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IEICE Technical Report
IEICE 第5回 PN研究会学生ワークショップ IEICE Technical Report 2011年 3月 1日 鹿児島, KKR鹿児島敬天閣 第5回PN研究会学生ワークショップ 【目次】 (1) ソリトン自己周波数シフトと自己位相変調に基づく 多段スペクトル圧縮を用いた全光量子化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 高橋考二・松井秀樹・小西毅・伊東一良(阪大) (2) インターネットトポロジのコラボレーション構造の分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 中田侑・荒川伸一・村田正幸(阪大) (3) 光アナログ-ディジタル変換における2次元積層パルス整形器を用いた光符号化・・・・・ 6 松井秀樹・高橋考二・小西毅・伊東一良(阪大) (4) 遅延線バッファを対象とした光パケット複合化方式の性能向上に向けた検討・・・・・・・・ 8 高野奨太・小津喬・高橋達郎(京大) (5) 多段接続可能な部分共有FDLバッファの性能評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 花田光平・高野奨太・高橋達郎(京大) (6) 複数ファイバによりリンクが構成されるネットワークにおける トラフィック分布予測情報を用いた適応的光パス制御法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 大野寛明・長谷川浩・佐藤健一(名大) (7) 平滑化とGeneralized gravityによる交流トラフィック行列の推定法・・・・・・・・・・・・・・・17 白紅霞・長谷川浩・佐藤健一(名大) (8) 光キャリア再生可能なネットワークにおける最適波長割当方式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 花里将史・大木英司・松浦基晴(電通大) (9) 1Gbps/10Gbps切替可能PONにおけるONU独立リンク速度切替による低消費電力化・・・・・・21 高橋佑輔(電通大) (10) PLZT光スイッチを用いた光マルチキャスト配信システムの実装・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 佐藤丈博・島田悠司・原侑太郎・レンステトヨハン・ 芦沢國正・徳橋和将・石井大介・岡本聡・山中直明(慶大) (11) GMPLSを用いた自律制御型省エネルギーネットワークMiDORiシステムの実装・・・・・・・・・27 野村勇輝・丸川純平・米津遥・竹下秀俊(慶大)・ 追川裕治(慶大/OA研)・石井大介・岡本聡・山中直明(慶大) 【趣旨・方針】 これから研究を深めていく学生の方々に研究の面白さ,学会参加の意義と楽しさを味わっ てもらい,同時に他の研究者とじっくりと議論をする機会を設ける.また運営,企画につい ても学生が主佒的に行い,若手研究者の育成を主な目的とする. 発表内容についてはその進捗状況を問わず,また質疑応答についても適宜教員の助けを借 りながら学生の力量の範囲内で議論を行うこととし,まだ学会発表に至らない段階にある学 生にも議論に参加していく入口を設ける機会として,本ワークショップを開催する. 【テーマ】フォトニックネットワーク関連技術,一般 【日時】2011年 3月 1日(火) (フォトニックネットワーク研究会と併催) 【場所】鹿児島, KKR鹿児島敬天閣 【発表形式】ショートプレゼン&ポスター発表 第5回PN研究会学生ワークショップ 2011年 3月 1日 社団法人 電子情報通信学会 ソリトン自己周波数シフトと自己位相変調に基づく 多段スペクトル圧縮を用いた全光量子化 All-Optical Quantization Employing Soliton Self Frequency Shift and Self-Phase-Modulation-Based Multistage Spectral Compression 高橋考二 Koji Takahashi 松井秀樹 Hideki Matsui 小西毅 Tsuyoshi Konishi 伊東一良 Kazuyoshi Itoh 大阪大学大学院工学研究科 Graduate School of Engineering, Osaka University 1 はじめに 近年のネットワークの高速化やディジタル信号処理技 術の発展に伴い,その中で使われる A/D 変換の高速化, 高分解能化が求められ,光の高速性,低いジッタ特性を 生かした全光 A/D 変換が注目されている.現在 5 bit(32 level)の全光量子化が報告されている[1].我々は,ファイ バー内のソリトン自己周波数シフト(soliton self-frequency shift: SSFS)による全光量子化を用いた全光 A/D 変換を提案 しており[2],この方法による量子化分解能は波長シフト 量と波長シフト信号のスペクトル幅によって決定される. また,この方法は波長分波によって信号を分離するため, 分解能の増加に対して柔軟に対応可能であるパルス整形 器を用いた符号器との接続性が良い.そのため,量子化 における高分解能化は符号化においてもその性能を保持 することが可能である.我々は自己位相変調(self phase modulation: SPM) に 基 づ く ス ペ ク ト ル 圧 縮 (SPM-based spectral compression: SSC)を用いることで分解能を向上させ ることができ,今までに 4 bit(16 level)の全光 A/D 変換の 実証実験を行ってきた[3].100 Gbps でサンプルリングし た場合の 1 信号のタイムスロットは 10 ps であるが,SSC によって広がるパルス時間幅にはまだ余裕があり,さら なるスペクトル圧縮により格段の分解能向上が期待でき る.本稿では,スペクトル圧縮を多段で実行することに より,圧縮率を向上させ,分解能の向上を行ったので報 告する. 2 SSFS と SSC を用いた高分解能全光量子化 図 1 にファイバー内の SSFS と SSC を用いた高分解能全 光量子化の概念図を示す.サンプリング後の入力アナロ グ信号がファイバー内を伝播すると,SSFS によって入力 強度に応じて中心波長がシフトする.波長シフトした信 号を分散素子により波長ごとに分波することで,入力信 号は強度ごとに異なるポートへ出力され,光量子化を実 現できる.この際に,波長シフト信号のスペクトル幅を 狭くすることで,波長ごとに分波するときの波長分解能 が向上し,入力アナログ信号のピークパワーの量子化分 解能も向上させることができる. SSC はファイバー内の異常分散によってパルスにダウン チャープを与え,次に別のファイバー内で SPM を誘起し, チャープ補償することで実現される.我々はこれまでに 消費電力を意識して,分散シフトファイバー(dispersionshifted fiber: DSF)と比較的低強度でも SPM の誘起される高 非線形ファイバー(highly nonlinear fiber: HNLF)を一本ずつ 用いてスペクトル半値全幅が 8 nm から 4 nm までに圧縮す ることに成功している[3].圧縮率を高くする試みとして 比較的高強度なパルスを用いて,2 種のファイバーを複数 対つなぎ,多段にスペクトル圧縮を誘起することでスペ クトル半値全幅が 13 nm から 0.7 nm までに圧縮された報 告がある[4].そこで今回,シングルモードファイバー (single mode fiber: SMF)と HNLF を 4 本ずつ用いることで 低消費電力かつスペクトル圧縮を多段で誘起させ,圧縮 率を高めた. 3 実験結果 SSC を起こす 4 本の SMF と HNLF の長さと順番は 2mSMF,92m-HNLF,10m-SMF,110.5m-HNLF,30m-SMF, 400m-HNLF,100m-SMF,116m-HNLF とした. 図 2 に入力信号のピークパワーと波長シフト後の中心波 長の関係を示す.これより,入力ピークパワーに比例し て中心波長がシフトしたことがわかる.図 3(a)に波長シフ トしたスペクトル圧縮前のスペクトル波形を,図 3(b)にス ペクトル圧縮後のスペクトル波形を示す.中心波長に関 わらずスペクトル半値全幅は約 8 nm から約 1.3 nm までに 圧縮され,圧縮率は約 6 であった.図 3(a)より,圧縮前で は中心波長 1582 nm から 1626 nm で 5 段階にしかスペクト ルを分離できていないが,圧縮後は 32 段階に分離でき, よりスペクトル利用効率の高い全光量子化を実現した. また用いるファイバーの本数を増やすことにより,スペ クトル圧縮率を高め,さらなる分解能向上が期待できる. 図2 -1- 入力ピークパワーとシフト後の中心波長の関係 Intensity [a.u.] Intensity [a.u.] 1570 1580 1590 1600 1610 1620 1630 1640 Wavelength [nm] (a) 図3 1570 1580 1590 1600 1610 1620 1630 1640 Wavelength [nm] (b) (a)スペクトル圧縮前のスペクトル波形 (b)スペクトル圧縮後のスペクトル波形 参考文献 [1]Y. Miyoshi, JOUNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL. 28, NO. 4 (2010) [2]T. Konishi, J. Opt. Soc. Am. B, vol. 19, no. 12 (2002) [3]T. Nishitani, IEEE JOURNAL OF SELECTED IN QUANTUM ELECTRONICS, VOL. 14, NO. 3 (2008). [4]N. Nishizawa, OPTICS EXPRESS, VOL. 18, NO. 11 (2010). -2- 第5回PN研究会学生ワークショップ 2011年 3月 1日 社団法人 電子情報通信学会 インターネットトポロジのコラボレーション構造の分析 中田 侑† 荒川 伸一† 村田 正幸† † 大阪大学 大学院情報科学研究科 〒 565–0871 大阪府吹田市山田丘 1–5 E-mail: †{y-nakata,arakawa,murata}@ist.osaka-u.ac.jp あらまし 光通信ネットワークを対象として、プロテクションやリストレーションなどの信頼性を確保する手法が広 く検討されているが、耐故障性の高い物理トポロジを構築することによりさらに相乗効果をもたらすと考えられる。 今までにもルータレベルトポロジの構造と耐故障性に関する議論が行われているが、ISP トポロジの現状分析がなさ れているのみであり、耐故障性に優れた物理トポロジ設計手法を検討することが重要であると考えられる。そこで本 稿では、省エネルギーでありながらも環境変動に対応し進化してきた生物の転写因子ネットワークに着目し、転写因 子ネットワークが有するコラボレーション構造とインターネットトポロジのコラボレーション構造および耐故障性を 比較評価した。評価結果、インターネットトポロジの耐故障性は、大腸菌の転写因子ネットワークの耐故障性の傾向 と類似していることが明らかとなった。 キーワード べき則、耐故障性、転写因子ネットワーク、ルータレベルトポロジ、コラボレーション Analysis of the collaboration structure in the Internet topology Yu NAKATA† , Shin’ichi ARAKAWA† , and Masayuki MURATA† † Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University 1–5 Yamadaoka, Suita, Osaka 565–0871, Japan E-mail: †{y-nakata,arakawa,murata}@ist.osaka-u.ac.jp Abstract Numerous studies showed that the performance of diverse networks, such as the Internet and metabolic networks is strongly depended on the structure of their topologies. However, the relationship between structure in the topology of the Internet and its performance is not clear because the Internet was constructed based on physical and economic restrictions. The present study puts its focus on a structure called collaboration existing in transcriptional regulatory networks that is discussed in the field of molecular biology. In this paper, we discuss a correlation between collaboration and robustness of the network. Simulation results indicate that the degree of collaboration in ISP topology is similar in one in a transcriptional regulatory network of E. Coli networks. Key words power-law network, robustness, transcriptional regulatory network, router-level topology, collaboration ション技術の導入には耐故障性に対して相乗効果があると考え 1. は じ め に られる。 インターネットが社会インフラ化し大規模化するとともに、 近年、インターネットのルータレベルトポロジの次数分布が、 ルータなどのネットワーク機器の故障に対する信頼性やトラ べき則に従うことが明らかになっている。すなわち、k 本のリ ヒック変動に対する適応性を確保することが重要になりつつあ ンクを有する次数 k のノードの出現確率 P (k) が k −γ (γ は定 る。光通信ネットワークにおいては、プロテクションやリスト 数) で近似される。ルータレベルトポロジは原則として事業者 レーションなどの信頼性を確保する手法が広く検討されてき (ISP) が構築するトポロジであり、例えばコスト最小化、信頼 た [1, 2]。しかし、多くの研究では、物理トポロジは与えられ 性の向上、ISP 独自の最適化ポリシーによって設計される。ま るとした上で、様々な手法が考えられてきた。高い信頼性を有 た、トポロジを設計する際には、ルータの処理能力やリンク回 するインターネットを構築するためには、物理的トポロジレベ 線容量にも制約があり、この制約のもと上述の指標の最適化が ルでの信頼性を確保することが重要である。物理トポロジにお 行われる。文献 [3] では、同じ次数分布を有するいくつかのトポ ける大局的な障害への耐性の確保と、単一ルータ故障/単一リ ロジを列挙し、ノードが処理可能なトラヒック量の制約下でそ ンク故障などの局所的な障害に対する高速復旧可能なプロテク れぞれのトポロジに収容可能なトラヒック量を評価している。 -3- —1— その結果、ルータレベルトポロジは、ルータにおける処理能力 分類する。リンクを転写因子ネットワークの制御と対比させ、 の制約下で収容可能なトラヒック量を最大化することでモデル 入線のみ持つノードを階層 bottom、それ以外のノードを階層 化されることが示されている。文献 [4] では、ルータレベルト middle に分類する。階層 top のノードに向かう有向辺リンク ポロジの耐故障性の評価がなされている。しかし、そこでは計 は向きを逆にし、階層 top のノードは出線のみを持つようにす 測された ISP トポロジの分析にとどまっている。耐故障性に優 る。また、階層 top のノード間は双方向リンクにする。 れたインターネットトポロジを構築するために必要なトポロジ 構造を明らかにすることが重要である。 3. コラボレーション値の測定 生物の細胞内に存在する転写因子ネットワークでは、複数の この階層構造をもとに、どの階層がより多くのコラボレー 転写因子が一つの転写因子や遺伝子を制御するコラボレーショ ション構造を持つかを調べる。ノード数やリンク数の多いトポ ン構造を有することが知られている。転写因子ネットワークは ロジほどコラボレーション構造の数は多くなる可能性がある。 転写因子と呼ばれるたんぱく質で構成され、外界からの刺激に そこでノード数やリンク数に依存せずコラボレーション構造の 応じた遺伝子の制御信号を伝達するためのネットワークである。 量を計る指標が必要である。そこで文献 [5] ではその指標とし 転写因子ネットワークは進化の過程で、省エネルギーでありな L と階層間のコラボレー て各階層のコラボレーション値 Dcollab がらロバスト性や負荷分散性を高めることに成功してきた。よ L1,L2 ション値 Dbetw−collab を定義している。各階層のコラボレー り高等な生物種ほどコラボレーション構造が多く含まれている L ション値 Dcollab は、階層 L に含まれるノードがネットワーク ことが明らかにされており [5]、省エネルギーかつロバスト性を 内の他のノードと共に制御している割合を表しており、以下の 高めた生物種や、より複雑なゲノムを制御する生物種が存在す インターネットトポロジと類似点が存在する。