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クロアチア共和国ベンコバッツ試験場での地中レーダーおよび金属探知機

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クロアチア共和国ベンコバッツ試験場での地中レーダーおよび金属探知機
JST-TECH-MINE06-003
クロアチア共和国ベンコバッツ試験場での地中レーダーおよび金属探知機
複合型センサーシステムの評価試験について
石川 潤、清田 充
(独)科学技術振興機構(JST)
ニコラ パブコビッチ(Nikola Pavković)
クロアチア地雷対策センター、試験、開発、トレーニングセンター
(Croatian Mine Action Centre - Center for Testing, Development and Training (CROMAC-CTDT))
古田 勝久
東京電機大学/JST
概要 – 本報では、2006年2月1日から3月9日にかけてクロアチア共和国のベンコバッツ試験場で実施され
た技術実証試験の実験計画およびその結果について報告する。この日本とクロアチア共和国合同の試験の
目的は、 地中レーダー(GPR)と金属探知機を組み合わせた複合型センサーの性能を、従来の金属探知
機と比較しながら評価し、更なる開発に向けて基礎となるデータを収集することにある。対人地雷の探知
率(probability of detection、PD)を向上させ、誤警報率(false alarm rate 、FAR)を低減することは、人道
的な対人地雷探知除去の現場での作業効率を改善するうえで非常に重要である。そのため、本試験では、
特に「従来の金属探知機では困難だった金属屑と対人地雷を区別すること」および「従来の金属探知機よ
り深いところにある対人地雷を探知すること」の2点において改善が見られるかを評価することを目指し
た。今回試験に参加した試作機は、文部科学省の研究指針に基づき、(独)科学技術振興機構(JST)の
プロジェクト「人道的対人地雷探知・除去技術研究開発推進事業」のもとで開発されたものである。開発
試作機は、探知作業者に対して地雷の存在を断定的にアラームで伝えることはせず、地中の様子を画像と
して作業者に提示することが特徴であり、最終判定は作業者が画像をもとに行うというものである。これ
は、ちょうど医者がCTスキャン画像などをもとに癌などを見つけることに類似しているといえよう。こ
のような機器の評価試験では、作業者の主観が試験結果に大きく影響するため、試験は被験者である作業
者に地雷の埋設位置を知らせないで探知を行わせるブラインド試験として、3つの試験レーンを構築して
実施した。試験結果からは、複合センサーは金属屑を地雷と区別できるポテンシャルを有していること
や、一方で、実用に向けては探知に要する時間を短縮することが大きな課題となることなどが判明した。
1. はじめに
(独)科学技術振興機構(JST)のプロジェクト「人道的対人地雷探知・除去技術研究開発推進事業」に
採択された日本の大学および企業より構成される研究チームが複合型センサーの開発に着手したのは2002
年10月のことである。ここで開発された試作機は、プロジェクト発足から約2年半後、まず日本国内(香
川県坂出市)において、2005年2月8日から3月11日までの約1ヶ月をかけて基本性能が評価された[1][2]。
この国内評価試験での探知作業では、センサーシステムは明示的に探知を知らせる警報を発せず、地中の
様子を図1のような画像として提示し、作業者が対象物(模擬地雷)の有無を画像から判定した。このよ
うな作業者の主観に基づく探知では、もし作業者が予め地雷の埋設位置を知ったうえで画像から対象物を
探した場合、装置の性能を正しく評価できないため、全ての試験レーンをブラインド試験用に設計して試
験を実施した。評価試験の結果としては、地中レーダー(GPR)と金属探知機を組み合わせることで、
10cmより深いところに埋設された地雷についての探知率が改善できることなどが確認された。
この国内での評価試験の結果をうけて、試作機は、より堅牢で、シンプルかつ費用対効果の高い機器とな
るように改良が加えられ、約1年後、地雷被埋設国であり地雷対策や探知・除去機の評価について経験が
豊富なクロアチア共和国での技術実証試験が実現された。本報では、この日本とクロアチア共和国の共同
試験の結果について報告する。
1
5cm
83
84
20cm
80
20cm 82
20cm
81
12.5cm
JST-TECH-MINE06-003
図1:アクセスビークルMHV[5][6]に搭載されたステップ周波数型のSAR-GPR[7]のクロアチア共和国での
試験で得られた探知映像の一例:左が埋設されたターゲット(PMA-2地雷が1個、PMA-A1地雷が3個、金
属屑が1個ある)の位置を示し、右は深度を変えて地中レーダーの水平断面を複数枚重ねた画像である。
2. 技術実証試験の計画
本技術実証試験の目的は、従来の金属探知機と比較し、開発した試作機の性能を評価することにある。ま
