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片頭痛(060827、070622、090328、110210)

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片頭痛(060827、070622、090328、110210)
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片頭痛(060827、070622、090328、110210)
110210 文献 11、12 を読んで追加記載。添付文書、薬価の情報を更新。
片頭痛は地域でも良く診る頭痛の一つである。知識を整理したい。診断、治療、予防について
精通する必要があるが、それだけでは不十分と思う。ストレスマネジメントや、不眠への対応、ア
ルコールや食品などの誘発因子の管理など、総合的に患者を診ていく必要がある。
また、受診して来る患者の中には長期間頭痛薬を服用している患者も多く、長期乱用による頭
痛にも注意を払う必要がある。片頭痛で用いられるトリプタン系薬剤やエルゴタミン、カフェインは
その誘因になることもある。トリプタン系薬剤を 1 カ月で 10 日以内で使用することが目安となり、
それ以上使用する場合には専門医との連携も必要なことが指摘されている。12)
今後、新しい作用機序の薬剤や、手術などの薬物利治療以外の治療方法も選択肢となる可能
性があるので、適宜情報を更新していきたい。
診断
そもそも、どんな頭痛を診たときに片頭痛と診断しているだろうか?その頭痛の特徴は、国際頭
痛学会の診断基準を眺めてみると、以下のような特徴があるようだ。(少々煩雑である)
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(参考文献1より引用)
□ 4-72 時間持続
□ 片側性
□ 拍動性
□ 中等度から重度の頭痛
□ 階段歩行や日常生活動作で増悪
□ 嘔気、嘔吐
□ 羞明、聴覚過敏
□ 皮質、脳幹機能障害を示すアウラ
□ 4 分以上のアウラ
□ 60 分以上持続しないアウラ
□ アウラの後に起こる頭痛(60 分以上の間隔をあけない)、アウラの前、アウラと同時に起こるこ
ともある。
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拍動性に関しては注意が必要である。私の場合は患者に実際に脈を触らせて、脈と同じように
ズキンズキン痛いですか?と聞くようにしている。患者にとってはズキーンと重い感じも、ズキズキ
した感じもズキンズキンと脈にあわせた頭痛も同じように表現してしまうことがある。ちなみに、片
頭痛であっても拍動性の頭痛が必ずしも出現するわけではない(参考文献 10 では半分くらいとし
ている)。
参考文献 2 にも片頭痛の特徴が分かりやすく解説してある。上記の表をもとにした記載である
が、補足的説明が分かりやすく記載されている。
□ 成人では 4-72 時間を外れたら可能性が下がる。ただし、小児では 4 時間以下のことも多く、1
時間以上でよいとする説も提案されている。
□ 80%の症例で片側性であるか、両側性であっても左右差が見られる。両側とも同様に痛みを
認めるのは 20%。完全に片側の症例は稀。小児や高齢者でも左右差がはっきりしない場合が
少なくない。
□ 痛みは頭部の動脈拡張に基づくので、拍動性を呈することが多いが、ある程度時間が経過す
ると血管周囲の浮腫のため拍動感が不明確になる。
□ 痛みの程度の指標として、“高度”は寝込む状態、“中等度”は一応就業、集学、日常活動が
可能だが支障がある、“軽度”は痛みがあっても就業などに影響はないと考えてよい。
□ 運動で増悪し、特に階段をすばやく昇降したときに痛みが強くなることを明確に自覚する患者
が大多数。
□ 年齢が高くなるに従い嘔吐の頻度は低くなる。
□ 東洋人では光過敏(羞明)、音過敏は外国人より軽い傾向がある。両者とも認める例は半数。
臭い過敏を認める患者もいる。
□ アウラ(前兆)は日本人ではほとんどが閃輝暗点を含む視覚症状であるが、稀に手掌・口症候
群、片側麻痺などを示す症例もある。
□ 誘因の頻度として多いのは緊張緩和時で、交感神経の作用が低下した結果、血管拡張を来
たすためと考えられている。ストレスが誘因として強調されるが、休日の頭痛、ストレス開放時
の頭痛の方が多い。食事性片頭痛はアルコールを除けば日本人では少ない傾向である。
□ 妊娠中は消失、もしくは軽減する傾向がある。
□ 頭痛発作中に当該血管(主に側頭動脈)を用手圧迫すると痛みが軽減する。頭蓋内血管での
痛みが予測されるときには頚部にて総頸動脈を横突起に向かって圧迫すると良い。圧迫して
いる間だけは頭痛が軽減する。
各所見の重み付けであるが、文献 3、4 の感度/特異度を参考にすると、大まかには以下のような
問診が診断に役に立ちそうである。
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□ 嘔気、嘔吐の有無(最も重要なチェック項目!)
