本取組みの導入コンセプト 2 Individual and Organizational Activation
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本取組みの導入コンセプト 2 Individual and Organizational Activation
Individual and Organizational Activation in a Value-creation Society 大村俊之 * 櫻井三重子 * 清水亜寿里 * 池上雅雄 * 丸井正夫 * 山口正毅 * Toshiyuki Ohmura Mieko Sakurai Azusa Shimizu Masao Ikegami Sadao Marui Masaki Yamaguchi * ニュービジネス推進統括部 Active-V 推進室 PFU グループでは企業行動指針(PFU Way)の精神の元で,社員一人ひとりが主役となって活躍できる 組織風土づくりを目指して,さまざまな活動を展開している.本論文では,価値創造社会における人と組織 活性化の取組みについて,その活動と試みを紹介する. The PFU Group is promoting various activities for creating an organizational climate in which individual workers can be actively involved under the corporate principles (PFU Way). This paper introduces PFU's activities and challenges as to how to activate individuals and energize organizations in a value-creation society. 1 まえがき 頼は,それぞれの分野で No.1 を目指す. これからの価値創造社会では,知識を活用して価値 を創造できる人財が重要となる.企業の成長,社会貢献, 社員の成長と幸福な生活も人財 によって実現される. 注1) この様な中,PFU は企業行動指針(PFU Way)の 精神の元, 「技術と信頼」をスローガンに,三つのマネ ジメント(図−1参照)を軸に成長進化を推進している. (2)製品のマネジメント 優れた商品(P r o d u c t )と,確かなものづくり (Factory)を通じてお客様の利便性(Utility)に寄与 し,お客様の進化を支える. (3)人と組織のマネジメント 社員一人ひとりが主役になり,自律成長して活躍で きる風土をつくる. (1)技術のマネジメント PFU の製品,ソリューション,サービスの技術と信 強固な技術と信頼に基づいた価値創造企業となって いくためには, 「技術のマネジメント」 , 「製品のマネジ メント」を支える「人と組織のマネジメント」が最も重 製品の マネジメント 要であり,人と組織活性化活動(以降,本取組み)に取 り組んでいる. 人と組織の マネジメント 技術の マネジメント 本論文では,本取組みとして,価値創造社会で重要 となる人財の「育成」と現場で実践している「取組み」 や,それを伝える「場」などの試みと成果について述べ PFU Way ●図―1 三つのマネジメント● (Fig.1-Three management categories) 注1)人財:企業における人は財産であるとの考えが広く浸透して きており,本論文では「人財」と表記する. 48 る. 2 本取組みの導入コンセプト 社員一人ひとりがやりがいを感じて,自律的かつ継 続的に改革活動に取り組む風土づくりが重要となる. PFU Tech. Rev.,21, 1,pp.48-55(05,2010) 価値創造社会における人と組織活性化の取組み お客様とともに進化する PFU こんなこと やってみたい! 自律的に成長進化 する人財と組織 Active-V 活動 現場力アップ 見える化 事業創造 Rising-V 活動 技術力の 強化 こんな製品が 欲しい! 