からは、各項目について、A、B、C、Dのいずれかを記入してく
ださい。
・各委員記入の結果(素点)は、「参考」として公表(匿名)いたします。
(1)事業の目的・政策的位置付けについて
<判定基準>
・非常に重要
→A
・重要
→B
・概ね妥当
→C
・妥当性がない又は失われた
→D
(2)研究開発マネジメントについて
<判定基準>
・非常によい
・よい
・概ね適切
・適切とはいえない
(3)研究開発成果について
<判定基準>
・非常によい
・よい
・概ね妥当
・妥当とはいえない
(4)実用化、事業化の見通しについて
<判定基準>
・明確に実現可能なプランあり
・実現可能なプランあり
・概ね実現可能なプランあり
・見通しが不明
A
B
C
D
A
B
C
D
A
B
C
D
A
B
C
D
→A
→B
→C
→D
→A
→B
→C
→D
→A
→B
→C
→D
4-4
参考資料1
プロジェクトの概要説明資料
本資料は、第1回「血中遊離DNAによる癌の高感度遺伝子診断システムに関する基
盤研究」(事後評価)分科会において、プロジェクト実施者がプロジェクトの概要を説明する際
に使用したものである。
事後評価分科会資料
「血中遊離 DNA によるがんの高感度遺伝子
診断システムに関する基盤研究」
健康福祉技術開発室
2002年8月9日
目次
1.医学・工学連携型研究事業の背景
健康福祉機器産業の動向
健康福祉機器開発の方向性
2.医学・工学連携型研究事業の目的
3.国の関与の必要性
1
1.医学・工学連携型研究事業の背景
従来の企業を中心とした工学技術のみでのアプローチで
は新しい医療機器・技術を世界に先駆けて開発するには限界
が生じつつあるとの問題意識が背景
診断装置に強く、治療装置・使い捨て器具などに弱い国内
医療機器産業との認識
方向性:
・低侵襲化
・診断・治療の統合
・形態画像と機能画像の統合
2
2.医学・工学連携型研究事業の目的
医学的研究に軸足をおきつつ、基礎的研究を大学等の医学
研究者と工学研究者が共同して行うことによって、医療技術
を工学技術に転換するシーズ作りを目的とする。
医学的ニーズとその解決のための工学的研究をごく近い
距離で実施し互いの知見を有効に研究に反映
機器開発における仕様にみる数値目標ではなく、新たな技
術シーズの研究開発を目的とし、プロジェクト型研究開発に
おける機器やシステムの具体的開発とは異なる。
本研究事業終了後には開発されたシーズ技術を機器開発
へと発展させることを期待している。
3
3.国の関与の必要性
国のリーダーシップによって、医学的研究と工学的研究が
その枠を越えて協力し、企業群の協力を得つつ、新たな技術
を生み出す。
高額な先端的医療機器(MRI、X 線 CT、放射線治療装置など)
を組み合わることによるさらに高度な医療技術、医療機器技
術の開発を可能にする。
4
がん診断技術と「血中遊離 DNA によるがんの高感度遺伝子診断システムに関する
基盤研究」の位置付け及び成果
癌 の 診 断 技 術
生 検 サ ン プ ル
手法
DNA診断
mRNA
遺伝子変異
遺伝子発現
・シークエンサー
・
シークエンサー
・DHPLC法
血 液
血中遊離
DNA
タンパク
・腫瘍マーカー分析
・
DNAマイクロアレイ ・タンパクマス
スペクトロスコピー
・DNAマイクロアレイ
画 像
血中
タンパク質
高感度定量
遺伝子変異
・PCR
・
シークエンサー
・Intra-Alu-PCR
・
DHPLC法
(定量PCR装置)
・
DNAマイクロアレイ
・腫瘍マーカー分析
・タンパクマス
スペクトロスコピー
・ロボットシステム
半自動化
新規変異と疾病の
関係の発見
Intra-Alu-PCRによる超高感
度定量技術の確立
担癌患者と健常人群との境
6
界値を設定できた
血中遊離DNA中
の癌特異的遺伝
子変異の高感度
検出
本研究の位置づけ
本研究の成果
参考資料 2
本資料は、第1回「血中遊離DNAによる癌の高感度遺伝子診断システムに関する基盤
研究」(事後評価)分科会において、評価の事務局である新エネルギー・産業技術総合開発機構
技術評価部から、株式会社テクノリサーチ研究所へ関連技術の周辺動向調査を依頼したものであ
る。
血中遊離DNA
血中遊離DNAによる
DNAによる
癌の高感度遺伝子診断システムに関する基盤研究
周辺動向調査
平成14年8月
株式会社テクノリサーチ研究所
1
目 次
1.ライフサイエンスの動向
3.国内外の主な関連研究の動向
ライフサイエンスの近年の歴史的経緯
我が国のライフサイエンス分野の近年の政策
プロジェクト線図
国内の血中遊離DNAを用いる遺伝子診断関連研究例
海外の血中遊離DNAを用いる遺伝子診断関連研究例
2.癌の診断技術の動向
死因別死亡率の推移(主な疾患)
性別に見た死因順位別死亡数(人口10万対)
死因別割合(2001年)
癌のメカニズム
癌の診断法(肺癌のケース)
癌の診断技術と本研究の位置づけ並びに成果
腫瘍マーカーの概要
代表的な腫瘍マーカー
CEA(癌胎児性抗原)の陽性率
AFP(αフェトプロテイン)の陽性率
CA19-9の陽性率
遺伝子診断の目的による分類と現状
4.関連特許・文献の推移
国内の関連特許
海外の関連特許
5.その他
市場の規模
他技術の健康保険適用への道のり
癌自体のDNA遺伝子異常の検索
2
参考資料2-1-1
ライフサイエンスの近年の歴史的経緯
年
月
内 容
1953年
ジェームス・ワトソンとフランシス・クリックが、DNA二重らせん構造を発見
1973年
コーエン、ボイヤーが遺伝子組み替え技術を確立(遺伝子工学の幕開け)
1978年
カリフォルニア大学Y・W・カンが、DNAを利用した世界初の出生前診断を実施
1983年
神経科学者ジム・ガゼラが、ハンチントン病の患者のDNA断片に特有のパターンがあることを発見
1983年
PCR法を考案
ケリー・マリスがPCR
PCR法を考案
1989年
フランシス・コリンズらが「ポジショナル・クローニング法」により嚢胞性線維症の遺伝子を発見
1990年
9月
1990年 10月
1995年
NIHにおいて世界初の遺伝子治療実施(ADA欠失症)
「ヒトゲノム解析計画」プロジェクトスタート
日本初の遺伝子治療実施(ADA欠失症)
米国民間研究所がインフルエンザ菌のゲノム解読終了(最初の解読終了生物)
1996年
かずさDNA研究所がラン藻のゲノム解読(最初の独立栄養生物)
1999年 12月
英米日の国際チームにより、ヒト22番染色体解読
2000年
5月
英米日の国際チームにより、ヒト21番染色体解読
4月
セレラ社がヒト全遺伝子の解読を終了したと宣言
6月
国際ヒトゲノム計画チーム、全ゲノムの概要版(ドラフト)を発表
2001年
2月
『ネイチャー』誌に国際ヒトゲノム計画チームが「ヒトゲノムのドラフト配列決定と分析」を発表
「ヒトゲノムのドラフト配列決定と分析」を発表
2001年
2月
『サイエンス』誌にセレラ・ジェノミクス社がヒトゲノム解析結果を発表
ヒトゲノム解析結果を発表
2002年 7月
米国研究グループが解読されたヒトゲノムから、ポリオウイルスの合成に成功(人造生物への第一歩)
2003年
国際チームはゲノム完全解読目標
3
我が国のライフサイエンス分野の近年の政策
年 月
政 策
1996年
7月
科学技術基本計画(1996-2000)
1997年
8月
ライフサイエンス基本計画(ライフサイエンス部会)
1999年
1月
ゲノム科学長期的考え方(ゲノム科学委員会)
2000年
1月
バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方針(5省庁)
6月
平成12年度科学技術振興に関する重点指針(政策委員会)
7月
バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本戦略(5省庁)
11月
バイオ産業技術戦略(日本バイオ産業人会議)
バイオ産業技術戦略
11月
ヒトゲノム多型情報に係る戦略
12月
バイオ・ミレニアム基本方針
6月
12月
2001年
3月
2002年
7月
平成13年度科学技術振興に関する重点指針(政策委員会)
ポストゲノム戦略
科学技術基本計画(2001-2005)
内閣総理大臣がバイオテクノロジー戦略会議を開催
4
参考資料2-1-2
死因別死亡率の推移(主な疾患)
人口10万対
350
300
250
200
150
100
50
0
1910
1920
悪性新生物
1930
1940
心疾患
1950
1960
脳血管疾患
1970
肺炎
1980
1990
肝疾患
2000
全結核
注1)表題の死因名はIDC-10による
注2)1994年までの数値は旧分類によるものである。「肺炎」←「肺炎及び気管支炎」(分類変更)、「肝疾患」←「慢性肝疾患及び肝硬変」(分類変更)
注3)心疾患は高血圧性を除く。
資料)厚生労働省大臣官房統計情報部「人口動態統計」
5
性別に見た死因順位別死亡数
死因別割合
(人口10
(人口10万対)
10万対)
(2001年)
年)
200,000
その他
22.0%
男
150,000
老衰
2.3%
女
100,000
自殺
3.0%
不慮の事故
4.1%
50,000
そ の他
自殺
老衰
不 慮 の事 故
肺炎
脳血管疾患
心疾患
悪性新生物
0
悪性
新生物
31.0%
心疾患
15.3%
肺炎
8.8%
脳血管疾患
13.6%
資料)平成13年人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚生労働省)
6
参考資料2-1-3
癌のメカニズム
環境的要因
遺伝的要因
・癌遺伝子の活性化
癌遺伝子の活性化
点突然変異
遺伝子増幅
遺伝子再構成(転座)
・癌抑制遺伝子の不活性化
癌抑制遺伝子の不活性化
点突然変異
塩基の欠失・挿入
染色体の欠失
・DNA修復酵素遺伝子の
DNA修復酵素遺伝子の
不活性化
変異
多
段
階
発
癌
・環境中の発癌物質による
環境中の発癌物質による
遺伝子変異の誘発
たばこの煙に含まれるベンツピレンは、
癌抑制遺伝子「p53遺伝子」の246番目
の塩基を別の塩基に置き換える
→肺がんを誘発
カビが作る「アフラトキシン」毒素は、
癌抑制遺伝子「p53遺伝子」の249番目
の塩基を別の塩基に置き換える
→肝臓ガンを誘発
癌化
資料)横田淳編集「癌化のメカニズムを解く」を基にTRI作成
7
癌の診断法(肺癌のケース)
《病理形態学的診断》
喀痰検査、レントゲン検査、経皮的肺針生検
気管支ファイバースコープ、気管支電子スコープ、
CT、MRI、ヘリカルCT(三次元的画像、X線被爆量の減少)
コンピュータによる画像処理(X線被爆量の減少、遠隔診断)
胸腔鏡(きょうくうきょう)(手術)検査他
《腫瘍マーカーによる診断》
血液検査、尿検査により一部の癌の診断が可能
血清中のProGRPを測定し、肺癌中の小細胞がんの補助診断に用いる
(陽性率50∼70%)
(1996年5月、健康保険適用が認められる)
《遺伝子診断》
癌と関連する遺伝子変異を利用した診断
8
参考資料2-1-4
癌の診断技術と本研究の位置づけ並びに成果
癌 の 診 断 技 術
生 検 サ ン プ ル
手法
血 液
血中遊離
DNA
DNA診断
mRNA
遺伝子変異
遺伝子発現
・シークエンサー
・シークエンサー
・DHPLC法
・DNAマイクロアレイ ・タンパクマス
・DNAマイクロアレイ
タンパク
・腫瘍マーカー分析
スペクトロスコピー
画 像
血中
タンパク質
高感度定量
遺伝子変異
・PCR
・シークエンサー
・腫瘍マーカー分析
・Intra-Alu-PCR
・DHPLC法
・タンパクマス
スペクトロスコピー
(定量PCR装置)
・DNAマイクロアレイ
・ロボットシステム
半自動化
Intra-Alu-PCRによる超高感
度定量技術の確立
新規変異と疾病の
関係の発見
担癌患者と健常人群との境
界値を設定できた
血中遊離DNA中
の癌特異的遺伝
子変異の高感度
検出
本研究の位置づけ
本研究の成果
9
腫瘍マーカーの概要
腫瘍マーカーとは、
腫瘍マーカーの問題点
正常細胞ではほとんど
産生されず腫瘍細胞に
特異的に産生される物
質(タンパク)
1.
使用するキット間で基準値が異なる(CEA、CA19-9等)。
また互換性も無いので同一施設内、同一キットでしか比較
できない。
2.
基準値として、低いカットオフ値と高いカットオフ値を設
け、その間をグレーゾーンとしているが、グレーゾーンの
幅が広くスクリーニングには適さない。
または腫瘍細胞が生体
内にあることによって
産生される物質
低いカットオフ値より低い ⇒ ほぼ健常
高いカットオフ値より高い ⇒ 進行した胆癌状態
現在、どのように利用
されているか
①癌の補助診断
グレーゾーン ⇒ 確認が必要
3.
腫瘍マーカーは癌を発見できる指標ではなく、臨床状態ま
たは他の検査で腫瘍が高い確率で疑われる場合に検査する
ものである。
4.
一般に腫瘍マーカーは進行癌にならなければ血中濃度は増
加しないため、早期の発見につながらない。
5.
多くの腫瘍マーカーは癌以外の病気でも上昇することがあ
るため、画像診断等の補助診断として実施する。
②病期の判定
③治療効果の判定
④経過観察
⑤予後推定
10
参考資料2-1-5
代表的な腫瘍マーカー
CA19-9
CA50
神経及び
検体量 検査日数 網膜芽 甲状腺
髄様癌
(日)
(ml)
細胞腫
院内
血清 0.3
○
1
院内
血清 0.2
1
血清 0.5
3-5
血清 0.3
ProGRP
血清 0.2
3-5
DU-PAN-2
血清 0.2
3-5
腫瘍マーカー
CEA
AFP
胆嚢・胆 結腸・直
管癌
腸癌
食道癌
肺癌
乳癌
肝細胞癌
胃癌
膵癌
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
○
○
○
○
◎
◎
○
○
◎
○
◎
◎
○
○
◎
○
◎
◎
○
○
○
○
○
○
腎癌
子宮頚癌
前立腺 胚細胞腫瘍
卵巣腫瘍
子宮体癌
癌
絨毛性腫瘍
○
○
○
○
◎
STN
血清 0.3
2-6
○
○
○
○
○
○
◎
CA72-4
血清 0.5
3-5
○
○
◎
◎
○
◎
○
○
CA125
血清 0.5
3-5
○
○
◎
◎
○
◎
CA130
血清 0.5
2-8
○
○
○
○
CA15-3
血清 0.5
3-5
○
◎
○
○
○
○
◎
○
血清 0.3
2-4
BCA225
◎
NSE
血清 0.3
2-5
3-5
ポリアミン
尿 5
2-4
フェリチン
血清 0.3
2-4
◎
○
○
血清 0.3
2-4
血清 0.5
3-5
BFP
血清 0.3
尿 0.5
3-5
◎
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
◎ は陽性率が50%以上のもの
○ は陽性を示すが陽性率50%未満のもの
○
○
○
IAP
○
○
○
α2mG
TPA
○
◎
◎
サイトケラチン19
PSA、αSm、PAP 血清 0.5
○
○
POA
SCC抗原
○
◎
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
資料)腫瘍マーカーハンドブック、臨床検査データブック2001-2002、MediPro他
11
CEA(
CEA(癌胎児性抗原)の陽性率
悪性腫瘍
0
陽性率(%)
50
100
陽性率(%)
50
100
結腸直腸癌
大腸癌
膵癌
胆道癌
食道・胃癌
胃癌
肺癌
乳癌
甲状腺癌
肝細胞癌
子宮・卵巣癌
尿路系癌
良性疾患
0
肝硬変
肝炎
大腸炎
閉塞性黄疸
胃炎
糖尿病
慢性呼吸疾患
注)陽性率の上段はMediPro、下段は腫瘍マーカーハンドブック記載データ
参考資料2-1-6
12
AFP(α
AFP(αフェトプロテイン)の陽性率
悪性腫瘍
0
陽性率(%)
50
100
陽性率(%)
50
100
原発性
肝細胞癌
肝芽腫
卵黄嚢腫瘍
転移性肝癌
胃・胆道・
膵・結腸癌
胃・膵癌
肺癌
良性疾患
0
肝硬変
肝炎
乳児肝炎
先天性胆道
閉塞症
奇形腫
奇形児
妊娠時
注)陽性率の上段はMediPro、下段は腫瘍マーカーハンドブック記載データ
13
CA19CA19-9の陽性率
0
陽性率(%)
50
100
0
陽性率(%)
50
100
悪性腫瘍
膵癌
膵管癌
胆道系癌
肝癌
食道・胃癌
結腸・直腸
大腸癌
泌尿器系癌
婦人科癌
肺癌
良性疾患
膵炎
胆道系炎症
肝炎・肝硬変
卵巣嚢腫
注)陽性率の上段はMediPro、下段は腫瘍マーカーハンドブック記載データ
14
参考資料2-1-7
遺伝子診断の目的による分類と現状
・ 発症前のリスク発癌診断
・ 発症前のリスク発癌診断
体の細胞からDNAを抽出し、ジデオキシ法により目的とする遺伝
子の塩基配列を決定する。現在、塩基配列はシークエンサーと
呼ばれる機械で決定している。(家族性大腸腺腫症、遺伝性非
ポリポーシス大腸癌、家族性乳癌等の診断)
・ 癌細胞の検出を目的とした診断
・ 癌細胞の検出を目的とした診断(本プロジェクト)
癌細胞の検出を目的とした診断(本プロジェクト)
PCR法を用い異常遺伝子を特異的に増幅し、癌細胞を検出する。
従来の病理診断では検出感度以下の癌細胞の存在を調べる。
(白血病の染色体転座に伴うキメラ遺伝子検出 、点突然変異を
起こしたK-ras遺伝子検出 、腹腔洗浄液からの微小転移診断 )
・ 癌の個性の評価
・ 癌の個性の評価
癌の性質を分子生物学的に判断し、転移・湿潤能、細胞増殖の速
さ、化学療法や放射線療法の感受性などを判断する。
15
プロジェクト線図
80
90
2000
2010
ヒトゲノム解析計画
国 際
NIHを中心とした癌関連研究
米 国
91 国家バイオ政策報告書
EU枠組み計画を中心とした癌関連研究
欧 州
2002 欧州ライフサイエンス・バイオ戦略
日 本
2000
04
ミレニアムプロジェクト
政府
98
2000
ゲノムDNA情報の構造生物学的解析
98
04
ゲノムフロンティア開拓研究
文部科学省
99
01
がん細胞標的治療プロジェクト
02
06
タンパク3000プロジェクト
02
08
バイオリソースプロジェクト
厚科研費研究
厚生労働省
2000
04
薬剤反応性遺伝子解析
87
84
光化学反応がん診断・治療
85
88
免疫学的がん診断装置
86
89
がん治療用ハイパーサミア
92
95
定位的がん治療装置
95
経済産業省
99
高感度DNA光検査
95
2000
微量細胞情報検出
99
01
本プロジェクト
2000
02
微小電極利用遺伝子情報計測システム(医工連携)
16
参考資料2-1-8
国内の血中遊離DNA
国内の血中遊離DNAを用いる遺伝子診断関連研究例
DNAを用いる遺伝子診断関連研究例
実 施
者
内
容
末梢血遊離癌関連遺伝子 hypermethylation の有無による癌再発の診断
金沢大学医学部第 1 外科
大村健二、川上和之、石田善敬、前田一也、金平永二
金沢大学医学部第 1 外科
大腸 癌患 者 の 血中 遊 離 DNA に お け る 癌関 連 遺 伝 子プ ロ モ ータ 領域 の
前田一也
hypermethylation
大阪大学大学院医学系研究科病態制御外科
膵臓癌の血中遊離 DNA 検出
秋田大学医学部臨床検査医学講座
末梢血液中遊離 DNA による悪性腫瘍診断に関する研究
京都大学医学部泌尿器科
末梢血液中 Uroplakin II mRNA を指標とした尿路上皮癌の転移診断
呂家駒, 筧善行, 高橋毅, 小川修
RT-PCR 法による前立腺癌患者末梢血中の前立腺特異抗原(PSA)mRNA の
東京医科大学泌尿器科
伊藤貴章, 大久保雄平, 相澤卓, 秋山昭人, 山本真也, 三木誠, 大野芳正
検出
鹿児島大学医学部第一外科 1)
胃癌治癒切除例における血中遊離癌細胞検出の臨床的意義−血行性再発の
鹿児島共済会南風病院
1)
2)
予知可能性−
1)
1)
2)
1)
2)
宮薗太志 , 夏越祥次 , 帆北修一 , 山田一隆 , 馬場政道 , 末永豊邦 ,
1)
高尾尊身 , 愛甲孝
1)
RT-PCR 法を用いた食道癌手術症例の血中遊離癌細胞検出とその意義
鹿児島大学医学部
中島 三郎, 夏越 祥次, 松本 正隆, 宮薗 太, 馬場 政道, 高尾 尊身, 愛甲
孝
愛媛大学医学部歯科口腔外科
口腔癌患者の末梢血、骨髄液中における循環癌細胞の検出に関する検討(口
住田 知樹、善 啓史、浜川 裕之
腔癌患者 26 名の新鮮組織及び末梢、骨髄より血液を採取し、conventional 及
び TaqMan RT-PCR 法にて SCCA、CK13 の mRNA 発現を検討)
燕労災病院外科
胃癌における血中遊離癌細胞の検出(Cytokeratin
20 の primer を用いた
山口和也、宮下薫、大橋泰博、浅海信也、轟木秀一、斎藤義之、北原光太郎、 nested RT-PCR により、胃癌患者の末梢血、門脈血中の遊離癌細胞の検出)
大黒善彌
17
海外の血中遊離DNA
海外の血中遊離DNAを用いる遺伝子診断関連研究例
DNAを用いる遺伝子診断関連研究例
実 施 者
Wong IH, Lo YM, Johnson PJ.
Lo YM.
Fleischhacker M.
Shao ZM, Wu J, Shen ZZ, Nguyen M.
Taback B, Fujiwara Y, Wang HJ, Foshag LJ,
Morton DL, Hoon DS.
Hirst GL, Illand M.
Anker P, Stroun M.
Allan JM, Hardie LJ, Briggs JA, Davidson LA,
Watson JP, Pearson SB, Muers MF, Wild CP.
