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ミッドレンジストレージの 魅力に迫る

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ミッドレンジストレージの 魅力に迫る
[特 集]
ミッドレンジストレージの
魅力に迫る
テクノロジーフォーカス
●
ストレージの仮想化
事例
●
●
第一生命保険相互会社
ユナイテッド航空
ジ
ン
レ
ド
ミッ
の
ジ
ー
レ
スト
る
迫
に
力
魅
特集
http://www.dai-ichi-life.co.jp/
Hitachi Storage Magazine Vol.1 │蔵
Part1
存在感を高めるミッドレンジストレージ
── その背景と役割
企業の情報システム環境において日々存在感を増している、外付型のストレージ。その
勢いは、年間約 60%とも言われる容量ベースの成長率からもうかがい知ることができる。
企業が保有するデジタルデータの増加が、ストレージ全体に対する需要を押し上げている
が、とりわけミッドレンジクラスで顕著に表れているという。では、なぜミッドレンジストレー
ジなのか。まずは、そこから紐解いてみたい。
サーバ仮想化で導入が進む
外付型の統合ストレージ
また、ストレージ資源が個々のサーバに
いて、簡単に説明しておく必要があるだろ
分散している状態では、監視の目が届きに
う。
くくなり、データ保護やセキュリティにおけ
これまで外付型ストレージ市場で先行し
社内のあちこちに分散している個別最
るリスクが大きいと言えよう。
てきたのは、一般にエンタープライズクラ
適化されたサーバ。これらを仮想化技術に
こうした問題も、サーバとストレージの
スと呼ばれているハイエンドのストレージ
より、少数のサーバに集約する。このサー
両面からのインフラ統合により、本当の意
製品である。これは、1960 年~1980
バ統合への取り組みが加速している中、こ
味でのシステム運用効率の改善や管理負
年代にかけて主力として使われてきたメイ
れと表裏一体のものとして取り組まれてい
荷の軽減、それに伴うコストの最適化が可
ンフレームの大型ディスク装置から脈々と
るのが、ストレージ統合である。
能となるのである。
発展を遂げてきたもので、高い信頼性と
なぜなら、サーバ仮想化ソフトウェアの
機能をフルに活用するためには、ストレー
ジ統合が前提となるからだ。例えば、ある
物理サーバで実行中の仮想マシンを別の
高速な処理性能を誇っている。
高いROIを提供する
ミッドレンジストレージ
例えば、金融系のデータベースや大企
業の基幹システムなど、業務稼働中のダ
ウンが許されないミッションクリティカルな
物理サーバにダウンタイムなしに移行する
インフラ統合は現在、大規模システムの
システムで用いられてきたのが、こうした
には、各物理サーバに外部接続された統
みならず、中小規模システムの領域にお
エンタープライズストレージ製品である。
合ストレージが必要となる。また、物理
いても進展している。そうした中で、これ
その内部には、FC(Fibre Channel)
と呼
サーバを継続的に監視し、障害によって影
まで外付型ストレージを使っていなかった
ばれる高速インタフェースに接続された
響を受けた仮想マシンを、別の健全な物
中小規模の企業も含め、市場を牽引して
ディスクドライブ、そして各ディスクドライ
理サーバに移行して再起動させるといった
いるのがミッドレンジストレージだ。
ブのコントロール用にプロセッサが複数搭
場合でも、仮想マシンのサーバイメージ
調査会社のIDC Japanが2008年12
載されており、データアクセスを並列的に
が、複数の物理サーバ間で共有する外付
月に発表した「国内ディスクストレージシス
高速処理することができる。また、I/Oに
型の統合ストレージに置かれているからこ
テム市場 2008年上半期の分析と2008
ついても数十のポートを搭載するなど、高
そ、可能になるというわけだ。
年~2012 年の予測」によると、外付型
い拡張性を有している。
一方で企業が扱う文書ファイルや電子
