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森林におけるシカ被害対策について

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森林におけるシカ被害対策について
森林におけるシカ被害対策について
平成27年12月
目
次
1 森林被害の現状
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
2 森林における鳥獣被害対策の体系 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
3
森林整備事業によるシカ被害対策
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
4 鳥獣被害防止総合対策交付金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
5 森林・山村多面的機能発揮対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
6 鳥獣被害対策の技術開発の現状
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
7 国有林におけるシカ被害対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
(参 考)シカ対策の取組事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
1 森林被害の現状
(1) シカ被害の現状
○ 平成26年度のシカやクマ等野生鳥獣による森林被害面積は、全国で約9千haで近年ほぼ横ばいで推移。
○ このうち、シカによる枝葉の食害や剥皮被害が全体の約8割を占め、深刻な状況。
○ シカの生息分布は1978年度以降大きく拡大しており、この36年間で分布域を約2.5倍に拡大。全国の総メッシュ数に占める
シカの分布割合は約6割。
■主要な野生鳥獣による森林被害面積(平成26年度)
※ 都道府県等からの報告による、民有林及び国有林の被害面積の合計
■ニホンジカ 全国生息分布メッシュ比較図
-1-
環境省資料(平成27年4月)
(2) シカ個体数の見通し
○ シカは繁殖力が高く、メスジカは毎年妊娠するといわれている。捕獲しないと年率約20%で増加し、4~5年で個体数
は倍増。
○ 環境省の推計では、北海道を除く本州以南には平成24年度末で249万頭のシカが生息(北海道は約59万頭)。
○ 現在の捕獲率では、10年後(平成35年度)には402万頭と1.6倍に増加すると予測。
生息個体数
メスジカは2歳以降
毎年妊娠している。
捕獲しないと年率20%で
増加(4~5年で倍増)
■ 静岡県富士地域における齢別妊娠率
※ 静岡森林管理署シャープシューティング調査結果より作成
■ 統計手法によるニホンジカの個体数推定(北海道を除く)
環境省資料(平成27年4月)
※1 ニホンジカの生息個体数について、平成25年8月に平成23年のニホンジカの
生息個体数は約261万頭と推定されたが、今回新たな方法で推定を行い、過去
の推定値も修正されている。
※2 北海道は、道内のシカの生息個体数を平成24年度(2012)約59万頭、平成25
年度(2013)56万頭と推定。
-2-
(3) シカによる影響・被害1
植栽木への食害
北海道
胆振地域
連続した枝葉の食害により盆栽状に
なったカラマツの植栽木
山梨県
富士山周辺
シカの剥皮によるウラジロモミ
植栽木の枯損
静岡県
富士山周辺
シカの食害を受け成林が見込めな
いヒノキ新植地
シカによる樹皮剝ぎ
北海道
知床
エゾシカによる広葉樹の樹皮食害
