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添付資料 - TOKYO TECH OCW
8. コンクリートの施工 • 一般に(工場製品を除いて)、コンクリートの施 工(construction)は現場で行われる。また、 自動化している部分もあるが、人手に頼る部分 が非常に多い。さらに、天候の影響も大きく受け る。このため、現場での監督・管理が極めて重要 である。話はややそれるが、リストラ、熟練労働 者の不足など、今後さらに現場での施工は難しく なることが予想される。したがって、コンクリート 構造物の性能を所要のものにするために、コン クリートの施工を理解することが今後ますます重 要となる。 • 本章では、運搬(Transportation)、打 込み(打設)(Placing)、締固め (Compaction)、打継ぎ(joint or successive layers)、養生(curing) について主として現場打ちコンクリートを対 象として述べる。特に不法加水およびコー ルドジョイントについて説明を加えた。コン クリート製品については、現場打ちコンク リートと異なった特徴的な事項を述べる。 8.1 運搬 8.1.1 意義 • 運搬とは、コンクリートプラントで製造されたコン クリートを打込み場所まで移動させることをいう。 • ① 運搬に要求される事項 • 運搬に要する時間は、少ないほどよい。また、 時間は正確であるとよい。さらに、運搬中の品質 (性能)変化は少ないほどよい。いずれも、100% 達成を目指して行うことが求められる。 • 運搬中の主な品質(性能)変化は、材料分離抵 抗性およびワーカビリティーの低下である。これ らの変化を全くなくすことは困難である。また、こ れらの変化には、運搬方法、運搬時間、温度が 影響する。 ② 運搬の種類 • レディミクストコンクリートの運搬は、プラントから 現場の荷卸地点までの運搬と、現場内の運搬に 大別できる。前者は、アジテーター車(いわゆる 生コン車: agitating truck or agitator truck)やダンプトラック(dump ruck)に積載さ れて運搬される。 後者は、コンクリートポンプ(concrete pump)、 コンクリートバケット(concrete bucket)ある いは手押し車などにより運搬される。 • コンクリートの運搬方法の一覧を表8.1に示す。 また、コンクリート運搬方法の概念図を図8.1に 示す。 表8.1 コンクリートの運搬方法 類 してプ トから までの して現 運搬 運搬機械 運搬方向 トラックアジテータ 運搬時間 運搬距離 水 平 ∼90 分* ∼30km コンクリートポンプ 水 垂 平 直 コンクリートバケット 水 垂 垂 平 直 直 ダンプトラック コンクリートタワー ベルトコンベヤ シ ュ ー ト 手 押 し 車 水 平 やや勾配 垂 直 斜 め 水 平 運搬量 (m3) 動 力 適用範囲 備考 一般の長距離運搬に適す る。 舗装用コンクリートや RCD 用コンクリートに 使用。 1.0~4.5/台 内部機関 遠距離運搬 ~500m ~120m 20~70/h 内部機関 電 動 機 一般・長距 離・高所 10~50m 15~20/h クレーン 一般・高強度 50~120m 15~25/h 電 動 機 高所運搬 5~100m 5~20/h 電 動 硬練り用 5~20m 10~50/h 重 力 一 0~60m 0.05~0.11 台 人 力 小規模工事 般 硬練りから軟練りコンク リートまで広く使われて いる。 分離が少なく場内運搬に 適する。 手押し車、ベルトコンベ ヤ、ポンプとの組合せ。 分離傾向にあり、軟練り には適さない。 分離に注意する必要があ る。 振動防止が必要。 図8.1 コンクリート運搬方法の概 念図 続 なお、JIS A 5308(レディミクストコンクリート (Ready mixed concrete))では、前者の荷卸 地点までの運搬の責任はレディミクストコンクリート 工場に、荷卸地点以降は施工者の責任となると規 定してある。この規定は、極めて重要なものである が、実際には施工者が、レディミクストコンクリート 工場側に責任を押し付けて問題となることも多い。 • 現場打ちコンクリートおよび製品用コンクリートで は、主として現場内の運搬を考えればよい。しかし ながらダムコンクリートにおいては、ダンプトラック によって打込み地点まで運搬することもある。 • 8.1.2 運搬時間 • 運搬時間は、短いほど、また、正確なほど よい。 • 特に、練混ぜたコンクリートのコンシステ ンシー(スランプなど)や空気量は、運搬時 間とともに減少するので、示方書やJIS A 5308では、表8.2に示すように運搬時間 の限度が定めてある。 表8.2 輸送・運搬時間の限度 区分 JIS A 5308 コンクリート標準示方書 JASS 5** 限定 練混ぜから 荷卸しまで 練混ぜから打ち込み終了まで 同左 限度 1.5 時間* 外気温が 25℃を 超えるとき 1.5 時間 外気温が 25℃以上 90 分 外気温が 20℃以 下のとき 2.0 時間 外気温が 25℃未満 120 分 * 購入者と協議のうえ運搬時間の限度を変更(短縮または延長)することがで きるとしている。一般に暑い季節にはその限度を短くするのがよい。 JISではダンプトラックでコンクリートを運搬する場合の運搬時間の限度を60 分以内としている ** JASS 5では1997年の改訂により「高耐久性コンクリート」が削除された。 流動化コンクリート、高流動コンクリート、高強度コンクリートの運搬について は、各々の項を参照すること 続 概念的には、運搬時間とは、工学的には「製造 から打込みまで」であり、コンクリート示方書などで は「練混ぜ開始から打込み終了までの時間」と規 定している。しかしながら、JIS A 5308では、コ ンクリートの荷卸までの時間と規定してあるので注 意を要する。これは、レディミクストコンクリートを製 品と考え、購入した時点で責任が製造者から購入 者へ移ることを重視しているためである。 • なお、前にも述べたがレディミクストコンクリート 工場選定にあたっては、温度、交通事情などを考 慮して、運搬時間の限度が無理なく守れる工場を 選定すべきである。 • 8.1.3 コンクリートプラントから荷卸 地点までの運搬 これは、一般には、レディミクストコンクリートが 対象となる。繰り返すが、これにはコンシステン シー(スランプなど)、空気量の低下が少なく、材 料分離も極力少ないことが要求される。我が国で は、トラックアジテーター車(通常、生コン車)およ びダンプトラックによる運搬が一般的である。 • 生コン車は、かくはん装置を装備しており、JIS A5308(レディミクストコンクリート)でその材料分 離抵抗性に関して、「その積荷のおよそ1/4と3/4 のところから個々に試料を採取してスランプ試験 を行い、両者のスランプ差が3cm以内になるも のでなければならない。」と規定してある。 • 続 ダンプトラックは、舗装用コンクリートなどの硬 練りコンクリートを運搬する場合に用いられる。こ れらのコンクリートは材料分離の可能性が低く、 かくはん装置が特に必要ないからである。 • 特に、レディミクストコンクリートの場合、荷卸地 点でのスランプ、空気量が規定の値に合格しない 場合には、購入者(通常は、施工者が多い)は受 け取ってはならない。 • いうまでもないが、この段階で水を加えてスラン プを規定の値に合わせる行為は決して行っては ならない。不法加水という違法行為である。 • 8.1.4 荷卸地点から打込み場所ま での運搬(現場内運搬ともいう) • 現場内運搬には、コンクリートポンプ、コン クリートバケット、コンクリートプレーサ、縦 シュート、斜めシュート、ベルトコンベア、手 押し車などが用いられる。わが国では、一 般的には、コンクリートポンプが使用される。 (1)コンクリートポンプ • ① 定義 • 定義は、「フレッシュコンクリートを機械的 に押し出し、輸送管を通して連続的に運搬 する装置」である。大量のコンクリートを打 込み現場内の狭い場所にでも容易に搬送 できるので、現場内でのコンクリートの一 般的な運搬手段となっている。 ② 種類 • コンクリートポンプは、その構造から、ピストン式 とスクイズ式に分類される(図8.2)。また、移動 形式から、定置式と車両搭載式に分類される。 後者は、車両も含めてコンクリートポンプ車と呼 ばれるもので、現場で配管するものとブーム付き のものとがある。ブーム付きコンクリートポンプ車 は、現場での配管作業が不要なので使用例が増 加している。ブームの長さは30m程度のものま である。 • 定置式は、1箇所で長期的に使用する場合な どに使用される。 図8.2 コンクリートポンプの構 造 ③ 性能 • コンクリートポンプに要求される性能として、 どれだけのコンクリートをどこまで圧送でき るかが重要である。