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質疑応答 Q 気温や湿度との関係 インフルエンザは、普通

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質疑応答 Q 気温や湿度との関係 インフルエンザは、普通
質疑応答
Q
気温や湿度との関係
インフルエンザは、普通、湿度が高いと感染力が落ちるという話を聞いたことがあるんですけ
ど、このH5N1の場合というのは、高温高湿のところばかり流行っているようですけれど、こ
れは何か特徴かなんかあるんでしょうか。
A
実はインフルエンザは湿度が低い、あるいは気温が低い方が良いというのは、これは実験室
のデータではあるんです。実際に湿度が低い方がウイルスは長生きし、湿度が高い方が早く死ぬ
んです。これはそういう実験データはあります。しかし、例えば今、日本を初めとする温帯地域
では冬にインフルエンザが流行りますよね。何故流行るかは今のところ科学的な理由はわかって
ないんです。ちなみに日本だけではなく、ベトナムでも台湾でも、また、2年前はアフリカのコ
ンゴという赤道直下のところで、しかも雨季にインフルエンザが流行しことがあります。つまり
実際、実験上ではそういうデータがあるので、室内では適切な湿度を保ちましょうとかいわれま
すが、現実問題ではどこでも起こってます。先程申し上げたように、新しいウイルスも春先から
起こったり、春先からというとつまり日本でいうと梅雨の時にも起こっているわけです。他の国
では夏に起こっているところもある。それも今のところ全然理由はわかっていない。だから湿度
が低いから起こらないというのは言えないというのが今のところです。
Q
発症と症状が出た場合の対処
発症後 48 時間以内というお話がありましたが、この発症というのは一番わかりやすいのは熱
が出たということでしょうか。また、発症してから 48 時間以内という非常に極めて限られた時
間で何らかの手当をしなければいけないということですが、現地、例えば台北にいて、熱が出て
下痢が続いてというような、あるいは鳥と接触したというのがあれば、衛生署が指定する病院に
まずは駆け込むというのがやはり一番懸命な手当ということになるんでしょうか。
A
今のところ、この発症という言葉は熱が出た時点を指します。熱が出た時点から 48 時間以
内。もちろん 49 時間になったら効かないということは当然もちろんありません。
台湾CDCは現在、詳細なガイドラインを作っていますし、これまでみた限りでは病院でもき
ちっとそれが理解されていますので、そういった身に覚えがあって熱が出れば、病院に行ってそ
の旨を申し上げれば適切な対応がなされると思いますし、疑われた時点でタミフルも投与される
と思います。そして当然、入院隔離になります。36 時間、本当はそんなにかからず、実は大体
最短で6時間位で結果は出るんです。日本は 24 時間と実は言っていますが、台湾は 36 時間と言
っています。これは細見をする時間なんです。だから最初のデータは6時間後にわかっているん
ですけれども、少なくともその位で、1日から1日半で結果は出ますので、それが出れば「違い
ました」ということでお家に帰れるわけですよね。
最初にやはり確認するのは、あくまで万が一のためです。ただ、今のところ 23 の指定医療機
関がありますが、これは台湾の中でも、第1段階に分類されているところで最も施設が良い、あ
るいはこれまでSARSの経験とかがあって十分、非常にテクニカルに高いところが指定されて
いるんです。下にも第2、第3、第4段階というのがあって、台湾全土で410いくつかの病院
が一応、その協力病院みたいな形の指定を受けています。そういったところではそういった情報
もきちっと出てますので、そういった疑いがなされればすぐに指定医療機関の方に回すという態
勢になっています。だから、やはり手近の指定医療機関、これは交流協会さんのホームページに
載せていただいたと言ってましたが、そういうところをみればわかりますし、高雄だったらそこ
の民生病院もそうですし、あと高雄医療センター、詳しい名前は違うかもしれませんが、そこが
やはり指定医療機関だそうですので、そこに行かれればいいと思います。高雄での検査はその医
療センターで行われるそうですので、そうした方がいいかなという気はします。
Q
感染鶏肉の摂取
現実的な問題として、タイなどではニワトリの加工業みたいなものが大変盛んに行われており、
