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神経内科 - 平塚市民病院

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神経内科 - 平塚市民病院
け んこ う 湘南2 1
第3 3 号
平塚市民病院だ よ り 編集部
2008 年 8 月 31 日発行
国際規格 I SO14001 認定取得
財団法人 日本医療機能評価機構に よ る 病院機能評価 Ver . 5. 0 認定 JC1079 号
平塚市民病院 〒254-0065 平塚市南原1 -1 9 -1 ℡. 0463-32-0015
神経内科
小出隆司
神経内科は、どのような科ですか?
経内科でどこの病気であるかを見極めることが大切です。その
神経内科は脳や脊髄、神経、筋肉の病気をみる内科です。
上で骨や関節の病気がしびれや麻痺の原因なら整形外科に、
体を動かしたり、感じたりする事や、考えたり覚えたりすること
手術などが必要なときは脳神経外科に、精神的なものは精神
が上手にできなくなったときにこのような病気を疑います。症状
科にご紹介します。また、感じることの中には見たり聞いたり
としてはしびれやめまい、うまく力がはいらない、歩きにくい、
する能力も含まれますが、眼科や耳鼻科の病気の場合もあり
ふらつく、つっぱる、ひきつけ、むせ、しゃべりにくい、ものが二
ます。今回は神経内科について皆様にご理解を深めていただ
重にみえる、頭痛、かってに手足や体が動いてしまう、ものわ
けるよう説明いたします。
すれ、意識障害などたくさんあります。まず、全身をみられる神
しばしば、間違えられる科があります
よく神経内科はわかりにくいといわれます。科の名称が紛らわ
しいためと思いますが、特に間違えられやすいのが精神科、
精神神経科、神経科、心療内科などです。これらの科は精神科
の仲間で、おもに気分の変化(うつ病や躁病)、精神的な問題
を扱う科です。神経内科はこれらの科と異なり、精神的な問題
からではなく、脳や脊髄、神経、筋肉に病気があり、体が不自
由になる病気を扱います。但し、中には精神科と神経内科どち
らでも診る病気もあり、認知症やてんかんなどはその代表的なも
のです。
神経内科で扱う病気は?
神経内科で扱う病気は多岐にわたりますが、代表的なものと
して右のものがあげられます。
頭痛・脳卒中・認知症・めまい・てんかん・神経難病
市民病院の理念 「安全と信頼」
患者さまの視点に立ち、安全で、信頼される、地域に根ざした医療を提供するとともに、健全な病院運営に努めます
基本方針
病院の理念のもと、基本方針を次のように掲げます
1 患者さまの視点に立った医療を提供します
3 地域に根ざした医療を展開します
患者さまへの十分な説明と同意のもとに、医療を提供します
地域の中核病院として、高度医療・救急医療の充実に努めます
患者さまへの診療情報の提供を、積極的に行います
地域の医療機関との連携を推進し、地域医療に貢献します
患者さまの権利を尊重し、患者中心の全人的医療を提供します
2 安全で信頼される医療を提供します
4 病院経営の健全性の向上を図ります
安心して医療が受けられるよう、院内環境の整備に努めます
公共の利益を確保するとともに、効率的な病院運営に努め、
高度で良質な医療水準を確保し、地域住民に提供します
健全化を図ります
医療者の教育・研修に努め、確実な診断、治療を提供します
頭痛
症候性頭痛
2.緊張型頭痛:30 分から 7 日続き、圧迫されるような、
あるいは締めつけられるような非拍動性の頭痛で、多
くは両側性です。頭痛の程度は軽度~中等度で、頭痛
慢性頭痛症
のために日常生活に支障が出ることはあっても寝込ん
でしまうようなことはありません。緊張型頭痛の原因と
