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ハイパワー増幅器テストにおける推奨事項
Agilent PNAマイクロ波ネットワーク・アナライザ Application Note 1408-10 ハイパワー増幅器テストにおける推奨事項 目次 はじめに ...............................................................................................................................................2 パワー・バジェット解析とマイクロ波PNAのブロック図.............................................................3 例A:GSM900/DCS1800用のデュアルバンド・ハンドセット・アンプ ......................5 例B:Kuバンド半導体パワーアンプ .........................................................................................8 ハイパワー増幅器測定の詳細手順..................................................................................................10 ステップA:Sパラメータ、ローパワー・レベル・テスト、 ローパワー・セットアップ................................................................................11 ステップB:Sパラメータ、ローパワー・レベル・テスト、 ハイパワー・セットアップ................................................................................15 ステップC:利得圧縮テスト、ハイパワー・セットアップ.................................................22 別のハイパワー構成 .........................................................................................................................24 外部カプラの使用......................................................................................................................24 双方向ハイパワー測定 ..............................................................................................................25 よくある質問(FAQ).......................................................................................................................26 1. どうすればネットワーク・アナライザ・レシーバが 圧縮されていると分かりますか? ..................................................................................26 2. 未校正の測定結果は妥当なようですが、校正済みデータが不正確なようです。 何が原因ですか? .............................................................................................................27 3. 起動時またはプリセット時のネットワーク・アナライザのパワーは? ....................27 4. プリセット時の各測定チャネルのパワー・レベルは? ...............................................27 5. 測定チャネルごとに異なるパワー・レベルを設定できますか?................................27 6. このセットアップを使ってホットS22測定を行うことができますか? .....................27 7. 掃引中にRFパワーがオフになった場合、パワー・レベルはどうなりますか? .......28 8. 校正キットのメカニカル・コンポーネントにパワー制限はありますか? ................28 9. 電子校正(ECal)にパワー制限はありますか?.............................................................28 10. 信号源パワー校正の利点は何ですか? ..........................................................................28 11. 校正に最適なパワー・レベルは? ..................................................................................29 12. 様々な測定中の各ポートのパワー・レベルは? ...........................................................29 13. 信号源またはレシーバの減衰量が変更された場合、 2ポート校正はどうなりますか? ...................................................................................29 14.“source unleveled”というエラー・メッセージは何を意味しますか?................29 15. リトレース中のPNA出力パワーはどうなりますか? ..................................................30 16. 周波数バンド交差中のRFパワーはどうなりますか?..................................................30 付録:E8361A 67GHzネットワーク・アナライザの情報 .....................................................31 ハイパワー測定に関する推奨事項..................................................................................................31 Webリソース....................................................................................................................................32 はじめに ハイパワー増幅器は、RF/マイクロ波通信システムで一般的な機能ブロックです。 何百万ものユーザが使用する携帯電話には、ハイパワー増幅器チップが組み込まれ ています。データの送信に用いられる衛星システムや基地局には、多数の半導体パ ワーアンプまたは進行波管パワーアンプが使用されています。ハイパワー増幅器の 性能の評価は、設計/検証プロセスにおける重要な要素です。 このアプリケーション・ノートでは、Agilentのマイクロ波(MW)PNAネットワー ク・アナライザを使用したハイパワー増幅器のテストに固有の問題について説明し ます。Application Note 1287-6では、汎用のネットワーク・アナライザを使用してハ イパワー・デバイスをテストする際の構成および問題について説明しています。一 般的な増幅器のテスト(ハイパワーに限らない)については、Agilentが提供するア プリケーション・ノートを参照してください。Application Note 1408-7、1408-8、 1408-9では、リニア増幅器、利得圧縮、高調波掃引、相互変調歪み測定について説 明しています。 このアプリケーション・ノートでは、ハイパワーという用語は、MW PNAの出力パ ワーが被試験デバイス(DUT)の性能を測定できるほど高くない場合や、DUTの出 力パワーがネットワーク・アナライザに対する最大入力レベルを上回っている場合 に使用します。 2 ハイパワー・ネットワーク・アナライザの測定で考慮すべき要素の1つに、ネット ワーク・アナライザの内部コンポーネントのパワー処理能力があります。高いパワ ー・レベルが入力されると、ネットワーク・アナライザが損傷する場合があります。 またハイパワー測定では、損傷レベル以外にも、圧縮レベルや雑音レベルにも考慮 する必要があります。ハイパワー測定の最初のステップは、パワー・バジェットま たはパワー・フロー解析の計算です。このセクションでは、PNAネットワーク・ア ナライザのブロック図について考察した後で、パワー・フロー解析の例を2つ説明 します。 パワー・バジェット解析と マイクロ波PNAの ブロック図 図1は、20GHz E8362B1 MW PNAネットワーク・アナライザのブロック図を示した ものです。表1には、20/40/50GHz E8362/3/4B PNAのコンポーネントの損傷レベル がリストされています。