長野県
カラマツ人工林におけるシカの剥皮害
東信地域
滋賀県
霊仙山周辺
-3-
スギ人工林におけるシカの剥皮害
(4) シカによる影響・被害2
下層植生の衰退
神奈川県
丹沢地域
ヒノキ人工林におけるシカの食害
による下層植生の消失
三重県
天然林におけるシカの食害による下
雲出川上流域 層植生の消失(一部表層崩壊)
和歌山県
護摩壇山周辺
シカの食害により下層植生が
アセビに単一化
食害による裸地化
福井県
嶺南地域
風衝地(以前はチシマザサ等が植生)
におけるシカの食害による裸地化
高知県
三嶺周辺
シカの食害によりミヤマクマザサが枯
死し、裸地化(防護柵内のみ植生が
残っている)
-4-
長崎県
対馬
シカ食害による土壌流出
(5) シカによる影響・被害3
高知県香美市さおりが原周辺のシカ被害の推移
2003.8.10
2008.5.24
食害により下層植生の減少
や単純化が進む
緑豊かな下層植生
シカの忌避植物のみとなった下層植生
2009.5.31
食害が進み下層植生の消失、
立木の立枯れが顕著に
2009.7.24
高知県香美市
-5-
土砂の崩壊も発生→森林の
有する国土保全機能の低下
(参考) 狩猟者と鳥獣被害対策実施隊の現状
○ 狩猟者の減少、高齢化が急速に進む中、わな猟の免許所持者が増加している。
○ 鳥獣被害防止特措法に基づき市町村は、被害防止計画に基づく、捕獲、侵入防止柵の設置等を実施する鳥獣被害対
策実施隊を設置することが可能。設置市町村数は平成27年4月末時点で986であり、増加している。
○狩猟者の推移(環境省資料)
○実施隊を設置する市町村数の推移
(都道府県からの報告による)
○鳥獣被害対策実施隊の概要
※ 非常勤の実施隊員の報酬や保障措置は、各市町村が条例で定める。
主なメリット措置
主として捕獲に従事する隊員
狩猟税は非課税
〈狩猟者(散弾銃等)16,500円→0円〉
民間の隊員(非常勤の公務員)
実施隊の活動経費
-6-
公務災害が適用
経費の8割が特別交付税措置
2 森林における鳥獣被害対策の体系
(1)各省連携した抜本的な鳥獣捕獲強化対策
○ 環境省と農林水産省では、生態系や農林水産業等に深刻な被害を及ぼしているシカ、イノシシに対し、その生息頭数を
10年後(平成35年)までに半減することを目指す「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」を、平成25年12月に策定。
○ 捕獲目標達成に向けて、①鳥獣保護法見直しによる新制度導入や規制緩和等、都道府県等の捕獲活動の強化(環境省)、
②鳥獣被害防止特措法に基づく市町村等の捕獲活動の強化(農水省)等の捕獲事業を実施するとともに、捕獲従事者の育成・
確保、被害防除や生息環境管理等を併せて推進。
【抜本的な鳥獣捕獲強化対策 イメージ】
シカ・イノシシ
生息頭数(万)
413万頭
400
シカ
325万頭
200
北海道
: 64万頭
北海道以外*
:261万頭
特に、北海道以外のシカについて、
現状の捕獲数(27万頭)の2倍以上の捕獲
が必要
当面の捕獲目標
シカ・イノシシの生息頭数を10年後までに半減
【捕獲事業の強化】
【捕獲従事者の育成・確保】
○ 都道府県による個体数調整の強化
○事業者を認定する制度の創設
(H26鳥獣保護法改正)
(H26鳥獣保護法改正)
・管理のための捕獲事業の制度化
○鳥獣被害対策実施隊の設置促進
・上記事業における夜間銃猟の実施
○射撃場整備の推進
等
※ この他、被害防除や生息環境管理等
の関連施策を併せて実施
・緊急捕獲対策
・出口対策としての処理加工施設整備の推進 等
イノシシ*
88万頭
進捗状況を確認し、必要に
応じて目標を見直し
*環境省において推定(平成25年8月)。
推定値は随時新たなデータを活用し補正。
