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Flight Time Integral 法の理論

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Flight Time Integral 法の理論
研究ノート
Flight Time Integral 法の理論
武 田 章 秀
Theory of Flight Time Integral method
Akihide TAKEDA
ABSTRACT
It is important to understand electron and ion flight behavior in gas under an electric field as
the basis for the research of gas discharge phenomena. This paper introduces a method to
calculate the behavior of electrons following their trajectory motion. Some results in Ne gas
obtained by this method will also be explained.
1.まえがき
エネルギー分布や,飛行時間,飛行距離,エネル
ギーゲインというような電子の飛行の始めから終
電界を加えたガス中の電子の振る舞いを詳細に
わりまでを直接表すデータは得られない。一方,
知ることは放電現象の基礎として重要である。例
確率法則にしたがって飛行・衝突を繰り返してい
えば,ある電界下,陰極をある初期エネルギー分
る電子の振る舞いをありのままに確率的な手法で
布で出発した電子群は,陽極に達するまでにエネ
再現して,そのデータをサンプリングする方法が
ルギー分布をどのように変化させていくかとか,
MCS である。一個ずつ追いかけるので時間がか
陽極に到達したときは何倍に電離増倍しているか
かる上結果にばらつきも生じ易いが,時間的,位
といった問題は,平等電界であれば,また電子衝
置的あるいはエネルギー的に分離したあらゆる情
突断面積が正しく与えられていれば,簡単に正確
報を直接サンプリングできるという点で,現在こ
に計算できる。このように,電子が電界の中でど
れに勝る方法は見当らない。
のように運動しどのようなエネルギー分布を形成
ところで,MCS のように電子を1個ずつ追跡
していくかを調べる方法として,モンテカルロシ
するのではなく,同時にあらゆる方向に出発した
ミュレーション(MCS)
とボルツマン方程式解析
電子が,どこまで飛行してどれだけのエネルギー
(BEA)
が一般に用いられている。
を得て衝突するかという確率分布を求めておけば,
ボルツマン方程式を用いた電子の速度分布や輸
それを利用して飛行特性をもっと簡単にばらつき
送係数の解析は最も広く行なわれている。最も基
なしに計算できるのではないかという考え方があ
本的な BEA では,電界下の電子の飛行及びガス
る。この考え方によって開発されたのが Flight
との衝突による速度空間の狭い領域への出入りが
Time Integral
(FTI)
法である[1]
∼[3]
。MCS と
バランスするように速度(エネルギー)分布を決
FTI 法は電子が軌道に沿って実際に飛んでいく
めていく。ここで得られるのは定常(stationary)
様子を確率的手法で再現して解析する軌道解析
状態の速度(エネルギー)分布であって,これか
(trajectory analysis)
であるという共通点を持ち,
らは電子の輸送特性を詳細に決める出発レートの
この点でボルツマン方程式解析とは一線を画する
受理日:平成1
6年9月1
6日
―2
9
3―
武田章秀
ものである。
ができるが,解析はやや困難となる。SST では
電子は同じ初速度で飛行を始めても,個々の電
電界軸方向に定常的に通過していく電子群を横か
子が衝突するまでの時間,衝突した位置,エネル
ら見ていて,観測位置(1次元)が変わるとエネ
ギーは大きく変化する。このように広がった値を
ルギー分布や輸送係数がどのように変化するかと
とることを飛行による位置・エネルギーの分散と
いうような局部的情報を求める。単位距離当たり
呼ぶ。また衝突の種類によっても散乱後のエネル
の電離増倍率,すなわち電離係数はこの観測法に
ギー値は分散する。このような飛行及び衝突にお