67GHz E8361A PNAの損傷レベルおよび圧縮パワー・レベ ルについては、付録を参照してください。通常は、コンポーネントを損傷レベル近 くで動作させないでください。また、損傷レベルを最低でも3dB(できれば6dB)下 回るパワー・レベルを維持してください。レシーバと同様に、損傷レベルをかなり 下回るレベルが最適レベルです。 この図のコピー(Microsoft Visioファイル形式)は、AgilentのWebサイトからダウン ロードできます。www.agilent.co.jp/find/pnajにアクセスして、"Library"に行き、 "Manual & Guides"を選択してください。このブロック図の電子版を使って、特定の テスト・セットアップのパワー・フロー解析を行うことも可能です。 信号源 スイッチ/スプリッタ 固定+ スロープ・パッド ` ` 固定+ スロープ・パッド R1 R2 60dBステップ・アッテネータ 60dBステップ・アッテネータ 信号源出力 レシーバR2入力 信号源出力 カプラ・スルー カプラ・アーム レシーバB入力 レシーバA入力 35dBステップ・ 35dBステップ・ アッテネータ アッテネータ カプラ・アーム ポート1 カプラ・スルー 信号源出力 レシーバR1入力 15 dB CF 信号源出力 バイアス・ティー B ポート2 A 15 dB CF バイアス・ティー 図1. 信号源アッテネータ、レシーバ・アッテネータ、バイアス・ティー、周波数オフセット・モードで構成された、 MW PNA E8362Bのブロック図(オプション016、UNL、014、080) 1. オプション014(拡張可能テスト・セット)、オプションUNL (信号源アッテネータとバイアス・ティー)、オプション016 (レシーバ・アッテネータ)で構成されたE8362B 3 表1. MW PNA E8362/3/4Bのパワー・レベル コンポーネント 損傷レベル 注記 スイッチ/ スプリッタ +30dBm スイッチ/スプリッタ・アセンブリは、ネットワ ーク・アナライザの中でも最も感度の高いコンポ ーネントです。高いパワー・レベルによって損傷 しないように十分に注意してください。 +30dBmを超える信号レベルでは、この超小型 電子回路は損傷します。1 テスト・ポート1 または2 +30dBm テスト・ポートの最適なパワー・レベルは 0dBm未満です。テスト・ポートの圧縮レベル: <0.1dB(−5dBmで) 、 <0.45dB(+5dBmで) レシーバ R1、R2、A、B +15dBm レシーバ(ミキサ)の最適なパワー・レベルは −12dBm以下です。 バイアス・ティー +30dBm バイアス・ティーはMW PNAの主要なパワー制 限コンポーネントとなる場合があります。バイア ス・ティーのないハイパワー・テスト・セットも ご用意しています(オプションH85) 。 60dB信号源 アッテネータ +30dBm − 35dBレシーバ・ アッテネータ +30dBm − カプラ +43dBm<20GHz +40dBm>20GHz 結合係数は約15dB(600MHz以上)です。 600MHz以下では、結合係数は、20dB/ デケードで周波数が低くなるに従って増加 します。2 損傷レベルが、テスト・ポートでは+30dBmなのに、カプラの場合は +43dBmと記されているのはなぜですか? カプラがテスト・ポートに適切に配置されていないからですか? いいえ。カプラはテスト・ポートに適切に配置されていますが、カプラが+43dBm (<20GHz)まで処理できるのに対して、バイアス・ティー(カプラの直後にある) の損傷レベルは+30dBmです。このため、テスト・ポートに+30dBm以上印加され た場合、バイアス・ティーが損傷します。レシーバ・アッテネータの損傷レベル も+30dBmですが、カプラ・アーム・ジャンパとレシーバA入力ジャンパの間にア ッテネータを置くことによって保護できます。カプラとバイアス・ティーの間にジ ャンパがないので、カプラとバイアス・ティーの間のパワー・バジェットを減らす ことはできません。したがって、テスト・ポートの出力を+30dBm未満に制限する 必要があります。カプラのハイパワー能力を活したい場合は、次の2つの方法があ ります。1つは、バイアス・ティー(およびオプションUNLのバイアス・ティーと 結合される信号源アッテネータ)のない測定器を購入することです。もう1つは、 AgilentのスペシャルMW PNA、E836x-H85です。スペシャル・オプションH85は、 信号源アッテネータは追加しますが、バイアス・ティーは追加しません。 1. Agilent 8720ネットワーク・アナライザのオプション085ハイ パワー・スイッチは、メカニカル・スイッチを使用しており、高 いパワー・レベルに対応することができました。一方PNAには電 子スイッチが搭載されているので、高いパワー・レベルでは損傷 を受け易くなっています。 2. Agilent E8362/3/4B、E8362/3/4BのオプションH85、 8720/22ESのオプション085には、同じカプラが用いられて います。 4 ハイパワー増幅器テスト用 のMW PNAの構成例 例A:GSM900/DCS1800用のデュアルバンド・ハンドセット・アンプ これは、移動体通信に用いられるデュアルバンド・ハンドセット・アンプの例です。 この増幅器の仕様については、下表を参照してください。図2は、このハンドセッ ト・アンプのテストに使用可能な構成を示したものです。 周波数レンジ 880∼915MHz、1710∼1785MHz 入力パワー・レンジ 0∼3dBm 出力パワー 32∼35dBm(∼3W) 入力のVSWR 1.5:1 アイソレーション 40dB 第2高調波歪み −40dBc 第3高調波歪み −40dBc AM-PM変換 20度/dB(Pout:34∼35dBm) 信号源 スイッチ/スプリッタ 固定+ スロープ・パッド ` 固定+ スロープ・パッド ` R1 R2 0dB:減衰なし 0dB:減衰なし –62 dBm バイアス・ティー −10 dBm A バイアス・ティー B +35 dBm +25 dBm –7 dBm +3 dBm 信号源出力 レシーバR2入力 信号源出力 カプラ・スルー ポート2 レシーバB入力 レシーバA入力 10 dB DUT +3 dBm カプラ・アーム 20dBの減衰 減衰なし カプラ・アーム ポート1 カプラ・スルー 信号源出力 レシーバR1入力 信号源出力 15 dB CF S21:順方向測定 15 dB CF +10 dBm +32 dB –47 dBm S12:逆方向伝送係数 –40 dB 図2. デュアルバンド・ハンドセット・アンプの測定用に構成されたMW PNA E8362B 注記 カプラは2GHzで+43dBmまで処理できるの で、+30dBmというリミットはカプラによる ものではありません。このリミットは、最大定 格が+30dBmのバイアス・ティーによるもの です。 このデバイスの入力パワー・レンジは、2GHzで0∼3dBmです。E8362Bの最大出力 パワーは3dBmなので、MW PNAを使って増幅器を直接ドライブすることができま す。ただし、+35dBmの出力パワーは、+30dBmのPNAの損傷レベルを上回ってい ます。この構成では、10dBの外部アッテネータを使って、PNAレシーバ、バイア ス・ティー、スイッチ/スプリッタ・アセンブリを保護しています。 5 注記 ハイパワー測定では、異なる規格の測定と校正 のどちらの期間中も、パワー・レベルに注意し てください。 注記 外部コンポーネントのパワー処理能力に注意し てください。 注記 カプラ入力前での減衰により、未補正の方向性 が減衰量の2倍悪化します。 DUTに対する最大入力パワーを+3dBmにして、順方向のパワー・フローを調べます。 入力VSWRの仕様は1.5:1(14dBのリターン・ロス)なので、反射信号は約−11dBm と仮定できます。 (3dBmの入射−14dBのリターン・ロス=−11dBm(テスト・ポー トで))。−11dBmでは、バイアス・ティーまたはスイッチ/スプリッタ・アセンブ リは損傷しません。−11dBmはまた、15dBの結合係数分だけ減少するので、Aレシ ーバのパワーは約−26dBmとなり許容できる範囲内です。校正中にオープン/ショ ートを接続し、+3dBmがすべて反射された場合も、パワー・レベルは許容範囲内 です。(3dBmの入射−0dBのリターン・ロス=3dBm(テスト・ポートで) )。 ここでDUTの出力とS22測定について調べます。3dBmの入力では、約+35dBmの出 力パワー・レベルが予測できます。これでは、ポート2のバイアス・ティーが損傷 します。10dBの外部アッテネータを増幅器に追加して、バイアス・ティーを保護 し、バイアス・ティーへの入射パワーを損傷レベルを5dB下回る+25dBmに低下さ せます。また、このアッテネータにより、トランスファ・スイッチも保護できます。 なおパワー・レベルに対応するアッテネータを選択する必要があります。Agilent 8491シリーズは、最大平均パワー定格が2Wのアッテネータです。Agilent 8498Aは、 25Wまでの平均パワーを処理でき、18GHzまで周波数レンジが仕様化されています。 減衰量が増えるに従ってパワー・レベルは損傷レベルから離れ安全になりますが、 ポート2の未補正の方向性は低下します。このため、減衰量は必要最低限にしてお く必要があります。またスイッチ/スプリッタは、+25dBmに対応でき、損傷レベ ルは+30dBmです。システム内にバイアス・ティーがなければ、カプラの後(カプ ラ・アーム・ジャンパとレシーバB入力ジャンパの間)に外部アッテネータを加え て、方向性を低下させないようにすることができます。