◎
約210万頭
○ 市町村による有害捕獲の強化
・ICT等を用いた捕獲技術の高度化
現状(平成23年度)
** 北海道は、独自の保護管理
計画における28年度目標の38
万頭を仮置き
5年後(平成30年度)
シカ**
約160万頭
イノシシ
約50万頭
10年後(平成35年度)
本対策については、「農林水産業・地域の活力創造プラン」(平成25年12月10日農林水産業・地域の活力創造
本部決定)に位置づけて推進
-7-
(2) 森林における鳥獣被害対策の体系
森林鳥獣被害対策技術高度化実証事業
(国有林)
27年度予算:2億円
治山事業(公共事業)
27年度予算:616億円の内数
26年度補正:31億円の内数
・治山施設の設置や荒廃森林の整備と一体
的に行う防護柵等の鳥獣被害防止施設等
の整備を支援
・国有林内のモデル地域において、新たな防除技術等を効果
的に組み合わせた対策の実証等を実施
森林整備事業(公共事業)
27年度予算:1,250億円の内数
26年度補正:74億円の内数
・森林整備と一体的に行う防護柵等の鳥獣害防止施設
等の整備に加え、シカ等の捕獲・処分等を広域的・面的
に実施する取組を支援
鳥獣被害防止総合対策交付金
27年度予算:95億円
26年度補正:20億円
・侵入防止柵の設置や、捕獲活動の直接経費など
市町村が主体となった地域ぐるみの被害防止の取
組を支援
・地域の指導者や被害対策の中核となるコーディ
ネーター等人材育成に支援
〇森林・林業再生基盤づくり交付金(27年度予算:27億円の内数)
〇森林・山村多面的機能発揮対策(27年度予算:25億円の内数)
都道府県、市町村等が被害の状況を勘案し、地域の実情に応じて行う被害防止対策に支援
地域住民、森林所有者等が協力して実施する里山林の保全等(鳥獣害防止柵の設置・修繕等を含む)について支援
-8-
3 森林整備事業によるシカ被害対策
森林整備事業では、
○ 森林所有者等が、シカによる食害防止のため、森林施業と一体的に実施する侵入防止柵や獣害防止資材
の設置、忌避剤の散布を支援しています。
○ 市町村等の公的主体が、シカの食害による被害森林で行う、餌により誘引した上で実施するわなや銃によ
る捕獲(誘引捕獲)等を支援しています。
民有林
国有林
シャープシューティングなど
先進的な事業も実施
囲いわな等による
シカの誘引捕獲
植栽木を保護する獣害防止資材
囲いわな等による
シカの捕獲や侵入防止柵
を設置
ドロップネットによる
シカの誘引捕獲
新植地での
パッチディフェンス
地元の協議会等で
調整のうえ実施
農地等
農業被害対策
(侵入防止柵等や巻狩等による駆除)
囲いわなによるシカの捕獲
-9-
総合的なシカ被害対策における民有林の取組
○ 森林整備事業のうち環境林整備事業では、シカの誘引捕獲、通常の森林整備事業より高度なシカの食害
を防止するための施設整備等を支援しています。
○ 市町村が実施する場合は、経費の68%を実質的に補助します。
(シカの誘引捕獲等に対する支援内容)
支援2:鳥獣害防止施設等整備
支援1:誘引捕獲
■ 捕獲場所の整備
・ シャープシューティング等の
実施に当たりシカを誘引するた
めの給餌施設の整備
・ ドロップネットや囲いわな等のわ
な施設の整備
■ 捕獲・処分
被害森林における誘引等によ
る効率的な捕獲と捕獲個体の埋
設処分
■ 樹皮防御ネット整備
単木単位で食害から守るための金網巻等
■ 食害抵抗性柵整備
パッチディフェンス(小さな防護柵をモ
ザイク状に多数設置)等
■ 食害監視施設整備
シカ等の行動を把握するための自動
撮影カメラ等の器材設置や施設整備
支援要件
■ 主な事業主体(国と県を合わ
せた実質的な補助水準)
・ 都道府県(51%)
・ 市町村(68%)
・ 森林組合等(68%)
■ 森林所有者等との協定
