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「脳出血」と診断された患者さんへ
これか ら 治 療 を 受 け られる 方へ 疾患と治療の説明書 のう しゅっ けつ 脳出血 ◎あなたの名前を書 いてください 社会福祉法人 恩賜 財団 済生会熊本病院 目 次 ■ 脳出血について ■ 脳出血の症状について ■ 検査について ■ 脳出血の治療法と現状について ■ リハビリテーションの段階について ■ 入院後の経過 ■ お薬について ■ 食生活について ■ 当院でのリハビリテーションについて ご家族にも安全にできる体の動かし方 ■ 退院後の日常生活の注意点 ■ 回復期リハビリ病院について ■ 医療相談室のご案内 介護保険・社会資源について ■ 入院医療費の目安 1 担当者 説明日 脳出血 疾患と治療の説明書 連携情報 2 「脳出血」 と診断された患者さんへ この「脳出血 疾患と治療の説明書」は、 脳出血の疑問に対して理解を深めると同時に、 私たち病院のスタッフが患者さんやその家族に 知っておいて欲しいことをお伝えするためのものです。 説明を聞き、あなた自身でメモをとったり、医師が書き込みをすることで、 あなただけの説明書になります。 ■脳出血とはどんな病気? 脳 の 内 部にある血 管 が 破れて出 血し、血 のかたまり ( 血 腫 )ができる状 態を脳 出 血と呼び ます。血腫による脳の破壊や圧迫によって脳の機能障害を引き起こします。 ■脳出血の原因 脳出血のほとんどは高血圧が原因です。高血圧の状態が続くと脳内部の細小動脈に動脈 硬化が生じてもろくなり、ある日突然に破れて出血します。これを高血圧性脳出血と言います。 高血圧の他に脳動静脈奇形や血管腫、モヤモヤ病、硬膜動静脈瘻といった血管病変から出血 することも稀にあります。 ■出血部位 高血圧性脳出血は出血部位によって被殻出血、視床出血、皮質下出血、小脳出血、脳幹出血 などに分けられます。 3 脳出血 疾患と治療の説明書 脳出血の病態生理 脳室内穿破 脳出血 急性水頭症 急性脳圧亢進 脳浮腫 脳幹圧迫破壊 脳機能障害 全身合併症 脳障害回復 (肺、胃腸、心、腎など) 生 存 脳ヘルニア 死 亡 4 脳出血の症状 脳のどの部分にどの程度の出血が起きるかによって症状に差があります。 多くの場合は急に気分が悪くなり、頭痛、めまい、吐き気などを訴えます。 また脳の機能障害として半身の麻痺や感覚障害、言語障害、 意識障害などを種々の程度伴います。最悪の場合には命を失うこともあります。 わ … あ … わ … 急に口がもつれて ろれつが回らなくなる、 急に言葉が出なくなる 急に片方の顔や 寝ぼけたように、 手足がしびれる、 意識がもうろうとする 力が入らなくなる 急に片方の目が 見えにくくなる 急に歩けなくなる、 意識がなくなる 足が思うように 動かなくなる めまいがしたり、 バランスがとれなくなる (三菱ウェルファーマ株式会社) 5 脳出血 疾患と治療の説明書 脳出血の検査 頭部CT検査で脳出血の部位や程度を調べます。 高血圧性脳出血以外の原因が想定される場合には、 頭部MRI検査や脳血管造影を行うこともあります。 ■CT X線を使って脳の断層像を映し出します。 ■MRI 電磁波を使って脳の断層像を映し出します。 CTより鮮明な画像が得られます。 ■血管造影検査 カテーテルという細い管を動脈内に入れて、 造影剤を流して脳動脈を撮影します。 血管の状態が詳細にわかります。 6 治療法 脳出血急性期の治療として保存的治療と外科的治療があります。 保存的治療とは血圧をある程度下げて再出血を防止し、高浸透圧性脳圧降下剤などの薬物に よって脳浮腫の軽減を図る治療です。意識障害が軽い場合や血腫量が少ない場合に行う治療法 です。 外科的治療とは手術で血腫を除去し脳の圧迫を軽減させる方法です。大きな血腫で意識障害 が強く、生命の危険性が高いと判断された場合に行います。局所麻酔で行うCT誘導定位脳手術 と全身麻酔で行う開頭手術があり、当院では主に前者を行っています。 