□ 羞明、聴覚過敏の有無
□ チョコやチーズがきっかけとなったか
□ 身体活動で増悪するか(特に階段)
□ 片側性かどうか
□ 拍動性かどうか
□ 中等度から重度の頭痛かどうか
□ 3 ヶ月以内に生活が障害されるほどの頭痛があったか
□ ストレスから開放されたときに起こったか
Positive
Negative
Likelihood
Likelihood
Ratio
Ratio
Nausea
20.5
Photophobia
Test Name
Sensitivity
Specificity
0.2
82%
96%
6.1
0.2
79%
87%
Phonophobia
5.2
0.4
67%
87%
Triggered by cheese
4.8
0.7
38%
92%
Triggered by chocolate
4.4
0.8
22%
95%
Exacerbated by physical activity
3.7
0.2
81%
78%
Throbbing or pulsating
3.3
0.3
76%
77%
3
0.4
66%
78%
Functional impairment in last 3 mos
1.8
0.25
87%
52%
Visual stigmata (aura)
1.7
0.77
43%
74%
Triggered by any food
1.7
0.9
24%
86%
Pain worse with walking/stairs
1.6
0.58
67%
57%
Triggered by alcohol
1.3
0.9
30%
77%
Triggered by weather change
1.2
0.9
31%
74%
Triggered by stress
1.2
0.9
50%
57%
Triggered by missing a meal
1.1
0.8
62%
46%
Pain moderate/severe
1.1
0.38
94%
16%
1
1
44%
56%
Triggered by lack of sleep
0.8
1.1
31%
62%
Triggered by perfume or odors
0.6
1.5
32%
44%
Unilateral
Triggered by menses
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Duration 4 to 24 hrs
1.7
0.6
57%
67%
Duration 24 to 72 hrs
1.4
1
13%
91%
Duration 0 to 4 hrs
0.5
1.5
26%
51%
(文献 3 より引用)
簡単な記憶法として、POUNDing というものがある。
P:pulsating(拍動性)
O:hour duration(4~72 時間の持続)
U:unilateral(片側)
N:nausea(嘔気)
D:disabling(無力化、日常生活に影響して活動が出来なくなる)
4~5 項目該当
LR 24
95% CI 1.5-388
3 項目該当
LR 3.4 95% CI 1.3-9.2
2 項目以下該当
LR 0.41 95% CI 0.32-0.52
4~5 項目該当すると陽性尤度比が 24 なので、診断にかなり有用である。
いままでの記載には年齢についてはあまりコメントが無いが、参考文献10には40歳を過ぎて片
頭痛が初めて発症することは無いとしている。確かに、中年以降に初発した頭痛は要注意である。
安易に片頭痛と診断してはいけない(red flag)。参考文献12には臨床症状が片頭痛と矛盾しない
場合でも,二次性頭痛の可能性は常に念頭に置いておく必要があると指摘しており、注意を要す
る頭痛を挙げている。
注意を要する頭痛
① 50 歳以降に発症する頭痛
② 突発発症の頭痛
③ しだいに増強する頭痛
④ がんまたは HIV 患者に新規発生する頭痛
⑤ 全身性疾患に伴う頭痛(発熱、項部硬直、皮疹の合併)
⑥ 局所神経症候の合併(典型的な前兆を除く)
⑦ うっ血乳頭の合併
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治療
文献 5 によると、片頭痛の急性期治療に関する最適な薬剤の選択、薬剤の手順に関する十分
な研究はないようだ。それでも、いくつかの治療戦略が考慮される。それは以下の 3 つの方法に
分けられる。
Step care within attacks
最初に最も安全で最も費用の安い治療で始めて、数時間経過後に治療の効果がないときにより
高価で片頭痛に選択的な薬剤を使用する方法。
Step care across attacks
最初に最も安全で最も費用の安い治療で始めて、効果がないときには次の発作のときにより高価
で片頭痛に選択的な薬剤を使用する方法。
Stratified care
片頭痛の重症度に応じて投与する方法で、片頭痛による障害が軽い場合にはより安全で費用の
安い治療で始めて、中等度から重症の障害があるときにはより高価で片頭痛に選択的な薬剤を