焼き鳥になった状態とかで世界中に輸出されていると聞いているのですが、もしその鶏肉が既に
感染している鶏肉を使っていたとして、それをわからないままもし食べてしまった場合には、体
に何か影響というか、感染みたいなことは起こってしまうんでしょうか。
A
少なくとも焼き鳥になっていれば、熱が通っていればまず感染することはありません。万が
一、生焼けだったらどうしようかという話になると、これは例えばですね、インフルエンザウイ
ルスというのは本来はノドから感染するウイルスなんです。だからスッと通っていって胃に入れ
ば胃からは感染できないんですね。あと、胃は強酸といいましてpHが 1.5。つまり酸性が非常
に強いものですからウイルスは破壊される可能性が非常に高いというのがあります。そういった
ことから、少なくともきちっと加熱していれば安全というふうにいわれてます。万が一食べても、
これまでのところ感染しないだろうと考えられています。唯一食べて感染したといわれているの
は、ベトナムで、郷土料理かなんかでカモの血をお皿に入れてスパイスをかけて食べるという料
理があるそうですけれども、それをやって感染した人はいます。
Q
卵の摂取
鶏肉の話の関連で卵なんですけれども、報道でみたのは大陸の方から卵が密輸されようとして、
それが港で摘発されたというような情報もあって、一方で台北では現地の人が朝、屋台で卵を使
った料理があると「よくしっかり焼いてくれ」なんて言ってますけれども、仮に卵の中にウイル
スがいたとして、生卵とか半熟卵とそのウイルスの感染力というのはどのくらいのものと理解し
ておけばよろしいでしょうか。半熟卵なんかは加熱の時間が短いので、場合によってはやはりよ
く焼いた方がいいのでしょうか。
A
感染している鳥から生まれた卵には、量はそんなに多くはありませんが、ウイルスはもちろ
んいます。これまでのところ、明らかに生卵から感染したという例はありません。ただ、ベトナ
ムで未調理の卵から感染したのではないかという症例はあります。ゆえに生卵というのは、少な
くとも感染がある可能性があれば止めておいたほうがいいと思います。私は実は生卵が大好きな
んですけれども、一応日本でH5が起こってからは、生卵は食べていません。ただ卵は好きなも
のですから、温泉卵にしますと、あれは 70 度以上に絶対になりますので、ウイルス自体は、ウ
イルスの特性として 56 度以上 10 分あれば死にますので、それは平気で食べています。
半熟卵というのがどのくらい熱がかかっているかというのが、よくわからないですが、温泉卵と
いうのは、半熟みたいにもなってますが、熱はかかってますよね。例えば、100 度であればウイ
ルスは瞬間に死にます。だから、その半熟卵がどの位の熱がかかっているかによるだろうと思い
ます。もちろん中国から来たのであれば別ですけれども、台湾では明らかな感染が今はありませ
ん。ただ、中国から日本に輸入された鶏肉からはウイルスが見つかっています。だからあり得る
可能性はあるわけで、やはり危ないことはしないに越したことはないというふうに考えます。
Q
タミフルと通常のインフルエンザ
台湾もタミフルは現在あって、今のインフルエンザでも使っていただけるということですね。
A
これはですね、国内での薬事法の問題だけで、国内でタミフルが認可されていれば普通のイ
ンフルエンザに処方ができるものと思います。今、国内で聞いた話ですけど、この間やっと 60
万人分を買ったとか言ってましたので、今、普通のインフルエンザに使うことは、おそらく台湾
CDCは考えてないと思います。やはり備蓄の方に回すものと思います。もちろん台湾が計画し
ているのは 250 万人から 300 万人分位備蓄ということを考えてますよね。
例えば日本なんかだと、
今シーズンも日本国内のマーケットに 1500 万人分あるんですね。それが 1200 万人分使われて
300 万人分位残りますから、もちろんそれを台湾にもってくれば台湾はそれですぐ充足するわけ
ですが、もちろんそういうわけにはいきません。日本だって無いわけですから。台湾は多分、今
のところ普通のインフルエンザに使おうということは考えていないと思います。
Q
タミフルの副作用について
タミフルに副作用があって、小学生の子どもが2人位変死をしたという噂を聞いているんです
がその実態はどうでしょうか?また、抗インフルエンザ薬として、今タミフルしかないんですが
その他のインフルエンザ薬の開発状況などお教え願いたいと思います。
A
