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医療安全対策実践レポート⑥/副作用自動監視システムの活用と院外

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医療安全対策実践レポート⑥/副作用自動監視システムの活用と院外
医療安全対策
実践レポート⑥
各病院での薬剤師による医療安全に対する取組みをシリーズでご紹介します。
副作用自動監視システムの活用と
院外処方せんによる情報共有で
医薬品適正使用を推進
福井大学医学部附属病院の概要
〒910 1193
〒910-1
193
福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3
福井大学医学部附属病院 薬剤部
福井大学医学部附属病院 薬剤部では、検査値異常、検査漏れ、副作用の
院 長:和田 有司
設 立:1983年
病床数:600床
診療科:26科
薬剤部:常勤42名
〈平成25年11月現在〉
徴候などを電子カルテ情報から自動的に検出し、
“警告メッセージ”
を発する
システムを構築しました。また、院外処方せんを利用し、保険薬局と検査
値情報の共有も進めています。システムを活用した医薬品適正使用への
取組みについて、薬剤部長の政田幹夫先生、副薬剤部長の中村敏明先
生、医薬品安全対策担当薬剤師の五十嵐敏明先生にお聞きしました。
検査値異常、検査漏れ、副作用の
症状等を自動検出するAVS
副作用自動監視システム開発
の経緯と概要をお聞かせください。
薬品は多数あります。限られたマンパ
ワーで的確に副作用を早期発見・回
避することを目指し、電子カルテ導入
る
「最高・最新の医療を安心と信頼の
院 採用薬のうち、添 付 文 書に警 告
下で」に則り、
安心・安全な医療の提供
などの注 意や投 薬に際し検 査が必
に努めています。医薬品による副作用
要との 記 載 があるもので、現 在 約
の発生や重篤化の回避は、薬剤師に
2 0 0 品目が該当します。添 付 文 書を
課せられた最も重要な役割の一つで
もとに、医薬品ごとに以下のような副
す。回避可能な副作用を確実に防ぐ
作用に関するチェック項目を定 義し
ために2010年に開発したのが「副作
ました。
*AVS:Automatic Vigilance System to detect and prevent adverse drug reactions
中村
AVSは、医薬品の副作用に関
AVS
AVSの仕組みをお教えください。
五十嵐
です。
電子カルテからの診療情報
を機にAVSを構築しました。
政田 薬剤部では、当院の理念であ
用自動監視システム」
(以下、AVS *)
図表1
副作用自動監視システム
(AVS)
の概略
AVSの対象医薬品は、当
実施すべき検査の漏れ
(血液検査・生理検査・放射線検査)
検査間隔
検査値異常
副作用の兆候(下痢、口渇など)
体重の増減 など
① 処方チェック
監視対象となる処方内容(医薬品)
を検出
② 副作用関連項目のチェック
必要な検査の漏れや副作用の
兆候がないかチェック
③ 異常検出・注意喚起
検査漏れや副作用の兆候を検出し、
警告メッセージを発して注意喚起
AVS担当薬剤師
警告メッセージのリストを確認し、
医師や病棟薬剤師に連絡
ニタ画面で確認し、重要度の高いもの
は医師や病棟薬剤師に連絡して対処
を依頼します
(図表1)。
連する検査値や症状などを、入院・外
この項目に従ってAVSが電子カル
中村
来問わず、電子カルテからコンピュータ
テから監視対象となる処方内容(医
には、血液検査や画像診断だけでな
が 網 羅 的に
薬品)
を検出し、検査漏れや検査値の
く、
患者さんの
検 出して 警
異常、副作用の兆候などを拾い出し、
訴えがポイン
告メッセージ
警告メッセージを発します。副作用の
トになります。
を発するシス
兆候は、
「下痢」や「口渇」など、医薬
しかし、副 作
テムです。定
品ごとに登録した副作用症状のキー
用 が 疑われ
期 的な検 査
ワードをもとに、
カルテ記録からAVSが
る訴えであっ
や副 作 用の
検出します。
ても、見 過ご
モニタリング
毎朝、医薬品情報室の担当者が
されてしまうこ
が 必 要な医
AVSによる警告メッセージのリストをモ