Gonzalez R, Silva JM, Sanchez A, Dominguez G,
Garcia JM, Chen XQ, Stroun M, Provencio M,
Espana P, Anker P, Bonilla F.
Botezatu I, Serdyuk O, Potapova G, Shelepov V,
Alechina R, Molyaka Y, Ananev V, Bazin I, Garin A,
Narimanov M, Knysh V, Melkonyan H, Umansky S,
Burchill SA, Selby PJ.
Sozzi G, Musso K, Ratcliffe C, Goldstraw P, Pierotti
MA, Pastorino U.
Anker P, Mulcahy H, Chen XQ, Stroun M.
内 容
Epigenetic tumor markers in plasma and serum: biology and applications to molecular diagnosis
and disease monitoring.
Circulating nucleic acids in plasma and serum: an overview.
Ann N Y Acad Sci. 2001 Sep;945:1-7. Review.
The 2nd International Symposium on Circulating Nucleic Acids in Plasma and Serum (CNAPS-2),
Hong Kong, February 20-21, 2001.
Eur J Med Res. 2001 Aug 27;6(8):364-8.
p53 mutation in plasma DNA and its prognostic value in breast cancer patients.
Clin Cancer Res. 2001 Aug;7(8):2222-7.
Prognostic significance of circulating microsatellite markers in the plasma of melanoma patients.
Cancer Res. 2001 Aug 1;61(15):5723-6.
Automated fluorescent detection of microsatellite instability.
Mol Biotechnol. 2001 Mar;17(3):239-47.
Circulating DNA in plasma or serum.
Medicina (B Aires). 2000;60(5 Pt 2):699-702. Review.
Genetic alterations in bronchial mucosa and plasma DNA from individuals at high risk of lung
cancer.
Microsatellite alterations and TP53 mutations in plasma DNA of small-cell lung cancer patients:
follow-up study and prognostic significance.
Ann Oncol. 2000 Sep;11(9):1097-104.
Genetic analysis of DNA excreted in urine: a new approach for detecting specific genomic DNA
sequences from cells dying in an organism.
Clin Chem. 2000 Aug;46(8 Pt 1):1078-84.
Molecular detection of low-level disease in patients with cancer.
J Pathol. 2000 Jan;190(1):6-14. Review.
Detection of microsatellite alterations in plasma DNA of non-small cell lung cancer patients: a
prospect for early diagnosis.
Clin Cancer Res. 1999 Oct;5(10):2689-92
Detection of circulating tumour DNA in the blood (plasma/serum) of cancer patients.
Cancer Metastasis Rev. 1999;18(1):65-73. Review.
Presence of tumor DNA in plasma of breast cancer patients: clinicopathological correlations.
Cancer Res. 1999 Jul 1;59(13):3251-6.
Silva JM, Dominguez G, Garcia JM, Gonzalez R,
Villanueva MJ, Navarro F, Provencio M, San Martin
S, Espana P, Bonilla F.
Genetic detection and clinical applications in patients with hepatocellular carcinoma
Takeda S, Nakao A.
Nippon Geka Gakkai Zasshi. 2002 Jun;103(6):472-5. Japanese.
18
参考資料2-1-9
国内の関連特許
期間
PATOLIS
特許・出願:1991年1月1日~2000年12月31日まで(公開日2002年5月15日まで)
検索式
A
FK=(血中+血液)
B
FK=DNA
C
FK=(癌診断+(癌+ガン+がん)*診断)
検索式①:A*B*C
特許10件(血中遊離DNAによる癌診断)
検索式②:B*C
特許273件(DNAによる癌診断)
DNAによる癌診断(日本)
出
願
件
数
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
出願年
19
海外の関連特許
期間
WPI
特許・出願(優先権主張):1991年1月1日~2000年12月31日
検索式
(PLASMA+BLOOD)*(DNA+DEOXYRIBONUCLEIC(W)ACID+DEOXYRIBO(W)NUCLEIC(W
D
DEOXY(W)RIBO(W)NUCLEIC(W)ACID)
E
CANCER
DIAGNOSIS
F
AC(出願国)=US+AC=WO(国際出願)*DS(指定国)=US
G
AC=(DE+FR+GB)+AC=(EP(欧州特許庁出願)+WO)*DS=(DE+FR+GB)
H
検索式①:D*E*F*G
検索式②:D*E*F*H
特許273件
特許250件
出願年は優先権主張年とする
欧州は、イギリス、ドイツ、フランスへの出願特許とする
(GB:イギリス、DE:ドイツ、FR:フランス)
血中DNAによる癌診断(欧米)
140
120
100
出
願 80
件 60
数
40
米国
欧州
20
0
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000
出願年
20
参考資料2-1-10
日本及び米国における血中遊離DNA
日本及び米国における血中遊離DNAによる
DNAによる
癌診断関連の分件数の推移
45
日本
米国
40
35
30
文 25
献
数 20
15
10
5
0
1991
1993
1995
1997
年
1999
2001
データベース : 日本 JMEDICINE(一部JOISも含む)
米国 MEDLINE
21
市場規模
腫瘍マーカー種類
サイトケラチン 19
1995 年
1996 年
1997 年
2.55
1998 年
1999 年
2000 年
2001 年
2002 年
(予測)
(予測)
(予測)
(予測)
(予測)
2.87
3.25
3.75
4.10
4.45
1.24
2.66
ProGRP
−
0.70
1.40
1.50
1.55
1.60
1.65
1.70
CSLEX
−
−
0.04
0.16
0.40
0.80
1.20
1.60
GAT
−
−
0.05
0.20
0.50
1.50
2.50
3.50
AFP−L3
−
1.00
3.00
6.00
10.00
15.00
20.00
25.00
フラグメント(シフラ)
• これら5種類の腫瘍マーカーの2002年売上予測合計は約36億円
• これら5種類に含まれないCEA、PSA、CA125、CA19-9、PAなどの代表的な腫瘍
マーカーも、人間ドッグのオプション検査として利用されており、腫瘍マーカー
全体では数百億円規模の市場が存在すると推定される。(参考:腫瘍マーカーを
含む体外診断用医薬品の国内生産金額は約1870億円(平成11年薬事工業生産動態
統計年報))
• 血中遊離DNAによる癌の診断法が確立し、現状の腫瘍マーカー市場の10%のシェ
アを獲得すると仮定した場合、市場規模は数十億円規模となる
22
参考資料2-1-11
健康保険適用までの経緯例
診断法、新薬など
診断法や新薬が承認され
てから健康保険に適用さ
れるまでの期間は、過去
においてはヘリコバクター
ピロリ除菌療法などのよ
うに10年以上も経過した
ケースもあったが、最近
はかなり短縮化している。
次表に示した例では、2ヶ
月∼3年で健康保険適用に
至っている。
健康保険適用までの経緯
1994 年
国立がんセンター山口らが優れたマーカーであることを示す
1995 年
より広い臨床応用を目的に測定用キットを開発し、全国 16 施設
腫瘍マーカーProGRP
で研究会が組織され、健常者と肺癌患者の比較検討から肺小細胞癌での有
東燃(株)、テルモ(株)
用性を確認
1996 年 5 月
健康保険適用
メルボルン大学(グレアム・クラーク博士)が発明し国家プロジェクトで
開発後、世界 80 カ国で使用
人工内耳ニュークレアス 22
(株)日本コクレア社
1985 年 12 月 我が国で最初に臨床応用
1991 年 1 月
医療用具として厚生省より承認
1994 年 4 月
健康保険適用
改良品ニュークレアス 22 は 1999 年 7 月承認、2000 年 1 月健康保険適用
1998 年
輸入承認申請(米国ダイジーン社製)
HPV 遺伝子検査試薬
2000 年 3 月
米国 FDA 承認
三菱化学メディカル(株)
2002 年 1 月
輸入承認(欧米で広く臨床の場で使用)
インフルエンザ治療薬
グラクソ・スミスクライン社
インフルエンザ治療薬
日本ロシェ社
2002 年 4 月
HPV 遺伝子検査試薬発売、保険適用申請中
1999 年 8 月
申請
1999 年 12 月
承認(前年のインフルエンザによる死者 1152 人を踏まえ)
2000 年 12 月 販売(保険適用を待ったが見切り発車)
2001 年 2 月
健康保険適用
2000 年 8 月
申請
2000 年 12 月 承認
2001 年 2 月
健康保険適用
23
癌自体の遺伝子異常の検索
No.
1
2
3
4
論 文 名
概 要
Ta nino, M., Ma ts uo, M., Ue na ka , A., Ts ukuda , K., マウス白血病細胞RL♂1で活性化している RL-akt 遺伝子が
実際に細胞の癌化及びアポトーシスの回避に重要な機能を果
Ouchida , M., Na ka ya ma , E. a nd S himizu, K.:
Tra ns forming Activity of the RL-akt Ge ne , a c-akt たすことをcDNAの発現実験から明らかにした。マウス白血病
Ge ne Activa te d by Long Te rmina l Re pe a t Ins e rtion in 細胞RL♂1 では、 RL-akt 遺伝子の通常は非翻訳領域が翻訳
されて癌排除抗原となっているが、抗原形成だけでなく、白
Murine Le uke mia RL♂1 Ce lls .
血病発症の過程に本遺伝子が積極的に関与した可能性を示し
Mol. Carcinoge ne s is , 26, 286-297, 1999.
た。
渡辺和英、谷口律子、川上英治、荒木博陽、五味田 薬剤の代謝に重要な機能を果たすP 450 遺伝子の個人差(遺伝
裕、清水憲二:
的多型)を判定する際に問題となる内部対照を全く新しい方
CYP 2C遺伝子型判定における制限酵素消化の陽性対照 法で導入する方法を開発し、有効な結果を得た。
の設計.
TMD研究、17 (1), 17-23, 2000.
Ichimura , K., Ha na fus a , H., Ta kimoto, H., Aka gi, T. a nd RB関連癌抑制遺伝子候補である p107 遺伝子の全構造を初め
て明らかにし、我々が発見したヒトリンパ腫細胞株における
Shimizu, K.:
Structure of the huma n re tinobla s toma - re la te d p107 本遺伝子の異常がヒト Al u 配列間の異常組換えによる、エク
ge ne a nd its intra ge nic de le tion in a B-ce ll lymphoma ソン5個を含む 15 kbp の領域の欠失であることを見い出し
た。RB関連癌抑制遺伝子候補である p107 遺伝子のヒト悪性
Ge ne , 251, 37-43, 2000.
腫瘍における遺伝子異常を世界最初に発見した論文である。
Gunduz, M., Ouchida , M., Fukus hima , K., Ha na fus a , 染色体 13q34 領域における高頻度の欠失を頭頸部癌で発見
H., Eta ni, T., Nis hioka , S ., Nis hiza ki, K. a nd S himizu, し、この領域にある癌抑制遺伝子候補 I NG1 の全構造を決定
Ge nomic S tructure of the Huma n ING1 Ge ne a nd してプロモーター領域を特定すると共に、3種の異なる転写
Tumor- s pe cific Muta tions De te cte d in He a d a nd Ne ck 産物があること、I NG1 タンパクの活性を喪失させるミスセン
ス変異が原発頭頸部癌で少なくとも3ヵ所あることを発見し
Squa mous Ce ll Ca rcinoma s .
た。本遺伝子が癌抑制遺伝子であることを初めて証明した業
Cance r R e s ., 60 , 3143-3146, 2000.
績で多くの引用がある。
雑誌IF
3. 1
―
2. 46
8. 46
24
参考資料2-1-12
血中遊離 DNA による
癌の高感度遺伝子診断システムに関する基盤研究
周辺動向調査
平成 14 年 8 月
株式会社テクノリサーチ研究所
目
次
ライフサイエンスの動向 .................................................................参考資料 2-2-1
1.
(1)
歴史的経緯 ...............................................................................参考資料 2-2-1
(2)
我が国の政策............................................................................参考資料 2-2-3
(3)
欧米の政策 ...............................................................................参考資料 2-2-4
癌の診断技術の動向 ........................................................................参考資料 2-2-5
2.
(1)
癌を中心とする疾病の動向.......................................................参考資料 2-2-5
(2)
癌のメカニズム ........................................................................参考資料 2-2-7
(3)
癌の診断法 ...............................................................................参考資料 2-2-8
(4)
腫瘍マーカー技術の現状 ........................................................参考資料 2-2-10
(5)
癌の遺伝子診断技術の現状.....................................................参考資料 2-2-15
国内外の主な関連研究の動向 ........................................................参考資料 2-2-16
3.
(1)
国内........................................................................................参考資料 2-2-17
(2)
海外........................................................................................参考資料 2-2-22
関連特許・文献の推移...................................................................参考資料 2-2-26
4.
(1)
特許........................................................................................参考資料 2-2-26
(2)
文献........................................................................................参考資料 2-2-28
その他 ...........................................................................................参考資料 2-2-29
5.
(1)
市場の規模 .............................................................................参考資料 2-2-29
(2)
他技術の健康保険適用への道のり ..........................................参考資料 2-2-30
(3)
癌自体の DNA 遺伝子異常の検索...........................................参考資料 2-2-31
付帯資料
1.
バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方針(概要).............................参考資料 2-2-36
2.
バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本戦略(概要).............................参考資料 2-2-37
3.
バイオ産業技術戦略(概要) ..........................................................................参考資料 2-2-38
4.
ミレニアム・ゲノム・プロジェクト................................................................参考資料 2-2-40
5.
文部科学省:バイオリソースプロジェクト、タンパク 3000 プロジェクト .....参考資料 2-2-41
6.
文部科学省:科学技術振興調整費、国研活性化プログラム関連プロジェクト.参考資料 2-2-42
7.
厚生労働省:薬剤反応性遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業...............参考資料 2-2-46
8.
厚生労働省:厚生科学研究費関連研究 ............................................................参考資料 2-2-46
9.
経済産業省関連プロジェクト ..........................................................................参考資料 2-2-50
10.
その他機関の研究例 ........................................................................................参考資料 2-2-52
11. 血中遊離 DNA による癌診断関連の特許概要(日本).....................................参考資料 2-2-54
12.
血中遊離 DNA による癌診断関連の特許概要(海外):一部のみ記載..............参考資料 2-2-58
13.
文献の検索式...................................................................................................参考資料 2-2-64
14.
参考文献..........................................................................................................参考資料 2-2-68
1.ライフサイエンスの動向
本プロジェクト「血中遊離 DNA による癌の高感度遺伝子診断システムに関する基礎研
究」は、初期の癌を的確に診断できる技術を開発するもので、最近新たな分野として注目
されている遺伝子診断の手法を用いたものである。ここでは、近年のライフサイエンスの
動向を概観し、本プロジェクトの背景を探る。
(1) 歴史的経緯
ジェームス・ワトソンとフランシス・クリックが 1953 年に DNA 二重らせん構造を発見
し、遺伝の仕組みを分子レベルで明確に説明することが可能となった。
1973 年のコーエン、ボイヤーによる遺伝子組み換え技術の確立は、遺伝子工学の幕開け
と位置付けられている。
1978 年には Y・W・カンによって DNA を利用した世界初の出生前診断が実施され、1983
年にはジム・ガゼラがハンチントン病の患者の DNA 断面に特有のパターンがあることを発
見している。
同じく 1983 年にはケリー・マリスが PCR 法を考案し、必要な DNA 断片を簡単な操作
で数時間の間に大量に増幅することが可能になった。現在は PCR 反応自体が自動化されて
おり、スイッチ一つ押せば数時間後には 100 万倍に増量した DNA を入手できる。
1990 年には「ヒトゲノム解析計画」がスタートし、2001 年 2 月には国際ヒトゲノム計
画チームとセレラ・ジェノミクス社がヒトゲノムの解析結果を発表した(完全解読は 2003
年以降)。これによって、人類はゲノム情報によってつくりだされるタンパク質の構造や機
能を解明するプレテオミクスの時代に突入した。
また、バイオと情報技術の接点としてコンピュータ解析による遺伝子の構造・機能の解
析研究(バイオインフォマティクス)が盛んになってきており、その基盤としてバイオ情
報の共通データベースが重要性を増してきている。
このように理論的バイオ技術では、生物系の知識だけではなく、情報、電子、機械とい
った共通基盤技術が重要になってきており、異分野の技術を融合し独自のアイデアを生み
出したベンチャー企業が技術革新を担っているケースが多い。
また、遺伝子はその有用な機能を解明することで特許化が可能であること、遺伝子の数
が有限であることから、世界中で特許取得に向けた競争が激化している。
参考資料 2-2-1
図表 1
ライフサイエンスの近年の歴史的経緯
年 月
内
容
ジェームス・ワトソンとフランシス・クリックが、DNA 二重ら
1953 年
せん構造を発見
コーエン、ボイヤーが遺伝子組み替え技術を確立
1973 年
(遺伝子工学の幕開け)
カリフォルニア大学 Y・W・カンが、DNA を利用した世界初の
1978 年
出生前診断を実施
神経科学者ジム・ガゼラにより、ハンチントン病の患者の DNA
1983 年
断片に特有のパターンがあることを発見
1983 年
ケリー・マリスが PCR 法を考案
フランシス・コリンズらが「ポジショナル・クローニング法」
1989 年
により嚢胞性線維症の遺伝子を発見
1990 年 9 月
NIH において世界初の遺伝子治療実施(ADA 欠失症)
1990 年 10 月
「ヒトゲノム解析計画」プロジェクトスタート
1995 年
日本初の遺伝子治療実施(ADA 欠失症)
米国民間研究所がインフルエンザ菌のゲノム解読終了
(最初の解読終了生物)
かずさ DNA 研究所がラン藻のゲノム解読(最初の独立栄養生
1996 年
物)
1999 年 12 月
英米日の国際チームにより、ヒト 22 番染色体解読
2000 年 5 月
英米日の国際チームにより、ヒト 21 番染色体解読
4月
6月
2001 年 2 月
2001 年 2 月
2002 年 7月
2003 年
セレラ社がヒト全遺伝子の解読を終了したと宣言
国際ヒトゲノム計画チーム、全ゲノムの概要版(ドラフト)を
発表
『ネイチャー』誌に国際ヒトゲノム計画チームが「ヒトゲノムのド
ラフト配列決定と分析」を発表
『サイエンス』誌にセレラ・ジェノミクス社がヒトゲノム解析結
果を発表
米国研究グループが解読されたヒトゲノムから、ポリオウイル
スの合成に成功(人造生物への第一歩)
国際チームはゲノム完全解読目標
参考資料 2-2-2
(2) 我が国の政策
我が国のライフサイエンス政策は従来戦略や統一性の欠如が問題点として挙げられてい
たが、1997 年 8 月にライフサイエンス基本計画が策定され、1999 年 1 月には関係 5 省庁
によるバイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方針が、7 月にはバイオテクノロジー産
業の創造に向けた基本戦略が策定され、11 月にはバイオ産業技術戦略が策定された。
バイオ産業技術戦略では、バイオテクノロジーの産業化は、まず医療及び製薬等医療関
連分野においてゲノム創薬として開花しつつあり、今後は更に、個人ゲノム情報に基づき
適切な患者に適切な治療を施す「テーラーメイド医療」、個人の体質をゲノム情報レベルで
把握し未然に発病を防ぐ「予防医療」へと移行するとし、SNP などの遺伝情報を民間企
業が創薬研究や予防医療の研究に利用できるよう公共財として早急に整備することが必要
であるとしている。
また、1999 年 12 月にはこれらの方針を踏まえたミレニアム・ゲノム・プロジェクトが
策定され、2000 年度より 5 年間の期間で実施されている。2002 年 7 月には、内閣総理大
臣がバイオテクノロジー戦略会議を開催し、更なる戦略構築を目指している。
図表 2
年
我が国のライフサイエンス分野の近年の政策
月
政 策
1996年
7月