た、今後の性能改善の検討に必要なデータを取得することも目的であった。評価は、地雷探知除去の現場
での作業効率の改善に貢献するという観点から、特に複合型センサーが金属屑と地雷を区別し誤警報を削
減できるか1、また、対人地雷を探知できる深さをより深い方向へ改善し探知率を改善できるか2に着目し
て行われた。
2.1. ベンコバッツ試験場
試験は、2006年の2月1日から3月9日までの間、クロアチア地雷対策センター下の試験、開発、トレーニン
グセンター(HCR-CTRO)が、クロアチア共和国のベンコバッツに所有する試験場にて実施された。こ
の試験場は、地雷対策分野の機器評価の権威であるITEP(International Test and Evaluation Programme)
が、金属探知機評価の国際標準CEN workshop agreement (CWA) 14747[3]にしたがって実施したプロジェク
ト2.1.1.2 “Reliability Model for Test and Evaluation of Metal Detectors[4]” などでも使用された世界的によく
知られた試験場である。このベンコバッツ試験場では、クロアチア共和国の地雷原にある典型的な3種類
の土壌を使用することができ、今回の試験でも(a) 自然の礫を含む不均質なレッド・ボーキサイト(レー
ン#7)、 (b) 均質なレッド・ボーキサイト(レーン#1)、そして (c) 均質な粘土(レーン#3)[4]を使用
して試験を行った。また、気象条件は、特に後半は激しい雨、時に降雪もあり、図2に示したように、土
中の体積水分含有率が40%をこえることもしばしばであった。このように試作機にとっては大変過酷な環
境下での試験となったが、全ての試作機は無事に試験を完遂することができた。
50.0%
Soil moisture
40.0%
30.0%
Lane #1
Lane #3
Lane #7
20.0%
10.0%
2-Mar
28-Feb
26-Feb
24-Feb
22-Feb
20-Feb
18-Feb
16-Feb
14-Feb
12-Feb
10-Feb
0.0%
Date
図2:試験期間中の各レーンの土中の体積水分率の計測結果
1
2
従来の金属探知機のみの探知作業では、地雷の金属パーツと地雷原に散在する金属屑の区別が困難であった。
従来の金属探知機は、対人地雷の金属含有量や土質にもよるが10cmから15cm程度が限界となることが多い。
2
JST-TECH-MINE06-003
2.2. 評価試験に参加した4種類の試作機
この試験では、図3および4に示した4種類のセンサーシステムの試作機が評価された。図3は、千葉大学野
波教授のグループの富士重工業(株)が開発した地雷原アクセス車両マイン・ハンター・ビークル
(MHV)[5][6]に可換式に搭載される2種類のセンサーシステムである。ひとつは、東北大学佐藤教授の
グループが開発したステップ周波数型の地中レーダーを使用するSAR-GPRであり[7]、以下、この文書で
はMHV#1として参照する(図3左)。ステップ周波数型の地中レーダーは、単一周波数の電磁波を低い周
波数から高い周波数までステップ状に変化させながら周波数応答を計測し、これを逆フーリエ変換により
時間領域の合成レンジ・プロファイルに変換して解析する。この方式の利点は、土壌などの環境条件に応
じて最適なレーダーの周波数帯域を容易に調整できることである。もうひとつのMHVに搭載されるセン
サーシステムは、電気通信大学荒井教授のグループで開発されたインパルス型の地中レーダーLAMDARIIIであり[8]、以下、この文書ではMHV#2として参照する(図3左)。インパルス型の地中レーダーは、1
ナノ秒以下のパルス状の電磁波を地面に送信してその反射波をレンジ・プロファイルとして直接受信観測
するもので、計測が高速という利点がある。何れのセンサーシステムも既存の金属探知機をシステムに統
合して使用する。
図4左は、遠隔操作可能なバギーシステムGryphonである。アクセス車両システムと、それに搭載される
ロボットアームは東京工業大学の広瀬教授のグループで開発された[9]。ロボットアームは、センサーを
走査するときに発生する反力をカウンターウエイトによりキャンセルする構造となっており、傾斜地にあ
る地雷原での作業でもバランスを崩しにくい工夫がなされている。Gryphonに搭載されるセンサーは、上
述の東北大学のグループで開発したALIS(Advanced Landmine Imaging System)であり[7][10]、ステップ
周波数型の地中レーダーと金属探知機を組み合わせたシステムである。ALISは手持ち型のセンサーとし
ても使用可能であり、2004年12月のアフガニスタンでの試験を経て、今回のクロアチア共和国での試験に
も、手持ち型として参加している(図4右)。
図3:MHV#1(左)とMHV#2(右)
図4:Gryphon(左)とALIS(右)
2.3. 実験計画
今回の試験は、探知率に影響を与える要因として以下の3種類を考え、その影響を分散分析(ANOVA)