PNAのレシーバ・アッテネ ータを使用する場合には、カプラ・スルーと信号源出力(ポート2側)の間に10dBの 外部アッテネータを追加して、信号源アッテネータを保護する必要があります。 (別の構成については、図3を参照してください)。 +35dBmの出力パワー、10dBの外部アッテネータ、15dBの結合係数の場合、Bレシ ーバのパワーは+10dBmとなり、+15dBmの損傷レベルを下回ります。ただし、レ シーバBは、+10dBmで圧縮されるので、20dBのレシーバのアッテネータによって、 Bチャネル・レシーバへの入射パワーを−10dBmまで減少させてください。 注記 レシーバが雑音のある状態で動作していないこ とを確認してください。レシーバへの入射パワ ーが少ない場合は、IF帯域幅を狭くするか、ア ベレージングを使ってPNAの雑音レベルを下げ ます。 注記 2ポート校正を使用している場合は、4つのSパ ラメータすべての確度に注意してください。 S12やS22の測定を行っていない場合でも、2ポ ート校正では4つのSパラメータがすべて使用さ れます。このため、4つのSパラメータすべてが 正確であることを確認する必要があります。 6 S22測定中は、増幅器出力への信号源の入射パワーは約−7dBmとなります(3dBmの 信号源パワー、10dBの減衰)。出力リターンロスが10dBと仮定すると、Bレシーバ では−62dBmのパワーが測定されます。これは、ネットワーク・アナライザのノイ ズ・フロアを上回ります。−62dBmの信号を測定するには、IF帯域幅を狭くする必 要があります。選択するIF帯域幅は、ユーザの許容可能な雑音量によって決まりま す。IF帯域幅を狭めると雑音レベルは低下しますが、測定速度は遅くなります。 S12測定では、増幅器の出力ポートへの入射パワーは約−7dBmです。40dBのアイソ レーション、15dBの結合係数では、Aレシーバでは−62dBmのパワーが予測されま す。これは、雑音レベルをかなり上回ります。 図3は、MW PNAオプションH85の構成を使用した同じ測定を示しています。この 場合、バイアス・ティーが取り除かれいるので、カプラの前の外部アッテネータは 不要です。 入力は、前のセクションに記載されている図2と同じです。出力は+35dBmです。 カプラは+43dBmまで処理できるので、保護する必要はありません。レシーバBは 保護しなければならないので、10dBの外部アッテネータと20dBの内部アッテネー タを使用しています。 ポート2のカプラ・アームとレシーバBの入力の間に外部アッテネータが追加され ています。図2と比べてください。図2では、アッテネータがポート2の前に追加さ れています。結合アームの後にアッテネータを追加すると、方向性は低下しません。 また、+35dBmでは+30dBmの損傷レベルの仕様を上回っているため、トランスフ ァ・スイッチと信号源アッテネータの前にアッテネータまたはアイソレータを追加 する必要があります。アイソレータは、アッテネータほどポート2の有効出力パワ ーを減少させないので、アイソレータの方が適しています。アイソレータを使用す る場合、高いパワー・レベルに対応している必要があるだけでなく、テストの周波 数レンジにも対応している必要があります。 信号源 スイッチ/スプリッタ 固定+ スロープ・パッド ` ` 固定+ スロープ・パッド R1 R2 減衰なし 減衰なし −10 dBm A B 15 dB CF 減衰なし 15 dB CF +20 dBm 20dBの 減衰 信号源出力 レシーバR2入力 信号源出力 カプラ・スルー ポート2 カプラ・アーム レシーバB入力 レシーバA入力 カプラ・アーム ポート1 信号源出力 レシーバR1入力 カプラ・スルー S21:順方向測定 10 dB DUT 信号源出力 +10 dBm +35 dBm +3 dBm +32 dB 図3. デュアルバンド・ハンドセット・アンプの測定用に構成されたMW PNA E8362B-H85 7 例B:Kuバンド半導体パワーアンプ これは、軍用/商用衛星アプリケーションに用いられる半導体パワーアンプ (SSPA) の例です。この増幅器の仕様については、下表を参照してください。入力パワー・ レ ン ジ は ネ ッ ト ワ ー ク ・ ア ナ ラ イ ザ が 供 給 で き る 範 囲 を 上 回 っ て お り( 3 0 ∼ 35dBm)、出力パワー・レンジ(>+50dBm)はネットワーク・アナライザ・レシー バが処理できる範囲を上回っています。 周波数レンジ 13.5∼17GHz リニア利得 34dB 入力パワー・レンジ 30∼35dBm(1∼3W) 出力パワー 50dBm(100W) 入力と出力のVSWR 1.8:1 P1 dB圧縮ポイント 52dBm(145W) AM-PM変換 2.5度/dB この場合、プリアンプ(またはブースタ増幅器)を使って信号源パワーを+35dBm に増加させ、出力にアッテネータを追加してパワー・レベルを50dBmから30dBmに 下げる必要があります(20dBmまたは×100圧縮)。図4は、このパワーアンプのテス トに使用可能な構成を示したものです。パワー・レベルが非常に高いので、バイア ス・ティーのないオプションH85付きのPNAを使用してください。 信号源 スイッチ/スプリッタ 固定+スロープ・パッド 固定+スロープ・パッド ` ` R1 R2 減衰なし 減衰なし −13 dBm −20 dBm −15 dBm A B 20 dB DUT +17 dBm +50 dBm +0 dBm 20 dB +35 dBm ハイパワー負荷 プリアンプ 37dB利得 +37 dBm 図4. 半導体パワーアンプの測定用に構成されたMW PNA E8362B-H85 8 +48 dBm 信号源出力 30 dB +30 dBm 信号源出力 10 dB レシーバR2入力 15 dB CF カプラ・スルー 10 dB +35 dBm +5 dBm ポート2 +10 dBm カプラ・アーム 20dBの減衰 レシーバB入力 ポート1 25dBの減衰 レシーバA入力 カプラ・スルー 信号源出力 レシーバR1入力 +15 dBm 15 dB CF 信号源出力 +20 dBm 注記 ハイパワー測定が必要なのは順方向だけで、逆 方向に関しては標準的な測定で十分です。両方 向のハイパワー測定が必要な場合は、図14を 参照してください。 注記 プリアンプと外部方向性結合器の配置によって、 プリアンプに起因するドリフトを低減すること ができます。プリアンプをポート1の外側に直 接配置(ポート1の出力に接続)すると、ドリフ トによって測定に誤差が生じることがありまし た。また、この構成では、4つのSパラメータを すべて測定できますが、プリアンプをポート1 に直接接続した場合は、DUTのS11およびS12 パラメータは測定できません。 フルオプション装備のMW PNAの17GHzにおける最大パワーは0dBmです。被試験 増幅器に+35dBmの入力パワーが必要なので、+36dBmまたは+37dBmの出力が可 能なプリアンプを追加して、カプラのスルー・アームによる損失の後に、DUT入力 のパワーが+35dBmになるようにする必要があります。 ポート1の信号源出力にプリアンプを追加しています。外部カプラのメイン・アー ムはポート1のカプラ・スルー・ジャンパに接続され、結合アームはレシーバR1入 力に再び接続されています。レシーバの損傷レベルは+15dBmですが、最適値は− 12dBmです。カプラを20dBと仮定した場合、レシーバの損傷を防ぐには、最低で も10dBのアッテネータを追加する必要があります。レシーバのパワーを圧縮以下 のレベルまで下げるために、30dBのアッテネータを結合アームの出力に追加して います。 ポート1のカプラのパワーは、処理可能な+35dBmになります。テスト・ポートの カプラの損傷レベルは+43dBmです。信号が全反射した場合、レシーバ・アッテネ ータには+20dBmが入射します。レシーバに内部アッテネータがないと、レシーバ のパワーは+20dBmと、+15dBmの損傷レベルを上回るようになります。念のため、 カプラ・アームとレシーバA入力の間に10dBのアッテネータを追加しています。さ らに、Aレシーバのパワー・レベルを−15dBmにするために、PNAレシーバに25dB の内部アッテネータを追加しています。 スルー接続(S21)について考察します。+50dBm(100W)の出力パワー・レベルでは、 PNAのテスト・ポートのカプラが損傷するので、カプラまたはハイパワー・アッテ ネータで、出力にアッテネータを追加する必要があります。+43dBm(20W)の損傷 レベルを下回るように、パワー・レベルを下げる必要があります。カプラを使って、 ハイパワー負荷のスルー・ポートを終端することができます。結合アームは、ポー ト2のカプラ・スルーに接続することができます。 レシーバにアッテネータを追加しないと、レシーバのパワーは損傷レベルの+15dBm になります。このため、カプラ・アーム・ジャンパとレシーバBの入力ジャンパの 間に10dBの外部アッテネータを追加して、レシーバを保護しています。次に、レ シーバBのパワー・レベルを−15dBmに下げるために、20dBのレシーバ・アッテネ ータを追加しています。 +30dBmのポート2への入射パワーは、カプラを通過して、信号源アッテネータと スイッチ/スプリッタ・レベラに入射しています。このパワー・レベルは、信号源 アッテネータ、特にスイッチ/スプリッタ・アセンブリの損傷レベルに相当するた め、ポート2のカプラ・スルーと信号源出力の間にハイパワー・アイソレータを追 加する必要があります。このように、増幅器が順方向にドライブされている場合は、 信号源アッテネータやスイッチ/スプリッタ・アセンブリは損傷しません。 