科学技術基本計画(1996-2000)
1997年
8月
ライフサイエンス基本計画(ライフサイエンス部会)
1999年
1月
ゲノム科学長期的考え方(ゲノム科学委員会)
1月
バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方針(5省庁)
6月
平成12年度科学技術振興に関する重点指針(政策委員会)
7月
バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本戦略(5省庁)
2000年
11月
バイオ産業技術戦略(日本バイオ産業人会議)
11月
ヒトゲノム多型情報に係る戦略
12月
バイオ・ミレニアム基本方針
6月
12月
2001年
3月
2002年
7月
平成13年度科学技術振興に関する重点指針(政策委員会)
ポストゲノム戦略
科学技術基本計画(2001-2005)
内閣総理大臣がバイオテクノロジー戦略会議を開催
注)以下の付帯資料参照
1. バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方針(概要)
2. バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本戦略(概要)
3. バイオ産業技術戦略(概要)
参考資料 2-2-3
(3) 欧米の政策
1) 米国
1991 年2月、米国大統領競争力委員会がまとめた「国家バイオテクノロジー政策報告書」
で、遺伝子特許戦略が打ち出され、米国では遺伝子特許の取得基準がゆるいこともあり、
現在遺伝子特許申請が盛んに行われている。
2002 年度大統領予算教書では、全科学技術予算は前年比 6.1%増加している。特にブッシ
ュ大統領が、大統領選で「積極的に支援する」と公約した DOD(国防総省)と NIH(国立
衛生研究所)は、前年予算を 10%以上も上回る予算を要求している。
2003 年度のバイオ関連政府機関の予算においても、NIH は 273 億ドルの予算を得ており、
2002 年度比で 15.7%の増加となっている。バイオテロ対策に重点を置いているが、癌や糖
尿病等の研究にも力を入れており、競争的研究グランドにも 36 億 4100 万ドルが充てられ
ている。
2) 欧州
2002年1月23日、欧州委員会は「欧州のライフサイエンスとバイオテクノロジー
に関する戦略(Life sciences and biotechnology - A Strategy for Europe)」を発表し
た。今後 10 年間で、IT と並ぶ最重要分野として位置付けている。
バイオ戦略は大きく「パート I(戦略編)」と「パート II(行動計画編)」に分かれてお
り、戦略編においては、ライフサイエンス及びバイオテクノロジーの有するポテンシャル
の大きさとそれを活用するための欧州としての政策のあり方、さらに国際面への配慮(国
際協調、途上国協力)の必要性等についてまとめられており、行動計画編では、具体的に
どういうタイムフレームで誰が何をするのかを、30の行動として整理して提示している。
医療関連では、ゲノムからドラッグデザインを重視し、特に英国等で強い新薬開発力の
更なる強化を狙っている。
参考資料 2-2-4
2.癌の診断技術の動向
(1) 癌を中心とする疾病の動向
我が国における死亡率の推移を死因別にみると、1950 年頃から悪性新生物(癌)、心疾患、
脳血管疾患等の生活習慣病の死亡率が上位を占め、中でも悪性新生物の死亡率は増加の一
途を辿り、1980 年頃から死因の第 1 位となっている。
図表 3
死因別死亡率の推移(主な疾患)
人口10万対
350
300
250
200
150
100
50
0
1910
1920
1930
1940
悪性新生物
肺炎
1950
1960
心疾患
肝疾患
1970
1980
1990
2000
脳血管疾患
全結核
注 1)表題の死因名は IDC-10 による
注2)1994 年までの数値は旧分類によるものである。「肺炎」←「肺炎及び気管支炎」(分類変更)
、
「肝疾
患」←「慢性肝疾患及び肝硬変」(分類変更)
注3)心疾患は高血圧性を除く。
資料)厚生労働省大臣官房統計情報部「人口動態統計」
参考資料 2-2-5
図表 4
性別にみた死因順位別死亡数(人口 10 万対)
総数
男
女
全死因
970,313
悪性新生物
300,586
(1)
528,765
181,354
(1)
441,548
119,232
(1)
心疾患
148,186
(2)
72,665
(2)
75,521
(2)
脳血管疾患
131,812
(3)
63,118
(3)
68,694
(3)
肺炎
85,265
(4)
45,735
(4)
39,530
(4)
不慮の事故
39,454
(5)
24,965
(5)
14,489
(6)
自殺
29,333
(6)
21,063
(6)
8,270
(8)
老衰
22,137
(7)
6,091 (11)
16,046
(5)
腎不全
17,675
(8)
8,195
(9)
9,480
(7)
肝疾患
15,837
(9)
10,902
(7)
4,935 (10)
慢性閉塞性肺疾患
13,063 (10)
9,665
(8)
3,398 (14)
200,000
男
女
150,000
100,000
50,000
そ の他
老衰
自殺
不 慮 の事 故
肺炎
脳血管疾患
心疾患
悪性新生物
0
資料)平成 13 年人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚生労働省)
図表 5
死因別割合(2001 年)
その他
22.0%
悪性新生物
31.0%
老衰
2.3%
自殺
3.0%
不慮の事故
4.1%
肺炎
8.8%
脳血管疾患
13.6%
心疾患
15.3%
資料)平成 13 年人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚生労働省)
参考資料 2-2-6
(2) 癌のメカニズム
癌は細胞内の遺伝子に変異が起こって発生する遺伝子の病気である。発癌に関与する遺
伝子には癌遺伝子と癌抑制遺伝子があり、多段階的にそれらの遺伝子に変異が蓄積するこ
とが、癌の発生ないし悪性化の原因である。
遺伝子が変異する確率は遺伝的要因や環境要因によって異なるので、癌になり易さは個
体差があり、また、発癌の予防も可能である。未分化な細胞が増殖しつづける癌の病態が、
個々の遺伝子異常との対応で理解され始めており、その結果を基にして、癌の遺伝子診断
法、遺伝子治療法の開発が進んでいる。
遺伝的な要因は家族性腫瘍の研究からわかってきた。癌を起こしやすい家系の解析から、
その原因遺伝子として多くの癌抑制遺伝子・癌遺伝子が見つかっている。多段階発癌過程
に必要な複数遺伝子変化のうち、1つの変異が遺伝的に受け継がれることによって、癌が
起こり易くなった状態と考えられる。
また、自然突然変異が起こりやすい人がいれば、その人も癌を起こしやすい。自然突然
変異の確率は DNA 合成酵素による DNA 複製と読み間違いを修復する DNA 修復酵素の活
性によって決まっており、DNA 合成酵素あるいは DNA 修復酵素の活性に個体差があれば、
癌が起こる確率も各個人によって違うことになる。
一方、環境要因としては食べ物やタバコの中に含まれる発癌物質による遺伝子変異の誘
発がある。
図表 6
癌のメカニズム
環境的要因
遺伝的要因
・
癌遺伝子の活性化
点突然変異
遺伝子増幅
遺伝子再構成(
転座)
・
癌抑制遺伝子の不活性化
点突然変異
塩基の欠失・挿入
染色体の欠失
・
DNA修復酵素遺伝子の
不活性化
変異
多
段
階
発
癌
・
環境中の発癌物質による
遺伝子変異の誘発
たばこの煙に含まれるベンツピレンは、
癌抑制遺伝子「
p53遺伝子」の246番目
の塩基を別の塩基に置き換える
→肺がんを誘発
カビが作る「
アフラトキシン」
毒素は、
癌抑制遺伝子「
p53遺伝子」の249番目
の塩基を別の塩基に置き換える
→肝臓ガンを誘発
癌化
資料)横田淳編集「癌化のメカニズムを解く」を基に TRI 作成
参考資料 2-2-7
(3) 癌の診断法
癌の診断法は癌の種類によって異なるが、大きく病理形態学的診断、腫瘍マーカーによ
る診断、遺伝子診断に分けられる。
図表 7
癌の診断法(肺癌のケース)
《病理形態学的診断》
喀痰検査、レントゲン検査、経皮的肺針生検
気管支ファイバースコープ、気管支電子スコープ、
CT、MRI、ヘリカル CT(三次元的画像、X 線被爆量の減少)
コンピュータによる画像処理(X 線被爆量の減少、遠隔診断)
きょうくうきょう
胸 腔 鏡 (手術)検査他
《腫瘍マーカーによる診断》
血液検査、尿検査により一部の癌の診断が可能
血清中の ProGRP を測定し、肺癌中の小細胞がんの補助診断に用いる
(陽性率 50∼70%)
(1996 年 5 月、健康保険適用が認められる)
《遺伝子診断》
癌と関連する遺伝子変異を利用した診断
また、癌の診断技術における本研究の位置付け並びに成果は次図のようになる。
参考資料 2-2-8
図表 8
癌の診断技術と本研究の位置付け並びに成果
癌 の 診 断 技 術
生 検 サ ン プ ル
手法
血 液
DNA診断
mRNA
遺伝子変異
遺伝子発現
・シークエンサー
・シークエンサー
・DHPLC法
・DNAマイクロアレイ ・タンパクマス
・DNAマイクロアレイ
血中遊離
DNA
タンパク
・腫瘍マーカー分析
スペクトロスコピー
画 像
血中
タンパク質
高感度定量
遺伝子変異
・
PCR
・
シークエンサー
・腫瘍マーカー分析
・
Intra-Alu-PCR
・
DHPLC法
(定量PCR装置)
・
DNAマイクロアレイ
・タンパクマス
スペクトロスコピー
・
ロボットシステム
半自動化
新規変異と疾病の
関係の発見
Intra-Alu-PCRによる超高感
度定量技術の確立
担癌患者と健常人群との境
界値を設定できた
(用語解説)マススペクトロスコピー:質量分析
参考資料 2-2-9
血中遊離DNA中
の癌特異的遺伝
子変異の高感度
検出
本研究の位置づけ
本研究の成果
(4) 腫瘍マーカー技術の現状
腫瘍マーカーは正常細胞ではほとんど産生されず腫瘍細胞に特異的に産生される物質、
または腫瘍細胞が生体内にあることによって産生される物質である。
腫瘍マーカー技術の概要を以下に示す。
図表 9
腫瘍マーカーの概要
腫瘍マーカーとは、
正常細胞ではほとんど産生されず腫瘍細胞に特異的に産生される物質(タンパク)
または腫瘍細胞が生体内にあることによって産生される物質
現在、どのように利用されているか
① 癌の補助診断
② 病期の判定
③ 治療効果の判定
④ 経過観察
⑤ 予後推定
腫瘍マーカーの問題点
① 使用するキット間で基準値が異なる(CEA、CA19-9 等)。また互換性も無いので同一施
設内、同一キットでしか比較できない。
② 基準値として、低いカットオフ値と高いカットオフ値を設け、その間をグレーゾーンと
しているが、グレーゾーンの幅が広くスクリーニングには適さない。
低いカットオフ値より低い
⇒
ほぼ健常
高いカットオフ値より高い
⇒
かなり進行した胆癌状態
グレーゾーン
⇒
画像診断等による確認が必要
③ 腫瘍マーカーは癌を発見できる指標ではなく、臨床状態または他の検査で腫瘍が高い確
率で疑われる場合に検査するものである。
④ 一般に腫瘍マーカーは進行癌にならなければ血中濃度は増加しないため、早期の発見に
つながらない。
⑤ 多くの腫瘍マーカーは癌以外の病気でも上昇することがあるため、画像診断等の補助診
断として実施する。
資料)臨床検査データブック 2001-2002 他
参考資料 2-2-10
現在臨床検査に利用されている腫瘍マーカーは 50 種類近く存在するが、その内の代表的
なものについてその概要を次表に示す。検体量としては血清や尿を 0.2∼5ml、検査日数と
しては 1∼6 日となっている。臓器特異性の高いものもあるが、幅広い癌に対応するものも
ある。
図表 10
腫瘍マーカー
CEA
AFP
CA19-9
CA50
ProGRP
DU-PAN-2
検体量
(
ml
)
代表的な腫瘍マーカー
網神
膜経
検査日数 芽 お
(日) 細 よ
胞び
腫
血清 0.3 院内 1
院外 2-4
院内 1
血清 0.2
院外 2-4
血清 0.5
3-5
血清 0.3
血清 0.2
3-5
血清 0.2
甲 食 肺 乳 肝 胃 膵 胆 結 腎 子子 卵
状 道 癌 癌 細 癌 癌 嚢 腸 癌 宮宮 巣
腺 癌
胞
・ ・
体頚 腫
髄
癌
胆 直
癌癌 瘍
様
管 腸
癌
癌 癌
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
○
○
◎ ○ ○ ○ ○
3-5
POA
○
○
○
○
◎ ○ ◎ ◎ ○
○
◎ ○ ◎ ◎ ○
血清 0.3
2-6
○
○ ○ ○ ○ ○
◎
◎
CA72-4
血清 0.5
3-5
○
○ ◎ ◎ ○ ◎
○
○
CA125
血清 0.5
3-5
○
○ ◎ ◎
○
◎
CA130
血清 0.5
2-8
○
○ ○
○
◎
CA15-3
血清 0.5
3-5
○ ◎ ○
○ ○ ○
○
○
BCA225
2-4
○
○
○
◎ ◎
サイトケラチン19
NSE
○
○ ◎ ○ ○
血清 0.3
○
○
STN
SCC抗原
絨胚
毛細
性胞
腫腫
瘍瘍
◎
○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ○
○
前
立
腺
癌
○
○
○
◎ ○ ○
血清 0.3
2-5
PSA、αSm、PAP 血清 0.5
3-5
◎
○
◎
ポリアミン
尿 5
2-4
○ ○
フェリチン
血清 0.3
2-4
○
○ ○
○
α2mG
○ ○
○
○ ○
IAP
血清 0.3
2-4
TPA
血清 0.5
3-5
BFP
血清 0.3
尿 0.5
3-5
○
○
○
○
○
○
○
○ ○ ○
○
○ ○
◎ は陽性率が50%以上のもの
○ は陽性を示すが陽性率50%未満のもの
資料)腫瘍マーカーハンドブック、臨床検査データブック 2001-2002、MediPro 他
参考資料 2-2-11
○
○
○
○
○
○ ○
○
また、代表的な腫瘍マーカーCEA 他の陽性率を以下に示す。
図表 11
CEA(癌胎児性抗原)の特徴と陽性率
癌胎児性抗原(CEA)は分子量18万∼20万、糖を50∼60%含む糖蛋白であり、Gold
らが1965年に報告して以来、最も広く臨床応用されている腫瘍マーカーである。
悪性腫瘍において広く陽性を示すが、臓器特異性はあまりない。
癌の進行に伴って高値を示すが、早期癌の診断には適さない。
一般にほかの腫瘍マーカーとのコンビネーションアッセイで、癌の補助診断また
はスクリーニングの感度を上昇させる目的として測定する。
臨床的に癌の進行度と転移の有無にある程度比例し、治療前に高値の症例では手
術、化学・放射線療法などの治療効果の評価および癌再発のモニタリングに有用
である。
悪性腫瘍
0
陽性率(%)
50
100
陽性率(%)
50
100
結腸直腸癌
大腸癌
膵癌
胆道癌
食道・胃癌
胃癌
肺癌
乳癌
甲状腺癌
肝細胞癌
子宮・卵巣癌
尿路系癌
良性疾患
0
肝硬変
肝炎
大腸炎
閉塞性黄疸
胃炎
糖尿病
慢性呼吸疾患
注)陽性率の上段は MediPro、下段は腫瘍マーカーハンドブック記載データ
参考資料 2-2-12
図表 12
AFP(αフェトプロテイン)の特徴と陽性率
αフェトプロテイン(AFP)は、癌胎児性抗原で分子量6.8万、糖を3∼4%含
む等電点4.9の酸性糖蛋白であり、1963年、Abelevらが肝癌移植マウス血中にAFP
が出現することを初めて見出した。その翌年Tatarinovらがヒト原発性肝癌患者
の血清中にAFPを検出し、原発性肝細胞癌の腫瘍マーカーとしての利用を報告し
た。AFPは卵黄嚢腫瘍と肝細胞癌等の患者において高い血中濃度の上昇が認めら
れ、臓器指向性の高い腫瘍マーカーの一つである。
日常検査として、肝細胞癌発生のハイリスクグループである慢性肝炎・肝硬変患
者の早期発見のための定期的スクリーニング、AFP産生腫瘍の診断、経過観察、治
療効果判定、再発の指標として用いる。
悪性腫瘍
0
陽性率(%)
50
100
0
陽性率(%)
50
100
原発性
肝細胞癌
肝芽腫
卵黄嚢腫瘍
転移性肝癌
胃・胆道・
膵・結腸癌
胃・膵癌
肺癌
良性疾患
肝硬変
肝炎
乳児肝炎
先天性胆道
閉塞症
奇形腫
奇形児
妊娠時
注)陽性率の上段は MediPro、下段は腫瘍マーカーハンドブック記載データ
参考資料 2-2-13
図表 13
CA19−9 の特徴と陽性率
CA19-9は大腸癌培養細胞SW1116を用いて作製されたモノクローナル抗体NS19-9に
より認識するⅠ型糖鎖抗原で、CEA、AFPと共に最も利用される腫瘍マーカーであ
る。CA19-9は膵癌、胆道系癌患者血清中に著名な増加を示すが、早期発見よりも
各種治療効果の判定や術後再発のモニタリングに有用である。正常な膵管、気管
支腺、卵胞、唾液腺等でも産生されるため、これらの良性疾患で血中レベルが増加
する。
悪性腫瘍
0
陽性率(%)
50
100
0
陽性率(%)
50
100
膵癌
膵管癌
胆道系癌
肝癌
食道・胃癌
結腸・直腸
大腸癌
泌尿器系癌
婦人科癌
肺癌
良性疾患
膵炎
胆道系炎症
肝炎・肝硬変
卵巣嚢腫
注)陽性率の上段は MediPro、下段は腫瘍マーカーハンドブック記載データ
参考資料 2-2-14
(5) 癌の遺伝子診断技術の現状
1) 遺伝子診断とは
癌は複数の遺伝子異常が多段階的に蓄積された結果、細胞増殖調節機構に破綻をきたし、
正常細胞が段階的に癌細胞へ変化すると考えられている。癌の遺伝子診断は、このような
発癌メカニズムに関する情報に基づき癌関連遺伝子の変異を利用して、診断するものであ
る。
2) 遺伝子診断の目的による分類と現状
① 発症前のリスク発癌診断:
体の細胞から DNA を抽出し、ジデオキシ法により目的とする遺伝子の塩基配列を決定
する。現在、塩基配列はシークエンサーと呼ばれる機械で決定している。
家族性大腸腺腫症、遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)、家族性乳癌等の遺伝性
癌の保因者の診断(遺伝子の異常を検査)に利用されている。
② 癌細胞の検出を目的とした診断:本プロジェクトはこの分類に属する
PCR 法を用い異常遺伝子を特異的に増幅し、癌細胞を検出する。従来の病理診断では
検出感度以下の癌細胞の存在を調べることを目的とする。
癌細胞または壊れた癌細胞からの変異遺伝子が体液中(血液、喀痰、膵液、腹水、胸水等)
に流れ込んだ時に、PCR 法を用いて高感度で検出することが可能である。
[現在までの報告例]
・ 白血病の染色体転座に伴うキメラ遺伝子の検出
・ 点突然変異を起こした K-ras 遺伝子の検出
・ 腹腔洗浄液からの微小転移診断
③ 癌の個性の評価:
同一の臓器で発生した癌でも、それぞれ遺伝子の変化の状態には差があるため、癌の
性質を分子生物学的に判断する。これにより転移・湿潤能、細胞増殖の速さ、化学療法や
放射線療法の感受性などを判断する。
しかし現在のところ、臨床に応用された例は報告されていない。
参考資料 2-2-15
3.国内外の主な関連研究の動向
主要なプロジェクトの動向を以下に示す。
図表 14
80
プロジェクト線図
90
2000
2010
ヒトゲノム解析計画
国 際
NIHを中心とした癌関連研究
米 国
91 国家バイオ政策報告書
EU枠組み計画を中心とした癌関連研究
欧 州
2002 欧州ライフサイエンス・バイオ戦略
日 本
2000
04
ミレニアムプロジェクト
政府
98
2000
ゲノムDNA情報の構造生物学的解析
98
04
ゲノムフロンティア開拓研究
文部科学省
99
01
がん細胞標的治療プロジェクト
02
06
タンパク3000プロジェクト
02
08
バイオリソースプロジェクト
厚科研費研究
厚生労働省
2000
04
薬剤反応性遺伝子解析
84
87
光化学反応がん診断・
治療
85
88
免疫学的がん診断装置
86
89
がん治療用ハイパーサミア
92
95
定位的がん治療装置
95
経済産業省
99
高感度DNA光検査
95
2000
微量細胞情報検出
99
01
本プロジェクト
2000
微小電極利用遺伝子情報計測システム(
医工連携)
参考資料 2-2-16
02
(1) 国内
国内では以下に示すような機関で血中遊離 DNA、血中 mRNA、血中遊離癌細胞を用いる
遺伝子診断関連研究が行われている。担癌患者の血中遊離 DNA が増加していること、また
担癌患者の血中遊離 DNA に癌遺伝子が見られることの報告はあるが、定量的に測定してい
る報告はない。
金 沢 大 学 医 学 部 第 1 外科の 前 田 一 也等 は 、末 梢 血 中 に 存 在 す る 癌 関 連 遺 伝 子 の
hypermethylation の有無による癌再発診断の可能性を検討している。食道癌で APC 遺伝
子の hypermethylation(HMAPC)を観察し、食道癌 86 検体(扁平上皮癌、SCC、32 検
体・腺癌、ADE、54 検体)、Barrett 食道 43 検体、正常粘膜 57 検体(食道粘膜 20 検体、
胃粘膜 37 検体)を対象とし、各検体から genomic DNA を抽出するとともに、末梢血より
遊離 DNA を分離している。HMAPC の有無は、real-time MSP 法により判定しており、
DNA を bisulfite 処理した後、APC 遺伝子の promotor 領域に methylation が存在する場
合にのみ特異的に増幅を開始する primer および probe を用いて PCR を行っている。結果
として、HMAPC は、SCC で 19/32(59%)、ADE で 48/51(94%)、Barrett 食道で 15/43
(35%)、正常胃粘膜で 12/37(37%)に認められ、正常食道粘膜はいずれも HMAPC 陰性
である。一方、末梢血中遊離 DNA の HMAPC は、ADE の 14/54(26%)でのみ陽性で、
SCC や Barrett 食道ではいずれも陰性であったと報告している。結論として、末梢血遊離
DNA の HMAPC は、食道腺癌再発の指標になるものとしており、更に胃癌と大腸癌に関し
再発の指標に用いる遺伝子を検索している。
同様に、大阪大学大学院医学系研究科病態制御外科や秋田大学医学部臨床検査医学講座
においても血中遊離 DNA による癌の遺伝子診断の研究が行われている。
京都大学医学部泌尿器科の呂家駒等は、尿路上皮癌患者末梢血液中の UP II mRNA 陽性
細胞の検出を試み、微小転移癌の検出法としての有用性を検討している。同科で治療中の
17 例の尿路移行上皮癌患者、10 例の遠隔転移を有する腎細胞癌患者および3名の健常人よ
り末梢血 5 ml を採取し、nested RT-PCR 法により UP II 遺伝子 mRNA 陽性細胞の有無を
解析している。その結果、検出感度としては、健常人末梢血 5 ml 中に 1 ヶの陽性コントロ
ール HT1197 細胞まで検出可能であったとしている。7 例の尿路移行上皮癌原発巣および1
例の剖検で得られた 6 ヶ所の転移巣組織の UP II mRNA を調べ、全てのサンプルで陽性で
あると報告している。尿路移行上皮癌患者血液では 17 例中 5 例で UP II mRNA 陽性細胞
が検出され、10 例の有転移腎細胞癌患者、3 名の健常人では陰性であると報告している。
UP II mRNA 陽性を示した 5 例の尿路移行上皮癌患者のうち 4 例は肺などの遠隔転移陽性
例で 1 例は腎盂癌の所属リンパ節陽性例である。UP II mRNA は遠隔転移もしくは所属リ
ンパ節転移陽性 9 例中 5 例で陽性、非転移の 8 例(Ta:2 例、Tis:1 例、T1-4:5 例)は
全例陰性である。
東京医科大学泌尿器科の伊藤貴章等は、PSA の mRNA を RT-PCR 法を用い前立腺癌患
者の血中より検出し、前立腺癌細胞が血中を循環していることを証明し、微小転移を予測
参考資料 2-2-17
し、surgical failure やホルモン療法後の再燃の予後因子となりうるかを検討している。対
象は、stage B、C 未治療前立腺癌 23 例で、治療法は 10/23 例で LH-RH analogue +
flutamide の CAB 療法後前立腺全摘が施行され、13/23 例は CAB 療法単独である。それ
ぞれ surgical または biochemical failure となったかどうかと PCR 法の結果を比較検討し
ている。その結果、stage B は 8 例中 1 例で陽性、7例で陰性、stage C は 15 例中 7 例が
陽性、8 例が陰性であったと報告している。PCR 陽性であった 8 例中 6 例で surgical failure
または biochemical failure を起こしていたのに対し、陰性例では 15 例中 3 例のみである
(P=0.0086)。初診時血清 PSA 値、臨床病期、分化度、PCR 法の結果を多変量解析にて比
較すると、PCR 法の結果が最も有意に surgical または biochemical failure と関連していた
としている(p=0.0172)。以上の結果から、RT-PCR 法による PSA の mRNA の検出は、前
立腺全摘における surgical failure やホルモン療法後の biochemical failure の予測に有用で
ある可能性が示唆されたとしている。
鹿児島大学医学部第一外科と鹿児島共済会南風病院では、臨床病理学的検索、遺伝子学
的検索(血中遊離癌細胞検出)を行い、術中の血中遊離癌細胞検出の臨床的意義に関して
検討している。胃癌手術症例(根治後 AB)373 例に対し臨床病理学的検討を、更に治癒切
除例 57 例に対しては CEA-mRNA specific nested RT-PCR を行い、術中血中遊離癌細胞を
検出し、結果として 373 例中血行性再発は 32 例、血行性再発は深達度とリンパ節転移に相
関を示すことを報告している(p<0.001 & p<0.0001)。また、ly, v 共に血行性再発と相関を
示したが(p<0.0001 & p<0.0001)、脈管侵襲陰性例(ly0 & v0)の 144 例中 3 例 (2.1%)に血
行性再発を認め、36.8%の症例で CEA-mRNA の発現を認め、脈管侵襲陰性 (ly0 & v0) の
31 例中 4 例で血中 CEA-mRNA 発現が陽性、57 例中 4 例に血行性再発を認め(全例で
CEA-mRNA 陽性)、血行性再発と CEA-mRNA発現との間に相関を認めている (p=0.029)。
以上より、脈管侵襲陰性例でも血中遊離癌細胞の検出例が認められたこと、血行性再発と
遊離癌細胞検出との間に有為な関連が認められたことより、RT-PCR 法による血中遊離癌細
胞の検出は血行性再発の予知により有用であると報告している。
鹿児島大学医学部では RT-PCR 法を用いた食道癌手術症例の血中遊離癌細胞検出につい
ても研究を行い、食道癌手術症例では術中に高頻度に血中の遊離癌細胞が RT-PCR を用い
ると検出され、これは麻酔や手術操作の影響が考えられ、術後や外来 follow-up 時に陽性と
なる場合は、再発の危険性が高いと報告している。
一方、愛媛大学医学部歯科口腔外科では口腔癌患者の末梢血、骨髄液中における循環癌
細胞の検出に関する検討を行い、現段階では RT-PCR の結果がそのままマーカーとはなり
にくいと報告している。
燕労災病院外科では胃癌における門脈血の分子生物学的検索を行い、進行度に伴いその
検出率が上昇する傾向にあり、異時性遠隔転移の予測因子となりうる可能性を示唆してい
る。
京都府立医科大学消化器外科では RT-PCR 法を用いた大腸癌患者末梢血中の癌細胞検出
参考資料 2-2-18
を行い、大腸癌は systemic disease の可能性があり、手術操作により癌細胞は血液内に流