これらは圧送するコン クリートの品質(性能)、圧送管の径、圧送 経路によって相当に異なる。一般的には、 最大の吐出量が60m3/時、最大の水平 圧送距離が300m程度である。 • なお、この300mという値は、管が全く水 平の場合であって、表8.3に示すように、 上向き水平管1mが水平方向の3∼5m、 ベント(曲がり)管では水平方向6mに相当 する。 ④ 圧送によるコンクリートの品質 (性能)変化 圧送により、スランプ(コンシステンシー)、空気 量、温度などが変化するが、この中でもスランプ 低下が最も問題となる。 • 圧送によりスランプ低下が生じた場合には、打 込み作業性が低下するだけでなく、打込み不良 箇所やコールドジョイントを生じる。 • 特に、軽量骨材コンクリートでは、前もって軽量 骨材に吸水させておくなどの対策を行わないと、 圧送中に軽量骨材が吸水し、周囲のモルタルの 水セメント比が急激に低下しスランプも低下する ため、コンクリートの閉塞が起こる可能性が高い。 前もって、骨材内部まで吸水させておくなどの対 策が必要である 。 • ④不法加水 • コンクリートポンプで圧送中にコンシステンシー の低下などで、管が閉塞することがある。一旦、 閉塞が起きると、管を取り外し内部を清掃する作 業などを行う必要が生じ、時間と費用を失うこと となる。これを防ぐ最も安易な方法が、圧送直前 のコンクリートへ水を加えることである(この行為 は違法であるので「不法加水」という)。これを行 うと、違法ということのほかに、材料分離を生ず る、乾燥収縮が多くなる、など耐久性などの性能 が大幅に低下する。このため、厳に慎むべきで ある。 • <ノート> • 不法加水などの違法行為を行う際、2つ のパターンがある。1つは、違法と知ってい ながら行ってしまう場合と、もう1つは、知ら ずに行ってしまう場合である。私見では、 後者が増加しているような気がしてならな い。前者の場合より、憂いの多い事態であ る。 (2) コンクリートバケット • ① 定義 • 定義は、「フレッシュコンクリートを運搬す るために、下端部に開閉口のついたおけ (桶)状の容器」である。バケットによる運搬 は、フレッシュコンクリートを適切な構造の バケットに収納し、クレーンや車両などによ り打込み場所まで運搬するもので、コンク リートに振動を与えることが少ない。コンシ ステンシーの変化、材料分離などの悪影響 の少ない運搬方法である。 続 • ② 適用 • ダム用コンクリートなどの硬練りコンク リートに用いられることが多い。1つには、 硬練りコンクリートはコンクリートポンプで は圧送しにくいためでもある。また、ダムで はクレーンを用いるのが一般的であるとい う理由もある。 8.2 打込み・締固め 8.2.1 意義 均一に練混ぜられ、運搬されたコンクリートを、 材料分離させることなく、ジャンカ (honeycomb)(注)(図8.3)やコールドジョイン ト(cold-joint)(図8.4)を生じさせないように、 鉄筋の周囲や型枠のすみずみまで均一かつ一 体に充填させる作業である。 • 硬化後のコンクリート部材(構造物)の耐荷力、 水密性、耐久性などの性能は、この作業の良否 によって左右される。 • これらの作業の難易、手順は、構造物の寸法・ 形状、コンクリートの種類、気象を含む施工条件 で異なるので、十分な作業準備を行う必要があ る。 • 図8.3 ジャンカ(モルタルにより補 修) 図8.4 コールドジョイント 8.2.2 打込み(placing) a. 打込みのための計画 • 打込み前に、コンクリートの打込み区画、打込み順 序を計画する必要である。 • (1) 打込み区間 • 打込み区画とは、型枠で囲ってその内部にコンク リートを打込む独立した区画のことである。この区画 は、構造物の形状・工期あるいは設計上から決まる ことも多いが、構造物が大規模であるときには、コン クリートの供給能力から決まることも多い。 • 特に、後者の場合には1日の打込み能力から打込 み区間を設定し、後日、新コンクリートをキチンと打 継ぐのがよい。この場合、打込み区間が広すぎると、 一回の作業時間(1日など)でその区間のコンクリート 打込みを終了することが出来ずに、計画にない打継 目が発生しいわゆるコールドジョイントとなる可能性 が高い。また、狭すぎると、一回の打込み作業時間 が短く、コンクリートが十分固まらないままに型枠を 外すことも出来ないので、時間が無駄となる。 