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第 5 章 管理運営計画
第 5 章 管理運営計画 5-1. 管理運営手法の検討 (1) 管理運営手法の整理 公共施設の管理運営手法としては、市が直接管理する方法と指定管理者により管理する方法 があります。 表 管理運営手法 分類 手法 概要 公設 公営 市直営 市において直接管理運営を行う方法。 トイレの維持管理やレストラン・販売施設の運営など、施設ごとに 業務委託またはテナント方式をとる場合が多い。 公設 民営 指定管理者制度 施設全体の管理運営を公共的団体または民間事業者等に委ねる方 法。 レストラン・販売施設はテナント方式による場合もある。 ※指定管理者制度とは 平成 15 年 9 月に改正地方自治法が施行され、地方自治体の「公の施設」の管理に関する制度が改正され たことによって創設された制度。これまでの「公の施設」の管理運営主体は、公共性の確保の観点から、市 の出資法人や公共的団体等に限られていたが、民間事業者や NPO 法人等幅広い団体にも管理運営を委ねるこ とができるようになった。 (2) 管理運営手法の比較検討 市直営と指定管理者のそれぞれの手法について、次の表で長所・短所を整理します。 比較検討の結果、指定管理者による運営を方針とします。 表 比較検討 分類 市直営 指定管理者 長所 ・公共目的が直接反映できる。 ・一定の質のサービスが期待でき、公平性、継 続性が担保される。 ・行政施策との連携が図りやすい。 ・民間ノウハウを生かして、効果的、効率的な 施設運営が期待される。 ・指定管理期間を定め、PDCA サイクル※を明確 にすることで、サービス改善が図られる。 短所 ・収益施設の運営ノウハウがないため、道の駅 の総合的な管理運営が困難となる。 ・予算執行の面で、柔軟な対応ができない場合 がある。 ・短期間で指定管理者が交代した場合、ノウハ ウの蓄積を妨げるおそれがある。 ・施設の運営経費が十分に確保されていない場 合、利用者に対するサービス低下や地域の雇 用に影響を与えることも懸念される。 △ ○ 評価 道の駅は、公共公益事業と収益事業の両面を併せ持つ施設であり、収益事業部分に関しては 採算性を確保する必要があります。 あわせて収益事業として展開する部分(レストラン、販売施設など)の魅力が道の駅全体の集 客力に直結することになるため、民間経営感覚での視点が必要となります。 以上より、本道の駅については、指定管理者により管理運営を行うこととします。 ※PDCA サイクルとは 計画(Plan)を実行(Do)し、評価(Check)して改善(Act)に結びつけ、その結果を次の計画に活かすプロセスのこと Page-28 ■山口県内の道の駅における運営主体の状況 表 運営主体の状況 市町名 道の駅名 手法 下関市 美祢市 萩市 阿東町 山口市 岩国市 周防大島町 市の出資 きくがわ 指定管理者 菊川町まちづくり㈱ 有 蛍街道西ノ市 指定管理者 ㈱豊田ふるさとセンター 有 おふく 指定管理者 美祢観光開発㈱ 有 みとう 市直営 美祢市 - あさひ 指定管理者 ㈱旭開発 有 ハピネスふくえ 指定管理者 ㈲ハピネスふくえ 有 萩市 - ㈱たまがわ 有 うり坊の郷 katamata 市直営 ゆとりパークたまがわ 阿武町 運営主体 指定管理者 阿武町 町直営 阿武町 - 長門峡 町直営 阿東町 - 願成就温泉 指定管理者 ㈱願成就 有 仁保の郷 指定管理者 ㈲仁保の郷 無 きらら あじす 指定管理者 阿知須まち開発㈱ 有 あいお 指定管理者 秋穂産業振興協会 無 ピュアラインにしき 指定管理者 道の駅広東協力会 無 サザンセトとうわ 指定管理者 ㈲サザンセトとうわ 有 4施設(25%) 25% 75% 12施設(75%) 直営 ・ 各市町へのヒヤリング調査による (市町名は H21 年 12 月現在) ・ 調査対象は市町の整備施設ではない「萩往還」 「萩しーまーと」を除く 16 施設 ・ 「阿武町」については、H22 年度は指定管理者 に移行の予定 指定管理者 その他、民間のノウハウを生かした公共施設の整備・運営手法の一つとして、PFI がありま す。PFI とは、公共施設の設計、建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的 能力を活用して行う手法です。 一般に PFI のメリットとしては、民間のノウハウの活用による財政支出の抑制や事業全体の 効率化、事業契約が長期であることによる財政支出の平準化、質の高いサービスの提供などが 期待されます。他方、デメリットとしては、PFI 導入に係る事務的負担増のほか、PFI 事業に 対する民間事業者の需要の有無に関するリスクや参入できる事業者が実績・ノウハウを有する 企業等に限られる可能性があり、必ずしも地域経済・地域産業の活性化につながらない場合も あることなどが想定されます。