9 ハイパワー増幅器測定の 詳細手順 このセクションでは、ハイパワー増幅器の測定に必要な手順を詳細に説明します。 ここで使用する増幅器は、Motorola IC MHPA21010をベースにした、RFハイパワー LDMOS増幅器です。この例に適用される仕様については、下表を参照してくださ い。この増幅器のテストには、拡張可能テスト・セット、信号源アッテネータ、レ シーバ・アッテネータ、バイアス・ティー、周波数オフセット・モード付きの E8364Bネットワーク・アナライザを使用します。 DUT性能:RFハイパワーLDMOS増幅器 定格 値 周波数レンジ 2110∼2170MHz RF入力パワー(シングル・キャリアCW) +20dBm パワー利得(f=2140MHz) 23.7dB(最小)、25dB(代表値) 利得フラットネス 0.2dB(代表値)、0.6dB(最大) パワー出力@1dB圧縮(f=2140MHz) 41.5dBm 入力のVSWR(f=2110∼2170MHz) 1.5:1(代表値)、2:1(最大) ここでの目的は、リニアSパラメータと利得圧縮を測定することです。リニアSパ ラメータは、ローパワー条件下で簡単にテストできます。利得圧縮テストでは、 DUTを高いパワー・レベルでドライブする必要があるので、プリアンプが必要です。 プリアンプを使用したセットアップ/校正は複雑で、ミスが起こり易くなります。 そのためセットアップの性能を検証することをお奨めします。この手順は、プリア ンプ・セットアップを使用したSパラメータのテストから構成されますが、パワ ー・レベルをローレベル(プリアンプがない場合と同様のレベル)に設定して、最 初のリニアSパラメータとの結果の比較を行います。値が妥当な範囲内にある場合 は、ハイパワー・セットアップを信用して、利得圧縮測定に進むことができます。 このプロセスは、以下の3つのステップが含まれています。 測定ステップ 10 ステップA Sパラメータ、ローパワー・レベル、 標準的な(ハイパワーでない)動作条件 ローパワー・セットアップ でSパラメータを測定。入力にプリア ンプは不要。入力にアッテネータを使用。 図5を参照 ステップB Sパラメータ、ローパワー・レベル、 入力にプリアンプ、出力にアッテネータ ハイパワー・セットアップ を使用。デバイスへの入射パワーが ステップAと同じようになるように、 パワー・レベルを設定。図8を参照 ステップC 利得圧縮、ハイパワー・レベル、 ハイパワー・セットアップ 入力にプリアンプ、出力にアッテネータ を使用。出力を掃引して増幅器をテスト。 図11を参照 ステップA. Sパラメータ、ローパワー・レベル・テスト、ローパワー・ セットアップ この手順に用いられるブロック図を図5に示します。最初のステップは、パワー・ フロー解析の実行です。−10dBmの入力パワー、26dBの利得では、+16dBmの出力 パワーが予測されます。+16dBmでバイアス・ティーやレシーバ・アッテネータが 損傷することはありませんが、6dBのアッテネータを追加することにします。これ は、PNAの最大出力パワーが+3dBmなので、(26dBの利得で)パワー・レベルを誤 って上げてしまった場合、PNAコンポーネントの損傷レベルに近い+29dBmに達し てしまうからです。このため、6dBのアッテネータを追加することで、PNAが損傷 しないようにしています。 信号源 スイッチ/スプリッタ 固定+スロープ・パッド ` ` R1 固定+スロープ・パッド R2 減衰なし 減衰なし −15 dBm バイアス・ティー A バイアス・ティー B 信号源出力 レシーバR2入力 信号源出力 カプラ・スルー ポート2 カプラ・アーム レシーバB入力 カプラ・アーム ポート1 カプラ・スルー 信号源出力 レシーバR1入力 レシーバA入力 +16 dBm −10 dBm 10dBの減衰 6 dB D UT 信号源出力 15 dB CF 減衰なし 15 dB CF −5 dBm +10 dBm +26 dB S21:順方向測定 図5. ハンドセット・アンプ(ロー入力パワー)のテスト用のMW PNA E8364B 11 校正を実行する前に、増幅器を接続し、パワー・レベル/アッテネータが必要なレ ベルであることを確認します。損傷を防ぐために、以下の手順で増幅器を接続して ください。 増幅器をループから外す。 ポート間に増幅器を接続しない 増幅器の電源をオンにする。バイアスをかける ネットワーク・アナライザの電源をオンにして、 RFパワーを非常に低いレベルに設定する(例:−60dBm) 増幅器の出力をポート2に接続してから、 増幅器の入力をポート1に接続する レシーバのポート2に内部レシーバ・ アッテネータを追加する(例:20dB) S21を測定する。内部アッテネータと 外部アッテネータを考慮する 外部アッテネータを増幅器の出力に接続する (例:20dBの外部アッテネータ) 損傷レベルに注意しながら、徐々にRF入力パワー・ レベルを上げ、減衰量を減らす 図6. ネットワーク・アナライザへの増幅器の接続手順 [Preset] スタート/ストップ周波数を設定する [Power]>Level>−60dBm [Measure]S21 増幅器の電源をオンにする 増幅器にバイアスをかける前に、PNAのパワー・レベルを非常に低い値に設定しま す。RFパワーをオフ にするよりも、低いRFパワー・レベルを使用する方が適して います。RFパワーをオフにすると、オンにした場合にパワー・レベルがどうなるか 分からなくなりますが、パワーを低いレベルに設定すると、ネットワーク・アナラ イザの出力パワーを確認できます。この例では、まずパワーを−60dBmに設定して います。次に、増幅器のS21を調べます。S21は、予測値を下回っているようです。 これは、まだ校正が完了していない外部アッテネータがあるためです。この場合、 利得は26dBではなく、約20dBになります(アッテネータで6dBの損失)。校正を行 えば、アッテネータの損失が除去されます。 12 −10dBmの入力パワーで、この増幅器のSパラメータを測定したいとします。−10dBm の入力、26dBの利得、6dBの減衰では、テスト・ポートに+10dBmが入射されます。 PNAレシーバが圧縮された状態で動作しないように、10dBのレシーバ・アッテネ ータを追加します。レシーバの減衰量分だけ利得(S21)が低下することが分かりま す。これは、セットアップが未校正のためです。レシーバ・アッテネータへは、メ ニューからアクセスできます。 Channel>Power... パワー・レベルを徐々に上げて、利得を確認します。被試験増幅器が圧縮状態にな るまで、変化はないはずです。ただし、PNAからの直接のパワーだけでは、この増 幅器を圧縮することはできません。 [Power]>Level>−10dBm IF帯域幅を狭めて雑音レベルを下げることを検討してください。未校正のSパラメ ータ(特に、S12)をさまざまなIF帯域幅で調べることにより、測定の許容雑音レベ ルを確認できます。この例では、IF帯域幅を1kHzに下げます。 [Sweep Setup]>Bandwidth>1kHz 注記 MW PNAの出力パワーは十分にレベリングさ れているので、信号源パワー校正はオプション です。しかし、信号源パワー校正を実行すれば、 測定確度は向上します。また正確なSパラメー タ測定には、アッテネータ(外部および内部)の 影響を取り除かなければならないので、2ポー ト校正は必須です。 有効な設定ができたので、校正を実行できます。被試験増幅器を取り外します。増 幅器の入力ポイントで信号源パワー校正を実行して、増幅器の入力のパワーを一定 の既知の量に保ちます。次に、2ポート校正を実行して、外部/レシーバ・アッテ ネータの系統誤差や影響を除去します。この例では、電子校正モジュール(ECal) を使用します。増幅器の代わりにECalモジュールを接続するだけです。増幅器の S12およびS22が入力パワーのわずかな変動にも敏感な場合は、ポート2で信号源パワ ー校正を実行することも可能です。 13 Calibration>source-power cal... Calibration>Calibration Wizard... 以下のパラメータは、Sパラメータをベースにしたものなので、検証することが可 能です。図7は、このデバイスの実測Sパラメータを示しています。 ● ● ● ● 利得、利得フラットネス 入力のVSWRまたはリターン・ロス 出力のVSWRまたはリターン・ロス アイソレーション(このデバイスでは仕様化されていないが、S12と同じ) 40 30 20 S21 10 0 −10 S22 S11 −20 −30 −40 −50 S12 −60 −70 2110 2130 2150 周波数(MHz) 図7. ローパワー(線形)条件でのハイパワー増幅器のSパラメータ 14 2170 ステップB:Sパラメータ、ローパワー・レベル・テスト、 ハイパワー・セットアップ このセクションでは、ハイパワー・セットアップを使って、低いパワー・レベルで Sパラメータをテストするための手順について説明します。ハイパワー・セットア ップは、利得圧縮テストに必要です。図8のブロック図は、必要なテスト・セット アップを示したものです。ここでの目的は、ハイパワー・セットアップを検証する ことです。低いパワー・レベルでのローパワー・セットアップのテスト結果と低い パワー・レベルのハイパワー・セットアップを比較します。結果が妥当な範囲内に ある場合は、ハイパワー・セットアップを使用して、利得圧縮などのハイパワー測 定を実行することができます。ステップAとステップBの結果を比較します。 