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資料 4 - 宮城県

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資料 4 - 宮城県
資料4
「ナマズのがっこう」の活動について
1.設立趣旨
平成 14 年 3 月に見直しされた生物多様性国家戦略では里地里山等における生物多様
性の危機が位置付けられ、また、平成 15 年 1 月には自然再生推進法が施行されるなど、
人間生活や社会経済活動と自然環境の共生は国民全体の課題となっています。
平成 14 年4月から施行された改正土地改良法においては、「環境との調和への配慮」
が土地改良事業の実施で位置づけられています。
伊豆沼・内沼は宮城県北部仙北平野の水田地帯の中央に位置し、絶滅危惧種のゼニタ
ナゴをはじめとした淡水魚類の生息地である。また、オオハクチョウやマガン等の多く
の冬鳥たちの飛来地であり、釧路湿原に次ぐ日本で2番目の規模を持つ水鳥の生息地と
して、国際的に重要な湿地及びその動植物の保全を推進することを目的としたラムサー
ル条約指定登録湿地(1985 年)や天然記念物に指定されるなど、貴重な自然環境を有し
ている地域であります。
自然環境の保全や生物多様性の確保するには、微生物をはじめ魚や貝、昆虫、鳥、そ
れにいろいろな植物が成育し、多様な生態系を形成している湿地の保全は極めて重要で
ある。
しかし、伊豆沼・内沼の環境は,沼を取り巻く環境の変化により水質の汚濁や浅底化
が進み、沼に生息する野生生物に与える影響が憂慮されている。
特に、1996年から移入種(外来種)であるオオクチバス(ブラックバス)が増加
し、在来種の小型魚類が補食されている結果、ゼニタナゴをはじめとするタナゴ類、メ
ダカ、コイやフナ類の稚魚、仔魚が激減している。
さらに、ほ場整備事業により農業の効率化が図られ、農家は重労働から解放された。
一方、用排水路の分離により水田と排水路の連続性が分断されたため、水田を生息場
所としているメダカやドジョウ等も減少してきている。
この様な水田環境の変化は、全国的な現象ではあるが、恵まれた自然環境を有してい
る、伊豆沼・内沼周辺水田でも生じてきている現状である。
また、生物多様性の確保を図っていく上で多様な生態系を形成している湿地の保全は極め
て重要であるが地域住民が必ずしも理解しているとは限らない。
そこで、 伊豆沼・内沼周辺の農家が豊かな自然を回復させ、保全、持続可能な農業を
展開していくことは急務であります。
近年、国民の関心は、食文化、命と健康を支える食べ物「安全で安心できる農産物」
へと向けられ、食に対しても自然嗜好が高まっています。
これからは、農業と自然環境とが共生できる農村づくりを進め、自然環境を復元し環
境創造型農業を目指していく必要があります。
そこで、農業土木県職員(登米・栗原・石巻産業振興事務所)有志及び伊豆沼周辺の
農家、地域住民、土地改良区の職員、企業の15団体217名が集まり平成 15 年 7 月
に「ナマズのがっこう」を結成しました。
目標として, 環境保全活動や環境創造型農業の推進、田んぼの学校を通した環境教育
等を企画・実践・推進・研究することを目的としています。
(1)
農業農村整備事業によって改修される排水路の工法の見直しを実践により
実証し、事業によって失われつつある農村の豊かな自然環境を、地域住民と
一体となり保全・再生することを通して、人と自然が共生出来る農村自然環
境の復元に関すること。
(2)
田んぼの生き物を活用した「冬期湛水無農薬無化学肥料栽培技術」の確立
と普及に関すること
(3)
田んぼの生き物調査を行い、生き物と共生する農村環境と農業の再生に関
すること。
(4) 「田んぼの学校」を開催し、地域の歴史や自然環境を子どもたちと一緒に
なって学び、子どもの健全育成を図る活動に関すること。
(5)
農業体験イベントや、自然再生の研修会を開催し、都市と農村の交流や地
域の活性化に結びつく活動に関すること。
(6)
その他目的達成のため必要なこと。
2.活動内容
上記の目的を達成するため、次の事業を行うものとする。
(1)環境創造型農業推進のための事業
① 小規模水田魚道の開発
② 冬期湛水、不耕起、無農薬、無化学肥料水稲栽培技術の確立
③ 田んぼの生き物調査の指導・実施
④ 「田んぼの学校」の開催・支援
⑤ 外来種の駆除や環境保全
⑥ 田んぼに生息する生き物調査
⑦ 貴重な自然の重要性を子ども達に伝える
⑧ 自然と触れ合い親しむ見学会や自然を理解するための勉強会、講演会など
の開催。
⑨ 各種イベントなどのまちづくりへの参加
(2) 共同研究の実施
① 研究会、シンポジウムなどの開催
② 研究成果の刊行、配布
③ 会誌の発行
(3)その他、目的達成に必要な事業
① 同項第1号の活動の資金を得るために事業を行う。
② 会員相互の融和・親睦を図るため懇親会などを開催する
3.ナマズのがっこうの実践活動(平成21年)
①
「小規模水田魚道の開発・遡上実験・普及活動」
②
「ふゆみずたんぼ(冬期湛水水田)による無農薬・無化学肥料水稲栽培の取り
組み」
③
「田んぼの学校の開催(農作業体験・田んぼの生き物調査・子供の環境教育)」
④
「ゼニタナゴ・シナイモツゴ・メダカ・ニホンアカガエルの保全活動」
⑤ 「伊豆沼・内沼上流域ため池のオオクチバス駆除活動とため池の生態系の復元」
⑥
「生き物の生息可能な排水路の工法(U型水路からV型水路)の検討
⑦
「ビオトープの造成」等の活動を継続して実施しております。
①
「小規模水田魚道の開発・遡上実験・普及活動」
近年、ほ場整備事業実施後の水田は、水田周辺を生息域としていたドジョウ、メダカ、