おける代表的輸送量である。しかし定常的な流れ
けるエネルギー分散の確率をあらかじめ分散関数
を観測することと,通過していく一群の電子を初
として求めておいて,この分散関数を作用させる
めから終わりまで時間積分的に観測するのとは全
ことにより飛行・衝突の結果を一括して求めよう
く等価であるので,時間積分観測法を用いる方が
というのが FTI 法の考え方である。この意味で
便利である。ただし電子増倍率が大きくなって空
電 子 を 個 々 に 追 い か け る MCS は microscopic
間電荷を生じるようになると,当然ながら計算は
simulation であり,FTI 法は macroscopic simula-
簡単にはできなくなる。
tion であると言えよう。電子輸送特性を求める際
以下では,特に PT 観測と SST 観測に対応し
の FTI 法の特徴は,主未知関数が飛行中の電子
た FTI 法による電子輸送特性の解析について説
$ ではなく,出発レートのエ
エネルギー分布 !&'
明する。
&!'である点にある。飛行及び
ネルギー分布 #($
衝突におけるエネルギー分散特性を記述して定常
3.PT 解析
&!'を決めれば,#($
&!'で出発する
状態での #($
電子の平均的飛行特性や輸送特性を明確に求める
3.1
電子の衝突周波数
電子とガス粒子との衝突周波数は相対速度に比
ことができる。
&'に対
例するが,ガスの熱速度が電子の速度 *$
2.電子輸送特性の観測方法
して極めて低いので相対速度=電子速度と置くこ
と が で き る。そ こ で,電 子 衝 突 全 断 面 積 を
田頭らは1
9
7
7年電子の輸送特性を観測する方法
!"
$(
)
,#)
)
,.
'# &'
$$"*$(
&'
)
,電子の速度を *$
,
を Pulsed Townsend
(PT)
,Time of Flight(TOF)
!" !"
'
$
"#"
!&(
)
,.
( "#)
$"$*#%"
& $%!
,ガ ス 密 度
および Steady State Townsend
(SST)
に分類し,
)
,!$)で 表 す と,電 子 の 衝 突 周 波 数 は %
を "(
ボルツマン方程式解析とモンテカルロシミュレー
$*$
$$"'# &'
(!")と 表 示 さ れ る。し か し 電
&'
&'
(
ションによって求めたデータから,観測法によっ
界中を飛行する電子の速度,エネルギー,衝突周
てまた電離・付着等の有無によって,輸送係数が
&'
&'
&'と
波数等は時間と共に変わるので *)
,$)
,%)
異なる値を持ち得ることを示した2編の論文を発
! で出発
して表記する。)$!に初期エネルギー $
表した[4]
[
,5]
。PT では電子の一群(スォーム)
した電子が,時刻 )まで衝突せずに飛行を続けて
全体を一まとめにして時間のみの関数として取り
/-!#
*)
&
! ! %)
&&
'
"
いる確率(生き残り 確 率)は +
,
扱い,エネルギー分布や輸送関数が時間と共に平
+
/"*)間に衝突する確率は %)
(
!#
&'
時刻 )%)
!%
)
)
衡状態に落ち着いていく様子をしらべる。一般に
*)
*)のように,軌道運動する電子の衝突時
&
&
)
)
&
'
電子の輸送係数といえばこの PT の平衡状態に落
刻に対応して決まるエネルギー・位置分散は,衝
ち着いた値を示す。TOF では進展する電子スォー
&'の飛行時間積分を用いると精度高
突周波数 %)
ムを,時間だけでなく位置的にも分解して時間お
く計算できることが確かめられている。この飛行
よび位置の関数として取り扱う。位置分解してい
時間積分を用いたことが FTI 法という名の由来
るので重心移動速度,拡散係数などを求めること
である。
―2
9
4―
Flight Time Integral 法の理論
図2
図1 Ne の電子衝突断面積
Fig.1 Electron collision cross sections of Ne
3.2
一回の飛行による電子のエネルギー分散関数
$
)
!
$
!'
Fig.
2 Electron energy dispersion functions " &
$$$
!
!
%().
!
!&'
,!" !"
through a flight in Ne (!$$
エネルギー分散関数
図1に示す電子衝突断面積 を 持 つ Ne ガ ス 中
FTI 法においては,電子の飛行・衝突に伴う
!,衝突エ
エネルギーの分散は出発エネルギー $
!
