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アメリカ市場における 日本食と日本酒の現状
ー エッセイ 素敵・発見!マーケティング 55 アメリカ市場における 日本食と日本酒の現状 株式会社クリエイティブ・ワイズ 代表取締役 三宅曜子 アメリカのニューヨークとロサンゼルスで 10 月にサポートした商談会では、新しい 日本食の提案が見えてきた。 今回は、毎年参加して感じた日本食の新たなとらえ方について紹介する。 LA のパサディナで行われる展示会会場 今年で 26 年目となる共同貿易主催の展示会 旬レポ中国地域 2014 年 11 月号 1 ■26 年間継続しているアメリカでの日本食材、日本酒展示会とは 日本酒や日本の食材を中心に 販売展開している老舗貿易会社、 共同貿易の展示会『共同貿易レ ストランエキスポ』は、ロサン ゼルスが今年で 26 回目、ニュー ヨークが 21 回目となる。この企 業の会長である金井紀年氏は、 『ミスター寿司』と言われ、日 本食、特に寿司を 50 年以上前か らアメリカに定着させ、ホンモ ノの寿司を提供するため、寿司 学校まで創った人物である。日 毎年樽割からスタートする 本食が世界無形文化遺産に登録 されたが、これにも大きく関わっている。また社長の山本耕生氏は、宝酒造出身の、ま さに日本の酒ビジネスのプロ中のプロである。この最強コンビがトップにいる企業だか らこそできる、歴史ある展示会だ。ここ数年、JAPAN ブランド育成支援事業の一貫でこ の展示会には毎年参加しているが、年々参加企業も来場者も多くなってきていることか ら、アメリカ市場での日本食の人気の高さがうかがわれる。この展示会では日本の主要 な酒造メーカーの日本酒や焼酎、食材、包丁や和鍋といった厨房関連用品、食器など、 日本の食をつかさどる企業が集結してそれぞれの商品を提案しているが、客層はレスト ラン関連のオーナーやシェフが中心であるため、展示会は 1 日のみの開催であるものの、 確実にビジネスにつながることで有名である。 近年特にアメリカの日本食市場は確実に伸びている。 ラーメン、居酒屋などの大衆的なお店が多くなっている一方、すきやばし次郎といった 高級店の料理人がアメリカに出店するなど、二極化が進んできており、11 月には Contemporary Japanese Cuisine で、これまでロンドン、香港、イスタンブール、ドバ イ、マイアミ、バンコク、ニューヨークに出店し、話題を博している新日本食レストラ ン『ZUMA』の世界最大の店舗がマンハッタンにオープンする予定で、その規模は客席 400 席、シェフが 120 名という。ここにもすでに、日本酒と焼酎 60 種類が入ることに なったとのことだ。 『NOBU』 、 『カツヤ』など創作料理の高級料理店もアメリカ市場で新しい日本食のスタイ ルを確立させるキーパーソンとなっている。 旬レポ中国地域 2014 年 11 月号 2 ■今、日本酒カクテルがトレンド この展示会には日本酒メーカーがニューヨークで約 40 社、ロサンゼルスが約 50 社以 上出展しているが、この日本酒市場も年々成長している。 金井紀年会長は「寿司がアメリカで紹介されて 60 年経つが、食中毒や事件で新聞沙汰になった ことは一度もない。日本食が貿易摩擦で反撃を 食らったということもない。それだけ日本食は レベルが高いということ。酒もあと 20 年もした ら、知らないアメリカ人はひとりもいなくなる だろう」と今後のアメリカ市場のチャンスにつ いて述べ、山本社長は「米国の日本食はラーメ ンや焼き鳥に代表される大衆的な居酒屋レスト ランと、最近は高級を売り物にする日本食レス トランが出てきて二極化が進み、日本食の幅が 広がってビジネス参入へのチャンスが増えるだ ろう」と話された。 日本では冷か燗をして飲むのが一般的な日本酒 の飲み方であるが、今海外で注目されているの 日本酒の飲み方を紹介中! が『日本酒カクテル』である。日本では邪道と言われる飲み方がニューヨークやロサン ゼルスでブームとなっているのだ。 日本酒をベースにフルーツやフレーバーなどでアレンジし、おしゃれなグラスに入れて カクテルとして出す。これをアミューズと 一緒に楽しむのだ。 最近日本でも出てくるようになったビール と生ジュースのアレンジもすでにアメリカ ではメジャーになり、次に出てきたのがこ の日本酒カクテルだ。 その味は、日本酒そのものに慣れている人 にとっては物足りないかもしれないが、こ れまで日本酒に馴染みのない層にとっては 入りやすい飲み方だと思う。 特に注目されている新日本料理を出す店舗 オール JAPAN の企業コラボで提案する静岡県 三ヶ日の JAPAN ブランドでは今年はお酒の割 材の提案が中心 旬レポ中国地域 2014 年 11 月号 ではこのバリエーションをたくさんメニュ ーに入れている。 3 数年前までまったく売れなかった焼酎も、提供しやすい価格と、フレーバーでのアレン ジのしやすさで、よく用いられるようになったことは日本と同じである。 比較的価格が手ごろな焼酎が クローズアップ 今年度は各地の焼酎も紹介している ■既成概念をなくすことから始めよう! 私は今、食品関連の商品開発を多く行っているが、特に海外展開を意識する企業は、 日本の常識にとらわれていると全く受け入れられない状況となってしまう恐れがある。 海外では、今どの国でもブームとなっているのがラーメンであり、この作り方を教える セミナーも各国で多く開かれている。いまでは 『RAMEN』が世界共通語となってきている。 また、マグロの刺身をそのまま食べさせるので はなく、『ポケ poke』と呼ばれるハワイスタイ ルのメニューとして出すところも多く出てきた。 マグロを小さめの角切りにし、ごま油をまぶし、 チリソースやワサビなどで食べる。これはアメ リカで前菜の人気アイテムである。 これまで生魚を食べない層の人たちが、このメ 刺身を新しい食べ方で提案する 旬レポ中国地域 2014 年 11 月号 4 ニューにより食べることができるようになり、そこから日本の刺身へとつながっていく ことは、日本食を世界に広め、日本の食材や酒をさらに多くの人に提供することに結び 付いていくものと確信した。 海外で日本食を一層普及、定着させるための要素は既成概念にとらわれないことが重要 だと思う。 マーケティングコンサルタントとして、中小企業支援及び指導、商業活 性化事業、まちづくり事業等、顧客のニーズを的確に捉えた市場開発とア プローチ手法等、幅広い分野におけるマーケティング全般のアドバイスを 全国各地で手掛ける。また、平成 19 年度より地域資源活用事業の政策審議 委員、国会での参考人をはじめ、全国で地域資源を活用した事業推進、農 商工連携事業、JAPANブランドプロデューサーなど幅広く活躍中。 ● ● ● ● ● ● 経済産業省地域中小企業サポーター 同、伝統的産業工芸品産地プロデューサー 中小企業基盤整備機構経営支援アドバイザー 同、地域ブランドアドバイザー 内閣官房 地域活性化伝道師 広島県総合計画審議会委員 他 経済産業省 中国経済産業局 広報誌 旬レポ中国地域 2014 年 11 月号 Copyright 2014 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry. 5