により解析可能なように実験計画の手法を用いて試験レーンを設計した。
- 埋設物の種類(Target type):図5に示すPMA-1A(対人地雷)、PMA-2(対人地雷)3、ITOP I0 (模擬
金属部品)、およびMetal fragment(任意形状の金属屑)
- 埋設深さ(Target depth)5.0cm、12.5cm、および20.0cm
3
対人地雷は、信管内の起爆薬のみを取り除き、主爆薬はそのままの実物を使用した。
3
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- 土壌種類(Soil type):鉱物質4で不均質な土質(レーン#7)、鉱物質で均質な土質(レーン#1)、およ
び非鉱物質で均質な土質(レーン#3)
本来、上記3つの要因の全ての組み合わせ(4種類の埋設物、3種類の埋設深さ、および3種類の土質)につ
いて試験を実施すべきであるが、試験に費やす時間と使用する対人地雷の数の制限から、それは困難であ
る。したがって、その制限のもと統計的に偏りのないデータを得るため、L18 (21×37)直行表を用いた実験
計画により表1に示すような要因の組み合わせを導出した。この18種類の組み合わせについて、各7個の対
象物を試験レーンのランダムな位置に埋設する作業を2005年の12月8-9日に実施し、試験までの約2ヶ月の
間、対象物が十分に土になじむよう放置した。
(a) PMA-1A
(b)PMA-2
(c)ITOP I0 (長さ12.7mmの
アルミ製のチューブ)
10cm
(d) 金属屑(Metal fragments)
図5:評価試験のために埋設する4種類の対象物
4
鉱物質の土質(レッド・ボーキサイト)では、金属探知機が土そのものにも反応してしまうため非鉱物質の土質と
比べて探知が難しい。
4
JST-TECH-MINE06-003
表1:L18(21x37)に基づく実験計画より導出した3要因の組み合わせ18通り
No.
Target type
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
PMA-1A
PMA-1A
PMA-1A
PMA-2
PMA-2
PMA-2
ITOP-I0
ITOP-I0
ITOP-I0
Fragment
Fragment
Fragment
PMA-1A
PMA-1A
PMA-1A
PMA-2
PMA-2
PMA-2
Lane #
(Soil type)
7
1
3
7
1
3
1
3
7
3
7
1
1
3
7
3
7
1
Target depth
5.0cm
12.5cm
20.0cm
5.0cm
12.5cm
20.0cm
5.0cm
12.5cm
20.0cm
5.0cm
12.5cm
20.0cm
5.0cm
12.5cm
20.0cm
5.0cm
12.5cm
20.0cm
3. 試験結果
3.1. 試験手順
試作機ごとに2名の被験者が、試験レーン#1、#3、および#7においてブラインド試験を受けた。すべての
被験者は、探知した地中の異物について、その真上の地面にプラスチック製のタグを置くことで探知した
異物を申告する手順にしたがい受験した。試験に用いたタグには表2にあるような分類があり、被験者は
探知した異物に対する確信度、およびそれが地雷なのか金属屑なのかを区別して申告することとした。
表2:探知箇所の申告に用いたタグの定義
確信度の定義
最終判断
確信度別タグと色
最終判断
確信度別タグと色
もしかすると、何
かあるかもしれな
い。
クラッターなどのノイズである。
ここには100% 何
もない。
タグを置かない
25
黄色
クラッターなどのノイズである。
タグを置かない
25
白黒
まずおそらく何か
異物がある。
50
ピンク
50
白
異物が地雷か金属
異物が地雷か金属
屑か区別できそう
屑かはっきりわか
だ。
る。
地雷であると申告する。
75
100
オレンジ
赤
金属屑であると申告する。
75
緑
100
青
試験では、比較のため、2名のクロアチアの地雷探知作業者(deminer、金属探知機を扱う専門家であり以
下ではデマイナーと記す)が金属探知機のみを使って同様にブラインド試験を受験するベンチマーク試験
も実施した。デマイナーの試験順序の決定、トレーニングおよび試験中のモニタリングは、ドイツの公的
研究機関Federal Institute for Materials Research and Testing (BAM)に協力を受け実施された。その際、2名の
デマイナーから「金属探知機が発する探知アラーム音だけでは金属屑と地雷を区別することはできな
い。」との申し出があったため、このベンチマーク試験では、2種類のタグのみを使うこととした。すな
わち、探知アラーム音がなり、地雷探知者がその場所を掘削して異物の確認作業を行うと判断した場合に
赤100のタグを置き、アラーム音の原因は土やその他のノイズによるものと判断して掘削を行わない場合
5
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に黄色25のタグを置くこととした。そのため、複合型センサーを使う日本の被験者とクロアチアのデマイ