事業化 業務効率化 技術開発 知創造 PFU 未来塾 推進リーダー育成 アイデア・スナップ 「技術者の自主性を 重んじる企業風土」 知空間 活動 人間力の 強化 業務改善 「自らを変える力, 改革を促す力を育てる」 製品プロト開発・業務改善トライ ●図―3 Rising-V 活動● (Fig.3-Rising-V activity) ●図―2 Active-V 活動と PFU 未来塾● (Fig.2-Active-V activity and PFU Mirai-Juku) 催する成果報告会で発表している(図−3参照) . (1)活動の特長 このため,PFU では社員のモチベーション向上や新 技術者なら誰でも持っている個人のアイデアを具現 規事業創出につながる取組みとして,事業創造の 化することが出来,自分の好きなテーマに挑戦すること 「Rising-V 活動」 ,ナレッジの蓄積と活用のための「知 を通して,技術や能力をステップアップすることが可能 空間」 ,現場力強化の「見える化」 ,業務改善活性化のた である. めの「アイデアスナップ」 ,人間力強化の「PFU 未来 組織や業務を横断した活動が増加しており,PFU の 塾」など「社員が主役となって参加できる活動」を展開 技術を融合したアイデア実現が広がってきている.また, している.これらは Active-V(社員を元気にする)活 女性中心の活動も増えてきており,新しい視点でのアイ 動と総称して,現在全社レベルの取組みとして拡大と定 デア実現が活発に展開されている. 着化を進めている(図−2参照) . (2)製品化事例 アイデアを具現化することが出来ても,製品化する 3 Active-V 活動 自律的に成長進化する人財と組織を目指した,現場 の意識改革活動であり,具体的には,以下の四つの活動 を行っている. ためには様々な要素が関係してくる.製品化につながっ た中から次にいくつか紹介する. 1)デジタルバインダ 楽2ライブラリ PC の画面で紙をパラパラとめくるように見たいと のアイデアから生まれた.この素朴なアイデアは,現 場の書記から技術者に相談され,新たな市場創出も目 3.1 Rising-V 活動 指して Rising-V 活動になった.パラパラとめくる操 社員の自由な発想や自発的で前向きなテーマへの取 作性を自然な感覚にするために,何度も試行錯誤を繰 組みを会社が積極的に支援し推進する活動である.個人 り返した.そして,現場の書記も納得した,実際の紙 またはグループで組織を越えて自由に編成して活動する をめくるようなとてもわかり易い GUI を実現するこ ことができる. とができた(図−4参照) . Rising-V 活動は社員の優れた企画提案に対して会社 その後,製品化に向けた開発に移行し,2003 年 が資金を出して事業創造実現を支援する制度であり,失 参1) ,参2) に「楽2ライブラリ」 として国内で販売開始, 敗を恐れず前向きにチャレンジする人財を育成すること 参3) ,参4) 2006 年より「Rack2-Filer」 の名称で米国販 を目的に,社員のやりがい意識の向上や新たな事業や技 売を開始した.2008 年より順次対応言語を拡大し, 術の創出を目指している. 現在は 11 言語でグローバルに展開している.海外出 また,事務局にて適宜 Rising-V 活動の説明や進め 方についてのコンサルティングを実施し,活動を支援し ている.そして活動成果が顕著なグループは定期的に開 PFU Tech. Rev.,21, 1,(05,2010) 荷累計は 2010 年 2 月で 2 万本の実績である. 2)輪島塗 HHKB IT 技術と伝統工芸の融合を図り,新たな価値創造 49 価値創造社会における人と組織活性化の取組み ●図―5 Happy Hacking Keyboard Professional HG JAPAN ● (Fig.5-Happy Hacking Keyboard Professional HG JAPAN) ※ Microsoft Corporation のガイドラインに従って画面写真を使用し ている. ●図―4 楽2ライブラリでのページめくりの様子● (Fig.4-How a page is turned in Raku2 library) に挑戦したいとのアイデアから生まれた.Happy Hacking Keyboard(HHKB)シリーズは,理想の キーボードを追求した高性能なコンパクトキーボード ●図―6 ScanSnap S300 ● (Fig.6-ScanSnap S300) である.中でも HHKB Professional2 は,静電容 量無接点方式採用の優れたキータッチを誇るプロフェ ッショナル仕様である. このモデルをベースに剛性の高いアルミ削り出しフ レームを採用し,キートップには輪島塗の技法を用い USB ケーブルのみで接続して動作する試作機を見た, 海外担当営業の強い要望により,製品化に拍車がかか った. た漆塗を施して,極上の質感と手触りを実現した.