当院における脳出血治療の現状 脳出血患者数の推移 350 300 250 200 150 100 50 0 2003年 2004年 2005年 2006年 年齢分布(2006年) 100 80 女性 男性 60 40 20 0 7 30∼39 40∼49 50∼59 60∼69 70∼79 80∼89 90∼ 脳出血 疾患と治療の説明書 その他 3% 出血部位(2006年) 被殻 28% 皮質下 21% 脳幹 7% 視床 25% 小脳 9% 混合 7% 治療法(2006年) 開頭術 1% 脳室ドレナージ 2% 定位脳手術 10% 保存的 87% 自宅退院 9% 退院時転帰(2006年) 死亡 19% リハビリ転院 72% 8 脳出血リハビリテーションの段階 リハビリテーションには、 3つの病期があります。 急性期 回復期 維持期 時 期 発症から 1∼2週間 1∼6ヵ月 3∼6ヵ月以降 治療施設 急性期病院 リハビリテーション専門病院 リハビリテーション専門病院、 介護保険対応の病院・施設、 在宅 廃用症候群の予防 リスク管理 (座位・運動負荷) 合併症管理 機能回復訓練 心理的支持 維持期への橋渡し 機能維持 介護負担の軽減 環境調整 社会資産の活用 リハビリテーション のポイント 再発予防とリハビリテーション (大塚製薬株式会社) 半身麻痺や言語障害がある場合には、早期よりリハビリを開始します。 脳出血急性期の治療が終了し全身状態が安定しておれば、リハビリ専門の病院(主に回復期 リハビリ病院) に転院していただき本格的なリハビリを行います。 深部静 脈 血 栓 症とは 病 態 対 策 9 足を動かせない状態等が長く続くと、足などの表面から見えない静脈に血 の塊(血栓)ができることがあります。これが深部静脈血栓症です。血栓が肺や 心臓に運ばれると突然の呼吸困難になり、これを肺血栓症といいます。当院で の発生頻度は0.08%程度です。 未然に防げるように当病棟等でも様々な予防法を行っています。患者さん それぞれに応じた処置を行いますのでご了承下さい。 処置を行う場合は主治医より説明を行いますので同意書の記入をお願い致し ます。 ベッド上で寝ているときは足首の運動を積極的に行いましょう。 特に足首の曲げ伸ばしは予防に効果的です。 脳出血 疾患と治療の説明書 セカンドオピニオンについて 当院での説明で納得のいかない方、また、他の医療機関の意見や、手術成績を知りたい場合 は、他の医療機関を受診してもかまいません。インターネットでも手術に関して掲載してしている ところもありますので、調べられてもかまいません。 このように、他の施設の意見を聞くことを“セカンドオピニオンを求める” といいます。ご希望が あれば紹介状をお書きしますのでお申し出下さい。 MEMO 10 日 付 安静度 入院日 2日目 頭部を30度あげる ことができます 頭部を90度あげる ことができます 3日目 4日目 歩いたり車イスに座ることができます 食 事 飲食できません 食事の硬さはご希望を伺います 朝・昼・夕通常の食事です 水飲みに問題がなければ 食事が始まります 清潔 入浴時間 9時∼16時30分 温かいタオルで 身体を拭きます 入浴ができます 排泄 ベッド上で尿器・便器を 使用します トイレ・ポータブルトイレを 使用できます お薬 痛みを我慢する必要はありません 現在持っている薬を 確認します 検査 頭部CT 説明指導 治療処置 11 ①主治医から 入院についての 説明があります。 ②看護師から入院中の 過ごし方について 説明があります。 痛みがある場合には 看護師に伝えてください 痛み止めを使います 点滴があります (手や首に点滴の管が 入っています) 尿量を測定しています 尿器またはポータブルトイレを 使用してください 頭部CTの結果で 一般病棟へ移動になります 転院先の医療機関をどこにするか 主治医または看護師が確認します。 