とが多々あり
薬剤部長
(教授)
政田 幹夫先生
いち早く副作用症状に気づく
副薬剤部長
(講師)
中村 敏明先生
は 継 続 的な
図表2 AVSによる検出結果と対処の例
検出例
〔副作用の兆候〕
コリンエステラーゼ阻害薬
(ジスチグミン臭化物)服用患者
検出結果・対処
血糖値検査
A V S が 看 護 記 録 からコリン作 動 性クリーゼの 副 作 用 症 状
「下痢」を検出して警告。抗菌薬投与中の下痢発生のため、
偽膜性腸炎も考慮されたが、ジスチグミン臭化物を中止した
ところ、下痢が改善した。
〔検査間隔の開き〕
クロピドグレル 硫 酸 塩 は、開 始 後 2カ月以 内 の 検 査 間 隔 が
抗血小板薬(クロピドグレル硫酸塩) 14日を超えた時点で警告を表示するように設定。検査間隔が
服用患者
開いていることをAVSが検知して警告し、病棟担当薬剤師
が医師に検査実施を依頼した。
〔検査値異常〕
抗リウマチ薬(メトトレキサート)
服用患者
AVSが白血球減少を検知し、抗リウマチ薬使用による骨髄
抑制を警告。病棟薬剤師が医師と相談し、中止となった。
実施率が低
いことがわか
りました 。検
査漏れをなく
すため、院内
の各 職 種に
発 信 するD I
医薬品安全対策担当
五十嵐 敏明先生
ニュースや診療科でのカンファレンス
警告メッセージ画面
見につなげています
躍的に向上させることができました。
(図表2)。
A V S 導 入で、
メトトレキサート
提供:福井大学医学部附属病院 薬剤部
で検査実施を呼び掛け、実施率を飛
AVSの今後の課題や展望をお
その他にどのような
聞かせください。
メリットが得られまし
五十嵐
たか。
項目が非常に多く、重要度の低いもの
五十嵐 AVSの活
までリストアップされるため確認作業に
用によって、各 検 査
2∼3時間を要しています。この時間を
の実施状況を薬剤、
少しでも短縮させるために、検査項目
AVSは、現状ではチェック
ます。看護記録に記載された見過ごさ
診療科、処方医ごとに集計することも
の妥当性や検査の閾値を見直すな
れがちな症状をAVSが監視し、更に
可能になりました。例えば、集計により
ど、
チェック項目を再定義したいと考え
薬剤師の目で確認することで、早期発
非定型抗精神病薬使用患者さんで
ています。
院外処方せんへの検査値印字で
保険薬局と情報共有
んごとに検査値情報を印
図表3 院外処方せんを利用した検査値情報の共有
字して提供しています
(図
表 3 )。検 査 値 情 報の開
院外処方せんを用いた情報共
示を望まない場合は、患
有にも早くから取り組まれているそう
者さん自身が中央のミシ
ですが、
その概要をお教えください。
ン目で切り離して処方せ
政田 当院では外来処方せんの約93
んのみ保 険 薬 局に提 出
%を院外処方せんとして発行していま
することもできます。
す 外来患者さんにおいても医薬品の
す。
保険薬局では、血清ク
適正使用を進めるためには、保険薬
レアチニン値などをみて、
局との検査値情報の共有が不可欠
腎機能に応じて用法・用
です。
す そこで、
2011年から処方せん
(A4
量を確認し疑義照会できるなど、院外
の有効性・安全性の向上に寄与して
サイズ)右半分の余白部分に、患者さ
処方せんの検査値情報は、薬物療法
います。
提供:福井大学医学部附属病院 薬剤部
から、医薬品副作用被害救済制度の
ります。検査漏れなど、添付文書の使用
対象となっていません。だからこそ、
これ
上の注意に従わずに使用された場合は
らの医薬品を使用する患者さんに対し、
給付対象になりません。患者さんが不
医療安全や医薬品適性使用の今
AVSと薬剤師の目による副作用チェック
利益を被ることは絶対にあってはならな
後に向けたお考えをお聞かせください。
をさらに厳重に行っていきたいと考えて
いことです。そのためにも、
システム化の
中村 抗がん剤や免疫抑制剤は、
その
います。
推進や保険薬局との情報共有に努め、
使用にあたり重篤な副作用の出現が予
政田 医薬品副作用被害救済制度の
医薬品の適正使用を徹底していきたい
想され、
かつ代替治療法がないことなど
給付は、医薬品の適正使用が条件とな
と思います。
医薬品適正使用推進のために
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