ナーの結果を比較する場合は、日本の被験者が使う50以上の確信度のタグについては、その色に関係な
く、異物を探知したと評価することにした。例えば、金属屑上に置かれた赤100のタグや、地雷上に置か
れた青100のタグは、何れも探知成功とみなすということである。この評価方法でデータを処理した結果
については、以下では「通常の評価基準」と記すことにする。
3.2. 実験結果
本節では、得られた実験結果についてまとめる。図6は、複合型センサー4種類および従来の金属探知機ご
と1名の合計5名について、表1に示した18通りの実験組み合わせ別の探知率をグラフにしたものである
(被験者は、装置ごとに各2名の被験者の中から探知率の高かった1名を選んでいる)。ここでは、上述
の「通常の評価基準」に基づき判定を行い、ITOP I0と金属屑(Metal fragment)は探知すべき対象として
取り扱い、その探知率についてもグラフに示している。図6より、複合型センサーは、従来の金属探知機
と比べて、鉱物質の土壌中の20cmという深いところに埋められた小型の対人地雷PMA-2について、より
高い探知率を達成できていることがわかる。一方で、クロアチアのデマイナーが使った金属探知機は、
ITOP I0について、複合型センサーと比べて特に高い探知率を示した。これは、ITOP I0は地中レーダーで
外形を捕らえるには小さすぎるためと考えられる。平均探知率としては、ALISの被験者が81.7%と、専門
職であるデマイナー(84.0%および81.0%)に匹敵する成績を収めた。図7は、通常の評価基準による各要
因別の平均探知率を示している。最終評価は分散分析など詳細な検討を行う必要があるが、ALISは、従
来の金属探知機と比べて、レーン#1(鉱物質土壌)に埋設されたPMA-2の探知に優れた結果を収めてい
る。しかしながら、1m2あたりに探知に要した時間は、ALISは30-40分程度であり、デマイナーの約5分、
ビークル搭載型の複合型センサーの15-20分と比べて長かった。図8は、図6と同じ5名の被験者のレーンご
との誤警報率(埋設物がないところにタグが置かれたケース)をまとめたものである。特にGryphon や
MHV#2について、レーンごとの違い、すなわち土質の違いの影響を受けにくいことが確認された。
最後に、地雷と金属屑との判別能力の評価について述べる。ここでは通常の評価基準と異なり、表2の定
義により異なった色で申告された対象については、探知失敗としてデータを処理した。すなわち、地雷上
に置かれた青100のタグや、金属屑上に置かれた赤100などのタグは探知失敗となる(厳密な評価基準)。
図9は、ALISの要因ごとの平均探知率を、通常の評価基準(緑■)と厳密な評価基準(赤◆)とで比較し
た結果である。この図より、ALISは、地雷の探知率の若干の低下を伴うものの、約6割の金属屑を金属屑
として申告していることがわかった。これは、複合型センサーは地雷と、地雷原に散在する金属屑を区別
し、作業効率を向上させる可能性を持っているということである。
ALIS 1
Gryphon 1
MHV#2 1
MHV#1 1
100.0%
90.0%
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
Fragment
PMA-1A
PMA-1A
PMA-1A
PMA-2
PMA-2
PMA-2
1
Fragment
7
Fragment
3
ITOP-I0
PMA-2
1
ITOP-I0
PMA-2
7
PMA-2
PMA-1A
Lane #
ITOP-I0
Target type
PMA-1A
0.0%
PMA-1A
Probability of detection
Deminer 1
3
1
3
7
3
7
1
1
3
7
3
7
1
Target depth 5.0 12.5 20.0 5.0 12.5 20.0 5.0 12.5 20.0 5.0 12.5 20.0 5.0 12.5 20.0 5.0 12.5 20.0
Eighteen experimetal runs
図6:表1の18通りの要因組み合わせごとの探知率:探知システムごとに1名の被験者を選び記載。
6
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Deminer 1
Deminer 2
ALIS 1
Probability of detection
100.0%
90.0%
80.0%
70.0%
60.0%
Lane #3
Lane #1
Lane #7
20.0cm
12.5cm
5.0cm
Fragment
ITOP I0
PMA-1A
PMA-2
50.0%
Level of factor
図7:要因の種類ごとの平均探知率
Lane #1
Lane #3
Lane #7
3.00
FAR [1/m2]
2.50
2.00
1.50
1.00
0.50
MHV#1 1
MHV#2 1
Gryphon 1
Deminer 1
ALIS 1
0.00
Testee
図8:レーンごとの誤警報率(FAR):図6と同じ5名の被験者の結果。