入していくと考えられ、RT-PCR による末梢血癌細胞陽性所見は肝転移の predictor になり
得るとしている。同様に原発巣における sLex の発現の意義についても検討を行い、原発巣
に sLex を発現しているものは高率に肝転移を発生しやすくその予後は悪いとしている。
同様の研究は、京都大学腫瘍外科、信州大学医学部、杏林大学医学部、東北大学医学部
等でも行われている。
図表 15
血中遊離 DNA を用いる遺伝子診断関連研究例
実施者
内容
金沢大学医学部第 1 外科
末梢血遊離癌関連遺伝子 hypermethylation の有無によ
大村健二、川上和之、石田善敬、前田一也、金平
る癌再発の診断
永二
金沢大学医学部第 1 外科
大腸癌患者の血中遊離 DNA における癌関連遺伝子プロ
前田一也
モータ領域の hypermethylation
大阪大学大学院医学系研究科病態制御外科
膵臓癌の血中遊離 DNA 検出
秋田大学医学部臨床検査医学講座
末梢血液中遊離 DNA による悪性腫瘍診断に関する研究
京都大学医学部泌尿器科
末梢血液中 Uroplakin II mRNA を指標とした尿路上皮
呂家駒, 筧善行, 高橋毅, 小川修
癌の転移診断
東京医科大学泌尿器科
RT-PCR 法による前立腺癌患者末梢血中の前立腺特異
伊藤貴章, 大久保雄平, 相澤卓, 秋山昭人, 山本
抗原(PSA)mRNA の検出
真也, 三木誠, 大野芳正
鹿児島大学医学部第一外科 1)
胃癌治癒切除例における血中遊離癌細胞検出の臨床的
鹿児島共済会南風病院 2)
意義−血行性再発の予知可能性−
宮薗太志 1) , 夏越祥次 1) , 帆北修一 1) , 山田一隆 2) ,
馬場政道 1) , 末永豊邦 2) , 高尾尊身 1) , 愛甲孝
1)
鹿児島大学医学部
RT-PCR 法を用いた食道癌手術症例の血中遊離癌細胞
中島 三郎, 夏越 祥次, 松本 正隆, 宮薗 太, 馬
検出とその意義
場 政道, 高尾 尊身, 愛甲 孝
愛媛大学医学部歯科口腔外科
口腔癌患者の末梢血、骨髄液中における循環癌細胞の検
住田 知樹、善 啓史、浜川 裕之
出に関する検討(口腔癌患者 26 名の新鮮組織及び末梢、
骨髄より血液を採取し、conventional 及び TaqMan
RT-PCR 法にて SCCA、CK13 の mRNA 発現を検討)
燕労災病院外科
胃癌における血中遊離癌細胞の検出(Cytokeratin 20
山口和也、宮下薫、大橋泰博、浅海信也、轟木秀
の primer を用いた nested RT-PCR により、胃癌患者
一、斎藤義之、北原光太郎、大黒善彌
の末梢血、門脈血中の遊離癌細胞の検出)
参考資料 2-2-19
実施者
内容
京都府立医科大学消化器外科
RT-PCR 法を用いた大腸癌患者末梢血中の癌細胞検出
小池浩志, 北村和也, 谷直樹, 西田智樹, 市川大
の臨床的意義
輔, 岡本和真, 大辻英吾, 上田祐二 , 糸井啓純,
萩原明於, 山岸久一
京都府立医科大学消化器外科
RT-PCR 法による大腸癌患者末梢血癌細胞の検出と原
谷直樹, 北村和也, 小池浩志, 西田智樹, 市川大
発巣における sLex の発現の意義
輔, 岡本和真, 上田祐二, 糸井啓純 , 萩原明於,
山口俊晴, 山岸久一
京都大学腫瘍外科
食道癌におけるリンパ節微小転移と血中浮遊癌細胞の
嶋田裕
臨床的意義
信州大学医学部
Nested 及び Semi Nested RT-PCR 法を用いた前立腺癌
川上雅子
患者末梢血の前立腺癌細胞の検出
杏林大学医学部
Nested RT-PCR 法による血中前立腺癌細胞の検出
桶川隆嗣
東北大学医学部
CEA 特異的 RT-PCR 法による大腸癌腫瘍流出血中遊離
石井誠一
癌細胞の同定とその臨床的意義
資料)日本癌治療学会遺伝子診断部会演題抄録(1999 年∼2001 年)、MEDLINE(最近 5 年間)他
遺伝子診断に関連する大きなプロジェクトとしてはミレニアム・ゲノム・プロジェクト
があり、癌に関しては疾患・薬剤反応性遺伝子の解析と治療応用などが行われている(付
帯資料 4)。
文部科学省のバイオリソースプロジェクトでは、バイオリソースの体系的な収集・保存・
提供を行う体制整備が図られている。また、同省のタンパク 3000 プロジェクトでは、平成
14年度からの5年間でタンパク質の全基本構造の1/3(約3000種)以上のタンパク
質の構造及びその機能を解析し、特許化まで視野に入れた研究開発を推進するとしている
(付帯資料 5)。
文部科学省の科学技術振興調整費、国研活性化プログラム関連プロジェクトでは、がん
細胞の標的治療のための先端基盤技術の開発、ゲノム比較と系統的相互作用解析に基づく
遺伝子・分子ネットワークの解明、ヒト完全長cDNAクローンの単離とそのバンク化、
及び、それらを用いた多型マーカー開発並びに発現情報解析方法の確立のための研究、次
世代DNAマイクロアレイシステムの開発、多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム
多様性に関する研究他が行われている(付帯資料 6)。
厚生労働省では、薬剤反応性遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業が行われており、
薬剤の薬効や副作用の発現に影響を与える分子を対象に、個体差発現の原因となる一塩基
参考資料 2-2-20
多型(SNP)等の遺伝子多型を明らかにする研究が行われている(付帯資料 7)。
また、厚生科学研究費による21世紀型医療開拓推進研究事業がん研究分野、がん克服
戦略研究事業、ヒトゲノム・再生医療等研究事業・ヒトゲノム分野、高度先端医療研究事
業・治療機器等開発研究分野では、様々な角度から癌医療に関する研究が行われている(付
帯資料 8)。
経済産業省では、医療福祉機器技術研究開発事業で微量細胞情報検出システム、高感度
DNA光検査装置研究開発、定位的がん治療装置、光化学反応がん診断・治療装置、免疫
学的がん診断装置、がん治療用ハイパーサーミア装置などが行われており、医学・工学連
携型研究事業では、微小電極利用遺伝子情報計測システムなどが行われている(付帯資料 9)。
その他、埼玉県立がんセンターではステロイドホルモン依存性癌の発生と進展の分子機
序の研究等、九州大学生態防御医学研究所では子宮体癌発生の分子機構等、日本医科大学
老人病研究所ではヒト癌の遺伝子診断による悪性度の評価・ヒト癌抑制遺伝子の研究等が
行われている(付帯資料 10)。
参考資料 2-2-21
(2) 海外
「MEDLINE」データベースによって最近 5 年間の文献検索を実施した。調査日は 2002
年 7 月 19 日である。
「MEDLINE」は医学分野で世界最大の文献データベースで、1966 年から NLM(米国
国立医学図書館)でデータ収集が始まり、現在毎月約 3 万件の文献が新たに追加されてい
る。現在では、米国を中心に約 70 ヵ国から,900 万件を超える文献が収録されている。 以
下のキーワードで検索した結果の件数を示す。
①
DNA & Diagnosis & Cancer
19,209件
②
DNA & genetic Diagnosis & Cancer
③
Plasma DNA & genetic Diagnosis & Cancer
④
Plasma DNA & Human & genetic Diagnosis & Cancer
4,807件
75件
66件
ここで④の文献を調べたところ、担癌患者の血中遊離 DNA が増加していること、また担
癌患者の血中遊離 DNA に癌遺伝子が見られることの報告はあったが、定量的に測定してい
る報告はなかった。海外における血中遊離 DNA を用いる遺伝子診断関連研究例について最
近 5 年間と、過去における代表的なものについて次表に示す。
一部日本の文献も含む。
図表 16
海外における血中遊離 DNA を用いる遺伝子診断関連研究例
実 施 者
Wong IH, Lo YM, Johnson PJ.
Lo YM.
Fleischhacker M.
内 容
Epigenetic tumor markers in plasma and serum: biology and
applications to molecular diagnosis and disease monitoring.
Ann N Y Acad Sci. 2001 Sep;945:36-50. Review
Circulating nucleic acids in plasma and serum: an overview.
Ann N Y Acad Sci. 2001 Sep;945:1-7. Review.
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Allan JM, Hardie LJ, Briggs JA,
Davidson LA, Watson JP, Pearson
SB, Muers MF, Wild CP.
参考資料 2-2-22
実 施 者
内 容
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Dominguez G, Garcia JM, Chen XQ,
Stroun M, Provencio M, Espana P,
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C.C. & Shields, P.G.
Serum, plasma and paraffin-embedded tissues as sources of
DNA for studying cancer susceptibility genes. Carcinogenesis
18, 1271-1275 (1997).
Sozzi, G. et al.
Analysis of circulating tumor DNA in plasma at diagnosis and
during follow-up of lung cancer patients. Cancer Res. 61, 46754678 (2001).
Wei, C., Saller, D.N. & Sutherland,
J.W.
Detection and quantification by homogeneous PCR of cell-free
fetal DNA in maternal plasma. Clin. Chem. 47, 336-338 (2001).
資料)「MEDLINE」データベースによる最近 5 年間の文献検索結果およびその他代表的な文献
参考資料 2-2-23
また、Anker らが 2002 年 8 月に発表した文献1において、血中核酸のこれまでの成果を
まとめ、血液検査による癌の検出の可能性について検討しているものを以下に紹介する。
海外においても血液検査で癌を発見する方法についての研究が続けられている。1970 年
代にすでに、様々な悪性腫瘍患者の血漿における血中遊離 DNA の増加が確認された。1999
年 Y. M. Dennis Lo らのグループが、血中のウイルス DNA の正確な定量法を開発し、彼ら
は上咽頭癌の血漿/血清中に EBA DNA を確認し、EBA DNA と癌の再発の関係について検
討した。実時間定量 PCR 法を用い調べたところ、癌再発者 10 人の EBA DNA の平均濃度
は 32,350 copy/ml であるのに対し、寛解者 15 人は 2 年後においても 0 copy/ml であった。
また臨床症状が悪化する 6 ヶ月前に、すでに血清中の EBA DNA が上昇していたことも確
認された。血清中の EBA DNA が低濃度、又は検出されなかった患者は、寛解状態を継続し
ている。このことから、NPC 患者のモニタリングのツールとして、血中の EBA DNA の定
量は有用であると考えられた 2。
また最近では、癌患者の血漿/血清中に含まれる癌関連 RNA の研究が活発になっている。
これには、チロシナ−ゼmRNA、テロメラーゼコンポーネント、様々の癌関連遺伝子にエン
コードされたmRNA、ウイルス RNA の研究などがある。Kopreski MS らは、悪性黒色腫の
患者の血清から、RT-PCR を用いてチロシナ−ゼmRNA の抽出を試みた。健常者 20 名か
らは一人もチロシナ−ゼmRNA が検出されなかったのに対し、悪性黒色腫の患者 6 名のう
ち 4 名からチロシナ−ゼmRNA を抽出することに成功した。このように、最近では血清中
から mRNA を抽出し、増幅して検討することが可能になった 3。
血中遊離mRNA マーカーが血中遊離 DNA マーカーより注目されているのには、検出感
度が高いことがあげられる。Dasi らは、テロメラーゼ活性がヒト癌を検出する分子マーカ
ーに適しているとし、血清中のテロメラーゼmRNA の発現を分析した。血清中の hTERT
発現の定量的測定法として、実時間定量 RT-PCR(qRT-PCR)に基づき、グリセルアルデ
ヒド-3-フォスフェイト・デヒドロゲナーゼ(GAPDH)発現を用いて、RNA のインプット
量を標準化した。この結果、結腸直腸癌者(9 名中 8 名)と濾胞性リンパ腫の患者(9 名中
9 名)は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素にポジティブ、健常者(10 名中 10 名))はネガテ
ィブを示し、識別することに成功した 4。
また Ng らは、2002 年に血漿中の DNA と RNA について、健常者と肝細胞癌患者で比較
したところ、肝細胞癌患者では RNA 量が健常者より明らかに増加していることを確認した
5。今後は血中遊離
DNA、及び RNA を利用して、癌の非侵襲的検出法を確立することがで
きると考える。
1.Philippe Anker and Maurice Stroun ,
Progress in the Knowledge of Circulating
Nucleic Acids: Plasma RNA Is Particle-Associated. Can It Become a General
Detection Marker for a Cancer Blood Test? Clinical Chemistry. 2002;48:1210-121
参考資料 2-2-24
2.Y. M. Dennis Lo2, Lisa Y. S. Chan, Anthony T. C. Chan, Sing-Fai Leung, Kwok-Wai
Lo, Jun Zhang, Joseph C. K. Lee, N. Magnus Hjelm, Philip J. Johnson and Dolly P.
Huang ,Quantitative and Temporal Correlation between Circulating Cell-Free
Epstein-Barr Virus DNA and Tumor Recurrence in Nasopharyngeal Carcinoma
Cancer Research 59, 5452-5455, November 1, 1999
3.Kopreski MS, Benko FA, Kwak LW, Gocke CD. Detection of tumor messenger RNA
in
the
serum of patients with malignant
melanoma. Clin Cancer
Res
1999;5:1961-1965
4.Dasi F, Lledo S, Garcia-Granero E, Ripoll R, Marugan M, Tormo M, et al. Real-time
quantification in plasma of human telomerase reverse transcriptase (hTERT)
mRNA: a simple blood test to monitor disease in cancer patients. Lab Invest
2001;81:767-769
Lab Invest. 2001 May;81(5):767-9
5.Ng EKO, Tsui NBY, Lam NYL, Chiu RWK, Yu SCH, Wong SCC, et al. Presence of
filterable and nonfilterable mRNA in the plasma of cancer patients and healthy
individuals. Clin Chem 2002;48:1212-1217
参考資料 2-2-25
4.関連特許・文献の推移
(1) 特許
1) 国内の動向
国内における最近 10 年間の血中遊離 DNA による癌診断関連の特許は 10 件で、全血液
検体からの DNA 抽出方法、血液中の腫瘍マーカーなどが出願されている。特許の出願番号、
要約、出願人などは付帯資料 11 に示す。
一方、より広い範囲である DNA による癌診断関連特許は 273 件であった。この出願の推
移をみると、1998 年までは増加傾向を示していたが、その後減少している。
図表 17
期間
国内の関連特許
PATOLIS 特許・出願:1991 年 1 月 1 日∼2000 年 12 月 31 日まで(公開日 2002 年 5 月 15 日まで)
検索式
A
FK=(血中+血液)
B
FK=DNA
C
FK=(癌診断+(癌+ガン+がん)*診断)
検索式①:A*B*C
特許 10 件(血中遊離 DNA による癌診断)
検索式②:B*C
特許 273 件(DNA による癌診断)
DNAによる癌診断(
日本)
出
願
件
数
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
1991
1992
1993
1994
1995
1996
出願年
参考資料 2-2-26
1997
1998
1999
2000
2) 海外の動向
海外における最近 10 年間の血中遊離 DNA による癌診断関連の特許は、米国と欧州 3 カ
国(英、独、仏)への出願件数がほぼ同様の傾向を示しており、1996 年以降急増している。
我が国が 10 年間で 10 件であるのに比較し、欧米では 2000 年だけでも 100 件を超える出
願がある。これらの特許の概要を付帯資料 12 に示す。
図表 18
期間
WPI
海外の関連特許
特許・出願(優先権主張):1991 年 1 月 1 日∼2000 年 12 月 31 日
検索式
D
(PLASMA+BLOOD)*(DNA+DEOXYRIBONUCLEIC(W)ACID+DEOXYRIBO(W)NUCLEIC(W)ACID+
DEOXY(W)RIBO(W)NUCLEIC(W)ACID)
E
CANCER
F
DIAGNOSIS
G
AC(出願国)=US+AC=WO(国際出願)*DS(指定国)=US
H
AC=(DE+FR+GB)+AC=(EP(欧州特許庁出願)+WO)*DS=(DE+FR+GB)
検索式①:D*E*F*G
特許 273 件
検索式②:D*E*F*H
特許 250 件
出願年は優先権主張年とする
欧州は、イギリス、ドイツ、フランスへの出願特許とする
(GB:イギリス、DE:ドイツ、FR:フランス)
血中DNAによる癌診断(欧米)
140
120
100
出
願 80
件 60
数
40
米国
欧州
20
0
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000
出願年
参考資料 2-2-27
(2) 文献
日本及び米国における最近 11 年間の血中遊離 DNA による癌診断関連の文献数の推移を
調査した。使用したデータベースは日本が JMEDICINE(一部 JOIS も含む)、米国がME
DLINEである。
結果として日本 91 件、米国 225 件の文献を抽出したが、データベースが異なるため、こ
の両国の文献数を相対評価することはできない。あくまでも推移をみることが目的である。
結果として、文献数はほぼ増加傾向を示している。尚、検索式は付帯資料 13 に示す。
図表 19
日本及び米国における血中遊離 DNA による癌診断関連の文献数の推移
45
40
35
日本
米国
30
文 25
献
数 20
15
10
5
0
1991
1993
1995
1997
年
参考資料 2-2-28
1999
2001
5.その他
(1) 市場の規模
腫瘍マーカーの市場規模についての正確な統計データはないが、1998 年4月に(株)富
士経済が「‘98
特殊検査市場」というレポートを出し、その中で一部の腫瘍マーカーの市
場規模を推計している。その中で、現在も使用されているものをピックアップしたものが
次表である。
図表 20
腫瘍マーカー種類
1995 年
腫瘍マーカーの売上高(単位:億円)
1996 年
1997 年
1998 年
1999 年
(予測) (予測)
サイトケラチン 19
2000 年
2001 年
2002 年
(予測)
(予測)
(予測)
1.24
2.66
2.55
2.87
3.25
3.75
4.10
4.45
ProGRP
−
0.70
1.40
1.50
1.55
1.60
1.65
1.70
CSLEX
−
−
0.04
0.16
0.40
0.80
1.20
1.60
GAT
−
−
0.05
0.20
0.50
1.50
2.50
3.50
AFP−L3
−
1.00
3.00
6.00
10.00
15.00
20.00
25.00
フラグメント(シフラ)
資料)(株)富士経済「‘98
特殊検査市場」、1998 年4月
これら 5 種類の腫瘍マーカーの 2002 年売上予測合計は約 36 億円となっている。
一方、これら 5 種類に含まれない CEA、PSA、CA125、CA19-9、PA などの代表的な腫
瘍マーカーも、人間ドッグのオプション検査として利用されており、腫瘍マーカー全体で
は数百億円規模の市場が存在すると推定される。(参考:腫瘍マーカーを含む体外診断用医
薬品の国内生産金額は約 1870 億円(平成 11 年薬事工業生産動態統計年報))
血中遊離 DNA による癌の診断法が確立し、現状の腫瘍マーカー市場の 10%のシェアを
獲得すると仮定した場合、市場規模は数十億円規模となる。
参考資料 2-2-29
(2) 他技術の健康保険適用への道のり
診断法や新薬が承認されてから健康保険に適用されるまでの期間は、過去においてはヘ
リコバクターピロリ除菌療法などのように 10 年以上も経過したケースもあったが、最近は
かなり短縮化している。次表に示した例では、2 ヶ月∼3 年で健康保険適用に至っている。
但し、海外との競争が激しい分野であり、更なる審査スピードの向上と専門性の強化、
優先審査制度などの柔軟な運用を望む声も強い。
また、承認に至るまでの期間も海外に比較して長く、我が国の大手製薬会社は新薬の開
発拠点を海外に移しているケースが多い。審査過程で臨床試験の実施基準違反が指摘され
る、必要な臨床データが得られないため追加臨床試験データが求められるなどによって開
発コストがかさむため承認を断念するケースもある。
図表 21
健康保険適用までの経緯例
診断法、新薬など
腫瘍マーカーProGRP
東燃(株)、テルモ(株)
健康保険適用までの経緯
1994 年
国立がんセンター山口らが優れたマーカーであることを示す
1995 年
より広い臨床応用を目的に測定用キットを開発し、全国 16 施設
で研究会が組織され、健常者と肺癌患者の比較検討から肺小細胞癌での有
用性を確認
1996 年 5 月
健康保険適用
メルボルン大学(グレアム・クラーク博士)が発明し国家プロジェクトで
開発後、世界 80 カ国で使用
人工内耳ニュークレアス 22
1985 年 12 月
(株)日本コクレア社
1991 年 1 月
医療用具として厚生省より承認
1994 年 4 月
健康保険適用
我が国で最初に臨床応用
改良品ニュークレアス 22 は 1999 年 7 月承認、2000 年 1 月健康保険適用
1998 年
輸入承認申請(米国ダイジーン社製)
HPV 遺伝子検査試薬
2000 年 3 月
米国 FDA 承認
三菱化学メディカル(株)
2002 年 1 月
輸入承認(欧米で広く臨床の場で使用)
2002 年 4 月
HPV 遺伝子検査試薬発売、保険適用申請中
1999 年 8 月
申請
インフルエンザ治療薬
1999 年 12 月
承認(前年のインフルエンザによる死者 1152 人を踏まえ)
グラクソ・スミスクライン社
2000 年 12 月
販売(保険適用を待ったが見切り発車)
インフルエンザ治療薬
日本ロシェ社
2001 年 2 月
健康保険適用
2000 年 8 月
申請
2000 年 12 月
2001 年 2 月
承認
健康保険適用
資料)各種資料を基にTRI作成
参考資料 2-2-30
医薬品の研究開発費の中で臨床試験にかかる費用の占める割合は高い。我が国での臨床
試験の数は、新規制の乏しい新薬の価格算定の厳密化や薬価引き下げ、新 GCP(医薬品の
臨床試験の実施の基準(省令)が 1997 年 4 月 1 日に施行され臨床試験に参加する患者は文
章による同意が必要になるなど基準が厳しくなり法的罰則も設けられた)施行や外国臨床
データ受け入れ拡大などの影響もあり、減少している。
また、我が国の臨床試験は、遅い、質が悪い、費用が高いとの指摘もあり、前述のよう
に日本企業は海外での臨床試験を急増させている。
日本での臨床試験が進まない理由としては以下が指摘されている。
①患者のインセンティブが低い(臨床試験の意義が浸透していない、国民皆保険で経済的
インセンティブが低い)。
②実施研究者のインセンティブが低い(臨床試験に対する学問的評価、経済的インセンテ
ィブが低い)。
③臨床試験の実施体制が弱い(臨床試験の実施体制が整っており医療機関が少ない、医師・
協力者の養成が不十分)。
一方、厚生労働省は全国治験活性化 3 ヵ年計画(2003-2005)を策定し、大規模治験セン
ターの創設、医療機関の治験実施体制の充実などの施策を、また、薬事制度の改善によっ
て承認審査の迅速化と体制強化、承認・許可制度の見直しを推進するとしている。
(3) 癌自体の DNA 遺伝子異常の検索
本プロジェクト実施中に行われた「新規異変と疾病の関係の発見」に関する論文の概要
を以下に示す。
参考までに論文が掲載された雑誌のインパクトファクターを「雑誌 IF」として右欄に記
載する。インパクトファクターは学術雑誌がいかに学会に対して影響を持ちえたかを引用
という視点で数値化したもので、Gerfield によって設立されたアメリカの ISI 社(Institute
for Scientific Information)から発行されている Journal Citation Reports に掲載されてい
る。これは英文雑誌の指標であって、和文雑誌は対象とはなっていない。
ここで記載した概要の文章および雑誌 IF は本プロジェクト実施者清水先生の提供による。
インパクトファクターは最近引用された文献が多い程高い値になる。また、レビュー誌
が高い傾向を示すため、学問的価値をそのまま反映するものではなく、あくまでも参考値
である。算出式は以下。
A(year) = (B(year - 1) + B(year - 2)) / (C(year - 1) + C(year - 2))
Year:特定の暦年、A(year):year 年の Impact factor 値、B(year - 1):year 年の前年に発
表された論文が year 年に引用された数、B(year - 2):year 年の前々年に発表された論文が
year 年に引用された数、C(year - 1):year 年の前年に発表された論文数、C(year - 2):year
年の前々年に発表された論文数
参考資料 2-2-31
図表 22
本プロジェクトの「新規異変と疾病の関係の発見」に関する論文の概要
No.