フナ、ナマズなどの魚類や、タガメ、ゲンゴロウ、カエルなどの生きもの減少が見られ
る。
これらの現象は、ほ場整備事業の用排水路分離により水田と排水路の連続性が分断さ
れたためと排水路のコンクリート三面装工が要因の一つと言える。
そこで分断された水域ネットワークを再構築するため「小規模水田魚道」の実用実験
を 2003 年から取り組んでいる。
水田魚道は、すでに秋田県立大学端教授、宇都宮大学水谷教授、鈴木らが提案してい
るが現場に設置されている例は少ない。
そこで、
「ナマズのがっこう」としては、実際に設置して,実証し普及を図りたいと考
え開発と遡上実験に取り組んできた。
設置場所が圃場整備完了地区、新規に圃場整備工事を実施する地区に設置が可能な工
法を目的に開発した。
開発にあたっては、人力施工が可能で、軽量な資材で安価に、耐久性に優れ、誰でも
設置可能な工法とする必要があったことから、木材、電線管、波付の丸型、波付のU型、
コンクリートBFを素材とした水田魚道を試作し、遡上実験を実施した。
その結果、
「波付のU型」と「波付の丸型」の既製品を利用した水田魚道の遡上効果が
良好で、安価に設置が可能のことから、普及に努めている
別紙資料
②
魚道を設置しましょう
「ふゆみずたんぼ(冬期湛水水田)による無農薬・無化学肥料水稲栽培の取り組み」
「ふゆみずたんぼ」は稲を栽培していない冬の間にも水を張る水田である。これは江
戸時代に確立された技術であり、全国各地で実施されているが宮城県の取り組みが全国
一である。
今までの農法は、農薬や化学肥料を多量に使用するため、農村地域の環境に影響を与
えてきた。今後は、農村地域の環境保全には、農薬や化学肥料を使用しない農法も必要
と考え 2003 年から取り組みを行っている。
ふゆみずたんぼの稲作栽培技術は試行段階であるが、種子消毒は温湯消毒、播種は1
箱に 70gを筋まきで播種し、プール育苗,田植えは1株当たり成苗2本の疎植で 50 株
植えとする。
除草と施肥のため米糠と屑大豆を散布し、稲の生長に合わせて深水管理にする。
稲体の特徴は、茎が太くなり桿長が短かいため倒伏しにくい、穂の長さは長く、籾数
が多い。収量は、疎植で茎数が少ないため慣行栽培より 25%の減収(10a 当たり 7~7.5
俵)になる。
2003 年からの取り組み結果は理論的には、まだ多くの部分が未解明であるが実践して
確認できた結果は、次の通りである。
・
深水管理とトロトロ層(イトミミズがフンとして排出することにより田んぼの表
面に形成される土層)が雑草を抑制するようである。
・
深水管理のため、冷害が回避できる(2003 実績)。
・
雑草抑制と施肥に米糠や屑大豆を使用するため資源循環になる。
・
湿地として水田の多様性を高め、渡り鳥の生息環境に役立つがハクチョウにより
畦畔が壊される。
・
農薬や化学肥料を使用しないためメダカや両生類、ヤゴなどの水生昆虫類の良好
な生息場所になる他、絶滅危惧Ⅱ類のミズアオイやサンショウモが生育し植物の良
好な生育環境になる。
特に、春先に水があるため、ニホンアカガエルの良好な産卵、生育場所になる。
また、いろいろな生きものが生息するためツバメ、サギ類の飛来が多い。
・
田んぼの生きもの調査で、農薬や化学肥料を使用した場合と不使用の場合で、魚
類、カエルやイトミミミズの生息数が多かった。
ふゆみず田んぼを永年続けるのはホタルイ, コナギ等の雑草の抑草が困難であるため、
地域ですべて同じ栽培方法でなく、
「 ふゆみずたんぼ」、
「 農薬・化学肥料節減栽培」、「慣
行栽培」のブロック決めローテーションを行いながら取組むことにより、 地域全体の
環境保全に寄与できると考える。
ミズアオイ
③
ニホンアカガエルの卵塊
「田んぼの学校の開催(農作業体験・田んぼの生き物調査・子供の環境教育)」
「田んぼの学校は」水田や水路、ため池、里山などを遊びと学びの場として活用する
環境教育であり、「環境に対する豊かな感性と見識を持つ人を育てること」、「自然と人
との共生、都市と農村の共生への途をさぐること」が目的である。
最近の農家の子どもたちは、農作業の大型機械化により、田んぼにでる機会が少なく
なり、田んぼに接し自然を感じ取る機会が失われてきている。
そこで、2003 年より地域住民、環境の専門家、行政機関、伊豆沼・内沼環境保全財団、
地域の小学校が一体となり「田んぼの学校」を開催し、田んぼの生きもの調査や農業体
験を通して、田んぼを取り巻く様々な自然と触れ合い環境に対する豊かな感性を養うと
ともに、農業の役割を理解し農村環境の保全に対する意識の高揚を図っている。
活動は表-4の通りであります。
田んぼの学校のメリット
子どもと大人が同じ目線で
物事を見るため、子どもた
表ー4 田んぼの学校の活動内容(2005年)
月
5月
活動項目
田植え
活 動 内 容
裸足で田んぼに入り田植え
田んぼの
生きもの調査
冬期湛水水田と慣行田の田んぼの生きもの
(魚,カエル,イトミミズ等)調査を毎月実施
夏祭り
登米市迫町の夏祭り会場に,活動j状況パネルや
田んぼの生きもの(ドジョウ)を展示してPR
8月
10月
10月
栗駒ダム見学会
ため池の池干し
稲刈り体験
農業用水の役割の勉強
ため池の生きもの調査とオオクチバス駆除
手刈り作業と自然乾燥
11月
脱穀体験
収穫祭
昔の農具を利用しての農作業体験
地域の食材を子どもが調達し料理して食べる
12月
渡り鳥の勉強会
活動の反省会
伊豆沼に来る渡り鳥の勉強
1年間の活動内容の総括
6月~9月
ちの可能性や自主性をさら
7月
に伸ばす一助となる。
子どもたちの感想は、田
んぼの生き物の名前を覚え
られた、初めてカエルに触
った、稲刈りでは疲れたと
か、今までに経験したことのない体験を通じ生き物や自然のおもしろさや農作業の大変