!%
$
)
!
$
!"
$$$
(()での " &
!'を図2に示す。
3.3
ループエネルギー分散関数
)
)
! の3本のエ
ネルギー $
,損失後のエネルギー $
衝突における電子のエネルギー損失 $
+ は,衝
ネルギー軸に記録する。出発する電子のエネル
突の種類に依存するので,衝突の種類別に分散関
! 軸に与え,飛行,衝突,エネ
ギー分布はまず $
数を用意する必要がある。このため種類 k の衝
ルギー損失によるエネルギー分散は,順次各エネ
+$$)+&'
+,+
&'を用いて,
突をする衝突周波数 (+&'
ルギー軸上への分散確率の振込みで実行される。
$
)
!$
!'
衝突 k についてのエネルギー分散関数 " &
! で出発した規格化電子が飛行し
エネルギー $
を求める。
)で衝突する確率,すなわち $
!か
てエネルギー $
%
)へ の 分 散 確 率,を 表 す 関 数 " &
$
)
!$
!'を,
ら$
!
%
+
$
)
!
$
1/(
)
(+
)
"&
+)
+
$" " (% &'
!" (% &
)
'
!'
!
!
(+"0
*
-&!(&!
##+
&!'
'
#
!
*
-&!(&!
(+"0
##+
&!'
'
#
飛行によるエネルギー分散関数と呼んでいる。
%
%
!
!
!+
#
#
.0&!+
,('
$$
"&
'
$&
$
)+
!"',
$
&'
!"!&
!
#'
# !
+
$
)
!
$
1/(
)
(+
)
"+&
+)
+
$" " (+&'
!" (% &
)
'
!'
!
"
$$(% &'
$ で あ る か ら ! "+&
$
)
!
$
!'
な お,! (+&'
$
)
!$
!'に等しくなる。
は "&
$
)
!$
"&
!'を求める際,励起衝突では,衝突に
)
)
!$
! $$
よる損失を考慮したエネルギー $
+ に,
$
)で k 衝突する確率 " &
$
)
!$
!'を振り込む。また,
等方散乱を仮定すると,衝突・散乱後の電子の再
$
)
!$
!'の0倍を振り込み,電離
付着衝突では " &
出 発 は 入 射 方 向 に 関 わ ら ず 等 方 と な る の で,
衝突で散乱電子と放出電子に異なるエネルギーを
$
)
!$
"&
!'には出発速度の電界軸からの偏向角 &
!
"!*
)
$
)
!$
&
&)
'お よ び &
'
! $*$
与 え る 場 合 は,$
*
#0
*
-&!(&! がついている。この重み
方向の重み ""
$
)
!$
!$
!'を振り込むことにな
*'それぞれに " &
の積算値は1である。また!式においてデルタ関
る。これらをすべての衝突 k について実行する
(+は,時刻 +$'における (+間に衝突
&!'
'
数 #+
)
! への分
と,一回の飛行・衝突後のエネルギー $
)'
&'に落として い く
する確率値をエネルギー $
散 特 性,す な わ ち ル ー プ エ ネ ル ギ ー 分 散 関 数
“振込み”操作を表している。
$
$
)
#&
!!
!'が 得 ら れ る。衝 突 損 失 に よ る エ ネ ル
―2
9
5―
武田章秀
図3 ループエネルギー分散関数
Fig. 3 Examples of loop energy dispersion func!and "%
!*
! $%
)'*in Ne at300Td.
tions for %
図4
飛行中の電子エネルギー分散関数
Fig.
4 Electron energy dispersion functions in a
%
"
%
!&)!
%$$!
!(in Ne at !#
flight #)!'
%
,
%
,
(で表すと, きさ”を表しているという意味で,衝突時あるい
!"
ギー分散特性だけを分散関数 ''
%
%
,
%
,
%
,
%
%
,
$'
$''
&# '
(
!"