論
名
概
要
Tanino, M., Matsuo, M., Uenaka, A.,
マウス白血病細胞 RL? 1 で活性化している
Tsukuda, K., Ouchida, M., Nakayama, E.
RL-akt 遺伝子が実際に細胞の癌化及びアポ
and
トーシスの回避に重要な機能を果たすこと
Shimizu, K.:
RL-akt
を cDNA の発現実験から明らかにした。マウ
Activated by
ス白血病細胞 RL? 1 では、 RL-akt 遺伝子の
Long Terminal Repeat Insertion in Murine
通常は非翻訳領域が翻訳されて癌排除抗原
Leukemia RL? 1 Cells.
となっているが、抗原形成だけでなく、白血
Transforming
1
文
Gene,
Activity
a c-akt
of
Gene
Mol. Carcinogenesis,
the
26, 286-297,
雑誌 IF
3.10
病発症の過程に本遺伝子が積極的に関与し
た可能性を示した。
1999.
渡辺和英、谷口律子、川上英治、荒木博陽、 薬剤の代謝に重要な機能を果たす P450 遺
2
五味田裕、清水憲二:
伝子の個人差(遺伝的多型)を判定する際に
CYP2C 遺伝子型判定における制限酵素消
問題となる内部対照を全く新しい方法で導
化の陽性対照の設計.
入する方法を開発し、有効な結果を得た。
?
TMD 研究、17 (1), 17-23, 2000.
3
Ichimura, K., Hanafusa, H., Takimoto, H.,
RB 関連癌抑制遺伝子候補である p107 遺伝
Akagi, T. and Shimizu, K.:
子の全構造を初めて明らかにし、我々が発見
Structure of the human retinoblastoma-
したヒトリンパ腫細胞株における本遺伝子
related p107 gene and its intragenic
の異常がヒト Alu 配列間の異常組換えによ
deletion in a B-cell lymphoma cell line.
る、エクソン5個を含む 15 kbp の領域の欠
Gene, 251, 37-43, 2000.
失であることを見い出した。RB 関連癌抑制遺
2.46
伝子候補である p107 遺伝子のヒト悪性腫
瘍における遺伝子異常を世界最初に発見し
た論文である。
4
Gunduz, M., Ouchida, M., Fukushima, K.,
染色体 13q34 領域における高頻度の欠失を
Hanafusa, H., Etani, T., Nishioka, S.,
頭頸部癌で発見し、この領域にある癌抑制遺
Nishizaki, K. and Shimizu, K.:
伝子候補 ING1 の全構造を決定してプロモ
Genomic Structure of the Human ING1
ーター領域を特定すると共に、3種の異なる
Gene and Tumor- specific Mutations
転写産物があること、ING1 タンパクの活性
Detected in Head and Neck Squamous
を喪失させるミスセンス変異が原発頭頸部
Cell Carcinomas.
癌で少なくとも3ヵ所あることを発見した。
Cancer Res., 60 , 3143-3146, 2000.
本遺伝子が癌抑制遺伝子であることを初め
て証明した業績で多くの引用がある。
参考資料 2-2-32
8.46
論
No.
5
文
名
概
要
Naito, N., Kawai, A., Ouchida,
M.,
固定病理組織からの骨軟部腫瘍の分子診断
Dan'ura, T., Morimoto, Y., Ozaki,
T.,
のために、標本から RNA を抽出し、腫瘍特
Shimizu, K. and Inoue. H.
異的遺伝子融合を RT-PCR 法で検出する新
A
しい方法を開発し、鑑別診断の困難だった滑
Reverse
Transcriptase-Polymerase
Chain Reaction Assay in the Diagnosis of
雑誌 IF
3.51
膜肉腫症例を確定診断した。
Soft Tissue Sarcomas.
Cancer, 89 (8), 1992-1998, 2000.
6
Matsubara, N., Yoshitaka, T., Matsuno, T.,
大腸癌患者で高度の遺伝的不安定性を示し、
Ikeda, M., Isozaki, H., Tanaka, N. and
かつ複数の癌を持つ多重癌患者で転写因子
Shimizu, K.
E2F4 遺伝子のコーデイングマイクロサテ
Multiple tumors and a novel E2F-4
ライトにおける新しい変異を発見した。
1.78
mutation. a case report.
Digestion, 62 (2-3):
7
213-216.
2000.
Tsukuda, K., Tanino, M., Shimizu, N. and
新開発の蛍光標識 SSCP 法により、ヒト原
Shimizu, K.
発結腸癌から原癌遺伝子 K-ras のこれまで
A novel activating mutation of the K-ras
報告のなかった新しい部位(第 22 コドン)
gene
における活性化点突然変異を発見し、更にそ
in
human
primary
colon
adenocarcinoma
の変異遺伝子が実際に細胞を癌化できるこ
Biochem. Biophys. Res. Commun., 278
とを証明した。
3.06
(3):653-658, 2000.
Toyooka, S., Ouchida, M., Jitsumori, Y.,
ラット細胞による新しい癌遺伝子検索の過
Tsukuda, K., Sakai, A., Nakamura, A.,
程で、これまで報告のなかった新しいタンパ
Shimizu, N. and Kenji Shimizu
ク質チロシン脱リン酸化酵素の遺伝子を発
HD-PTP:
8
A
Phosphatase
Novel
Gene
Protein
Tyrosine
見し、25個のエクソンから成る遺伝子全構
on
Human
造を決定すると共に、これが多くの癌で欠失
Chromosome3p21.3.
を示す染色体 3p21 領域に位置すること、信
Biochem. Biophys. Res. Commun., 278 ,
号伝達やアポトーシス制御に関わる重要な
671-678, 2000.
ドメイン構造を持つことなどから新しい癌
抑制遺伝子候補であることを見い出した。
参考資料 2-2-33
3.06
No.
論
名
概
要
Ito, S., Sakai, A., Nomura, T., Miki, Y.,
癌遺伝子 c-raf の研究から派生した新しい
Ouchida, M., Sasaki, J. and Shimizu, K.
遺伝子の発見で、蛋白間相互作用に関わる
A
Novel
WDC146,
9
文
WD40
Highly
Spermatogenesis
Protein,
WD40 リピートを7個含む 146kDa の蛋白質を
during
指令し、精巣、脾臓、胸腺、特に減数分裂期
Stage-specific
の精細胞に高い発現があることから、DNA の
Repeat
Expressed
in
a
Manner.
組換えに関与する可能性が示唆された。最
Biochem. Biophys. Res. Commun., 280 ,
近、ドイツの研究グループが本蛋白質をクロ
656-663, 2001.
マチンリモデリング複合体から検出し、転写
雑誌 IF
3.06
や組換えの過程に関与する可能性が高くな
った。
10
Takashima, H., Matsumoto, Y.,
以前我々は遺伝的不安定性を示す大腸
Matsubara, N., Shirakawa, Y.,
癌や胃癌の約 60% に細胞周期制御に関
Kawashima, R., Tanino, M., Ito, S.,
与する転写因子 E2F4 遺伝子内の
Isozaki, H., Ouchida, M., Meltzer, S.
(CAG)13 反復配列の癌特異的変異
J., Shimizu, K. and Tanaka, N.
((CAG)11 12)を発見していた。この変
Effect of naturally occurring E2F-4
異 E2F4 は実際に癌遺伝子としての性質
alterations on transcriptional
を示し、転写活性化能や細胞増殖能が大
activation and proliferation in
幅に昂進すること等を明らかにした。
4.17
transfected cells.
Lab. Investig., 81 , 1565-1573,
2001.
Matsubara,
N.,
早期大腸癌では低頻度遺伝子不安定性
Nagasaka,
T.,
を示す例が進行大腸癌よりも有意に多
Notohara, K., Yoshino, T., Isozaki, H.,
いことを初めて明らかにした。これは進
Sharp, G., Shimizu, K., Jass, J. and
行癌に進展する際の経路が複数存在し、
Tanaka, N.: High
frequency of low
癌組織中の限られたクローンから進行
level microsatellite instability in early
癌が生じることを示したもので、国際的
colorectal cancer with invasion limited
にも注目すべき知見である。更に、ある
to submucosa.
特定の染色体領域の欠失 (LOH) が患者
Cancer Res., 61 , 7743-7746, 2001.
の予後に密接に関連することを明らか
Kambara,
T.,
Nakagawa,
11
H.,
にし、大腸癌患者の術後ケアに重要な情
報をもたらした。
参考資料 2-2-34
8.46
No.
論
名
概
要
Kobayashi, K., Ouchida, M., Tsuji , T.,
REIC (DKK3) 遺伝子は不死化した細胞株
Hanafusa, H., Miyazaki , M., Namba,
や癌細胞株でその発現が著しく減少す
M., Shimizu, N. and
る遺伝子として発見された。本研究で
Shimizu, K.:
the
様々な癌組織における発現を検討した
promoter-
結果、肺癌や胃癌の原発癌の約半数でも
hypermethylation in human tumor
発現の減少が実証された。更に、この発
cells.
現の低下は遺伝子の発現制御に関わる
Gene, 282 , 151-158, 2002.
プロモーター領域の高度メチル化によ
Reduced
12
文
expression
REIC/Dkk-3
gene
by
of
雑誌 IF
2.46
ることを実証した。
13
Terada, K., Tamiya, T., Daido, S.,
グリオーマでは 10q 領域に高頻度の欠失
Kambara, H., Tanaka, H., Ono, Y.,
が観察されるが、この領域に想定されて
Matsumoto, K., Ito, S., Ouchida, M.,
いる 3 種の癌抑制遺伝子の欠失と脳腫瘍
Ohmoto, T. and Shimizu, K.
患者の病態や予後との関連を詳細に解
Prognostic
value
heterozygosity
of
loss
around
of
three
析したところ、特に PTEN 領域の欠失が
1.58
最も予後との相関が高かった。
candidate tumor suppressor genes on
chromosome 10q in astrocytomas.
J. Neuro-Oncol., 58 , 107-114, 2002.
14
Gunduz, M., Ouchida, M., Fukushima,
頭頸部癌をはじめ多くの固形癌で高頻
K., Ito, S., Jitsumori, Y., Nakashima,
度の欠失を示す 7q31 領域に癌抑制遺伝
Y., Nagai, N., Nishizaki, K.
子 ING1 と極めて類似した ING3 遺伝子を
and
Shimizu, K.
発見し、そのゲノム構造を明らかにし
Allelic loss and reduced expression of
た。更に、頭頸部癌の約 60% がこの領域
the ING3, a candidate
に欠失を持つことを実証すると共に、本
tumor
suppressor gene at 7q31, in human
遺伝子の大幅な発現低下が見られるこ
head
とを発見し、ING3 が有力な癌抑制遺伝子
and
neck
cancers.
Oncogene, 21 , 4462-4470, 2002.
候補であることを示した。この領域は他
の癌でも高頻度の欠失を示すので重要
な知見である。
参考資料 2-2-35
6.49
付帯資料
1. バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方針(概要)
1999年1月29日
(1)将来展望
平成22年(2010年)に、バイオテクノロジー関連市場の市場規模が25兆円程
度、バイオテクノロジー関連の新規事業者の創業数が1,000社程度まで増大する
ことを展望して環境整備を目指す。
(2)産業化の加速的促進のための施策
1)ゲノム解析等の基礎的・基盤的研究の加速的推進
2)事業化支援の強化
3)バイオテクノロジーの実用化に向けた技術開発の強化
4)大学等におけるバイオテクノロジー研究の推進と利用の促進
5)ネットワーク化の推進等産学官の連携の強化
6)適正な安全確保と規制の適正化
7)知的財産の適切な保護
8)国民的理解の促進
(3)推進体制
関係省庁(旧称:科学技術庁、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省)は、本方針
の考え方に基づき、具体的な施策を推進することとし、本方針の実施のための具体的
な計画を共同で策定する。当該計画の実施に当たっては、バイオテクノロジー関係省
庁連携会議において密接な連携を確保するとともに、「経済構造の変革と創造のため
の行動計画」の見直し作業を活用して毎年度フォローアップを行う。
参考資料 2-2-36
2. バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本戦略(概要)
1999年7月13日
[基本戦略]
「バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方針」を受け、概ね5年程度を見越した
基本戦略を策定し、これらを関係省庁一丸となって強力に推進する。
[所要資金の確保]
基本方針における将来展望を踏まえつつ、研究開発、事業化支援等の資金の大幅な
拡充を図る。
[産業化の加速的促進のための具体的施策]
<産業創造のための基盤整備>
(1)ゲノム解析等の基礎的・基盤的研究の加速的推進
①ヒトゲノム解析の加速化
・ヒト(ヒトモデル動物)完全長cDNA解析 ・ヒトゲノム多様性解析(SNPs構想)
標準SNPsの開発及び標準的多型解析
疾患関連遺伝子等の解析(疾患等関連多型解析)
薬剤反応性関連遺伝子の解析
・ヒトゲノムの全塩基配列の決定
②我が国の産業上重要な生物のゲノム解析の加速化
・イネゲノム解析
・動物(家畜)ゲノム解析
・産業有用微生物ゲノム解析
③機能解析のための共通技術の開発強化
・タンパク質の構造・機能の体系的解析
・遺伝子機能の発現・制御解析
(2)知的基盤の充実とネットワーク化の推進
・生物遺伝資源の供給体制の整備・充実
・遺伝子改変生物の開発及び供給体制の整備・充実
・ネットワーク化の推進による産学官の連携の推進
(3)バイオインフォマティクス技術の開発
・中核的研究拠点の整備
・民間能力を活用した研究開発の推進
・ゲノム解析成果の利用環境の高度化に向けたデータベース開発
<技術開発の推進と事業化支援の強化>
(1)実用化に向けた技術開発の強化
・国立試験研究機関等における実用化に向けた技術開発の推進
・民間の研究開発能力を結集した技術開発の強化
(2)事業化資金支援の拡充
・新規事業者に対する資金供給制度の拡充
・TLOの設立支援や国等の制度の活用による研究成果の特許化支援、
成果の利用促進
・バイオ企業の集積地点の整備
<バイオテクノロジーに関連する環境整備>
(1)独創的成果の創出のための研究開発システムの強化
・先端的研究拠点の整備
・競争的研究資金の拡充
(2)技術の移転に資する制度の整備
・国立大学教官等の役員兼業の取扱い
・国の委託研究開発の成果の民間移転
(3)安全の適正な確保と規制の適正化
・組換えDNA技術に関する指針の充実、運用の改善
・バイオテクノロジー応用医薬品・医療用具の実用化に対応した
安全性確保体制の整備・充実
・医薬承認期間の短縮
・バイオテクノロジー応用食品への対応 (4)知的財産の適切な保護
・バイオテクノロジー分野における特許制度・運用の国際的調和
・特許微生物寄託体制の充実
<国民的理解の促進>
・国民に対する情報提供の充実
参考資料 2-2-37
3. バイオ産業技術戦略(概要)
平成11年11月24 日
戦略1.研究開発及び産業化のプロセスを効率化するための基盤整備
(イノベーション加速化戦略)
バイオテクノロジー分野は、研究開発、産業化の両面で世界的に天下分け目の大決戦が
繰り広げられており、まさに「スピードとアイデアが命」といった状況である。バイオテ
クノロジーは基礎的研究と産業化が近接しているものの、上市までの孵卵期間が長いため、
イノベーションを加速化するための戦略が不可欠である。
(1)基礎的な研究の充実
現在ゲノム情報が蓄積されてきたため、今後は遺伝子機能解析、タンパク質構造解
析、プロテオーム解析、細胞工学などを重点的に進める。
(2)人材育成
我が国においては大学や大学院で生物系の教育を受けた人材を拡充することが必
要であり、特に、バイオインフォマティクスや生物統計学など新たな分野や融合領
域の研究人材を強化する。
(3)ベンチャー企業への支援策の多様化と拡大
ベンチャーファンド・バイオ専門のアナリストの育成、エンジェル税制の抜本的拡充、
大学・企業間の知的ネットワーク構築等。
(4)知的財産権の確保
バイオ分野における審査官を増員、新分野・融合分野に即応した判断基準の提示研究
者の意識改革等。
(5)生物遺伝資源や研究情報の公共財としての整備
生物遺伝資源や研究情報を公共財として整備、開発途上国との国際的な互恵関係を
構築等。
(6)新規利用分野に対応した安全性及び生態系への影響評価基準の策定
戦略2.「人々の多様な幸せへの願い」を実現する産業分野への重点化戦略
(ニーズ指向型産業化戦略)
(1)医療及び製薬等医療関連分野の戦略
バイオテクノロジーの産業化は、まず医療及び製薬等医療関連分野においてゲノ
ム創薬として開花しつつあり、今後は更に、個人ゲノム情報に基づき適切な患者に
適切な治療を施す「テーラーメイド医療」、個人の体質をゲノム情報レベルで把握し
参考資料 2-2-38
未然に発病を防ぐ「予防医療」へと移行すると考えられる。このため、SNP など
の遺伝情報を民間企業が創薬研究や予防医療の研究に利用できるよう公共財として
早急に整備することが必要である。医薬品については、ゲノム情報やプロテオーム
情報を新規の創薬標的分子の同定に活用患者個人の遺伝子情報を基に薬剤の応答性
や副作用発現リスクを予測し、病態に的確に反応する新規作用を有する独創的医薬
品の開発が重要である。医療分野については、遺伝子治療技術の研究開発、組織工
学等を利用した再生医療等の開発、それらの品質確保及び安全性評価の方法につい
ての研究、遺伝子組換え技術やクローン技術等を駆使した動物・植物を用いた有用
物質(ワクチン等)の製造技術の開発などの新たな分野を推進し、産業化につなげ
ることが重要である。また、併せて、ゲノム創薬によって創製された候補化合物を
適切な臨床試験で評価するために、国際基準に対応できる臨床試験のスムーズな実
施のための体制を早急に整備することが必要である。
(2)食品・農水産業分野の戦略
機能性食品の分野での日本の競争優位を確固としたものにする。また、イネゲノム
研究を加速的に進める。
(3)環境・工業プロセス・製品分野の戦略(グリーンバイオ革命の推進)
グリーンバイオプロセスやグリーンバイオプロダクトの開発等。
(4)電子機器・情報解析・精密計測技術の活用戦略
DNA チップとその解読装置、タンパク質情報等生物関連情報のデ−タベ−ス化等
戦略3.バイオテクノロジー産業の発展がもたらす利益を国民・社会が享受できる
環境を整備すること
(1)安全性の確保と国民の理解の増進
生態系への影響に関する研究、食品の安全性モニタリング組織の整備等。
(2)生命倫理に関するルールの確立
(3)プライバシーの保護に関するルールの確立
(4)国民・社会が求めるメリットを提供することを重視した取り組み
戦略4.国全体としてバイオテクノロジーの産業化を推進する体制の構築
(1)国全体としてバイオテクノロジーの産業化を推進する体制の構築
(2)バイオ関連政府予算の拡充
明確かつ野心的な目標に向けた研究開発テーマ、独創的手法等を提案している人
に着目して競争的かつ重点的に研究開発資金を配分する等。
(3)産学官の連携の推進
(4)地域における主体的取り組み
自治体による充実したソフト面の支援等。
参考資料 2-2-39
4. ミレニアム・ゲノム・プロジェクト
2000-2004
研究期間
実施者
中村祐輔
東京大学教授医科学研究所ヒトゲノム解析センター(長ヒトゲノム多様性解析)、
廣橋説雄
国立がんセンター研究所長(疾患遺伝子)、五條堀孝
国立遺伝学研究所教授 生命
情報研究センター(長バイオ・インフォマティクス)、西川伸一
京都大学大学院医学研究科
教授(発生・分化・再生)、桂直樹
農業生産資源研究所長(イネゲノム)
痴呆、がん、糖尿病、高血圧等の高齢者の主要な疾患の遺伝子の解明に基づくテーラーメイド
医療(原因となる遺伝子は個々人で異なる為その遺伝子疾患に対応した治療等を行う医療)を
目標
実現し、画期的な新薬の開発に着手するとともに、生物の発生等の機能の解明に基づく、拒絶
反応のない自己修復機能を利用した骨、血管等の再生医療を実現する。
疾患予防、健康維持のための植物の高品質化によるアレルゲンフリー等高機能食物及び農業使
用の少ない稲作を実現する。
ヒトゲノム多様性解析:ヒト完全長 cDNA 構造・機能解析(12・13 年度、経済産業省)
、標準
SNPs 解析(12・13 年度、文部科学省、経済産業省)、体系的疾患 SNPs 研究(12∼16 年度、
文部科学省)
内容
疾患遺伝子:疾患・薬剤反応性遺伝子の解析と治療応用(12∼16 年度、国立医療機関、大学
等)で癌も対象
バイオ・インフォマティクス:ヒトゲノム関連データベース整備(12∼16 年度、文部科学省、
厚生労働省、経済産業省)とバイオ・インフォマティクス技術の開発
発生・分化・再生:自己修復能力を用いた治療法の実現(12∼16 年度、厚生労働省)他
ヒトゲノム多様性解析(H12 評価結果):既に 10 万の標準 SNP が発見されるなど、達成度は目
標どおり成果を上げており、順調にプロジェクトを実施中。サンプルは日本人集団に特化。タ
イピング速度も、米の2000万 SNP/年に対し1億 SNP/年であり5倍。