さや喜びを感じている。
田んぼの学校を実施して、農業体験や田んぼのいきもの調査等の様々な体験を通し、
子どもたちが農村の自然を大切にしようとする意識の高揚が見られた。
また,子どもだけでなく、教師、保護者、地域住民も参加することによって、生態系
保全に関する様々な知識を得ることができ、環境学習のよい機会となっている。
④
「ゼニタナゴ・シナイモツゴ・メダカ・ニホンアカガエルの保全活動」
オオクチバスを駆除したため池に、伊豆沼・内沼環境財団、シナイモツゴ郷の会と連
携して、ゼニタナゴやシナイモツゴの放流を行い、生息場所を増やしている。
メダカの保全は,中干しを行わない方法の稲作で保全を試みている。
ニホンアカガエルの保全には産卵時にふゆみず田んぼに移動が可能なように水路の蓋
がけを行っている。
生
⑤
息
調
査
ゼニタナゴとシナイモツゴ
「伊豆沼・内沼上流域ため池のオオクチバス駆除活動とため池の生態系の復元」
オオクチバス駆除活動は、伊豆沼・内沼環境保全財団やバス・バスターズと連携して
取り組み成果をあげている。
駆除したため池では、在来魚が生息し、釣り人の釣り場になっている。
伊豆沼・内沼には荒川、照越川、八沢川、太田川の4河川が流入し、大規模ため池が
170ヶ所存在している。小規模ため池も同数程度あると想定される(調査査中)。
大規模ため池のオオクチバス生息調査結果(環境省東北事務所調査)によれば、34
ヶ所のため池にオオクチバスが生息している。
これらのため池の駆除に「ナマズのがっこう」は平成16年より取り組んで11ヶ所
の駆除を行った。
駆除にあたっては、平成18年度より平成21年度まで、農林水産省の農村景観・自
然環境保全再生パイロット事業を導入し使用道具等を揃え駆除してきた。
しかし、上記事業は、平成22年度予算には計上されていないため、ナマズのがっこ
うとしては資金調達の目途がないため、ナマズのがっこうとしてのオオクチバス駆除活
動を縮小せざるを得ない状況にある。
残る23ヶ所の駆除も今後実施していく計画である。
エンジンポンプによる排水作業
⑥
捕獲したオオクチバス
「生き物の生息可能な排水路の工法(U型水路からV型水路)の検討
農業排水路は、昭和30年代までは土水路がほとんどであったが、昭和40年代に組
立柵渠の2面コンクリート装工になり、昭和60年代にU型の3面コンクリート装工
(宮城では組立柵渠への凍圧作用による破損被害による解消対策で採用)が導入され、
現在も採用されている。
排水路の3面コンクリート装工は、土地改良区や農家の維持管理には好評であるが、
生きもの生息場所には適していないことがわかってきた。
特に、底がコンクリートのためドジョウの越冬場所がなくなった。また、側壁が垂直
のため、ニホンアカガエルやトウキョウダルマガエル移動に支障を与えている。
これからの水路は、生きものの生息を考慮した断面、構造とする必要があることから
台形断面の水路について検討している。
検討事項は下記の通りである。
・
カエルの這え上がりが可能な法勾配の検証
・
カエルの移動に対しては側壁を垂直にせずに、緩傾斜の法勾配にすることで解決
されるがコンクリート表面温度がカエルの這え上がりにどのような影響を与えるか
の検証
・
緩傾斜護岸とした場合、法面へ植生し、水路内に水草を生えさせ魚類の産卵場所
となるか、底に泥を堆積させドジョウの越冬場所になるかの検証
その場合、維持管理を考え、堆積土砂の撤去が法面バケットを利用して容易に可
能であるかを確認する必要がある。
法面に植生
水路を移動できなかったカエル
⑦
ニホンアカガエルの這え上がり
死んだカエル
「ビオトープの造成」
ビオトープ造成については市販図書で紹介されているが、地域にあった造成方法が必
要ではないかと考え、2 ヶ所造成し、植生の変遷や漏水対策、水源確保、維持管理方法
について把握している。
4.ナ マ ズ の が っ こ う 活 動 年 表
平成15年3月
伊豆沼・内沼ドジョウ・ナマズ研究会を設立し、小規模水田魚道を設置し、遡上実
験に取組む。
平成15年5月
伊豆沼 2 工区環境創造型農業研究会が「ふゆみずたんぼ」と慣行農法の比較を行う
ため、試験圃場の設置を行い「ふゆみずたんぼ」の田植えを行う。
飯島農用地利用改善組合が「田んぼの学校」を開校する。
平成15年6月
飯島農用地利用改善組合が「田んぼの学校」で初めて田んぼの生き物調査実施する。
伊豆沼・内沼ドジョウ・ナマズ研究会、小規模水田魚道の遡上を初めて確認する。
平成15年7月
伊豆沼・内沼周辺の農村自然環境復元や環境創造型農業に取組んでいる15団体が
集まり、「ナマズのがっこう」を結成し連携して取組みを開始する。
構成員は、農業土木県職員有志及び伊豆沼周辺の農家,地域住民,土地改良区の職
員,学校教員,企業の職員。
伊豆沼 2 工区環境創造型農業研究会の「ふゆみずたんぼ」と「慣行水田」で、生き
物調査を実施する。
イチョウウキゴケ、ミズアオイの絶滅危惧種の出現を確認す
る。
平成15年12月
「日本雁を保護する会」と共催し、環境創造型農業シンポジウム登米市迫町で開催
する。
平成16年1月
第1回田んぼフォーラムで「ナマズのがっこう」の活動を紹介する。
平成16年8月
小規模水田魚道及びふゆみずたんぼ現地見学会を開催する。
平成16年10月
第3回全国田んぼの学校フォーラムを登米市迫町で開催する。
平成16年11月
農業土木学会東北支部研究発表会で、平成 15年度に発表した「田んぼの生き物調
査の研究」で優秀賞を受賞する。
平成16年 11月
栗原市築館八沢のため池で初めて池干しに取組む
平成17年1月
第2回田園自然再生コンクールで「パートナーシップ賞」を受賞
平成17年11月
第 1 回魚道勉強会を全国の実践者を集めて開催