頭痛は大きくわけて、脳腫瘍、
しては、口・顎部の機能異常、心理社会的ストレス、不
髄膜炎、脳炎、クモ膜下出血や脳卒中など脳や頭部の
安、うつ、妄想や妄想概念としての頭痛、筋性ストレス、
病気の症状として出てくる頭痛(症候性頭痛)と、他に
頭痛に対する薬剤乱用などがあげられます。反復発作
病気が隠れているのではなく、頭痛(発作)を繰り返す
性緊張型頭痛には鎮痛剤が有効です。鎮痛剤の使用
(持続する)ことが問題である慢性頭痛症に大別されま
が月に数回程度の方は通常、予防薬の必要はありま
す。
せん。
1 片頭痛:片頭痛という名称の由来は頭の片側が痛む
3.群発頭痛:眼周囲~前頭部、側頭部にかけての激し
こととされています。たしかに左右どちらか片側に頭痛
い頭痛が数週から数ヶ月の期間群発することが特徴で
が起こる場合が多いのですが、実際には 4 割ちかくの
す。夜間、睡眠中に頭痛発作がおこりやすく、頭痛発
片頭痛患者さんが両側性の頭痛を経験しておられます。
作時には眼の充血や流涙、縮瞳と眼瞼下垂(まぶたが
片頭痛は前兆の有無と種類により「前兆を伴わない片
下がること)などの症状を伴うことが多いのも特徴です。
頭痛」と「前兆を伴う片頭痛」などに細分類され、頭痛よ
群発頭痛の発生率は人口 10 万人当たり 9.8 人と比較
り前におこる症状でキラキラした光、ギザギザの光(閃
的少なく、一般の方は勿論のこと医師の間でもあまり
輝暗点)などの視覚性の前兆が多くみられます。通常
認知されていないタイプの頭痛です。群発頭痛の知識
は 60 分以内に前兆が終わり、頭痛が始まります。片頭
を持っている医師は比較的容易に診断ができますので、
痛発作は通常 4~72 時間続き、頭痛の程度は中等度
類似の頭痛をおもちのかたは神経内科専門医を受診
~高度で日常生活に支障をきたします。また、階段の
してください。
昇降など日常的な運動により頭痛が増強することも特
徴のひとつです。悪心(吐き気)、嘔吐を伴うことが多く、
頭痛発作中は感覚過敏となって、ふだんは気にならな
いような光、音、においに不快感をもつ方が多いようで
す。片頭痛の治療は大きくわけて 2 種類あります。頭痛
発作がおこった時になるべく早く頭痛を鎮めるための
治療法を急性期治療(頓挫療法)といいます。もうひと
つは頭痛がない日もあらかじめ毎日お薬を飲んで頭痛
発作を起こりにくくし、また、頭痛発作が起こっても軽く
すむようにするための予防療法です。発作回数が月に
数回以内で、片頭痛発作による生活への悪影響があ
まりなければ急性期治療を中心にします。鎮痛剤の上
手な使い方としては、頭痛発作のなるべく早期に使用
することと、過剰に連用しないことです。連用により鎮
痛剤誘発性頭痛といわれる別の頭痛がおこってきます。
予防療法の治療目標は、頭痛発作の回数を半分以下
に減少させて、頭痛の程度を軽くすること、頭痛の持続
時間を短縮し、頭痛による日常生活への影響を最小限
にして活動性を改善することとされています。
脳卒中
脳梗塞
脳出血
くも膜下出血
きり老人の約4割、訪問看護サービス利用者の約4割が脳
脳の血管がつまったり(脳梗塞)、破れたり(脳出血)し
て、脳の機能がおかされる病気のことをいいます。高齢
卒中患者であり、国民の医療費の約1割、1兆8千億円が1
年間に脳卒中の治療のために使われています。
の方、高血圧や糖尿病、高脂血症の方は動脈硬化がす
すみやすく、脳卒中をおこしやすいので注意が必要です。
脳卒中の種類
症状がでてから早い時期に治療を開始すると後遺症が
少なくてすみますので、このような状態になられたときに
脳卒中は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に分けられます。
はできるだけ早く医療機関を受診されることをおすすめし