ディスクストレージシステムは、容量ベー
一方、エンタープライズストレージは高
メールなどのデータは、とどまることなく
スで年平均成長率58.4%という急速な伸
価なことから、中小規模のシステムあるい
増大し続けており、ストレージ容量は拡大
びが予測されている。特にミッドレンジスト
は中小規模の企業にとっては、外付型スト
の 一 途をたどって いる。しかしながら、
レージの需要が増加しているという。
レージの導入を難しくしていた。
サーバ本体に内蔵されたローカルなスト
もっとも、一口にミッドレンジストレージ
これに対してミッドレンジストレージは、
レージでは、必要な容量を確保しようにも
と言っても、その概念は漠然としており、
機能をある程度絞り込むことによって、コ
拡張には限界があり、メンテナンスやバッ
適用範囲も非常に広い。そこでまずは、
ストダウンを図っている。具 体 的には、
クアップなどの作業負荷も大きくなる。
ミッドレンジという位置づけそのものにつ
ディスクドライブとして、FCディスクドライ
特集 ミッドレンジストレージの魅力に迫る
蔵│ Hitachi Storage Magazine Vol.1
Part1 存在感を高めるミッドレンジストレージ── その背景と役割
http://www.dai-ichi-life.co.jp/
ブ以外に SATA(Serial ATA)や SAS
ない。
されたファイルサーバやクライアント PC
(Serial Attached SCSI)
に対応してい
ミッドレンジクラスのストレージは、要求
にも多種多様なデータが蓄積されている。
たり、データアクセスのコントロー ルを
スペックに対する非常に高い ROI(投資回
それらは大抵の場合、エンドユーザーが個
1個のプロセッサが処理を担っていたりす
収率)を提供することで、幅広い企業の
人的に作成した文書ファイルなどだったり
る。また、I/Oポート数も、エンタープライ
ニーズに応えるプラットフォームなのであ
するが、決して軽んじることはできない。
ズストレージの半分程度に抑えられてい
る。
その内容は、顧客に対する提案書であった
る。
り、新サービスの企画書であったり、今後
コスト面に加えて、エンタープライズス
トレージより扱いやすいという点でも、ミッ
ドレンジストレージが支持されている。中
急増するデータに対処する
データライフサイクル管理
むファイルの場合もあるからだ。まさに知
の経営を左右するような重要な情報を含
的財産そのものである。
小規模のシステムにおける仮想化におい
ここで改めて、企業の情報環境におい
ほかにも、CAD(Computer Aided
て、ミッドレンジストレージの導入が進んで
てミッドレンジストレージが強く求められる
Design)や 3 次元モデリングによる設計
いるのは、そうした背景もあると言えよう。
ようになった背景について、別の視点から
図面や、医療機関におけるレントゲン写
当然ながら、ミッドレンジストレージは、
考察してみたい。
真、CTスキャン、MRI(Magnetic Re
信頼性やパフォーマンス、拡張性などにお
先にも述べたように、企業内で扱われる
sonance Imaging)
といった大容量の画
いて、エンタープライズクラスに及ばない
データは、とどまることなく増大し続けて
像系データも急激な増加を見せている。
部分もある。しかしながら、一部のミッショ
いる。それは、基幹系や情報系などの全社
これらの非構造化データは、現在では
ンクリティカルなシステムを除けば、エン
的なシステムだけに限った問題ではない。
企業内データの実に80%以上を占めると
タープライズクラスの機能が必要とは限ら
部門やプロジェクトといった単位で導入
も言われ、その比率は今後も増加の一途
国内外付型ディスクストレージ出荷容量推移
(Pバイト)
3,000
2,500
2,000
年平均成長率58.4%
1,500
1,000
500
0
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
出典:IDC Japan,2008年12月
「国内ディスクストレージシステム市場2008年上半期の分析と2008年∼ 2012年の予測」