!(
!"
!"
!(
!
は 飛 行 中 の 電 子 速 度 の Legendre 展 開0次 成 分
%
,
"
%
%"
%
#!'
!(
!(を意味する。その非等方成
,#f0'
のように表示できる。!式で &は重ね積分と呼ん
分,1次,2次,…成分を求めるには,衝突時,
でいる。
,
飛行中の電子速度の電界軸からの偏向角 (
,(に
#*""(
%
,
%
(
-/(
,
#*""(
&*'
(
!"
!(の一例を示す。
,'
図3に,Ne ガス中での $'
おける Legendre 係数 '
3.4
飛行中の分布を与えるエネルギー分散関
(
-/((をそれぞれ分散値に乗じればよい。
&*'
数
*$!にエネルギー %
! で等方に出発した規格化
'(で飛行
電子が衝突せずに *$&にエネルギー %)
%
!
$
である。
!
+
,(!)(!
)*"/
#$*
'!)
(
#
$'
&*'
#f'
#)*'
%
"
%
*""
%
"
%
#
(
-/((
(
!(
!(
子の Legendre 展開成分を厳密に与える分散関数
*
%
"
%
0.)
,
)*
,
*
#f'
$! ! *
!! +( '
*
(
!(
!
#
%
,
"
%
%
,
"
%
!(
!(は軌道運動する電
得られた #*'
,#)*'
を続けている確率を与える分散関数は
'
$'
&*'
#'
%
,
"
%
#*'
%
,
"
%
*""
,
#
(
-/(
(
(
!(
!(
"
%
"
%
*
' /
)
*は飛行中 の 分 布
!(
で与えられる。#f'
!"
を与えるエネルギー分散関数と呼ばれ,その数値
は )%あたり )*を単位とする飛行(滞 在)時 間
%"
%
!(は規格化された分
を表す。したがって #f'
散関数ではない。図4に,図2と同じ条件で の
3.6
輸送関数
軌道運動している電子の輸送特性の直接資料と
なる諸量を求めるには,
' %
*
+( '(
,
,
"+%
**
*
$! ! +
! !+( '
*
0.)
)*
+
,(!)(!%
)*"/
'!(
(
! !
!
#
' %
*
,
,
")+%
*
$! ! +*
! !+( '
*
0.)
)*
)*"/
+
,(!)(!
'!(
(
! !
!
#
&
%"
%
#f'
!(を示した。低エネルギーで出発した電
%
"
%
%
,
"
%
!(
!(
のようにエネルギー分散関数 # '
,#f'
子ほど,ガス空間に長く滞在できることが理解さ
の 被 積 分 関 数 に 輸 送 量 +を 乗 じ,振 込 み 関 数
れる。
$*
'!)
(を除いて積分すると,エネルギー %
! で出
3.5非等方成分の表示
発した規格化電子が衝突した時の輸送量 +の積算
%
,
"
%
!(
,#f
上 記 の エ ネ ル ギ ー 分 散 関 数 #'
%"
%
'
!(は,衝突時および飛行中の分散成分の“大
'!(
値 "+%
,および飛行中の輸送量 +の飛行時間
'!(が得られる。
積分値 ")+%
―2
9
6―
Flight Time Integral 法の理論
$!%はエネルギー $
! から出発した電
例えば $"$
!$,"$
$!%
$!%は
を意味し,$&$
子の全衝突数(!")
$
$
!$,/
($
!%
!%は 電 界(前)
平 均 飛 行 時 間,$($
$!%は衝突時の平均エネルギー,
方向平均変位,$$$
$
$%$
!$,/$
$!%は平均自由行程となる。これら
!%
をまとめて輸送関数と呼ぶ。
3.7
エネルギー分布の決定
FTI 法では,主未知数である出発レートのエ
$!%の他に,衝突レートのエネ
ネルギー分布 #-$
$*
%
ル ギ ー 分 布 #+$
,飛 行 中 の エ ネ ル ギ ー 分 布
$ を取り扱うことになる。これらの関係は
#$%
$!%f$$!
