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町史とっておきの話196 神奈川大学 ルシーニュ・フレデリック氏
▲ 只見学 只見町インターネット・エコミュージアムのフロントページ とっておきの話 社会変化と自然環境との関係を 扱う博物館を指します。 世 界 の エ コ ミ ュ ー ジ ア ム は、 産業革命の影響を受ける前、あ るいは受けた直後の農業地域の 文化(いわゆる「田舎の伝統文 化 」) を 対 象 に す る こ と が 一 般 的です。博物館内に復元された 現場で展示物(民具等)を見て 触れたり、地元の話者から話を 聞いたりできる展示方法を採用 していて、よく屋外にも展示物 が設置されています。リビエー ル氏によって提唱されたエコミ ュージアムの理念は、常に地元 の住民と連携しながら維持すべ きであり、とくに博物館が社会 に還元することを重要視してき ました。 只見町インターネット・エコ ミュージアムの基本方針もこれ と同じで、ウェブ上の博物館で 採用することを考えたもので す。ただ、インターネット上で 見られるデジタル式の博物館で すから、明らかに特殊な問題が ありました。というのは、紹介 している内容が只見町の民具や 生業、そして昭和 年代の高度 経済成長期まで残っていた伝統 神奈川大学非文字資料研究センター協力研究者 只見町インターネット・エコ ミュージアムは、先に述べた「住 民 と 連 携 す る 」「 社 会 に 還 元 す る 」 の ほ か に、「 人 間 を 中 心 に 据 え る 」「 只 見 町 の 生 活 を 正 確 に 紹 介 す る 」「 郷 愁 的( ノ ス タ ルジック)な情緒に傾倒しない」 を理念として作成されていま す。これらの基本方針のもとに 作成された只見町インターネッ ト・エコミュージアムは、デジ タル世界(インターネット世界) のなかに浮かぶ一つの「アナロ グ島」として発展させていけば、 世界的な視点からみても極めて 独創的なプロジェクトになるの ではないかと期待しています。 ルシーニュ・フレデリック 的な生活様式全般であり、その すべてはアナログ式の世界なの です。只見町インターネット・ エコミュージアムは、対象とし てのアナログ式の文化とメディ アとしてのデジタル式のインタ ー ネ ッ ト を 扱 っ て い る だ け に、 両方の特徴を強く意識する必要 がありました。インターネット の性格を明確に把握し、その機 能を活かすことにも苦心しまし たが、現実と仮想現実の間で使 い手に錯覚を起こさせるような 3D映像などのバーチャルリア リティ(仮想現実)を軸にした 空間を構築しない基本方針を決 めました。 したがって、現在のところウ ェ ブ 上 に 掲 載 し て い る 資 料 は、 民具カードのほかに、作業工程 表、写真、図式、映像、文章な どで、これからまたその種類が 増えるかもしれませんが、それ らの資料を交差させることによ って、只見町の人々の暮らしが パソコン画面にバーチャル的に 再現されるのではなく、一人一 人の使い手の頭のなかで認識さ れるような展示形態としまし た。 13 デジタル世界に 浮かぶアナログ島 前回まで只見町インターネッ ト・エコミュージアムの構築に あたっては、地理・歴史上の独 特な環境下で形成された只見町 の民俗文化の貴重性があり、生 活が近代化していくなかで町民 自身の手によって民具の収集・ 記録運動が行われたという二つ の好条件があったことを述べて きました。今回は、エコミュー ジアムとインターネット上の博 物館の方針について話をしたい と思います。 エコミュージアムは1960 年末、フランスのジョルジュ= ア ン リ・ リ ビ エ ー ル( Georges )によって発想 Henri Rivière され提唱された博物館の概念で す。 フ ラ ン ス 語 で エ コ ミ ュ ゼ ( écomusée )と言いますが、日 本では「エコミュージアム」と いうネーミングで親しまれてい ます。「エコ」は環境学、「ミュ ー ジ ア ム 」( ミ ュ ゼ ) は 博 物 館 という意味ですが、それは自然 生態と社会生態も含んでいま す。主に人間の日常的な営みと ▲仏アルザス地方のエコミュージアムの ロゴと看板写真 196 30