使用する方法。
後者 2 つの方法のほうが治療の反応性や障害の時間に関して良好の結果とする研究がある。つ
まり、いつもの結果がわかっているのであれば、あえて効かない治療から始めたりはしない。また、
中等症から重症であれば最初から選択的な治療をする。但し、Stratified care は最も副作用の数
が多かったようだ。UpToDate 著者らも後者 2 つを勧めている。
(※)ちなみに、上記の研究の具体的介入方法は以下のとおりである。
step care within attacks
aspirin (800 to 1000 mg) plus metoclopramide (20 mg) as initial therapy
2 時間経っても反応のないとき zolmitriptan (2.5 mg)
step care across attacks
aspirin (800 to 1000 mg) plus metoclopramide (10 mg)
最初の三回のうち少なくとも 2 回以上効果がないとき zolmitriptan (2.5 mg)
the stratified care group
mild headaches (based upon the Migraine Disability Assessment Scale [MIDAS] grade II) は aspirin plus
metoclopramide
MIDAS grade III and IV の人は zolmitriptan
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片頭痛患者で、頻回に薬剤投与を必要とする患者にアセトアミノフェンや他の鎮痛剤は推奨さ
れない。なぜならリバウンドによる頭痛が多いからとされている。参考文献 11 はアセトアミノフェン
のメタアナリシスであるが、アセトアミノフェン 1000mg はプラセボと比べると明らかに効果はある。
2 時間後に頭痛が消失するのは NNT 12、1 時間後に頭痛が軽減するのは NNT 5.2、2 時間後に
頭痛が軽減するのは NNT 5 と期待できる。また、アセトアミノフェン 1000mg+メトクロプラミド
10mg とスマトリプタン(イミグラン)100mg を比較すると、意外なことに、2 時間後の頭痛軽減に関し
て統計学的に差を認めなかったという結果である。しかも副作用に関しては併用群で少ない結果
であった。前述のように、併用群では 24 時間以内にレスキューを用いることが多いので、リバウン
ドが多いという意見を支持しているかもしれない。UpToDate 著者らは中等度から重症の選択的片
頭痛治療として通常、トリプタン製剤で開始するとしている。ただし、トリプタン製剤と他の薬剤と比
較して明確に支持するデータは無い。片頭痛に嘔気、嘔吐が伴う場合には特にメトクロプラミド、
プロクロルペラジンの投与が推奨される。エルゴタミンとプロクロルペラジンの静注も重症片頭痛
の初期治療に使用できる。
エルゴタミンの舌下、経口、経直腸投与は、その効果と副作用の問題から比較的小数の患者
に選択されるとある。European consensus panel では、発作の時間が長かったり(例えるなら 48 時
間以上)、頭痛が頻回に再発する場合に候補となるとしている。ちなみにエルゴタミン単独投与の
RCT ではその効果を証明できなかった・・・。また、副作用が多く嘔気や嘔吐を増悪させる可能性
も指摘されている。経年的に使用することにより弁膜症と関連するという指摘もある。
頭痛の初期に投与されていれば、効果の無かったように見える治療もより効果が認められるこ
とが普通である。多くの経口薬は、片頭痛による二次的な胃の停滞により吸収が悪く効果がなく
なるのが普通である。また、初回に大量に投与したほうが、少量ずつ追加するより効果が高い。
結局のところ、UpToDate ではトリプタン製剤は特に予兆のあるときに投与するべきということであ
る。ただ、この点は本によって記載が分かれている。文献 10 では前兆の時期に使用しても効果が
なく、頭痛が起こって初めて使用するべきと記載がある・・・。あまり遅すぎると効果が減少すること
は間違いなさそうであるので注意。頭などの皮膚を触ると痛い症状(cutaneous allodynia)が出現
するとトリプタン製剤の効果が激減(15%ぐらいの患者にしか効かなくなる)するらしい。この症状
が出来上がる 1-4 時間より以前に治療を開始するべきである。
片頭痛が頻回であったり障害の期間が長いときには予防的治療が選択される(後述)。
以下のように、メトクロプラミドに関しては制吐作用だけでなく、片頭痛自体に対しても効果が認
められるとする論文があるので興味深い。
2004 年の BMJ のメタアナリシスで片頭痛の急性期治療に対するメトクロプラミド静注の効果が