脳梗塞とは脳の動脈が詰まって血の流れが悪くなり、脳が
ます。脳卒中とは「突然悪い風にあたって倒れる」という
やられてしまうものです。脳梗塞には3つのタイプがあります。
意味であり、その症状は意識障害、運動障害(半身が動
1)大きな動脈の動脈硬化によって血栓が出来て詰まるもの。
かなくなる)、感覚障害(半身の感覚が鈍くなる)、平衡障
2)心臓に出来た血栓が流れて来て詰まるもの。3)脳の細
害(ふらつき)、けいれん(大脳皮質が障害された場合)、
い動脈が高血圧のために細くなって詰まってしまうもの。ひ
視野障害(後頭部が障害された場合)、視力障害(眼の動
どい高血圧の状態が長く続きますと、血管が壊死(腐った状
脈が詰まった場合)、頭痛(出血した場合)、認知症(多発
態)になり、破れてしまい、脳出血がおこります。破れるほど
性の脳卒中の場合)などがあります。症状としては、運動
のひどい高血圧でなければ詰まってしまいます。このように
障害(片麻痺)が最も多くみられます。脳は各部分の働き
細い動脈の病変による脳梗塞と脳出血は親戚の関係にあ
が異なり、やられる場所によって症状が異なります。例え
ります。くも膜下出血は、脳の大きな動脈に出来た瘤(動脈
ば、運動の中枢がやられれば反対側の半身(右脳であれ
瘤)が破れて起こります。くも膜下出血は動脈の分かれ目の
ば左半身)の麻痺が、感覚の中枢では反対側の半身(右
所にできた瘤が破れたものです(先天的なものだろうといわ
脳であれば左半身)の感覚障害がおこります。運動性言
れています)。血圧が高いといつもここに圧がかかり、だんだ
語中枢がやられると他人の言っていることを理解できても
ん大きくなり、天井の部分が薄くなってきて、ついに破れてし
自分ではしゃべれなくなります。感覚性言語中枢がやら
まいます。
れると他人の言っていることが理解できなくなります。
日本の脳卒中の現状
死亡原因では第2位で、年間人口10万人当たり118人が
脳卒中で亡くなり、死亡総数の16%にあたります。そして、
入院の原因としても第2位で、脳卒中患者の平均在院日数
は119日と極めて長いのです。更に問題になるのは、寝た
認知症
めまいにもいろいろあります。
ふらふらする、見ている景色がぐるぐるまわる、後ろにひか
れるよう、血の気がひくよう、ふわふわするなどいろいろな症
状がめまいとして表現されます。めまいの原因もいろいろあ
り、耳の奥の内耳の異常が原因のめまいもあれば、脳梗塞
や脳腫瘍など脳自体からくるめまいもあります。まず、神経
内科で診察を受けて、危険なめまいかどうか診てもらいまし
ょう。その上でめまいの原因の場所によっては耳鼻科で診
察する場合もあります。 めまいは、からだのバランスを保
つ機能に障害が起こると生じます。からだの平衡をつか
さどる器官には三半規管、耳石器、前庭神経、脳幹、視
床、大脳皮質があります。このどの場所が障害されても
ものわすれが多なったときに疑ってください。認知症の種
めまいがおこります。めまいを大きく分けると、耳から生じ
類によっては進行を抑制する治療薬があるものもあります
るめまいと、脳から生じるめまいに分けることができま
ので、受診をして原因を調べることが重要です。認知症をき
す。
たす病気は多数ありますが、中高年の方が認知症状を呈し
た場合、まず「アルツハイマー型認知症」あるいは「脳血管
耳が原因でめまいをおこす疾患にはつぎのようなものが
性認知症」にかかっている可能性を考える必要があります。
あります。
認知症をきたす病気の中で、この 2 つの病気が最も多いか
らです。上記の 2 つの病気ほど多くはありませんが、認知症
をきたす病気の中には、脳外科的手術で症状の改善が期
待できる病気もあります。「正常圧水頭症」や「慢性硬膜下
血腫」などがそれに該当します。これらの病気は脳の画像