疾患遺伝子(H12 評価結果):痴呆、がん、糖尿病等の疾患関連遺伝子及び薬剤反応性関連遺伝
子について、SNPs 解析手法や、発現異常の網羅的解析法等を用いて解明し、新たな治療法、
創薬に関する研究に着手し、遺伝子解析を行う上でのガイドラインを確立。
成果
バイオ・インフォマティクス(H12 評価結果):ヒトゲノム関連データベース、標準多型データ
ベース、生物遺伝資源に関するデータベース等を構築し、ゲノム研究成果の共通研究基盤とし
て、DNA データバンクを含めてネットワーク化するとともに、バイオテクノロジー関連の膨
大なデータの利用環境の高度化を図るため、統合データベースの開発・提供に着手。
発生・分化・再生(H12 評価結果):初期発生、組織・細胞の分化等の基礎研究(発生のしくみ
及び分化・再生のしくみの領域)から、ヒトの組織等の再生医療や遺伝子治療等を視野に入れ
た臨床臨床応用(医療への応用の領域)まで、体系的に着手。
参考資料 2-2-40
5. 文部科学省:バイオリソースプロジェクト、タンパク 3000 プロジェクト
(1)ナショナルバイオリソースプロジェクト
2002-2008
研究期間
実施者
2002.2 より公募中
ライフサイエンスの総合的な推進を図る観点から、実験動植物(マウス、シロイヌナズナ等)や、
目標
ES 細胞などの幹細胞、各種生物の遺伝子材料等のバイオリソースのうち、国が戦略的に整備
することが重要なものについての体系的な収集・保存・提供等を行うための体制を整備する。
実験動植物や、ES 細胞などの幹細胞、各種生物の遺伝子材料等のバイオリソースのうち、国
内容
が戦略的に整備することが重要なものについての体系的な収集・保存・提供等を行うための統
合的なシステムを構築する。
(2)タンパク 3000 プロジェクト
2002-2006
研究期間
理化学研究所、東京大学大学院農学生命科学研究科、北海道大学大学院理学研究科、北海道大
実施者
学大学院薬学研究科、横浜市立大学大学院総合理学研究科、高エネルギー加速器研究機構物質
構造研究所、京都大学大学院理学系研究科、大阪大学蛋白質研究所生体分子解析センター、大
阪大学大学院理学系研究科
我が国発のゲノム創薬の実現等を目指し、我が国の研究機関の能力を結集して、平成14年度
目標
からの5年間でタンパク質の全基本構造の1/3(約3000種)以上のタンパク質の構造及び
その機能を解析し、特許化まで視野に入れた研究開発を推進する。
タンパク質基本構造の網羅的解析プログラム:cDNA を活用してタンパク質の基本構造を大量
内容
かつ迅速な手法で網羅的に構造・機能解析を実施。タンパク質の個別的解析プログラム:タン
パク質の多様な構造・機能に着目して、個別的に構造・機能解析を実施。
参考資料 2-2-41
6. 文部科学省:科学技術振興調整費、国研活性化プログラム関連プロジェクト
6.1
科学技術振興調整費
(1)総合研究
1)がん細胞の標的治療のための先端基盤技術の開発に関する研究
研究期間
第Ⅱ期:1999∼2001
国立がんセンター研究所、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科、(独)放射
線医学総合研究所、東京大学医科学研究所、東京大学大学院農学生命科学研究科、東京大学分
実施者
子細胞生物学研究所、(財)癌研究会癌研究所、大阪大学蛋白質研究所、大阪大学大学院医学系
研究科バイオメディカル教育研究センター、大阪大学大学院医学系研究科、京都大学医療技術
短期大学部、京都大学大学院理学研究科、京都大学ウイルス研究所
がん細胞の生物的特質に基づいて特定の細胞・分子等を標的とする技術を確立することによ
目標
り、既存の治療法では限界が見えてきた難治がん、進行がんの克服に向けた新しい概念に基づ
くがん治療戦略を築く。
内容
分子標的について焦点を絞り、がん細胞の増殖・細胞死の制御機構や浸潤・転移能を標的とし
た治療法の開発に向けた基盤的研究を行う。
第Ⅰ期においては、がん細胞に特徴的な増殖制御機構や信号伝達系、細胞間・細胞間質間相互
作用、プログラム細胞死の信号伝達経路等の解明について研究を進め、p53 のリン酸化部位の
成果
同定や TGF-ß シグナル伝達系の解明、細胞表面のプロテアーゼの制御機構の解明、細胞死に関
する Fas リガンドやカスパーゼの関与等、がん治療の分子標的について多くの基礎的成果が得
られた。
参考資料 2-2-42
(2)ゲノムフロンティア開拓研究
1)ゲノム比較と系統的相互作用解析に基づく遺伝子・分子ネットワークの解明
1998-2002
研究期間
京都大学化学研究所、東京大学医科学研究所、九州大学大学院生物資源環境化学、宝酒造(株)
実施者
バイオ研究所、クラクソ・スミスクライン(株)筑波研究所、金沢大学がん研究所、理化学研究
所播磨研究所、京都大学大学院生命科学研究科、東北大学大学院生命科学研究科
ゲノムの全配列データ、マイクロアレイによる遺伝子発現プロフィールデータ、2ハイブリッ
目標
ドや質量分析によるたんぱく質間相互作用データ、さらに細胞機能に関する知識を統合し、ゲ
ノムからネットワークの情報構築原理を明らかにすると同時に、多数の未知遺伝子の機能につ
いて系統的予測を行う。
らん藻、酵母、枯草菌、大腸菌でマイクロアレイによる発現プロフィール解析を行い、またら
ん藻と酵母については2ハイブリッドシステムと質量分析によるタンパク質間相互作用デー
内容
タをも加え、遺伝子・分子ネットワークを明らかにする。これらの解析を通じて、生命システ
ムの情報構築原理解明を目指し、同時にらん藻ゲノム中の多数の未知遺伝子について、系統的
機能予測を行う。
成果
2000 年までにネットワーク再構築の情報処理技術とマイクロアレイ関連の実験技術を確立し、
らん藻、枯草菌、酵母等の生物種で実際の解析を行っている。
2)ヒト完全長cDNAクローンの単離とそのバンク化、及び、それらを用いた多型マー
カー開発並びに発現情報解析方法の確立のための研究
1998-2002
研究期間
東京大学医科学研究所・癌ウイルス研究部、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター、
実施者
武田薬品工業 開拓第2研究所、(財)癌研究会癌化学療法センター、九州大学生体防御医学研
究所遺伝情報実験センター
遺伝子の発現量の差(遺伝子発現プロフィール)や遺伝子産物の機能的性質の差(翻訳領域に
目標
おける遺伝子多型や遺伝子のスプライシングの差)を体系的に解析し、これをもとに疾患、あ
るいは、特異な病態との関連を調べて遺伝子機能を類推していく。
ヒト遺伝子機能研究、疾患関連遺伝子研究を効率的に進めていく観点から計画されたものであ
り、(1)研究の基盤材料となる完全長 cDNAクローンバンクの構築、(2)遺伝子発現プロ
内容
フィールを効率よく検索する方法の確立、(3)疾患遺伝子研究のための基盤情報となる特に
遺伝子発現に影響を与える遺伝子多型情報の収集とデータベース化、(4)得られた完全長c
DNA配列、それらの発現プロフィール、SNP配列とその多型頻度を統合したデータベース
を構築し、インターネットを通じて公表する、の4個の柱から構成される。
参考資料 2-2-43
3)次世代DNAマイクロアレイシステムの開発
1999-2003
研究期間
実施者
早稲田大学、九州大学、日本レーザー電子、理化学研究所
DNA二本鎖に特異的に結合する縫い込み型インターカレーターに、ユウロピウムなどの遅延
目標
型蛍光物質を組み合わせた新しい染色剤を開発し、これを使った次世代マイクロアレイシステ
ムの技術開発を行い、最終的に実用化することを目指す。
内容
新しい蛍光ラべリング法およびセンシング法の原理の確立とそれによるマイクロアレイシス
テムの実証を行う。
優れた要素技術の開発が行われているが、マイクロアレイの技術開発競争は予測以上であり、
成果
新たなコンセプトに基づくシステム開発も始まっている。したがって、本研究により開発され
た技術の実用化を目指して、応用検証研究を加速する必要がある。
4)多型マイクロサテライトの収集とヒトゲノム多様性に関する研究
2000-2004
研究期間
実施者
島津製作所、東海大学医学部、国立遺伝学研究所生命情報研究センター
世界的に進行しようとしているヒトゲノム多様性プロジェクトの標的であるSNP(single
nucleotide polymorphism : 単一ヌクレオチド多型;遺伝子内の一塩基置換、欠失、挿入によ
る差異にもとづく多型)に比べ、多型に富み、したがってより精度の高いマッピングが可能な
目標
マイクロサテライトに注目し、大量のマイクロサテライトについて、その繰り返し多型を質量
分析法により検索しうるDNAチップ技術(MSチップ)を開発し、続いてこの技術を用いて
ゲノムワイドにヒトの多型マイクロサテライト 30,000 個を収集し、さらにマイクロサテライ
トを多型遺伝マーカーとする相関解析により、複合遺伝疾患の原因遺伝子など、ヒト表現型を
規定している遺伝要因を同定することを目的とする。
第Ⅰ期では、1)DNA チップによるマイクロサテライトの繰り返し多型の検索技術の開発、
2)ゲノムワイドな 30,000 個の多型マイクロサテライトの設定
内容
第Ⅱ期では、1)第Ⅰ期に設定された 30,000 個の多型マイクロサテライトと第Ⅱ期に開発さ
れたDNAチップによるマイクロサテライ多型の検索技術を用いた複合疾患の原因遺伝子の
マッピングと同定、2)第Ⅰ期に設定された 30,000 個の多型マイクロサテライトのデータベ
ースの構築
参考資料 2-2-44
5)マウス遺伝子多型情報に基づいた遺伝子機能解析システムの開発
1998-2002
研究期間
実施者
東京都臨床医学総合研究所、理化学研究所ゲノム科学総合研究センター、国立遺伝学研究所、
熊本大学発生医学研究センター
我が国が独自に開発した遺伝学的にユニークなマウス系統と従来の標準的近交系の間に存在
目標
する遺伝子多型を基盤として、マウスの高次生命体機能を制御する遺伝子機能と遺伝子発現制
御機構を体系的に効率良く解明するためのゲノム解析システムを開発する。
多型マーカー情報の整備と亜種間単一交配に基づいたそれらの遺伝的地図作製、完全長 cDN
内容
AクローンのSNP情報の開発とそれらの遺伝的地図作製、遺伝子多型情報のデータベース構
築と公開、マウス亜種間コンソミック系統の樹立とそれらを用いた遺伝子機能解析システムの
開発、日本固有の実験用マウス系統のBACゲノムライブラリーの構築とその応用等。
マイクロサテライトの多型情報の整備については、体系的な方法論を開発し多型情報の量産化
と多型データベースの構築と検索システムの基本設計が確立し、その一部についてはデータベ
成果
ースを一般に公開している。また、新しい実験用マウス系統であるコンソミック系統とスピー
ドコンジェニック系統については、戻し交配が順調に進展し、一部の系統については導入染色
体(遺伝子)のホモ化も完了している。
6.2
国研活性化プログラム
(1)ゲノムDNA情報の構造生物学的解析
1998-2000
研究期間
実施者
目標
内容
成果
任期付研究員:舘野
賢(独立行政法人産業技術総合研究所)
ゲノムの全塩基配列内の遺伝子を高精度に同定する。
計算アルゴリズムを創出するとともに、同定された遺伝子の構造を情報科学的及び理論構造生
物学的手法により解析を行う。
情報科学と構造生物学の融合という意欲的な取組みであり、遺伝子同定の計算アルゴリズムの
開発と半自動解析のための情報システムの開発が行われるなど、一定の研究成果がある。
参考資料 2-2-45
7. 厚生労働省:薬剤反応性遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業
2000-2004
研究期間
実施者
目標
内容
国立医薬品食品衛生研究所
薬剤の薬効や副作用の発現に影響を与える分子を対象に、個体差発現の原因となる一塩基多型
(SNP)等の遺伝子多型を明らかにする。
遺伝子診断法を開発し、投薬法の改良を行う。
8. 厚生労働省:厚生科学研究費関連研究
以下の研究課題は全て平成13年度厚生科学研究費によるもの。
8.1
21世紀型医療開拓推進研究事業
がん研究分野
研究課題
実施者
実践的な医療手順のあり方に関する研究
国立がんセンター中央病院
胃がん治療に関する具体的な医療手順に関する研究
金沢大学医学部附属病院がん局
所制御学分野
肺がん標準治療のためのクリティカルパス作成に関する研究
県立愛知病院
乳がん治療に関する具体的な医療手順に関する研究
関西労災病院外科
化学療法の試験実施計画書を普及するための具体的な医療手順に関す
国立がんセンター東病院
る研究
質の高いがん医療の普及のための診療技術の向上に資する教育カリキ
国立がんセンター中央病院
ュラム及び教育マニュアルの在り方に関する研究
CTによる新たな肺がん罹患率高危険度群の解明に関する研究
国立がんセンター中央病院
ポリープ切除の大腸がん予防に及ぼす効果の評価と内視鏡検査間隔の
国立がんセンター中央病院内視
適正化に関する前向き臨床試験
鏡部消化器科
血清学的スクリーニングによる胃がん検診の効果と効率に関する研究
東邦大学医学部
がんの罹患高危険群の抽出と予後改善のための早期診断及び早期治療
大阪府立成人病センター研究所
に関する研究
限局期小細胞肺がんの予後改善を目指した集学的治療の研究
国立がんセンター中央病院放射
線診断部
局所限局非小細胞肺がんの予後改善を目指した外科切除を含む集学的
東京医科大学外科学第一講座
治療の研究
胃癌の分子診断に基づいた術前化学療法の確立に関する研究
九州大学大学院
術前化学療法による高度進行胃がんの予後改善に関する研究
国立がんセンター中央病院第一
領域外来部
再発高危険度群の大腸がんに対する術後補助療法の研究
国立がんセンター中央病院総合
病棟部
参考資料 2-2-46
膵癌に対する新しい補助化学療法に関する研究
国立がんセンター中央病院外科
再発高危険度群の乳がんの予後改善を目指した補助療法の研究
埼玉県立がんセンター内科
進行卵巣がんの予後改善を目指した集学的治療の研究
筑波大学臨床医学系
浸潤性膀胱がんの予後改善をめざした集学的治療の研究
札幌医科大学医学部
難治性悪性リンパ腫に対する分子標的治療薬を用いた薬物療法の研究
国立がんセンター中央病院特殊
病棟部
「外科的手術手技の技術導入評価及び標準化のための研究」として消化
国立がんセンター中央病院外科
管悪性腫瘍に対するリンパ節郭清の意義に関する研究
放射線治療の技術評価及び品質管理による予後改善のための研究
国立がんセンター東病院放射線
部
癌患者全体の全身体力消耗状態に対するリハビリテーション技術の研
愛知医科大学
究
がん診療の質の向上に資する院内がん登録システムの在り方及びその
国立がんセンター研究所がん情
普及に関する研究
報部
短期(治療後5年以内。)がん生存者を中心とした心のケア、医療相談
国立がんセンター研究所
等の在り方に関する調査研究
がん医療における緩和医療及び精神腫瘍学の在り方とその普及に関す
国立がんセンター研究所支所
る研究
肝がんに対する肝移植の有効性とその適応基準の確立に関する研究
信州大学医学部
慢性肝障害合併肝癌の治療適応決定のための肝炎・肝硬変DNAチップ
九州大学生体防御医学研究所
の開発
肝炎対策としての肝がんの研究
東京大学大学院消化器内科
新しい肝がん発症予防法および治療法の開発に関する研究
京都大学大学院
既存の肝がん治療法の有効性に関する研究
国立がんセンター中央病院内科
肝がんの発生予防に資するC型肝炎検診の効率的な実施に関する研究
広島大学医学部衛生学
8.2
がん克服戦略研究事業
研究課題
実施者
ヒト多段階発がんの基盤となる遺伝子異常の総合的把握によるがんの特
国立がんセンター研究所
徴の解明と診療への応用
がん発生に関与するゲノム不安定性と、がん関連遺伝子の機能の解明に関
国立がんセンター研究所
する研究
がん細胞における悪性形質獲得の分子機構の把握およびその制御機構の
国立がんセンター研究所
解明
新しいがん免疫療法の研究
国立がんセンター研究所
参考資料 2-2-47
動物モデルを用いた発がん感受性に関する研究
国立がんセンター研究所
発がんの高危険度群を対象としたがん予防に関する基礎及び臨床研究
国立がんセンター研究所
ウイルスを標的とした発がん予防に関する研究
国立国際医療センター研究所
疫学に基づくがん予防に関する研究
愛知県がんセンター研究所
ME機器の進歩に基づく新しい診断法の開発に関する研究
国立がんセンター中央病院
がん治療のための新技術の開発
国立がんセンター中央病院
新しいがん薬物療法の研究
国立がんセンター中央病院
がん情報の体系化に関する研究
国立がんセンター研究所
機能を温存する外科療法に関する研究
国立がんセンター東病院
がん患者のQOL向上を目指す支持療法に関する研究
国立がんセンター研究所支所
ヒトがんウイルスによる発癌の分子機構と免疫学的治療法の開発
国立感染症研究所エイズ研究
センター
SNPs(Single
Nucleotide
Polymorphi
新潟大学医学部
sm)を用いた相関解析による家族性卵巣癌関連遺伝子の単離と解析
ヒト腫瘍の分子病態の解析と臨床応用のための基盤研究
愛知県がんセンター研究所
ヒトがんの発生ならびに転移を抑制する遺伝子の解析
千葉県がんセンター
小児がんの遺伝的・発生生物学的特性の解明と診断への応用
国立小児病院
分子生物学、分子免疫学を駆使した微小残存、転移病変の評価ならびに適
財団法人癌研究会附属病院
切な集学的治療と予後推測法の開発
がんの浸潤・転移に関する病理学的及び分子生物学的研究
神奈川県立がんセンター臨床
研究所
浸潤、転移の分子機構に基づいた転移の予防及び新しい治療法の開発
大阪府立成人病センター病院
大規模地域・職域検診データに基づくがん予防とがん対策への活用と評価
名古屋市立大学医学部
院内がん登録の整備拡充とがん予防面での活用に関する研究
大阪府立成人病センター
婦人科がんの発生・進展の分子機構解析に基づいた新しい分子診断・治療
佐々木研究所附属杏雲堂病院
法の開発
DNAチップを用いた新たな白血病診断法の確立
自治医科大学医学部
患者の視点も含めたがん診療情報ネットワークの有用性評価と機能向上
国立病院四国がんセンター
に関する研究
がん関連遺伝子異常を利用したがんの診断と予後予測の研究
埼玉県立がんセンター
がん細胞の増殖制御による総合的分子療法の開発
国立国際医療センター研究所
国立病院・療養所呼吸器ネットワークを利用した、肺癌に対する新しい治
国立療養所近畿中央病院
療法(癌ワクチン療法を加えた)の開発
成人T細胞性白血病(ATL)への同種末梢血幹細胞による骨髄非破壊的
移植療法の検討
参考資料 2-2-48
国立病院九州がんセンター
8.3
ヒトゲノム・再生医療等研究事業
ヒトゲノム分野
研究課題
実施者
GM-CSF 遺伝子導入自己複製能喪失腫瘍細胞接種による遺
東京大学医科学研究所
伝子治療法の開発と臨床研究
難治固形癌に対する局所的ベクター投与による遺伝子治療の
岡山大学医学部第一外科
基礎的・臨床的研究
乳癌に対する癌化学療法の有効性と安全性を高めるための耐
(財)癌研究会癌化学療法センター臨床部
性遺伝子治療の臨床研究
ヒトゲノム研究に基づく腫瘍免疫細胞療法の開発研究
東京大学医学部附属病院(無菌治療部)
注)癌に関連するもののみ記載
8.4
高度先端医療研究事業
治療機器等開発研究分野
研究課題
実施者
集束超音波による Thermal Abalation 効果を利用した新しい低侵襲が
千葉大学
ん治療システムの開発に関する研究
心疾患及びがん疾患遺伝子の SNPs 解析と ECA チップによる遺伝子診
国立循環器病センター病因部
断システムの確立
遺伝子診断法ならびに遺伝子診断システムの実用化研究
国立がんセンター外科
術中にがんを可視化することで、5年生存率を 20%向上させるシステ
東京女子医科大学脳神経外科
ムの臨床開発に関する研究
磁気応用診断・治療機器装置の開発及び肺癌診療への適用
国立がんセンター中央病院
エンドマイクロスコープを用いた癌の新しい診断についての研究
昭和大学横浜市北部病院消化器
センター
注)癌に関連するもののみ記載
参考資料 2-2-49
9. 経済産業省関連プロジェクト
9.1
医療福祉機器技術研究開発事業
(1)微量細胞情報検出システム
1995-2000
研究期間
実施者
目標
医療福祉機器研究所、住友電気工業、藤沢薬品工業、旭テクネイオン
疾病の本態である細胞レベルの情報を総合的に取得して、疾病の早期発見を可能にする。
感染後直ちに提示される細胞レベルの変化情報(表面・内部の分子変化、形態変化)を微量な
内容
生体試料の中から直接総合的に取得する。細胞前処理部、光学的分析部、特定細胞分離/単離部、
画像解析部、制御/データ解析部、表示/出力部からなる装置。
(2)高感度DNA光検査装置研究開発
1995-1999
研究期間
実施者
目標
内容
医療福祉機器研究所、オリンパス光学工業、富士レビオ
感染の早い段階で検出可能で検体の前処理から検出までを自動化した安全・簡便な装置を開発
する。
光センサ技術を用いてセンサチップ上に特異的に結合したウイルスのDNAやRNA量を光
量の変化として測定する。
(3)定位的がん治療装置
1992-1995
研究期間
実施者
目標
医療福祉機器研究所、日立メディコ、日立製作所
病巣周囲の正常組織に殆ど障害を与えずに、病巣部に高いX線量を与える装置の開発。
X線CT等による画像情報から病巣部の位置や必要な照射線量を求める治療計画装置、呼吸等
内容
による癌病巣部の動きに連動して患者に定位置的・定量的にX線照射を行う照射ヘッド等から
なる装置の開発。
(4)光化学反応がん診断・治療装置
1984-1987
研究期間
実施者
目標
内容
医療福祉機器研究所、浜松ホトニクス、富士写真光機、電総研
コンパクトで尖頭値の大きいパルスレーザーを導入することによって非侵襲、深部治療、早期
癌診断可能な装置の開発。
癌親和性物質 HpD などとレーザーによる光化学反応の組み合わせによる癌診断・治療。
参考資料 2-2-50
(5)免疫学的がん診断装置
1985-1988
研究期間
実施者
目標
医療福祉機器研究所、日立製作所、協和発酵工業、製品科学研
高精度の癌診断装置の開発。
測定試料の反応部に活性の高い抗体を結合させた多孔性の反応媒体を用い、反応効率の高い、
内容
分離操作が簡単な、ごく微量の腫瘍マーカーも高感度・短時間で測定可能な、それぞれの腫瘍
マーカーに対して高い選択性を持って反応するモノクロール抗体などの免疫試薬と組み合わ
せた装置。
(6)がん治療用ハイパーサーミア装置
1986-1989
研究期間
実施者
医療福祉機器研究所、島津製作所、松下技研、電総研
目標
癌組織を 42∼45℃に選択的に加温できる装置の開発。
内容
非侵襲的に加温部の温度をモニタしつつ、加温パターンを適宜制御する装置。
9.2
医学・工学連携型研究事業
2000-2002
研究期間
実施者
目標
内容
微小電極利用遺伝子情報計測システム
筑波大
小型の装置で感染症や癌などを簡便、迅速、高精度に診断可能なシステムの開発。
超高感度型微小電極 DNA チップ ECA(電気化学アレイ)を用いた遺伝子診断システムの研究
開発。
参考資料 2-2-51
10.その他機関の研究例
(1)核酸・タンパク質一次構造の解析
研究期間
1982-2001
実施者
埼玉県立がんセンター
目標
内容
遺伝子やタンパク質の一次構造(核酸配列やアミノ酸配列)を解析するための理論的方法を確
立する。
2つないしはそれ以上の配列の間の比較、類似配列の検索、同定、アライメント及び高次構造