$
#$%
##-$
$!%
!%
!
#+$
$
*
!
$
##-$
!% $
$*
%
$!%
!%
"
$
*
$
*
#-$
!($
##+$
$!%
%
$*
%
!!
#
となる。
(1
0)式と(1
1)式から,
図5 各種エネルギー分布関数
$!%
Fig.5 Normalized starting rate distribution #-$
,
$*
% and
normalized colliding rate distributon #+$
$
energy distribution function in a flight #$%in
Ne
!!&'
'!$
at ""
はすべて計算できる点にある。式(1
3)
,
(1
4)
"
$
*
$
*
$
*
!
$
#-$
!($
##-$
#% $
$!%
%
$!%
!!
!%
$
*
$
*
##-$
!&$
$!% $
!!
!%
! ( $
!
'$
#-$
$0!! $0$
$!%
$!%
!
!
$
"
#-$
'$
$,0!! $,0$
$!%
$!%
!
!
$!%は1回の飛行・衝突の後新しい
となり,#-$
%
&
$!%
$!%に #-$
$!%を
出発レート分布となって帰ってくることがわかる。 の よ う に 輸 送 関 数 $0$
,$,0$
$
$
*
!!
!%
この重ね積分を繰り返し実行,つまり &$
$!%で出発した PT 規格
乗じて積分すると,#-$
を繰り返し作用することにより,PT 条件で十分
化電子が一回飛行したときの平均輸送量 $0
,$,0
に時間経過した後,すなわち平衡状態での定常規
が得られる。例えば $&!$,"は平均飛行時間で
格化出発レート分布が得られる。
"
' であるから,
$,"は平均衝突周波数 &'
あり,$,'
$!%に飛行
得られた規格化定常レート分布 #-$
& が厳密に証明できる。また $/は衝突
' !""
&'
&'
$!
$
!%を一回だけ作
中のエネルギー分散関数 %f$
時の平均速度であり $,/は平均自由行程となる。
$ は '.を単
用させることによって得られる #,$%
これら平均量間の関係から輸送係数が求められる。
$,"!$("
$&は速度空間で定義され
("
位とする飛行中の滞在時間エネルギー分布であり, 例えば $,/
これを $について積分すると,一回の飛行にお
%$&は 横 拡 散 係 数
る 移 動 速 度 */で あ り,$)#"
$ を平均滞在
ける平均滞在時間が得られる。#,$%
!) である[6]
[
,7]
。
時間で規格化すると一般に用いられている規格化
$ が得られる。図5に Ne 中
エネルギー分布 #$%
3
0
0&'における各種エネルギー分布を示す。
3.8
平均輸送量
"!$("
*/!$,/
$,
$&
("
'
%$&
!) !$)#"
(
表1に,輸送量の一例を示す。
FTI 法の利点の一つは,輸送関数を用いて極
めて詳細な輸送データ,例えば任意の方向への1
次変位,2次(2乗)変位,また電離衝突あるい
は付着衝突した電子の電界方向変位など欲しい量
―2
9
7―
武田章秀
表1
PT electron transport coefficient in Ne at300Td.
#)
#,
#,2
*1
#&
%&
(#&
+2,
+
+2,
#
*1
+
&
+,
+-,
+
平均飛行時間
前方向変位
電離電子変位
移動速度
エネルギー利得
エネルギー損失
エネルギー純利得
電離衝突周波数
電離係数
平均エネルギー
全衝突周波数
$
#!$#8
.
1.
3
7
$
#!&/
4. 7.
4
9
$
#!'/
4. 7.
1
6
!$
(
$
#/
48 . 5.
4
7
1
..
2.
2
5
1
..
1.
3
7
1
..
0.
8
7
7
) !$
$
#
8
.
2.
5
5
/
4!$.
4.
6
6
$
#$1
..