漆 製品化に向けた本格開発では,USB バスパワー駆 には抗菌性,吸湿性,耐久性の優れた特長もある.キ 動時のさらなる性能向上や微小な色ずれ低減など,手 ーボード 1 台に 60 あるキーのそれぞれに計 10 回 軽さと品質の両立にこだわった. の塗りを施して,毎日手に触れるキートップにとって そして,モバイル用途として 2007 年 10 月に初 究極のコーティングとなり,プロフェッショナルに相 参6) 代の ScanSnap S300(図−6参照) を製品化し 応しい道具を実現した. た.このモバイル型の製品化により,オフィスだけで HHKB シリーズ発売 10 周年を記念して,2007 はなく,個人ユーザーにも市場を拡大する足がかりと 年に完全オーダーメイドとして「H H K B なった.現在は,より使いやすさと性能を向上させた, 参5) Professional HG JAPAN」 を限定販売した モバイル型 2 代目の ScanSnap S1300 参7)を販売 (図−5参照) . している. 今回は特別に,石川県輪島市の工房の協力を得て実 現することが可能となった.この石川県の伝統技術 (文化)と IT 技術製品との融合による新たな価値創 造に,各方面から反響が寄せられた. 同時に企画した輪島塗 ScanSnap(非売品)も, 3.2 知空間 個人や組織で閉じて活用している有用な知識,知恵 を集約して蓄積共有し,組織を越えた有効活用ができる よう支援するナレッジマネジメントシステムである 参8). IT 技術と伝統技術の融合を超えた工芸品として,国 その目的は蓄積された知識,知恵を他の人が参照するこ 内外の展示会で注目を集めている. とにより新たな気づきを得て更なる知の創造へつながる 3)モバイル型 ScanSnap ようシステムを通して支援できることにある. 手軽に持ち運べるスキャナが欲しいとのアイデアか 例えば,知空間の「プロジェクト」機能により,メ ら生まれた.どこでも使えるようにコンパクトボディ ンバー同士の記事投稿や返信が効率的に蓄積され,組織 と軽量化を追及した.Rising-V 活動で,AC アダプ や拠点を超えたバーチャルなコミュニケーション空間の ター不要の USB バスパワー駆動に挑戦し,消費電力 をぎりぎりまで抑えて稼動させることに成功した. 50 「場」が実現されている. 本機能は,組織や拠点を超えたメンバーで構成され PFU Tech. Rev.,21, 1,(05,2010) 価値創造社会における人と組織活性化の取組み 表出化 気づいたよ! 暗黙知 ●ライブラリ ●アイデアスナップ ●Rising-V 活動 これ役立つよ! 主観的/個人的 非体系的/言語化不可 情緒的 体/体験で理解 伝達/共有は難 共 同 化 形式知 知識創造 スパイラル 客観的/社会(組織)的 体系的/言語化可 論理的 脳で理解 伝達/共有は容易 連 結 化 (例) ドキュメント データベース 本 (例) 技能 思考(信念) 勘 感動! 刺激! 内面化 教えて! 仲間募集! 感動! メルマガ 仲間で議論! ●プロジェクト ●Q&A 課題提起! 新技術/ビジネス動向 アイデアスナップ Rising-V 活動 など 感謝! ●図―7 知識創造スパイラルの実現● (Fig.7-Realizing knowledge creation spirals) るケースが多い Rising-V 活動で特に有効であり,参 話し合って見える化することで,全員の思いを共有する. 加有志メンバーの募集をはじめ,社員間の自由な技術情 これによって,全員が目標や課題を自分の事として捉え, 報交換やコミュニケーション活性化に役立っている. 組織の一体感を醸成し未来を作りだしてゆく. また, 「Q & A」機能を使ってメンバーの意見を求め, (2)朝会(コミュニケーション活性化) 解決へのスピードアップを図ることや, 「ライブラリ」 コミュニケーションを活性化させる基本的な場とし 機能で役立つ情報や個人のノウハウを広めることも行わ て,朝会(あさかい)がある.朝会ではメンバー全員が, れている.さらに,知空間事務局がメールマガジンを発 「昨日やったこと,今日やること,問題点」を,毎朝 行し,新たな知の創造を引き起こす試みも行っている. 15 分程度で報告して,情報共有を図っている(図−9 以上の支援により,知識創造スパイラル 参9)の実現を 目指している(図−7参照) . 