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精神科病床における 転倒予防対策について

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精神科病床における 転倒予防対策について
精神科病床における
転倒予防対策について
武蔵野中央病院
医療安全推進委員会
当院における転倒予防対策
①全入院患者に対して転倒リスクの評価を導入
②履き物の指導、靴の購入の促進、環境整備、服薬調整
③転倒予防マニュアルを作成し病棟へ配布
④転倒調査用紙を作成し、調査を継続
⑤転倒者に対して個別対応での運動療法を実施
⑥転倒予防を目的に病棟での集団体操を実施
本稿では当院における転倒予防対策について集団で
行う運動療法を中心に紹介していますが、転倒予防には
多角的な対策が必須であり、運動療法のみでは転倒予防
効果は低いことが明らかとなっています。
あくまでも多くの対策のうちの一つであることを
ご理解のうえ、ご覧になって下さい。
転倒を予防するためには、単純な筋力
トレーニングや歩行練習では効果は低く、
ストレッチ、筋トレ、バランス練習を含んだ
複合的な運動が効果的であると言われて
います。
既に複数回の転倒を経験している方、
ADLの低下が著明な方には、個別指導
が必要です。
集団体操開始前の準備
・各病室を回って体操を
行うことを告げます。
(自由参加であり、決して
強制はしない。
途中参加、退出も自由。)
・世間話などを交えつつ
出席を取ります。
継続して参加して頂ける
ように楽しい雰囲気作りを
心がけています。
深呼吸は運動の間に参加者
の疲労度を見ながら適時行います。
先ず深呼吸を3回
頚部・体幹・上肢のストレッチ
各方向に20~30秒
行います。
柔軟性は起居動作や
移乗動作、歩行を
円滑に行うために
重要です。
下肢筋トレ(座位)
当院では下肢の運動の際、
足首に重垂バンド(重り)
をつけて行っています。
重垂バンドが無い場合、
負荷は軽くなりますが、
効果がないわけでは
ありません。
筋トレの合間には使った
部分を軽く叩く、
ストレッチをするなど
必ず筋の休息を入れます。
また、同じ部位に続けて
負荷をかけないように
配慮します。
膝伸展
左右30回
腿挙げ
左右30回
膝を伸ばしたまま、
足を交差20回
両足腿挙げ
10回
膝を伸ばしたまま
つま先を前後に20回
下肢筋トレ(立位)
立位で行う筋トレは自分の
体重が負荷となります。
立位が不安定な方には
椅子の背もたれを持って
もらう、介助につくなど
安全性に配慮して行って
下さい。
スクワットを20~50回
踵挙げ20回
バランス練習
つま先挙げ 足を縦に
そろえて
10回
10秒
手を前へ
伸ばす
手を横へ
伸ばす
足を横へ
挙げて
10秒
足を前へ
挙げて
10秒
足を後ろへ
挙げて
10秒
バランス練習②
足を交互に
前へ10回
足を交互に
横へ10回
足を交互に
後ろへ10回
下肢のストレッチ
最後に深呼吸を3回して「皆さんお疲れ様でした!」
全入院患者に対して転倒リスクの評価に基づく対応、環境整備、
履き物の指導、服薬調整などを実施した上で、希望者に対して
ここまで紹介した内容の運動を2002年7月から現在まで実施
しています。
その結果、下のグラフに示すように運動療法参加者の転倒件数
は増加していないのに対して、運動療法へ参加していない方の
転倒が年々増えています。
(件)
80
運動療法実施群
運動療法未実施群
70
60
50
40
30
20
10
0
基礎調査
調査2年目 調査3年目 調査4年目 調査5年目 調査6年目
図1 運動療法実施群と未実施群の転倒件数の経時的変化
細井 匠,他(2005) :精神障害者の転倒事故分析とその対策.より)
参考文献
John T Chang, et al(2005):Interventions for the prevention of falls
in older adults:systematic review and meta-analysis of randomised
clinical trials.
BMJ328(20),653-654
Province MA,Hadley EC,et al(1995):The effects of exercise on falls
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JAMA 273,1341-1347
Gillespie LD,Gillespie WJ,et al(2001):Interventions for preventing falls
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大高 洋平,他(2003):エビデンスからみた転倒予防プログラムの効果
-1.狭義の転倒予防-.リハビリテーション医学40(6),374‐388
細井 匠,他(2004):精神科病棟における転倒事故の現状.
障害者スポーツ科学2,53-58
細井 匠,他(2005):精神障害者の転倒事故分析とその対策.
PTジャーナル39(11),971-978
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