平成18年1月
新田第一小学校、第1回子どもファームネット壁新聞コンクールで「ふゆみずたん
ぼの生き物調査」を紹介し、農林水産大賞受賞
平成18年4月
ふゆみずたんぼの生物多様性や普及のための調査を 3 カ年計画で、東北大学、岩手
大学と共同で開始する。
平成18年5月
栗原市築館字八沢のオオクチバス駆除したため池にシナイモツゴを放流する。
秋田県大潟村に水田魚道設置する。
平成18年6月
茨城県つくばみらい市に水田魚道設置する。
平成18年9月
東北こどもサミットに登米市立新田第一小学校の児童「田んぼの生き物調査」を紹
介する。
平成18年11月
シンポジウム「ブラックバス駆除と水田魚道による自然再生」を古川市でシナイモ
ツゴ郷の会と合同開催する。
平成18年10月
農業土木学会東北支部研究発表会で、平成 17 年度に発表した「小規模水田魚道の
研究」で優秀賞を受賞する。
平成19年1月
新田第一小学校第 2 回子どもファームネット壁新聞コンクールで「田んぼの学校の
活動」を紹介し、こどもファームネット大賞を受賞する。
平成19年5月
栗原市築館字八沢のオオクチバス駆除したため池にシナイモツゴを放流する。
宮城県大崎市田尻大貫の千葉農場に水田魚道を設置する。
平成19年6月
栗原市築館字八沢にビオトープの造成を開始する。
平成19年8月
田園自然再生塾(水田魚道設置実技研修)を(社)農村環境整備センターと開催す
る。
平成19年10月
シンポジウム「水辺の自然再生をめざす市民活動―外来魚対策と在来魚復元」を古
川市でシナイモツゴ郷の会と合同開催
平成19年11月
栗原市築館八沢地域のため池で絶滅危惧ⅠB 類のゼニタナゴ(コイ科)、シナイモツ
ゴ(コイ科)の生息を確認したので保護活動に取組む。
平成20年1月12日~13日
NHKよりふゆみず田んぼの取り組みの取材
平成20年1月31日
農業農村工学会関東支部水田魚道の設置についての講師
平成20年3月8日
水田魚道設置ビデオ撮影
平成20年4月13日
加美町高田環境保全会大型魚道設置作業
平成20年5月2日~3日
V型水路の設置作業
平成20年7月2日
落水兼用水田魚道の設置作業
平成20年7月20日~21日
水田魚道遡上状況ビデオ撮影
平成20年7月26日
田んぼのがっこうフランスTV取材・・・平成 21 年 2 月フランスで放映
平成20年11月29日
シンポジウム
東京都
立教大学
平成20年12月21日
伊豆沼・内沼シンポジウム
平成21年5月
V型水路の設置作業・・・ブロックの間に植生が可能であるかの試験
平成21年6月
落水口兼用水田魚道の設置と設置状況ビデオ撮影
平成21年7月25日
登米市迫町佐沼夏祭りに参加(水田魚道の実物模型と活動パネル展示)
平成21年8月19日~20日
水田魚道設置実技研修会(伊豆沼3工区)・・・農村環境整備センターと共催
平成21年9月13日
オオクチバス駆除講習会(栗原市一迫、葉ノ木沢(下)ため池
平成21年10月1日~2日
外来種駆除研修会(栗原市築館太田、東沢ため池)
・・・農村環境整備センターと共催
平成21年10月4日
北上川フェアーで水田魚道実物模型の展示(石巻市)
・・・水土里ネット石巻支部と共催
平成21年10月17日
水辺の自然再生シンポジュウム・・・シナイモツゴ郷の会と共催
平成21年12月13日
水田魚道と田んぼの生き物調査指導・・・青森県藤崎町
平成21年12月19日
環境創造型農業勉強会(若柳サンクチュアリーセンター)
平成22年1月18日~19日
新潟県佐渡市農家と環境配慮勉強会(伊豆沼 3 工区)
平成22年2月9日
環境配慮研修会(河南矢本土地改良区)
平成21年~22年2月末
水田魚道の設置活動
波付の U 型、波付の丸型
4月
登米市米山
平埣メダカの学校
7月
大崎市田尻(千葉農場)波付の丸型
各1ヶ所
2 ヶ所
大崎市田尻(農家)波付の U 型、波付の丸型
各1ヶ所
粗面式と波付の U 型(400 型)各 1 ヶ所
10月
青森県藤崎町
12月
石巻市河南
前谷地ふるさと保全隊
2月
石巻市北上
波付の U 型、波付の丸型
波付の U 型2ヶ所
各1ヶ所
平成21年オオクチバス駆除活動
9月13日
葉ノ木沢(下)ため池
・・・・オオクチバス生息
10月
1日
東沢ため池
11月
8日
狼ノ巣(下)ため池
・・・・・オオクチバス生息なし
11月20日
道満沢(下)ため池
・・・・・オオクチバス生息なし
11月23日
熊狩南ため池
11月28日~29日
・・・・・・・・・オオクチバス生息
・・・・・・・・オオクチバス生息
大沢(上)ため池
12月
5日
山居(下)1、2ため池
12年
6日
山田ため池
・・オオクチバス生息なし
・・・オオクチバス生息
・・・・・・・・オオクチバス生息
5.連絡先
@
連
絡
先
メール
[email protected]
住
郵便番号
所
TEL
987-2226
宮城県栗原市築館字八沢中谷地103-5
0228-23-8566
携
帯
FAX
080-1835-0917
0228-23-8566
「
ふ
ゆ
み
ず
た
ん
ぼ
」
栽
培
技
術
H21.1.29
ナマズのがっこう(伊豆沼冬水田んぼ倶楽部)
三塚
牧夫
佐々木
弘樹
佐々木和彦
高橋
吉郎
1. 「ふゆみずたんぼ」の栽培技術
2004 年から7ヶ年実施してきたが明確に「ふゆみずたんぼ」の栽培方法やメリットを語
ることはできないが,2008 年度の栽培方法を紹介する。
基本方針は農薬と化学肥料を使用しないで,米糠を使用して栽培し,手取りや機械除草
はしない。
(1)2008 年度の栽培実績による栽培技術体系
1)トロトロ層づくり
①
稲刈り後の土づくり
稲刈り後,米糠 100kg/10a を散布し,落水口を閉めて自然湛水(ポンプ揚水)