の予測に係る解析法を開発する。
(2)ステロイドホルモン依存性癌の発生と進展の分子機序
研究期間
1995-
実施者
埼玉県立がんセンター
目標
ホルモン関連癌の発生と進展の分子機構を研究
内容
生化学的、分子生物学的観点からの研究
(3)子宮体癌発生の分子機構
研究期間
1989-1999
実施者
九州大学生態防御医学研究所
目標
内容
子宮体癌の発生に関与する遺伝子変化を同定し、予後、進行度、組織学的所見と比較し、癌の
遺伝子診断を確立する。
癌の遺伝子診断並びに子宮体癌発生に重要な役割を果す遺伝子異変をターゲットとした遺伝
子治療も開発する。
(4)免疫診断および免疫療法の基礎的研究
研究期間
1993-1999
実施者
愛知県がんセンター研究所
目標
癌の免疫療法、遺伝子診断の開発
内容
マウス TL 抗原をモデルとした癌免疫療法の基礎研究。
(5)ヒトおよび動物癌転移の分子病理学的研究
研究期間
1997-
実施者
愛知県がんセンター研究所
目標
内容
微小転移に関する遺伝子診断の開発
胃癌を対象とした CEA を指標とするリアルタイム RT-PCR 法を確立し、腹腔洗浄中の遊離癌
細胞の高感度検出法等。
参考資料 2-2-52
(6)ヒト癌の遺伝子診断による悪性度の評価・ヒト癌抑制遺伝子の研究
研究期間
1995-2000
実施者
日本医科大学老人病研究所
目標
癌の遺伝子診断法の確立
内容
新規遺伝子のクローニング、新規癌関連遺伝子の同定他。
(7)甲状腺細胞の放射線応答性とがん化機序の解明
研究期間
進行中
実施者
長崎大学医学部付属原爆後障害医療研究施設
目標
疾患の遺伝子診断及び細胞機能解析
内容
疾患の責任遺伝子とその機能異常を明らかにする。
(8)サイトカイン、成長因子の生理作用解析
研究期間
進行中
実施者
長崎大学医学部付属原爆後障害医療研究施設
目標
内容
疾患の遺伝子診断及び細胞機能解析
心血管及び内分泌臓器における PTHrP 作用の解明、PTHrP 発現トランスジェニックマウス等
の作成。
(9)内分泌系腫瘍やがんの遺伝子治療の開発
研究期間
進行中
実施者
長崎大学医学部付属原爆後障害医療研究施設
目標
疾患の遺伝子診断及び細胞機能解析
内容
放射線起因疾患、遺伝子異常を伴う疾患の責任遺伝子と機能異常を明らかにする。
参考資料 2-2-53
11. 血中遊離 DNA による癌診断関連の特許概要(日本)
NO
出願番号
1 出願番号
特願平04-350818
出願日
H 4.12. 4
公開番号
特開平06-205676
公開日
H 6. 7.26
登録番号
特登3018802
登録日
H12. 1. 7
2 出願番号
特願平06-281466
出願日
H 6.10.21
公開番号
特開平08-119999
公開日
H 8. 5.14
3 出願番号
特願平07- 34966
出願日
H 7. 2.23
公開番号
特開平08- 38197
公開日
H 8. 2.13
発明(考案)
の名称
要約(
抄録文)
全血液検体か
らのDNA抽出
方法及び抽出
キツト
フリーキーワード
【
目的】(J)全血液検体に界面活性剤を加えて血球細胞を破壊し、界面活性剤と 全血液,検体,DNA 抽出,方法,抽出,キツト,界面 活性剤,血球 細
蛋白質分解酵素で核膜、核蛋白質を破壊後カオトロピツク剤でDNA鎖を遊離、 胞,破壊,蛋白質 分解 酵素,核膜,核蛋白質,カオトロピツク剤,DNA
沈澱させ、損傷、汚染を防いで標記DNAを得る。£出生前診断、B型肝炎ウイル 鎖,遊離,沈殿,損傷,汚染,DNA,出生,診断,B型 肝炎 ウイルス,ヒト,
ス、ヒトパピロ−マウイルス、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、PCR法【構 パピロ−マ,ウイルス,ドデシル,トリ メチル アンモニウム,臭化物,P
成】
全血液検体に非イオン性界面活性剤(
例;ポリオキシエチレンオクチルフエニ CR,非イオン性 界面 活性剤,ポリ オキシ エチレン オクチル
ルエ−テル等)
等の界面活性剤を接触させて血球細胞の細胞膜を破壊し、露出 フエニル エ−テル,接触,細胞膜,露出,細胞核,陰イオン性 界面
した細胞核を集め、更に、陰イオン性界面活性剤(
例;ドデシル硫酸ナトリウム等)活性剤,ドデシル 硫酸 ナトリウム,蛋白 分解 酵素,プロテア−
等の界面活性剤と蛋白分解酵素(
例;プロテイナ−ゼK等)で処理しで核酸及び ゼ,K,処理,核酸,カ,トロピツク剤,ヨウ化,ナトリウム,溶液,アルコ−ル,
核蛋白質を破壊する。これを、カロトロピツク剤(例;よう化ナトリウム等)と接触さ イソプロパノ−ル,抽出 過程,遺伝病,癌,遺伝子(
デオキシリボ核酸,
せてDNA鎖を遊離させ、次いで、この遊離されたDNA鎖を含む溶液にアルコ− トリメチル,トリメチルアンモニウム,メチルアンモニウム,オキシエチレ
ル類(
例;イソプロパノ−ル等)を加えてDNA鎖を沈澱させることにより、抽出過程 ン,オクチルフエニルエ−テル,フエニルエ−テル,ポリオキシエチレ
でのDNA鎖の損傷、汚染を抑えて、遺伝病、癌等の遺伝子診断用等のDNAを ン,ラウリル硫酸ナトリウム,硫酸ナトリウム,イソプロピルアルコ−ル,
抗フコシルトラ 【
目的】(J)フコシルトランスフエラ−ゼに反応する、血液中の腫瘍マ−カ−である 抗,フコシル,トランスフエラ−ゼ,抗体,モノクロ−ナル 抗体,産生,ハ
ンスフエラ− フコシルトランスフエラ−ゼ量の免疫学的測定法に用いられ、癌診断の補助検 イブリドマ,測定 方法,反応,血液,腫瘍 マ−カ,量,免疫学 測定,癌
ゼ抗体、抗フ 出、癌発生機序の研究等に有用な新規標記抗体。£シアリルルイスA、シアリル 診断,補助,検出,癌発生,機序,研究,有用,新規,シアリル,ルイス,シア
コシルトランス ルイスX、シアリルトランスフエラ−ゼ、カテプシン様プロテア−ゼ、ゴルジ体【構
リル トランスフエラ−ゼ,カテプシン,プロテア−ゼ,ジ体,ヒト,培養
フエラ−ゼモノ 成】ヒト培養細胞より抽出したゲノムDNAを、ヒトα−(1,3/1,4)フコシルトラ 細胞,抽出,ゲノム DNA,α,遺伝子,一部,塩基 配列,プライマ−,PC
クロ−ナル抗 ンスフエラ−ゼ遺伝子の一部からなる塩基配列をプライマ−にしてPCR法により R,クロ−ニング,組替 DNA 技術,宿主 細胞,発現,組替,アジユバ
体を産生する クロ−ニングし、得られたフコシルトランスフエラ−ゼ遺伝子を組換えDNA技術に ント,BAL,B,マウス,投与,免疫,最終,膵臓 細胞,採取,マウス 骨髄
ハイブリド−マ より宿主細胞中で発現させ、組換えヒトα(1,3/1,4)フコシルトランスフエラ− 腫 細胞,融合,HAT 培地,選択 培養,限界 希釈,抗体 産生,株,
及び該抗体を ゼを得る。次に、これをアジユバントと共にBALB/cマウスに投与して免疫し、 培養,目的(デオキシリボ核酸)
用いたフコシ 最終免疫後に膵臓細胞を採取してマウス骨髄腫細胞と融合後、HAT培地で選択
ルトランスフエ 培養してハイブリド−マを得、次いで、これを限界希釈法でクロ−ニングし、抗体
ラ−ゼの測定 産生株を培養して、目的の新規抗フコシルトランスフエラ−ゼ抗体を得る。
生検サンプル 【
目的】(J)血液または他の生検材料から得られたサンプルにおいて、インタ−フ 生検,サンプル,I
R
,F,特異性,RNA,分析,癌,前癌 状態,型,疾患,感受
中のI
RF−1 エロン−調節因子特異的RNAを分析することにより、造血系等の癌、前癌状態 性,診断 方法,血液,材料,インタ−フエロン,調節 因子,特異的,造
特異性RNA または他の型の疾患に対する感受性を診断する。£分子マ−カ−、末梢血単核 血,診断,分子,マ−カ,末梢 血単核,細胞,骨髄 細胞,白血病,腫瘍,
の分析による 細胞、骨髄細胞、白血病、腫瘍サプレ−サ−遺伝子【
構成】
血液または他の生検 プレ−サ,遺伝子,グアニジン,チオ シアネ−ト,分離,式,†1,†3,オリゴ
癌、前癌状態 材料から得られたサンプルにおいて、サンプルよりグアニジン−チオシアネ−ト法 ヌクレオチド,1つ,プライマ−,使用,逆転写,ポリメラ−ゼ,鎖,反応,増
又は他の型の 等によりRNAを分離し、式†1∼†3で表わされるオリゴヌクレオチドの少なくとも一 幅,クロ−ニング,cDNA,全長,エクソン,相対量,測定(リボ核酸,チオ
疾患に対する つをプライマ−として使用し、逆転写/ポリメラ−ゼ鎖反応により、インタ−フエロ シアネ−ト,オリゴヌクレオチド,デオキシリボ核酸)
感受性の診断 ン−調節因子(IRF−1)特異的RNAを増巾してクロ−ニングする。次いで、この
方法
増巾cDNAを分析し、全長I
RF−1特異性RNA分子がI
RF−1遺伝子のエクソン
2またはエクソン2及びエクソン3の相対量を測定し、造血系等の癌、前癌状態ま
たは他の型の疾患に対する感受性を診断する。
参考資料 2-2-54
出願人
27-351724 和
光純薬工業
(
株)
13-359762 富
士レビオ
(
株)
DE-197463 ベ
−リンガ− イ
ンゲルハイム
INTERN G
MBH
NO
出願番号
発明(考案)
の名称
要約(
抄録文)
フリーキーワード
出願人
4 出願番号
特願平07-161701
出願日
H 7. 6.28
公開番号
特開平09- 9967
公開日
H 9. 1.14
核酸合成法
【目的】(J)試料中の遺伝子包含体もしくは試料を特定pHの遺伝子増巾反応液と核酸 合成,試料,遺伝子,包含体,特定,pH,増幅,反応液,混合,不純 26-000199 島
混合し、不純物が存在しても核酸増巾が阻害されないポリメラ−ゼ連鎖反応法に 物,存在,核酸,阻害,ポリメラ−ゼ,連鎖 反応,反応,目的,DNA,タイピ 津製作所:
より反応して、試料中の目的遺伝子を核酸合成する。£DNAタイピング、親子鑑 ング,親子,鑑定,遺伝病,伝染病,ガン 診断,温度 条件,pH 緩衝能, (
株)
定、遺伝病、伝染病、ガン診断【
構成】
試料中の目的とする遺伝子を増巾する核 力,pH 緩衝液,プライマ−,デオキシ リボ ヌクレオチド,熱安定性,
酸合成法において、試料中の遺伝子包含体もしくは試料そのものを、25°Cの PCR,血液 試料,前処理,簡易,迅速(
デオキシリボ核酸,デオキシリ
温度条件下でpHが8.9以上となるpH緩衝能力を有するpH緩衝液を用いた、プ ボ,デオキシリボヌクレオチド,リボヌクレオチド)
ライマ−、デオキシリボヌクレオチド類及び熱安定性ポリメラ−ゼ等を含む遺伝子
増巾反応液を混合して、ポリメラ−ゼ連鎖反応法(PCR)
により目的の核酸を増
巾反応させることにより、試料、特に血液試料の前処理が簡便、迅速に行なうこと
ができ、不純物の存在下でも核酸増巾が阻害されることなく、試料中の目的とす
る遺伝子をPCR法で核酸合成して増巾する。
5 出願番号
特願平08-282948
出願日
H 8.10. 4
公開番号
特開平09-154575
公開日
H 9. 6.17
テロメラ−ゼ
【目的】(J)特定分子量を有し、ヒト染色体末端部分テロメアNDA部分の3′末端
をプライマ−にして、繰り返し配列の一本鎖を延長する活性を有する、癌の診断
薬や癌治療薬の開発、研究用等の新規標記酵素を得る。£血液幹細胞、生殖細
胞、ヒドロキシアパタイト、原生動物、逆転写酵素【構成】ゲル濾過法による推定
分子量が約300kであり、SDS−PAGE(還元条件下)による推定分子量が、少
なくとも約140k,80k及び50kの構成蛋白からなる会合体であり、ヒト染色体末
端部分テロメアDNA部分の3′末端をプライマ−にして、繰り返し配列の一本鎖
を延長する活性を有する、RNA蛋白質である新規ヒトテロメラ−ゼであり、その
活性の測定は癌の診断に有用であり、テロメラ−ゼに対する阻害剤或はそのm
RNAに対するアンチセンス鎖は癌に対する治療薬として有用である。この酵素
は、ナマルバ細胞(テロメラ−ゼ高産生株)を培地に培養後、細胞をホモジナイズ
して抽出し、抽出後を濃縮してカラムクロマトグラフイ−にかけて得られる。
6 出願番号
特願平09-335748
出願日
H 9.12. 5
公開番号
特開平11- 46777
公開日
H11. 2.23
登録番号
特登3016756
登録日
H11.12.24
ヒトB細胞分化 【目的】(J)特定アミノ酸配列をもつヒトB細胞分化因子等をコ−ドするDNAを含 ヒトB,細胞 分化,因子,製造 方法,特定,アミノ酸 配列,コ−ド,DN 26因子の製造方 むベクタ−で形質転換された宿主細胞を培養することにより、免疫不全症、感染 A,ベクタ−,形質 転換,宿主 細胞,培養,免疫 不全症,感染症,癌, 佑
法
症、癌等の診断、治療用等の標記因子を得る。£自己免疫疾患、マイトゲン、ニ 診断,治療,自己免疫 疾患,マイトゲン,ニツク,トランス,比率,ブロツト,
ツクトランスレイシヨン法、サザ−ンブロツトハイブリダイゼイシヨン、ジデオキシ法 ハイブリダイゼ−シヨン,ジ デオキシ,成人性,T細胞,白血病,患者,
【構成】成人性T細胞白血病患者の血液より樹立したヒトT細胞株ATL−2を培養 血液,樹立,ヒト T細胞,株,ATL,常法,ポリ,RNA,調整,cDNA ライブ
した後、常法に従い、ポリ(A)↑+RNAを調整し、これを用いてcDNAライブラリ ラリ−,作成,マウス,B細胞 分化 因子,部分,遺伝子,プロ−ブ,スク
−を作成し、これをマウスB細胞分化因子の部分遺伝子からなるプロ−ブを用い リ−ニング,式,†1,存在,CDF,前駆体,クロ−ニング,組込,組替 発現
てスクリ−ニングを行ない、式†1(Xは存在しないか、式†2を有するアミノ酸配列)ベクタ−,導入,培養物,生産物,採取,目的(アミノカルボン酸,デオキ
を有するヒトB細胞分化因子(ヒトBCDF)またはその前駆体をコ−ドする遺伝子 シリボ核酸,ジデオキシ,リボ核酸)
をクロ−ニングする。次に、この遺伝子をベクタ−に組み込んだ後、この組換え発
現ベクタ−を宿主細胞に導入して形質転換し、この形質転換された宿主細胞を培
養し、培養物から生産物を採取することにより、目的のヒトBCDFまたはその前駆
体を得る。
参考資料 2-2-55
テロメラ−ゼ,特定 分子量,ヒト 染色体,末端 部分,テロメア,NDA, 13そ−
部分,末端,プライマ−,繰返し,配列,1本鎖,延長,活性,癌,診断剤,癌 せい:
(
株)
治療薬,開発,研究,新規,酵素,血液,幹細胞,生殖,細胞,ヒドロキシ ア
パタイト,原生 動物,逆転写 酵素,ゲル 濾過,推定,分子量,SDS,P
AGE,還元 条件,構成,蛋白,会合体,DNA,RNA,蛋白質,ヒト,測定,
診断,有用,阻害剤,mRNA,アンチ,センス,鎖,治療剤,ナマルバ 細
胞,産生株,培地,培養,ホモジナイズ,抽出,濃縮,カラム クロマトグラ
フイ(ヒドロオキシ,ヒドロキシアパタイト,ラウリル硫酸ナトリウム,デ
オキシリボ核酸,リボ核酸)
本庶
NO
出願番号
発明(
考案)
の名称
要約(
抄録文)
フリーキーワード
出願人
7 出願番号
特願平09-516392
出願日
H 8.10.22
公開番号
特表2000-500329
公開日
H12. 1.18
癌罹病性の診 【
目的】
患者から採取した核酸を含む試料を,その領域がマ−カ−D10S541等 癌,病,性,診断,治療,患者,採取,核酸,試料,領域,マ−カ,S,定義,DNA,
断およびその で定義されたDNAによつて境界付けられる第10染色体の領域と選択的にハイ 境界付け,第1,染色体,選択的,ハイブリダイズ,接触 処理,感受性,
治療
ブリダイズできる核酸と接触処理することにより,癌に対する患者の感受性を判 判定,接触,前立腺癌,前立腺,組織,血液,精液,尿,酵母,人工,YAC,H,
定する。【構成】患者から核酸を含む試料を採取し,この試料の核酸をその領域 F,B(デオキシリボ核酸)
がマ−カ−D10S541およびD10S215によつて定義されたDNAによつて境界
付けられる第10染色体領域と選択的にハイブリダイズできる核酸と接触させる。
これによつて,癌に対する患者の感受性を判定するとともに,患者の癌を診断す
る。患者の癌の具体例には前立腺癌があり,患者から採取する試料には前立腺
組織,血液,精液,尿等がある。また,核酸の具体例には,酵母人工染色体(YA
C)746−H−8,821−D−2,831−E−5,921−F−8,738−B−12,7
96−D−5等がある。
GBイン
ペリアル キヤ
ンサ− リサ
−チ テクノロ
ジ− LTD
8 出願番号
特願平10-539812
出願日
H10. 3.12
公開番号
特表2001-509816
公開日
H13. 7.24
血管新生内皮
細胞を標的と
した陽イオン
脂質組成物
【
目的】
陽イオン脂質と血管新生の阻害剤とを含有することにより,多様な異なる 血管 新生,内皮 細胞,標的,陽イオン,脂質 組成物,脂質,阻害剤,
疾患及び異常の治療並びに診断に適用でき,特に癌の治療,創傷治癒及び多様 含有,多様,疾患,異常,治療,診断,適用,癌,創傷 治癒,慢性 炎症,有
な慢性炎症疾患に有用な,複合体を得る。【
構成】(A)陽イオン脂質と(B)血管新 用,複合体,対応,正常,比較,血中,高さ,親和性,検出 可能,標識,成分,
生の阻害剤とを含み,対応する正常な内皮細胞と比較して血管新生内皮細胞に B,影響,ヌクレオチド 配列,ヌクレオチド,選択的,活性化,促進剤,FL
対して,血中でより高い親和性を有する。尚,更に(C)検出可能な標識を含有し, T,遺伝子,FL,K,ホン,ウイル,ブランド,因子,群,選択,機能,結合,DNA
特に成分Aと成分Bに影響を及ぼすヌクレオチド配列とを含むヌクレオチド/陽イ 配列(
デオキシリボ核酸)
オン脂質複合体であつて,前記ヌクレオチド配列が,血管新生内皮細胞内で選択
的に活性化されるプロモ−タ−で,選択的にはFLT−1遺伝子プロモ−タ−,FL
K−1遺伝子プロモ−タ−及びフオン・ウイルブランド因子遺伝子プロモ−タ−か
らなる群より選択されるプロモ−タに機能的に結合しているDNA配列であること
が,好ましい。
US-184684 ユ
ニバ−シテイ
オブ カリフオ
ルニア
9 出願番号
特願平11-174965
出願日
H11. 6.22
公開番号
特開2001- 190
公開日
H13. 1. 9
タンパク質およ【
目的】(J)特定アミノ酸配列を含むタンパク質ヒトWAVE2、そのホモロ−グから 蛋白質,遺伝子,特定,アミノ酸 配列,ヒト,WA,VE,ホモ,ロ−,動物,臓
びその遺伝子 なる、ヒトや動物の臓器・組織・細胞に由来し、造血・血液系疾患等を含む各種疾 器,組織,細胞,由来,造血,血液,疾患,診断,治療,新規,鉄欠乏性 貧
患の診断・
治療に役立つ新規タンパク質。£鉄欠乏性貧血、白血球減少症、原発 血,白血球 減少症,原発性,免疫 不全症,アルツハイマ−型,老人
性免疫不全症、アルツハイマ−型老人性痴ほう、パ−キンソン病【
構成】
式に記 性 痴ほう,パ−キンソン氏病,式,記載,全部,一部,部分,ペプチド フ
載のアミノ酸配列の全部を含むタンパク質ヒトWAVE2、そのホモロ−グ、または ラグメント,フラグメント,ホロ,モ−,免疫,脳,生体,各組,織,細胞 増殖,
アミノ酸配列の一部を含むその部分ペプチドフラグメントまたはそのフラグメントの 運動,形態,機能,維持,関与,脳神経系 疾患,内分泌,癌,有用,ES,デ
ホロモ−グからなる新規タンパク質であり、造血・
血液系、免疫系、脳等の生体各 −タ ベ−ス,検索,塩基 配列,作製,プロ−ブ,cDNA ライブラリ−,
組織において、細胞増殖、細胞運動、細胞の形態・
機能の維持等に関与し、造
スクリ−ニング,発現,組込(アミノカルボン酸,デオキシリボ核酸)
血・
血液系疾患、免疫系疾患、脳神経系疾患、内分泌系疾患、癌等の診断・
治療
等に有用である。このタンパク質は、ヒトESTデ−タベ−スから検索した塩基配列
から作製したプロ−ブを用いて、各種組織のcDNAライブラリ−をスクリ−ニング
し、得られた遺伝子を発現系に組み込んで発現させることにより得られる。
10免疫
生物研究所:
(
株)
13竹縄 忠臣
参考資料 2-2-56
NO
出願番号
10 出願番号
特願2000-171081
出願日
H12. 6. 7
公開番号
特開2001- 17190
公開日
H13. 1.23
発明(考案)
の名称
要約(抄録文)
フリーキーワード
出願人
ヒトパピロ−マ 【
目的】(J)特定アミノ酸配列を含むヒトパピロ−マウイルス18のE7タンパク質に ヒト,パピロ−マ,ウイルス,蛋白質,血清 反応,性,エピト−プ,特定,ア DE-166574 ベ
ウイルス18の おける血液反応性エピト−プである抗原決定部位からなる、上記ウイルス起因性 ミノ酸 配列,血液,反応性,抗原 決定 部位,起因,疾患,予防,診断, −リングベル
タンパク質に 疾患の予防、診断、治療用等の新規ペプチド。£ワクチン、診断用キツト、T4DN 治療,新規,ペプチド,ワクチン,診断 キツト,DNA ポリメラ−ゼ,ウエ ケ AG
おける血清反 Aポリメラ−ゼ、ウエスタンブロツト法、抗血清【構成】式†1及び式†2のアミノ酸配 スタン,ブロツト,抗血清,式,†1,1つ,肛門,性器,良性,病変,子宮 頚部,
応性エピト− 列のうち1つで表されるヒトパピロ−マウイルス18のE7タンパク質における血清 ペニス,膣,悪性 腫瘍,補助,有用,DNA,超音波,剪断,DN,ア−ゼ,処
プ
反応性エピト−プである抗原決定部位からなる新規ペプチドであり、ヒトパピロ− 理,断片,フア−ジ,発現 ベクタ−,結合,シヨツト,ガン,発現,バンク,作
マウイルス18起因性疾患である肛門性器路の良性病変、子宮頚部、ペニス及び 製,モノクロ−ナル 抗体,スクリ−ニング,遺伝子,ベクタ−,組込,大
膣の悪性腫瘍等の予防、診断及び治療における補助等として有用である。この 腸菌,導入(アミノカルボン酸,デオキシリボ核酸)
ペプチドは、ヒトパピロ−マウイルス18DNAを超音波剪断した後DNア−ゼ処理
し、断片をフア−ジ発現ベクタ−に結合してシヨツトガン発現バンクを作製し、これ
をモノクロ−ナル抗体等でスクリ−ニングし、得られたE7タンパク質遺伝子をベク
タ−に組み込んで大腸菌等に導入して発現させることにより得られる。
参考資料 2-2-57
12. 血中遊離 DNA による癌診断関連の特許概要(海外):一部のみ記載
56/8/1
DIALOG(R)File 352:(c) 2002
014614716
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**Image available**
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XRAM Acc No: C02-123671
XRPX Acc No: N02-342752
Number of Countries: 096
Number of Patents: 001
Title Terms: INTEGRATE; SYSTEM; BIOMEDICAL; APPLY; PERFORMANCE; SEQUENCE;
PROCESS; TASK; ACTIVE; CHIP; MULTI; FORCE; CHIP
Derwent Class: B04; D16; P41; S03; S05; X25
International Patent Class (Main): B01J-019/00
International Patent Class (Additional): B01L-003/00; B03C-005/02;
C12N-013/00; C12Q-001/68; G01N-033/53
File Segment: CPI; EPI; EngPI