続 • 1日の打込み能力には、次のデータを参 考とできる。 • ①生コンクリートの供給能力:60∼ 90m3/時、400∼700m3/日 • ②コンクリートポンプ圧送能力:20∼ 50m3/時、100∼400m3/日 • ③締固めが十分できる打込み速度(棒状 振動機1台あたり):10∼15m3/時、60 ∼90m3/日 (2) 打込み順序 打込み順序に関しては、前節で定めた打込み 区間が複数の場合、それらの区間をどのような 順序で打込んでいくかということと、1つの打込み 区間の内部でどのように打込んでいくかの2つの 考える順序がある。 • 前者の複数区間の打込み順序にかんしては、 例えばマスコンクリート(ダムの場合など)では、 水和熱(heat of hydration)をできるだけ外 部に放出する(できるだけコンクリートの表面積を 大きくするなど)、あるいは(後者)、区間相互の 拘束を少なくする(隣り合う区間のコンクリート打 込み時間の差を少なくするなど)、などの観点か ら打込み順序を考えるのがよい。 • 続 • 後者の1区間での打込み順序では、柱な どの鉛直部材を優先し、床版などの水平 部材をあとに打込むのがよい。この1つの 理由は、鉛直部材のコンクリートの方が多 く沈下するのでこの沈下をある程度緩和し てから水平部材を打込んだほうがひび割 れが発生しにくいと考えられるためである。 打込み順序の事例を図8.5に示す。 図8.5 打込み順序 b. 打込みの準備 • 1打込み区画のコンクリートは連続して打 込むのが原則である。打込みが中断しな いよう下記の準備をしておく必要がある。 • • ①コンクリートの手配および受入れ時の品 質検査方法を確認する。 • ②設計図による確認:型枠、鉄筋が設計 通りに設置されていることを確認する。 続 • • • • ③ 設備の点検:打込みに使用する運搬機器、 打込み設備の能力が打込み量に対して十分で あることを確認する。特に、故障した場合に打込 み作業に大きな支障のあるものは予備を準備し ておくのがよい。 ④ 型枠の清掃および吸湿:型枠を清掃して異 物の混入を防ぐ。また、コンクリート中の水分を 吸収するおそれのある乾燥した部分は吸湿させ ておくのがよい。 ⑤ 人員配置:打込みに必要な人員および配置 を確認する。 ⑥ 天候の予測と対策:晴れか雨天かで相当対 策に差が出る。 c. 打込み作業 • コンクリートポンプやバケットから型枠(区 画単位)内へコンクリートを詰める作業で ある。これには、次の3つの重要な留意事 項がある。即ち、材料分離の防止、コール ドジョイント発生防止、および完全な充填 の3つである。 (1) 材料分離の防止 ① 打込み中における材料分離の防止 基本は、自由落下を最小限にして、横への移 動も最小限にすることである。詳細には次のよう である。 • A.バケットなどの吐出口からコンクリートの打込 み面までの距離を自由落下高さというが、これが 小さくなるようコンクリートはできるだけ低い位置 から鉛直に落とす。コンクリート示方書では、1.5 m以下と規定してある。 • B.コンクリートを横方向に移動させると材料分離 が生じやすいので、横流しを避ける。 • C.打込み中に著しい材料分離が認められた場 合には、作業を中断し原因を調べて対策を施し、 材料分離を防ぐ。 • ② 打込み後の材料分離の防 止 • コンクリートの打込み高さを出来るだけ 小さく、かつ、打込み速度を小さくするのが 基本である。これによって、水の分離(上昇 量)を少なくすることができる。一般の場合、 1回の打込み高さは40∼50cm以下、打 込み速度は2m/時以下を標準とする。 (2) コールドジョイントの防止 ① コールドジョイント(cold joint) とは JIS A 0203 では、「先に打ち込んだコンク リートと後から打ち込んだコンクリートの間が、完 全に一体化していない継目」と定義され、また、 土木学会ではでは「コールドジョイントは、すでに 打込まれたコンクリートの凝結が進み、その上に 新たにコンクリートを打ち重ねる場合に生じる一 体とならない継目」と定義される。 • 狭い意味では、打ち重ねる場合にのみの表現で はあるが、後述する打継目でコンクリート一体と なっていない場合も同様の悪い継目となる。本書 では、いずれも含んでコールドジョイントと解釈す る(いずれも同じような不具合を生じる)。 • 続 いずれにしても、コンクリート構造物で一 体化しているべき部分でコンクリートが不 連続となっている部分である。