さらに、本道の駅については、国土交通省との一体型で整備を 進めるとともに、国道 2 号 4 車線化との整合性の観点から、整備スケジュールについては、国 土交通省と調整し、歩調を合わせながら速やかに進めていく必要があります。 以上を踏まえ、本道の駅の整備にあたっては、契約までに相当の期間を要する PFI の導入は 困難と考えられます。 Page-29 5-2. 管理運営計画 (1) 基本方針 道の駅整備の目的やコンセプトを踏まえ、休憩・情報発信・地域振興などの適切な公共公益 機能を保ちつつ、利用者にとって魅力ある施設となるよう、民間感覚を活かした経営努力に努 め、収益性の確保や高いコスト意識に基づく効率的な運営を行います。 あわせて、広く市民から愛され、誇りの持てる道の駅となるよう、市民の参画・協働を促進 します。 以上を踏まえ、道の駅の管理運営方針を以下のとおり設定します。 ■安全で安心して利用できる道の駅を目指します 有機野菜や無農薬・減農薬野菜の提供、栽培記録管理の徹底や出荷農家の情報開示な どにより、食の安全を確保します 利用者が安心して商品を購入できるよう、農産物等のレシピや試食を提供します 利用者が憩い、安らぐ空間を提供するため、定期的な清掃やごみの減量・削減を図り、 清潔感のある施設として維持します ■地域と人が元気になる道の駅を目指します 周南市の第一次産業の起爆剤となるよう、周南市産の農林水産物やその加工品の販売、 食事メニューの提供を基本とします 山口県やJA等との連携により、新規就農者等への営農指導や販売機会の提供を積極 的に行います 園児や小学生が自ら育てた収穫物を販売する「こども・やさいショップ」を展開する など、次代を担う子供たちへの啓蒙活動を行います 「坊っちゃん※」をキーワードとした広報活動を展開するなど、地域資源を活かした 集客力の向上を図ります 多目的施設やイベントスペースを生かして市民の活動・活躍の場を提供します ※夏目漱石の小説のモデルとなった弘中又一氏は湯野地区の出身 ■環境にやさしい道の駅を目指します 地産地消を推進し、フードマイレージの削減等を通じて環境保全に寄与します 食品残さの堆肥化等により、循環型農業を推進します 環境に関する啓発活動を積極的に行います ■進化し続ける道の駅を目指します 温浴施設や親水空間、賑わい空間の継続的な整備を行います 利用者モニターを募集し、利用者の視点に立った商品・サービスの提供や品質管理を 行います 多様化する利用者ニーズに対応するため、電子マネー等の導入を検討します Page-30 (2) 管理運営の仕組み 指定管理者が全体を統括し、公共的部分(非採算部門)であるトイレ、駐車場及び多目的施 設などの維持管理にあたるとともに、農林水産物販売施設、レストランなどの収益事業部分(採 算部門)の各施設についても原則として指定管理者が直接管理運営を行います。(提供する商 品・サービスの内容に応じて、一部にテナント方式を採用することも考えられます。) このことにより、道の駅整備の目的及びコンセプトに沿った統一感のある、かつ安定・継続 的な施設運営が可能となります。また、農林水産物販売部門と飲食部門の連携等による魅力増 進や効率化を図りやすくなると考えられます。 図 想定される維持管理形態 1)利用料金制について 利用料金制の採用により、施設運営で得られる収入を指定管理者の収入とし、経営努力を 促すことで、道の駅としての魅力の維持・向上を図ります。 2)指定管理料について 誰もがいつでも安心して利用できる道路休憩施設としての道の駅の設置目的に鑑み、採算部 門での収益による採算性の確保を基本としつつ、24 時間利用に供することが必要条件となるト イレ・駐車場などの公共的部分(非採算部門)の維持管理については、行政が負担を行う必要 があると考えられます。 このため、先進事例での実績等を踏まえながら、適切な指定管理料を設定します。 なお、採算部門が大幅に黒字となる場合には、予め合意した割合や一定金額を市に納付する ことを条件とすることも検討します。 Page-31 3)商品の提供について 農林水産物及び特産品販売施設では、道の駅実証店舗「とれたて市場ゆーとぴや」での運営 の仕組みを活かして、原則として、生産者が自ら包装や価格設定を行った商品を委託販売によ り提供します。 農産物については、地元産及び隣接地域の野菜等の直売を基本とします。ただし、日常的に 必要な野菜・果物等で気候条件や産地の状況から地元産の供給が困難なものについては、消費 者ニーズを踏まえながら、一定の仕入れの実施により、品揃えの確保を行います。その際には、 安心できる生産者・産地からの仕入れとし、売場を地元産と明確に区分することとします。ま た、販売実績をもとに、地元で生産可能な品目については、計画的な生産者の育成を図り、地 元産で賄えるような体制づくりを行い、農業振興につなげます。 