タミフルを飲んで異常行動を起こしたりとか、あるいは亡くなったりしたなどという報告の
ほとんどは、実際にはタミフルとの因果関係ははっきりしておりませんし、実際にその方たちの
臨床経過を詳細にみてみると、実はタミフルによって起こったというよりも、脳症の症状の一つ
か、あるいは熱せん妄という方が考えやすいのです。本来インフルエンザの場合には、熱性けい
れんとか熱せん妄といった、熱による症状がでやすく、タミフルを投与されていないヒトにも同
様の異常行動が起こることがわかっています。このような熱による症状とか、インフルエンザ脳
症というのは熱が出たあと非常に早期に出現しますので、そうするとタミフルの投与と重なるこ
とがあるわけですが、そうしますと実際にはどっちが原因かと言うことになるわけですが、これ
は詳細に症状と経過を検討したりいろいろな検査から、これまでのところ、タミフルによるもの
ではなくて、多分、インフルエンザそのものによるものだろうと考えられています。これは実際
にアメリカのFDAあるいは日本小児科学会や我々もそうですけれども同様の見解を出してい
ますので、箇条に心配されることはありません。
ただ1つだけ言えることは、タミフルでは、稀ですが、副反応としてスティーブンス・ジョン
ソン症候群(多形滲出性紅斑)という重症の皮膚症状が出ることがあります。しかしながら、日
本では、年間 1000 万人がこれで治療されており、ということは非常に稀な副反応も出てくる可
能性がある。一方、紛れ込みも多くなる可能性があります。そこら辺を考えて、今後も注意をし
ておく必要はあります。
ちなみに私は小児科医と申し上げましたが子どもにタミフルを飲ませてます。家内にも飲ませ
てます。自分も飲んでます。医者というのは自分が病気になった時に、自分に対してすることを
患者さんにしてあげる、これが医者だと僕は思ってますので、いつもこういったときにはこうい
う話をしますが、医者はほとんど、というよりみんなタミフルを使います。これが多分、一番信
頼に足る根拠だろうというふうに僕は考えます。
タミフルがよく話題になりますが、実はタミフル以外にもインフルエンザに効果のある薬はあ
ります。代表的なものはザナミビルという、リレンザという商品名で市販されています。リレン
ザは吸入薬で、ノドにしか分布しない。つまり吸収されない。そうしますと、全身的な副反応は
ほとんどないということがあります。だからリレンザを好んで使われる臨床の先生はいらっしゃ
います。ただ吸入薬ですので、薬をシュッと出した瞬間にスッと吸い込むという技術が必要にな
りまして、少し使いにくいというのはあるかもしれません。特に子どもの場合にはそうですよね。
普通のインフルエンザはこのリレンザで十分効くと思います。普通のインフルエンザはノドにし
かウイルスは、いませんので。ただ今のH5というのは体内深部に入っている可能性があります
ので、現在の鳥インフルエンザにはタミフルを使っているわけです。少なくとも今のH5であっ
ても、新型が出たとして、それがヒトに感染するようになった時点では多分、ヒトに適応してい
ると思いますので、そうなると増殖するのはやはりノド、あるいは表面だろうと思いますので、
リレンザが効くんじゃないか。もう1つの利点は吸収されないから大量に使用して、局所濃度を
高くすることができる。そうすると効果をより強くすることができるかもしれないという利点も
あります。これゆえに、今専門家はタミフルだけでなくリレンザもやはり備蓄を考えた方がいい
のではないかという意見が結構出てきています。
それ以外には、モノクローナル抗体といいましてウイルス自体をやっつけてしまうような抗体
をつくるとか、色々な研究があります。今、もちろんパンデミックのリスクが叫ばれている時で
すので、色々なところで今研究がなされてます。ただ、今のところは未だ実験段階の域を出たも
のはありません。
Qタミフルの予防服用
タミフルについては一応処方が必要だというご説明でした。それで谷口先生の方から、ご家族
の方のお話もちょっと触れられたかと思うのですけれども、例えば、これは予防としてタミフル
を服用するということが可能かどうかということ、それで効果があるのかどうかということにつ
いてはいかがでしょうか。
A H5N1 については、予防投薬をすることによって、少なくとも発症は抑えられると思います。
というのは、先程、ウイルスがぐさっと入って感染してポンと出てくるといいましたけど、タミ
フルというのは、ポンと出てくるところを抑える薬ですので、タミフルを予防に飲んでいても、