をします。
水位は稲株が隠れる水位にします。稲株が出てきたら補給します。
畦塗り(高さ 30cm)が必要な場合は湛水前に行います。
②
田植えの準備
水田にイトミミズなどの微生物が増殖し,地表面にごくやわらかい土の層(トロ
トロ層)ができているかを確認します。
十分な場合は不耕起栽培を行う,十分でない場合は代掻き(1~2回)を 行う 。
2)抑草対策
①
田植え前
ニホンアカガエルのオタマジャクシに配慮して浅水にして代掻きを1~2回行
います。2回行う場合は7日~10日の間隔を置く。
②
田植え後
3日以内に抑草対策のため,米糠ペレット 50kg/10aを散布する。水深は葉先
が一部でる5cm程度の水位を確保する。
米糠は,微生物,イトミミズ,ユスリカの活動を促す効果もある。また,米糠の
散布後は微生物の活動(光の遮断)により水が赤茶色になることで雑草が抑制され
ると考えられる。
③
水管理
草丈の伸長に合わせて徐々に水深を上げ,深水管理を行う。
深水はノビエの抑制効果が高いがホタルイは抑制効果が低い。
3)施
①
肥
育苗時施肥
有機100%の肥料(N:4g,P:6g,K:3g)1袋で22箱に施肥し
ます。
4)田植え
①
慣行栽培より,10日位遅く,早植えは避ける。栽植密度は疎植とし,標準的
な株数 50 株/坪)を基本とする。植え付け本数は2~3本程度とする。
5)病気・害虫対策
①
種子消毒(いもち病、ばか苗病、もみ枯細菌病)
温湯侵漬法:60°Cのお湯に10分間浸漬した後、すぐに水で冷やす。
②
苗作り
成苗を目指し育苗する。種子は筋蒔きで 70g/1 箱で薄蒔きとする。40日以上か
けて葉令が 4.5 葉を目標にする。
③
育苗管理
農薬を使用できないことから, プール育苗する。まず, ハウス内を均平になら
した後, 塩ビパイプや木材等でフレームを作りビニールやブルーシートで水位が
5~8cm程度確保できるような水槽を造る。
入水の時期を間違えると窒息となるので, 芽揃いするまでは絶対入水はしない。
プール育苗は, 慣行育苗に比較して全般的に生育が早いことから, 育苗期間を
短縮することができるが伸び過ぎとならないように昼夜の温度管理には注意する。
ハウス内の気温は慣行育苗よりも低めに管理する。
6)本田病害虫防除
いもち病, 紋枯病等に対しては, 深水管理により分けつを抑え, 病害の発生を
抑制する。
カメムシ対策は, 畦畔の草刈りで対応する。
2.2004~2008 年までの取組み成果について
理論的には,まだ多くの部分が未解明であるが実践して確認できた結果は,次の通りで
ある。
①
深水管理とトロトロ層(イトミミズがフンとして排出することにより田んぼの表面
に形成される土層)が雑草を抑制すると言われているが最初の1~2年は、抑草出来
たが3年目以降は、困難であったことから疑問である。
②
深水管理のため,ヒエの抑制や冷害(2003 年実績)は回避できる。
③
雑草抑制と施肥に米糠や屑大豆を使用するため, 農薬, 化学肥料の軽減になる。
④
湿地として水田の多様性を高め,渡り鳥の生息環境に役立つがハクチョウにより畦
畔が壊される。
⑤
春先に田んぼに水が張ってあるため,ニホンアカカエルの良好な産卵,生育場所に
なる。また,ユスリカが生息するためツバメの飛来が多い。
⑥
障害不稔発生の軽減や高温登熟を回避するための晩期栽培に適合している。
⑦
米糠だけの投入のため減収(20%~30%)は避けられない。
⑧
雑草が多くなると除草の労力が必要となる。
⑨
生物が豊になるためサギが多く飛来する。
3.まとめ
ふゆみず田んぼを永年続けるのはホタルイ, コナギ等の雑草の抑草が困難であるため,
地域ですべて同じ栽培方法でなく,
「ふゆみずたんぼ」,
「農薬・化学肥料節減栽培」, 「慣
行栽培」のブロック決めローテーションを行いながら取組むことにより, 地域全体の環境
保全に寄与できると考える。
3.平成21年度の取り組み
1)伊豆沼2工区及川祐宏水田
平成15年より開始
50の水田を2分割(中央に土水路の排水路を設置)して取り組む
15年は不耕起で不耕起専用田植機(井関製)で植え付ける。
16年は代掻きを行い普通の田植機で植え付ける。
以後,普通の田植機で植え付ける。
15年は,冷害年であったが慣行田に比較して減収は少なかった。
魚道の設置と無農薬,無化学肥料栽培のため,生物多様性を確認する。
平成21年はみやこがねもち25a,ヒトメボレ25a,作付け
2)伊豆沼3工区高橋吉郎水田
平成16年より開始
経営体育成基盤整備事業で整備した大区画水田で実施
平成18年より平成20年まで,農林水産省の補助事業で冬水田んぼの検証を行
う。
3年継続すると雑草とカメムシの発生が多くなるため,平成21年からはローテ
ーション方式を導入する。
21ねんは,雑草の被害はなかったがカメムシの被害はあった。
品種はヒトメボレ
3)三塚水田
平成16年20a 取り組み・・・ヒトメボレ
平成17年より60a 取り組み・・・コシヒカリ
ヒトメボレより出穂がおそいため,カメムシの被害はなし
平成20年には20a の水田雑草が多く発生5.5俵の収量
平成21年は20a の水田には丸井有機肥料散布と6月初旬に除草機を使用
雑草は収量に影響するくらいの発生はなし。
水 田 魚 道 を 設 置 し ま し ょ う
ナマズのがっこう
1.はじめに
「 水 田 魚 道 」は ,端( 1999) 1 ),宇 都 宮 大 学 水 谷 教 授 ,水 土 里 ネ ッ ト 福 井
鈴 木 ( 2000, 2001) 2 ) 3 ) ら が 提 案 し 一 部 の 地 域 で 取 組 み が 進 め ら れ て い る
が,まだ点的実施の域を超えておらず十分とは言えない現状である.