参照) . (3)ふりかえり会(継続的に改善しつづける風土づく り) 3.3 見える化 いろいろな活動を改善しながら実施し続けるための 現場でのコミュニケーションを活性化させる有効な 手段として見える化がある . 参10) 場として,ふりかえり会を重要視している. ふりかえり会では,KPT(Keep Problem Try の PFU では,貼りもの等を使っていろいろな事を見え 略,PFU では「けぷと」と呼ぶ)というツールを使っ るようにして,自分達がありたい姿に近づくための活動 て,現在うまくいっていること,問題点,解決案や新し 全般を見える化と定義して,四つの取り組みを推奨して いアイデアなどを見える化して,次の活動の改善につな いる. げている(図−10参照) .付箋紙などを使いながら良い (1)四画面思考法(目的,目標の共有) 企業ビジョンや目標を共有するための手法であ る . 参11) 図−8に示すフレームワークを使用し, 「現状の姿」 「ありたい姿」 「なりたい姿」 「実践する姿」を,全員で PFU Tech. Rev.,21, 1,(05,2010) ことや,うまくいっていることから話し合いを進めるこ とがポイントである. (4)オフサイトミーティング(気楽に本音で語る) 職場から離れ,環境を変え開放的な気分で,気楽に 本音で語る場として,オフサイトミーティングを実施し 51 価値創造社会における人と組織活性化の取組み 4 画面思考の基本 名 前 テーマ あなたが一番大切な改革テーマを設定 組織名と作成者名を ありたい姿 キャッチフレーズ 組織や社会に浸透するキャッチフレーズで宣言する 一言でありたい姿を要約 ステークホルダーを三つあげ,喜びづくりで貢献 (世のため人のため) 顧客価値 ①お客さまのために ②仲間のために ③社会のために 夢(価値づくり)を 実現する人間広場を 社会価値 仲間価値 一言でなりたい姿を要約 なりたい姿 期限付き目標(自分のため) :何時までに何処まで,勇気を持って 目標実現の 3 戦略 ① ② ③ オンリーワン・ナンバーワン技術 喜びづくり S(強み) W(弱み) 「ひとつの夢を」 「言葉を真実に」 改革実践のリズム・レスポンス: ありたい・なりたい気持ちを日々実践する ・毎日やる事 自分の実践リズムの ・毎週やる事 見える化でレスポンスを ・毎月やる事 向上し潜在力を引き出す ・毎期やる事 (習慣化) ・毎年やる事 ・3 年ごとにやる事 ・10 年ごとにやる事 SWOT 分析 O(機会) T(脅威) 潜在力が引き出されてない,SWOTで 潜在力が引き出されてない,SWOT 潜在力が引き出されてない, SWOTで 自分の態度を決める 現状の姿 一言で現状の姿を要約 やったこと 一言で実践する姿を要約 わかったこと 実践する姿 やること 自分が変わり,自分の変化を伝える 四画面思考研究所 近藤修司 ●図―8 四画面思考法● (Fig.8-Method of thinking in a 4-pane view) うまくいったら 定着させる 新しい アイデア うまくいかない 解決案を考える 問題 ●図―9 朝会の様子● (Fig.9-Morning meeting scene) ●図―10 けぷとフレームワーク● (Fig.10-KPT framework) ている.コミュニケーション構築に多くの気づきが得ら れる有効な「場」となっている. ている活動である.優秀な提案は定期的な審査によって 表彰し,社員のやりがい感のアップにもつなげている. 3.4 アイデアスナップ 創意工夫による改善意識や創造力を高めるには,社 また,他部門でも活用可能な提案は,定期的に事例ニュ ースとして紹介して,活動の横展開を推進している. 員一人ひとりの業務上発生する現状の問題点を見つめ直 し,それを自ら解決するためのアイデアを創出し,提案 し公開できる「場」が重要となる.アイデアスナップは 社員自らの業務改善の実践を奨励すると共に,Web シ ステムにて提案内容を簡単に登録,公開でき,社員の業 務活性化,モチベーションアップが出来るように支援し 52 4 PFU 未来塾 現場の改革実践リーダーの育成と組織横断の情報交 流の「場」として,2006 年から開催している. 石川県では北陸先端科学技術大学院大学(JAIST) PFU Tech. Rev.,21, 1,(05,2010) 価値創造社会における人と組織活性化の取組み の近藤客員教授 参12)が中心となって,いしかわ技術経営 (MOT)スクール(以降,石川 MOT スクール) が 注2) を良くすることの大切さや,各自や組織のビジョンや目 標の共有の重要性を理解する.