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報告された。その効果は、プラセボと比較して OR 2.84(1.05-7.68)で、NNT は 4 であった。制吐作
用に関してはクロルプロマジンやプロクロルペラジンには劣る傾向があるものの、有意差は無か
った。中には、片頭痛の消失、軽減、嘔吐の軽減に関してメトクロプラミドはスマトリプタンと同様と
する試験もあった。BMJ 著者は、メトクロプラミドは他の薬剤と併用しても有効であろうとコメントし
ている。
(参考文献 6 より引用)
前述の参考文献 11 はアセトアミノフェン 1000mg+メトクロプラミド 10mg とスマトリプタン(イミグラ
ン)100mg と鎮痛の効果に差が無いという結果であったので、制吐剤はうまく治療に組み合わせて
いきたい。
参考文献 2 には各製剤について以下のようなコメントがある。
★エルゴタミン
酒石酸エルゴタミン(カフェルゴット、クリアミン*1など)
ジヒドロエルゴタミン(ジヒデルゴット)
(*1)クリアミン A Cleamine A(ガレン)
A 錠:酒石酸エルゴタミン 1mg,無水カフェイン 50mg,イソプロピルアンチピリン 300mg
頭痛が発現してからの服用では効果が得られにくく、前兆などの前触れのときに服用するのが
コツ。エルゴタミンで十分に効果が得られている患者については変更する必要は無い。エルゴタミ
ンは頭痛発現前に服用しなければ効果が乏しいのでタイミングが難しい。ジヒドロエルゴタミンは、
注射薬は有効であるが、日本では使用できない。経口薬は有効性が得られることは稀。
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UpToDate の内容とかぶるところもあるが、十分に効果がある場合にはあえて変える必要はな
さそうである。ただし、服用のタイミングについては注意が必要である。
★トリプタン
スマトリプタン(イミグラン)
ゾルミトリプタン(ゾーミッグ)
エレトリプタン(レルパックス)
日常生活や社会生活に支障がある場合にはトリプタンの処方が妥当。服用に当たり、頭痛早
期に使用することが重要で痛みがピークになってからだと効果が得られにくい患者もいる。有効
性には個人差があり、一種類のトリプタンが無効でも、他のトリプタンが有効である場合も少なくな
い。わが国ではトリプタン間の比較試験は行われていないが、海外ではスマトリプタン100mgとエ
レトリプタン20mgが同等とする報告がある。実際は薬剤毎に様々な特徴があり、併用禁止の薬剤
も異なる。例えば、最も標準的な投与法である内服薬(錠剤)には、口内速溶錠(ゾーミッグ)/口
内崩壊錠(マクサルトの2種類があり、授業中や会議中などに水のない場所でもすぐに内服できる
利点がある。マクサルトは、片頭痛の予防薬としても用いることのあるβ遮断薬プロプラノロール
(インデラル®)との併用は禁止されており、重篤な腎障害を有する患者ではアマージは禁忌であ
る。12)
(参考文献 12 より引用)
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(参考文献 12 より引用)
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トリプタン製剤も、前述のように早期の服用が必要であることが指摘されている。また、効果が
無い場合、数種類の製剤を試してみることも価値がありそうである。
DynaMed にはエビデンスに基づく効果をまとめた記載がある。これを見てもトリプタン系の薬の
地位はゆるぎないが、エルゴタミン製剤はやや使用しにくい位置づけである。アセトアミノフェンは
大量(1000mg)でないと効果がないことがわかる・・・。参考文献 11 でも、1000mg であればかなり
効果が期待できそうだ。添付文書による日本での用法/用量も確認しておきたい。
1. *下記の疾患並びに症状の鎮痛
頭痛,耳痛,症候性神経痛,腰痛症,筋肉痛,打撲痛,捻挫痛,月経痛,分娩後痛,がんによ
る疼痛,歯痛,歯科治療後の疼痛,変形性関節症
*通常,成人にはアセトアミノフェンとして,1 回 300~1000mg を経口投与し,投与間隔
は 4~6 時間以上とする。なお,年齢,症状により適宜増減するが,1 日総量として
4000mg を限度とする。また,空腹時の投与は避けさせることが望ましい。
2. 下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
通常,成人にはアセトアミノフェンとして,1 回 300~500mg を頓用する。なお,年齢,症
状により適宜増減する。ただし,原則として 1 日 2 回までとし,1 日最大 1500mg を限度
とする。また,空腹時の投与は避けさせることが望ましい。
3. 小児科領域における解熱・鎮痛
*通常,乳児,幼児及び小児にはアセトアミノフェンとして,体重 1kg あたり 1 回 10~
15mg を経口投与し,投与間隔は 4~6 時間以上とする。なお,年齢,症状により適宜増