そこで本稿では 式 (1)(2) で定義されている。 ∑ i A∈G Gi ∩ GA Dcollab = Gi 転写因子ネットワークのコラボレーション構造に着目したイン L i Dcollab = ⟨Dcollab ⟩i ∀i ∈ L る。転写因子ネットワークも次数分布がべき則に従っており、 ターネットのトポロジ構造を議論し、インターネットのトポロ ジ構造がどの生物種と似ているのか、そして生物種の違いに合 わせてインターネットの物理トポロジをどのように変化させる (1) (2) G は全ノード集合、Gi はノード i が制御するノード集合、 ⟨ ⟩ L1,L2 は相加平均を表す。階層間のコラボレーション値 Dbetw−collab は階層 L1 に含まれるノードと階層 L2 に含まれるノードによっ べきかを検討する。 て共に制御されるノードの割合を表しており、以下の式 (3) で 2. コラボレーション構造 定義している。 コラボレーション構造とは、二つの転写因子が一つの転写因 子を制御するトポロジ構造である。転写因子ネットワークに ∑ L1,L2 Dbetw−collab = ∑ A∈L1 GA ∩GB B∈L2 GA ∪GB |L1| · |L2| (3) は、トポロジにおける位置によってノードの持つ役割が異な |L1| は階層 L1 に含まれるノードの数を表している。しかし式 る。よってコラボレーション構造の数はノードの位置と合わせ (3) の定義では、コラボレーション構造の数が等しくても同じ て考察する必要がある。文献 [5] ではトポロジを階層 top、階 ノードペアによるコラボレーションの数によって値が異なる。 層 middle、階層 bottom の 3 層に階層化し、ノードの位置を そのためコラボレーション構造の数のみに依存する定義として 特定する。転写因子をノード、制御を有向辺リンクとした場 式 (4) を導入し用いることにする。 合、出線のみ持つノードを階層 top、入線のみ持つノードを階 層 bottom、それ以外のノードを階層 middle に分類する。階層 L1,L2 Dbetw−collab = GL1 ∩ GL2 GL1 ∪ GL2 (4) top は外界からの刺激を受けて他の転写因子を制御する。階層 AT&T 社と Sprint 社のルータレベルトポロジと生物の転写 middle は他の転写因子からの制御を中継する。階層 bottom は 因子ネットワークを階層化し、各階層のコラボレーション値と 特定の遺伝子の発現を制御する役割を担っている。 階層間のコラボレーション階層間のコラボレーション値を算 インターネットのルータレベルトポロジもコアノードやエッ 出した (図 1、図 2)。検証を行った転写因子ネットワークの生 ジノードなど、トポロジにおけるノードの位置はノードの持つ 物種は、大腸菌 (Ec)、ヒト (Hs)、マウス (Mm)、ラット (Rr)、 役割と関係している。そこでコアノードからエッジノードに向 イースト菌 (Sc) の 5 種類である。階層 bottom は他のノード けてトラヒックが流れる過程を転写因子ネットワークと対比 を制御しないので、コラボ レーション値の算出が可能な階層は させて階層化を行う。始めにインターネットのルータレベルト 階層 top と階層 middle となる。 ポロジではリンクが無向辺であるため、各ノードにおいて他の ノードまでの平均ホップ数をノードごとに計算し、リンクを平 4. 比 較 検 証 均ホップ数が小さいノードから大きいノードへの有向辺とす 耐故障性の高いネットワークのコラボレーションを検討する る。インターネットトポロジのコラボレーション構造は、一つ ために、各ネットワークの耐故障性を算出した (図 3)。ネット のノードペアが他の一つのノードに向かう有向辺リンクを持つ ワーク内の最も大きな強連結成分から最も次数の高いノードを ことを指す。次にトポロジをモジュールに分割し [6]、モジュー 故障させ、それにより入線数が 0 となったノードを連続して取 ル間のリンクを持つノードをコアノードと見なして階層 top に り除く。故障数 0 の時の最も大きな強連結成分に含まれるノー -4- —2— 1 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 Ec Hs Mm Rr Sc AT&T Sprint limit 0.98 0.96 0.94 Middle Cover ratio Top 0.92 0.9 0.88 0.86 0.84 図1 0.82 各階層のコラボレーション値 0.8 0 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 図3 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 Failure ratio 0.12 0.14 次数の多いノードから故障させた場合の耐故障性 T-T T-M M-M 謝 辞 本研究の一部は、文部科学省科学研究費補助金若手研究 (B)22300023 によっている。ここに記して謝意を表す。 文 図2 階層間のコラボレーション値 ド数を N とし、故障させたノード数を i とおく。i 個のノード を故障させた時に取り除かれたノードの数を Ri とすると、図 3 の Failure ratio は i N であり、Cover ratio は N −Ri N としてい る。limit は Failure ratio に対する Cover ratio の最大値を表 している。 図 3 によると、インターネットトポロジは大腸菌よりも耐故 障性に優れているがその他の生物種よりも劣っていることが分 かる。また図 2 を見るとインターネットトポロジの階層間のコ ラボレーション値は転写因子ネットワークと異なり同じ階層に よるコラボレーション構造は多く含まれるが、階層 top と階層 middle によるコラボレーション構造は少ない。耐故障性の高 いヒトとマウスの共通点として、図 1 で階層 top と階層 middle の各階層のコラボレーション値の差が少ないことがあげられ 献 [1] R. Munoz, R. Casellas, R. Martinez, M. Tornatore, and A. Pattavina, “An experimental study on the effects of outdated control information in GMPLS-controlled WSON for shared path protection,” in Proceedings of ONDM, Feb. 2011. [2] J. Pesic, E. L. Rouzic, N. Brochier, and L. Dupont, “Proactive restoration of optical links based on the classification of events,” in Proceedings of ONDM, Feb. 2011. [3] W. W. Lun Li, David Alderson and J. Doyle, “A firstprinciples approach to understanding the internet’s routerlevel topology,” SIGCOMM Comput. Commun. Rev., vol. 34, pp. 3–14, Aug. 2004. [4] S. Arakawa, T. Takine, and M. Murata, “A failure-tolerant structure in router-level Internet topologies,” Technical Report of IEICE (NS2010-39), vol. 110, pp. 7–12, July 2010. [5] N. Bhardwaj, K.-K. Yan, and M. B. Gerstein, “Analysis of diverse regulatory networks in a hierarchical context shows consistent tendencies for collaboration in the middle levels,” PNAS, vol. 107, pp. 6841–6846, Mar. 2010. [6] M. E. J. Newman, “Modularity and community structure in networks,” PNAS, vol. 103, pp. 8577–8582, June 2006. る。今後インターネットトポロジを設計する際に、耐故障性の 高いヒトやマウスのコラボレーション構造を取り入れることに より、信頼性の高いネットワークを構築することができると期 待される。 5. お わ り に 本稿では、AT&T のルータレベルトポロジと転写因子ネッ トワーク のコラボレーション構造の割合と耐故障性の算出を 行って比較することで、インターネットトポロジは大腸菌の転 写因子ネットワークよりは耐故障性が高いがその他の生物種の 転写因子ネットワークよりは低いことがわかった。また階層間 のコラボレーション値が転写因子ネットワークと大きく異なる ことも明らかとなった。今後は耐故障性に優れた生物種のコラ ボレーション構造を基に、耐故障性に優れたトポロジの設計手 法を検討する予定である。 -5- —3— 第5回PN研究会学生ワークショップ 2011年 3月 1日 社団法人 電子情報通信学会 光アナログ-ディジタル変換における 2 次元積層パルス整形器を用いた光符号化 Optical coding by use of 2-dimensional stacked pulse shapers for photonic analog-to-digital converter 松井秀樹 Hideki Matsui 高橋考二 Koji Takahashi 小西毅 Tsuyoshi Konishi 伊東一良 Kazuyoshi Itoh 大阪大学大学院工学研究科 Graduate School of Engineering, Osaka University そのため,符号化フィルタを置き換えることで,整形パ ターンを変更し,量子化レベル数の増加に容易に対応す ることができる.図 2 に 3,4,5,6 ビットの場合に用い る符号化フィルタを示す.また,さまざまな信号体系に ついても同様に柔軟な対応が可能である. 1.はじめに 近年,ネットワーク技術や信号処理の発展に伴い,そ れらの中で用いられる A/D 変換の高速化,広帯域化が要 求されており,従来の電気処理における制限を取り除く 方法として,光信号を用いた光 A/D 変換が注目されてい る.我々は,これまでに,強度-波長変換を用いた光量 子化と,光インターコネクションを用いた光符号化によ る光 A/D 変換を提案し,4 ビットの実証実験を報告してき た[1, 2].強度-波長変換による光量子化を用いた光 A/D 変換のさらなる高分解能化を図るためには,急激に増加 するレベル識別信号に対応可能な光符号化方法が必要と なる.本稿では,高分解能化に伴うレベル識別信号数の 増加に対して,柔軟に対応可能である符号化を実現する ために,自由空間光インターコネクションを用いる.こ れは 2 次元積層型パルス整形器と等価であり,ビット数増 加に対する高い拡張性を持つ.実験では,32 レベルの量 子化信号に対応した Gray 符号に基づくディジタル信号出 力の原理確認実験を行った. (a) (b) (c) (d) 図 2 (a) 3 ビット (b) 4 ビット(c) 5 ビット(d) 6 ビット符号 化フィルタ (a) (b) 図 3 (a) 32 レベル Gray 符号変換表 (b) 原理実験に用いた 空間マスク 2 .原理 図 1 に本光符号器を用いた光 A/D 変換の概念図を示す. 光符号化は強度-波長変換による光量子化が行われた M レベルの信号に対して,波長-バイナリ符号変換によっ て,予め用意された N=2M を満たす N ビットの信号体系に 基づく 2 値信号を出力する.光量子化によって,入力強度 に対応して中心波長がシフトした信号は,波長分波素子 によりレベル識別信号として,それぞれ異なる波長に対 応した別のポートに出力される.その後,レベル識別信 号は,符号器の符号化フィルタに入力され,波長-バイ ナリ符号変換処理が行われる.符号化フィルタは波長- バイナリ符号変換の際の信号接続の制御パターンとして 機能し,ビットごとに分割したディジタル信号の出力を 可能とする光インターコネクションを実現する.この一 連の処理は積層型パルス整形器の処理と等価である. 図1 提案する光 A/D 変換の概念図 -6- 3.Gray 符号に基づく光符号化の原理確認実験 本符号器の有用性を確認するために,実際に中心波長 の異なるパルス信号(波長 1582 nm~1626 nm)を 5 ビッ ト 32 レベルの光量子化信 号として用い,本光符号 器によるディジタル信号 出力の原理確認実験を行 った.図 3 (a) の Gray 符 号変換表に基づき,信号 の中心波長に対応させた 符号化フィルタを作成し た(図 3 (b)).波長-バ イナリ符号変換後の各ポ ートの出力の様子を InGaAs カメラにより観察 し,それぞれのビットに おいて得た伝達関数を図 4 に示す.実験結果より, 光量子化信号のレベルに 応じたディジタル信号が 得られていることがわか 図 4 取得した伝達関数 る. 4.まとめ 本稿では,2 次元積層型光パルス整形器を用いた光符号 器による Gray 符号に基づく光符号化の実験を行うことで, 強度-波長変換による光量子化を用いた光 A/D 変換への 有用性を示した.また,本符号器は符号化フィルタを交 換することで,高分解能化に伴う量子化レベル数増加だ けではなく,様々な信号体系に柔軟に対応可能である. 参考文献 [1]T. Konishi, et al., J. Opt. Soc. Am. B 19, 2817 (2002). [2]T. Nishitani, et al., IEEE JOURNAL OF SELECTED TOPICS, Vol.14, No.3, (2008) -7- 第5回PN研究会学生ワークショップ 2011年 3月 1日 社団法人 電子情報通信学会 第 5 回学生ワークショップ 社団法人 電子情報通信学会 2011 年 3 月 1 日 遅延線バッファを対象とした 光パケット複合化方式の性能向上に向けた検討 高野 奨太† 小津 喬† 高橋 達郎† † 京都大学大学院 情報学研究科 〒 606-8501 京都市左京区吉田本町 E-mail: †{takano,ozu}@cube.kuee.kyoto-u.ac.jp, [email protected] あらまし 多波長一括型多重化方式を用いた光パケットネットワークにおいて,ガードタイムやオーバーヘッドによ る伝送効率の低下を避けるために,パケット複合化が有効である.一方,FIFO バッファを用いたパケット複合化方 式は特定条件での性能低下を招く.本稿では,パケット複合化方式の性能低下を抑制する手法について評価する. キーワード ファイバ遅延線,光パケットネットワーク,TCP,パケット複合化 A Study of Modified Method for Composite Optical-Packets with Fiber Delay Line Buffer Shota TAKANO† , Takashi OZU† , and Tatsuro TAKAHASHI† † Graduate School of Informatics, Kyoto University, Yoshidahonmachi, Sakyou-ku, Kyoto-shi, 606-8501 Japan E-mail: †{takano,ozu}@cube.kuee.kyoto-u.ac.jp, [email protected] Abstract Composite Packet in multi-wavelength-multiplexing optical packet networks is studied to improve network efficiency by reducing guard time and header overhead. At the same time, a composite packet system with fifo buffers decrease throughput under particular situations. To suppress this defect, this paper proposes modified methods of composite packet system. Improved performances are shown through computer simulations. Key words Fiber Delay Line, Optical Packet Network, TCP, Packet Combining パケット複合化が効果的となる.また,FDL を用いた衝突回避 1. ま え が き において選択可能な遅延時間が有限かつ離散的であるため,複 近年の通信サービスの多様化,ブロードバンドサービスの普 合化による光パケット数の削減は衝突回避に効果的であること 及に伴い,バックボーンネットワークに要求される通信容量は が示されている [3].一方,FDL バッファの廃棄特性はパケッ 急速に増加している.一方,WDM 技術により情報伝送速度 トサイズ毎に異なるため,パケット複合化によりパケットサイ は飛躍的に向上したが,中継ノードでの電気処理がボトルネッ ズ毎の廃棄率の平均化や長パケットの廃棄率の改善が期待でき クとなり,通信容量は制限される.