近年では、 これが原因となる山陽新幹線トンネルコン クリートの剥落が社会的な問題となった。 • 例えば、図8.6に示す位置にコールドジョ イントがあると、コンクリート剥落の可能性 がある。 • 図8.6 トンネルライニングに生じた コールドジョイントの影響 続 • ② 防止のための留意事項 • 2層以上のコンクリートを打込む場合、下 層のコンクリートが固まり始める前に上層 のコンクリートを打込み、上層の締め固め 時に下層にまで振動機を差込み、再振動 を与えて下層と上層が一体化するようにす る。 (3) 完全な充填の実施 • 打込みの難しい①打込み高さが高い場 合、②壁厚が薄い場合、③開口部下端、 ④かぶりが小さい場合、および⑤水中など での打込み、の場合には、十分すぎるほど の施工条件の把握と確認が必要である。 • <ノート> • 近年、施工が非常に難しい設計図が増 えたと聞く。施工経験の全くない設計者が 増えてきたのではないだろうか。 8.2.3 締固め a. 意義 1月20日 • 硬化したコンクリートが所要の強度、耐久 性能、水密性(能)を有するために、型枠内 に打ち込まれたコンクリートを型枠の隅々 まで行き渡らせるとともに、空隙の少ない 密実なものにし、さらに鉄筋などとよく密着 させる必要がある。このために、締固め (compaction)を行う。 b. 方法 • 締固め方法としては、コンクリートのコンシステ ンシーなどによって、コンクリート振動機、突き棒 などによる方法を選ぶ。 • 普通のコンクリートでは、コンクリート棒形振動 機による内部振動が最も効果が大きい。特に、 やや硬練りのものに対しては、充填性に優れ、 コールドジョイントの発生を防ぐ効果がある。特 殊な形状のもの、工場製品などにおいては、外 部振動を与えるコンクリート型枠振動機や表面 振動機が用いられる場合もある。また、高流動コ ンクリートでは、締固めは不要のものもある。 c. 振動機(vibrator)の種類 • (1) 内部振動機 • 棒状振動体をもち、これをフレッシュコンクリー ト中に差し込んで振動を与え、コンクリートを締め 固める振動機である。 • (2) 型枠振動機 • 型枠外面から振動を与えてコンクリートを締め 固める形式の振動機である。 • (3) 表面振動機 • コンクリートの表面から振動を与えて締め固め たり、表面を平に仕上げたりする振動機である。 通常、箱形あるいは平板状のものの上に発振部 と原動機を固定している。 d. 振動締固め 振動締固めは、図8.7に示すように、コンクリートに ある程度以上の振動(加速度)を加えると、コンクリー トの粘性が急激に低下して液状化することを利用す るものである。このため、振動機は、ある程度以上の 振動数を出すことが必要である。JIS A 8610(コン クリート棒形振動機)では振動数に関して 8,000rpm(round per minute)以上、型枠振動 機で3,000rpmと規定されている。 • 所要の締固め(コンクリートを型枠の隅々まで行き 渡らせるとともに、空隙の少ない密実なものにし、さ らに鉄筋などとよく密着させる)を行う為の、留意事 項は以下のようである。 • 続 • 留意事項は以下のようである。 • ①振動時間は、打ち込まれたコンクリート面がほ ぼ水平となり、材料分離が生じない範囲とする。 これは、振動時間が少なすぎると締固めが十分 でないが、逆に1箇所に長くかけすぎると、コンク リートが材料分離するので適切な時間がよいと いうことである。通常は、1箇所5-15秒程度であ る。 • ②振動機は適切な間隔で挿入する。間隔が大き すぎると締固めが不十分な箇所ができやすくなり、 小さすぎると時間がかかりすぎるため、適切な間 隔を選ぶ必要がある。 続 • • ③コールドジョイントを避けるため、振動 機は下層のコンクリートに10cm程度差 し込むことが必要である。また、振動機は 徐々に引抜き、あとに穴が残らないように する。 ④振動機を用いて、型枠内のコンクリート を横流ししてはならない。これは、材料分 離を防ぐためである。 8.3 打継ぎ 8.3.1 定義および意義 打継ぎとは、「硬化したコンクリートに接して、新た なコンクリートを打込む行為」であり、打継目 (construction joint)とは、「打継ぎを行った境界 面の継目」である。 • コンクリート構造物では、施工上の条件からやむを えず打継目が発生する。