信号源 スイッチ/スプリッタ 固定+スロープ・パッド 固定+スロープ・パッド ` ` R1 R2 −38 dBm 0dBの減衰 20dBの減衰 −41 dBm 信号源出力 レシーバR2入力 信号源出力 ポート2 6 dB カプラ・スルー −8dBm 20 dB カプラ・アーム −21 dBm 15 dB CF 10dBの減衰 バイアス・ティー レシーバB入力 レシーバA入力 カプラ・アーム ポート1 B 0dBの減衰 カプラ・スルー 信号源出力 レシーバR1入力 A 15 dB CF 信号源出力 バイアス・ティー 0 dBm 16 dB DUT −10 dBm +16 dBm DUT利得 26dB −22 dBm ハイパワー負荷 −40 dBm プリアンプ +34dB利得 16 dB −6 dBm 注記 このセットアップの外部アッテネータは、ハイ パワー測定のために追加しました(図11を参 照) 。ローパワー測定では、理想的なコンポーネ ントではありません。ただし、ハイパワー測定 には必要なので、システムに追加しています。 図8. Sパラメータのローパワー・テスト用のハイパワー・セットアップ 15 ブロック図のコンポーネント プリアンプ プリアンプの主な選択基準は、被試験デバイスをドライブできるだけのパワーを発 生させられることです。高いアイソレーションの増幅器が最適です。もちろん、プ リアンプの周波数レンジは、DUTのレンジに対応している必要があります。この例 では、Mini-Circuits社の増幅器(パーツ番号ZHL-42)が使用されています。この増幅 器は、700∼4200MHzで動作(DUTの周波数レンジに対応)し、(+20dBmの必要な テスト入力パワーを十分に上回る)+28dBmで圧縮します。利得の代表値は33dBな ので、必要な+20dBmを得るためには、−12dBmの入力が必要です。これは、PNA なら簡単に供給できます。 基準チャネルのカプラ このカプラは、プリアンプの出力パワーに対応できる必要があります。このカプラ の目的は、パワーの一部だけを基準レシーバに取り出せるようにすることです。 S21測定の場合は、レシーバBとR1を比較する必要があります。そのため、R1レシ ーバを使って入力パワーを測定する(増幅器の入力パワーをR1レシーバに送る)必 要があります。この例では、PNAの内部カプラを使用しています。このカプラは、 30dBmの処理が可能で、20dBの結合係数を備えています。 パワー・フローをテストするのに最適な方法は、パワー・メータを使って、RF経 路内のさまざまなポイントのパワー・レベルを検証することです。1つのコンポー ネントを接続して出力のパワー・レベルをテストし、次のコンポーネントを接続し て出力のパワー・レベルを確認し、さまざまなポイントのパワー・レベルを検証し ます。広い周波数レンジを掃引している場合は、パワー・レベルに多少の変動が見 られますが、ある程度までは、パワー・レベルを把握できます。最初はCWモード でテストしたり、狭い周波数スパンでテストして、さまざまなパワー・レベルを測 定することができます。ここでの目的は、パワー・フローを理解することと、ネッ トワーク・アナライザのコンポーネントが損傷しないようにすることです。 使用しているパワー・センサが高いパワー・レベルに対応できることを確かめま す。パワー・メータのパワー・レベルが999.99ということは、パワー・センサに負 荷をかけ過ぎたために、センサが損傷した可能性があるということを意味していま す。Agilentでは、ハイパワー測定用に以下のパワー・センサを用意しています。 注記 このアプリケーション・ノートの発行時点で は、E9300シリーズ・パワー・センサは、 PNAネットワーク・アナライザで使用すること はできません。これは、E9300パワー・セン サが、PNAがサポートしていないE4416/7パ ワー・メータでしか機能しないためです。 E4416/7パワー・メータ・ドライバをPNAフ ァームウェアに追加する計画があります。PNA のサポート・ページを調べて、機能拡張の状況 を確認してください。 16 パワー・センサ 最小パワー(dBm) 最大パワー(dBm) 8481B 0 +44 8481H −10 +35 E9300B、E9301B −30 +44 E9300H、E9301H −50 +30 8480シリーズおよびEシリーズ・パワー・センサの詳細については、 www.agilent.co.jp/find/powermetersをご覧ください。 フェーズ・ロックのために基準チャネル入力を使用しなくて済むように、周波数レ ンジを設定し、周波数オフセット・モードをオンにします。 [Preset] [Start/Center]>2110MHz [Stop/Span]>2170MHz [Sweep Setup]>Bandwidth>1kHz [Sweep Setup]>Number of Points>201 [Measure]>S21 メニュー項目Channel>Frequency-offset... 周波数オフセット・モードを オンにします。 これらの値は変更しないこと。 Offsetは0、Multiplierは1、 Divisorは1のままにします。 被試験デバイスの周波数レンジ を反映させます。 注記:フェーズ・ロック外れと周波数オフセット・モードの使用 標準的なネットワーク解析では、基準レシーバ(順方向ではR1、逆方向ではR2)が、 RF信号源とレシーバLOの間のフェーズ・ロックに使用されます。フェーズ・ロッ ク条件により、基準チャネル信号の信号純度とパワー・レベルの制限が厳しくなり ます。このため、ハイパワー測定はさらに面倒になり、“phase-lock lost”というエ ラー・メッセージに対処しなければならない場合がよくあります。PNAを用いれば、 周波数オフセット・モード(オプション080)を使って、この問題を回避することが できます。ネットワーク・アナライザが周波数オフセット・モードの場合は、R1 レシーバはフェーズ・ロックに使用されません。信号源とレシーバのフェーズ・ロ ックには、独立した内部回路が用いられます。 さまざまな信号源/レシーバの周波数を測定するのではなく、独立したフェーズ・ ロック・メカニズムを利用するだけの場合は、周波数オフセット・モードをオンに してください。オフセットをゼロに設定して、信号源とレシーバの周波数が同じに なるようにしてください。 周波数オフセット・モード・オプションが搭載されていないPNAで、フェーズ・ロ ックに基準チャネルを使用しなければならない場合は、Rチャネル信号には、−10 ∼0dBmの範囲のパワー・レベル、純度の高い信号、スプリアス成分がないという 条件が必要です。 17 パワー・レベルの設定 次に、パワー・レベルとアッテネータの設定を行います。ポート1のパワー・レベ ルを非常に低くする必要があるので、ポート1とポート2のパワー・レベルを分離し ます。ポート2のパワー・レベルは低くする必要はありません。実際に、低いパワ ー・レベルから始めて、パワー・レベルを減衰させて、S12(アイソレーション)を 測定すると、S12測定は雑音に埋もれます。このため、パワー・レベルを分離して、 ポート2のパワーを高いレベルに設定します。PNAネットワーク・アナライザには2 つの信号源アッテネータ(1つはポート1用、もう1つはポート2用)が搭載されてい るので、信号源のパワー・レベルの変更を十分に制御できます。 メニュー項目Channel>Power... 適切なポートが選択され ていることを確認します。 ポートの出力を 分離します。 各ポートのパワー・レベルを決定するには、ブロック図をよく見て、様々な計算を 実行します。ステップAのリニア・テストでは、増幅器への入射パワーは−10dBm でした。ここでの目的は、増幅器の入力で再び−10dBmを実現するために、様々な 設定を決定することです。 PNAには、設定する必要のあるさまざまな「パワー」値があります。表2および関 連する注記では、これらの値について検討すると共に、ハードウェアとの関係につ いて説明しています。 18 表2. PNAのパワー・レベルの設定 A ポート B 信号源パワー校正 校正パワー 前のポート・パワー (DUTへの入射 (実際のPNA パワー) 信号源出力) C D オフセット 信号源アッテネータ (信号源パワー校正 の設定 メニューの) メニュー 1 −42dBm −10dBm +32dB 20(自動) 2 0dBm −22dBm −22dB 0(自動) 表2に関する注記 列Aに関する注記: 信号源出力のジャンパとカプラ・スルーのジャンパの間に外部 コンポーネントがない場合は、信号源とテスト・ポートのポート・パワーは同じに なります。ただし、この場合はプリアンプがあるので、ブーストしたパワーを結合 してPNAに送り返しています。このため、PNAの信号源パワーとポート・パワーは、 プリアンプの利得からカプラのスルー・アームの損失を引いた分だけ異なります。 信号源パワー校正の実行前は、Channel>Power...ダイアログ・ボックスに表示さ れているテスト・ポートのパワー値が、テスト・ポートまたは信号源出力ジャンパ で得られるPNAの実際の信号源パワーです。この値の範囲がPNAから利用可能なパ ワーです。信号源パワー校正の実行後は、Channel>Power...ダイアログ・ボック スのパワー・レベルは、DUT入力のテスト・ポートのパワー・レベルです。このた め、テスト・パワー・ポートが新たな状態にあることが分かります。この値の取り 得る範囲は広く、接続した外部コンポーネントによって異なります。アッテネータ がある場合(ポート2の場合など)は、PNAの信号源パワーより小さな値、プリアン プがある場合(ポート1の場合など)は、PNAの信号源パワーより大きな値を取り得 ます。 列Bに関する注記: これは、プリアンプとアッテネータの影響を計算した後のテス ト・ポートでの予想パワー・レベルです。PNAは、テスト・ポートのパワーをこの 値に設定することを試みます。 