■ 10年間は皆伐禁止
■ 対象地の面積0.1ha以上
自動撮影
カメラ
モニター
餌
餌
パッチディフェンス
シャープシューティング
-10-
監視施設整備
4 鳥獣被害防止総合対策交付金
※地域協議会のメンバーとなるなど、要件を満たすことで、ハード対策、ソフト対策ともに林業関係者等による森林での取組を支援することが可能
○ 鳥獣被害防止特措法の主旨を受けて、地域の鳥獣被害対策の取組を総合的かつ効果的に推進するため、平成20年度に鳥獣害
防止のための事業を創設し、市町村が作成した被害防止計画に基づく地域ぐるみの総合的な取組等を支援。
【平成27年度予算額
9,500百万円】
ハード対策
【事業内容】
○ 侵入防止柵の設置費用
○ 捕獲鳥獣を食肉利用するための処理加工施設 等
○ 捕獲技術高度化施設(射撃場)
地域協議会、地域協議会の構成員
【事業実施主体】
処理加工施設
ソフト対策
【事業内容】
○鳥獣被害対策実施隊等による地域ぐるみの被害防止活動
捕獲を含めたサルの総合対策、発信機を活用した生息調査、捕獲機材の導入、鳥獣の捕獲・追い払い、放任果樹の除去、
緩衝帯の整備、捕獲に関する専門家の育成支援、ICT等を用いた被害軽減に確実に結びつく新技術実証 等
○捕獲活動経費の直接支援
○都市部等の人材を活用した取組など、鳥獣被害対策実施隊の体制強化に向けた被害防止活動
○都道府県が実施する広域捕獲活動、新技術実証活動等
○鳥獣被害防止活動の地域リーダーや被害対策の中核となるコーディネーターの研修(※) 等
森林での
囲いわなの導入
森林での鳥獣の捕獲活動
(※)都道府県、市町村、森林組合等林業事業体職員等を対象に森林被害対策の研修を実施
【事業実施主体】
地域協議会、民間団体等
スマートセンサーによる捕獲技術実証
補助率
【ハード対策】1/2以内(条件不利地域 55/100以内、沖縄2/3以内)
※侵入防止柵の自力施工を行う場合、資材費への定額補助が可能
【ソフト対策】1/2以内等
※新規地区や実施隊、民間団体の取組は、市町村(1団体)当たり200万円等まで定額補助
※ICT等を用いた新技術実証等高度な対策への取組は、市町村当たり原則100万円までを定額補助
※捕獲活動経費の直接支援については、獣種等に応じて定額補助(捕獲1頭当たり8,000円以内等)
-11 -
5 森林・山村多面的機能発揮対策
○ 地域住民、森林所有者、自伐林家等が協力して実施する里山林の保全、森林資源の利活用、森林環境教
育・研修活動など、以下の取組を支援。
・補助率 : 定額 ・1活動組織当たりの交付上限額 : 500万円
〔事業の内容〕
【平成27年度予算額 2,500(3,000)百万円】
地域協議会:都道府県、市町村、学識経験者、関係団体等で構成
国
交付金の管理、活動組織の持続的な体制を支援(森林のマッチング、安全研修等の実施、資機材貸与等)
【交付金】
活動組織:地域住民、森林所有者、自伐林家等で構成
右記の活動に対し、
定額で助成
※ このほか、森林資源利
用タイプ、教育・研修タイプ
などの活動にも支援
※ 地域環境保全タイプ・森林機能強化タイプ
で鳥獣害防止柵の設置・補修が可能
森林機能強化タイプ
地域環境保全タイプ
里山林景観を維持する
ための活動
(16万円/ha)
侵入竹の
伐採・除去活動
(38万円/ha)
路網の補修・機
能強化等
(1千円/m)
鳥獣害防止柵の
設置・補修等
(1千円/m)
機材及び資材の整備: 上記活動の実施に必要な機材及び資材については、1/2以内で助成
-12-
6 鳥獣被害対策の技術開発の現状
○ 国や地方公共団体の試験研究機関、森林組合、民間企業等により、様々な技術が開発されつつある。
○ パッチディフェンス
造林地内に小規模面積の柵を
点在させ、裸地における森林再生
を行う技術。
○ ドロップネット