そこで,
「 ナ マ ズ の が っ こ う 」と「 メ ダ カ 里 親 の 会 」
( 以 下 両 団 体 )は 早 急
に 全 国 に 普 及 す る た め ,両 団 体 の「 水 田 魚 道 」開 発 の 研 究 成 果 を 基 に「 水 田
魚道づくりの指針」を作成し,平成19年より普及活動に取り組んでいる.
2.「伊 豆 沼 ・内 沼 ドジョウ・ナマズ研 究 会 」(ナマズのがっこう会 員 )の取 組 み経 過
平 成 15 年 3 月 に ,県 農 業 土 木 職 員 有 志 及 び 伊 豆 沼 周 辺 の 農 家 ,地 域 住 民 ,
土 地 改 良 区 の 職 員 ,企 業 の 職 員 有 志 が 集 ま り ,水 田 魚 道 の 試 作 ,遡 上 実 験 に
取組みました.
圃 場 整 備 完 了 地 区 ,新 規 に 圃 場 整 備 工 事 を 実 施 す る 地 区 に 設 置 が 可 能 な 工
法 を 目 的 に 開 発 し た .開 発 に あ た っ て は ,人 力 施 工 が 可 能 で ,軽 量 な 資 材 で
安 価 に ,耐 久 性 に 優 れ ,誰 で も 設 置 可 能 な 工 法 と す る 必 要 が あ っ た こ と か ら ,
木 材 ,電 線 管 ,波 付 の 丸 型 ,波 付 の U 型 ,コ ン ク リ ー ト B F を 素 材 と し た 水
田魚道を試作し,遡上実験を実施した.4)5)
そ の 結 果 ,「 波 付 の U 型 」 と 「 波 付 の 丸 型 」 の 既 製 品 を 利 用 し た 水 田 魚 道
の 遡 上 効 果 が 良 好 で ,安 価 に 設 置 が 可 能 の こ と か ら ,そ の 設 置 方 法 に つ い て
紹介する.
3.水 田 と排 水 路 を直 結 する魚 道
1) 「波 付 の丸 型 」を使 用 した水 田 魚 道
ポリエチレン製 の丸 型 管 で内 外 面 が凹
凸 の形 状 で内 径 150mm の管 を使 用 し,
水 路 溝 畔 の法 面 に10°前 後 の勾 配 で設
置 する.
遡 上 魚 種 は,ドジョウ,ヨシノボリ,メダカ,
モツゴ,タモロコなどの体 高 の低 い魚 種 に
適 する.
写 真 ―1 波 付 の丸 型
魚 道 内 の流 速 が魚 の突 進 速 度 より早 いと遡 上 ができないので,流 量 を調 整 し遡
上 可 能 な流 速 に調 整 する必 要 がある.波 付 の丸 型 管 の水 深 を1cm前 後 に調 整 す
ると良 い遡 上 結 果 が得 られた.
魚道遡上口と排水路(水面)との接続部は水中に先端が深く埋没すると,
「 水 面 の 流 れ の 変 化 」や「 水 音 で 遡 上 を 刺 激 す る 効 果 」が 失 わ れ ,魚 の 遡 上
が阻害される.
こ の た め ,水 路 の 水 位 変 動 に 対 応 で き る よ う に ,末 端 に フ ロ ー ト( 発 砲 ス
チロールやペットボトル等)を設置し,管の先端の底面を水面(自由水面)
に近づけることが必要である。4)
魚道の遡上口の流れが排水路の流れより早いと遡上が良好である。
U 型断面水路に設置する場合は, 魚道
の取り付け部を台形断面にして拡幅す
る.
拡 幅 部 は よ ど み と な り ,流 速 が 遅 く な り ,
魚 の 集 ま り 場 所 に な る た め ,魚 道 へ の 遡 上
が 促 さ れ る ( 写 真 ― 2 ).
また, カエルの移動場所としても利用
が可能である.
写真―2
魚道の遡上口
水 田 への取 付 けの方 法 は,水 平 Lボタイプと落 水 兼 用 タイプ2つの方 法 がある.
① 水 平 Lボタイプの設 置 方 法
「波 付 の丸 型 」,「接 続 ソケット」,「水 平 Lボ」,「水 位 調 整 堰 板 」の資 材 を使 用
する.
水 田 との取 付 けは,水 平 Lボを田 面 からマイナス5cmに設 置 し,接 続 ソケットに
波 付 の丸 型 をねじ込 み,接 続 ソケットを水 平 Lボに挿 入 し,波 付 の丸 型 を水 路 法
面 に10°前 後 の一 定 の勾 配 で設 置 する.
田 面 水 位 と の 調 整 は ,水 平 L ボ( 波 付 の U 型 )を 使 用 し ,高 さ を 変 え た
堰 板( 4 ,5 ,6 ,7 ,8 ,9 ,1 0 cm)で ,波 付 の U 型 の 凹 凸 に 差 し 込
み 調 整 す る (波 付 の U 型 共 通 )( 写 真 - 3 ).
高さを変えた堰板
差し込み状況
写 真 -3
水田との取付け部の状況
魚道と水田との接続
② 落 水 兼 用 タイプの設 置 方 法
平 成 2 0 年 に 考 案 し た タ イ プ で , 「波 付 の丸 型 」,
「落 水 口 」,「接 続 ソケット」の資 材 を使 用 する.
溝 畔 に「落 水 口 」を田 面 からマイナス15cmに設 置 し,
波 付 の丸 型 をねじ込 み,水 路 法 面 に10°前 後 の勾 配 で
設 置 する.
