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減圧濃縮操作後の有機溶媒回収率の推定 渡辺 信久

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減圧濃縮操作後の有機溶媒回収率の推定 渡辺 信久
減圧濃縮操作後の有機溶媒回収率の推定
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1
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3
○渡辺 信久 , 水谷 聡 , 野村 直
2
3
大阪工業大学, 大阪市立大学, 京都大学
【はじめに】 環境化学の実験・分析に際して、多量の
制度による大気排出量で見た
表
抽出・濃縮溶媒を用いている。高等教育機関(大学等)
大学・研究所からのクロロホルムの寄与
や研究所などの寄与は、 PRTR 大気排出量全体では、 事業場
クロロホルム
全物質
0.02~0.03%に過ぎないが、代表的な抽出・濃縮溶媒であ
るクロロホルム(cf)について見ると、全届出の 2%を、 高等教育機関
自然科学研究所
大学や研究所が排出している。また、大学等からみる 全届出事業所
と、大気へ排出する物質の実に 40%が cf であるわけで、 平成 年度集計結果より
年
使用する有機溶媒の回収は、教育面においても重要で 単位
ある。
【減圧ポンプと冷却回収】ながらく、水道の蛇口にとりつけたアスピレーターで減圧が行われていた
が、近年、排出水の汚染を防止する目的で、ポンプによる吸引と冷却トラップによる回収に切り替わ
った。しかし、図 1 に示すとおり、
「冷却トラップ==>ポンプ」の取り付け順(図 1(a))より、
「ポンプ==
>冷却トラップ」(図 1(b))のほうが、はるかに効率がよいことがあまり知られていない。以前、我々
1
o
o
が行ったジクロロメタン(dcm)に関しての調査 )では、-11 C の循環冷媒を用いた図 1(a)の方式と 14 C
の水道水を用いた図 2(b)の方式が、同等の冷却捕集効率であった。
(a)のトラップが -11oC にも冷却して
冷却 プロピル
おきながら、 17.9%もの dcm を逃す
アルコール
のは、強力な吸引ポンプの使用によ
外気へ
外気へ
って、漏れ込み空気が発生し、また
トラップ部での圧力が低下すること
によって、蒸発が促進されることに
よる。一方、( b)のように、弱いポ
ジクロロメタン
ンプでエバポレーターから溶媒を吸
い取れば、漏れ込み空気を最小限に
抑えることができ、適当に冷やして
(b) 主としてポンプの後の
やれば、蒸気圧分の dcm は逃すもの (a) ポンプの手前の-11oCトラップ
で冷却捕集
水冷トラップ(14oC)で捕集
の、漏れ込み空気が少ないために、
大気に逃げる dcm は大きくならな 図 エバポレーター後の回収方法と回収率の例 ジクロロメタン
い。(b)のポンプは、蒸気状 dcm を
圧縮して、液化している。
【モデル化による考察】以上の考察をもとに、減圧濃縮後の冷却捕集をモデル化した。クロロホルム
o
o
(cf)をモデル物質とし、図 1(b)に相当するつなぎ方で、ポンプ手前で 0 C 0.2atm、ポンプ出口で 20 C
o
1atm, ポンプ後の冷却トラップで-20 C の条件の時の試算を図 2 に示している。以下に、順を追って
計算の手順を述べる。
o
ポンプの吸引と漏れ込み空気の発生によって、ロータリーエバポレーター出口(0 C)から 0.2atm(体積
100L/min)の気体が吸引されるとすると、cf の飽和蒸気圧(0.081atm)を乗じた 0.362mol/min の cf が出
て行く。0.2-0.081=0.119atm の気体は、漏れ込み空気である。すなわち、これが、ポンプで 1atm まで
圧縮されるので、20oC の cf 飽和蒸気圧に達するまで、cf が液化することになる。この間、漏れ込み
空気の体積は変化しない。ポンプ出口につながれたトラップは冷却されており、ここで、さらに cf
の飽和蒸気圧が低下し、その分の液化が起こる。ただし、ポンプ内で圧縮・液化された cf も、ポン
プ後の冷却トラップで捕集されるので、この冷却によってトラップされたように見える。計算の結果、
ロータリーエバポレーターから蒸気状で排出される cf の 3.9%が最終トラップから排出されると推定
される(図 2、表 2 の case 1)。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------Estimation of recovery rate of organic solvent exhausted from a rotary evaporator. ○ WATANABE N(Osaka
Inst Technol [email protected]) ; MIZUTANI S(Osaka Municipal Uni) ; NOMURA T(Kyoto Uni).