そこで,大容量通信を実 る.著者らは,[4] において,FIFO 型の複合化バッファを用い 現するため,光領域ですべての処理を行うフォトニックネット たパケット複合化方式の有効性を示したが,一方で特定条件下 ワークが注目されている.フォトニックネットワーキング技術 におけるスループットの低下が見られた.本稿では,パケット として,異なる遅延時間を持つファイバ遅延線に光パケットを 複合化方式におけるスループット低下を抑制する方式について 入力することでパケットの衝突を回避する FDL(Fiber Delay 検討し,評価する. Line)バッファを用いた衝突回避方式 [1] や,利用可能な全て の波長を用いて個々の光パケットを構成,伝送する多波長一括 2. 研 究 背 景 型パケット多重化方式の研究が行われている [2].多波長一括型 2. 1 FDL バッファ パケット多重化方式では波長当たりの伝送速度や多重波長数の 電気領域におけるパケットの衝突回避には,遅延時間を任意 増大に伴いパケット伝送時間が短くなり,パケットスイッチン に設定できる RAM が用いられる.一方,光 RAM について グ時間などのためのガードタイムが相対的に大きくなるため, は研究がされているものの現状では実用化には至っていないた -8- 図1 多波長一括多重化方式におけるパケット構成 図 2 複合化ノードの概略図 め,電気領域とは異なる手法を用いて衝突回避を行う必要があ る.本稿は遅延時間を等差級数的に変化させるシングルステー ジ-フィードフォワード型 FDL バッファを用いたパケットの衝 突回避を対象とする.FDL バッファをパケットの衝突回避に用 いた場合,バッファ容量が小さく遅延線の本数が有限であるた め,バースト的にパケットが到着する場合にパケット廃棄が発 生しやすい.また,選択可能な遅延時間が離散的であるため, パケット間に無効な時間間隔が生じ,パケット伝送効率が低下 するとともに,パケット長による廃棄率の差が大きくなる [5]. 2. 2 多波長一括型パケット多重化方式 多波長一括型多重化方式とは,利用可能な全波長を用いて 個々のパケットを伝送する方式であり,単一波長で個々のパケッ トを伝送する WDM 方式と比較して,光電気変換を削減し,衝 突回避も出力ポート分でよいため,スイッチ規模やバッファ数 を縮小することが可能である.図 1 に多波長一括型多重化方式 のパケット構成を示す.多波長一括型多重化方式においては, 固定長である光ルーティングヘッダと可変長のペイロードの伝 送時間差からオーバーヘッドが生じ,伝送効率が低下する.ま た同時に,波長数に比例して個々のパケット伝送時間が短くな るため,パケットの伝送時間に対するガードタイムによる伝送 効率の低下が見られる. トを出力する.パケットサイズ合計値が H を越える場合,パ ケットは待機領域へ入力され,複合化キューが空になった時点 で複合化キューへ入力される.また,パケット複合化による遅 延の影響を抑えるため,複合化開始からタイムアウト時間 To が経過した時点でパケットの出力を行う. 3. 2 シミュレーション条件 本稿ではシミュレーション作成時間の短縮および基本的な ネットワーク動作での誤作動を防ぐため,既存のネットワーク シミュレータ ns-2(ns-2.34) [8] に変更を加え評価を行った.回 線速度は計算機性能の制約から電気領域を 100 Mbps,光領域 を波長あたり 100 Mbps の信号を 100 波長多重した 10 Gbps とし,ヘッダ長 10 bytes [9] である多波長一括型多重化方式で パケットを伝送する.また,各ノード間のリンク遅延は 5 ms, RTT は平均 50 ms とし,コアノードではファイバ遅延線本数 16 本の等差数列型 FDL バッファにより衝突回避を行う.パケッ トサイズ分布は図??に示すように 50 bytes から 1500 bytes ま で 50 bytes 毎の等間隔に 30 通りの代表パケットサイズとして 簡略化したものを使用した.図 3 のネットワークトポロジにお いてパケットサイズ上限値 H を 2000 bytes から 15000 bytes まで 500 bytes 刻みで変化させ,パケットサイズ上限値 H と下 3. パケット複合化方式の評価 限値 L の差をパケットサイズ許容幅 W として W を 100 bytes, 500 bytes,1000 bytes として測定を行った.タイムアウト値 3. 1 パケット複合化の概要 本稿における提案方式であるパケット複合化方式について述 べる.多波長一括型多重化方式においてオーバヘッド,ガード タイムは伝送効率を低下させ,また FDL バッファを衝突回避 に用いた場合,バースト的なパケット到着はパケット廃棄を引 き起こし,またパケットサイズにより廃棄特性がばらつくため, ネットワーク性能が低下する.そこで,本稿ではエッジノード におけるパケット複合化方式を提案する.エッジノードへ入 力される複数のパケットをバッファリングし,単一の複合化パ ケットとして出力することにより,オーバーヘッド,ガードタ イムを削減しデータ伝送効率を高めることが出来る.さらに, パケット数の削減によるバースト性の緩和,複合化パケット長 の平均化による廃棄率のばらつきの軽減が期待される.本稿で は複合化を行うエッジノードを複合化ノードと呼称し,図 2 に 複合化ノードの概略図を示す.複合化を行うためのバッファリ ング領域として,高速動作に適した FIFO 型のバッファである 複合化キューおよび待機領域を設ける.到着したパケットは複 合化キューへ入力され,複合化キュー内のパケットサイズの合 計値が下限値 L 以上上限値 H 以下となる場合,複合化パケッ -9- To は RTT である 50 ms よりも十分小さくスループットに対す る制限の小さな値として 1 ms,FDL バッファの遅延時間公差 は,パケットサイズ上限値 H にガードタイムを加えた値,ガー ドタイムは 1 Tbps の回線においてガートタイム 2 ns [6] の半 導体スイッチを用いた場合に相当する 200 ns,ヘッダ割当て波 長数は 1 波長,複合化パケットの復元に用いる複合化ヘッダサ イズ充分小さいと考えられるため無視した.以上の条件で測定 を 5 回行い,平均値を測定値とした.また,比較対象として, 全ての TCP フローがパケットサイズ上限値 H のパケットを発 生させる理想的な単一パケット長条件,およびパケット複合化 を行わない場合の測定をそれぞれ行った.パケット複合化を行 わない場合のヘッダ割当て波長数は最大スループットが得られ る 5 波長とした. 3. 3 パケット複合化による効果 図 4 に,パケット複合化を行わない場合,パケット複合化を 行う場合,および全ての TCP がパケットサイズ上限値 H の パケットを発生する理想的な場合におけるスループットの変化 を示す.複合化によりスループットは平均約 19% 向上したが. 同一フローのパケットが含まれる確率が高くなる.同一送信ウィ ンドウ内の複数パケットの同時廃棄は TCP Reno の再送タイム アウトを引き起こし,スループットを低下させる.従って,長 パケット領域おいては複数パケットの同時廃棄がスループット を抑制する.ここで,パケットサイズ上限値 H > = 10000bytes の長パケット領域において,スループットに対して支配的であ る長パケットの平均ウィンドウサイズがおよそ 45 パケット分 図 3 ネットワークトポロジ であることから,単一パケットの廃棄と比較すると,複数パ ケットの同時廃棄により再送タイムアウト時間とウィンドウサ イズが回復するまでの約 4RTT の間パケットの伝送が停止す ると考え,複数パケット同時廃棄によるスループットの低下量 を概算する.パケットサイズが小さい範囲では複数パケットの 同時廃棄によるスループットの低下はわずかであるが,H > = 9000 bytes では 100 Mbps を越える.また,H > 10000 bytes = の場合,比較対象である全ての TCP フローがパケットサイズ 上限値 H のパケットを発生させる単一パケット長条件下での スループットと,複合化により最大のスループットが得られた 図 4 パケット複合化によるスループットの向上 W = 1000 byte の場合のスループット差はおよそ 500 から 600 Mbps であった.一方,概算により得られた低下スループット はおよそ 200 から 400 Mbps であり,複数パケットの同時廃棄 によりスループットが抑制されたことが推定される. 4. まとめと今後の課題 本稿では,パケット複合化の有効範囲および特定条件下にお けるスループット低下を抑制する方式について検討し,評価を 行った.今後は,異なる TCP 方式による性能評価を行う予定 である. 図 5 エッジノードでのペーシングによるスループットの改善 一方,スループットは H が 1500 bytes の整数倍である点の一 部において急激に低下し,長パケット領域において飽和する. 3. 4 複合化パケットのバースト送信 本稿で用いたアルゴリズムでは,複合化キューからのパケット 送出をトリガとしたパケットのバースト送出が見られ,スルー プットを低下させる.スループットの低下が最も顕著であった H = 3000 bytes,W = 100 bytes の条件においては 1 µs 以下 の間隔で 47.4 %のパケットが出力されており,スループット低 下の要因となる.そこで,複合化ノードからのパケットのバー スト送信によるスループットの低下を抑制する方式として,複 合化ノードにおいてパケットのペーシングを行う.図 5 に,前 述の条件において,最小パケット間隔を 10 µs から 100 µs ま で変化させた場合のスループットの変化を示す.スループット は最小パケット間隔 40 µs において最大となり,ペーシングを 行わない場合に比べ 60 % 改善された.しかし,ペーシングに よる光パケットの平均遅延時間は 50 ms となり,通信品質に悪 影響をおよぼすと考えられる.ペーシングによる遅延 1 ms 以 下では,間隔を 30 µs としたとき 50 %の最大改善率を得た. 3. 5 複数パケットの同時廃棄による影響 複合化パケット長を増加させるにつれ,複合化パケット内に - 10 - 文 献 [1] Dabid K. Hunter, Meow C. china, and Ivan Andonovic, “Buffering in optical packet switches,” IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology, Vol. 16, pp. 2081-2094, Dec 1998. [2] M. Ohta, H. Harai, and T. Morioka, “Standardization of optical packet switching with many-wavelengh packets,” ITUT Kaleidoscope - Innovations in Next Generation Networks -, pp. 359-366, May 2008. [3] 岡村悠貴, 今泉英明, 久留賢治, 石田修, 関谷勇司, 森川博之, “光 パケット網における BGP フロー集約型パケット多重化手法に よる衝突回避効果の評価,” 信学技報 PN2009-92, Mar. 2010. [4] 高野奨太, 小津喬, 高橋達郎, “遅延線バッファを対象とした光パ ケット複合化の性能評価,” 信学技報 PN2010-21, Sep. 2010. [5] 岩井真人, 高橋達郎, “可変遅延線を用いたファイバ遅延線バッ ファの構成法,” 信学論, Vol. J93-B No. 6, pp. 813-821, Jul. 2010. [6] Katsuya Ikezawa, et al., ”Demonstration of modulation format free and bit rate free characteristics of 2 ns optical switch for optical routers,” in Proceedings of OFC/NFOEC,pp. 24-28 , Feb. 2008. [7] Wolfgang John et al., ”Analysis of internet backbone traffic and header anomalies observed,” in Proceedings of the 7th ACM SIGCOMM Conference on Internet Measurement, pp. 111-116, Oct. 2007. [8] The Network Simulator - ns-2 http://www.isi.edu/nsnam/ns/ [9] 太田昌孝, “光パケット多重幹線の実用化に向けて,” 信学技報 PN2006-37, Oct. 2006. 第5回PN研究会学生ワークショップ 2011年 3月 1日 社団法人 電子情報通信学会 社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE. 多段接続可能な部分共有 FDL バッファの性能評価 花田 光平† 高野 奨太†† 高橋 達郎†† † 京都大学工学部 電気電子工学科 〒 606-8501 京都市左京区吉田本町 †† 京都大学大学院 情報学研究科 〒 606-8501 京都市左京区吉田本町 E-mail: †[email protected] ††[email protected], ††[email protected] あらまし 等差級数型の遅延線バッファにおいては,長い遅延線の使用割合が低いため,遅延線本数の増加に伴いス ループット性能が飽和する.本稿では,遅延時間の長い遅延線群を複数の方路間で共有する部分共有 FDL バッファ方 式を提案し,シミュレーションにより装置規模当たりの性能向上が可能であることを示す. キーワード 光パケットネットワーク,FDL バッファ,部分共有バッファ Performance Evaluation of Multistage Partially-Shared Fiber Delay Line Buffer Kohei HANADA† , Shota TAKANO†† , and Tatsuro TAKAHASHI†† † Undergraduate School of Electrical and Electronic Engineering, Kyoto University, Yoshidahonmachi, Sakyou-ku, Kyoto-shi, 606-8501 Japan †† Graduate School of Informatics, Kyoto University, Yoshidahonmachi, Sakyou-ku, Kyoto-shi, 606-8501 Japan E-mail: †[email protected] ††[email protected], ††[email protected] Abstract In this paper, we present a partially-shared FDL buffer in an optical packet switch to reduce the device cost. Rarely used long FDLs decreases the performance per device cost of FDL buffer. Therefore, long FDLs as shared FDL parts, which are only used in case of the arrival packet number is high, enables a FDL buffer with lower device cost. Key words Optical Packet Switching,Fiber Delay Line,Partially-Shared Buffer 1. ま え が き 2. 研 究 背 景 バックボーントラヒックの大容量化のため,光信号を光信号 2. 1 FDL バッファ のままルーティングを行うフォトニックネットワークが注目さ 本稿では,遅延時間を等差数列的に変化させる FDL バッファ れている.フォトニックネットワークでは,既存の電気ネット を対象とする.FDL バッファにパケットが到着した場合,基本 ワークにおいてボトルネックとなっている光電気変換を無くす 的には最も遅延時間の短い FDL にパケットを入力するが,出 ことで,ネットワークの高速化が可能であるが,光メモリは実 線で他のパケットと衝突する場合には,順々に遅延時間の長い 用化の目処が立っておらず,電気領域と同様の衝突回避手法を FDL へ入力を試みる.本稿では,FDL を遅延時間が短いもの 用いることができない [1].そこで,現在は複数のファイバ遅延 から順に数え,l 番目に相当する FDL を第 l 番目の FDL と表 線(Fiber Delay Line: FDL)を用いて光信号をバッファリン 現する. グする FDL バッファが有力視されている [2].本稿では,この FDL バッファに着目し,この装置の一部を複数の方路間で共有 3. 部分共有 FDL バッファの提案と評価 することにより装置規模あたりの性能を向上させる方式を提案 3. 1 部分共有 FDL バッファの概要 する. [3] で示す通り,16 本の FDL で構成される FDL バッファの 第 9 本目以降の遅延線の使用率の合計は,全体の約 8.4 %と低 い.