水 田 側 は,接 続 ソケットに波 付 の丸 型 をねじ込 み,接
続 ソケットを落 水 口 の呑 口 に挿 入 し10°前 後 の勾 配 で設
写 真 ―4 落 水 口
置 する.田 面 水 位 に応 じた「波 付 の丸 型 」の調 整 は,ペットボトルを取 り付 け一 定
の流 量 が流 れるように調 整 する.その場 合 ,波 付 の丸 型 管 の水 深 が1cm前 後 に
調 整 し緩 やかな流 れとする.
③ 波 付 の丸 型 管 の 水 深 と 流 量
簡 易 流 量 測 定 装 置( 設 置 勾 配 10°)で 5 L 容 器 と ス ト ッ プ ウ オ ッ チ で 測
定した結果は表-1の通りである.
表-1 波付の丸型(150mm)水深と流量(設置勾配10°)
水 深(mm)
5
10
15
20
25
流 量(L/S)
0.19
0.56
1.01
1.96
2.25
2) 「波 付 のU型 」を使 用 した水 田 魚 道
ポリエチレン製 の全 面 に凹 凸 の波 があるU型 水
路 の既 製 品 (幅 が 18cm~100cm の製 品 が市 販 )
(写 真 -5)と「自 在 L ボ」(写 真 -6)「水 平 エルボ」
(写 真 -7)の資 材 を使 用 する。
資 材 の 接 合 は,ラジェットとスパナを使 用 して,
容 易 に組 立 ができる.
写 真 -6 自 在 エルボ
写 真 -5 波 付 の U 型
写 真 ―7 水 平 エルボ
写 真 -8 重 ねて接 続
「波 付 のU型 」は,底 面 粗 度 タイプとプールタイプ(千 鳥 X 型 )の設 置 方 法 があ
る.底 面 粗 度 タイプは製 品 をそのまま使 用 するもので,プールタイプ(千 鳥 X 型 )
は凹 凸 の溝 に堰 板 を千 鳥 に挿 入 し,プールを造 る.
底 面 粗 度 タイプは,波 付 の丸 型 と比 べ底 面 の幅 が広 いため流 量 (水 深 )の調 整
が難 しく,ドジョウ,ヨシノボリの体 高 の低 い魚 種 の遡 上 に限 られる。
プールタイプ(千 鳥 X 型 )は,堰 板 で流 速 の多 様 性 が確 保 されるため,ドジョウ,
メダカ,モツゴ,タモロコ,ヨシノボリ,等 の体 高 の低 い魚 類 とフナ,ナマズ等 の体
高 の高 い魚 類 の遡 上 に適 する.
遡 上 させる魚 種 に応 じて幅 と堰 板 の間 隔 ,設 置 勾 配 と堰 板 の間 隔 を変 える必
要 がある.
設 置 場 所 の水 路 断 面 の形 状 により,水 路 法 面 に固 定 する方 法 と単 管 パイプで
梯 子 土 台 を造 りその上 に波 付 の U 型 を載 せ可 動 式 とする方 法 があります。
水 路 法 面 に固 定 する方 法 は,台 形 断 面 の水 路 ,U 型 断 面 水 路 で魚 道 設 置 場
所 の水 路 の拡 幅 が可 能 な場 合 に採 用 します.U 型 断 面 水 路 で水 路 拡 幅 ができ
ない場 合 は,可 動 式 とします.その場 合 は,増 水 時 の水 位 よりも高 い位 置 に梯 子
土 台 を設 置 する.
① 設置勾配と堰板の間隔
プール内の水深を確保するためには,設置勾配が急になるにしたがっ
て 堰 板 の 設 置 間 隔 を 狭 め る 必 要 が あ る 。堰 板 の 最 低 高 さ を 100 ㎜ と し た 場
合 , 設 置 勾 配 と 堰 板 間 隔 の 目 安 は 表 -2 の と お り で あ る . 7 )
表-2 設置勾配と堰板間隔
設置勾配 (
°)
堰板間隔 FL(cm)
4°
8°
10°
15°
20°
25°
30
25
20
15
15
10
② 堰板の形状と越流量
斜 部 の 角 度 は 15°と し ,頂 部 は 剥 離 流 が 生 じ な い よ う に 半 円 形 に す る .
波 付 き の U 型 ( 180 型 , 千 鳥 X 型 ) の 設 置 勾 配 1 0 °で の 堰 板 の 越 流
水 深 と 流 量 , 水 面 幅 の 関 係 は 次 の 通 り で あ る (表 -3 ). 7 )
体高の高い魚類を遡上させるには,越流水深の確保が必要である.
表-3 波付のU型(180型,千鳥X型)堰板の溢流水深と流量(設置勾配10°)
溢流水深(cm)
1.2
流 量(L/S) 0.12
水 面 幅(cm)
4
2
0.44
6
3
1.0
11
4.5
1.9
14
6
3.2
18
7
4
18
4.おわりに
水田魚道を多くの場所に設置し,田んぼまわりの魚を増やし,生きもの
の豊かな農村環境づくりを進めていくことが必要である.
【引用文献】
1) 端 憲 二( 1999)小 さ な 魚 道 に よ る 休 耕 田 へ の 魚 類 遡 上 試 験 ,農 業 土 木 学 会 誌 67(5),19-24
2) 鈴 木 正 貴 ・
水 谷 正 一 ・ 後 藤 章 (2000)水 田 生 態 系 保 全 の た め の 小 規 模 水 田 魚 道 の 開 発 , 農 業 土 木 学 会 誌 68(12),19-22
3) 鈴 木 正 貴 ・ 水 谷 正 一 ・ 後 藤 章( 2001)水 田 水 域 に お け る 淡 水 魚 の 双 方 向 移 動 を 保 証 す る 小 規 模 魚 道 の 試 作
と 実 験 , 応 用 生 態 工 学 4(2), 163-177. 4) 三 塚 牧 夫 ・ 遊 左 隆 洋 ・ 渡 邊 真 ・ 大 場 嵩 ・ 結 城 あ ゆ 美 ( 2005) 伊 豆
沼 ・ 内 沼 周 辺 に お け る 小 規 模 水 田 魚 道 の 遡 上 実 験 . 平 成 17 年 度 農 業 土 木 学 会 大 会 講 演 要 旨 集 . 436-437.
