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講座資料1 - 宮川流域ルネッサンス協議会
観光 博物館 2005年10月14日 スウェーデンの エコミュージアム 地産地費 コーディネート:今井由美子 地域振興 報告:福田良彦(三重県地域振興部) 東爪絵里(宮川流域ルネッサンス協議会) ■エコミュージアム:フランスで1960年代後半に誕生 ■ベルギー、カナダ、北欧、日本へと世界に広がっている。 ベリスラーゲン ■スカンジナビア諸国:20 世紀に入ってから、自分の地域 エコミュージアム の歴史を見直す運動が起き、住民による地域遺産の保 全活動が活発で、生涯学習活動も日常化している。 ■地域の自主的な活動を基礎にし、広域に分散した形が 特徴。現在、10ヶ所程度が運営されている。 ・ベリスラーゲン:鉄の歴史、世界最大規模 ・クリチャンスタッド:湿地帯の自然環境の保護 クリチャンスタッド ■スウェーデンにおいても、エコミュージアムという エコミュージアム 言葉は、まだ、一般的ではない。 ファルビグデン・エトラダレン・エコミュージアム ∼6000年続く農業地域∼ ・スウェーデン南西部、ヨーテボリの東側約 100km に位置する、ファルビグデン地域のエトラダレン(エトラン 川渓谷)を中心に、南北 45km、東西 20km の地域で、ファルシェーピンとユルリシャハムの2つのコミューン をテリトリーとしている。 ・テーマは、「6000 年の農業地帯」で、80ヶ所以上ものサイトを持つ。北部のファルシェーピン・コミューンは、 長い農業の歴史と石器時代からの文化をもっており、南部のユルリシャハム・コミューンは、内陸交通の要 所である。 ・もともとツーリストプロジェクトとして始まり、コミューンの観光局が先に提案し、その後、地域の博物館が設 立にかかわり、1992 年に完成した。エケハーゲン体験歴史村に本部事務所をおいている。 ・年間の来訪者は、エコミュージアム全体で15万人程度。そのほとんどは5∼9月に訪れる。サイトごとの来 訪者には差があり、3万人ほど訪れるところもあれば、100 人程度のところもある。 ホームページ http://www.ulricehamnsturistbyra.se/ekomuseum/ ・ ・ 1 2 ①多様なサイトが ②スウェーデン 点在する。 南西部 3 ③地域のまん中を エトラン川が流れる 4 ④平坦な地域が多く、内陸部では あるが、豊かな田園が広がる 名前 エコミュージアムのサイト 35. Wardins Gårdsprodukter 43. Kronogården 7 ・ハーブ、ベリー、野菜を有機農法で栽培している。 ・19世紀の古い農家の敷地 ・家族で、朝から日が沈むまで働き、自分の仕事に 全体を農業博物館として、地 誇りをもっている。日本の野菜というのもありました。 ・販売や農業市に出店もしている。 いる。裏に自然散策路もある。⑦よく手入れされた農場 5 6 ⑤マリアさんと娘さん 域の保全グループが管理して ⑥よく手入れされた農場 8 9 ⑧自然歩道を歩く ⑨素朴なパンフレット棚 1. Åsle Tå その他のサイト ・小作人の小屋が集積する小さな村全体を野外博物館 ■歴史的遺産:古墳、教会、石碑等 としている。1920 年代にアメリカ移民により廃村となった ■ミュージアム:博物館、工場、発電所 もので、製靴、鍛冶など、様々な職人の住居や製粉所、 ■自然:カルスト地形、遊歩道等 農業の美術館がある。予約で、ガイドツアーも可能。 ■アート:手作りの店、工房等 12 ■特産品:手作りの店、酒造場等 11 ■活動:古代村アクティビティ、工房等 ■レストラン:レストラン、カフェ等 ■宿泊施設:ユースホステル、民宿等 10 ⑩古い農家を現地保存 ※2005年は82のサイトが登録 ⑪素朴なミュージアム ⑫様々なサイト エコミュージアムの拠点施設 ・市立エケハーゲン古代村に専門職員のデスクが置かれている。 ・管理棟には、施設の事務所以外にも、ツアーインフォメーションや エコミュージアムの本部、レストランなど様々な機能が同居している。 ・職員も、いくつかの業務を兼務しており、エコミュージアムの専門職員 であるシグブリッドさんも、エコミュージアムからの報酬は40%。 ・コンパクトで簡素な施設だが、様々な情報が手に入るうえ、おいしい 13 食事が提供されるレストランや、様々な用途に対応できる講義室が 併設されている。対応も非常に親切で丁寧だった。 ⑬ツアーインフォメーションも併設されている管理棟 (本部) 27. Ekehagens Forntidsby 講義室 事務所 棚 案内 14 ⑭復元家屋の中で様々なアクティビティーが行われる。 レストラン 厨房 設立からの経緯 1987 年:失業対策の一つとして、プロジェクトの企画が始まる。 1989 年:実験的にプロジェクト開始。村の代表者との話し合い。興味をもたれるようなサイト候補の調査。 1991 年:エコミュージアムのサイン等を立て始めた。 