脳出血 疾患と治療の説明書 5日目 6日目 7日目 8日目 理学療法士によるリハビリがあります 体を拭いたり、入浴をしたりと 体調にあわせて変更できます 便秘がちな方は お知らせください 入院中の飲み薬は 主治医の指示に 従ってください 処方された薬は 忘れずに飲みましょう 頭部CT ※診断書や証明書が 必要な方はお早めに スタッフステーションへ ご依頼下さい 血液検査 医師より頭部CTの結果説明・ 今後の方針等について説明があります 転院先の希望等がある方はお知らせください 状況に応じて内容が変更になることがあります 12 日 付 9日目 10日目 11日目 12日目 安静度 退 院 食 事 朝・昼・夕 通常の食事 清潔 排泄 お薬 薬がある方は自分で管理していただくために 薬剤師より薬の説明があります 処方された薬は 忘れずに飲みましょう 検査 説明指導 治療処置 13 ※診断書や証明書が 必要な方はお早めに スタッフステーションへ ご依頼下さい ※順調に経過した場合 入院12日目に退院・転院です 脳出血 疾患と治療の説明書 急性期病院では 救急外来にて診察を行い、頭部CTやレントゲン・採血などの検査を行います。 入院日 脳 出血の診断がついたら意識状態や手足の麻痺の状態により一般病棟または集 中治療室への入院となります。 病棟へ入院されたら、再出血の予防のために安静にしていただき点滴を開始し ます。また、医師の指示された血圧が守られるように、看護師が血圧測定を行い、 意識状態や麻痺の悪化がないかの確認を行います。 安静が必要なため、排尿や排便時はベッド上で尿器や便器を使用することとなり ます。また全身の状態によっては、心電図モニターの使用や酸素投与を行います。 ご 家 族 へは、医 師 が 患 者さん の 病 状 説 明を行 い 、看 護 師 が 入 院 病 棟 の 説 明を 行います。 今まで飲んでいる薬がありましたら、看護師まで渡して下さい。また、血が止まり にくい薬を飲まれている場合は、医師の指示があるまでしばらく中止します。 集中治療室に入院された方は、午前中に頭部CTの検査を行い、その結果で一般 入院 2日目 病棟への移動の許可がでます。 (病室の空き状況によりますので必ずこの日とは 限りません。) 一般病棟へ入院中の方も、頭部CTの検査を行います。 運 動 : 現在の状態にあった訓練を、担当の理学療法士が開始します。 清 潔 : 医師からの入浴許可がでるまでは、暖かいタオルで体を拭きます。 安 静 : 頭を90度起こすことができます。 食 事 : 全身状態をみて、食事を開始します。 内 服 : 今まで飲まれていた薬や、今回追加になった薬を開始します。 頭部CT検査の結果として再出血や出血の拡大などの有無を確認をした後、説明 を行います 14 入院 3日目 運 動 : 車椅子移動や歩行が可能となります。 清 潔 : 状態により、入浴ができるようになります。スタッフが案内します。 運 動 : 車椅子移動や歩行が可能となります。 入院 4日目 清 潔 : 状態により、入浴が許可されます。スタッフが案内します。 状態により、転院を希望される方は、入院4日目頃に転院先へ連絡を 行 い ま す( ご 希 望 の 病 院 が あ れ ば 、医 師 か 看 護 師 へ 伝 え てくだ さ い)。 採血(朝) と頭部CT (午後)の検査を行います。 入院 7日目 入院前まで血が止まりにくい薬を飲まれていた方は、医師の指示により開始に なります。 開始薬の説明は、看護師または薬剤師が行います。 ご家族の方へ 脳疾患患者では、後遺症として麻痺が残り日常生活が不自由になる場合があります。その為、 長期的にリハビリが必要となり、ご家族の協力が必要となってきます。 現在の医療体制では脳疾患患者において、回復期リハビリ病院での入院期間は6ヶ月 (180日) までと決まっています。また、回復期病院から維持期病院や施設への入所も空きを待っていると いうのが現状です。その為、回復期病院から維持期病院や施設へ移るまでに、一度自宅へ退院し なければならなくなる可能性がありますので、社会資源を知っておくことも重要です。 社会資源についてはこのパンフレットの後半で説明いたします。 15 脳出血 疾患と治療の説明書 MEMO 16 お薬について 過去に薬(内服薬、注射、外用剤、などすべての薬剤) を使用して、アレルギー症状を経験された ことがあるかたは、必ずお知らせください。 現在、使用しているお薬がある方は必ず持参してください(内服薬、注射、外用剤、目薬などす べての薬剤)。