治療でも同じなんですが、一旦ウイルスは体内には入るんです。ただそれが出てくる時に殺して
しまうんですね。だからある程度の感染はあるんです。だから感染を完全に抑えるわけにはいか
ないんですが、少なくとも発症は予防できるというふうに考えられています。
ただ、現在予防にしても治療にしても H5N1 に対して、タミフルの1回 75 ミリというのが適切
かどうかという議論があります。今のところまだデータが少なくて、わかりませんけれども、今
後のデータでわかってくれば多分、新型のインフルエンザに対しても、予防投薬はきっと効果が
あると思います。ただ予防投薬というのはある程度期間を限定できないと、例えば2カ月間ずっ
と予防投薬をするというのはどこまで意味があるかという話になってくるわけですね。いつ罹る
かわからないものをずっと飲むわけですから。そうすると長く飲めば飲むほど副反応というのは
出やすくなりますので、だから1週間と決まっていればその間きちっと予防するというのは非常
に合目的的なことだと思いますが、いつ罹るかわからないような状況だったら、これはいわゆる
スタンバイ治療といいまして、罹って熱が出たらすぐ飲むという方が合理的だろうというふうに
個人的には考えています。
Qタミフルの処方
例えば日本でタミフルを予防のためにもらいたいという場合も、一応お医者さんに相談をして
処方を受けて、それでいただくということが必ず必要だということですね。
A
今、日本で予防投与は使ってもいいということになっています。ただ健康保険はききません。
そして使用に際しては、65 歳以上で基礎疾患があってなどといういろいろな基準があって、そ
ういう人には医師の処方箋によって予防投薬をすることができます。
Qその他の抗インフルエンザ薬
リレンザなどタミフル以外の抗インフルエンザ薬も全て処方箋薬なんでしょうか。
A
そうです。
Q
タミフル以外の治療薬
インフルエンザ薬、抗ウイルス薬について現在台湾の方で独自に開発されたお薬があるという
のを噂に聞いたことがあるのですが、台湾の方で推奨というか開発されているというお薬につい
て、一体どういったもので、それがまた鳥インフルエンザ、もしくは流行するかもしれないイン
フルエンザに対してどれくらい有効で、またどういった副作用というものがあるのか教えていた
だけませんでしょうか。
A
今のこういう時期ですので、世界中、研究者あるいは製薬企業というのは、ビジネスチャン
スとして、抗インフルエンザウイルス薬の研究が色々なところでなされているのは事実ですし、
これまでのところ実験室レベルでちょっと期待できるんじゃないかというものがあるのも事実
です。ただ台湾で何か開発されているというお話は、非常に小さな部分でのお話であれば別です
が、私はそれは存じ上げません。台湾CDCの人とお話をした時もそういう話は聞いていません。
1つだけ台湾CDCの人からきちっとお話をいただいたのは、今、タミフルというのは、知的所
有権でスイスのロッシュ社というところしか製造できないわけです。元々のこれの特許というの
はアメリカのギリアドという会社がもっているんですが、台湾では今、ロッシュ社に発注しても
いつ来るか実はわからないんです。先程申し上げましたように、ロッシュ社の年間生産量の、例
えばアメリカなんか 5000 万人分も既に発注してお金も払っているわけですよ。世界三十何カ国
が人口の 10 ないし 30%の範囲で発注し、すでにお金を払っているんです。日本では、厚生労働
省が一生懸命やっており、ようやくお金がついたようですが、今発注したので世界各国の後ろに
並んでいるんですね。台湾も今並んでいるんです。だからいつ来るかはわからない。今のところ
来年、再来年位だって台湾の人は言っていましたけれど、ただ、今のところ台湾の中には必要な
分はもちろんあります。それを解決するために台湾国内でタミフルを製造する計画を彼らは立て
ています。ちなみにタミフルというのは元々人工合成で作ったものですので、製造方法というの
はそんなに難しいものではないそうです。どこでも作れる類のものなのだそうです。要するに特
許権、製造権さえ買い取ればどこでもできるんですね。台湾は今それを一生懸命やっているとこ
ろなんです。それができれば、これはもちろん同じタミフルですので効果はあります。他に訳の
分からないものを作っているという話はちょっと聞いたことがありませんので、ひょっとしたら
このタミフルを国内生産するというお話がつながっているのかもしれません。
Qインフルエンザ脳症との関連