減するが,1 日総量として 60mg/kg を限度とする。ただし,成人の用量を超えない。ま
た,空腹時の投与は避けさせることが望ましい。
(カロナール添付文書より)
今後、片頭痛に対する新しい作用機序の薬の効果も期待される。カルシトニン遺伝子関連ペプ
チド(CGRP):Telcagepant テルカゲパントや片頭痛に対する外科的治療の効果については別項
目で勉強。
「片頭痛に対する Telcagepant テルカゲパントの効果」
http://rockymuku.sakura.ne.jp/sinnkeinaika/hennzutuunitaisuruterukagepanntonokouka.pdf
「片頭痛に対する手術療法の効果」
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http://rockymuku.sakura.ne.jp/sinnkeinaika/hennzutuunitaisurusyuzyuturyouhounokouka.pdf
副作用
言うまでもなく、片頭痛患者は若い女性が多い。ということは妊娠可能性も高く、薬の選択にも
影響を及ぼす。以下は文献 7 の引用(一部改変)である。
片頭痛治療薬
ジヒドロエルゴタミン(ジヒデルゴット、ミグリフェン、ヒポラール、エルゴット他)、エルゴタミン(カフェ
ルゴット〔成分〕)、メチセルジド
C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を引き起こし、または、
有害作用を引き起こすことが疑われる薬。これらの効果は可逆的なこともある。
妊娠前半に片頭痛薬の経目的標準用量を与えることが胎児に危険をもたらすようには思われな
い。エルゴタミンは子宮収縮を引き起こすので、早産や過強陣痛の原因となることがある。高用量
または頻回の使用は胎児血供給を阻害するために胎児を危険にさらす恐れがある。
ナラトリプタン、スマトリプタン、ソルミトリプタン
B3:妊婦および妊娠可能年齢の女性への使用経験はまだ限られている薬だが、奇形やヒト胎児
への直接・間接的有害作用の発生頻度増加は観察されていない。動物を用いた研究では、胎児
への障害の発生が増えるという証拠が得られている。しかし、このことがヒトに関してどのような意
義をもつかは不明である。
その他の鎮痛薬
アスピリン(サリチソン、セルボン、ミニマックス、バファリン〔成分〕他)
C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を引き起こし、または、
有害作用を引き起こすことが疑われる薬。これらの効果は可逆的なこともある。詳細は付記した
本文を参照のこと。
アスピリンはプロスタグランジンの合成を阻害する。妊娠後期に投与すると、動脈管の早期閉鎖
や分娩・出産の遅延をきたすことがある。アスピリンはその抗血小板作用により新生児および母
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体のいずれに対しても出血時間を延長する。妊娠第3三半期には、アスピリン含有製剤の使用は
避けるべきである。小量のアスピリン(100mg/日が出血時間に影響することはない
アセトアミノフェン(アンヒバ、カロナール、ピリナジン、アルピニー他)
A:多数の妊婦および妊娠可能年齢の女性に使用されてきた薬だが、それによって奇形の頻度や
胎児に対する直接・間接の有害作用の頻度が増大するといういかなる証拠も観察されていない。
NSAIDs
ジクロフェナク(ボルタレン、アナバン、サフラック、ジクロニック、ソファリン、ブレシン、ボルマゲン、
ボンフェナック他)、イブプロフェン(ブルフェン、セデナフェン、ユニプロン、ラミドン、ブチレニン他)、
インドメタシン(インダシン、イドメシン、インテバン、インメシン、インメタン他)など多数の NSAIDs
C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を引き起こし、または、
有害作用を引き起こすことが疑われる薬。これらの効果は可逆的なこともある。詳細は付記した
本文を参照のこと。
これらの薬剤はプロスタグランジン合成を阻害し、妊娠後期に投与すると動脈管閉鎖、胎児の腎
障害、血小板凝集抑抑、分娩・出産の遅延などを生じることがある。妊娠の第3三半期における
継続的 NSAIDs 治療は十分適応がある場合にのみ行うべきである。分娩予定日の数日前からは、
プロスタグランジン合成抑制作用のある薬剤は避けるべきである。
制吐剤(フェノチアジン系)
プロクロルベラジン(ノバミン,パソトミン),プロメタジン(ヒベルナ,ピレチア),チエチルペラジン(ト
レステン)
C:催奇形性はないが、その薬理効果によって、胎児や新生児に有害作用を引き起こし、または、
有害作用を引き起こすことが疑われる薬。これらの効果は可逆的なこともある。詳細は付記した
本文を参照のこと
妊娠末期に大量を使用すると,フェノチアジン系薬剤は新生児に遷延性の神経障害を起こしたこ
とがある.