検査(CT や MRI)で容易に診断できます。手術が必要な場
合には脳外科医に紹介します。その他、「甲状腺機能低下
症」のように内科疾患が原因で知的機能が低下することが
あります。「甲状腺機能低下症」では甲状腺ホルモン製剤を
補充(お薬を服用)することにより改善します。認知症が疑
われましたら、まず神経内科専門医にご相談してください。
1.メニエール病:難聴、耳鳴り、耳閉感などの耳症状とと
もに、発作的に強い回転性めまいを生じます。めまいは
数分から数時間つづき、内耳リンパの異常によります。
40 歳以降の壮年に発症する疾患であり、発作を繰り返し、
やがて聞こえなくなることがあります。
2.前庭神経炎:かぜの症状から 1~2 週間して、とつぜん
回転性のめまいで始まります。めまいのなかでも、もっと
も強烈な症状です。食事をすることも、動くこともできませ
んが、2~3 週間ほどで自然に軽快します。前庭神経炎の
原因は、アレルギー反応が関係しているのではないかと
考えられています。
めまい
3.突発性難聴:聴神経に炎症がおき、とつぜん強い難聴
がおこります。耳鳴りをともなうこともありますが、めまい
は比較的軽いものです。
4.良性発作性頭位変換性めまい:頭を動かしたときだけ
に軽い回転性のめまいがおこり、20 秒以内に自然におさ
まるのが特徴です。きちんとした検査のあとで良性発作
性頭位変換性めまいと診断された場合には安心して良い
でしょう。予防法は急に振り返る、天井を見上げるなどの
急な頭の動作を避けます。
脳から生じるめまい
てんかん
脳が原因でおこるめまいは、耳鳴りや難聴、耳閉感をと
もないません。めまいも耳から生じるめまいにくらべると
手足をつっぱり、意識をなくし、口から泡をふくというけい
軽いことが多いのです。しかしながら、脳の障害による特
れん発作が有名ですが、意識がありながら手足がかって
徴的な症状があらわれます。たとえば、物が二重に見え
に動くような発作もあります。脳波などの検査で診断でき
る、顔や手足がしびれる、力が入らない、手がふるえるな
ることがあり、治療薬があります。また、脳腫瘍や脳出血
どの症状です。また、耳から生じるめまいは何度も何度も
など、なにか脳に原因のあっておこってくるてんかんもあ
同じめまいを繰り返すことが多いのですが、脳から生じる
りますので、原因の検索も必要です。てんかんは脳内の
めまいは、いままでに経験したことのないようなめまいで
神経細胞の異常な電気的興奮に伴って痙攣や意識障害
あることが多いのです。脳が原因でめまいをおこす疾患
などが発作的に起こる慢性的な脳の病気です。病的な電
にはつぎのようなものがあります。
気的興奮が脳の種々な場所に起こるため症状も種々な
ものがみられます。またこれらの興奮現象は異常脳波と
1.脳卒中(脳梗塞、脳出血):脳卒中によって平衡感覚の
して現れるため、脳波の検査は診断には必ず必要です。
経路のどこかが障害を受けると、めまいがおこります。脳
てんかんの患者さんの数は人口 10 万人あたりほぼ 200
卒中によるめまいの特徴は通常 2~3 時間、短くても 20
~300 人といわれており、比較的多い病気です。大表的
~30 分間はつづくことです。めまいの症状や程度は梗塞
なてんかん病型を少し説明いたします。
や出血が生じた場所によって異なります。たとえば脳幹
の前庭神経核という、平衡感覚があつまる部分の障害で
1.強直(きょうちょく)間代(かんたい)発作:全身の痙攣、
は強い回転性のめまいがおこりますし、大脳皮質の障害
あるいは脱力などが突然起こることが特徴です。そのう
では揺れるような、比較的軽度のめまいですみます。脳
ち強直発作はいきなり四肢、頚部、体幹などの筋のつ
卒中によるめまいの治療は、脳卒中そのものに対する治