(J8120111)
Hitachi Storage Magazine Vol.1 │蔵
をたどると考えられている。このように雪
トレージの構成や運用を意識させない統
らも、データの保管先としてミッドレンジス
だるま式に膨らんでいくデータ、そして何
合ストレージソリューションが求められるよ
トレージへの関心が高まっている。
の保護もされないまま社内のいたるところ
うになってきている。
企業の違法行為や不祥事を防止し、健
ストレージの負荷分散や
性能を自動最適化する機能
ら、データの運用管理や保管方法などに
ストレージの管理負荷を軽減する機能と
境の構築が急がれている。特に大きな規
に分散していく重要なデータを、いかに効
率よく管理するかが問われている。
これらを集中管理するために、統合スト
レージとしてミッドレンジストレージを導入
しても良いが、データによってはエンター
全なビジネスを発展させるという狙いか
ついてさまざまな法令が制定され始めて
おり、それに対応するためのストレージ環
プライズストレージを必要とする場合があ
しては、
「自動負荷分散(ダイナミックロー
制対象になりつつあるのが、電子メールの
る。とはいえ、データの増加に伴い、エン
ドバランスコントローラ)」が注目されるよ
データだ。言うまでもなく、電子メールは
タープライズストレージを増強していくの
うになってきている。これまではエンター
ビジネスの世界で不可欠であり、重要な
は、大きなコスト負担となってしまう。
プライズストレージで同機能が提供されて
書類もインターネットを通じてやり取りさ
そこで、この課題の解決策の 1つとして
いたが、ミッドレンジストレージでも必要と
れている。
挙げられるのが、データライフサイクル管
され始めたためである。その背景にある
ところが、電子メールやその添付ファイ
理(以下、DLCM:Data Life Cycle
のが、サーバの仮想化だ。
ルの保管体制の不備が、企業に新たな問
Management)
と呼ばれるアプローチで
サーバの仮想化環境においては、仮想
題を生み出すこともある。電子メールによ
OS/アプリケーションが別の物理サーバ
る情報漏えい、あるいはデータの偽造や
に移動することによって、ストレージ側で
改ざんは、大きな社会問題に発展しかね
ある。
データの
“利用価値”
に応じて
最適な保存媒体へと移行
パスなどの設定変更が必要となる。加え
ない。にもかかわらず多くの企業が、電子
て、ストレージのコントローラにおける負
メールの管理をほとんど個人任せにして
荷に不均衡が発生する可能性もある。これ
いるのが実情だ。そのため、企業の責務と
DLCMはその名のとおり、情報の
“生成”
らを手動で管理するのでは、ストレージ管
して、いつ、だれが、どんな内容の電子
から
“保護”
、保存メディアの
“移行(マイグ
理者にとって非常に大きな負担となるのは
メールを送受信したかという履歴(ログ)
を
レーション)”
、
“保管(アーカイブ)”
、そして
言うまでもない。
保管し、何らかの問題が起こったときにも
最後の
“破棄”
へと至る一連のライフサイク
そこで、こうした問題を解消するために
即座に追跡できる体制の確立が求められ
ルをとらえ、効率的な管理を実現するもの
必要とされているのが、ダイナミックロー
ているのである。
だ。情報が持つ価値の変化に対応し、それ
ドバランスコントローラというわけである。
また、システムが大規模な災害や事故
ぞれのプロセスにおけるサービスレベル
ダイナミックロードバランスコントロー
に遭遇した場合に、データの迅速な復旧
の最適化を図る。この結果として、情報化
ラは、稼働中のストレージシステムの負荷
を図って業務継続を可能とするディザスタ
コストの最適化や、競争力強化などを目指
分散や性能の自動最適化のほか、物理的
リカバリの体制を確立することも、今日の
すのである。
容量、論理的容量の双方を自由に拡張で
企業にとって欠かせない取り組みとなっ
また、高いサービスレベルや可用性が
きる機能を提供する。
た。
要求されるデータをエンタープライズスト
これにより、上記のようなサーバ仮想化