空中に網を張り、捕獲したい動
物が網の下に来た時に網を落と
して捕獲するわな。
○ セルフロックスタンチョン
下部にある餌を食べるために首
を下げると自動的にロックされて
頭部がぬけなくなるわな。
写真:(国研)森林総合研究所提供
○ 大型囲いわな
大量のシカの捕獲を目的にし
た囲いわな。遠隔操作システムと
組み合わせることで捕獲率の向
上、人的コスト削減が可能。
○ 簡易囲いわな
従来の囲いわなよりも軽量な資
材の利用により移動運搬や人力
での組み立てが可能な囲いわな。
遠隔操作システムと組み合わせ
ることで捕獲率の向上、人的コス
ト削減が可能。
-13-
○ 誘引狙撃
野生のシカを一時的に餌付けを
した上で、銃器によって捕獲する
技術。
○ 実証事業により、全国7箇所(平成27年度)で、森林におけるシカの捕獲技術の実証を実施。
森林鳥獣被害対策技術高度化実証事業(H26・27年度)
北海道白老町、苫小牧市(胆振東部森林管理署) H27年度
・GPS首輪による追跡調査
・簡易囲いわな(AIゲート)等による効率的な捕獲技術
長野県伊那市(南信森林管理署) H26、27年度
・自動撮影カメラによるモニタリング等
・誘引狙撃、簡易囲いわな(ICTゲート)による効率的な捕獲技術
熊本県高森町(熊本森林管理署)、大分県竹田市、
佐伯市(大分森林管理署)、宮崎県高千穂町(宮崎
北部森林管理署) H26、27年度
・簡易チェックシートによる実態把握等
・簡易わな(網はこわな、囲いわな(自動通信システ
ム))、セルフロックスタンチョン、誘引狙撃による効
率的な捕獲技術
北海道新ひだか町(日高南部森林管理署)
H26年度
・GPS首輪による追跡調査
・簡易囲いわな(AIゲート)による効率的な捕獲技術
岩手県大船渡市、陸前高田市外(三陸中部森林管理
署) H26、27年度
・GPSによる追跡調査等
・簡易囲いわな(ICTゲート)による効率的な捕獲技術
栃木県日光市(日光森林管理署) H26、27年度
・GPSによる追跡調査
・パッチディフェンスによる侵入防護
・誘引狙撃や簡易囲いわな(AIゲート)よる効率的な捕
獲技術
三重県大台町(三重森林管理署)H26、27年度
高知県香美市(高知中部森林管理署)H26、27年度
・簡易チェックシートによる実態把握等
・簡易わな(網はこわな、囲いわな(自動通信システム))、
セルフロックスタンチョン、デコイによる誘引、誘引狙撃に
よる効率的な捕獲技術
-14-
・簡易チェックシートによる実態把握等
・誘引狙撃やくくりわなによる効率的な捕獲技術
7 国有林におけるシカ被害対策
国有林におけるシカ被害対策の強化
①地域における連携体制の整備、②生息状況・被害状況等のモニタリング、③個体数管理 等の被害防止対策の推進
〔地域連携推進等対策のうち野生鳥獣との共存に向けた生息環境〕
① 連携体制の整備
② モニタリング
シカの行動圏等を考慮した広域エリアにおいて、地方公共団体や環境
省等関係行政機関や猟友会等と連携し協議会を設置。各機関の取組の
有機的な連携による効率的・効果的な対策を推進。
被害対策を効果的に実施するための、シカの生息・分布
調査、被害調査を実施
③ 被害防止対策
モニタリングに基づき、くくりわな・囲いわな等を用いた捕獲、猟友会と連携した
駆除等による特定鳥獣保護管理計画の目標個体数への誘導、防護柵等の設置
による植生保護を関係者との連携により実施。
平成26年度から、国有林内のモデル地域において、様々な新技術を組み合わ
せた実証事業を実施。また、捕獲の円滑化に資する入林手続の簡素化を検討中。
国有林におけるシカ捕獲頭数の推移
餌付けされたシカ
給餌による誘引狙撃
15000
11230
10000
5000
836
(頭)
0
H21
H25
※4年間で捕獲頭数は13倍に増加!
