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木造と鉄筋コンクリート造との 併用構造の庁舎における

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木造と鉄筋コンクリート造との 併用構造の庁舎における
木造と鉄筋コンクリート造との
併用構造の庁舎における構造設計フローの一事例
2011 年 7 月
本事例は、2010年度「公共建築物における木造による標準的な設計手法及び技術基
準に関する調査検討業務」において、重要な財産・情報を保管する室を鉄筋コンクリート
造とし、その他を木造とした併用構造の庁舎について、構造設計を行う場合の構造設計フ
ローの一事例として整理したものである。
1. 一般事項
建物概要
建物名称
併用構造による標準的な仕様の庁舎
建物用途
事務庁舎(事務所)
延べ面積
788.41㎡
建物最高高さ
9.01m(構造設計用)
建物最高軒高
7.51m
基準基礎天端
外周部G.L.+400mm,建物内部G.L.+100mm
階数
地上
2
階
地下
-
階
基礎
鉄筋コンクリート造
上部構造
木造と鉄筋コンクリート造の併用構造
構造
-1-
2. 設計方針
2.1 構造計画・検討方針
(1) 構造計画
①
本建物は、延べ面積500㎡以上かつ軒の高さ9m以下かつ高さ13m以下の木造と鉄筋コンク
リート造を平面的に併用した2階建ての法20条二号に相当する建築物であり、ルート2以上
の計算が必要で、かつ構造計算適合性判定が必要になる。よって、昭55建告第1791号第1
の規定により建築物の地震に対する安全性を確かめる。【2007年版建築物の構造関係技術
基準解説書P.20<表2.2-1>】
②
2以上の構造が異なるものが相互に応力を伝達するため、鉄筋コンクリート造の構造計算
ルートは木造と揃えルート2-1とする。また、鉄筋コンクリート造は木造の水平力を全て
負担すると仮定し設計を行う。【2007年版建築物の構造関係技術基準解説書P.412<6.9.3
>】
③
平面形状は、北側の鉄筋コンクリート造部分と南側の木造部分を組み合わせた長方形であ
る。立面形状は、鉄筋コンクリート造部分が陸屋根の矩形、木造部分が片流れ屋根が載る
形状である。
④
木造の鉛直構面は、X方向を筋かいで構成する。Y方向は筋かいを設けず、木造部分の水
平力を全て鉄筋コンクリート造に負担させる。また、筋かい構面はA通りの一軸のみとし、
この筋かい構面が木造部分の半分の水平力を負担するものと仮定し設計を行う。【2007年
版建築物の構造関係技術基準解説書P.412<6.9.3>】
⑤
水平構面(床構面及び屋根構面)は、はり及び受け材に構造用合板の四周を釘打ちする仕
様とする。
⑥
鉛直構面の耐力壁の柱頭柱脚と筋かい端部、及び水平構面の横架材接合部は、構面の存在
応力を有効に伝達できる接合金物を用いて接合する。
【P.8~13の伏図・軸組図を参照。】
-2-
2.2 検討方針
木造と鉄筋コンクリート造の平面的な併用構造の設計方針を仮定断面算定時と詳細設計時に分
けて示す。【設計フローについては、4.「構造計算に基づく検討手順」を示す。】
(1)仮定断面算定時
木造部分と鉄筋コンクリート造部分を分けて検討する。
■木造部分の検討(木造単体モデル)
① ゾーニングの考えより、「木造重量の半分から求まる地震力 QW0.5」をA通りの筋かい構面に
負担させる。
② 昭 55 建告第 1791 号第 1 第一(以降、β割増)より、①から求まるA通りの筋かい構面の地
震力による応力を 1.5 倍(割増の最大値)する。
③ ②で得られた応力でA通りの筋かい構面の接合部の設計を行う。当該部分はβ割増がされて
いるため、接合部の靱性係数は、接合種別JAが 1.0、JBが 0.9 とする。【昭 55 建告第 179
1 号第 1 第二の確認に相当】
④ Y方向の大梁接合部は「木造全重量から求まる地震力 QW」で設計を行う。当該部分はβ割
増のかからない接合部でかつ、当該部分の破断により部分崩壊を起こす接合部のため、さら
なる余裕をもたせた設計が必要な接合部と位置付け、接合部の靱性係数を、接合種別JAが