インフルエンザは罹っても3日熱が出れば治るという印象ですが、ただ子どもが脳症を起こし
た時が一番怖いと思います。ただ先程の説明だと 48 時間以内にタミフルなりを飲んだとしても、
脳症は 24 時間程度で発症してしまうということであると、子どもの脳症に対してはあまり効果
がないということなんでしょうか。
A
非常に良いご質問だと思うのですが、これまでのところそのデータはありません。インフ
ルエンザは感染してから1日か2日、最長3日位潜伏期があり、この間にウイルスが増えて、熱
が出るわけです。つまり熱が出た時というのはもうすでにウイルスが増えて体の中でサイトカイ
ンがいっぱいできてます。現状では、脳症はこれらサイトカインによって起こると考えられてい
ますので、理屈からすると、抗ウイルス薬による治療によって脳症は防止できないであろうとい
うのは普通の考え方だと思います。
一方、インフルエンザ脳症というのは割と 24 時間以内に発症する例が多いのですが、もっと
後で発症する例も実際にはあります。また、最近は極めて早期に抗ウイルス薬が投与される例が
多くて、発症後 12~24 時間くらいで受診されてタミフルが開始されている例も結構あるようで
す。ひょっとしたらいくつかはそれで防止されているのではないかという意見もあります。とい
うのは、過去年間 200 から 300 位のインフルエンザ脳症がありましたけれども、例えば昨シーズ
ンは 100 位しかなかったんですね。ちょっと減っている。あるいは乳幼児の死亡統計をみてみる
と、脳症は1歳前後が一番多いのですが、最近1歳前後の死亡が減ってきているというデータが
ありまして、これらをみても、なんらかの影響がでているのではないかということです。もちろ
ん、インフルエンザに罹った1歳位の子を2つのグループに分けて、一方にはタミフルを投与す
る、他方はタミフルを投与しない、どっちが脳症がでるかなんて実験はできませんので実証する
ことは難しいですね。
Q民間企業におけるタミフルの備蓄と処方
ちょっと現実的な問題として教えていただきたいのですが、今日のお話でありましたように、
台湾における日本人の駐在員、およびその家族とかですね、実際にタミフルを入手することはほ
ぼ困難であるという結論かと思うのですが、仮に会社の日本の本部の方が、日本でタミフルを診
療所などを通して確保しますという話があったとしても、これは台湾、あるいはその他の国にお
きましても薬事法の問題があるかと思いますので、処方箋なしには私たち駐在員は日本へ行かな
いとそれを使うことも、投与していただくこともできませんよね。この辺のところについては、
私もちょっと本社の方にそういった問題点について報告を依頼されているものですから、実際に
は民間団体として、いわゆる会社としての対応というのはどのように考えておけばよろしいんで
しょうか。
A
現実的なご質問、非常に歓迎です。この間インドネシアに行ったときも多くの現実的な質問
をいただきました。今フェーズ3ですが、フェーズの4、5となった場合に、もしも日本人が海
外で鳥型のインフルエンザウイルスに罹った場合には、これはもちろん現地で抗ウイルス薬によ
る治療がなされるはずです。昨日台湾 CDC の方ともお話ししましたが、何国人であっても台湾国
内で鳥インフルエンザになったら、そのまま放っておけば感染源になるわけですからこれは絶対
に治療しますというふうに言われていました。これは多分、世界中どこでも同じです。他の国の
人だから治療しないとしたら周りに広がるわけですからそれを治療しないということはありえ
ないと考えます。ただこれはあくまでフェーズの4、5の話であって、6になって、例えば台湾
でも人口の 30%が罹るという状況であれば、抗ウイルス薬は足らなくなるでしょうし、これは
日本国内にいても状況は同じかも知れません。フェーズ6になった場合には、世界中が考えてい
ることですが、抗ウイルス薬の使用に、プライオリティをつけなければいけないんじゃないかと
言われています。つまりこの人はハイリスクだから治療をする、この人はリスクが低いから治療
しないということです。色々な人道的な問題があることはあるんですけれども、実際足りなくな
ったら、しようがない、それはもう政府の判断です。そうならないように準備をしておくことが
必要なわけです。
ただ1つだけ言えることは、国際会議なんかで話題になっているのは民間企業におけるパンデ
ミックプリペアードネスをどうするかということです。国によっては民間企業でのパンデミック