お薬がない場合はお薬の説明書を持参されてもかまいません(この場合、なるべく 最近にもらった説明書をお持ちください)。内容を確認させていただきます。 中止薬について ■ワーファリン錠 1mg 【同一成分薬】 アレファリン錠 サモファリン錠 ワルファリンカリウム錠 ワルファリンK錠 ワーファリン錠5mg 他 ■バイアスピリン錠 100mg 【同一成分薬】 アスファネート錠81mg ゼンアスピリン錠 ニトギス錠81mg バファリン81mg錠 バッサミン錠81mg ファモター81mg錠 他 17 ■パナルジン錠 100mg 【同一成分薬】 パナルジン細粒 10% イパラジン錠 パナピジン錠 ジルペンダー錠 パラクロジン錠 ソーパー100mg錠 ピエテネール錠 ソロゾリン錠 ピルロジン錠 チクピロン錠・細粒 ピクロナジン錠 ニチステート錠 ヒシミドン錠 ネオピジン錠 ピーチロン錠 パチュナ錠 ファルロジン錠 他 脳出血 疾患と治療の説明書 ■プレタール錠 100mg プレタール錠 50mg 【同一成分薬】 アイタント錠 シロステート錠 プレスタゾール錠 他 ■プラビックス錠 75mg プラビックス錠 25mg ■ドルナー錠 20μg 【同一成分薬】 プロサイリン錠20 ベストルナー錠20 セナプロスト錠20μg ベプラリード錠20μg ドルナリン錠20μg ベラストリン錠20μg プロスナー錠20 ベルナール錠20μg プロルナー錠20 ベルラー錠20μg 他 ● 当院採用薬以外の抗血栓薬はここに記載できていない可能性もあります。 ● 詳しくは薬剤師までお問い合せください。 18 食生活について 近年では、高血圧、肥満、糖尿病、高脂血症、痛風といった 生活習慣に起因する病気が増えています。 こういった生活習慣病の要因には、過食、飲酒、喫煙、運動不足などがあげられますが、 これらが複数に重なる事で、動脈硬化という血管の老化を招きます。 動脈硬化予防のためにも食生活をはじめとする日々の生活習慣の見直しが重要となります。 食事療法のポイント ■食べ過ぎに注意しましょう。 食べ過ぎは、余分なエネルギーを体脂肪に変え、肥満の原因となります。 肥満(特に内臓脂肪型肥満)になると、血圧、血糖、尿酸、血清脂質の値も上昇しやすくなり ます。腹八分目を心がけましょう。 ■塩分のとり過ぎに注意しましょう。 塩分のとり過ぎは高血圧の直接の原因となります。 高血圧がある方は、1日の塩分量を6g以下にする事が推奨されています。 高血圧でない方も1日10g以下を目標にしましょう。 *減塩の工夫 ・調味料はかけるより、つけて食べましょう。 ・麺類の汁は味見程度で残しましょう。 ・インスタント食品や加工食品は控えましょう。 ■脂肪のとり過ぎに注意しましょう。 肉類の脂身やバター・ラードなどの動物性脂肪のとりすぎは、血液中のコ レステロー ルを上 昇させ、動脈硬化の誘因となります。質や量を考えてとり ましょう。 19 脳出血 疾患と治療の説明書 ■嗜好品のとり過ぎに注意しましょう。 甘い物やアルコールなど、嗜好品の過剰摂取は、生活習慣病の誘発因子です。 食事の量やバランスも重要ですが、嗜好品の摂取が多かった方は、まずはここから見直して いきましょう。 *甘い物に含まれる角砂糖の量 *アルコールの適量 ・スポーツドリンク 3個 ・ビール ・缶コーヒー 4個 ・焼酎25度 110ml(コップ1/2杯) 4.5個 ・日本酒 150ml(コップ3/4杯) ・どらやき 4個 ・ワイン 200ml(コップ1杯) ・ショートケーキ 5個 ・ウイスキー ダブル ・カステラ 6個 ・コーラ 350ml/中1缶 60ml(コップ1/3杯) 脳卒中予防10カ条(日本脳卒中協会) 1.手始めに「高血圧」から治しましょう 「糖尿病」放っておいたら悔い残る 2. 「不整脈」見つかり次第すぐ受診 3. 「アルコール」控えめは薬、過ぎれば毒 4. を止める意志を持て 5.予防には「タバコ」 「コレステロール」 も見逃すな 6.高すぎる お食事の「塩分・脂肪」控えめに 7. 8.体力に合った「運動」続けよう 「太りすぎ」 9.万病の引き金になる 10.