5) 三 塚 牧 夫 ・ 遊 左 隆 洋 ・ 渡 邊 真 ・ 大 場 嵩 ・ 結 城 あ ゆ 美( 2005)伊 豆 沼 ・ 内 沼 周 辺 に お け る 小 規 模 水 田 魚 道 の
遡 上 実 験 . 平 成 17 年 度 農 業 土 木 学 会 大 会 講 演 要 旨 集 . 436-437. 6)
鈴木正貴・三塚牧夫・中茎元一・水谷
正一:水田魚道によるネットワーク復元の事例,田園の魚をとりもどせ
7) メ ダ カ 里 親 の 会 ・ ナ マ ズ の が っ こ う : 水 田 魚 道 づ く り の 指 針 ( 2008)
高 橋 清 孝 編 帳 , 122-128
水路法面に埋設する魚道(波付のU型)の設置事例
平 面 図
A
S=1/50
10.67
10.00
コルゲートφ150
左曲り平面エルボ
180型
9.76
105゜
自在
エル
ボ 1
80型
波付
のU
型
9.51
8.47
HPφ600
8.27
9.05
L=65
80
180型
L=
61
8.93
20
T-1
9.78
10.69
A
縦断面図
S=1/50
L=6580
左曲り平面エルボ 180型
自在エルボ 180型
ΔH=1100
波付のU型 180型 L=6120
10°
A-A
S=1/50
波付のU型 180型
左曲り平面エルボ 180型
波付のU型(180型) 設置勾配10°斜長 L=6.12m
資 材 名 称
仕 様
単 位 数 量
単 価(円)
金
額(円)
重
量
波付のU型
B : 18cm H : 22.5cm L : 2.04m
本
3
7,650
自在エルボ
180型
ヶ
1
5,130
5,130
見 積
ヶ
1
19,050
19,050
見 積
枚
41
500
20,500
見 積
式
1
4,500
4,500
見 積
平面エルボ
堰 板
取付部堰板
計
左 角度105° L1:1.15m
θ=15° HD=8cm
L2:0.55m
22,950 11kg/本
備 考
72,130
物 価 版 4 月 号 P-280
水田直結型可動式魚道(波付のU型)の設置事例
平 面 図
S=1/50
9.42
L=2040
9.80
8.77
波付のU型 180型
HF(B)500×(H)500
A
T-1
T-2
8.55
8.55
8.10
9.46
HF(B)600×(H)900
8.25
8.54
波付のU型 180型 L=6120
自在エルボ 180型
左曲り平面エルボ 180型
HF(B)500×(H)500
L=6580
9.39
9.63
A
縦断面図
縦断面図
A-A
S=1/50
S=1/50
L=6580
L=3540
左曲り平面エルボ 180型
自在エルボ 180型
波付のU型 180型 左曲り平面エルボ 180型
波付のU型 180型 L=6120
L=2040
L=1500
波付U型 180型
ΔH=1400
単管パイプ
12゜
既設コンクリ-ト水路
単管パイプ
波付のU型 180型
既設コンクリート水路
B 600 × H 900
波付のU型(180型) 千鳥X型
資 材 名 称
仕 様
単 位 数 量
単 価(円)
金
額(円)
重
量
考
B : 18cm H : 22.5cm L : 2.04m
本
4
7,650
自在エルボ
180型
ヶ
1
5,130
5,130
見積
平面エルボ
左 角度90°L1:1.5m L2:0.5m
ヶ
1
19,050
19,050
見積
堰 板
θ=15° HD=8cm
枚
41
500
20,500
見積
式
1
4,500
4,500
見積
本
4
1,280
5,120
物価版 8月号 P-146
ヶ
16
170
2,720
物価版 8月号 P-146
取付部堰板
単管パイプ
クランプ
計
D:50mm
L:4m
30,600 11kg/本
備
波付のU型
87,620
物価版 4月号 P-280
水路法面に埋設する魚道(波付の丸型)の設置事例
A
平 面 図
S=1/50
波付の丸型 U型ソケット
9.86
9.89
5゚
10
左曲り平面エルボ
180型
波付
8.70
の丸
型 D
150型
L=82
50
8.85
水路法面への設置状況
T-1
9.67
9.65
A
縦断面図
S=1/50
左曲り平面エルボ 180型
波付の丸型 D150型
L=8250
水平Lボの挿入状況
ΔH=1100
波付の丸型 U型ソケット
8゜
A-A
S=1/50
左曲り平面エルボ 180型
波付の丸型 D150型
水路法面への設置状況
波付の丸型(内径150) )水路法面設置タイプ 設置勾配 8°斜長 L=8.25m
資 材 名 称
波付の丸型
平面エルボ
仕 様
D : 15cm L : 4m
左 角度105°L1:1.15m L2:0.85m
単 位 数 量
単 価(円)
金
額(円)
重
量
8,000 5 . 5 k g /本
備
本
2
4,000
ヶ
1
19,710
19,710
見 積
物価版 2009.9月
差込ソケット
波付のU型 波付の丸型
ヶ
1
5,000
5,000
見 積
取付部堰板
必要な場合 H=4~10cm調整 5枚
枚
5
500
2,500
見 積
計
35,210
考
水路法面に埋設する魚道(波付の丸型・落水口兼用)の設置事例
水田側の波付の丸型
落水口と波付の丸型の接続
水路法面への設置状況
波付の丸型(内径150)落水兼用水路法面設置タイプ 設置勾配 10°斜長 L=6.00m
資 材 名 称
波付の丸型
落水口
差込ソケット
計
仕 様
単 位 数 量
D : 15cm L :4m
幅:220mm
高さ:470mm
落水口 波付の丸型
内径:150mm
単 価(円)
金
額(円)
重
量
備
考
本
2
4,000
8,000 5 . 5 k g /本
物価版 2009.9月
ヶ
1
8,000
8,000
見 積
ヶ
1
6,000
6,000
見 積
22,000
Fly UP