こうしたコンプライアンス目的でデータ
レージに置き、相対的な価値が低下した
などによる上位層の大幅なシステム環境
を格納するためのストレージや、遠隔地の
データを比較的安価なストレージへと移動
の変化にも、複雑な構成を意識する必要
バックアップサイトにおいてデータ保護を
させていくという対応も有効である。
がなくなり、柔軟に対応させることができ
担うストレージとしても、最適なプラット
ただし、こうした対応をユーザーやスト
る。
フォームとして、ミッドレンジストレージが
レージ管理者などに任せるのは、大きな負
担となる可能性があり、場合によっては業
務の効率を悪くしてしまうかもしない。そ
のため、ミッドレンジストレージに対して
は、ユーザーやストレージ管理者などにス
活用されている。
コンプライアンス対応や
ディザスタリカバリにも
え、大企業から中小規模の企業に至るま
コンプライアンス(法令遵守)の観点か
レージの需要が拡大しているのである。
単なるシステム規模の大小の違いを超
で、多様な目的・用途からミッドレンジスト
特集 ミッドレンジストレージの魅力に迫る
蔵│ Hitachi Storage Magazine Vol.1
Part2
インタビュー
ミッドレンジストレージにおける
日立の優位性とストレージ戦略
http://www.dai-ichi-life.co.jp/
大規模システムのみならず、中小規模システムにおいても外付型ディスクストレージ製品
の需要が高まっている。そうしたミッドレンジクラスの市場に向けて日立が提供しているの
が、
「Hitachi Adaptable Modular Storage 2000シリーズ」である。同製品の特長と
機能、さらには今後に向けたストレージ戦略を、日立製作所 RAIDシステム事業部 事業
部長の岩崎秀彦氏に聞く。
ミッドレンジクラスで世界初*
SASドライブを全面採用
ンスを実現しています。
ントローラ」は、そうした日立の強みが活
かされているというわけですね。
── SASは業界標準技術ですから、遠か
岩崎 はい。ダイナミックロードバランス
──まずは、ミッドレンジストレージのライ
らず競合メーカーも採用に踏み切るでしょ
コントローラは、満を持して投入した機能
ンアップである「Hitachi Adaptable
う。そうなったときに、AMS2000シリー
です。AMS2000シリーズは、2枚のコン
Modular Storage 2000シリーズ」
(以
ズは市場で優位性を維持できるのでしょう
トローラを持っているのですが、それぞれ
下、AMS2000シリーズ)の特長からお
か。
のコントローラからすべてのボリュームへ
願いします。
岩崎 そもそもミッドレンジクラスのスト
のアクセスが可能です。ダイナミックロー
岩崎 ミッドレンジクラスのストレージに対
レージは、スペックだけを見ると、どの
ドバランスコントローラは、コントローラ間
して、お客さまはコストパフォーマンスが
メーカーの製品も似たようなものに見えが
のロードバランス(負荷平準化)処理を動
高くて、使い勝手がいい、維持するにもあ
ちです。そうした中で、日立ならではの特
的かつ自動的に行います。そのため、従来
まりコストをかけなくていい、そういう製
長をどのように打ち出していくのか、お客
のような手動による面倒なパス設定を不
品 を 望 ん で おられます 。そこで A M S
さまにとっていかに魅力的な製品づくりが
要化します。また、事前の性能設計や運用
2000シリーズでは、ディスクドライブと
できるかがポイントとなります。
開始後のチューニング作業が不要である
して、FC(Fibre Channel)
ディスクドライ
では、日立の強みはどこにあるのかとい
ばかりか、システム全体としてのパフォー
ブより安価な SAS(Serial Attached
うと、やはりエンタープライズクラスのスト
マンスの最適化と高可用性も実現するの
です。
SCSI)ディスクドライブを全面採用しまし
レージで長年培ってきた技術やノウハウに
た。ミッドレンジクラスとしては、世界で初
あると考えています。エンタープライズク
めて*になります。