脳卒中「起きたらすぐに」病院へ 20 当院でのリハビリテーションについて 人の体は、活動せずに寝たままの状態でいると 筋肉がやせ衰える・関節が硬くなる・心臓や 肺の機能が衰える・床ずれができる などさまざまな不都合が生じてきます。そのため、このよう な状態にしないための治療を行うことも大切なリハビリテーションのひとつです。 その次の段階として、状態が落ち着いていれば一日でも早く座ることを実行します。可能であ ればベッドの上で 寝返りをうつ・起きあがる・安全に立って歩くための訓練を行います。その後、 全身状態が安定し病気の急性期が一段落したところで、さらなる積極的なリハビリテーションの 段階へ移るために転院となります。 動かす際の注意点 ☆ 少しずつ動かす範囲・回数を増やしていきましょう。 ☆ 一回の練習時間は疲れない程度にしましょう。 ☆ 動かすと痛い場合は、医師に相談しましょう。 ☆ 詳しくは担当の理学療法士にお尋ねください。 【肩関節】 21 ①手と肘の上を持ち ひじを伸ばしたまま腕を上げ下ろし ②手とひじの上を持ち 腕を体から90度離す 脳出血 疾患と治療の説明書 【前腕】 ひじをついて 外まわし 手首を持ち、 内まわし 【手関節】 手首を支えて、指を後にそらせたり 前に曲げたり 【手指】 親指を外側に広げたり ①親指を外側に広げたり に戻したり 内側に戻したり ②親指の付け根をもって、 ぐるぐる回す 22 【股関節・膝関節】 ①かかとと膝の下を支え、 ゆっくり膝を伸ばして 膝を曲げて 元に戻す 足を頭の方へ近づけ ②かかとと膝の下を支え、 外側に向けたり 膝を90度に曲げて、足を外側に向けたり ③かかとと膝の下を支え、足を外側に開いたり戻したり 【足関節】 ①かかとをもって引っぱるようにしながら 前腕で足を押し 23 足を上から押さえながら、かかとを押す 脳出血 疾患と治療の説明書 ②足首を支え、足を外側に向けたり 内側に向けたり MEMO 24 退院後生活について 運動をしましょう! 運動をすることによって、何がよくなるのでしょう?まず、全身の血液循環がよくなり、それにより 肩こりの 解 消 、疲れにくい 体になります。また徐々に衰えてくる心 肺 機 能や筋 力 の 向 上につな がり、骨も丈夫になります。そのほか、肥満の解消、高血圧や糖尿病の治療に効果的です。日常 生活においては、ストレス解消となり、よく眠れるようになります。 家庭で行う簡単な体操 以下の全ての運動を5∼10回行ってください。 深呼吸 両手を広げ大きくゆっくりします。 ストレッチ ①両手を頭上で組み、背伸びをし、横に倒します。 ②机などを持ち、アキレス腱を伸ばします。 ③体をゆっくりねじります。 ① ② ③ 腕の筋力 ※準備するもの・ ・ ・500mLのペットボトル2本(水を入れたもの) トレーニング ①両手を交互に頭上へ伸ばします。 (ペットボトル体操) ②両手を横に広げ、ゆっくり降ろします。 ③体の前で肘を曲げて上げ下ろし。 ① 25 ② ③ 脳出血 疾患と治療の説明書 脚の筋力 ①膝をまっすぐゆっくり伸ばします。 トレーニング ②足首の曲げ伸ばしをします。 ③立ち座り運動、背筋を伸ばしておじぎして立ちます。 ① ② ③ ウォーキング 歩くことから始めましょう!明るく楽しく安全に。 運動前には血圧を測定し、体調に合わせマイペースで。 どの程度運動がいいの? 普通に会話ができる程度のペース(早足の散歩程度、脈拍数が1分間に100∼120回程度) で1日30分を目標に、最初は15分位から歩いてみましょう。 運動前・実施中の中止の目安 ■安静時 収縮期血圧180mmHg以上 拡張期血圧100mmHg以上 ■不整脈などの胸部症状の異常、頭痛 ■強い腰痛、関節痛 ■体調不良、睡眠不足 26 服装について ■暑い日は必ず帽子をかぶりましょう! 外での 運 動では直 射日光による日射 病 、熱 中 症 の 危 険 が あります。服 装はゆったりとした もので汗を吸いやすく通気性のある素材、色は白っぽいものが適しています。 ■寒い日はニットの帽子、マスクや手袋などを着用しましょう! 寒いからといって、ポケットに手を入れるのはやめましょう。 転倒につながります! ■歩行に適した靴を選びましょう! サンダルやスリッパなどは避けましょう。履きなれた運動靴がいいでしょう。