列Cに関する注記:校正ダイアログ・ボックスに入力するオフセット値は、PNAと DUTの間にあるコンポーネントによって決まります。ポート1の場合は、プリアン プの利得からケーブルの損失を引いた、32dBになります。ポート2の場合は、外部 アッテネータの損失とカプラの結合係数を足した、−22dBになります。 次に、レシーバ・アッテネータを設定します。この例では、レシーバBに10dBのア ッテネータを追加します。 最後のステップは、増幅された基準チャネルの信号(PNAにオプション0811を搭載 している場合は、基準レシーバ・スイッチ)を使用するようにネットワーク・アナ ライザを設定することです。外部入力を使用するように基準チャネルのスイッチを 設定します。 メッセージ項目Channel>Test Set... 1. オプション081外部基準スイッチは、主にミキサ/コンバータ の測定に用いられ、増幅器の測定には不要です。ただし、アナ ライザにオプション081を搭載している場合は、外部基準スイ ッチの位置を設定する必要があります。 19 校正 2種類の校正を実行します。1つは信号源パワー校正で、DUTの入力ポイント(ポー ト1)とDUTの出力(逆方向測定の場合はポート2のパワー)における安定したパワ ー・レベルを保証します。もう1つはECalを使用したフル2ポート校正で、方向性、 ソース/ロード・マッチなどの系統誤差を除去します。信号源パワー校正ダイアロ グ・ボックスで、オフセット・レベルを適切な値(表2を参照)に設定します。信号 源パワー校正メニューで適切なポートを選択してください。この測定の間は、プリ アンプをオンにします。 順方向と逆方向のPNAのステータス・バーのScr Pwr Calインジケータを確認しま す。測定をS21に設定して、Scr Pwr Calインジケータを確認します。次に、測定を S12に設定して、Src Pwr Calインジケータを確認します。 注記 信号源パワー校正は、校正を実行するための 「隠し」チャネルを設定します。このチャネル は、公称パワー・レベルで開始しますが、ユー ザのチャネル・パワー・レベルより高い場合が あります。パワーセンサを接続するように表示 された後、パワー・センサをセットアップに接 続します。ハイ・パワーによりパワー・センサ が損傷する可能性があるので、それまでは接続 しないでください。 次に、ECalモジュールを使って、2ポート校正を実行します。ECalモジュールは、 DUTを接続する場所に接続します。自動方向決定機能を回避するには、ECalモジュ ールのDo Orientationダイアログ・ボックスの選択を解除する必要があります。 注記 "Electronic Cal: Unable to orient ECal module. Please ensure the module is connected to the necessary measurement ports”というエラー・メッセ ージが表示された場合は、“Do orientation” の選択を解除します。ECalモジュールは方向決 定に−18dBmが必要ですが(校正ではなく、 方向決定)、出力ポートの損失は26dBである ため、ECalモジュールは方向を決定できません。 このため、ECalモジュールの方向をアナライザ に指示する必要があります。 20 dB 校正を実行したら、被試験増幅器を接続してSパラメータを測定します。図9は、プ リアンプがある場合とない場合のSパラメータ測定を示しています。DUTへの入射 パワー・レベルは同じです。図10は、2種類のセットの差を示したものです。 40 30 20 10 0 −10 −20 −30 −40 −50 −60 −70 2110 S21 S22 S11 S12 2130 2150 2170 周波数(MHz) 図9. DUTのSパラメータ(プリアンプあり/なし) 1 (差)dB 1 S12 S21 0 −1 S11 −1 2110 S22 2130 2150 2170 周波数(MHz) 図10. Sパラメータの差(プリアンプあり/なしでテストした場合) ご覧のように、差は予想通りごくわずかです。トレース雑音や測定の再現性以外に も、これらの差は、ポート2の方向性の低下(プリアンプの場合)、すなわち2ポート 校正の劣化に起因する可能性があります。S 12測定は雑音レベルに近くなるため、 システム内の雑音に伴うある程度の不確かさが見られます。この雑音レベルは、 PNAのIF帯域幅を狭くすれば下がります。 同様の比較を行う場合は、高品質のケーブル、アダプタ、アッテネータを使用してく ださい。品質の悪いコンポーネントを使用すると、測定の変動量が大きくなります。 ローパワーSパラメータの測定に最適なセットアップは、プリアンプや追加アッテ ネータのない、最初のセットアップです。同じセットアップでローパワーとハイパ ワーの両方のテストを行いたい場合は、ハイパワー・セットアップを使用して、入 力パワー・レベルを下げます。 21 ステップC:利得圧縮テスト、ハイパワー・セットアップ 利得圧縮テストでは、パワーを掃引して増幅器をテストします。テスト中はアッテ ネータの設定を切り替えて、有効な校正を維持することができないので、信号源ア ッテネータの設定を決定する必要があります。1つのアッテネータ設定では必要な テスト範囲に対応できない場合は、複数のチャネルを使用してシングル掃引を行い ます。連続掃引では、スイッチが早く磨耗してしまうので、複数のチャネルで複数 のアッテネータ設定を行うことはできません。 各種ネットワーク・アナライザのパワー掃引範囲については、オンライン・ヘル プ・システムの「仕様」を参照してください。 注記 PNAに内蔵されているオンライン・ヘルプ・シ ステムにアクセスするには、ダークグリーンの Helpハードキーを押すか、Helpメニュー項目 を使用します。ヘルプ・システムは、以下の Webサイトでも提供されています: www.agilent.co.jp/find/pnaj>E8364Bなどの製 品 ペ ー ジ を 指 定 > Library> Manuals & Guides>Online Help。 出力掃引範囲またはPNAの自動レベル・コントロール(ALC)の範囲は、周波数レ ンジに大きく依存します。この例で用いられているネットワーク・アナライザは、 2140MHzで以下のALC範囲を備えています。 アッテネータの設定 信号源の最小パワー 信号源の最大パワー 0 −27dBm +7dBm 10 −37dBm −3dBm 20 −47dBm −13dBm プリアンプがあるので、20dBのアッテネータ設定では、−10∼+18dBmの範囲を 実現できます。様々なパワー・レベルについては、図11のブロック図を参照してく ださい。 信号源 −42∼−13dBm スイッチ/スプリッタ 固定+スロープ・パッド 固定+スロープ・パッド ` ` R1 R2 −44∼−14 dBm A B バイアス・ティー 20 dBの減衰 15 dB CF カプラ・スルー 信号源出力 0 dBの減衰 15 dB CF レシーバR1入力 バイアス・ティー 信号源出力 減衰なし −41∼−13 dBm 20 dBの減衰 −21∼+7 dBm 20 dB DU T 16 dB +16∼+44 dBm −10∼+18 dBm DUT利得 26dB プリアンプ +34dB利得 −6∼+22 dBm 図11. 利得圧縮テスト用の出力掃引 ハイパワー負荷 −40∼−12 dBm −22∼+6 dBm 信号源出力 レシーバR2入力 信号源出力 カプラ・スルー ポート2 0∼+28 dBm 16 dB 22 6 dB カプラ・アーム レシーバB入力 レシーバA入力 −8∼+20 dBm カプラ・アーム ポート1 −6∼+22 dBm 利得圧縮テストの手順 [Preset] [Sweep Type]>Power Sweep [Start/Center]>CW Freq>2140MHz [Sweep Setup]>Bandwidth>1kHz [Sweep Setup]>Number of Points> 201 [Measure]>S21 [Power]>Start Power>−42dBm [Power]>Stop Power>−13dBm 周波数オフセット・モードのオン MW PNAは、パワー掃引を実行する際に、自動利得設定アルゴリズムを使用します。 このアルゴリズムにより、スプリアスが生じる場合もあるので、周波数オフセッ ト・モードをオンにして、このアルゴリズムをバイパスしてください。また、周波 数オフセット・モードを使用すれば、外部Rチャネルをフェーズ・ロックする必要 もなくなります。 メニュー項目Channel>Frequency-offset...>“Frequency Offset on/off”チェ ック・ボックスを選択します。 Offsetは0、MultiplierとDivisorは1のままにします。 メニュー項目Channel>Power...>B receiverのアッテネータを20dBに設定しま す。 メニュー項目Channel>Test Set>Use External reference(PNAにオプション 081が搭載されている場合) DUTの入力ポイントで、信号源パワー校正を実行します。 次に、S21測定のレスポンス校正を実行します。Bレシーバの絶対測定に対して、信 号源/レシーバ校正を実行します。被試験増幅器の利得圧縮を図12に示します。 図12. 増幅器の利得圧縮 23 別のハイパワー構成 以下のブロック図は、2つの別のハイパワー測定の方法を示しています。 外部カプラの使用 ハイパワー外部カプラを内部カプラの代わりに使用できます。方向性の優れたカプ ラを選択して、校正後の測定の安定性を確保することが重要です。 