打継目は、完全な一体化と はなりにくく、この部分に隙間を生じることもあり、有 害物質の侵入が容易となり、耐久性能上、構造性能 上および美観上おおきな欠陥となりうる。したがって、 この欠陥を生じないよう、施工計画の段階から打継 目の位置、方向、形式および施工方法を決めておき、 適切な施工を行う必要がある。 • なお、ここでは、打継目をその方向から、水平打継 目と鉛直打継目に分けて述べる。 • 8.3.2 構造性能上の配慮 • 構造性能上、打継目はできるだけせん断 応力の小さい位置に設け、打継面を圧縮 応力が作用する方向と直角にするのが重 要である。これは、打継目がせん断に弱い ためである。やむをえず、せん断応力の大 きな位置に設ける場合には、溝をつくるか、 適切な鋼材で補強するなどの対策を行う。 8.3.3 水平打継目の施工 • 下層コンクリートの水平面は、ブリーディングやレイ タンスの影響で欠点となりやすい。この欠点を最小 限(完全になくすのが理想である)とすることが、水 平打継目の施工で最も重要なことである。 • 要は、下層コンクリートを入念に施工することが重 要であるが、打継目付近にブリーディングやレイタ ンスが対象となるコンクリート部材の性能(耐久性能、 水密性や美観、さらには耐荷性能など)に影響を及 ぼす場合には、ブリーディングやレイタンスそのもの や影響を受けた部分を取り除く必要がある。この場 合、緩んだ骨材があれば、これを取り除き、水洗い して十分に吸水させた後に上層コンクリートを打込 んで十分に締め固めるとよい。 特に、打継目に高い性能を要求する場合の処 理方法および逆打ち工法の場合の留意事項を 示す。 • (1) コンクリートの硬化前処理 • これには、高圧の水を吹き付けてコンクリート の弱い部分を取り去るものや、打込み後のコンク リートの表面に凝結遅延剤(retarder)を散布し て、この表面の硬化を遅らせて打継目の一体化 を容易処理とする方法などがある。 • (2) コンクリート硬化後処理 • これには、コンクリートの表層の数mmを種々 の方法(湿砂吹き付け法(サンドブラスト法)や チッピング法など)で削り取るものがある。この後、 下層コンクリートを適度に湿らせ、そのまま上層 コンクリートを打込む場合や、モルタル数mmを 敷いてから上層コンクリートを打込む場合がある。 続 • (3) 逆打ちの場合の処理 逆打ち工法とは、地下でコンクリート構造体を施 工する場合に、通常とは逆に上部の区間から下 部の区間へとコンクリートを打込んでいく工法であ る。この場合、打継目は既設コンクリートの下側に できる。(連続壁工法などで) • 逆打ち工法の場合、既設のコンクリートの下に 打継ぐコンクリートがブリーディングなどにより沈 下するため、打継目に隙間が出来やすい。この隙 間を埋める対策として、図8.8に示す、直接法、充 填法や注入法などが採用されている。 • 図8.8 逆打ちコンクリートの打継ぎ 8.3.4 鉛直打継目 • 打継面は、強度の要求度に応じて、ワイ ヤブラシ処理、サンドブラストやチッピング 処理で面を粗として適切に吸水後、ペース ト、モルタルや湿潤面用樹脂などを塗布し、 新コンクリートを打込む。特に、面に沿って ブリーディングによる水みちが出来やすい ので、この恐れがある場合には、適切な時 期(数時間以内)再振動締め固めを行うと よい。 8.4 養生 8.4.1 定義および意義 • 養生(curing)は、「コンクリートに所要の性能を発 揮させるため、打込み直後の一定期間、適当な温 度と湿度に保つと同時に、有害な作用から保護する 行為または処置(JIS A 0203)」である。具体的に は、①硬化初期の適切な期間中に十分な水を与え ること、②適切な温度に保つこと、③風雨や波など の気象・海象作用に対して保護すること、および④ 過度の振動などの外力から保護すること、である。 • 土木学会では、これらの目的のために行う養生を、 ①湿潤に保つ養生、②温度を制御する養生、およ び③有害な作用に対し防護する養生、に分類してい る。なお、これらは、互いに独立ではなく、複数の目 的に対し組み合わせて使用することが多い。 8.4.2 初期材齢での処置(初 期養生) • • まず、打込み後数時間、硬化を始めるまで、 日光の直射、風等による水分の一散を防ぐ、 逆に、雨や飛沫から表面を保護する必要が ある。これを怠ると、日光の直射を受けると表 面が乾燥し、プラスチック収縮ひび割れなど が発生する、また、雨や飛沫があると表面そ の部分の性能が極めて悪くなる。