2.
1
1
!$
$
#*8
.
7.
3
1
4.SST 解析
,"
一方飛行中の位置・エネルギー分散関数 $-)
&+
,#"
&
#*は
'
&
0
,"
&
"
,#"
&
9700
$f)
0
$$ "
!"
.
*
#*
))
# 1
#+
#
#
$2
)!,.
)0
%&)
0,)*
5(#0(#
0&)
00 8
#%,
!&.
- )*
-)*
)*
%
で与えられ,k 種の衝突を与える分散関数は次の
ようになる。
'
&
0
,"
&
"
,#"
&
$3)
01
970
00
$$ # +3)*
! #+) )
.$
#*
*
#
#
#
$2
)!,%&)
)0
0,)*
5(#0(#
0&)
00 8
#%,
!&
- )*
.
-)*
.
)*
%
4.2
位置・エネルギー分布の決定
#に 規 格 化 初 期 エ ネ ル
位 置 ,#,エ ネ ル ギ ー &
4.1
,#"
&
,&
,#"
)
#)
#*を与え,これに %
#"
#+
ギー分布 $/
位置・エネルギー分散関数
FTI 法による SST 解析では,陰極から放出さ
&
#*を作用させ,,
# / ,
#,&
# / &
# 変換を経て,
れる電子の挙動を連続的に追跡する代りに,時刻
,#"
&
$)
#*
一回の飛行・衝突後の出発レート分布 $/
00に 位 置 ,# か ら 出 発 し た 規 格 化 電 子
0$#
を求める。
&
$/,
)#"
#*についての解析結果を,確率関数で表
,#"
&
,&
,#"
&
,#"
&
$/
$%)
'$/
$)
#*
#"
#+
#*
#)
#*%
示してこれを繰り返し用いる。位置 ,# からエネ
,#"
&
.)
#*が実
この操作を全ガス空間において $/
# で出発した電子が,陰極からの距離 ,
ルギー &
, 効的に0になるまで繰り返す。こうして得られた
-で衝突する確率を表す位置・エネ
エネルギー &
$/
,#"
&
.)
#*をすべての .について加算して,位
,"
&
+
,#"
&
#*は
ルギー分散関数 $ )
/
4!$
&
)#"
#*
置領域全域における出発電子分布 $/,
'
&
0
! #+) )
.
$)
$# #+) )*
01
0
9700
,"
&
"
,#"
&
*
#*
#
#
#
!
1
.!$.を求める。
&
$/,
&
,#"
&
$! $/
.)
)#"
#*
#*
$2
#%,
,,)*
!&
,&)
5(#0(#
00 8
)!,)0
%&)
- )*
.
-)*
.
)*
%
.$$
,!,#*
$
の よ う に 記 述 で き る。こ こ で,!)
&
&
,"
&
+
,#"
&
)#"
#*に $3)
#*を作用さ せ る
この $/,
&
!&
# の関係がある。衝突では位置の情報は変化
,"
&
*
と,k 種衝突の位置・エネルギー分布 $+
3)
&
&
*関数をそのまま用いると,
#"
しないので ()
/
4!$1
.!$.が得られる。$+
,"
&
*をエネルギー
3)
$,*
#)
#
エネルギー損失後位置 ,,エネルギー &
&
-で積分すると設定空間全域にわたる衝突の種
へ分散する確率を与えるループ位置・エネルギー
,/
4!$.が求められる。また
*
類別位置分布 $+
3)
&
,#"
&
,#"
#+
#*は
分散関数 %)
%*"$*
&
,"
&+
,#"
&
/
68(*
$/,
'*)
$f
$)
)#"
#*に $#*
*)
,"
&+
,#"
&
)
#*を一回作用させると,飛行中の位置
&
,#"
&
&
&
,"
&
+,#"
&
,%)
$()
'$ )
*
#"
#+
#*
#"
#* "
・エ ネ ル ギ ー 分 布 の Legendre 展 開 第 *項
,"
&*
8
/
4!$1
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として与えられる。境界面からの等方出射,反射
置 ,0,,エネルギー &0&における電子の飛行(存
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を考慮する場合は,出発速度の偏角 (#$#.%*
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―2
9
8―
Flight Time Integral 法の理論
表2 SST electron transport coefficient at300Td in Ne.