職員によるくくりわなの設置
囲いわなによる捕獲
☆ 国民の共通財産(国有財産)の適切な保全管理を通じた公益 的機能の維持増進、地域の振興
☆ 積極的な駆除による地域における農林業被害の軽減・防止への貢献
(特定鳥獣保護管理計画等の目標達成)
-15-
入林手続の簡素化(有害鳥獣捕獲・狩猟)
・野生鳥獣の捕獲を目的として国有林に入林する際の手続を簡素化。
・申請回数の削減、入林届の提出方法や入手方法の多様化、入林者の安全性の確保等、入林者の負担を軽減
しつつ安全にも配慮した手続に改正(平成27年度)。
現行
入
林
手
続
安
全
確
保
対
策
郵送
+
手交
入林の都度申請
一度の申請で一定期間、複
数回の入林が可能
(申請回数の削減)
申請様式を統一し局HPで公
開。市町村等の窓口での配
付を要請。
(分かりやすい様式)
(入手方法の多様化)
立入禁止
区域図
その他
局・署で申請様式が
様々
局・署で入林届を提
出した方にのみ交付
メール
FAX
(入林者のメリット)
郵送・手交
届出・交付
事務処理
改正
(届出方法等の多様化)
局・署で 局HPで 市町村等の
+ 公開 + 窓口での配 (入手方法の多様化)
交付
付を要請
銃使用の場合、入林者の車両
に注意看板を掲示
入林届の申請状況をHPで公開
-16-
(入林者の安全確保)
(参考) シカ対策の取組事例
-17-
森林整備事業におけるシカ被害対策の取組
北海道(新得町)
○ 平成26年度に北海道新得町で、森林整備事業(環境林整備事業) によりシカの誘引捕獲を実施。
○ 町が事業主体となり、(株)ドリームヒルトムラウシに委託し実施。エゾシカの越冬地になっている郊外の鳥獣保護区
内の森林に、囲いわなを設置して捕獲を実施。
○ 20日間※で6頭を捕獲。事業費約76万円のうち、国と北海道から約52万円(68%相当)を助成。
※事業着手に遅れが生じたため
●位置図
③ 追い込まれたシカ
捕獲したシカは食肉として有効利用
北海道
新得町
誘引
●事業費内訳
費 目
委託料
(生息調査)
③
金額(円)
追込み
①
693,639
21,879
(わな設置)※
403,740
(餌やり・捕獲)
89,425
えさ代
18,468
資材費※
35,965
除雪費
13,716
事業費
捕獲
② 囲いわな全景
②
餌やり
囲いわなにより群れでシカを捕獲
761,788
※単独事業で引き続き利用したので撤去なし。
資材は町所有物を貸与。
延長63.6mと小型で設置しやすい
-18-
① 樹皮剥ぎを受けた人工林
治山事業による獣害(シカ)対策の取組
福井県(若狭町)
cm
20
金網
被害前(2008.8)
被害後(2011.8)
台座
金網工法断面図
施工状況
○所在場所
福井県三方上中郡若狭町白屋地区
○施設・工法の概要
被害面積6.0ha、丸太筋工4,490m、植生マット+獣害防止金網工
3,700m2
○解説(要約)
福井県南西部に位置する若狭町白屋地区のロクロ山において、2008年頃ま
ではカヤの植生地であったが、2011年頃にはシカの食害により植生が失われ、
土壌侵食が進行。
このため、2012年から「奥地保安林保全緊急対策事業」を開始し、2014年10
月に一部完了。
降雪前の11月中旬に確認したところ、シカの食害の影響が軽減され緑化植
物の種子が定着・生育していることを確認。
一部完了状況(2014.10)
-19-
富士山国有林におけるシャープシューティングの取組
静岡県(富士宮市)
富士山国有林では、平成23年度から、「富士宮市鳥獣被害防止対策協議会」を中心に、森林管理署、研究者、
捕獲技術者、給餌者、地元猟友会といった関係者が明確な役割分担する体制を構築した上で、ニホンジカの
シャープシューティング※(現場条件に応じて他手法も組合せ)を実施。
概要
実施体制
研究者
(静岡県森林・林業研究センター、自然環境
研究センター、(国研)森林総研)
静岡森林管理署
<シャープシューティングとは>
単に餌付けと狙撃を組み合わせた方法ではなく、一定
レベル以上の技量を有する射手、動物の行動をコント
ロールするための給餌、警戒心の強いシカ個体の出現
