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活性・毒性スクリーニングにおける 凍結初代神経細胞の有用性

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活性・毒性スクリーニングにおける 凍結初代神経細胞の有用性
i nnovation
活性・毒性スクリーニングにおける
凍結初代神経細胞の有用性
Anthony Krantis, PhD, William Staines, PhD
Cambrex Bio Science Walkersville, Inc.
ラット・マウス胎児脳由来の培養細胞は広く薬物活性・細胞
毒性の評価に使用されています 1、2)。初代培養神経細胞は、
薬剤特異的なターゲットを発現しているという点において株
化細胞より優れており、薬理・細胞毒性・毒性メカニズムの
評価をより正確に、かつ迅速に行うことができます 3)。さらに
重要な点は、神経細胞がもっとも毒物に対する応答性が高い
細胞種であることです。初代神経細胞は、他の細胞と比べ
1/10 以下の濃度でも広範な化合物で致死性を示します。そ
のため、致死的な毒性だけでなく、わずかな毒性も in vitro で
検出が可能になります。しかしながら、初代神経細胞は株化
細胞に比べ、調製に労力もかかり、取り扱いも容易ではあり
ません。
このような問題は凍結初代培養細胞を使用することで解決
図1 凍結神経細胞の Anti-PGP 9.5、anti-tubulin 染色
ラット胎児大脳皮質由来の凍結神経細胞を B27 supplement(Invitrogen社)添
加 Neurobasal Medium(Invitrogen 社)
を用い、96 穴プレート(20,000∼100,000
cells/well)で 21日間培養。細胞固定後、Anti-PGP 9.5(緑)
、anti-tubulin(赤)
で染色。培養細胞は、典型的な神経ネットワークと細胞形態を示した。
します。このたび、Cambrex 社のラット・マウス凍結初代神
100
80
経細胞の発売により、融解後、マルチウェルプレートで培養
44
57
77
87
60
40
するだけで、簡単に高品質で高収量な細胞の取得が可能に
20
0
–20
なりました。同社の大脳皮質、海馬、線条体由来の凍結初代
–40
神経細胞は、神経活性や毒性研究に最適で、薬剤スクリー
–60
ニングに使用することで薬剤開発のスピードアップが期待で
–100
–80
80
60
きます。
40
20
0
–20
凍結初代神経細胞を培養すると、図 1 のように正常な細胞形
–40
–60
態を示します。また、電気生理活性、薬理活性(図 2 および
–80
–100
表)を示し、各種 GABA 受容体(図 3)も発現しています。凍
結細胞は必要なときにすぐに使用でき、細胞の調製や動物
の管理等の作業が必要なくなるという利点があります。共同
研究など異なる場所で実験を行う場合も、凍結細胞はドラ
イアイス輸送が可能なため、新鮮細胞と比べ輸送にともなう
リスクを大幅に軽減できます。また、同一ロットを繰り返し
使用できるという利点もあります。
図2 凍結神経細胞の活動電位(スパイク)データ
マルチ電極アレイ(60 ch、直径 30 µm、間隔 200 µm)によるラット胎児大脳皮
質由来凍結神経細胞の活動電位(スパイク)を測定し、個々の神経ネットワー
クの特性を解析した。シグナルは 25 kHz で検出し、ソフトウェア MCRack
(Multi-Channel-Systems 社)で記録した。データの記録は 37℃で行い、スパ
イクの検出はカスタム作製したソフトウェア(Result 社)で行った。
表 凍結神経細胞における向神経性物質の適用効果
IC50 値
化合物名
凍結初代神経細胞は、Day 7 までに、典型的な神経ネット
T TX
(1.0 nM)
APV(NMDA 受容体拮抗薬)
(18 µM)
ワークを形成し、培養は 21日以上維持できます。図 4 ∼ 6 の
マグネシウム
(161 µM)
実験結果は、凍結初代神経細胞が、酸化ストレスや化合物の
GABA
毒性評価に適していることを示しています。
【引用文献】
1)Rogers, A., et al.(2004)Toxicological Sciences, 82, 562-569.
2)Schuh, R. A., et al.(2002)Toxicology and Applied Pharmacology, 182, 176185.
3)Otto, F., et al.(2003)J. Neuroscience Methods, 128, 173-181.