信号源 スイッチ/スプリッタ ` ` R1 R2 固定+スロープ・パッド 固定+スロープ・パッド 16 dB 信号源出力 レシーバR2入力 信号源出力 カプラ・スルー ポート2 カプラ・アーム レシーバB入力 DUT プリ アンプ 図13. ハイパワー測定における外部カプラの使用 24 バイアス・ティー 15 dB CF B レシーバA入力 カプラ・アーム ポート1 カプラ・スルー 信号源出力 信号源出力 A 15 dB CF レシーバR1入力 バイアス・ティー 双方向ハイパワー測定 双方向ハイパワー測定の場合は、プリアンプを各ポートに追加する必要があります。 増幅器のS22は通常不正確なので、各増幅器の後にアイソレータを配置すると、ロ ード・マッチが向上します。アイソレータはまた、ハイパワー出力からプリアンプ を保護します。 信号源 スイッチ/スプリッタ ` ` R1 R2 固定+スロープ・パッド 固定+スロープ・パッド カプラ・アーム レシーバB入力 レシーバA入力 D UT カプラ・アーム ポート1 信号源出力 レシーバR2入力 信号源出力 カプラ・スルー ポート2 15 dB CF カプラ・スルー 信号源出力 レシーバR1入力 B 15 dB CF 信号源出力 A プリアンプ プリアンプ 図14. 双方向ハイパワー測定 25 よくある質問(FAQ) 1. どうすればネットワーク・アナライザのレシーバが圧縮されていると 分かりますか? 増幅器のような能動デバイスをテストする場合は、デバイスの出力パワー・レベル やネットワーク・アナライザのレシーバへの入射パワーに注意する必要がありま す。圧縮状態のレシーバを使用すると、デバイスでの圧縮とテスト・システムの誤 差を見分けることが難しくなります。以下の手順では、ネットワーク・アナライザ の内部レシーバが圧縮されているか否かを確認するための方法を説明します。この 手順は、ネットワーク・アナライザにレシーバ・アッテネータが装備されているこ とを前提とします。MW PNAアナライザについては、レシーバ・アッテネータはオ プション016で提供されています。低コストのMW PNA-Lモデルでは、レシーバ・ アッテネータをご利用いただけません。 ポート1と2の間に被試験デバイスを接続し、S21およびBチャネル測定をセットアッ プします。次に、レシーバ・アッテネータの設定を変更して、S21およびBを調べま す。レシーバが圧縮されていない場合は、トレースは減衰量分だけ変化し、その他 に変動は見られません。レシーバが圧縮されている場合は、減衰量以外の余分な変 化が見られます。校正なしで比較を行うことができます。校正をオフにするだけで す。値が減衰量分だけ減少したかどうか確認するには、マーカが便利です。 Rチャネル・レシーバに対してもこのテストを繰り返します。これは、S 21とAMPMはどちらも比測定なので、両方のレシーバをテストする必要があるからです。 相互変調歪み測定でも、同様の減衰量の変更を行うことができますが、基本波トー ンと変調成分の差(dBc値)をモニタします。dBc値がアッテネータの設定によって 変化する場合は、PNAレシーバが圧縮していることが疑われます。 ネットワーク・アナライザのレシーバが元の設定で圧縮されていることがテストに よって分かった場合は、レシーバが圧縮されなくなるポイントまで、レシーバの減 衰レベルを上げます。 MW PNAでは、レシーバ・アッテネータは、Channel>Powerメニューから制御 できます。 26 2. 未校正の測定結果は妥当なようですが、校正済みデータが不正確なようです。 何が原因ですか? 2ポート校正の計算は、4つのSパラメータすべてに基づいています。ハイパワー測 定で起こり得る1つの問題として、ポート・パワーが分離されない場合に、雑音に よってS12測定の不確かさが大きくなることがあります。高利得増幅器の測定を行 う場合は、ポート・パワー結合機能を使って、ポート1と2のパワーを分離してくだ さい。出力レシーバが損傷しない低いパワー・レベルで入力(ポート1をドライブ) します。高いパワー・レベルで出力(ポート2をドライブ)して、アイソレーション (S12)測定がネットワーク・アナライザのノイズ・フロアに近づかないようにしま す。確度の高いS12測定が、確度の高い2ポート校正の基本です。 3. 起動時またはプリセット時のネットワーク・アナライザのパワーは? プリセットでは、MW PNAポート1の信号源パワー・レベルは公称レベルに設定さ れており(表3を参照)、ポート1の内部信号源アッテネータは0dBに設定されてい ます。ポート2のパワーはオフです。PNAアナライザでは、一度に1つのポートしか オンになりません。被試験増幅器がこのパワー・レベルによって損傷するおそれが ある場合、または非線形領域で動作させる場合は、必要なパワー・レベルを設定す るまで、増幅器を接続しないでください。MW PNAでは、さまざまな初期パワー設 定条件で「ユーザ・プリセット」を保存できます。プリセットを使用すると、MW PNAは新しいパワー・レベルで起動します。 表3. 公称パワー・レベル(ポート1のプリセット・パワー・レベル) ネットワーク・アナライザ 標準 オプション014、UNL、 または014とUNLの両方 E8362B(20GHz) 0dBm −5dBm E8363B/E8364B(40/50GHz) −12dBm −17dBm 4. プリセット時の各測定チャネルのパワー・レベルは? ユーザ・プリセットが異なる開始チャネル・パワー・レベルで保存されていても、 各チャネルは公称パワー・レベルで起動されます。このため、−60dBmの公称パワ ー・レベルをユーザ・プリセットとしてチャネル1を保存し、チャネル2を起動した 場合は、チャネル2は公称パワー・レベル(オプション付きのE8364Bの場合− 17dBm)で起動します。新しいチャネルをセットアップする場合は注意してくださ い。高いパワー・レベルを予想していなかった場合は、コンポーネントが損傷する おそれがあります。 チャネル1のユーザ・プリセット・レベルのRFパワーをオフに設定し、チャネル2を 起動した場合は、チャネル2のRFパワーもオフになります。パワー・レベル設定が チャネル・パラメータであるのに対して、RFパワーはグローバル・パラメータです。 5. 測定チャネルごとに異なるパワー・レベルを設定できますか? PNAは測定チャネルごとに異なるパワー・レベルを設定できます。異なるアッテネ ータ設定で異なるパワー・レベルを持つ2つのチャネルをセットアップした場合は、 PNAは1つのチャネルを自動的にトリガ・ホールド・モードにします。これは、アッ テネータを連続的なスイッチングから保護することが目的です。 6. このセットアップを使ってホットS22測定を行うことができますか? 被試験増幅器が非線形領域で動作している場合は、ロードプル手法を使って、大信 号のS22を測定する必要があります。従来のSパラメータ測定では、非線形領域で動 作する増幅器に依存します。PNAは、ホットS22測定に使用できますが、追加の機 器とセットアップが必要です。詳細については、計測お客様窓口にお問い合わせく ださい。 27 7. 掃引中にRFパワーがオフになった場合、パワー・レベルはどうなりますか? パワー・レベルは、掃引の終わりにオフになるので、RFパワーがオンであれば掃引 は続行します。次の掃引は、RFパワーがオフの状態で開始します。 8. 校正キットのメカニカル・コンポーネントにパワー制限はありますか? 大きなエネルギーの消費はないので、オープン/ショート標準器にはパワー制限は ありません。Agilent校正キットのロードの最大平均パワー定格は、通常、2Wまた は+33dBmです。 9. 電子校正(ECal)にパワー制限はありますか? ECalモジュールの最大パワー定格は、+10dBmまたは+20dBmです(下表を参照)。 またECalモジュールには、自動方向決定機能(校正ではなく、方向決定)に関する最 小パワー要件があります。モジュールのパワー・レベルが−18dBmに満たない場合 は、ECalモジュールの方向をアナライザに知らせる必要があります。自動方向決定 機能チェック・ボックスの選択を解除して、手動でアナライザにECalモジュールの 接続方法を指示します。自動方向決定機能とは、ポート1および2のECalモジュール のポートAおよびBへの接続方法をネットワーク・アナライザが決定する機能です。 ECalモジュール 最小パワー N469x(MW ECal) 校正に関しては最小パワーは 8509x(RF ECal) ありません。自動方向決定機能 の最小パワー・レベルに ついては、上のパラグラフを 参照 最大RFパワー テスト・ポートに おける最大DC電圧 +10dBm +20dBm ±10V ±20V 10. 信号源パワー校正の利点は何ですか? 信号源パワー校正では、パワー・メータの測定確度がネットワーク・アナライザに 転送されます。ネットワーク・アナライザの出力パワーは、2∼3dB以内と正確で す。MW PNAの仕様については、下表を参照してください。パワー・メータ校正で は、0.5dBを上回る優れた確度が得られます。 MW PNAのパワー・レベル確度の仕様 レンジ0での公称パワーとの差(0dB設定のステップ・アッテネータ) 周波数レンジ 標準 10MHz∼45MHz ±2dB オプション014 オプションUNL オプション014 およびUNL 45MHz∼10GHz ±1.5dB 10∼20GHz ±2dB 20∼40GHz ±3dB 40∼45GHz ±3dB ±3.5dB ±3dB ±3.5dB 45∼50GHz ±3dB ±4dB ±3dB ±4dB 増幅器がリニア・レンジで正常に動作しているリニアSパラメータ測定では、2∼ 3dBのパワー変動では大きな差は生じません。