平均エネルギー
全衝突周波数
電離着衝突周波数
移動速度
電子束
電離係数
エネルギー利得
エネルギー損失
エネルギー純利得
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移動速度
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エネルギー流
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図6
Fig.
6 Spatial variation of local energy distribution
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定常位置分解電子エネルギー分布
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SST 解析では位置分解された特性を取り扱う
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電離周波数
定することになる。
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SST 局部諸量の表示式を示す[8]
∼[11]
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電子滞在密度
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エネルギー滞在密度
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エネルギー損失
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エネルギー利得
局部輸送係数の決定
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[無名数]
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$
電子束
#
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図7 各種輸送量の空間分布
Fig.7 Local transport quantities of electrons in Ne
!!(+
%"$
at !#
―2
9
9―
武田章秀
!
!#
#!"
"$#でのこれらの輸送量の値
Ne 中 "!
opment of Electron Avalanches at High E/N values
を表2に,空間分布を図7に示す。
in Ar, Part I Monte-Carlo Simulation, J. Phys. D :
Appl. Phys. 10, 1035-1050(1
9
7
7)
.
[5]H. Tagashira, Y. Sakai and S. Sakamoto :
5.あとがき
The
Development of Electron Avalanches in Ar : II.
Boltzmann Equation Analysis, J. Phys. D : Appl.
上に記したように,FTI 法は飛行確率,衝突
Phys. 10, 1051-1063(1
9
7
7)
.
確立を前提とした trajectory simulation であって, [6]A. Takeda and N. Ikuta : Mobility Analysis of
Electrons in CF4 by FTI Method, J. Phys. Soc. Jpn. 62,
軌道運動に関する明確な意味を持つデータが厳密
に得られるという他の方法にない特徴をもってい
2368-2381(1
9
9
3)
.
[7]A. Takeda and N. Ikuta : Comparison of Electron
る。
Diffusion Coefficient Defined in Velocity and Position
Spaces !%and !$ in CF4,J. Phys. Soc. Jpn. 63, 29862992(1
9
9
4)
.
[8]武田章秀,生田信皓:FTI 法による SST 速度分布,
文献
輸送係数の解析,電学論 113-A, 618-625(1
9
9
3)
.
[9]A. Takeda and N. Ikuta : Analysis of Spatially
[1]N.Ikuta and Y.Murakami : Elementary Theory of
Resolved Electron Energy Distribution and Trans-
Transport Phenomena in Charged Particle System
7
port Properties in CF4, J. Phys. Soc. Jpn. 66, 1672-168
under Electric Field, J. Phys. Soc. Jpn. 56, 115-127
(1987)
.
(1
9
9
7)
.
[1
0]武田章秀,生田信皓:SST 条件における電子のエネ
[2]生田,中島:FTI 法の理論と荷電粒子輸送特性の解
析法,電学論
113-A, 83-90(1
9
9
3)
.
ルギーバランス,電学論 1
2
1‐A,4
2
9−4
3
4
(2
0
0
1)
.
[1
1]A. Takeda and N. Ikuta : Spatially Resolved Electron
[3]N. Ikuta and S. Nakajima : Theory of FTI Method for
the Analysis of Electron and Ion Transport Properties, J. Phys. Soc. Jpn. 64, 1148-1163(1
9
9
5)
.
Swarm
Behavior
(武田
[4]Y. Sakai, H. Tagashira and S. Sakamoto : The Devel-
―3
0
0―
in
Steady
State
Townsend
Condition, J. Phys. Soc. Jpn., 70, 678-688(2
0
0
1)
.
章秀:四国大学
情報システム研究室)
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