予防等の体制を備えた捕獲手法。
富士宮市鳥獣被害防止対策協議会
捕獲技術者
(NPO法人若葉)
(県、富士宮市、猟友会、森組ほか)
自動撮影
カメラ
射手
実施結果
射手 実施日数 捕獲頭数
備
平成23年度
2名
6日間
73頭
初の試行
平成24年度
2名
12日間
199頭
H23のエリアから変更
平成25年度
2名
15日間
177頭
H24と同エリアで実施
平成26年度
2名
10日間
231頭
H25と同エリアで実施
43日間
680頭
平均:15.8頭/日
合
計
(イメージ)
考
◎ 協議会を中心として関係者が連携する体制が有効
に機能(「チーム富士宮」)。
◎ 巻き狩りに比べて捕獲効率が良い一方で、捕獲前の
給餌等に伴う準備期間や、捕獲当日の捕獲個体運搬
や安全管理のための人員等が必要。
捕獲効率は11.6頭/人・日(射手2名)で過去の同地域における
巻き狩りの約48倍に相当
-20-
◎ ただし、警戒心の強いシカ個体を作らないという点で、
巻き狩りとは継続的捕獲効率に大きな違い。
パッチディフェンスによるシカ対策の取組
三重県(宮川森林組合)
○ 宮川森林組合では、シカによる苗木の被害が拡大する中、造林地をパッチ状に柵で囲うパッチディフェンスにより効
果的なシカ被害対策を実施している。柵により造林地全体を囲う方法に比べ導入コストはかかりましになるが(約2倍)、
メンテナンスフリーに近い維持管理や、倒木等により柵が破損してもシカ被害が造林地全域に及ばないなどリスク分散
上でも効果が得られている。
造林地へのパッチディフェンスの導入
(平成22年11月撮影)
パッチディフェンス内の林床植生の繁
茂状況(平成26年5月撮影)
パッチディフェンスの構造
※小規模に閉ざされた檻のような柵内へはあえて入
ろうとしないシカの特徴を活かし、1辺10m程度の方
形区の構造を採用。
-21-
エリアごとに適正な保護管理を実施
神奈川県
○ 神奈川県では、平成15年に「神奈川県ニホンジカ保護管理計画」を策定し、主な生息域である丹沢山地を大きく
3つのエリアに分け、エリアに適した取組を実施。特に、植生回復を目的にした管理捕獲を進め、継続して捕獲してい
る場所では生息密度の低下が見られるなど一定の成果。平成24年度からは、①間伐などの森林整備を行った場所
でのシカ個体数調整、②高標高山稜部などこれまで捕獲が進まなかった場所での捕獲の実施等強化。
資料:ニホンジカのこと、もっと知ってください(神奈川県)
-22-
チェックシートによるシカ被害の広域評価
兵庫県
○ 兵庫県では、シカによる森林生態系被害を明らかにするため、チェックシートを用いた簡易な植生調査法
による広域調査により、シカによる下層植生の衰退状況や土壌侵食被害状況を評価し、シカ対策に役立てて
いる。
シカの食害による下層植生の衰退度の推移(2006→2010)
シカによる森林植生衰退状況調査票
※低木層の植被率とシカの食痕の有無により衰退度を6段階に判定
資料:兵庫県におけるニホンジカによる森林生態系被害の把握と保全技術(2012年)
-23-
建設業者等が取り組むシカ捕獲事業
北海道
○ 平成26年度に北海道森林管理局管内の森林管理署等が発注したエゾジカの捕獲事業に7社の建設業者
等が受注。
平成26年度に建設業者等が受注したシ
カ捕獲事業実績
C社は、冬期の事業を確保するため、シカ捕獲事業を受注し、
国有林において、自社が所有する重機を用い囲いわなを設置し、
シカを捕獲するとともに、捕獲したシカを養鹿するなど、シカを活
用した事業展開を進めている。
大型囲いわなによる捕獲
作業員によるシカの誘導
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契約者名
捕獲方法
捕獲頭数
A社
囲いわな
77
B社
囲いわな
31
C社
囲いわな
106
D社
囲いわな
19
E社
誘引狙撃
2
F社
誘引狙撃
6
G社
誘引狙撃
2
資料:北海道森林管理局業務資料
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