その他、出荷者に対して販売状況を逐次メール配信するシステムを導入することにより、午 後からでも追加出荷がしやすい仕組みとし、品揃えの充実を図ります。 鮮魚の販売については、漁業者や漁業協同組合等と協議しながら、販売形態を計画します。 加工品については、市内の加工グループや事業者との連携等により多品目調達を実現します。 特産品・土産品についても、委託販売方式を基本とします。 4)出荷者協議会について 出荷者による協議会を設置し、指定管理者との連携のもとで、会員研修等を行いながら、安 心・安全な農産物づくり、品目拡大、減農薬・無農薬、有機栽培の促進や、農商工連携による 新商品の開発等に取り組みます。 5)品質管理の取り組みについて 農産物の農薬適正使用に関するチェックをはじめ、農産物を含む全て商品を対象として品質 管理の徹底を図るため、検査体制を確立します。あわせて、道の駅のブランドイメージを確立 するため、品質管理委員会(仮称)を設置し、商品の選定や認証を行うことも考えられます。 また、アイデア募集や消費者モニター制度を導入し、利用者の声の反映に努めます。 利用者 販売 モニター募集 意見・要望 連携 指定管理者 商品 委託手数料 出荷者協議会 売上精算金 意見・要望 出荷者(周南市の生産者を基本) 組織化 出品者の選考、助言、指導 アイデア募集 品質管理委員会 一般市民 図 商品提供の流れ Page-32 (3) 情報発信機能の運用 市内外からいろいろな目的でたくさんの人が集まる道の駅の特性を活かして、タイムリーで 利用価値の高い多種多様な情報を発信します。 1)道路情報 路面状況・気象情報・時間距離・災害情報・通行規制等に関するリアルタイムな情報提供を 計画します。 2)観光情報 湯野温泉や徳山動物園をはじめ、市内および周辺地域の観光施設やイベント情報を発信し、 周南観光の歓迎ゲートとしての役割を果たします。 また、一般的な観光情報の提供だけでなく、中山間地域の情報発信や農村都市交流、産業観 光等の体験型観光ルートの提案を行うなど、地旅観光※の拠点としての役割も果たせるよう計 画します。 ※地旅・・・地域で企画する地域資源を活かした「地域ならでは」の旅 3)行政情報 食育に関する情報や環境、防災に関する啓発をはじめ、道の駅と関連した様々な行政施策の 情報提供や啓発を行います。 4)商品情報 道の駅で販売する農林水産物や特産品・土産品は、それ自体が道の駅や周南市の魅力を発信 する情報媒体となります。 商品・サービスの品質管理の徹底を図るとともに、地元産の素材を使い、「周南市の良さを 伝える」新商品の開発などに努めます。 さらに、インターネット販売を通じて全国発信します。 また、珍しい野菜には生産者のおすすめレシピを添 えたり、生産者の顔写真入り POP を添えて販売するな ど、生産者と消費者の距離を縮めることで、消費者に 安心・安全を提供します。 バーコードを読み取ることにより画面で栽培履歴等 が確認できるトレーサビリティシステムなど、情報技 術を活用したシステムの導入も検討します。 出典:内子フレッシュパークからり HP (http://www.karari.jp) Page-33 (4) ソフト施策 1)市民活動の場・発表の場の提供 市民が輝く舞台として道の駅が利用されるよう、多目的施設や賑わい空間などを市民活動の 場や日頃の活動の成果を発表する場として提供します。 (施策例 : イベント会場としての利用促進) 指定管理者が行う農産物の旬にあわせた季節ごとのイベントのほか、市民や団体が日頃の 活動の成果を発表する自主的なイベントの開催等を促進します。 多くの人が集まる道の駅で何かをやってみたいということが、多様な市民活動の促進につ ながる効果も期待されます。 (施策例 : 市民緑地) 公募による市民や団体などが植え付けから維持管理、収穫等に至るまで作業や役割を分担 し参加できるような市民緑地を計画します。(例 ミニ農園、花壇、自然薯のグリーンカー テンなど) 道の駅敷地外の農地を利用して農家の方と連携して行う体験農園なども想定されます。 2)アンケート、モニター制度の実施、活用 「お客様の声 BOX」の設置やモニター制度の導入により、利用者の声を絶えず把握し、改善 につなげる仕組みを構築します。 また、その取り組みは利用者に見える形で情報提供し、信用と信頼の確保に努めます。 3)「周南・お取り寄せ制度」の実施 道の駅に訪れることのできない遠隔地の消費 者に周南市の農産物等を提供するため、「周 南・お取り寄せ制度」を導入し、利用者には周 南市の特産品や季節の旬な野菜等を定期的(年 2~4 回を想定)に郵送します。 インターネットを活用した PR も有効と考え られます。 4)他の道の駅との連携 他の道の駅との連携により、商品の相互販売 やスタンプラリーなどの共同イベント企画など を行い、地域間交流の促進を図ります。 【類似事例】特別村民制度(岡山県新庄村) 出典:新庄村 HP(http://www.shinjoson.net/) Page-34