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1つの文に多くのことを盛り込まないPDF 2016年12月1日

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1つの文に多くのことを盛り込まないPDF 2016年12月1日
放送用語委員会(広島)
1つの文に多くのことを盛り込まない
第1404回放送用語委員会が平成 28年 9月 9日
(金)に広島放送局で開かれた。外部委員は,名
古屋大学大学院教授の町田健氏と元 NHK 放送文
化研究所研究主幹の豊島秀雄氏で,広島・岡山・
松江・鳥取・山口 5局のニュース・リポートを検
討した。
【1 つの文に多くのことを盛り込まない】
きょうは,国際科の 3 年生・32 人 が,姉妹 校の
提携を結んでいるハワイの学校から短期留学して
いる 14 歳から 17 歳の 11人に ,廿日市市の宮島
を案内しました。
修飾の文が長く数字が多い。1つの文に多くの内
容を詰め込むと,聞いただけでは,頭の中で情報
を処理できない。文を区切って 1文の情報を少なく
したい。
(言いかえ案)
きょうは,国際科の 3 年生が,ハワイの姉妹校
から訪れている 14 歳から 17 歳の短期留学生に
宮島を案内しました。参加したのは国際科の生
徒 32 人と姉妹校の 11 人です。
【語順を大切に】
サッカー女子の日本代表「 なでしこジャパン」の元
キャプテンで,岡山湯郷ベルの主力選手,宮間あ
や選手らが,チームの指導方針などに反発し,退
団を申し入れたことが分かりました。
「なでしこジャパンの元キャプテン」を強調したかっ
たのかもしれないが,
「岡山湯郷ベル」からの退団
を申し入れたニュースなので,順番を変えたほうが
主旨が伝わりやすい。
なお,内容はこの時点での動きである。
(言いかえ案)
サッカー女子の岡山湯郷ベルの主力選手で,日本
代表「 なでしこジャパン」のキャプテンもつとめた
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NOVEMBER 2016
宮間あや選手ら 4 人が,チームの指導方針などに
反発し,退団を申し入れたことが分かりました。
【受け身が適切な場面か】
原爆ドームの周辺などが,ポケモンどうしを戦わせ
る場所となっていて,訪れた人からは,
「 平和を
祈る場所を,ゲームで遊ぶ場所にしないでほしい」
などといった意見も聞かれました。
ニュースでは,主体の影を薄くするねらいで受け
身が使われることがある。しかし,この 「 聞かれま
した」は,やや違和感がある。誰が聞いたのかはっ
きりしない場合や自然に聞こえてきた場合なら受け
身が使いやすいが,ここでは取材者自らが聞いたこ
とがはっきりしているので,不自然な印象を受ける。
【長い連体修飾は分かりにくい】
平和宣言では,原爆を投下したアメリカの現職大
統領として初めて広島を訪問したオバマ大統領の
「 核を保有する国々は,恐怖の論理から逃れ,核
兵器のない世界を追求する勇気を持たなければな
らない」という一節を引用するとしています。
骨格は
「平和宣言では,○○○という一節を引用
するとしています」である。
「一節」にかかる連体修
飾節が長い。
「原爆を投下した」から
「という」まで
の長い部分が「一節」を修飾している。連体修飾を
少しでも短くしたほうが,耳から入りやすくなる。
(言いかえ案)
平和宣言では,オバマ大統領が,アメリカの現職
大統領として初めて広島を訪問した際の演説の中
から,
「 核を保有する国々は,恐怖の論理から逃れ,
核兵器のない世界を追求する勇気を持たなければ
ならない」という一節を引用するとしています。
【的確なことばの選択を】
国際科に通う高校生が,日頃学んでいる英語を生
かして,ハワイからの留学生に廿日市市の宮島を
案内する催しが開かれました。
広島の高校生が,姉妹校から訪れた留学生に宮
島を案内した話題である。
「催し」ということばを使
うことに違和感がある。
「宮島を案内しました」でよい。
熊本地震を受けて,岩国市にある防災学習施設
が今,人気を呼んでいます。
「熊本地震のおかげで来館者が増えてよかった」
というニュアンスにも受け取れる。被災者の心情
に配慮したことばの選択が必要だ。
「人気を呼ぶ」
は「注目されている」などと言いかえられる。
「~を受けて」は便利な表現だが,
「受けて」の
前後の関係があいまいになることがある。
【天気のニュースでのことばづかい】
さあ,それでは 1 項目め,暑くなったというニュー
スから,お伝えしてまいりましょう。きょう,全国
1 位と 2 位ですから。これは埼玉県の熊谷や群
馬県の館林をおさえて,それ以上に気温が上がり
ました。
夕方のニュース冒頭の,キャスターのあいさつ
を兼ねたリードの部分である。県内では,最高気
温が 36度を超える暑さになった。
「熊谷や館林を
おさえて」は暑さを試合にたとえた表現だろうが,
熱中症で搬送された人もいるので,こうしたニュー
スでの比喩は避けたほうがよい。
【同語の繰り返しを避ける】
【大げさな表現をしない】
隠岐の大自然を満喫しました。
・・・・・・・・・・・・・・
大自然に抱かれた自然体験。子どもたちは大満
足でした。
・・・・・・・・・・・・・・
およそ 40 分のミニツアー。海を満喫し,みんな
大満足でした。
「大自然」「自然」「大満足」「満喫」ということ
ばが何度も出てくるのが気になる。「雄大な自然を
楽しんでいました」「 好奇心いっぱいのようすでした」
「海との一体感にひたっていました」など,いろい
ろな言い方が考えられる。「大」がつく語など大げ
さな表現は抑制的に使いたい。子どもたちがイン
タビューの中で「大満足」と言うのはよいが,外側
から見ている人が使うと,ことばが浮いてしまう。
【ことば足らずになっていないか】
もしもの時に慌てないよう,災害を肌で感じること
ができる施設に,今,人々の関心が高まっています。
「肌で感じる」は,雰囲気,空気を感じ取る場合
に使われることが多い表現である。ここは「災害
のこわさを肌で感じる」と丁寧に言いたい。放送で
は少しでも短くしたくなるが,注意しないと聞き手
にことば足らずだという印象を与えることもある。
【「ている」の使い方】
中和小 学 校では,総合 学習の時間を利用して,
地域のよさを見つけていて,今回のサミットでは,
6 年生の児童 8 人が,取り組みの成果を発表する
予定です。
この学校では,
「地域のよさを発見する」ことを
目的とする授業を行っている。この文だとたまた
ま,結果として「見つかった」というように誤解
される可能性がある。
「総合学習で地域のよさを
見つける授業を続けていて」などとしたほうが文
の流れがよくなる。
【被爆の実相】
「最近『被爆の実相』ということばがよく使われ
る。放送用語としてはどう考えればよいか」とい
う質問が事前に寄せられた。
これについて,用語委員会では,ニュースの現
場から以下の発言があった。
「『被爆の実相』は,以前は広島であまり使われ
ていなかったが,特に政府や政治家が最近よく使
う。耳で聞いても分かりにくく,ニュース原稿で誰
かが言ったことをそのまま引用せざるをえない場合
もあるが,地の文では分かりやすいことばに置きか
えたほうがよいと思う」 吉沢 信(よしざわ まこと)
第 1404 回放送用語委員会(広島)
【開催日】平成 28 年 9 月 9 日(金)
【出席者】町田 健 氏 豊島秀雄 氏
広島放送局 山﨑秋一郎 局長
放送文化研究所 鈴木郁子 所長ほか
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