そこで,本稿では,16 本の FDL からなる FDL バッファ を基準とし,この FDL バッファを 8 本の個別部(以下,個別 - 11 - —1— Space sw tc switch Coupler 呍 呍 呍 Input port IP Network 100Mbps 䠨 :䠍 2 :䠍 䠍 Output p port p 呍呍 呍 TCP Ed node Edge d OPN 10Gbps IP Network 100Mbps Individual FDL buffer TCP N TCP TCP 呍呍呍 呍 呍 呍 N 䠨 :䠍 OPN node Output port 2 :䠍 :䠍 TCP TCP TCP m 呍 呍 呍 䠨 :䠍 䠍 表 1 個別方式,部分共有方式の装置規模比較 (10㽢N) (50㽢N) 図2 ネットワークトポロジ を行う.次に,l ≧ 9 となる場合について説明する.この場合, バッファ構成方式 個別方式 部分共有方式 スイッチ経路数 2N 2 L N(N L + 2m + mL)+ m2 L 遅延線数 2N L N (L + 2) + mL L(L−1) (N 2 (1㽢N) (50㽢N) 図 1 部分共有 FDL バッファの装置構造 N L(2L − 1) TCP (10) TCP 呍 呍 呍 呍呍呍 TCP 呍呍呍 呍 呍 呍 TCP 䠨 :䠍 L delay lines 遅延線総延長 TCP + m) + L(m + 2N ) 待機状態の共有 FDL が存在する場合は,借用を開始しパケッ トの処理を行う.共有 FDL は各方を最大で同時に 2 つまで借 用することが可能であり,最大で 24 本の FDL を擁する FDL バッファとして動作が可能である.共有バッファを使用してい FDL)と 8 本の共有部(以下,共有 FDL)に分割し,共有部 を複数の方路で共有して使用する.遅延時間の公差 D は 1500 bytes で固定とする.個別 FDL は各方路毎に 1 つ設置されて おり,0 から 7D までの遅延を与える.共有 FDL は同様に 0 から 7D までの遅延線と共通回路から成り,共通回路によって スイッチ網を伝搬する遅延時間,波形劣化ロス保障などの機能 を実現する.共有 FDL は 8D から 15D,16D から 23D まで の遅延線として機能する.到着パケット数が少ない時は,個別 FDL のみでパケットの処理を行い,到着パケット数が多くな り,個別 FDL だけで処理ができなくなった場合にのみ,共有 FDL を借用して,一時的に最大で 24 本の FDL で構成された FDL バッファとしてパケットの処理を行う.この共有 FDL を 複数の方路間で共有して使用することにより,装置規模を小さ くできることに加え,同程度の装置規模の FDL と比べスルー る場合において,到着パケットについて入力判定を行った結果, l > 23 となれば到着パケットは廃棄される. 共有 FDL バッファの返却,借用に要する時間は 0 とし理想 的な状態を仮定する.共有 FDL の返却判定に関しては,パケッ トがある方路の FDL に到着する度に全方路の共有 FDL 内のパ ケットを確認し,共有 FDL 内に入力された全パケットが FDL から出力されたことが確認された場合,共有 FDL は直ちに返 却され,再度待ち状態となる.したがって,パケット到着時に 全ての共有 FDL が他の方路で借用中の場合においても,共有 FDL 内にパケットがないこと方路が確認できた場合,直ちに共 有 FDL は返却され,自方路で共有 FDL の使用が可能となる. 3. 3 シミュレーション条件 本稿で使用するネットワークトポロジを図 2 に示す.方路数 を N=8 と固定し, 共有 FDL の個数を m を 1 から 8 まで変 化させた.光電気変換では遅延は発生しないものとし,それぞ プット向上が可能となる. 図 1 に方路数 N ,共有 FDL 数 m ,個別 FDL と共有 FDL の遅延線本数がともに L 本である共有 FDL バッファ方式の装 置構成を示す.表1にともに最大の遅延線本数が 2L 本とし, れのリンク遅延は1リンクあたり 5 ms で RTT が 25ms でス ループットの上限値が 8Gbps である高スループットフローと, RTT が 80ms でスループットの上限値が 2.5Gbps である低ス 個別 FDL のみで構成された基本的な FDL バッファ,部分共有 ループットフローをそれぞれ設定した.ただし,パケットの送 FDL を持つ FDL バッファそれぞれにおける装置規模,遅延線 信間隔が同じになることなどによって起こり得る周期現象の発 の総本数,遅延線の総延長を表す式を示す.ここで,遅延線長 は,FDL バッファの遅延時間公差を単位とする.但し,本稿で は最大遅延線本数が 16 本である FDL バッファを基準とし,前 半部と後半部の遅延線本数は同じものを対象とするため,式に おける共有 FDL 方式の個別部,共有部の遅延線本数はともに 生を抑制するために,各 TCP フローの RTT を上下 2 %の範 囲で変化させた.通信方式には TCP Reno を用い,光パケッ ト形式は多波長一括処理方式,パケットサイズは 1000 bytes, ウィンドウサイズの上限は 100 パケット分とした.また,出力 方路当たりの TCP フローの数を 500 とし,パケットの構成に は,利用可能な全波長を用いて一つのパケットを伝送する多 L とした. 波長一括型多重化方式を用いた.本稿では,等差級数型のバッ 3. 2 共有 FDL 使用のアルゴリズム FDL バッファにパケットが到着し,そのパケットが第 l 番 ファを対象とし,遅延時間の公差 D は 1500 bytes とした.ま 目の FDL に入力される場合を考える.到着したパケットは最 た,シミュレーションはプログラムの作成時間を短縮し,対象 も遅延時間の短い第 1 番目の FDL から順に入力可能かどうか とする箇所以外での誤作動を防ぐために,既存のネットワーク の判定を行う.パケットが入力される第 l 番目の FDL におい て,l ≦ 8 の場合,個別 FDL のみを使用して,パケットの処理 シミュレータ ns-2(ns-2.34) [4] に変更を加えて行い,データの 採取にあたっては,回線が十分に安定したのちのデータを取る - 12 - —2— が備えられている場合の値を基準値をとして示す.いずれの方 Average A Throug ghput[Gb bps] Averaage throu ughput [G Gbps] 路においても,共有比の増加に伴いスループットは向上する. 4.8 低スループット方路の平均スループットに関しては,共有比に よらず 2.5Gbps と一定値となった.以下では,低スループット 4.3 方路,高スループット方路のそれぞれの共有比に対する変化に 38 3.8 3.3 H-1 H-3 H-5 ついて考察する.まず,低スループット方路の平均スループッ H-1ᇶ‽್ H-3ᇶ‽್ H-5ᇶ‽್ トについて考察する.低スループット方路の平均スループット は,共有比が比較的低いとき,ほぼ一定の上限値 2.5Gbps と 2.8 0 0.2 0.4 m/N m/N 0.6 0.8 なっている.これは,到着パケット数が少ないため,パケット 1 処理はほぼ個別 FDL のみで行われ共有 FDL を借用する機会 が少ないためである. 図 3 共有比と平均スループットの関係 次に高スループット方路の平均スループットについて考察す る.高スループット方路の平均スループットは,共有比が大き High Through hput [Gb bps] High tthroughp put [Gbps s] 6.5 くなるにつれ増加し,最大で 6.3Gbps 程度となり,基準値より 5.3%ほどスループットが上昇している.これは,共有比が大き くなるにつれ競合率が低下し,1 つの方路が共有 FDL を 2 つ 6 借用して 24 本の FDL をもつ FDL バッファとして動作してい H-1 H-3 5.5 るためである.以上の結果より,当シミュレーション条件にお H-5 いては,共有 FDL 数 m は,高スループットの方路数と同数あ ᇶ‽್ れば,基準値を超えたスループットが得られることがわかる. 5 0 02 0.2 04 0.4 06 0.6 08 0.8 1 装置規模に関しては,高スループットの方路数が少ないほど, m/N m/N 削減率が高くなる.共有比を増加させ,スループットが飽和し たとみなされた最小の m において H = 1,3,5 に対してスイッ 図 4 共有比と高スループットの関係 チ規模はそれぞれ最大で 35.3%,24.3%,11.8%程度削減可能 である. 0.01 5. ま と め H1 H-1 Pack ket loss Pack ket loss ra rate ate H-3 本章では,1 つの方路に共有 FDL を複数割り当てることに H-5 ᇶ‽್ より,装置規模あたりの性能が改善されることを示した. 文 0.001 0 0.2 図5 0.4 m/N m/N 0.6 0.8 1 共有比と廃棄率の関係 ため,0 から 12 秒までフローを流したうち,10 秒から 12 秒の 間のデータを用いた.以下,上記のシュミレーション条件を基 本としシミュレーションを行う.測定は各々3 回行い,グラフ にはその平均値を示す. 全 8 方路のうち高スループットの方路数 H が 1,3,5 のそ 献 [1] 納富雅也, “フォトニック結晶による全光制御の進展,” 信学技法 Vol. 91, pp.971-978, Nov. 2008. [2] Dabid K. Hunter, Meow C. china, and Ivan Andonovic, “Buffering in optical packet switches,” IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology, Vol. 16, pp. 2081-2094, Dec 1998. [3] 花田光平, 高野奨太, 高橋達郎, “部分共有型ファイバ遅延線バッ ファ方式の性能評価,” 信学技法, Mar. 2011(発表予定). [4] The Network Simulator - ns-2 http://www.isi.edu/nsnam/ns/ [5] H. Furukawa, H. Harai, N. Wada, N. Takezawa, K. Nashimoto, and T. Miyazaki, “A 31-FDL Buffer based on Trees of 1 × 8 PLZT Optical Switches,” European Conference on Optical Communication (ECOC 2006), Tu4.6.5, Sep. 2006. れぞれの場合において,また,比較対象として各方路に 16 本 の個別 FDL バッファのみを備えた場合のスループットを測定 した.共有 FDL 数 m を 1 から 8 として測定を行った.m/N を共有比と定義する. 4. シミュレーション評価 図 3 に全体の平均スループット,図 4 に高スループットの平 均スループット,図 5 に廃棄率を示す.いずれも横軸を共有比 とした.また,各方路に 16 本の FDL からなる FDL バッファ - 13 - —3— 第5回PN研究会学生ワークショップ 2011年 3月 1日 社団法人 電子情報通信学会 複数ファイバによりリンクが構成されるネットワークにおける トラフィック分布予測情報を用いた適応的光パス制御法 大野 寛明 長谷川 浩 佐藤 健一 名古屋大学 大学院工学研究科 電子情報システム専攻 〒464-8603 愛知県名古屋市千種区不老町 E-mail: [email protected], {hasegawa, sato}@nuee.nagoya-u.ac.jp あらまし 通信拠点間のトラフィックの統計的性質を用いて拠点間の光パスの経路候補を優先度付きで算出し, これに基づいて光パスを動的配置する手法[大野他’ 10]が提案されている.この手法は各リンクが単一ファイバを想 定しており,本稿では新たにリンクが複数ファイバからなる場合に対応可能なコスト関数を導入し,多段階の最適 化により複数経路候補を算出する.数値実験はランダム法に比べブロッキング率削減効果があることを確認してい る. キーワード 光パスネットワーク,パラレルファイバ,経路波長割当,ブロッキング率推定 A dynamic optical path control method for multiple fiber link networks applying route pre-computation Hiroaki OHNO Hiroshi HASEGAWA and Ken-ichi SATO Department of Electrical Engineering and Computer Science, Nagoya University Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya, 464-8603 Japan E-mail: [email protected], {hasegawa, sato}@nuee.nagoya-u.ac.jp Abstract We propose a dynamic optical path network design algorithm that is a generalization of [H.Ohno et . al. ’10] to adapt networks whose links consist of multiple fibers. Numerical experiments elucidate that the proposed method can reduce blocking probability of path connection requests. Keyword Optical Path Network,Parallel fiber,Routing and Wavelength Assignment,blocking probability estimation 1. は じ め に 2. 適応的光パスネットワーク制御における事前経路 ブロードバンドアクセスの急速な発展により,バックボー ンネットワークのトラフィック量は爆発的に増加しており, 光信号を波長単位(波長パス)で処理するフォトニックネット ワークが導入されつつある.将来の更なるトラフィック増大 へ対応するには光パスの動的再配置によりネットワークリソ ースを効率的に利用することが有効である.再配置を行う上 では,バックボーンネットワークトラフィックに顕著な日周, 週周の周期性に基づくパス需要予測,広域ネットワークにお ける時差や接続ユーザーの特性(ビジネス,ホーム etc)に起因 するトラフィック変動の位相ずれ等を用いてのパス配置最適 化が重要になる. ネットワーク内の負荷分散による効率的な再配置の為に, 予め各ノード対に経路候補を各時刻毎に優先度付きで複数割 り当てておき,到着する各波長パス設立要求に対してこの経 路候補中から優先度順に探索する手法が[1]で提案されてい る.この手法では,基礎的検討として,各リンクでの波長衝 突のモデル化にあたり単一ファイバからなる単純な状況を仮 定している.また,[3]については選択経路数の依存性を検討 している.本稿では,任意の本数のファイバが並行して敷設 されている状況へ一般化し,リンクあたりのファイバ本数が 一様でない状況における提案手法の有効性を確認する. - 14 - 計算法 2.1 総ブロッキング数の推定 伝送遅延やセットアップ遅延を無視できる理想的な状態を仮 定し,設立する波長パスの Source-Destination ペア ( s, d ) 全体 の集合を M とする.各ノード対間での波長パス設立・削除は 互いに独立であるとし,各時刻で波長パスが設立済である確 率を ( s, d ) とする.各波長パスの経路候補は,最短経路を 含む複数経路の集合 K ( s, d ) に限定する.各ノード対 ( s, d ) について K ( s, d ) から一つの経路 k ( s, d ) を選択した時,そ の経路が同一リンクを選択するノード対同士を,競合するノ ード対と言う.ノード対 ( s, d ) 間の選択経路 k ( s, d ) 上に波 長パスを設立する際,これと競合するノード対集合 S ( s, d ) M について,文献[1]では単一ファイバリンクを 仮定することでパス設立失敗確率を以下で見積もっている. B ( s, d ) : δ ( s, d ) 1 (1 δ ( s , d )) ( s,d )S ( s ,d ) 複数のファイバでリンクが構成される時,ノード対の経路を いずれのファイバに収容するかで波長衝突の状況が変わる. ファイバとノード対との収容関係の組み合わせは,ファイバ 数・ノード対数の増加に伴って急激に増加する為,失敗確率 の推定が困難となる.そこで本稿では,各リンクではファイ 2.3 繰り返し局所探索による経路候補の更新 全てのノード対について,ランダムに順序を決める.この 順序に従い,各ノード対毎に経路更新されたノード対が一つ でもあれば,改めて順序を決め経路更新を試みる.この手続 きを全てのノード対で経路更新が行われなくなるまで繰り返 す.他のノード対間の需要の経路が固定されているという条 バを一様ランダムに選択すると見なした単純なモデルを採用 し,以下の推定値を得る. B p ( s, d ) : δ ( s, d ) δ ( s , d ) ) 1 (1 pl ( s,d )S ( s ,d ) pl pl はリンク l におけるファイバ数を表す. ネットワーク全体で Btotal : B p ( s , d ) を最小化する 件下で Btotal を最小にする経路へ更新する.この処理を更新 ことが受け入れる波長パス数を増加させることとなる. 