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その他の制吐剤
ジメチルヒドリン酸、ジフェンヒドラミン(レスタミン、アレルミン、ベナ、ベナスミン、レスミン他)、メトク
ロプラミド(プリンペラン、アノレキシノン、テルベラン、ネオプラミール、プロメチン、メトクロール他)
A:多数の妊婦および妊娠可能年齢の女性に使用されてきた薬だが、それによって奇形の頻度や
胎児に対する直接・間接の有害作用の頻度が増大するといういかなる証拠も観察されていない。
ドンペリドン(ナウゼリン、セロベース、トンタール、ナウシロン、ナウザート、ナシロビン、ベロリック
他)、ヒヨスチン、臭酸ヒヨスチン
B2:妊婦および妊娠可能年齢の女性への使用経験はまだ限られている薬だが、奇形やヒト胎児
への直接・間接的有害作用の発生頻度増加は観察されていない。動物を用いた研究は不十分ま
たは欠如しているが、入手しうるデータでは、胎仔への障害の発生が増加したという証拠は示さ
れていない。
引用終わり。
エルゴタミン製剤は妊娠初期であればそれほど問題はなさそうである。トリプタン製剤も使用経
験は限られているものの、人では胎児への影響は少なそうである。ただし、クリアミンの添付文書
では妊婦に対する投与は禁忌となっているので注意である。イミグランは未確立で有益のみ投与
とある。なかなか使いにくい・・・・。
その他の注意として、片頭痛の特異的治療薬は血管を収縮させる薬剤であることを忘れてはい
けない。虚血性心疾患、コントロール不良の高血圧、神経欠落症状のある片頭痛では禁忌であり、
エルゴタミンとトリプタン製剤の併用、SSRI との併用、他のトリプタン製剤を 24 時間以内に使用し
ている場合なども注意を要する。
片頭痛の予防
一ヶ月に 4 回以上の片頭痛、12 時間以上持続する片頭痛、障害の期間の合計が多いなどのと
きに予防的投与の適応がある。患者の障害、急性期の治療が出来ない、急性期治療の効果がな
い、急性期と予防の両方のコスト、嗜好などの意見が考慮される。また、片麻痺性片頭痛、脳底
動脈片頭痛、遷延するアウラを伴う片頭痛、片頭痛性脳梗塞の患者にも考慮されるべきである。
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予防的な薬剤は患者の状況によって選択されるべきである。例えば抗うつ薬はうつやうつ傾向
の患者に投与し、高血圧の患者にはβブロッカーやカルシウムブロッカーを投与する。筋骨格系
の問題がある場合は NSAIDsが好ましいかもしれない。
片頭痛予防に対して効果の高い薬剤は propranolol、 metoprolol、 timolol、 amitriptyline、
topiramate、 valproate。である。50-75%の患者で頭痛の頻度が半分になる。UpToDate 著者は
ベラパミルを最初に使用している(特に若い患者)。生理に関連する片頭痛には NSAIDsがファー
ストチョイスである。
予防の原則
□ 少量からはじめる。
□ 期間と量を観察する。(4 週から効果が現れ、以後 3 ヶ月間は効果が上昇する)
□ 過量投与を避ける。エルゴタミン製剤を使用しているときにはトリプタン製剤を 24 時間以内に
使用しない(心筋梗塞のリスクを上げる)
□ 出産可能女性はリスクに注意する。(バルプロ酸を避ける。より安全な薬剤を選択する)
□ 患者と話し合い、嗜好、利益、リスク、薬の作用について検討する。
□ 片頭痛は自然に治癒することがある。頭痛がコントロールされたあと、可能であればゆっくりと
予防薬を減量する。多くの患者が減量したり中止しても片頭痛が起きないことを経験する。
参考文献 2 にも以下のようなポイントが述べられている。
抑制治療のみで十分な効果が得られている患者では予防治療を考慮する必要はない。
予防治療に先立ち、以下のことを説明する必要がある。
1
有効性が確認されるまで約 1 ヶ月を要する
2
有効率は何れの薬剤でも 50%前後
3
頭痛の頻度が 20-50%減少したら有効と考える
4
有効な薬剤であっても長期連用にて効力低下が見られるので 3 ヶ月を目処に減量を開始する
予防薬で効果が得られない場合には他の薬剤へ変更したり、併用を考慮する。ただし、有効な
予防治療が見つからない場合もあることを知っておく。以下は文献 2 に紹介されている予防薬の
処方例。
カルシウム拮抗薬
塩酸ロメリジン*(ミグシス、テラナス) 20mg/日