軽くて、つま先 や甲に圧迫感がなく、フィットしたものを選びましょう。 場所・時間帯について ■暑い日は、午前中や夕方などの涼しい時間帯に! ■寒い日は、早朝を避け、気温の暖かい午後や室内で! ■起床直後は避けましょう! 目を覚ましてすぐの運動は、心臓に強い負担をかける恐れがあります。ウォーキングをする 場合には、起床後少なくとも1時間は経過してから軽い運動(ストレッチなど)から始めてく ださい。 ■空腹時の運動は避けましょう! ■場所は、交通量の多いところは避け、公園など歩きやすい場所を選びましょう! 水分摂取について ■こまめな水分摂取を心がけましょう! 運動前後はもちろんのこと、運動中、喉の渇きを感じない ときでも30分おきに水分を摂取しましょう。ペットボトル (500ml)などを持ち歩くといいでしょう。 27 脳出血 疾患と治療の説明書 転倒しにくい環境づくり ◎転倒防止に努めましょう! ※転倒・骨折の悪循環 転倒 骨折 転倒への 恐怖感 活動性の 低下 活動範囲の 制限 筋力の衰え 転倒 骨折 ⇒立ち座りのしやすい高めの椅子に変える (シャワーチェアー)。 ■夜間、寝室からトイレまでの廊下 ⇒フットランプ(足元の照明)の設置。 ■居間の足元の注意 ⇒じゅうたん・コタツ敷き布団の縁・コンセント。 ■玄関の段差 ⇒スノコなどで段差を小さくする。 安全な入浴 ■入浴前後に水分補給を ■42℃以上の湯には入らない ■朝の入浴は避ける ■飲酒後は入浴しない ■脱衣所と浴室の温度差はなるべく小さく 28 回復期リハビリについて 回復期リハビリ病院とは 訓練や治療を行いながら、日常生活動作(ADL)能力の向上を図ります。また、毎日の病棟 生活の中で日常生活訓練を行い、最終的には在宅を目標として専任スタッフが指導や介助を 行います。自宅へ帰られる場合は、その為の社会資源の利用が可能であり、その後の社会復帰 を支援するためのサービスも受けることができます。 *入院後に医療ソーシャルワーカーが説明を行います。 転院先へご持参頂くもの 医師と看護師からの情報提供書、退院証明書、内服薬、および医師の指示がある場合のみ フィルムコピーを持参して頂きます。 移動手段 患者さんが一人で歩くことができ、ご家族の車が用意できるならば、自家用車での移動を おねがいします。それ以外の方は当院車か、転院先から迎えの車が参ります。 転院先では まず、一般病棟へ入院します。その後症状にあった病棟へ移動することになります。 29 脳出血 疾患と治療の説明書 日 付 入院日 2日目∼2週間 1∼2ヶ月 2ヶ月∼ 安静度 清潔 急 性 期 病 院 で 行って い た こ と を 継 続 し ま す 食 事 転倒 骨折 排泄 お薬 検査 X線検査 血液検査 リハビリ 医師の診察があります (初期評価) 病棟内歩行 理学療法士・作業療法士・ 言語聴覚士のスタッフが 機能訓練計画を立てます 説明指導 医療ソーシャルワーカーとの 面接があります 看護師が入院生活の 一日の流れを説明します 日常生活動作自立 14日間の機能訓練結果をもとに リハビリのゴールを設定します 医師より ゴール設定について 説明があります 医師・看護師より 在宅生活指導や 家族指導を行います 30 転院初日 入院受付けをしていただき、必要な検査を行い一般病棟へ入院となります。 そこで医師が診察を行い初期評価を行った後、必要な機能訓練が処方されます。その後、理学 療法士・作業療法士・言語療法士など担当スタッフがそれぞれ評価を行い、訓練計画を立て2日 目以降から訓練を開始します。 入院時は看護師からも患者さんがどのような状態かを把握するために、患者さんやご家族の 方にお話を伺っていきます。 ( 食事・運動・排泄・お薬について) また、入院病棟の一日の生活の流れを説明します。 麻痺や意識状態によっては、転倒の危険性がありますので、ご家族の協力が必要になる場合が あります。 今後の生活や介護保険・社会資源についてなど、情報が必要な方は医療ソーシャルワーカーと 面接をして頂き、情報提供を受けることができます。 2日目以降 それぞれの担当のスタッフが麻痺や意識状態の程度にあった機能訓練を開始します。看護師 は日常生活援助を通して、生活リズムの調整を行い、患者さんがセルフケアできるように指導し ていきます。 