22
●
BIO VIEW No.49
(1.0 µM)
NMDA
刺激性
抑制性
< 1 µM
> 1 µM、IC50 ≒ 1.8 µM
グルタミン酸
刺激性
抑制性
< 5 µM
> 5 µM、IC50 ≒ 10 µM
最大 120日まで培養したラット胎児大脳皮質由来凍結神経細胞において、向神
経性物質の適用効果を確認した。
図 2 および表の結果は、凍結神経細胞が長期にわたり安定に神経ネットワーク
を形成し、新鮮神経細胞に近い性質を保持していることを示唆する。
i nnovation
bp
2000
1000
650
24 時間
処理
4 時間
処理
40 分
処理
コント
ロール
300
Fsh Cryo
alpha 1
Fsh Cryo
alpha 2
Fsh Cryo Fsh Cryo
alpha 3
alpha 4
Fsh Cryo
alpha 5
Fsh Cryo
gamma 2
Fsh:新鮮神経細胞 Cryo:凍結神経細胞
図3 新鮮・凍結神経細胞の GABA 受容体発現比較
新鮮・凍結神経細胞で GABA 受容体発現を比較した。ラット胎児大脳皮質由来
凍結神経細胞および新鮮神経細胞をB27 supplement 添加 Neurobasal Medium
で、同じ条件下で培養した。凍結神経細胞は Day 10 に回収し、新鮮神経細胞は
Day 14 に回収した。回収した細胞からそれぞれ total RNA を抽出し、逆転写反
応によりcDNA を合成した。これらを鋳型とし、各種 GABA 受容体プライマー
(α1、α2、α3、α4、α5、γ 2)を用いて PCR 増幅を行ったところ、凍結神経細胞
ですべての受容体が新鮮神経細胞と同様に発現していることが認められた。
図5 カイニン酸誘導アポトーシスのカスパーゼ 9 活性による検出
ラット胎児大脳皮質由来凍結神経細胞を 14 日間、96 穴プレートで、B 27
supplement 非添加の Neurobasal Medium にて培養した。最大 24 時間カイニ
ン酸(100 µM)処理し、カスパーゼ 9 活性を蛍光で検出(FAM FLICA)した。
経時的にアポトーシス細胞の増加が認められた。
図4 ペルオキシダーゼ阻害による凍結神経細胞 DNA 損傷の濃度依
存性
図6 グルタミン酸で誘導されるアポトーシスの APV および DNQX
による抑制
ラット胎児大脳皮質由来凍結神経細胞を10日間、96穴プレート
(5,000 cells/well)
で培養した。Day 9 ∼ 10 に H 2O 2( 50 µ M、100 µ M)で 処理し、OxyDNA
(Biotrin 社)を用いて DNA の損傷を蛍光で検出した。写真左は培養細胞の位
相 差 顕 微 鏡 画 像 、写 真 右 は 蛍 光 顕 微 鏡 画 像 で H 2 O 2 濃 度 依 存 的 に 8 oxyoguanine が生成されることが確められた。
ラット胎児大脳皮質由来凍結神経細胞を 15 日間、96 穴プレートで培養した。
20 分間 APV(D,L 2-amino-5-phosphonovaleric acid)
(12.5 µM、100 µM)ある
いは DNQX(6,7-dinitroquinoxaline)
(2.5 µM、20 µM)で処理した後、さらに
24 時間グルタミン酸(100 µM)を添加して処理した。ポリカスパーゼ活性を蛍
光で検出(SR FLICA)した結果、APVおよび DNQX の拮抗作用によりアポトー
シスの抑制が認められた。
【製品リスト】
製品名
製品コード
(TaKaRa Code)
神経細胞
ラット胎児大脳皮質神経細胞
ラット胎児脳海馬神経細胞
ラット胎児脳線条体神経細胞
マウス胎児大脳皮質神経細胞
マウス胎児脳線条体神経細胞
R-Cx-500
R-Hi-501
R-Cp-502
M-Cx-400
M-Cp-402
(A0500)
(A0501)
(A0502)
(A0400)
(A0402)
1 ml(約 4 × 106 cells/vial)
0.25 ml(約 1 × 106 cells/vial)
1 ml(約 4 × 106 cells/vial)
1 ml(約 4 × 106 cells/vial)
1 ml(約 4 × 106 cells/vial)
¥75,000
¥75,000
¥75,000
¥75,000
¥75,000
アストロサイト
ラット胎児大脳皮質アストロサイト
ラット胎児脳海馬アストロサイト
ラット胎児線条体アストロサイト
ラット胎児脳アストロサイト
R-CxAs-520
R-HiAs-521
R-CpAs-522
R-Asm-530
(A0520)
(A0521)
(A0522)
(A0530)
≧ 1 ×106 cells/vial
≧ 1 ×106 cells/vial
≧ 1 ×106 cells/vial
≧ 1 ×106 cells/vial
¥75,000
¥75,000
¥75,000
¥75,000
CC-3186
(B3186)
1 Kit
¥25,000
アストロサイト培地 キット(3% FBS)
(AGMTM BulletKit®)
容量(細胞数)
価格
上記はCambrex 社の製品です。
BIO VIEW No.49 ●
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