1.0、JBが 0.75 とする。【昭 55 建告第 1791 号第 1 第五の確認に相当】
⑤ 水平構面は、「木造全重量から求まる地震力 QW」を水平構面端部に到達するせん断力とみ
なし検討を行う。ここで、鉄筋コンクリート造に水平構面を接続する合板受け材の接合部に
関しては、当該部分の破断により全体崩壊を起こす接合部と考えられるため、さらなる余裕
をもたせた設計が必要な接合部と位置付け、接合部の靱性係数を、接合種別JAが 1.0、J
Bが 0.75 とする。【昭 55 建告第 1791 号第 1 第五の確認に相当】
⑥ 接合部の引張及び圧縮剛性を適切に評価して応力変形計算を行うために、③、④の接合部に
ついて軸方向バネを算出する。
⑦ A通りの筋かい構面の基礎は、②のβ割増から得られる応力で計算を行う。
■鉄筋コンクリート造部分の検討(鉄筋コンクリート造単体モデル)
⑧ 鉄筋コンクリート造部分は「木造全重量から求まる地震力 QW」を負担すると考え、B通り
に水平力を与える。さらに、B通りに木造部分から伝達する鉛直荷重を与え、構造計算を行
う。
-3-
■木造部分の接合部の靱性係数について
木質構造設計規準・同解説 -許容応力度・許容耐力設計法-(日本建築学会)P.234 より、接
合部の終局性状を考慮して短期の応力に対する確保すべき安全率は以下の①、②に分類する。
①通常の設計
接合種別
安全率
安全率の比
靱性係数 jKr
JA
1.50 倍
1.00
1.00
JC※1
2.00 倍
1.33
0.75
JB
1.65 倍
1.10
0.90
②さらなる余裕をもたせた設計(地震力を受ける接合部)
接合種別
安全率
安全率の比
靱性係数 jKr’ ※2
JA
1.50 倍
1.00
1.00
JC※1
3.00 倍
2.00
0.50
JB
2.00 倍
1.33
0.75
※1 木質構造設計規準・同解説-許容応力度・許容耐力設計法-(日本建築学会)P.226 に「な
お,地震時のエネルギー吸収を接合部に期待する場合は,JAまたはJBの接合種別のものを用
いる。」とあるため、接合種別JCの接合部は採用しない。
※2 地震力を受ける接合部でさらなる余裕をもたせた設計をする場合は、靱性係数 jKr’を採用す
る。
ここで、ラーメン架構のように不静定次数が高い構造形式の接合部(終局時の靱性を確保した
ものに限る)や昭 55 建告第 1791 号第 1 の規定に従う場合の接合部は①の靱性係数で設計を行う。
ただし、対象とする接合部の破断によって構造体が不安定になり、全体崩壊もしくは部分崩壊
を起こす恐れのある接合部は②の靱性係数で設計を行う。
靱性係数による整理について
木質構造設計規準・同解説 -許容応力度・許容耐力設計法-(日本建築学会)P.234
602.1 一般事項(2)接合部[全体]の解説では、接合部[全体]を計算する際に、靱性
係数 jKr を乗じて計算することとしている。
例として、ボルト接合部における接合部[全体]の設計用許容せん断耐力(Pa)は、
木質構造設計規準(6.21)式より、
1
Pa= jKr・jKd・jKm・Pu0
3
(6.21)
で計算される。
設計実務において、終局耐力の短期許容耐力に対する安全率で整理するより、靱性係
数 jKr で安全率を整理すると設計が容易になるため靱性係数で整理することとする。
なお、靱性係数で整理をすることによって、靱性係数自体が接合部の安全率になるた
め、安全率は 1.00 でよいことになる。
-4-
(2)詳細設計時
木造部分と鉄筋コンクリート造を合成(一体モデル)して検討する。なお、接合部の引張及び
圧縮剛性を適切に評価して応力変形計算を行うために、詳細設計においては、軸方向バネを考慮
した計算を行う。
① 構造計算ルートはルート 2 とし、木造とその他の構造を併用する建築物であるため、昭 55 建
告第 1791 号第 1 の規定により建築物の地震に対する安全性を確かめる。
・ X方向に関しては、鉄筋コンクリート造と木造の筋かい構面の各階の水平力負担比でβ
を算出しβ割増の検討を行う。(具体的には、接合部の靱性係数を、接合種別JAが 1.