2.4 経路候補の算出とそれに基づく動的制御 2.2 より得られた経路を第一経路候補とする.他のノード ただし, が行われなくなるまで繰り返し実行する. ( s , d )M Btotal の最小化は非凸で非線形な計画問題であるため完全な 対が第一経路候補を用いている前提において, K ( s, d ) の経 解決が困難であるが,[2]において 2 段階の最適化を経て局所 最適解を得る手法が提案されている.そこで,本稿では並行 路全てについて B p ( s, d ) を再度計算し,B p ( s, d ) の昇順に ファイバの選択も考慮するよう[2]の手法を拡張し, Btotal の 第二経路,第三経路を得る. 実際に波長パス設立要求が到来する時には,事前に決定さ れている前述の経路候補列について,(経路候補順序,波長番 号)の辞書式順序に従い,空きを探索する.最初に発見された 空き経路・波長に波長パスを設定する.空きが存在しなけれ ばブロッキングとなる.波長パス削除要求については,指定 されたパスを直ちに削除する. 抑制を目指す.提案手法は,まず与えられたノード対間パス 存在確率を用いてネットワーク内リンク負荷分散を目指す初 期経路割当を行い,続いて経路のリファインを行う.トラフ ィック分布,すなわち波長パスが設立される確率は時間経過 に伴い変動する為,適宜パス制御に並行して経路候補の再計 算を行う.経路候補算出には一定の計算コストが必要である が,候補中からの空き探索は高速に実行可能であり,このよ うに並列実行することで変動するトラフィックとスケーラビ リティの両立が可能である.詳細を次小節以降で述べる. 2.2 初期経路設計 経路が一様ランダムに選択される場合における各リンク l 3. 数値実験 表 1 のパラメータに基づいて数値実験を行った.各ノード 間の波長パス本数の期待値の基準値を表 1 のトラフィック分 布に従って決定した.続いて各時刻の期待値を基準値に 2πt θ ) を乗じて変動させた.ただし T は 1 日,θ T は後述する初期位相である.初期位相 θ は,ネットワークを 1 0.5 sin( の使用率の期待値 v p ( s, d , l ) を得る. v p ( s , d , l ) : δ ( s, d ) # { x} pl {# K ( s , d )} 図 1 に示すように 4 分割し、宛先が左上 4 ノードなら 0,右 上 4 ノードならπ/2,左下 4 ノードならπ,右下 4 ノードな ら 3 π /2 と し た . 各 波 長 パ ス の 経 路 候 補 を 得 る 為 , hopslug 4 という条件の下で最短経路より順に ただし,#{.}は,集合の要素数を示し,xは, K ( s, d ) にお いてリンク l を通過する経路数を表す.需要を最短経路長と 占有率の積の降順に選択する.経由するリンクにおけるブロ ッキング率 B p ( s, d ) : 1 (1 B p ( s, d , l )) lk ( s ,d ) が最も小さくなる経路を順次割り当てる.ただし, B p ( s, d , l ) は以下で与えられる. B p ( s , d , l ) : v p ( s, d , l ) 1 (1 v p ( s, d , l )) ( s,d )S ( s ,d ) 経路が確定したものについて以下の操作を行う. δ ( s, d ) (選択経路に lを含む ) v p ( s , d , l ) pl 0 (選択経路に lを含まない ) v p ( s, d , l ) の再計算を行い,全需要についてこの手順を適用 する. - 15 - 8 つの経 路を算出する.実際に波長パスの設定を試みるのはこの経路 集合の中の 3 つとした.比較手法として,ランダムに経路集 合から 3 つを選択し,空き経路波長を first fit で探索する手法 を用いた.また,単一ファイバの結果は[1]で示されているも のの再録である.本稿では図 2(a)‐(c)の 3 種のネットワーク トポロジを仮定する.二重線がリンク上に 2 本のファイバが 割り当てられていることを表す.図 3 に各ネットワークトポ ロジにおける平均リンク使用率とブロッキング率の関係を示 す.ファイバ増設に伴い,同一リンク負荷時におけるネット ワーク内の平均波長パス数も増加していることに注意された い. 表 1.実験パラメータ 図 1.4x4 正方格子ネットワーク (a) 単一ファイバ (b) パターン 1 (c) パターン 2 図 2.想定するネットワークトポロジ 0.3 ブロッキング率 0.25 ランダム(パラレル無し) ランダム(パターン1) ランダム(パターン2) 提案(パラレル無し) 提案(パターン1) 提案(パターン2) 0.2 0.15 0.1 0.05 0 0 0.2 0.4 平均リンク使用率 0.6 0.8 図 3.各トポロジにおける平均リンク使用率と ブロッキング率の関係 波長パスが集中するネットワーク中心部のリンクにファイ バを増設することで 2 手法ともより効率よくファイバ容量を 活用できている.しかし,いずれの場合においても提案手法 はブロッキング率を大きく削減しており,新たに付加された ファイバを有効に活用できていることが判る. 4. む す び 本稿では[1]の手法を,リンクが複数ファイバにより構成さ れる場合へ一般化し,数値実験によりその効果を複数のファ イバ配置で検証し,効果を明らかにした. 謝辞 本研究は NICT の支援を受けた.関係各位に感謝いたしま す. 文 献 [1] H. Ohno, H. Hasegawa and K. Sato, “A dynamic path control method applying traffic-prediction-based route pre-prioritization,” Proc. ACP 2010, Dec. 2010. [2] T.Yoshikawa, H.Nagashima, H.Hasegawa and K.Sato, “An RWA Algorithm for OBS Network based on Iterative Local Optimization of Total Blocking Probability,” Proc. APOC 2007, Nov. 2007. [3] H. Ohno, H. Hasegawa and K. Sato, “A dynamic path control method employing traffic-prediction-based route pre-prioritization,” special issue of Elsevier Journal Optical Switching and Networking, OSN-D-11-00009. - 16 - 第5回PN研究会学生ワークショップ 2011年 3月 1日 社団法人 電子情報通信学会 平滑化と Generalized gravity による交流トラフィック行列の推定法 白 紅霞 長谷川 浩 佐藤 健一 名古屋大学 大学院工学研究科 電子情報システム専攻 〒464-8603 愛知県名古屋市千種区不老町 E-mail: h_bai@echo.nuee.nagoya-u.ac.jp, {hasegawa, sato}@nuee.nagoya-u.ac.jp あらまし 本稿では,エッジノードとリンクでの観測トラフィック量から交流トラフィック行列を推定する方法を提案する. 一般に未知行列の成分の個数に比べて観測情報が不足する悪条件の問題となる為,提案法では観測量から与えられる制約式を満 足する中で,トラフィックの低周波成分に Generalized gravity を適用して与えられる初期推定値を二乗誤差最小の意味で最良近 似する行列を導く.数値実験により,直接 Generalized gravity を用適して交流トラフィック行列を推定する場合等と比較し,誤 差が減少することを実際のトラフィックデータを用いて示している. 1. は じ め に ク情報を用いた交流トラフィック行列の推定 N 個のノード間の時刻 n における交流トラフィック量を表す 行列を T(n)=[ trf (i,,j)(n)] とする.ただし trf (i,,j)(n)は時刻 n におけるノード m から n へ の通信量であり,これは観測不可な未知量である. Generalized gravity [2]ではノード(i,j)における出/入のトラフィ ック総量 si(n) / dj(n)を用いて交流トラフィック量の推定値を ^ si n d j n k 0 sk n N MRE 0.440 0.414 0.301 2.50E+07 実際のデータ Generalized gravity 提案手法 2.00E+07 1.50E+07 1.00E+07 5.00E+06 0.00E+00 1 15 29 43 57 71 85 99 113 127 141 155 169 183 197 211 225 239 253 267 281 時刻 図1.トラフィック変動(Chicago から Indianapolis) であり,x は所望の交流トラフィックの推定値を同様にベク トル状に配列したものである.行列 A の擬似逆 A+を適用すれ ば所望の推定値は x = A+(b-Ag)+g A+ = (AAT) -1AT として得られる 3. 数値実験 2. 平滑化 Generalized gravity とリンクのトラフィッ trf i , j n Generalized gravity 初期推定値 提案手法 トラフィック量 トラフィック解析とそれに基づくトラフィックエンジニア リングにおいては,ネットワークリソースの有効な利用を行 なうため,トラフィック変動の的確な予測が必要である.し かし,高速なバックボーンネットワーク上ではパケットヘッ ダ解析を要する宛先特定は困難であり,各地点対間のトラフ ィックを直接観測することができない.そこで各エッジノー ドにおける出入トラフィックの総和や各リンクでの総トラフ ィック量の全時刻に渡る観測値を用いて,時変トラフィック マトリクスを低次多項式行列として算出する手法が提案され ている [1].多項式による平滑化の効果により雑音的成分に よる予測値の変動が抑制されるが,各時刻でのトラフィック の推定値を観測トラフィック系列から得られない欠点がある. そこで本稿では,各エッジノードにおける出入トラフィック を平滑化して得られる低周波成分に Generalized gravity を適 用して得られる行列を初期推定値とする.続いてその時刻の 出入トラフィックと各リンクにおけるトラフィック総量を満 足する中で,初期推定値に最も近い行列を交流トラフィック 行列の推定値として算出する. 表 1. 誤差評価 NMSE 3.629 3.463 2.034 (1) として得ている.しかし,雑音的成分による si(n),dj(n)の変 動に伴い,交流トラフィックの各ノード間への配分比率が大 きく変化する.この変化を緩和するため,観測された出入ト ラフィック量にバタワース型 IIR フィルタ[3]を適用し,得ら れた値に式(1)を適用することで初期推定値 G(n)=[g(i,j)(n)]を得 る. 各エッジノードにおける出入のトラフィック総量が,交流 トラフィック行列の周辺条件を与えること,各リンクでの挿 トラフィック量がルーティング情報から決まる幾つかの成分 の総和と等しくなること,が観測値に合致する推定値である ことの条件となる.これらの等式制約を行列形式で記述して, Ax=b と表現する.ただし,A は係数行列,b は観測条件から決ま るベクトル,g は初期推定値 G をベクトル状に配列したもの - 17 - Abilene トポロジ (12 ノード,15 リンク) 上で実際に観測さ れた 1 日間の交流トラフィック[4]を 5 分間毎の変動(288 サン プル)に変換し,それを更に出入トラフィックとリンクの挿ト ラフィックに変換して用いた.経路は最短経路に固定し,中 途での経路変更は行わないものとした. 提案手法の初期値推定に於いては,バタワースフィルタのカ ットオフ周波数は 30 とした.提案手法と,直接 Generalized gravity を適用したものとの結果を比較した.図 1 は Chicago から Indianapolis 間のトラフィックの変動を表したものであ る.提案手法がより良好な近似結果を与えていることが見て 取れる.表 1 には二種類の誤差 Normalized Mean Square Error (NMSE),Mean Relative Error (MRE)での評価結果を示す.推 定誤差が最大で NMSE の場合 44%,MRE の場合は 32%減少 していることが見て取れる. 謝辞 本研究は NEDO の支援を受けた.関係各位に感謝いたします. 4 . 参考文献 [1] 平野真彦,長谷川浩,佐藤健一,“一般化重力モデルと低次周期 多項式近似に基づく時変トラフィック行列推定,”2007 報通信学 会ソサイエティ大会 B-7-40. [2] Y.Zhang, M.Roughan, N.Duffield and A.Greenberg, “Fast Accurate Comuputation of Large-Scale IP Traffic Matrices from Link Loads”, SIGMETRICS/Performance ’03, 2003. [3] A.V.Oppenheim and R. W. Schafer, “DISCRETE-TIME SIGNAL PROCESSING”, Prentice Hall, ISBN 0-13-083443-2, 1999. [4] http://userweb.cs.utexas.edu/~yzhang/ 第5回PN研究会学生ワークショップ 2011年 3月 1日 社団法人 電子情報通信学会 社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE. 光キャリア再生可能なネットワークにおける最適波長割当方式 花里 将史† 大木 英司† 松浦 基晴†† † 電気通信大学 情報通信工学科 †† 電気通信大学 先端領域教育研究センター E-mail: †[email protected] あらまし 本論文は, 光キャリア再生可能なネットワークにおいて, 波長数を最小化する最適波長割当方式を提案する. 最適波長割当問題は,光キャリア再生を考慮して,整数線形計画問題として定式化される. 光キャリア再生可能なネッ トワークでは, 光キャリア再生技術により, 光キャリアの再利用が可能となり, 波長の利用効率が改善される. 一方で, 再生後の光キャリアの信号品質は, 再生前のそれと比較して僅かに悪化する為, 1 波長あたりの光キャリア再生回数を 有限回に制限する必要がある. 性能評価の結果, 1 波長あたり 2 回の光キャリア再生は, それを用いない場合と比較し て, 最大で 60%以上の波長数を削減することを示す. キーワード 全光ネットワーク, 光キャリア再生, 波長割当 Optimal Wavelength Assignment Scheme in an Optical Carrier Reusable Network Masafumi KERI† , Eiji OKI† , and Motoharu MATSUURA†† † 〒 182-8585 東京都調布市調布ケ丘 1-5-1 †† 〒 182-8585 東京都調布市調布ケ丘 1-5-1 E-mail: †[email protected] Abstract This paper proposes an optimal wavelength assignment that minimizes the number of wavelengths used in an optical carrier reusable network. The optimization problem is formulated as an linear integer programming problem. In an optical carrier reusable network, wavelength utilization is improved by applying optical carrier regeneration techniques that allow multiple use of optical carriers, while the number of carrier regenerations should be considered since the signal quality of the regenerated carrier is degraded after carrier regeneration. The numerical results show that two optical carrier regenerations per wavelength reduces the number of wavelengths needed for lightpath establishment by more than 60%, compared to that without carrier regeneration. Key words All Optical Network, Optical Carrier Regeneration, Wavelength Assignment 光キャリア再生可能なネットワーク [1], [2] では,通信用光源 1. ま え が き を単一の Regional Node (RN) に集約し, ネットワーク全体で 通信トラフィックの急激な増加に対処する為, WDM (wave- 共有することで, 光源制御の煩雑さを緩和している.加えて, length division multiplexing) 信号の波長間隔幅を狭めて, 利 各々の Edge Node (EN) で光キャリア再生を行い,通信に利 用可能な波長数, すなわち利用可能なチャネルの数を増やす方 用された光キャリアの再利用を行うことで,波長あたりの利用 向で研究開発が進んでいる. 