ペラパミル(ワソラン)
ROCKY NOTE
240mg/日
http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html
ROCKY NOTE
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ニフェジピン(アダラード)
30mg/日
プロプラノロール(インデラル)
80mg/日
アテノロール(テノーミン)
100mg/日
抗うつ薬
アミトリプチン(トリプタノール)
30mg/日
セロトニン拮抗薬
シプロヘプタジン(ペリアクチン)
12mg/日
その他の薬剤
バルプロ酸(デパケン)
800mg/日
ビタミンB2
360mg/日
β遮断薬
*保険適用あり
(参考文献 2 より引用)
薬価
薬価についても考えてみる。エルゴタミン製剤とトリプタン製剤の薬価の違いが余りにも大きす
ぎる・・・・。クリアミンで効果があるのであれば本当にコストベネフィットが高いのだが・・・。
(平成 23 年 2 月 10 日時点)
クリアミン配合錠A1.0
13
プリンペラン錠5
6.4
プリンペラン注射液10mg
59
イミグラン錠50 錠
927.9
イミグラン注3 3mg1mL 管
3293
イミグラン点鼻液20 20mg 0.1mL 個 1046.6
レルパックス錠20mg 錠
900.3
ゾーミッグ錠2.5mg 錠
934.1
マクサルト錠 10mg
921.9
アマージ錠 2.5mg
896.1
参考文献
1.
Clinch CR. Evaluation of acute headaches in adults. Am Fam Physician. 2001 Feb
15;63(4):685-92.
ROCKY NOTE
http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html
ROCKY NOTE
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2.
寺本 純.片頭痛診療マニュアル.東京,診断と治療社,2003
3.
Migraine InfoPOEMs
4.
Smetana GW. The diagnostic value of historical features in primary headache syndromes: a
comprehensive review. Arch Intern Med. 2000 Oct 9;160(18):2729-37. Review.
5.
Acute treatment of migraine in adults UpToDate 14.2
6.
Colman I et al. Parenteral metoclopramide for acute migraine: meta-analysis of randomised
controlled trials. BMJ 2004 Dec 11;329(7479):1369-73. Epub 2004 Nov 18.
7.
雨森 良彦 監修 妊娠中の投薬とそのリスク 第 4 時改訂版
8.
migrane
9.
薬価サーチ http://www.okusuri110.com/yaka/yaka_search.html
Dynamed
Updated 08/07/2006 11:21 AM
10. 林 寛之.ステップビヨンドレジデント2 救急で必ず出会う疾患編.東京,羊土社,2006
11. Derry S,Moore RA,McQuay HJ. Paracetamol (acetaminophen) with or without an antiemetic
for acute migraine headaches in adults. Cochrane Database of Systematic Reviews 2010,
Issue 11. Art. No.: CD008040. DOI: 10.1002/14651858.CD008040.pub2.
12. 古和久典,竹島多賀夫,中島健二.片頭痛 .治療, 91 : 1100-1105, 2009.
ROCKY NOTE
http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html
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