プランを奨励しているところもあります。
では、実際どうかというと、例えば企業に産業医がいるとします。その先生が、ある国の診療
所で処方して出すのにどの位の問題があるかということになります。例えばインドネシアなんか
には日本人会が運営している診療所があるのですが、ジャカルタでは、抗インフルエンザウイル
ス薬は認可されていますので、そこの先生が処方することは可能なようです。
つまり、その国で認可されていれば、現地で入手して、医者の誰かが処方箋を書けばそれはそ
れで済むわけですね。認可されていなかったらどうするか、あるいは手に入らなかったらどうす
るか。例えば日本でも欧米で認可されているけれども日本で認可されていない薬というのはあり
ます。私、その昔には、小児ガンを専門としておりましたが、どうしても治らない患者がいて、
色々なことを検討してアメリカで認可されているある種の薬は効くかもしれない、でも日本では
認可されていない。ご両親と相談してどうしようか、とにかくやってみようということになって、
個人輸入をして使ったことがあります。これは医師の裁量ということで、私が責任をもちますと
いうことで日本で認可されていない薬を使ったわけです。これは国によってちがうこともありま
すが、私は個人的には、色々なことを想定して、いろいろな手段を考えておくのが危機管理、リ
スクマネジメントであって、これはできないから、しょうがないよねってはやばやとあきらめて
しまうのでは、危機管理ではないというふうに思ってます。
Q
タミフルの備蓄について
日本政府が東南アジアの国々にいる方々に予算をとってタミフルを備蓄すると考えていると
いうニュースを見たのですが、台湾に関して日本政府の方から、台湾にいる日本人用でタミフル
備蓄というような指示があったとか、考えているとかそういうことはございますか。
A(交流協会台北事務所) これは私の方からお答えさせていただきます。これは台湾に限った
話ではないのですが、外国で日本人の人たちが病気になった時には基本的には現地の医療機関に
行ってできるだけ治療を受けてもらうということなんですけれども、こういう特殊な症状の病気
が新しく爆発的に拡大する可能性も出てきているということで、もちろん何らかの措置を考える
ということです。台湾についてもタミフルのことは将来的には本当にそういう状況になったとき
には日本から送ってもらうことで今、話を進めております。なんとか目途がつくのではないかと
思いますが、具体的には、台湾は他の東南アジア諸国に比べて対策が進んでおり、6月までに
230 万備蓄するといってますけれども、それでも台湾で治療薬が不足して、例えば日本人の患者
が発生した場合に、万一日本人向けにとても薬がないというふうな状況になった場合には日本人
向けのタミフルとして、一定量、日本から送ってもらうことを考えております。ただ、外務省、
日本政府の方でも、今お話がありましたようにまさに台湾に限らず東南アジア諸国に対して同様
のことを考えているということであります。
タミフルの投与に関して1つ問題になりますのが、大体どこの国でも台湾でもそうなんですが、
いわゆる処方箋が必要な薬でありまして、処方箋なしにお渡しすると台湾でも台湾の医療関係の
法律に触れることになるということで、これから台湾の関係当局の方と相談を早急に進めてです
ね、台湾の国内の法律とか手続きに沿った形で、将来もし日本人向けにタミフルを備蓄、又はあ
る程度一定の数量を入手することになれば、それがちゃんと使えるような形のアレンジをしたい
と思っております。
Q
台湾での鳥インフルエンザ検査機関について
鳥インフルエンザに罹ったかどうか検査できる機関が台湾で 13 あるということでしたけれど
も、その中で台北にはどんなところがあるのか、もし教えていただければと思うのですが。
A
細かいリストは今ちょっと持ち合わせておりませんが、少なくとも国立台湾ユニバーシティ
でできる。あと、台北には台湾CDCがあります。台湾CDCは一応、台湾国内のレファレンス・
ラボラトリーですので、最終確認はこの台湾CDCでやります。だから台北においてはほとんど
問題はないというふうに思っています。国立台湾大学と台湾CDCは少なくとも台北市内での検
査機関です。
A2(交流協会台北事務所) もう一言補足しますと、私どものホームページの方のお知らせ欄
の中に、
「新型および鳥インフルエンザに関する情報」として、指定病院一覧というのがありま
す。台湾の衛生署が全国で 485 の病院を指定しておりますけれども、先程申し上げた、ざっと病