入院して2週間リハビリを行った状態をもとに、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語療 法士・医療ソーシャルワーカーでカンファレンスを行い、 リハビリのゴールを設定していきます。 その後、医師から説明を行い、在宅がよいか維持期への転院がよいかの意思を確認します。 訓練は意識状態と麻痺の状態により、いくつかのリハビリコースに分かれており、状態にあわせ て訓練を行います。 患者さんについてのカンファレンスは1ヶ月毎に行い、その都度評価し検討を行います。 31 脳出血 疾患と治療の説明書 回復期リハビリ病棟 合併症など全身状態管理が終了したら、一般病棟から回復期リハビリ病棟へ移動します(入院 時は一般病棟入院ですが、 リハビリは入院時から開始されます)。 状態によっては、麻痺側に使用する装具の検討を行い、装具を使用してリハビリを行うこととな ります。 リハビリテーションの流れ ベッド上訓練 平行棒 靴はき 杖歩行 階段昇降 32 医療相談室のご案内 患者さんやご家族の皆さんのかかえる医療だけでは解決の難しい諸問題に対し、福祉の専門 的な知識や技術を用いて皆さんと一緒に考え、必要なお手伝いをしていくのが、医療ソーシャル ワーカー(福祉相談員)の仕事です。 リハビリのできる医療機関を知りたい。 転院に際し、どこにどのようなリハビリテーションの病院があるのか、パンフレットなどを用いて 情報提供します。 退院後の在宅介護について知りたい。 在宅での介護に関して情報提供いたします。 ○介護保険の申請の仕方 ○介護サービスについて など 医療費の制度について知りたい。 70歳以上の方の「高齢受給者医療制度」 「 老人医療制度」、 70歳未満の方の「高額療養費制度」 など、分かりやすくご説明します。 ※その他、経済的な心配事、療養中の心配事(復職、家庭のことなど)、 身体障害者手帳などの福祉制度の利用の仕方等、お気軽にご相談下さい。 ※ご相談内容や個人の秘密は守ります。 ※ご相談は無料です。 お問い合せ 33 済生会熊本病院(代表) 医療相談室:医療・福祉に関すること TEL:096-351-8000 205番 TEL:096-351-1022(直通) 脳出血 疾患と治療の説明書 介護サービスを受けるためには(介護保険の申請手続き) 市町村の窓口(介護保険課)へ申請 訪問調査 介護認定審査会 自 立 認 定 お体の状態に 重 応じて右記の 要介護 5 重 要支援 2 軽 要支援 1 要介護 4 いずれかに該当 要介護 3 要介護 2 軽 相談窓口 要介護 1 地域包括支援センター 居宅介護支援事業所 ケアプラン作成 介護予防サービス計画の作成 介護予防ケアプランの作成 介護サービス利用 介護予防サービスの利用 介護事業所の利用 対象者:マヒなどの後遺症が残り、日常生活に介護や支援が必要と思われる、 40歳以上の方 ( 介 護 保 険は通 常 6 5 歳 以 上 の 方 が 対 象ですが 、脳 出 血は1 6 種 類 の 特 定 疾 病に該当するため、身体状況に応じて介護保険サービス利用が可能です) サービス内容:施設入所、訪問介護、通所リハビリ、福祉用具のレンタル・購入、住宅改修など 利用料:サービス提供料の1割負担です 認定について:介護保険を申請してから認定まで、およそ1ヶ月程度の日数を要します。 認定されれば、申請日に遡ってサービスの利用が可能です。 ※詳細については医療相談室 医療ソーシャルワーカーにお尋ねください。 34 退院後の外来受診について 筋力低下などを起こさないように早期にリハビリを開始して、元の生活に戻れるようにしていく ことが大切です。 退院後は、 ■当院外来 ■かかりつけ医 のいずれかで経過を診ていきます。ご不明な点についてはいつでも医療スタッフにご相談くだ さい。 ※緊急の場合は、24時間365日対応いたします。 異常時や困った時などは、 電話連絡後に救急外来までお越し下さい。 済生会熊本病院(代表) TEL:096-351-8000 35 脳出血 疾患と治療の説明書 入院医療費の目安(脳出血:保存的治療) 入 院日数 が 1 2日間 の 場 合 の 平 均 的 な 入 院 費 の 目 安です。