1992 年:エコミュージアム設立。ボランティア協会設立。 1994 年:パンフレット作成 1997 年:他のエコミュージアムとのネットワーク、勉強会を始める。 1997 年:専門職員雇用。権限がコミューンからエケハーゲンに移行する。エコミュージアムデー始める。 1998 年:英語、ドイツ語のパンフレット作成。スウェーデンのエコミュージアムの基準ができる。 2004 年:協定期間が3年から1年に変更。エコミュージアムデー自主性重視に移行。 2005 年:コミューンが、サイトの自立を求め、補助金0に、専門職員雇用打ち切り。 エコミュージアムの仕組み ・資金:コミューンからの補助金、広告収入 ファルシェーピン・コミューン 助成金、寄付金など ケハーゲン古代村 ユルリシャハム・コミューン ・レファレンスグループ:サイト代表5名。 専任職員 観光部局 運営計画やサイトに関する調整 レファレンスグループ エコミュージアムファルビグデンー ・ボランティア協会:地域や団体との調整 サイト(80数箇所) エトラダレン協会(ボランティア協会) ・サイト:独立しており、自主運営 エコミュージアムあれこれ 休憩施設 休憩施設に備え付けられたパンフ棚 道路案内板は行政が整備しているが、主要 施設のみ。各施設は各々で整備している。 手作りの案内看板 セルフガイド ・パンフレット サイトの位置、テーマ別のインデックス サイトの概要と連絡先を記載 スウェーデン語のほかに、英語版、ドイツ語版 があり、本部や各サイトに置いてある。ホームページ からも、見ることができる。 簡素だが、必要かつ十分な内容が記載されている。 ・カレンダー 企業等の広告をとって、発行している。 シグブリッドさんの仕事 1997 年から 2004 年まで専門職員として勤務していた。週40時間の 40%、 週 16 時間の雇用。春・夏の人が多いときはフルタイムで働いていた。 主な仕事:「サイトと継続的にコンタクトをとる。」「ネットワークをつなげる。」 「新しい情報や考えを皆に教える」「マーケティングを行う。」 「新しいサイトを開拓する」「NPOや行政とコンタクトをとる。」「広告をとる」 「パンフレットをつくる」「エコミュージアムデーを企画する」「ツアーコーディネートを行う。」 16 15 ⑮パンフレットには、サイトの概要やオープン時間、 連絡方法が記載されている。 ⑯エコミュージアムデーのプログラム 各サイトでのイベントを記載 17 ⑰パンフレットの広告 も仕事のひとつ 2005年に起きたこと・・・ 人々の声・・・・ ・予算が打ち切りになり、シグブリッドさんを雇用す ・自分の仕事に誇りを持っている。 る費用もなくなった。専任職員がいないので、エコミ ・自分の生きている所で生活できるようにしたい。 ュージアムのコーディネートが困難になった。 ・エコミュージアムは、この地域の価値を高めており、 ・コミューンはサイト自体がもっと自立して自分自身 行政にとっても、企業にとっても、もっと価値がある。 が責任を負うべきだと考えている。 ・サイトは自分だけではすべてをやることができない。 ・本部では、HPやパンフ等は今までのものを流用 自然とか、歴史とか、全体としての話にならない。 したり、ツアーインフォメーションの援助でやりくりしている。 ・エコミュージアムの考え方に共感する。 ・新しく参加したサイトを中心に、カルチャー・ウェイ ・ずっと住んでいる人には地域の良さが分りにくい。 という名でPRするという自主的な動きもある。 ・エコミュージアムは若い人には人気がない。 地域にとってエコミュージアムとは・・・ ・エコミュージアムの真髄:地域力を育む地域の学校であること。地域の財産はそこに住む人の熱い想い。 ・観光:エコツーリズム、グリーンツーリズム、サイクリング ←地域に価値をもたせるエコミュージアム ・地産地消:地域の特産品、伝統的な産物、こだわりの産物 ←産業に価値を与えるエコミュージアム ・博物館:学術的展示、調査研究 ←住民が地域の成り立ちを理解。地域資源を保存するエコミュージアム ・地域振興:地域に対する誇りと愛着。自分の生きている所で生活できる。 ←生活を育むエコミュージアム ・地域の自然、歴史を踏まえ、全体をつなぎ、コーディネートすることで、地域全体が生きてくる。 ・行政の役割 ← 地域の魅力の価値:気づく仕組み、みせる仕組み、まとめる仕組み、続ける仕組み ・地域の役割 ← ファルビグデン・エトラダレン・エコミュージアムの事例から(似ていること、学ぶこと、創ること) ・エコミュージアムの価値:地域の魅力を伝える人、そして、人をつなぎ、全体としてみせる仕組み ・文化の因数分解:人間力、地域力、創造力を高める。文化力の向上→三重県政の全ての政策の基礎。 ・新しい時代の公:多様な主体が、力をあわせ、魅力ある住みよい地域を創る。 (参考文献)「エコミュージアムへの旅」大原一興(鹿島出版会)1999 「北欧の農村地域におけるエコミュージアム調査報告書」(社団法人農村環境整備センター)2000