一方, 従来の帯域幅に余裕のある 効率を改善している.光キャリア再生技術により,波長の利用 波長帯域では無視できる僅かな波長の振動が, 波長間隔の狭い 効率が改善される一方で,光キャリアの品質が悪化する為,一 伝送システムにおいては, 光フィルタによって光信号が狭窄化 波長あたりの光キャリア再生回数は有限回に制限される必要が されてしまう為, 通信用光源に厳しい安定化制御を施す必要が ある. ある. このように光源の安定化の需要が高まる状況下において, 本論文は, 光キャリア再生可能なネットワークにおいて,整 光ネットワークのすべてのノードに通信用光源を配置すること 数線形計画法に基づいた波長数を最小化する最適な波長割当方 は, 光源の管理・制御の煩雑さを増加させる. 式を提案する. 提案法では, 波長割り当て問題をグラフ彩色問 - 18 - —1— 図2 光パス確立例 図 1 光キャリア再生可能なネットワークの構成 #2 で再度利用され, EN #3 へ向かう光パスの確立に利用され 題へ変換した後で, 各々の光キャリアの再生回数を考慮する制 ている. このように, 光キャリア再生技術をネットワークに適 約式を持つ整数線形計画問題に変換する. 計算機によるシュミ 用することで, 単一の波長による複数の光チャネルの確立が可 レーションから,光キャリア再生技術を導入することで,それ 能となり, 波長利用効率は改善される. 同様にして, EN #3 に を用いない場合と比較して,波長数を 60% 削減することが可 おいても, 再利用された波長 λ1 の光キャリアが利用されるが, 能であり,それを行う為には 1 波長あたり 2 回の光キャリア再 この光パスの波長は, RN で λ1 から別の波長に変換される必要 生が必要であることを示す. がある. これは, EN #1 へ供給される光キャリアによって, 波 本論文の構成は, 以下の通りである. 第 2 章は, 光キャリア再 生可能なネットワークの構成を記述する. 第 3 章は, 提案する 波長割当方式について述べる.第 4 章では,提案方式の評価に ついて述べる.第 5 章で,本論文のまとめを示す. 長 λ1 が既に利用されている為である. 波長変換を行わない場 合, 波長の衝突が発生し大量のデータが損失する. 光キャリア再生を用いることで, ネットワーク内で利用され る波長数を削減できる利点がある一方で, 再生後の光キャリア の品質は, 再生後のそれと比べて信号品質が劣化する為 [1], 同 じ波長を繰り返し再生することで, 通信品質が悪化する. この 問題を回避する為, 光キャリア再生可能なネットワークでは, 1 2. ネットワーク構成 波長あたりの再生回数を有限回に制限する必要がある. 本研究 図 1. に, 光キャリア再生可能なネットワークの構成を示す. 光キャリア可能なネットワークは, 1 つの Regional Node (RN) と, 複数の Edge Node (EN) から構成される, 一方向のネット ワークである. 通信用光源は RN にのみ配置され, 光パス確 では, 1 波長あたりの再生可能数は波長に関わらず一定の値で あると仮定した. 3. 波長割当方式 立要求に応じて, EN は RN から放出される光キャリアを分岐 すべての光パス要求が既知であるという前提の元で, 光パス (drop) し, その光キャリアを用いて光パスを – 電気的処理を伴 の確立に必要な波長数を最小化する最適な波長数割当法を記述 わない送信ノードから受信ノードまで光信号の辿る通信路 – を する. 光チャネル確立要求に, 利用可能な波長を割り当てる問題 確立する. をグラフ彩色問題への変換を行った後, その整数線形計画を記 RN は選択された波長を切り替える Wavelength Selective 述する. 問題の変換にあたり, ノード数, 1 波長あたりの光キャ Switch (WSS), 複数の波長を同時に生成可能な Multi-Carrier リア再生の許容回数, すべての光パス確立要求は既知であると Light Source (MCLS), 波長衝突を回避する目的で利用される した. Wavelength Converter (WC) から構成される. EN は, 光パ 3. 1 グラフ彩色問題への変換 スの分岐 (drop)/挿入 (add) 処理を行う Reconfigurable Opti- グラフ彩色問題は, 隣接する頂点同士が異なる色となるよう cal Add/Drop Multiplexer (ROADM), 一度通信に利用され に, グラフ内の頂点を最小の色数で彩色する問題である. グラフ た光キャリアの再利用を可能にする Optical Carrier Regener- は以下の手続きで構築される. ator (OCR), Multiplexer(MUX), Demultiplexer (DEMUX), • Step 0 初期化処理 • 頂点 V , 辺 E を初期化する. V ← {∅}, E ← {∅}. Step 1 頂点の生成 Receiver (RX), そして Transceiver (TX) から構成される. 図 2 に光パスの確立例を示す.光パス確立要求は 1) EN #1 から EN #2, 2) EN #2 から EN #3, 3) EN #3 から EN #1 Case 1: 光パスが RN を通過しない場合 へ向かう, 3 つの光パス確立要求を例として用いた. 光パスを確 光パス L が RN を通過しない場合, 単一の波長で L は 立するにあたり,EN #1 は波長 λ1 の光キャリアを drop し, 所 確立可能である. L に対応する頂点 vL を V に格納する。 望の送信ノード EN #2 に向けて光パスを確立している. 同時 Case 2: 光パスが RN を通過する場合 に, EN #2 は光キャリアの再生を行い,波長 λ1 の光キャリア 光パス L が RN を通過する場合, 波長変換が為される の再利用を可能する. すなわち, 再生された光キャリアは, EN 為, RN の通過前と通過後とで二つの波長が必要となる. - 19 - —2— • ′ RN 通過前, 通過後対応する頂点 vL ,vL を生成する. Step 2 辺の生成 率の関係及びその信頼区間を示す. この表は, 光キャリア再生 グラフの辺は, 波長の衝突を防止する目的で利用される. 技術を用いることで, ネットワークの波長数を 60% 以上削減可 以下の場合に, 頂点間に辺を生成する. 表 1 に, 1 波長あたりの光キャリア再生回数と, 所要波長削減 能であり, その為には 1 波長あたり 2 回の光キャリア再生が必 Case 1: 対応する光パスが同一の光ファイバを経由する Case 2: 光パスが RN を通過する 要であることを示している. 5. 結 3. 2 整数線形計画法 論 得られたグラフを最小波長数で彩色する問題を, 整数線形計 本論文は, 光キャリア再生可能なネットワークにおいて, 利用 画問題として定式化する。ここで, ある頂点 v を λ で彩色す される波長数を最小化する最適な波長割当法を提案した. 提案 ることは, 対応する光パスに波長 λ を割り当てるに等しい. W 法では, 波長割当問題をグラフ彩色問題に変換後, 問題を整数 をネットワークで利用可能な波長の集合とし, 各々の波長を λi 線形計画問題として扱う. 性能評価から, 光キャリア再生技術 (i = 1, 2, ..., |W |) と記述する. 0-1 変数 yλ = 1 は, λ が 1 度で を適用することで, それを用いない場合と比較して, 波長数を も利用された場合に 1 をとり, それ以外では 0 をとる. 0-1 変 60% 以上削減することが可能であり, それには 1 波長あたり 2 数 xλ v = 1 は, 波長 λ が頂点 v に割り当てられた場合に 1 をと 回の光キャリア再生で十分であることが示された. り, それ以外では xλ v = 0 をとる. 1 波長あたりの光キャリア再 生の許容回数を Nr . これらの変数を用いて, 整数線形計画問題 は,以下のように,あらわされる. ∑ min yλ (1a) 献 for Carrier Wavelength Reuse in a Multicarrier Distributed WDM Network,” IEEE Photon. Technol. Lett., vol. 22, no. xλv = 1 ∀v ∈ V (1b) λ∈W ∑ 文 [1] M. Matsuura and E. Oki, “Optical Carrier Regeneration λ∈W s.t ∑ 謝辞 本研究の一部は, 大川情報通信基金, 及び, テレコム先端 技術研究支援センターより助成を受けて行われたものである. 11, pp. 808-810, 2010. [2] M. Matsuura and E. Oki, “Carrier Wavelength Reuse of xλv < = Nr + 1 ∀λ ∈ W (1c) Multicarrier Distributed OADM Network Using Optical ′ xλv + xλv′ < = yλ ∀(v, v ) ∈ E, ∀λ ∈ W (1d) yλ ∈ {0, 1} ∀λ ∈ W (1e) Sep. 2010. [3] J. Gross and J. Yellen, Graph theory and its applications, CRC press, 2006. v∈V xλv Carrier Regeneration,” in Proc. ECOC 2010 , Torino, Italy, ∈ {0, 1} ∀v ∈ V, ∀λ ∈ W (1f) 目的関数 (1a) は, ネットワークで利用される波長数を最小化す る. 制約式 (1b) は, すべての光パスが確立されることを強制し, 制約式 (1c) はすべての波長の光キャリア再生を Nr 回以下に抑 える. 制約式 (1d) は隣接頂点が同一の色で彩色されることを 防止, 換言すれば, 波長の衝突を防止する. 制約式 (1e) は残り の制約式 (1e), (1f) は変数 yλ , xλ v に 0-1 制約を課す. 4. 性 能 評 価 計算機上で整数線形計画問題を解き, 所要波長削減率を計算 した. ここで, 所要波長削減率とは光キャリア再生を用いた場 合の波長数を, それを用いない場合の波長数で正規化したもの である. EN の数は 5 とし, EN 間の光パス確立要求は 0 から 4 の間でランダムに選択した. 表 1 1 波長あたりの光キャリア再生回数と所要波長削減率 光キャリア再生回数 所要波長削減率 信頼区間 0 1.000 1.000-1.000 1 0.519 0.518-0.520 2 0.394 0.392-0.396 3 0.384 0.383-0.385 4 0.384 0.383-0.385 5 0.384 0.383-0.385 - 20 - —3— 第5回PN研究会学生ワークショップ 2011年 3月 1日 社団法人 電子情報通信学会 1Gbps/10Gbps 切替可能 PON における ONU 独立リンク速度切替による低消費電力化 高橋 佑輔 電気通信大学 大学院情報システム学研究科 〒182-8585 東京都調布市調布ヶ丘 1-5-1 E-mail: [email protected] あらまし 近年の、通信トラヒック増加要求に対応すべく次世代 PON (Passive Optical Network) として、10G-EPON (10Gigabit-Ethernet PON) が標準化された。一方で、高速化に伴い消費電力の増大が懸念される。次世代 PON の低消費 電力化を実現する為、消費電力の大きい 10Gbps の装置と小さい 1Gbps の装置を持ち、通信容量に応じてリンク速度を 10Gbps または 1Gbps に切替可能な機能である ALR (Adaptive Link Rate) を PON に適用したシステムが提案されている。 本稿では、データ量に応じて全ての ONU (Optical Network Unit) のリンク速度を切替るのではなく、帯域利用率が求める範 囲内におさまるよう独立にリンク速度を切替えていき、より多くの低速装置を用いて通信可能な方法を提案し、省電力効果を 検証する。 キーワード 光アクセス, 省電力, リンク速度切替, passive optical network, energy saving, adaptive link rate それぞれの ONU へ適 切 な接 続 時 間 の割 当 を行 う。接 続 時 間 の割 当 手 法 として Limited 方 式 [ 4 ] は ONU n からの伝 送 要 求 量 V n と、予 め与 えられている割 当 可 能 量 W M AX のうち小 さい値 r n を接 続 時 間 として割 当 てる方 式 である。図 2のよう に OLT が N 台 すべての ONU との通 信 に要 する可 変 長 の 周 期 をサイクルと呼 ぶ。また、OLT と ONU との通 信 が、ある ONU から別 の ONU へと切 換 える際 は伝 送 信 号 の衝 突 を防 ぐため、ガードタイムと呼 ばれる空 白 時 間 を挿 入 する。 1. 序 論 近 年 、通 信 トラヒックは指 数 関 数 的 に増 加 し、この傾 向 は 将 来 も続 くと予 想 されている [ 1 ] 。この通 信 要 求 に対 応 すべく ア ク セ ス 系 に お い て は 次 世 代 PON (Passive Optical Network)として、10G-EPON [ 2 ] が標 準 化 された。 一 方 で、 通 信 速 度 を 増 や す につれ、 消 費 電 力 が 増 大 す る。とりわけ、装 置 数 の多 いアクセス系 での消 費 電 力 の増 大 が懸 念 される。 次 世 代 PON の低 消 費 電 力 を実 現 する為 、消 費 電 力 の 大 きい 10Gbps の高 速 装 置 と消 費 電 力 の小 さい 1Gbps の低 速 装 置 を持 ち、通 信 容 量 に応 じてリンク速 度 を 10Gbps また は 1Gbps に切 替 可 能 な機 能 である ALR (Adaptive Link Rate) を 適 用 し た シス テ ム が 提 案 さ れて いる [ 3] 。[3] で は 、 データ量 に応 じて全 ての ONU(Optical Network Unit:光 加 入 者 線 ネットワーク装 置 ) のリンク速 度 を切 替 る。本 稿 では、 より省 電 力 を目 指 して、独 立 に ONU のリンク速 度 を切 替 か つ最 低 限 の数 の ONU のみを 10Gbps で用 いる方 法 を提 案 する。また、シミュレーションにより省 電 力 効 果 を検 証 する。 加入者宅 ONU 複数の加入者で共有 加入者宅 ONU 通信事業者局者 光ファイバ 光スプリッタ 光ファイバ OLT 加入者宅 ONU 図 1 PON の構 成 概 要 サイクル1 ONU1 ONU2 ・・・ サイクル2 ONUN ONU1 時間 ガードタイム 2. 次 世 代 PON の省 電 力 化 図 2 サイクルとガードタイムの例 2.1. 既 存 PON システムの概 要 ONU1 PON の 構 成 は 図 1 に 示 す 通 り 、 OLT ( Optical Line Terminal:光 加 入 者 線 終 端 装 置 )、光 スプリッタ、N 台 (最 大 ONUN 32 台 )の ONU とそれらの間 を繋 ぐ光 ファイバからなる通 信 シ ステムである。 10G装置 1G装置 切替装置 10G装置 1G装置 切替装置 OLT 光ファイバ 切替装置 10G装置 1G装置 図 3 ALR を用 いた PON の構 成 図 ONU は、加 入 者 の宅 内 もしくは構 内 に設 置 されている通 信 装 置 であ る 。 光 ス プリ ッタ は、 受 動 的 な 動 作 に よ り 、 光 強 2.2. リンク速 度 切 替 (ALR)方 式 度 を 等 分 配 ・ 結 合 する光 デ バイスである。 OLT は、通 信 事 消 費 電 力 とリンク速 度 には相 関 関 係 がある事 から、高 速 リ ンクを用 いての 通 信 では消 費 電 力 が 多 くなる。 消 費 電 力 を 抑 える為 、図 3のように OLT、ONU に 10Gbps(高 速 )装 置 、 1Gbps ( 低 速 ) 装 置 、 切 替 装 置 を そ れ ぞれ 用 意 し 、リ ン ク 速 度 を通 信 の状 況 に合 わせて 10Gbps と 1Gbps に切 換 える ALR を PON に適 応 した研 究 がある [ 3 ] 。リンク速 度 を切 替 え ることにより、消 費 電 力 の小 さい 1Gbps 通 信 を多 く行 うことで 低 消 費 電 力 化 を図 る。一 方 でリンク速 度 の切 替 には切 替 時 業 者 の局 舎 に設 置 されている通 信 装 置 である。光 スプリッタ により OLT からの信 号 は複 数 の ONU に分 岐 され、複 数 の ONU からの OLT への信 号 は結 合 される。 複 数 の ONU は OLT と最 終 的 に 1 本 の光 ファイバにより 繋 がる。この際 、上 下 方 向 は異 なる波 長 を用 いる多 重 通 信 を行 うが、異 なる ONU と OLT との接 続 は時 分 割 により行 わ れる [ 2] 。