このため、 コンクリートを直ちにシートなどで覆い、日よ け雨よけとする。 続 • 悪い例では、スラブコンクリート打込みから初期 養生時に強い雨(スコール)が降っているにもか かわらず、保護が全くなされずに表面コンクリー トの実質上の単位水量が極めて高くなり、翌日 以降強い日射を受けてひび割れが多数発生す るものがある。この例では、このスラブに種々の 補修を行っても、乾燥収縮やクリープが大きく、 スラブ自体が大きくたわむという状況となってい る。 8.4.3 湿潤養生 • 初期養生後、一定期間コンクリートを湿潤状態 に保つ養生を湿潤養生(wet curing, moist curing)という。この湿潤養生には、 水中、散水または湛水によって外部から水を 供給する養生、養生用マットや湿砂や湿布で 表面を覆う養生、表面に剤を散布して膜を作り 水分の蒸発を防ぐ養生などがある。 • 土木学会(施工編)では、湿潤養生期間の標 準を日平均気温15℃において、普通ポルトラ ンドセメント、混合セメントB種、および早強ポ ルトランドセメントを用いた場合、各々5日、7日、 3日以上としている。 • 続 • やや蛇足であるが、混合セメントB種は、 産業副産物利用、炭酸ガス発生抑制、さら には耐久性能の観点から非常に有利であ るにも係わらず使用量が伸びないのは、こ こに示すように養生日数が普通ポルトラン ドセメントを用いた場合に比べ長いことに ある。 8.4.4 温度制御養生 • 打込み後(場合によっては初期養生後)、一 定期間コンクリートの温度を制御する養生を いう。この温度制御養生(temperature controlled curing)には、①寒い時期に 対するもの、②暑い時期に対するもの、③水 和熱が大きい場合に対するもの、および④促 進養生(accelerated curing)、などがあ る。 続 • (1) 寒い時期に対するもの • 外気温が著しく低く、それに伴ってコンクリート 温度も著しく低くなる場合には、セメントの水和反 応が阻害され、強度発現が遅れ、初期凍害を受 ける恐れが高い。この場合、有害な影響を避け るために必要な温度条件を保つために給熱また は保温による温度制御を一定期間行う必要があ る。なお、日平均気温が4℃以下になる場合には、 寒中コンクリートとして扱う必要がある。 (2) 暑い時期に対するもの 外気温が高く、それに伴ってコンクリート温度も 著しく高くなる場合には、①急激な水分の蒸発に よってプラスチック収縮ひび割れが発生しやすく なる、②コールドジョイントが発生しやすい、③初 期強度の発現は速いが、長期強度が低下する 恐れがある、④耐久性能も低下する、などの問 題が生じる。 • この場合、①打込みを終了した後速やかに養 生を開始する、②コンクリート表面を乾燥から保 護する、③コンクリート表面と内部に大きな温度 差が生じないよう断熱材などで保温・保護する、 などの対策が考えられる。 • 日平均気温が25℃を超える場合には暑中コン クリートとして対処する。 • (3) 水和熱が大きい場合に対する もの • マスコンクリートの(部材寸法が大きい)場合には、 水和熱で部材内の温度が上昇する。この場合、①コ ンクリート部材と外部(岩(地)盤や既存のコンクリート 部材)との温度差による温度応力(外部拘束による応 力)、あるいは②この部材内での温度差による温度応 力(内部拘束による応力)、が生じ、ひび割れが発生 する恐れがある。これを防ぐため、コンクリート内にあ らかじめ設置したパイプに水を通してコンクリートの温 度を下げる(パイプクーリング)対策や表面の保温を 行い(併用する場合もある)、コンクリートの平均温度 や温度差を制御する。 (4) 促進養生 • 初期(1∼2日)のコンクリートの硬化を促進する 目的で、例えばコンクリート工場製品の製造にお いて、促進養生を行う。これには、蒸気養生、給 熱養生、高温高圧養生(オートクレーブ養生: autoclaved curing)などがある。これらの促 進養生は注意を怠ると、微細ひび割れの発生、 局部的な温度上昇などの失敗の恐れがある。こ れを避けるため、養生開始時期(初期養生の期 間)、温度の上昇速度、冷却速度、養生温度およ び養生期間などを適切に定め、管理することが 必要である。 8.4.5 有害な作用に対し保護す る養生 • まだ十分に硬化していないコンクリートに 過大な荷重(衝撃や振動荷重も含む)が作 用すると、壊れないまでも、ひび割れが生 じることや過度のたわみが生ずるなどの恐 れがある。