さらに,PFU 未来塾で 開催されており,PFU も 2004 年から参加している. 他部署のメンバーとの交流を通した仲間が出来ることも 石川 MOT スクールは, 「人間力と技術力の二刀流で日 大きな成果となっている. 本を元気にする」をコンセプトに開催されている. PFU 未来塾は,リーダークラスを対象に,この石川 MOT スクールで学んだことを全社に広め,人間力を強 4.3 現場での展開 各現場では,PFU 未来塾の卒業生が推進役となり, 化することで,自律的に改革実践活動を進める風土作り Active-V 活動等を活用した改革活動が始まってきてい を全社へ展開したいという思いから開講した.ここで学 る.コミュニケーションを活性化して,組織のビジョン んだリーダーが職場の推進リーダーとなって,現場での や目標,課題を全員で共有して,目標達成,課題解決に 改革を推進する. 向け,自分達が主体となって全員で取り組み出している. 開発部門中心にスタートして,現在は全社全部門が さらに,現場での展開を一層浸透させるためと, 参加するまでに広がってきている.2009 年 4 期生で, PFU 未来塾生の新しい気づきを得るため,次のような 100 名を超える未来塾卒業生が現場で活躍している. 取組みも実施している. 1)未来塾卒業生の社内ネットワークと組織化の強化 4.1 カリキュラムの特徴 PFU 未来塾は,半年間(合計 6 回)のグループワ 未来塾シンジケートを PFU 未来塾の卒業生と MOT 卒業生で構成し,現場での活動課題や情報交換 ークを中心としたセミナーである(図−11参照) .主な の社内ネットワークの場として活動している. カリキュラムを以下に示す. 2)見える化交流会等の見える化の進化支援 各現場の見える化活動を紹介したり,相互にアドバ 1)人間力を学ぶ(近藤客員教授セミナー) 2)組織の課題抽出(PFU を分析) イスや相談を行う内部交流会を実施している. 3)各種手法学習(ファシリテーション,他) 3)外部交流会 石川 MOT スクールの活動を通じて,近藤客員教 4.2 受講者の気づき 授を介しさまざまな社外交流も実施している.実際社 受講者は,グループ討議を通して現状の課題を認識 員が社外の他業種の人と話しをする機会は少なく,互 し,この課題を自分達が中心となって解決していく必要 いの活動が良い刺激となり改革推進の輪が地域にも繋 性に気づくことができる.そして,コミュニケーション がり,良い気づきが得られている. このように組織が変わるための自律型改革人財を増 やしていく事で,強く変化に耐えうる企業風土づくりを 進め,組織が継続して成長するための基盤整備を目指し ている. PFU 未来塾は,仕事の中で学び合いさまざまな個性 や経験の相互作用の融合によって,企業が進化するため の新たな知恵が創造される「場」である. そして,未来塾卒業生は自分の成長と自己実現のた めの「自分で自分を育てる改革」を目指し,自ら変わろ うと成長する「人間力」を限りなく引き出す組織をつく ●図― 11 PFU 未来塾の様子● (Fig.11-PFU Mirai-Juku scene) っていく役割を担っている. 5 注2)いしかわ技術経営(MOT)スクール:地域企業の研究開発や 技術部門のマネージャーを対象に,技術経営(MOT)のエッセ ンスを習得し,新たな産業や事業を創出できる人材を短期間で 育成することを目的としたスクール.石川県 IT 総合人材育成 センターが JAIST と連携して 2004 年より開講している. PFU Tech. Rev.,21, 1,(05,2010) 継続的進化の特長 現場改革活動(Active-V 活動)と人間力向上への取 組み(PFU 未来塾)を相互に密接に連携させることに より,PFU グループ全体への活動拡大と活動連鎖によ 53 価値創造社会における人と組織活性化の取組み 人間力向上への取組 (PFU 未来塾) 知創造企業の実現 四画面 見える化 目的・目標の共有 自分ごとの実践 朝会 成長進化の PDCA サイクル 行動 気づき・考える オフサイト 異常・リスク が見える 心の通う コミュニケーション ふりかえり 自ら進化し続ける 強い人と組織 現場改革活動 (Active-V 活動) ●図―12 PDCA のサイクル● (Fig.12-PDCA cycle) る相乗効果につなげているのが大きな特長である. 