OLT はそれぞれの ONU から伝 送 要 求 量 を受 理 し、 - 21 - + … + ( r N ×c N ) W M AX ×N 帯域利用率 全て同時に切替 データ転送レートの合計 (a)リンク速度切替イメージ 10Gbps 消費電力 閾値 ONU#N (b)帯域利用割合イメージ 図 4 既 存 方 式 のリンク速 度 切 替 イメージ 消費電力 ONU#1 1Gbps 1Gbps 個別に切替 データ転送レートの合計 (a)リンク速度切替イメージ 帯域利用率 ONU#N 10Gbps 閾値 ONU#2 前 章 に記 した問 題 を解 決 する為 、各 ONU のリンク速 度 を 個 別 に 切 替 る ONU 独 立 リ ンク速 度 切 替 方 式 を 提 案 す る (図 5(a))。これにより PON 全 体 における伝 送 速 度 を 1Gbps と 10Gbps の二 者 択 一 にする事 無 く、動 的 に変 化 させる事 が可 能 とな る。 単 に ONU 毎 の 閾 値 を 設 定 するのではなく PON 全 体 で通 信 要 求 が閾 値 を超 えているかどうかを計 算 し て、個 別 に ONU の速 度 を切 替 える。たとえば PON 全 体 の 通 信 要 求 は少 ないが、ある ONU A のみに大 きな通 信 要 求 が 発 生 し、他 の ONU に通 信 要 求 が発 生 しない状 況 を想 定 す る。この時 ONU 毎 に閾 値 を超 えたら 10Gbps に切 替 えると すると、ONU A の通 信 要 求 が閾 値 を超 えると、システム全 体 では余 裕 があるにもかかわらず、10Gbps リンクを用 いる事 と なり消 費 電 力 が増 大 する。提 案 方 式 はサイクル 毎 帯 域 利 用 率 を割 当 可 能 な PON 全 体 の伝 送 容 量 のうち、伝 送 要 求 が 占 める割 合 を求 め、その値 が閾 値 を超 える場 合 、伝 送 要 求 の大 きい ONU から 10Gbps リンクに切 替 る。この方 法 により ONU のリンク速 度 を独 立 に切 換 える事 で、より多 くの 1Gbps リンクを用 い、PON 全 体 のリンク利 用 割 合 を高 める事 が可 能 となる(図 5(b))。 独 立 リンク速 度 切 替 方 式 において、帯 域 利 用 率 D Rat e と 閾 値 とを比 較 する事 により、それぞれの ONU のリンク速 度 を 切 替 える。D Rat e は以 下 の式 により求 める。 ( r 1 ×c 1 ) 1G装置の消費電力 ONU#2 3. ONU 独 立 リンク速 度 切 替 方 式 D Rat e = 10G装置の消費電力 ONU#1 1Gbps 間 が 必 要 で あり、この 時 間 内 での通 信 が 不 可 能 となり 一 般 的 にガードタイムより大 きいことから伝 送 遅 延 が大 きくなる。 既 存 方 式 [ 3] で は 、リ ンク 速 度 切 替 の ト リ ガ と し て 全 て の ONU のデータ転 送 レート(送 出 データ量 を 10Gbps リンク速 度 で 除 し た 値 ) の 合 計 が 閾 値 Bt h を ま た ぐ と き に 、 全 て の ONU リンク速 度 を変 更 する事 により低 消 費 電 力 化 を実 現 し ている。 図 4 (a) にデ ータ 転 送 レ ー トと 消 費 電 力 の 関 係 を 示 す。データ転 送 レートが閾 値 より小 さい場 合 には、1Gbps の リンク速 度 で通 信 するので、消 費 電 力 を抑 えることができる。 既 存 方 式 においては全 ての ONU リンク速 度 を変 更 する 為 、PON 全 体 における伝 送 速 度 は 1Gbps か 10Gbps の二 者 択 一 となる(図 4(b))。この方 式 では PON 全 体 の伝 送 要 求 が 1Gbps を若 干 上 回 るような場 合 においても全 ての ONU との通 信 に 10Gbps リンク速 度 を用 い、大 きな消 費 電 力 を要 するのに加 え、帯 域 利 用 率 が小 さくなる事 が分 かる。 (b)帯域利用割合イメージ 図 5 提 案 方 式 のリンク速 度 切 替 イメージ 開始 DRate算出 DRate < DthL かつ 10Gリンクが存在 NO Yes rnが最小の10Gリンクを1Gに DRate算出 DRate < DthL かつ Yes 10Gリンクが存在 NO DthH < DRate かつ 1Gリンクが存在 NO Yes r が最大の1Gリンクを10Gに n DRate算出 DthH < DRate かつ Yes 1Gリンクが存在 NO 終了 図 6 提 案 方 式 のフローチャート に切 り替 わって、切 替 時 間 の増 加 により通 信 遅 延 が増 加 す る。したがって、指 定 する範 囲 内 におさまっていれば切 替 え ることがないよう二 つの閾 値 で範 囲 を定 める。その下 限 を閾 値 の最 小 値 D t h L 、上 限 を最 大 値 D t h H とする。 図 6 に 提 案 方 式 の フ ロ ー チ ャ ー ト を 示 す 。 D Rat e が 閾 値 D t h L よりも小 さい時 、10Gbps リンクを用 いる ONU の中 から r n が最 小 の ONU n を 1Gbps リンクに変 更 する。D Rat e が D t h H よ り 大 き い 時 、 1Gbps リ ン ク を 用 い る r n が 最 大 の ONU n を 10Gbps リンクに変 更 する。このようにリンク速 度 を ONU 個 別 に切 換 える。 ・・・(A) ONU n が1 Gbpsリンクを用 いている場 合 →10 但 し、c n : ONU n が10Gbpsリンクを用 いている場 合 →1 とする。 D Rat e は、各 サイクルで OLT が ONU に対 し割 当 可 能 な最 大 データ量 (W M AX )の合 計 (N 倍 )のうち、それぞれの ONU に 実 際 に 割 当 てるデータ量 (r n )の総 和 の 割 合 を 示 すものであ る。ここで、1Gbps リンクを用 いた場 合 、10Gbps リンクと比 べ 同 じ大 きさ(単 位 はバイト)のパケットを伝 送 するのに必 要 な 時 間 が 10 倍 となる事 から、C n として 1Gbps リンクを用 いる ONU のデータ量 に 10 を掛 ける。 D Rat e と閾 値 とを比 較 するにあたり、閾 値 が一 つであると通 信 要 求 がわずかに変 化 するだけで 1Gbps と 10Gbps が頻 繁 4. 検 証 結 果 ネットワークシミュレータ ns2 により既 存 方 式 (文 献 [ 3 ] を参 考 に B t h =100Mbps とした)と提 案 方 式 (D t h L =0.1, D t h H =0.2 の場 合 と D t h L =0.7, D t h H =0.8 の場 合 )のシミュレーションを 行 った結 果 を図 7 に示 す。図 中 の横 軸 はそれぞれの ONU - 22 - 1Gbpsリンクの使用割合 に 発 生 さ せ た 伝 送 要 求 量 の 合 計 (Gbps) で あ り 、 以 降 平 均 負 荷 とする。接 続 時 間 の割 当 手 法 としては先 に示 した Limited 方 式 を用 い、パケットはポアソン到 着 する。(a)の縦 軸 は 1Gbps リンクの利 用 割 合 であり、大 きい程 低 消 費 電 力 システムである。(b)の縦 軸 はそれぞれのパケットの平 均 遅 延 (msec) を 示 す。 シミ ュレーシ ョンで 用 いた 主 な パ ラメータ は 表 1に示 す。 平均遅延時間[msec] 20km ガードタイム 5sec 切替時間 2msec パケットサイズ 1040Byte 0.4 ○既存方式 (Bth=100Mbps) 0.2 1 サイクルに ONU に 1000 パケット 割 当 可 能 な最 大 伝 送 量 (W M AX ) 0.1 1 10 平均負荷[Gbps] (a) 閾値と1Gbpsリンク利用割合の関係 10 ■提案方式 (DthL=0.7 DthH=0.8) ◇提案方式 (DthL=0.1 DthH=0.2) 8 6 4 2 ○既存方式 (Bth=100Mbps) 0 0.01 0.1 1 10 平均負荷[Gbps] (b) 閾値と平均遅延時間の関係 図 7 閾 値 と 1Gbps リンク利 用 割 合 、平 均 遅 延 時 間 の関 係 既 存 方 式 は平 均 負 荷 が 100Mbps 以 下 の場 合 、全 ての通 信 に 1Gbps リンクを用 い、平 均 負 荷 が 300Mbps を超 えると 1Gbps リンクの使 用 が 0 に近 づくため、リンク切 替 が発 生 して いな い 事 が 分 か る。 こ れ よ り 切 替 時 間 が 発 生 し な いの で 平 均 遅 延 は 0.2msec を下 回 る小 さな値 を示 す。 一 方 、100Mbps を超 え 300Mbps までの平 均 負 荷 をかける と、1Gbps リンクと 10Gbps リンクを切 替 ている事 が分 かる。こ れは、既 存 方 式 の切 替 トリガの閾 地 B t h が 100Mbps である 為 と 考 え るが 、 切 替 に 伴 い 切 替 時 間 が 発 生 し 平 均 遅 延 は 1.7msec 程 度 の比 較 的 大 きな値 を示 す。 提 案 方 式 は、平 均 負 荷 が 1Gbps を下 回 るとき、全 ての通 信 に 1Gbps リンクを用 い、10Gbps リンクとの切 替 が発 生 しな い事 が 分 か る。これより 切 替 時 間 が 発 生 しな いので 平 均 遅 延 は 0.2msec を下 回 る小 さな値 を示 す。一 方 、平 均 負 荷 が 1Gbps を超 えるにつれ 1Gbps リンクの利 用 割 合 が徐 々に下 がり 10Gbps リンクとの切 替 が発 生 している事 が分 かる。この とき切 替 時 間 が必 要 となるため、遅 延 は大 きな値 を示 す。 既 存 方 式 と比 べ提 案 方 式 は、1Gbpsリンクの使 用 割 合 が 大 きく低 消 費 電 力 システムであると言 える。一 方 で遅 延 が大 きくな る事 が 分 かる。こ れは、 既 存 方 式 はリンク 速 度 を 切 替 る際 、全 ての ONU とのリンク速 度 を切 替 えるため、サイクル 内 で切 替 時 間 が発 生 しないが、提 案 方 式 は、 ONU 個 別 に リンク速 度 の切 替 を行 うため、サイクル内 に複 数 回 の切 替 時 間 の発 生 が生 じる事 があるからである。 また、提 案 方 式 のリンク切 替 の閾 値 D t h L =0.7, D t h H =0.8 のときは D t h L =0.1, D t h H =0.2 と比 べ 1Gbps リンクの使 用 割 合 が大 きく、遅 延 が大 きくなる。これは、より多 くの伝 送 要 求 が 発 生 しても D t h H を下 回 る為 、1Gbps リンクをより多 く用 いる事 による。 切 替 時 間 が与 える影 響 を調 べる為 、図 8に提 案 方 式 の 切 替 時 間 を 2msec から 1msec、5sec(ガードタイムと同 じ値 ) と変 更 した際 の平 均 負 荷 と 1Gbps リンク速 度 の利 用 割 合 と 平 均 遅 延 を示 す。 これより切 替 時 間 が小 さい際 に、遅 延 が小 さくなる事 から、 提 案 方 式 の 遅 延 は 切 替 時 間 が 大 きな 要 因 を 示 して いる事 が分 かる。 - 23 - 1Gbpsリンクの使用割合 OLT-ONU 間 の距 離 ■提案方式 (DthL=0.7 DthH=0.8) ◇提案方式 (Dth L=0.1 DthH=0.2) 0.6 0.01 1.0 ○提案方式 (切替時間=5sec) 0.8 0.6 0.4 ■提案方式 (切替時間=1msec) ◇提案方式 (切替時間=2msec) 0.2 0.0 0.01 10 平均負荷[Gbps] (a) 切替時間と1Gbpsリンク利用割合の関係 平均遅延時間[msec] 6台 0.8 0.0 表 1 シミュレーションで用 いたパラメータ PON 内 の ONU 数 (N) 1.0 0.1 1 6 5 ◇提案方式 (切替時間=2msec) 4 3 ■提案方式 (切替時間=1msec) 2 1 0 0.01 ○提案方式 (切替時間=5sec) 0.1 1 10 平均負荷[Gbps] (b) 切替時間と平均遅延時間の関係 図 8 切 替 時 間 と 1Gbps リンク利 用 割 合 、平 均 遅 延 時 間 の関 係 5. まとめ 本 稿 では ALR を適 用 した次 世 代 PON において、帯 域 利 用 率 が求 める範 囲 内 におさまるよう独 立 にリンク速 度 を切 替 える ONU 独 立 リンク速 度 切 替 方 式 を提 案 した。本 提 案 方 式 をシ ミ ュレーシ ョン によ り 評 価 し 、 既 存 方 式 と 比 べ 遅 延 が 大 きくなるが、より多 くの 1Gbps リンクを用 いることにより低 消 費 電 力 システムとなる事 を示 した。 文 献 [1] 総 務 省 , “ 我 が 国 の イン ター ネッ トに おけ るト ラヒッ クの 集 計 ・試 算 ,”http://www.soumu.go.jp/, Aug, 2010. [2] IEEE P802.3av 10G-EPON Task Force , available from http://grouper.ieee.org/groups/802/3/av/. [3] R. Kubo et al., “Study and Demonstration of Sleep and Adaptive Link Rate Control Mechanisms fo r Energy Efficient 10G-EPON,” Journal of Optical Communications and Networking, Vol. 2, Issue 9, pp. 716-729, 2010. [4] G. Kramer, B. Mukherjee, G. Pesavento, “Interleaved Polling with Adaptive Cycle Time (IPACT) : A Dynamic Bandwidth Distribution Scheme in a n Optical Access Network,” http://wwwcsif.cs.ucdavis.edu/ ~kramer/research.html. 第5回PN研究会学生ワークショップ 2011年 3月 1日 社団法人 電子情報通信学会 PLZT 光スイッチを用いた光マルチキャスト配信システムの実装 An Implementation of Optical Multicast Delivery System Using PLZT Optical Switch 佐藤 丈博 島田 悠司 原 侑太郎 レンステト ヨハン 芦沢 國正 Takehiro SATO Yuji SHIMADA Yutaro HARA Johan RENGSTEDT Kunitaka ASHIZAWA 徳橋 和将 石井 大介 岡本 聡 山中 直明 Kazumasa TOKUHASHI Daisuke ISHII Satoru OKAMOTO Naoaki YAMANAKA 慶應義塾大学理工学部情報工学科 Department of Information and Computer Science, Faculty of Science and Technology, Keio University 1 まえがき 䝴䞊䝄 ᇶᆅᒁ 我々は従来より,PON (Passive Optical Network) に 代わる次世代光アクセスネットワークとして,アクティ ブ型光アクセスネットワーク ActiON (Active Optical Network) を提案している [1].図 1 および図 2 にそれ ぞれのアーキテクチャを示す.PON では局側装置であ る OLT (Optical Line Terminal) が光スプリッタを介 して加入者側装置である ONU (Optical Network Unit) を収容する.PON では光スプリッタの使用により低コ スト・低消費電力を実現する一方で,光スプリッタにお いて光パワーの分割が発生するため,OLT あたりの収 容 ONU 数の増加や,OLT-ONU 間の伝送距離の伸長が 困難である.2009 年に標準化が完了した IEEE 802.3av 10GE-PON (10Gigabit Ethernet-PON)[2] では,最大収 容 ONU 数 32 台,最大伝送距離 20km が規定されてい る.一方,ActiON では光スプリッタの代わりに,10nsec 以下での超高速方路切り替えを達成する PLZT (Plomb Lanthanum Zirconate Titanate) 光スイッチ [3] を使用 する.ActiON では光スイッチ制御の簡略化のため,ス ロットと呼ばれる固定長時間単位で OLT が ONU に対し 帯域割り当てを行う.ActiON の利点として,光スイッ チの使用により光パワーの分割が発生しないため,PON と比較して 4 倍の収容 ONU 数(128 台)および 2 倍の 伝送距離(40km)を実現する.しかし,1 スロット内に おいて通信可能な ONU が 1 台に限定されるため,マル チキャストおよびブロードキャストを行う際には送信先 の ONU の数だけスロットを使用する必要があり,帯域 の浪費が発生する. 本問題を解決するために,我々は PLZT 光スイッチ を光スプリッタのように動作させることでマルチキャス トを実現する方法を提案している [4].図 3 に PLZT 光 スイッチの内部構造および動作を示す.PLZT 光スイッ チはマッハツェンダ構造を有し,図 3(a) に示す最小単 位の光スイッチをアレイ状に接続することで大規模な光 スイッチを構成する.