第 15 回環境化学討論会,渡辺信久,ポスター発表(仙台 2006 年 )
漏れ込み
空気
仮定
分間に流入する気体
体積#
圧力#
飽和蒸気圧
の を含む
⑤ 仮に
+
+
体積は、
② 同伴空気の圧力
から
になれば、
倍
になる。
⑥ しかし、圧縮によって
の蒸気圧が飽和蒸気圧を
超過するので、超過分は
凝縮しなければならない。
の凝縮によって、全圧が
より
低くなるので、圧力を保つべく、
気体の体積は小さくなる。
③ 同伴空気のモル数
⑪ 同伴空気のモル数
!
は保存される 不変
⑧ 同伴空気のモル数
!
は保存される 不変
の蒸気圧
分
以外の気体は同伴空気である。
の蒸気圧
分
以外の気体は同伴空気である。
従って、
従って、
体積
体積
における
の飽和蒸気圧は
!
⑫ 蒸気状 量
!
④
のモル数
相当の が凝縮する。
⑬ トラップ内で凝縮する 量
!
①
⑩ ポンプ内で凝縮する 量
ポンプ入り口での 量 ポンプ出口での 量
!
での
飽和蒸気圧
⑦ 最終的にポンプ出口で、
蒸気状態で残る は、
飽和蒸気圧
分
だけである。
トラップ入り口での 量
トラップ出口での 量
!
⑨ 蒸気状 量
!
吸引ポンプによって強く減圧することにより、
器具のジョイント部などから外部の空気が漏れ
込む。エバポレーター上部のトラップ出口部分
の状態であるとする
で、温度#
$ 圧力#
と、 分間に移動する同伴空気#
!$
分間に移動する #
! となる。
ポンプ後トラップに捕集される
一旦温度は上昇するが、ポンプで圧縮されるに従い、 の蒸気圧が飽和蒸気圧
を超過し、凝縮する。すると、圧力を保つべく体積が小さくなり、 蒸気圧が
再び上がり、飽和蒸気圧を超過した分だけ凝縮する。最終的に、同伴空気とあ
わせて、 の蒸気圧が飽和蒸気圧になる分だけ、ポンプから蒸気状で排出される。
トラップ出口では、同伴空気とあわせて、
の蒸気圧が飽和蒸気圧になる分だけ、
排出される。
トラップされない割合
%&'( ( ! '
)
、
でトラップ
# クロロホルム$
でダイヤフラムポンプ
、
"
のトラップ
①*⑬# 計算の順序
図 有機溶媒の冷却回収の効率の推定 モデル化合物# クロロホルム、ポンプ後に
の冷却トラップ
漏れ込み空気を少なくすれば、トラップ内を通過する空気量自体が減る。エバポレーター出口での圧
力が 0.1atm であるとすれば、cf の通過率は 0.63%になる(表 2 case 2)。
一方、ポンプの手前でトラップを設置した場合(図 1 の(a)に相当)の同様の計算を行うと、cf の通過
率は 22.0~8.2%となり、やはり、相当量が大気に排出されることになる(表 2 の case 3 および 4)。
表 モデル計算によって推定されたクロロホルムの通過率
の通過率
,
,
,
,
通過率
エバポレーター出口圧力
エバポレーター出口圧力
エバポレーター出口圧力
エバポレーター出口圧力
> ポンプ
> ポンプ
> トラップ
> トラップ
> トラップ
> トラップ
> ポンプ
> ポンプ
大気へ排出される 量 ロータリーエバポレーターから出る 量 )
1)水谷聡: 化学実験時の作業者の健康リスクと安全対策にかかわる教育基盤について、文部科学省科研費 特定領域研
究 「環境安全学の創成と教育プログラムの開発」第 2 回シンポジウム(2004 年 7 月 23 日 金沢)
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