0、JBが 0.9 とする。)
・ Y方向に関しては、木造の筋かい構面が存在せず、β割増の検討ができないため、地震
に対する安全性の確認として、木造部分の地震力を鉄筋コンクリート部分に伝達する接
合部に対し、降伏耐力及び靱性と終局耐力を含む評価を行う。(具体的には、接合部の
靱性係数を、接合種別JAが 1.0、JBが 0.75 とする。)
② X方向地震力について、「通常の荷重ケース(C0=0.2)」に加え、木造部分を「β割増
した荷重ケース」を設ける。ここで、
・ 前者の「通常の荷重ケース」は層間変形角≦1/200 の確認、剛性率≧0.6 の確認及び偏
心率≦0.15 の確認用
・ 後者の「β割増の荷重ケース」は木造の構造耐力上主要な部分の許容応力度の確認及び
接合部の確認用
と位置付ける。
③ 鉄筋コンクリート造部分(基礎を含む)について、「β割増の荷重ケース」により得られる
応力により再計算を行う。
-5-
3. 構造計算フロー
構造計算フローを以下に示す。構造計算ルートはルート 2 とし、木造とその他の構造を併用す
る建築物であるため、昭 55 建告第 1791 号第 1 の規定により建築物の地震に対する安全性を確か
める。
軸組工法の構造計算フロー
ス タ ー ト
高さ≦13m,軒の高さ≦9m
階数≦2、延べ面積≦500㎡
かつ、住居系(宿舎等)用途又は平
屋に限る
国土交通大臣が認める計算
(限界耐力計算 等)
判断※1
建築物の規模・用途
その他
判断※1
仕 様 規 定/令43条、令46条3項、平12建告1460号については、ただし書きを適用する。
耐久性等関係規定
一次設計
一次設計
(許容応力度の確認)
No
Yes
集成材等建築
とするか
不要
高さ≦13m
軒の高さ≦9m
No
Yes
規模等による
構造計算適合判定の
要否
層間変形角の確認※3
層間変形角≦1/200
ねじれの検討※4
必要
不要
高さ≦13m
軒の高さ≦9m
許容応力度計算に
よる確認
集成材等建築
とするか
規模等による
構造計算適合判定の
要否
必要
層間変形角の確認
層間変形角≦1/200
層間変形角の確認※3
層間変形角≦1/200
ねじれの検討※4
高さ>31m
高さ
二次設計
高さ≦31m
偏心率≦0.3
判断※1
偏心率≦0.3
判断※1
ルート②
剛性率≧0.6
偏心率≦0.15
塔状比≦4
ルート③ へ
No
Yes
筋交いのβによる
水平力の割増し
筋交い接合部の
破壊防止
保有水平耐力の確認
Qu≧Qun
Qun=DsFesQud
転倒の検討
(塔状比>4の場合)
軸組工法(軸構造系)とする場合は、大地震動時の変形を検討する。
ル ー ト ①
ル ー ト ②
ル ー ト ③
エ ン ド
注)
及び下線部は、法令等には規定がないもを示す。
※1 判断とは設計者の設計方針に基づく判断であり、例えば31m以下の建築物であってもルート③の
計算としてもよいことを表している。
※2 耐震計算(令第3章第8節)には含まれないが参考として示したものである。
※3 C0≧0.3として許容応力度計算を行った場合は不要である。
※4 偏心率が0.3を超える場合は保有水平耐力の確認を、また、偏心率が0.15を超え0.3以下の場合は、
Feによる外力割り増し、ねじれ補正又は保有水平耐力の確認のいずれかを行う。
-6-
4. 構造計算フローに基づく検討手順
構造計算フローに基づく、混構造建築物の検討手順を示す。
木造の仮定断面の決定
鉄筋コンクリート造との境界面をピン
支点とする木造部分の立体モデル(木
支点反力の算出
仮定断面
造単体モデル)を作成
(木造重量と地震力)
鉄筋コンクリート造(基礎を
木造の接合部の設計
含む)の断面と壁配置の決定
軸方向バネの算出
鉄筋コンクリート造
「通常の荷重ケース(C0=0.2)」で鉄筋コン
部分の壁の位置によ
クリート造部分と木造部分(軸方向バネ考慮)を
る偏心率の調整
合成した立体モデルを作成
許容応力度の確認及び接合部の確認
偏心率≦0.15 の確認
層間変形角≦1/200 の確認
OK
「β割増の荷重ケース」で鉄筋コンクリート造部
分と木造部分(軸方向バネ考慮)を合成した立体
モデルを作成
鉄筋コンクリート造部分(基
木造部分の許容応力度の
礎を含む)の再計算
確認
設計完了
※1
木造の全重量から求まる地震力 QW をY6通りの2階(2FQW)とR階(RFQW)に入力する。
RC造はC0=0.2で設計を行うが、Y1通りの筋かい構面の基礎については、β割増の応力で計算を行う。
-7-
詳細設計
剛性率≧0.6 の確認
NG
6. 図面
伏図・軸組図・接合部詳細図を示す。
-8-
-9-
- 10 -
- 11 -
- 12 -
- 13 -
- 14 -
- 15 -
- 16 -
- 17 -
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