Normal criterion
Strict criterion
Probability of detection
100.0%
90.0%
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
Lane #3
Lane #1
Lane #7
20.0cm
12.5cm
5.0cm
Fragment
ITOP I0
PMA-2
PMA-1A
0.0%
Level of factor
図9:平均探知率によりALISの地雷と金属屑の判別能力を比較評価した結果
7
JST-TECH-MINE06-003
4. クロアチア側からの評価コメント
本試験をJSTと共同で実施したクロアチア地雷対策センターの試験、開発、トレーニングセンター
(CROMAC-CTDT)のディレクター パブコビッチ氏(本報の著者の一人)からは、今回の評価試験結
果について以下のようなコメントを頂いた。
a)
金属探知機と比べ、複合型センサーは探知可能な深さの改善と誤警報の低減に有効であることが
示された。
b)
密生する植物がある場合など仕様場所が制限されることがあるが、日本が開発した複合型センサ
ーは実用化しうるレベルにあると考える。
c)
重機械による地雷粉砕除去などの手法と地中レーダーを組み合わせることで、地雷探知除去作業
の安全性、生産性を向上できる可能性がある。
d)
CROMAC-CTDTは、この分野での試験の経験や関連機関とのつながりを活用して、複合型センサ
ーを実用化に近づけるための標準作業手順の作成などの協力を継続することができる。
e)
複合型センサーは、まずは地雷除去後の地雷原の検査、地雷除去作業の品質管理などの分野での
応用が有望であり、ユーザーとしては地雷対策NGO、警察、軍、各国の地雷対策センターなどが
考えられるだろう。
5. おわりに
今回の試験を通して、鉱物質の土壌での複合型センサーの優位性が確認されるなど、多くの知見を得るこ
とができた。これらの知見は、将来の更なる改善に向けて、評価結果と共に開発者へフィードバックされ
ている。本プロジェクトの次のステップであるが、開発した技術を、地雷対策を専門とする第3者機関が
実施する実践的な評価試験に提供することである。
謝辞
本報をまとめるにあたり、様々なご協力を頂きましたプロジェクト参画メンバーの皆様、特にクロアチア
共和国での試験に参加頂いた東北大学、千葉大学、東京工業大学、電気通信大学、富士重工(株)、
(株)タウ技研、(株)ヤマテコーポレーション、(株)ハイボットのメンバー各位に深謝いたします。
また、クロアチアのデマイナーによるベンチマーク試験にご協力頂いたドイツFederal Institute for Materials
Research and Testing (BAM)のChristina Müler博士とその同僚の方々に感謝いたします。
参考文献
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石 川 ほ か : 対 人 地 雷 探 知 の た め の 車 両 搭 載 型 地 中 レ ー ダ ー ( GPR ) シ ス テ ム の 性 能 試 験 評 価 結 果 に つ い て ,
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Ishikawa, J., Kiyota, M. and Furuta, K., “Experimental design for test and evaluation of anti-personnel landmine detection based on
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青山ほか:地雷探知ロボットの開発,計測と制御,Vol. 45-6,pp. 504-510 (2006)
[7]
佐藤ほか:地中レーダ・波動情報処理の地雷検知への応用,計測と制御,Vol. 45-6,pp. 491-497 (2006)
[8]
荒井ほか:アレイアンテナを用いたインパルス地雷探査レーダ、計測と制御,Vol. 45-6,pp.498-503 (2006)
[9]
広瀬ほか:人道的地雷探知・除去システムの実用化に向けて ―
測と制御,Vol. 45-6,000/000 (2006)
[10]
Sato, M., Fujiwara, J., Feng, X., Zhou, Z. and Kobayashi, T., “Development of a hand-held GPR MD sensor system (ALIS),” Proc. of SPIE
Vol. 5794, Detection and Remediation Technologies for Mines and Minelike Targets X, pp. 1000-1007, 2005.
8
遠隔操作アーム搭載バギー車両 GRYPHONの開発
―,計
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