っぱりあるいはこわばりが起こり、このため身体がねじ
療に準じます。
れると同時に意識消失がみられます。間代発作と呼ば
れるものも手足が突然に屈曲伸展してガタガタとふる
2.椎骨脳底動脈循環不全:大動脈から分岐して脳、特に
わせる痙攣発作です。これら 2 種の発作は伴うことが
脳幹や小脳へ血流を送るのが椎骨動脈であり、脳底動
多く強直・間代発作と呼ばれており、多くの場合意識消
脈です。この血管の血流が悪くなるとめまいをおこします。
失とともに全身性強直痙攣が起こり、次いで間代性の
椎骨動脈は頸椎の中を通っています。そのため、急に後
痙攣発作へと移行します。発作は数分で治まり、しばら
ろをふりむいたり、天井を見上げたり、床を見たりする動
く意識不鮮明やもうろう状態あるいは睡眠に移行した
作によって血液循環がさまたげられてめまいをおこします。
あと正常に返るのが一般的な経過です。
とくに生まれつき椎骨動脈が細い人、動脈硬化によって
2.欠神(けっしん)発作:子供に多い型で、5~15 秒の
椎骨脳底動脈に狭窄がある人、老化で頸椎が変形し、動
短い意識消失発作が起こり、そのあいだ患者さんは今
脈を圧迫している人ではおこりやすいのです。首をとくに
までしていた動作を一時的に止めてじっとしており、再
朝の起床時に勢いよく屈曲しないように気をつけます。動
びもとの動作にもどります。あまり短いと周囲の人も気
脈硬化の危険因子のある人はそのコントロールをおこな
づかないことがあり、また学校での授業中ボーとしてい
い、とくに喫煙者は禁煙します。
ると指摘され、不真面目な児童と誤解されることもあり
ますので注意が必要です。複雑欠神発作は意識のな
3.聴神経腫瘍:聴神経に腫瘍ができますが、良性の腫瘍
い間、意味のない自動運動や軽い筋肉のピクつき、脱
なので転移することはありません。大多数は徐々に難聴
力、突っ張りなどを伴う発作です。
がすすみますが、めまいは比較的軽いものです。腫瘍が
3.ミオクローヌス発作:顔面、四肢、体幹などの筋肉に
大きくなると周囲の脳組織を圧迫して顔面神経麻痺など
短時間のピクッとした痙攣が起こる型です。脱力発作
のさまざまな症状を引き起こします。小脳が圧迫されると、
は頭部、体幹、四肢などの姿勢を保つのに必要な筋肉
ふらつき歩行があらわれます。治療は手術で取り除きま
の脱力が短時間発作的に起こり、そのため患者さんは
す。ただし、経過観察をする場合もあります。
尻もちをついたり、ガクッと頭を前にたれたりし、同時に
瞬間的な意識消失を伴うものです。
4.部分てんかん:意識障害の伴う型と伴わない型があ
ります。痙攣などの運動が身体の一部にみられ、しば
神経難病
しばそれが他の部位に連続的に広がっていく運動性の
神経難病とは神経の病気の中で、はっきりした原因や
発作は、口周などに痙攣が始まることが多く、手足→口
治療法がないものをいいます。具体的には運動ニューロ
周→同じがわの身半分→全身などにひろがり、全身に
ン病(筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症など)、脊
痙攣が及んだところで意識を失うのが一般的です。ま
髄小脳変性症(脊髄小脳萎縮症、他系統萎縮症など)、
た身体の一部に起こった異常感覚がほかにひろがる
多発性硬化症、重症筋無力症、パーキンソン病、進行性
感覚性の発作もあり、腹痛、下痢などの自律神経症状
核上性麻痺などがあります。原因がわからないといっても
が発作的にみられるようなものもあります。
途中まではわかっているものや、根本的に治すことは難
5.てんかん重積(じゅうせき)状態:大発作てんかんや
しいけれども、日常生活が可能になるような治療があるも
小発作てんかんなどが連続してみられるもので、身の
のもあります。直接治療法がなくとも医療がかかわること