治 療 内 容や 入 院 期 間によっては 金額が異なる場合があります。 ■全額負担の場合 医療費:約79万円 食事代:1日につき640円( 異なる場合もあります。) ■健康保険を使用される場合 負担割合 医療費の目安負担額 70歳未満の方(3割) 約24万円 70歳以上の方(3割) 約8万5千円 70歳以上の方(1割) 44,400円 ※70歳以上 (3割) の方で自己負担限度額区分が 「一般」 の方は44,400円が負担額になります。 ※食事代や個室代は別料金になります。 ◇食事代・個室料について 食事代:1日につき260円 個室をご利用の方は、 「 個室代」が入院日数分加算されます。 特別個室 一般個室 15,750円(1日あたり) 8,400円(1日あたり) ■高額療養費制度のご案内 健康保険加入者(一部を除く70歳未満)の方は、基本的に 「高額療養費制度」 を利用することが できます。 ※食事代、 個室代、 文書代等の保険外料金は、高額療養費制度の対象となりません。 手続きをされる 場合の注意事項 ※領収証の再発行はいたしておりませんので、 大切に保管ください。 ※詳細については、 ご加入の保険窓口にお問い合わせください。 お問い合せ ご不明な点 がありましたら、お気 軽にお尋ね下さい。 済生会熊本病院 医事室 会計係 TEL:096-351-8375 36 患者さんの権利とお願い 私たちは、患者さんに対し、病状や治療法についてわかりやすく十分な説明を行います。 また、患者さんの同意のもと、患者さんの負担を軽減し、効率的、良質、公平な高度医療を提供します。 〈患者さんの権利〉 1. 全ての患者さんが、それぞれの価値観を尊重され、良質で公平な医療を受けることができます 質の高い医療を受けていただくために、すべての患者さんの価値観を踏まえた、公平で 満足のいく治療を提供します。そのため、当院ではインフォームドコンセントを重視し、患者 さんの意思を尊重した検査や治療を行います。 また、患者さんには、私たちの病院だけでなく他の医療機関でも診察を受けて、どんな 治 療法があるのかなどの説明を受ける権利(セカンド・オピニオンを受ける権利)がありま す。他の医療機関では、当院で実施しない治療法を実施している場合もあります。私たちは、 患者さんが他の医療機関の医師の診察を受けて、十分納得していただいた治療法とその 治療を受ける医療機関を決めていただくことが良いと考えています。ご希望があれば、必要 な書類を準備し、そのような医療機関のご紹介もいたします。何より大切なお体のことです から、ご遠慮なくお申し出ください。 2. 病 状や治 療について説 明を受け、十 分 納 得した上で、検 査 方 法や治 療 法を患 者さん自ら 選択し、同意あるいは拒否することができます 患者さんは病状や治療方針をしっかりと理解した上で、検査方法や治療方法を自ら選択す る権利(自己決定権) を持っています。 私たちは、患者さんに、健康状態や疾患の内容、これからどんな治療が必要になるのか (目的・内容・必要な期間・効果・危険性・副作用など) 、当院における治療法の成績、治る見込み、 担当者の名前、他にはどんな治療法があるのか、医療費のことなど十分にご説明します。 疑問に思われたことは、何でも私たちにお尋ねください。 2. 観察過程で得られた個人の秘密や医療上の情報は保護されます 診療の過程で得た患者さんの個人情報は、徹底して保護されます。当院は責任を持って これを保護し、診療上必要な情報提供以外では決して外部に漏らしません。 〈患者さんの権利〉 1. 患者さん自身の健康に関する情報を、できるだけ正確に医療スタッフに伝えてください 2. 説明を受けても十分理解できなかった事柄については積極的に質問し、指示されたことを守って 治療に専念してください 3. 病院の規則をよく守り、他の患者さんの迷惑にならないよう配慮してください 制作・著作 社会福祉法人 恩賜 財団 済生会熊本病院 脳卒中センター TEL : 096−351−8000 (代表) 改訂版 平成24年12月19日 37 [No.0009-2]