このため、考慮外の荷重が作 用しないよう、あるいは、支保工の取り外し 時期を適切に定めるなどの考慮が必要で ある 8.5 コンクリート製品の製造上で の特徴 製造の章と少し重複するが、配合も含め、打込み、 締固め、打継ぎ、養生でコンクリート製品の製造上で の特徴を述べる。 • 有利な特徴としては、運搬や打込みは、同一工場敷 地内のことが多いため短距離・短時間で全く問題が ないこと、さらには、打継ぎが必要なものも稀なことで ある。 • さらに、製品とするメリットを増大させるためには、出 来るだけ製品製造の能率をあげる必要がある。例え ば、同じ規模の設備を考えた場合、1日でコンクリート 製造から養生まで1回転できると2日で出来る場合に 比較して、2倍の製品を製造することができる。このた め、1日1回転で製造可能な製造体制が必要となる。 • 8.5.1 配合の特徴 • 配合は製品の種類や締固めの方法など で異なるのは当然であるが、一般には、水 セメント比50%以下、スランプ2∼10cm 程度の比較的硬練りの配合が多い。また、 高強度を要求されることと、型枠(後述する が鋼製の高価なものが多い)を効率よく使 用するために早期強度を発現して早期脱 型が要求されるために富配合のものが多 い 8.5.2 締固めおよび型枠 • 前述したように、出来るだけ1日に1回転で製造する ことが基本となる。 • 締固め方法としては、能率よく速い方法である振動 締固め、遠心力締固めなどが用いられる。 • (1) 振動締固め • これは、最も広く用いられている方法で、棒状の内 部振動機や型枠振動機もしくは振動台などを用いて コンクリートを締め固めるものである。型枠振動機は 矢板、はりなどに用いられる。振動台は板状製品や 比較的小さい製品の締固めに適している。また、硬練 りコンクリートを圧力と強力な振動により成型し、直後 に脱型する即時脱型による製品製造も盛んであり、 小型ブロックなどの製造に用いられる。 (2) 遠心力締固め この締固めは、コンクリートを詰めた型枠を 高速回転して(図8.9)遠心力でコンクリートを 締め固めるものである。一般に、この方法は パイプ、パイル、ポール(電信柱として多用)な どの中空円筒形の製品に用いられる。 • この方法では、型枠の回転時の振動による 締固め効果と遠心力による水分の搾り出しに よる水セメント比の低下などによって、強度と 密度の高いコンクリートをうることが出来る。 • (3) 型枠 • 型枠は上記のような締固め方法に対応して、振動中 の圧力や養生中の温度変化によって形状や寸法に 狂いが生ぜずに、繰り返し使用できるものが必要であ る。また、組立てや取外しが容易であることも必要で ある。一般には、鋼製である。 • 型枠は高価であるので、型枠の使用能率(回転)を 速める必要がある(前述のように1日1回転など)ので、 即時脱型工法が用いられることもある。一般には、促 進養生(蒸気養生やオートクレーブ養生)を併用するこ とが多い 8.5.3 養生 養生は、製品の早期出荷や型枠の回転を早く するために促進養生が多く用いられる。なお、一 部の工場では、散水養生などが用いられている。 • (1) 常圧蒸気養生 • これは、「大気圧力下で高湿度の水蒸気の中 で行う促進養生(JIS A0203)」である。この養 生によって初期強度が促進される。 • この方法は、ひび割れや長期強度の低下など が起こる恐れがある。このため、前養生(初期養 生)期間を出来るだけ長く取る、温度上昇速度を 出来るだけ遅くする、養生温度をあまり高くしな い、冷却速度を出来るだけゆるやかにするなど を適切に考慮する必要がある。 • (2) オートクレーブ養生(高温高圧 養生) これは、「高温・高圧の蒸気 (オートクレーブ)の中で、 常温より高い圧力下で高温の水蒸気を用いて行う蒸気 養生(JIS A 0203)」のことである。 • 通常、常圧蒸気養生を行った後この養生を行うことが 多い。温度は180∼190℃、圧力は1.0∼1.1MPaの 範囲が一般的である。この条件では、水熱反応と呼ば れる反応を起こし、トベルモライト(厳密にはトベルモラ イトに類似したもの)と呼ばれる強度の高い反応物が生 成する。これによって、コンクリート強度(設計基準強度 70∼90N/mm2)のコンクリートを製造することが可能 となる。 • この養生方法と遠心力締固めの組み合わせで、パイ ル(pile)、ポール(pole)などが製造される。 •