一部に痙攣が数時間あるいは数日間連続してみられ
で少しでも生活しやすくすることはできます。また、この分
るものや、長期にさくらん状態が続くようなものもありま
野は日進月歩です。次々に新しい治療も開発されていま
す。特に大発作てんかんが連続してみられる場合には、
すので、あきらめないで神経内科にかかってください。難
生命の危険もあるので救急処置が必要であり極めて
病にかかると、しばしば長い療養生活を送らざるを得なく
重要です。
なります。神経難病では、脳や神経が傷ついて、回復が
困難な場合が少なくありません。手足の運動や感覚の麻
てんかん型と脳波:てんかんにはその種類によってそ
痺をきたしたり、体の動きがとても遅くなったり、ふらつき
れぞれ特徴的な脳波がみられます。発作中はタイミン
がひどくて歩けなくなったりします。ひどい場合には、呼吸
グよく脳波を取ることができないことが多いのですが、
する筋肉が麻痺して、人工呼吸器が必要になることもあ
発作のない時にも異常は認められ、また発作型と脳波
ります。このように神経難病では、重い後遺症を残すこと
所見の対応関係もあるので、脳波検査は診断のため
が多いため、患者さんやご家族の療養生活は大変な不
必須です。
自由、困難に見舞われることになります。通院することさ
え難しい場合や、長期の入院療養が必要になることもあ
治療:一般に薬物療法が中心でそれぞれの発作型に
ります。このため、神経難病の多くは国指定の特定疾患
ついて第一選択薬、第二選択薬があります。薬の血液
とされ、医療費が軽減されるようになっています。一般に
の中の濃度が有効な濃度に達しているか否かをみな
神経難病は数が少なく、神経難病を専門に診る専門医の
がら薬の量を決めるべきです。また多くの薬を併用しな
数も多くはありません。また、神経難病患者さんの長期の
いように、少ない種類の薬で治療することが、副作用防
入院療養を受け入れる病院の数は、限られています。こ
止にもなりますが、一方では薬の量が少ないと発作を
のため、神経難病と診断された場合、どうしてよいか途方
起こすことにもなりますので注意が必要です。治療コン
にくれる方も少なくありません。わが国では、このような状
トロールの難しい場合は数種類の薬を併用することも
態を少しでも改善しようと、この数年で多くの都道府県で、
やむを得ないこともあり、また外科的治療が考えられる
神経難病ネットワークが設立されてきています。このよう
場合もありますので、主治医とよく相談して下さい。治
な神経難病ネットワークでは、ホームページやニュースレ
療上最も基本的なことは、規則的な日常生活を送るこ
ターなどによる医療・福祉情報の提供、療養相談、長期
とです。薬の飲み忘れや睡眠不足は発作の誘引となり、
あるいは短期の入院先の紹介事業を行っています。現在、
またかぜなど熱がでた時も発作が起こりやすくなります。
全国の 30 を越える都道府県に神経難病ネットワークが設
この病気は長期に治療が必要ですので、患者さんの体
立され、専属または兼任の難病コーディネーターがいま
の状態をよく分かっている主治医とよく連携を取り、ま
す。各都道府県により活動状況に違いはありますが、一
た副作用が出ないように注意深く治療することが重要
般的に難病コーディネーターが各種の医療・福祉情報の
です。くれぐれも、自己判断しないようにしてください。
提供や療養相談、入院先の紹介、在宅療養環境の整備、
最寄りの保健所への連絡などを行っています。このような
ネットワークについては、お住まいの近くの保健所や役所
の福祉係、福祉事務所、かかりつけの病院の主治医や
医療ソーシャルワーカーなどに尋ねられたらよいでしょ
う。
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