成長進化を支える 三つのマネジメント確立 そして,PDCA のサイクル(図−12参照)を常に まわして,組織が継続的に成長進化する基盤づくりを目 指している. 現在は,個々の活動はもちろん,活動相互の連携事 例についても Web 上で数多く事例紹介することで,自 製品の マネジメント 人と組織の マネジメント 技術の マネジメント PFU Way 事業する組織 →社会貢献 最適バランス 学習改革する組織 →自己実現,達成感 律的に改革実践を行える創造力豊かな人財ベースの知創 造企業実現を目指している. 6 むすび これまで述べてきた取組みによって, 「社員が活き活 きと自律的に行動し自ら成長進化する場づくり」を実践 し, 「価値創造社会における人と組織の活性化」を推進 してきた. 今後は,創業 50 周年となる 2010 年を全社活動化 元年とし,参加人員も拡大させ,更なる活性化を図る. 価値創造社会の中で,当社が成長し続け,お客様と 共に進化し続けるためには,図−13で示すように,現 在の利益を生み出すための活動(事業する組織)と共に, 成長し続けるための知識創造(学習)を行いながら組織 を時代に応じて変えていくための活動(学習改革する組 織)が必要となる. これらをうまくバランスを取って進めていくことで, 社員のやりがいや達成感を高めると共に,自律人財の育 成と組織の成長進化を推進していきたい. 最後に,PFU 未来塾や Active-V 活動等でご指導い ただいた近藤客員教授に深く感謝するとともに,心から 御礼申し上げたい. 54 ●図―13 自律的に成長進化する個人と組織● (Fig.13-Individuals and organizations growing and evolving autonomously) 参考文献 参1)井波,柄田,瀬川:デジタルバインダ楽 2 ライブラリ, PFU Tech. Rev.,15, 1.pp.25-32(2004). 参2)ドキュメントファイリングソフトウェア 楽2ライブラリ シリーズ紹介ホームページ http://www.pfu.fujitsu.com/raku2library/ 参3)藤原: Rack2-Filer, PFU Tech. Rev., 17, 2.p.74 (2006) . 参4)柄田,ほか:デジタルバインダ楽2ライブラリ パーソナ ル V5.0 / Rack2-Filer V5.0,PFU Tech. Rev.,20, 1, pp.14-19(2009) . 参5)現 在 は 販 売 終 了 し て い る . 横 山 : Happy Hacking Keyboard professional HG JAPAN, PFU Tech. Rev.,18, 1, p.70(2007). Happy Hacking Keyboard シリーズ紹介ホームページ http://www.pfu.fujitsu.com/hhkeyboard/ 参6)山 下 , ほ か : コ ン パ ク ト 両 面 カ ラ ー ス キ ャ ナ ScanSnap S300,PFU Tech. Rev., 18, 2, pp.18-24 (2007). 参7)山下,北川:コンパクト両面カラースキャナ ScanSnap . S1300,PFU Tech. Rev.,21, 1, pp.7-12(2010) 参8)山口,吉田:ナレッジマネジメントの導入と実践−開発 効率化とスピードアップへ向けた PFU の取り組み−, PFU Tech. Rev.,15, 1,pp.70-76(2004). 参9)野中郁次郎,竹内弘高,梅本勝博:知識創造企業,東洋 経済新報社,東京(1996) . PFU Tech. Rev.,21, 1,(05,2010) 価値創造社会における人と組織活性化の取組み 参10)藤 田 ほ か : ソ フ ト ウ ェ ア 開 発 に お け る 見 え る 化 活 動 , PFU Tech. Rev.,17, 2,pp.67-73(2006). 参11)近藤修司&成功の宣言文コミュニティ: 4 画面思考の基 本,田中昭文堂印刷株式会社(販売委託業者),石川県 (2009). 参12)四画面思考研究所 所長 近藤修司 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 客員教授 知識科学を基盤に人間力を向上する「成功の宣言文」 http://www.success-poem.com/ PFU Tech. Rev.,21, 1,(05,2010) 55