しかし、利得圧縮をテスト/仕様化 するために、1dB圧縮ポイントを求める場合は、2∼3dBは有意な差であり、信号源 パワー校正が必要です。信号源パワー校正の実行が必要なもう1つ例は、プリアン プが用いられるハイパワー測定の場合です。 また、信号源パワー校正は、レシーバ校正の前に実行する必要があります(基準を 確立するため)。レシーバ校正は、絶対パワー測定に有効です。 28 11. 校正に最適なパワー・レベルは? 校正は一般に、測定と同じ信号/応答条件の下で実行する必要があります。したが って、あるパワー・レベル(増幅器なし)で校正を行い、別のパワー・レベル(増幅 器あり)で測定を行うというのは、理想的ではありません。ただし、MW PNA製品 のダイナミック確度は非常に優れているので、異なるパワー・レベルで校正を行っ ても、大きな誤差は生じません (20GHz未満の周波数については、チャートを参照) 。 より高いパワー・レベルで校正(増幅器なし)してから、測定中(増幅器あり)にパ ワー・レベルを下げて行く以外にも、同じパワー・レンジ(同じアッテネータ設定) 内にとどめることもできます。ハードウェア設定は本質的には同じなので、確度に はほとんど影響はありません。雑音に起因する不確かさを低減するためには、常に より高いパワー・レベル(圧縮を常に下回る)で校正する方が適しています。 大きさπ 確度(dB) 最高の測定確度を得るためには、テスト・セ ットアップのパワー・レベルが比較的にフラ ットな領域となる測定/校正パワー・レベル を選択してください。 テストポートのパワー(dBm) 12. 様々な測定中の各ポートのパワー・レベルは? パラメータ ポート1 ポート2 S11 オン オフ S21 オン オフ S22 オフ オン S12 オフ オン 注記 2ポート校正の任意の オン/オフ パラメータ:S11、S21、 S12またはS22 オン/オフ 2ポート校正には4つのSパラメータ がすべて必要なので、2つのポート間 にパワー・スイッチが必要 RFパワー・オフ オフ RFパワーは、グローバル・パラメー タなので、すべてのポート/チャネル に対してオフになります オフ 13. 信号源またはレシーバの減衰量が変更された場合、2ポート校正は どうなりますか? アッテネータの設定を変更した場合は、校正は無効になります。校正を実行した後 にアッテネータの設定を変更した場合は、もう一度校正を実行する必要があります。 14.“source unleveled”というエラー・メッセージは何を意味しますか? 信号源のパワーが最大仕様パワーより大きい値に設定されている場合は、 unleveledエラー・メッセージが表示されます。パワー・レベルを下げると、この 問題は解決されます。unlevelメッセージは、ステータス・バーのLVLインジケータ と同時に表示されます。unleveldエラー・メッセージは、アッテネータの設定中に 一瞬表示されます。測定確度には影響はないので、無視しても構いません。 29 15. リトレース中のPNA出力パワーはどうなりますか? 周波数バンドが交差しない限り、リトレース中はパワー・レベルは維持されます。 周波数バンドの交差については、次の質問を参照してください。 16. 周波数バンド交差中のRFパワーはどうなりますか? MW PNAは、20を超える周波数バンドを備えています。バンド交差中は、ファーム ウェアはRFパワーをオフにします。ALCを備えた高利得デバイスをテストしてい る場合は、PNAがバンドを切り替えると、パワーはシャット・ダウンし、DUTの ALCは利得を上げようとします。数μs後に、PNAのパワーは回復しますが、この 短い時間に、DUTまたはPNAが損傷を受ける可能性があります。バンド交差につい ては、以下を参照してください。 モデル バンド E8362/3/4B 0 0∼0.045 1 0.045∼0.748 2 0.748∼1.5 3 1.5∼3 4 3∼3.8 E8363/4B E8364B 5 4∼4.5 6 4.5∼4.8 7 4.8∼6.0 8 6.0∼6.4 9 6.4∼7.6 10 7.6∼10 11 10∼12 12 12∼12.8 13 12.8∼15.2 14 15.2∼16 15 16∼20 16 20∼22.8 17 22.8∼25.6 18 25.6∼30 19 30∼32 20 32∼36 21 36∼38.4 22 38.4∼40 23 40∼45.6 24 45.6∼48 25 48∼50 WとdBm リニア(W) 30 周波数レンジ(GHz) ログ(dBm) 0.001 +0 0.01 +10 0.1 +20 1 +30 2 +33 10 +40 20 +43 40 +46 50 +47 100 +50 200 +53 付録:E8361A 67GHz ネットワーク・アナライザ の情報 内容 仕様 補足 レシーバ圧縮レベル(テスト・ポートで測定) 標準 オプション014 オプション014およびUNL 代表値 10∼45MHz1,2 無視できる 無視できる 無視できる 45∼500MHz2,3 <0.1dB(−9.5dBm4で)、 <0.1dB(−9.5dBm4で)、 <0.1dB(−9.5dBm4で)、 <0.1dB(+0.5dBm4で)、 <0.25dB(−3dBmで) <0.25dB(−3dBmで) <0.25dB(−3dBmで) <0.25dB(+8dBmで) 500MHz∼5GHz <0.1dB(−8dBm4で)、 <0.25dB(−1dBmで) <0.1dB(−7dBm4で)、 <0.25dB(0dBmで) <0.1dB(−4dBm4で)、 <0.25dB(+3dBmで) 5∼30GHz <0.1dB(−8.5dBm4で)、 <0.1dB(−8.5dBm4で)、 <0.1dB(−6dBm4で)、 <0.25dB(−2dBmで) <0.25dB(−2dBmで) <0.25dB(+1dBmで) <0.1dB(−1dBm4で)、 <0.25dB(+6dBmで) 30∼67GHz <0.1dB(−10.5dBm4で)、<0.1dB(−8dBm4で)、 <0.15dB(−7dBmで) <0.15dB(−4dBmで) <0.1dB(−8dBm4で)、 <0.25dB(−1dBmで) 無視できる <0.1dB(−9.5dBm4で)、 <0.1dB(−2dBm4,5で)、 <0.15dB(−6dBmで) <0.15dB(+2dBm5で) 67∼70GHz1 <0.1dB(−2dBm4,5で)、 <0.15dB(+2dBm5で) 損傷入力レベル テスト・ポート1および2 +27dBmまたは±40Vdc、代表値 R1、R2入力 +15dBmまたは±15Vdc、代表値 A、B入力 +15dBmまたは±7Vdc、代表値 カプラ・スルー(オプション014) +27dBmまたは±40Vdc、代表値 カプラ・アーム(オプション014) +30dBmまたは±7Vdc、代表値 ハイパワー測定に関する推奨事項 ● プリアンプを追加する必要がある場合は、拡張可能テスト・セット付きのネット ワーク・アナライザを使用してください。 ● レシーバのアッテネータを設定して、ネットワーク・アナライザのレシーバが圧 縮されないようにしてください。 ● PNAカプラの後/レシーバの前で、出力信号を減衰させてください。PNAカプラ の前で減衰させると、方向性が低下します。 ● 信号源パワー校正を実行して、測定確度を向上させてください。 ● PNAの周波数オフセット・モードを使って、外部基準チャネルのフェーズ・ロッ クの必要性をなくしてください。 ● パワー・メータ測定には、高いパワー・レベル用のパワー・センサを使用してく ださい。 ● テスト・ポート1と2のポート・パワーを分離して、順方向と逆方向のパワー・レ ベルを制御してください。2つの独立した信号源アッテネータを使用してください。 1. 代表性能 2. カプラのロールオフにより、500MHz以下では圧縮が無視でき ます。 3. 仕様値は、500MHzにおけるワーストケースの圧縮の場合 4. この圧縮レベルは、−30dBmの基準テスト・ポート・パワー でのダイナミック確度曲線による 5. オプション016により性能が3dB劣化 31 Webリソース ア ジ レ ン ト・テ ク ノ ロ ジ ー 株 式 会 社 本社〒192-8510 東京都八王子市高倉町9-1 追加の製品情報/カタログについては、以下のWebサイトをご覧ください。 計測お客様窓口 マイクロ波/RFネットワーク・アナライザ: www.agilent.co.jp/find/jpnetworkanalyzer 受付時間 9:00-19:00 (12:00-13:00もお受けしています。土・日・祭日を除く) FAX 、E-mail 、Web は 24 時 間 受 け 付 け て い ま す 。 PNAマイクロ波ネットワーク・アナライザ: www.agilent.co.jp/find/pnaj 電子校正(ECal): www.agilent.co.jp/find/ecal-j TEL ■■ 0120-421-345 (0426-56-7832) FAX ■■ 0120-421-678 (0426-56-7840) Email 電子計測用アクセサリ: www.agilent.co.jp/find/accessories [email protected] 電子計測ホームページ www.agilent.co.jp/find/tm ● 記載事項は変更になる場合があります。 ご発注の際はご確認ください。 Copyright 2004 アジレント・テクノロジー株式会社 電子計測UPDATE www.agilent.com/find/emailupdates-Japan Agilentからの最新情報を記載した電子メールを無料でお送りします。 November 2, 2004 5989-1349JA 0000-00DEP