Manual Codes (EPI/S-X): S03-E13D1; S03-E14A; S03-E14H; S03-E15; S05-C;
X25-P02
56/8/2
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Related WPI Acc No: 1997-202888; 1998-447242
XRAM Acc No: C02-120269
Number of Countries: 001
Number of Patents: 001
Title Terms: NEW; POLYPEPTIDE; COMPRISE; IMMUNOGENIC; PART; LEISHMANIA;
ANTIGEN; USEFUL; TREAT; PREVENT; DIAGNOSE; LEISHMANIA
Derwent Class: B04; C06; D16
International Patent Class (Main): A61K-039/008
International Patent Class (Additional): A61K-038/00; A61K-039/00
File Segment: CPI
56/8/3
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014573646
参考資料 2-2-58
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XRAM Acc No: C02-111050
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Number of Patents: 001
Title Terms: NOVEL; ENCODE; FAMILY; MEMBER; USEFUL; DIAGNOSE; TREAT; CANCER
; CARDIOVASCULAR; IMMUNE; DISORDER
Derwent Class: B04; D16
International Patent Class (Main): C12N-015/00
File Segment: CPI
56/8/4
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XRAM Acc No: C02-110902
XRPX Acc No: N02-308992
Number of Countries: 096
Number of Patents: 001
Title Terms: DETECT; MONITOR; TIME; RESPOND; THERAPEUTIC; CANCER; ASSOCIATE
; METHYLATION; PROMOTE; DNA; CANCER; SUBJECT; ASSAY; PRESENCE; DNA;
SUBJECT; BODY; FLUID
Derwent Class: B04; D16; P31
International Patent Class (Main): A61B-000/00
File Segment: CPI; EngPI
56/8/5
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XRAM Acc No: C02-110859
Number of Countries: 095
Number of Patents: 001
Title Terms: MICRO; SATELLITE; LOCUS; DETECT; DIAGNOSE; CANCER; CO; AMPLIFY
; SET; THREE; LOCUS; DNA; SAMPLE; MULTIPLEX; REACT; PRIME; DETERMINE;
SIZE; AMPLIFY; FRAGMENT
Derwent Class: B04; D16
International Patent Class (Main): C12Q-001/68
File Segment: CPI
参考資料 2-2-59
56/8/6
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Thomson Derwent. All rts. reserv.
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Related WPI Acc No: 2002-404697; 2002-415731
XRAM Acc No: C02-107934
Number of Countries: 097
Number of Patents: 001
Title Terms: IDENTIFY; USEFUL; TREAT; DIABETES; MELLITUS; INFLAMMATION;
DISEASE; CANCER; DISEASE; COMPRISE; EXPOSE; SAMPLE; PHAGE; DISPLAY;
LIBRARY; RECOVER; PHAGE; BOUND; SAMPLE
Derwent Class: B04; D16
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File Segment: CPI
56/8/7
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Thomson Derwent. All rts. reserv.
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WPI Acc No: 2002-383044/200241
XRAM Acc No: C02-107928
Number of Countries: 096
Number of Patents: 001
Title Terms: NOVEL; ISOLATE; MAMMAL; POLYPEPTIDE; USEFUL; PROMOTE; SPERM;
INHIBIT; CANCER; PROTEIN; LEAD; INHIBIT; THROMBUS; EVENT; ASSOCIATE;
CANCER
Derwent Class: B04; D16
International Patent Class (Main): C07K-014/00
File Segment: CPI
56/8/8
DIALOG(R)File 352:(c) 2002
Thomson Derwent. All rts. reserv.
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WPI Acc No: 2002-372121/200240
XRAM Acc No: C02-105362
Number of Countries: 097
Number of Patents: 001
Title Terms: ISOLATE; ENCODE; HUMAN; STEAROYL; COENZYME-A; DELTA; ACTIVE;
USEFUL; PREVENT; DIAGNOSE; TREAT; CARDIOVASCULAR; DISEASE; BALD; SKIN;
DISEASE
参考資料 2-2-60
Derwent Class: B04; D16
International Patent Class (Main): C12N-009/00
File Segment: CPI
56/8/9
DIALOG(R)File 352:(c) 2002
Thomson Derwent. All rts. reserv.
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WPI Acc No: 2002-371829/200240
Related WPI Acc No: 2001-596913; 2001-602751; 2001-602752; 2001-657177;
2002-010834; 2002-010922; 2002-010923; 2002-017444; 2002-017469;
2002-017470; 2002-017471; 2002-034446; 2002-090046; 2002-130908;
2002-130909; 2002-139900; 2002-147896; 2002-154757; 2002-154758;
2002-154759; 2002-171649; 2002-351299
XRAM Acc No: C02-105207
Number of Countries: 097
Number of Patents: 002
Title Terms: DETERMINE; DEGREE; CYTOSINE; METHYLATION; GENOME; DNA; USEFUL;
DIAGNOSE; PROGNOSIS; COMPRISE; SELECT; HYBRID; CHEMICAL; TREAT; DNA
Derwent Class: A89; B04; D16
International Patent Class (Main): C12Q-001/68
International Patent Class (Additional): C12P-019/34
File Segment: CPI
56/8/10
DIALOG(R)File 352:(c) 2002
Thomson Derwent. All rts. reserv.
014543200
WPI Acc No: 2002-363903/200240
XRAM Acc No: C02-103110
Number of Countries: 097
Number of Patents: 002
Title Terms: DETECT; CYTOSINE; METHYLATION; GENOME; DNA; USEFUL; DISEASE;
DIAGNOSE; PROGNOSIS; COMPRISE; CONVERT; CYTOSINE; URACIL; AMPLIFY
Derwent Class: B04; B05; D16
International Patent Class (Main): C12Q-001/68
International Patent Class (Additional): C12N-005/00
File Segment: CPI
56/8/11
参考資料 2-2-61
DIALOG(R)File 352:(c) 2002
Thomson Derwent. All rts. reserv.
014541725
WPI Acc No: 2002-362428/200239
XRAM Acc No: C02-102650
XRPX Acc No: N02-283233
Number of Countries: 097
Number of Patents: 001
Title Terms: NEW; HUMAN; RECEPTOR; PROTEIN; NUCLEIC; ACID; USEFUL; TREAT;
PREVENT; DELAY; DISEASE; CANCER; INHERITED; GENETIC; DISORDER; CELL;
CARDIOVASCULAR; DISORDER; RENAL; DISORDER
Derwent Class: B04; D16; S03
International Patent Class (Main): C12N-015/12
International Patent Class (Additional): A61K-038/17; A61K-048/00;
C07H-021/04; C07K-014/715; C07K-016/28; C12N-015/10; C12N-015/62;
C12Q-001/68; G01N-033/53; G01N-033/68
File Segment: CPI; EPI
Manual Codes (EPI/S-X): S03-E14H; S03-E14H4
56/8/12
DIALOG(R)File 352:(c) 2002
Thomson Derwent. All rts. reserv.
014541650
WPI Acc No: 2002-362353/200239
XRAM Acc No: C02-102590
Number of Countries: 096
Number of Patents: 001
Title Terms: NEW; MONOCLONAL; ANTIBODY; SPECIFIC; BIND; FORM; COMPLEX; TIP;
ANTIGEN; LOCATE; SURFACE; HUMAN; CANCER; CELL; USEFUL; DIAGNOSE; TREAT;
CANCER; HUMAN; SUBJECT
Derwent Class: B04; D16
International Patent Class (Main): C12Q-000/00
File Segment: CPI
56/8/13
DIALOG(R)File 352:(c) 2002
Thomson Derwent. All rts. reserv.
014541536
WPI Acc No: 2002-362239/200239
XRAM Acc No: C02-102507
Number of Countries: 094
Number of Patents: 001
参考資料 2-2-62
Title Terms: RECOMBINATION; POLYPEPTIDE; IMMUNE; SUBJECT; COMPRISE; NON;
OVERLAP; SEGMENT; AMINO; ACID; IDENTICAL; CYTOKINE; RECEPTOR; SEQUENCE
Derwent Class: B04; D16
International Patent Class (Main): C07K-014/00
File Segment: CPI
56/8/14
DIALOG(R)File 352:(c) 2002
Thomson Derwent. All rts. reserv.
014531006
WPI Acc No: 2002-351709/200238
XRAM Acc No: C02-099885
Number of Countries: 096
Number of Patents: 002
Title Terms: NEW; ISOLATE; POLYPEPTIDE; HUMAN; ANION; TRANSPORT;
POLYPEPTIDE; USEFUL; REAGENT; TARGET; TREAT; ULCER; COLITIS; CIRRHOSIS;
CANCER; OBESITY; CACHEXIA
Derwent Class: B04; D16
International Patent Class (Main): C07H-021/02; C12N-015/00
International Patent Class (Additional): C07H-021/04
File Segment: CPI
参考資料 2-2-63
13.文献の検索式
【JOIS 検索】
SSNO
件数
検索式
[ 1]
107,090
K W : "DNA(核酸)"
[ 2]
9,217
K W : "血液"
[ 3]
9,216
K W : "DNA診断"
[ 4]
163,546
K W : " 腫よう"
JICSTでは癌のKWは:"腫よう"を使
用することになっている。
[
5]
6
血中DNA
[ 6]
0
血中遊離DNA
[
0
血液中遊離DNA
7]
[ 8]
4
[ 9]
31
[ 10]
1*2*3*4
222,555
2*3*4
KW:"診断"
[ 11]
12
10*4*1*2
[ 12]
39
9+11
[ 13]
102,336
[ 14] S:
8
[ 15] S:
16
[ 16] S:
41
癌&
1*2*10*13
2*3*13
9+11+14+15
【JMEDICINE 】 ( 1990.01 - 2002.04 ) 1,768,436 ( 2002.07.04 UPDATE )
JST COPYRIGHT
S : 質問を開始します
U:
2002.07.23 15:31:21
質問番号
¥step 072301,st
[ 1] S:
28,522
[ 2] S:
9,283
[ 3] S:
14,097
[ 4] S:
321,092
KW:"DNA(核酸)"
K W : "血液"
KW:"DNA診断"
KW:"腫よう"
[
5] S:
10
[
6] S:
0
血中遊離DNA
[
7] S:
0
血液中遊離DNA
[ 8] S:
12
血中DNA
1*2*3*4
参考資料 2-2-64
GYR31A05
[ 9] S:
[ 10] S:
60
2*3*4
453,851
KW:"診断"
[ 11] S:
22
10*4*1*2
[ 12] S:
70
9+11
[ 13] S:
118,146
癌&
[ 14] S:
9
[ 15] S:
32
2*3*13
[ 16] S:
73
9 + 1 1 +14+15
[ 17] S:
[ 18] S:
1*2*10*13
46,371
DNA
30,171
血液
[ 19] S:
14,289
DNA診断
[ 20] S:
86,586
腫瘍+腫用+癌+ガン
[ 21] S:
10
[ 22] S:
[ 23] S:
[ 24] S:
521,858
118,146
血中DNA+血中遊離DNA+血液中遊離DNA
AL:"診断"
癌&
92 ((17*22+19)*18+21*22)*(20+23)
((DNA*診断+DNA診断)*血液+(血中DNA+血中遊離DNA+血液中遊離DNA)
*診断)*(腫瘍+腫よう+癌&+ガン)
[ 25] S:
92
[ 26] S:
92
[ 27] S:
0
[ 28] S:
92
[ 29] S:
0
[ 30] S:
92
NA=JPN
24
NA=USA
25
PD=1990
25
[ 31] S:
0
[ 32] S:
92
25
[ 33] S:
21
PD=2000
[ 34] S:
92
25
[ 35] S:
[ 36] S:
[ 37] S:
[ 38] S:
[ 39] S:
[ 40] S:
[ 41] S:
[ 42] S:
1
92
0
92
3
92
7
92
PD=1991
PD=1992
25
PD=1993
25
PD=1994
25
PD=1995
25
参考資料 2-2-65
[ 43] S:
4
[ 44] S:
92
[ 45] S:
9
PD=1996
25
PD=1997
[ 46] S:
92
25
[ 47] S:
13
PD=1998
[ 48] S:
92
25
[ 49] S:
16
PD=1999
[ 50] S:
92
25
[ 51] S:
21
PD=2000
[ 52] S:
92
25
[ 53] S:
16
PD=2001
[ 54] S:
92
25
[ 55] S:
1
[ 56] S:
91
[ 57] S:
U:
P D = 2 0 02
55+53+51+49+47+45+43+41+39+37+35+31
1
54#56
¥p a
参考資料 2-2-66
【MEDLINE】
検索式:
A and B and C and D and E
A:(PLASMA OR BLOOD )
B :( DNA OR DEOXYRIBONUCLEIC(W)ACID OR DEOXYRIBO
C:CANCER
D:DIAGNOSIS
E : UNITED STATES
Set
Items
Description
S1
866242
PLASMA OR BLOOD
S2
440176
DNA
DEOXYRIBO(W)NUCLEIC(W)ACID
S3
45622
S1 AND S2
S4
241578
CANCER
S5
660835
DIAGNOSIS
S6
399
S3 AND S4 AND S5
S7
2502739
CP=UNITED STATES
S8
228
S6 AND S7
S9
387224
PY=1991
S10
389204
PY=1992
S11
395470
PY=1993
S12
403854
PY=1994
S13
413902
PY=1995
S14
419284
PY=1996
S15
428487
PY=1997
S16
442764
PY=1998
S17
453123
PY=1999
S18
479763
PY=2000
S19
530661
PY=2001
S20
283813
PY =2002
S21
4
S8 AND S9
S22
8
S8 AND S10
S23
8
S8 AND S11
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OR
参考資料 2-2-67
(W) NUCLEIC(W)ACID)
DEOXYRI B O N U C L E I C ( W ) A C I D
OR
14.参考文献
1. 関係閣僚申合せ、バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方針、H11.1.29
2. 5省庁、バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本戦略、H11.7.13
3. 日本バイオ産業人会議、バイオ産業技術戦略、H11.11.24
4. 厚生労働省大臣官房統計情報部「人口動態統計」
5. 平成 13 年人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚生労働省)
6. 横田淳編集、癌化のメカニズムを解く
7. 高久史麿監修、臨床検査データブック 2001-2002
8. 石井勝編、腫瘍マーカーハンドブック
9. MediPro ウエブサイト
10. 日本癌治療学会遺伝子診断部会演題抄録(1999 年∼2001 年)
11. MEDLINE
12.(株)富士経済、‘98
特殊検査市場、1998 年4月
13. 野島博、遺伝子工学への招待
14. 中村祐輔、改訂先端のゲノム医学を知る
15. 21 世紀のバイオ産業立国懇談会、21 世紀のバイオ産業立国懇談会報告書。H10.10.22
16. 池田豊、欧米に立ち遅れる承認、医薬経済 5.1、2001
17. 日本バイオ産業人会議、b-Japan 計画詳細提言サーマリー、2002.5.27
18. がん克服への最前線、Newton 2002.5
19. 首相官邸ウエブサイト
20. 経済産業省ウエブサイト
21. 厚生労働省ウエブサイト
22. 文部科学省ウエブサイト
23. 製薬会社ウエブサイト
24. Philippe Anker and Maurice Stroun ,
Progress in the Knowledge of Circulating
Nucleic Acids: Plasma RNA Is Particle-Associated. Can It Become a General Detection
Marker for a Cancer Blood Test? Clinical Chemistry. 2002;48:1210-121
参考資料 2-2-68
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