導波路上に設置された 2 個の電極 に電圧を印加することにより,図 3(b)(c) に示すように 所望の方路へ光信号をスイッチングする.このとき,2 個の電極にそれぞれ中間的な電圧を印加することで,図 3(d) に示すように入力した光信号を光スプリッタのよう に分割し,2 つの方路に出力させることが可能である. 以下では本動作を PLZT 光スイッチの分配モードと呼 - 24 - ྍኚ㛗䝣䝺䞊䝮 ග䝇䝥䝸䝑䝍 OLT ONU ONU OLT : Optical Line Terminal ONU : Optical Network Unit ᭱20km, 32ศᒱ ONU 図 1 PON のアーキテクチャ 䝴䞊䝄 ᇶᆅᒁ ᅛᐃ㛗䝇䝻䝑䝖 PLZT ග䝇䜲䝑䝏 ᐜྍ⬟ ࢚ࣜᣑ ONU ONU OLT ྠᮇ䞉ไᚚ ONU ONU ᭱40km, 128ศᒱ ONU 図 2 ActiON のアーキテクチャ ぶ.図 3 の入力ポート A から一定パワーの光を入力した 場合の出力ポート X における光パワーの変化を図 4 に 示す.分配モードを使用した場合,光スプリッタと同様 に光パワーの損失が発生する.[4] では,ActiON の系全 体で同時に分配モードにする PLZT 光スイッチ数を制限 することにより,ActiON の特徴である多ユーザ収容・ 長距離伝送を維持しながら,最小スロット数で ONU に 対しマルチキャスト配信を行う方式について検討を行っ ている. 本稿では,分配モードに対応した PLZT 光スイッチを 用いた光マルチキャスト配信システムの実装について報 告する.なお,本システムは 2010 年 12 月 10 日に東京 国際フォーラムにおいて開催された第 11 回慶應科学技 術展(KEIO TECHNO-MALL 2010)において実証デ モを行った. 2 2.1 光マルチキャスト配信システム システムの構成 図 5 に光マルチキャスト配信システムの実装図を示 す.本システムでは 1 台のサーバマシンが 2 台のクラ イアントマシンに対して映像ストリーミング配信を行 う.各マシンおよびレイヤ 2 スイッチは 10GBASE-ER モジュールを有し,シングルモード光ファイバを用いて A X A 䝅䝸䜰䝹䜿䞊䝤䝹䠄ไᚚಙྕ䠅 X 㟁ᴟP On ග䝇䜲䝑䝏ไᚚ ᑟἼ㊰ 㟁ᴟQ Off Y Y (a) ᵓ㐀 䠄ୗ䜚䠅 ศ㓄䝰䞊䝗ᑐᛂ PLZTග䝇䜲䝑䝏 䠄ୖ䜚䠅 䝺䜲䝲2 䝇䜲䝑䝏 ᫎീ䝇䝖䝸䞊䝭䞁䜾 䝃䞊䝞 ⤒㊰ィ⟬ (b) Cross䝰䞊䝗䛾ືస 䝅䞁䜾䝹䝰䞊䝗ග䝣䜯䜲䝞 䜽䝷䜲䜰䞁䝖1 䜽䝷䜲䜰䞁䝖2 10GBASE-ER䝰䝆䝳䞊䝹 䝝䝤 A X A X ୰㛫㟁ᅽ Off 図 5 光マルチキャスト配信システムの実装図 ୰㛫㟁ᅽ On Y Y (d) ศ㓄䝰䞊䝗䛾ືస (c) Bar䝰䞊䝗䛾ືస トマシンは映像視聴要求あるいは停止要求をサーバマシ ンに送信する.サーバマシンは現在の PLZT 光スイッ チの状態を把握しており,クライアントマシンからの要 求を受信後,次の光スイッチの状態を決定し,光スイッ チ制御マシンに切り替え要求を送信する.光スイッチ制 御マシンは切り替え要求にしたがい,PLZT 光スイッチ に対して制御信号を送信する.PLZT 光スイッチの切り 替え終了後,視聴要求を送信したクライアントマシンは サーバマシンからの映像を受信可能となる. Optical power 図 3 PLZT 光スイッチの動作 Bar䝰䞊䝗 2μs 図 6 に第 11 回慶應科学技術展における実証デモの様 子を示す.本デモにおいて,分配モード対応 PLZT 光ス イッチの切り替えにより,サーバマシンからクライアン トマシン 1 へのユニキャスト送信,サーバマシンからク ライアントマシン 2 へのユニキャスト送信,およびサー バマシンから双方のクライアントマシンへのマルチキャ スト送信の 3 種類の送信方法を光レイヤで実現可能であ ることを実証した. ศ㓄䝰䞊䝗 Cross䝰䞊䝗 time 図 4 PLZT 光スイッチの出力光パワーの変化 2.3 伝送速度 10Gbps で通信を行う.下り方向では分配モー ド対応 PLZT 光スイッチを介してサーバ−クライアン ト間で全光通信を行う.クライアントは PLZT 光スイッ チの方路が自身の方向を向いている場合のみ,サーバの 配信する映像を受信可能である.また,本システムでは PON および ActiON で上り信号の衝突回避に使用され る MPCP (Multi-Point Control Protocol) を未実装であ るため,上り方向ではレイヤ 2 スイッチを介して通信を 行う.光スイッチ制御マシンはシリアルケーブルを介し て PLZT 光スイッチと接続されており,PLZT 光スイッ チの切り替え制御を行う.経路計算マシンは,2 台のク ライアントマシンを ActiON における 128 台の ONU の うちの 2 台と見なし,分配モードとして使用する光ス イッチを算出し表示する機能を持つ. 2.2 システムの動作 本システムでは,サーバマシンは常にマルチキャスト アドレス宛てに映像の配信を行っている.各クライアン - 25 - 今後の課題 本実証デモでは,クライアントマシンからサーバマシ ンへの映像視聴要求および停止要求はハブを介して電気 レイヤで行った.これは,PLZT 光スイッチの方路がクラ イアント自身の方向を向いていない状態では 10GBASEER のリンクがダウンしてしまうため,一度クライアン トが停止要求を送信すると視聴要求を送信不可能になる ためである. 本問題を解決するためには,ActiON のプロトコルに おいて定められているコミュニケーションチャネルを本 システムにおいても実装する必要がある.コミュニケー ションチャネルは,光スイッチが必ず所定の方路に切り 替わるスロットであり,コミュニケーションスロットの タイミングに合わせてクライアントが要求を送信するこ とで,すべてのサーバ−クライアント間通信がハブを介 さずに光レイヤで実現可能と考えられる.しかし,現状 のシステムではクライアントマシンおよびサーバマシン はバッファリング機能を有していないため,映像を途切 れなく配信するためにはさらにバッファの実装が必要で ある. 䜽䝷䜲䜰䞁䝖1 䜽䝷䜲䜰䞁䝖2 ⤒㊰ィ⟬ PLZTග䝇䜲䝑䝏 ᫎീ䝇䝖䝸䞊䝭䞁䜾䝃䞊䝞䠄䠅 ග䝇䜲䝑䝏ไᚚ 䝺䜲䝲2䝇䜲䝑䝏 図6 3 第 11 回慶應科学技術展における実証デモの様子 まとめ 本稿では,PLZT 光スイッチを用いた映像配信システ ムの実装について報告した.PLZT 光スイッチの電極に 中間的な電圧を印加し光スプリッタのように動作させ る分配モードの利用により,光レイヤでのユニキャスト 配信およびマルチキャスト配信が可能であることを実証 した. 謝辞 本研究は,科研費 22500068(C) の助成を受けたもので ある. 参考文献 [1] K. Tokuhashi, T. Sato, K. Ashizawa, D. Ishii, S. Okamoto, N. Yamanaka, “Extended MPCP Slot Data Transmission Experimental System for Active Optical Access,” 15th OptoElectronics and Communications Conference (OECC 2010), pp. 412413, July 2010. [2] IEEE Standard 802.3av, “Part 3: Carrier Sense Multiple Access withCollision Detection (CSMA/CD) Access Methodand Physical Layer Specifications,” October 2009. [3] K. Nashimoto, “PLZT Waveguide Devices for High Speed Switching and Filtering,” The Optical Fiber Communication Conference and Exposition and the National Fiber Optic Engineers Conference (OFC/NFOEC 2008), OThE4, April 2008. [4] K. Ashizawa, K. Tokuhashi, D. Ishii, S. Okamoto, N. Yamanaka, E. Oki, “Efficient Singlecast / Multicast Method For Active Optical Access Network Using PLZT High-speed Optical Switches,” - 26 - 11th International Conference on High Performance Switching and Routing (HPSR 2010), pp. 14-19, June 2010. 第5回PN研究会学生ワークショップ 2011年 3月 1日 社団法人 電子情報通信学会 GMPLS を用いた自律制御型省エネルギーネットワーク MiDORi システムの実装 an Inplementation of Autonomous Energy Efficient Network MiDORi System Using GMPLS 野村 勇輝 † Yuki NOMURA 丸川純平 † 米津 遥 † Jumpei MARUKAWA Haruka YONEZU 石井 大介 † 岡本聡 † Daisuke ISHII Satoru OKAMOTO 竹下 秀俊 † Hidetoshi TAKESHITA 山中直明 † Naoaki YAMANAKA 追川 裕治 † † Yuji OIKAWA † 慶應義塾大学理工学部情報工学科 Dept. of Information and Computer Science, Faculty of Science and Technology, keio University † † 慶應義塾大学/OA 研究所 Keio University/OA Laboratory Co., Ltd. 1 まえがき 現在,インターネットを支えるネットワークやデータ センタの消費電力量は増加の一途を辿っている.日本国 内の 2010 年におけるルータの消費電力は 130 億 kWh/ 年とされており,原子力発電所二基分に相当する電力消 費量となる.サーバーやルータなどの機器自体の省エネ ルギー化が積極的に行われているが,トラヒックエンジ ニアリング (TE) によりネットワークのリンクを積極的に 削減していく,ネットワーク側からのアプローチによる 省エネルギー化も有効な手段として検討が行われている [1].そこで我々は,PCE(Path Computation Element) を用い,ダイナミックに TE を行うことでネットワー クの省エネルギー化を実現する MiDORi(Multi-(layer, path, and resources) Dynamically Optimized Routing) を提案している [2]. 本稿では,GMPLS(Generalized Multi Protocol Label Switching) [3] を用いた自律制御型 MiDORi ネットワー クアーキテクチャの実装を報告する. 2 自律制御型 MiDORi ネットワーク 本研究では,自律制御によりパス設定およびポート電 源制御が可能なアーキテクチャとして GMPLS を用いた. 3 MiDORi ネットワーク概要 MiDORi ネットワークでは,TE を用いて特定リンク にトラヒックを集約し,未使用リンクのポート電源を落 とすことで省エネルギー化を実現している. 図 1 に,トラヒック集約によるネットワーク省エネル ギー化を示す.ネットワーク内のリンクの消費電力は, 流れているトラヒック量に関係なく一定である.した がって,ネットワークのトラヒック量が少ない場合,特 定リンク上にトラヒックを集約し未使用リンクの電源を OFF にすることで省エネルギー化を図ることが可能で ある. 3.1 自律制御型 MiDORi ネットワークアーキテク チャ 本アーキテクチャは,PCE および NM(Network Manager) で構成されるマネジメントプレーン,GMPLS が 動作するコントロールプレーン,そしてスイッチで構成 されるデータプレーンから成る. 図 2 に自律制御型 MiDORi ネットワークアーキテク チャの概要を示す.本アーキテクチャでは,GMPLS の主 要プロトコルのうち,シグナリングに RSVP(Resource reservation Protocol),ポート電源制御に LMP(Link Management Protocol) を使用した.GMPLS はコント ロールプレーン上でパスを確立し,データプレーン上の スイッチのポートに VLAN および電源の設定を行う.以 下の手順に基づいて省エネルギーネットワークを再構成 する. 1. 一定時間ごとにネットワーク内で転送されているト ラヒックを VLAN(Virtual Local Area Network) パ スごとにモニタリング. 2. PCE において省エネルギートポロジを導出 [4]. 3. 計算結果を基に NM がコントロールプレーン上のパ スの送信元ノードに経路情報を通知し,RSVP によ るパスの再設定. 4. 対応するデータプレーン上のスイッチのポートに VLAN 設定および LMP による電源制御. 3.1.1 自律制御型 MiDORi ネットワークの実装 以下に本アーキテクチャにおける実装内容を示す. • コントロールプレーンのノードに GMPLS ソフトウェ ア導入 • NM との連携 • 開発した MiDORi スイッチ [5] との連携 図1 トラヒック集約によるネットワーク省エネルギー化 - 27 - • 市販されている AlaxalA スイッチ [6] との連携 図 2 自律制御型 MiDORi ネットワークアーキテクチャ 本アーキテクチャでは,コントロールプレーン上の ノードが隣接ノード情報を保持するため,NM は送信元 ノードにあて先までの経路情報を送ることで自律的にパ スの設定が可能である. 図5 動作結果 図6 動作結果 3.2 動作実験 図 3,図 4 に実験ネットワークを示す.図 5 に,ノー ド 50.50.50.1 が送信元,ノード 50.50.50.4 があて先の VLAN100 のパスを確立する場合の動作を示す.図 6 に おいて,コントロールプレーン上で送信元からあて先ま でのパスが確立し,対応するデータプレーン上のスイッ チのポートに VLAN 設定が実行されていることが確認 できた. 結論 現在,インターネットを支えるネットワークやデータ センタの消費電力量は増加の一途を辿っており,ネット ワークの省エネルギー化が重要な課題となっている.そ こで我々は,TE を用いて特定リンクにトラヒックを集約 し,未使用ポート電源を OFF することで省エネルギー 化を実現する MiDORi ネットワークを提案している.本 稿では,GMPLS を用いた自律制御型 MiDORi ネット ワークアーキテクチャの実装を報告した. 4 図3 謝辞 本研究の一部は,総務省が進める PREDICT プログラ ムの成果である.また本発表内容は,科研費 22240004(A) の助成を受けたものである.関係者各位に感謝する. 実験ネットワーク 参考文献 [1] 荒川豊, 石井大介, 津留崎彩, 山中直明, 石川浩行, 斯 波康裕, “ ネットワークの低消費電力化に向けた網 再構成手法, ”電子情報通信学会フォトニックネット ワーク研究会, Vol. 108, No. 183, pp. 13-18, August 2008. 図4 [2] 慶 應 義 塾 大 学 理 工 学 部 情 報 工 学 科 山中 研 究 室, MiDORi Network Technologies, http://midori.yamanaka.ics.keio.ac.jp/. 実験ネットワーク - 28 - [3] 岡本 聡, 石井 大介, 山中 直明, 大木 英司,“ MiDORi GMPLS プロトコル拡張の提案, ”電子情報通信学会 2010 年総合大会, No. B-12-5, March 2010. [4] H. Yonezu, K. Kikuta, D. Ishii, S. Okamoto, E. Oki, N. Yamanaka, “ QoS Aware Energy Optimal Network Topology Design and Dynamic Link Power Management, ”36th European Conference and Exhibition on Optical Communication (ECOC2010), No. Tu.3.D.4, September 2010. [5] 株式会社 allgreen networks, ギガビット ECO レイヤ 2 スイッチ, http://www.allgreen-networks.com/. [6] アラクサラネットワークス株式会社, AX6708S, http://www.alaxala.com/jp/. - 29 - 第5回PN研究会学生ワークショップ予稿集 2011年 3月 1日 発行 【学生代表】 大野寛明 佐藤丈博 中田侑 名古屋大学大学院 工学研究科電子情報システム専攻,М1 慶應義塾大学大学院 理工学研究科開放環境科学専攻,М1 大阪大学大学院 情報科学研究科情報ネットワーク学専攻,М1 写真協力:(社)鹿児島県観光連盟(http://www.kagoshima-kankou.com/) 表紙の写真は「鹿児島市街地と桜島(城山から)」 裏表紙の写真は「西郷隆盛 立像」を加工 龍 わ馬 しブ のー はム ずの 次 は 来 てま くた れ鹿 で児 ご島 わに す !!