院のリスト 15 ページ位のものが、台北市なら病院名とその住所という形で、全国の病院が 485
掲載されているものがあります。皆さま最寄りの病院とか、あるいは行ったことがある病院とか、
時間のある時に確認しておいていただければと思います。
Q
マスクについて
SARSの時に台北にいました。あの時は台湾は緊迫した状況だったわけですが、その時に偶
然、世界中のマスクが先程のN95 も含めて私のところに集まって参りまして、その中に非常に
ユニークなマスクがありました。これがどういうマスクかといいますと今のお話で接触感染では
なくて飛沫感染を免れるということなんですが、ナノ・テク・シルバーですね。ウイルスという
のは大体 50 から 300 位のナノの大きさのものでSARSは確かその時 65 ナノ位というふうに聞
いていましたが、3から5位の細かいナノの銀を、マスクの繊維の糸の中に完全に組み込んで、
これを使った軍は一人も感染者が出なかったという。また、アメリカにネルソンというマスクの
メーカーがあるそうですが、それからお医者さん方がお使いになるニーウォッシュというマスク
があるそうですが、そこで検査をした結果、大体殺菌力、いわゆるディフェンスするだけでなく
菌を殺してしまう殺菌率が 99.8%とかいうことが証明されたと。これをどういうふうにご診断
されますか。
A
実は、日本にもそういったマスクがいっぱいございまして、ウイルスを殺菌できるとかです
ね。もちろんそういった物の中で、きちっと検査をすると本物も偽物も当然あります。ただ、一
番大事なのはフィットでありまして、N95 であっても、ぴちっと顔面に密着させるのは総簡単
ではないのです。すき間があればそこからもろに入ってくるわけですから、完璧にフィットでき
なければどんなマスクもこれは効果がありません。だから健康な人がマスクをあまり過信すると
いうのは、我々の立場としてはとっておりません。ただ少なくともつけていれば効果はあるだろ
うと思います。100%ではないにしろ 50%、60%かもしれませんが。いろいろなマスクの予防効
果というのは、実験場でやっているものですから、人の世界というのは実験場のような一定の条
件下でウイルスが飛んでくることっていうのはまずないんですし、非常に濃厚な接触をするとか、
想定外の状況での曝露というのは当然あり得るんですね。SARS の流行の時にも、N95 マスクを
完璧に付けていたけれども感染したという報告もありました。
だからおっしゃるように色々なマスクがありまして、それぞれ利点があるだろうと思います。
ただ使う場合にはその欠点も考えた上で過信しないように使えばいいと思います。マスクという
ものは、実際には、罹患して、咳やくしゃみをするひとに付けて頂くのがもっとも効果的です。
Q
トルコの鳥インフルエンザ関連ニュースについて
ニュースによれば、トルコの鳥インフルエンザ菌が突然変異を起こして、非常な感染力を獲得
したということですが、フェーズが次に移っているのではないか?
A
詳細のデータをみておりませんので詳しいお話は避けたいと思いますが、少なくともこれま
でWHO内部から聞いている情報では、効率的なヒトからヒトへの感染は今のところないという
ふうに聞いております。ただインフルエンザウイルスというのは、元来、ウイルスの特性として
非常に変異をしやすいウイルスです。だから変異が入ったことは十分考えられます。ただ、どこ
に入っているかというのが一番問題であって、WHOはそういったところを全部みたうえでフェ
ーズ4へ上げるという検討をすることになろうかと思います。ちなみにそういったものはいきな
り上げることは普通ありませんで、専門家会議を開いて上げます。だからいきなり上げることは
多分ないだろうと思います。ただこれは今ロンドンでやっているウイルスの解析結果がどこまで
やってあるか、報道だけではどこまでやってあるかが分かりませんので、ちょっとそれは詳しい
データをみてみないと分かりません。ただこういうのがありましたら、感染研のホームページに
は順次あげております。
(※補足)その後、WHO は正式なコメントを発表し、トルコで分離されたウイルスに、よりヒト
に適応したと考えられる変異が見つかっているが、これが即座にヒトヒト感染をしやすくなった
と言うことではなく、実際にヒトヒト感染の証拠は得られていないと発表している。
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