ラスのストレージが持つ優れた機能を、中
──ダイナミックロードバランスコント
しかも、A M S 2 0 0 0 シリーズ では、
堅・中小規模の要求にも応えられるような
ローラは、具体的にはどのような場面で役
SASと共通の物理インタフェース
(ケーブ
形にアレンジし、適用していくことが、日立
立つのでしょうか。
ルやコネクタなど)
を持ち、よりビットあた
のミッドレンジクラスのストレージにおける
りのコストが安い SATA(Serial Advanc
基本戦略となります。
ed Technology Attachment)
ディスク
ドライブを同じ筺体内で混在させることも
可能です。
こうした取り組みにより、AMS2000シ
代ミッドレンジストレージ」
と位置づけてい
仮想化されたサーバ環境で
最も使いやすいストレージ
リーズは、同クラスの当社従来製品と比較
── AMS2000シリーズで初めて搭載さ
して、約 2 倍の拡張性とコストパフォーマ
れた機能の「ダイナミックロードバランスコ
Hitachi Storage Magazine Vol.1 │蔵
岩 崎 私 達は A M S 2 0 0 0 シリーズを
「サーバ仮想化環境で最も使いやすい新世
ます。このコンセプトを実現しているのが、
ほかでもないダイナミックロードバランス
コントローラなのです。
*2008年10月
日立製作所
RAIDシステム事業部 事業部長
岩崎 秀彦氏
サーバ仮想化環境では処理量の変化に
応じて、ある物理サーバ上で稼働している
仮想マシンを別の物理サーバに移動する
といった運用が行われます。こうしたケー
スにおいても、先にお話ししたようなダイ
ナミックロードバランスコントローラの機
能により、パスの設定変更などの作業は必
要ありません。逆を言うと、サーバ仮想化
環境のメリットを活かすには、ダイナミック
ロードバランスコントローラが不可欠とい
うことになります。
日立の設計思想を徹底し
多様なニーズに応えていく
からずっと一貫しており、装置内部で使わ
岩崎 「動的容量拡張機能」です。これは、
──今後についてですが、ミッドレンジスト
社で開発・製造を手がけてきています。そ
従来のミッドレンジストレージは、RAIDグ
レージはどのような方向に向かって進化し
のバーティカル・インテグレーションの体制
ループ単位でしか増設ができませんでし
ていくのでしょうか。
において、細部の部品レベルにまで、日立
た。AMS2000シリーズでは動的容量拡
岩崎 高度な機能をより低コストで、幅広
のストレージ設計の思想が徹底されている
張機能により、RAIDグループ単位の増設
いレンジで使える製品体系が求められるよ
のです。
ではなく、ディスクドライブ単位での増設
うになってくると思います。そういう意味
一方では、ネットワークスイッチの技術、
をサポートしています。ディスクドライブ単
では、やがてはエンタープライズやミッド
研究所における基礎技術など、部門間の
位の増設ですから、少ないコストで容量拡
レンジといった境はなくなるかもしれませ
水平連携によって、もたらされるノウハウ
張ができるということになります。小規模
ん。そのような時代を先取りし、日立では
も数多くあります。まさに、日立の総合力
構成から最大構成まで、業務要件の増加
統一したコンセプトとアーキテクチャーに
を 結 集 することで 作ら れ て い る の が 、
に柔軟に対応できるスケーラビリティによ
基づくストレージソリューションを提供して
AMS2000シリーズをはじめとするスト
り、初 期 投 資を活 かした 継 続 的 な R O I
います。
レージ製品であり、今後もこの体制でお客
また、ストレージの信頼性や性能に対す
さまの多様なニーズや期待に応えていき
る日立の考え方は、メインフレームの時代
たいと思います。
──拡張性という面では、AMS2000シ
リーズの魅力はどのようなところがアピー
ルポイントになりますか。
(Return on Investment)の向上を図る
ことが可能となるのです。
れる半導体からディスクドライブに至るま
で、日立の事業部門ならびにグループ会
特集 ミッドレンジストレージの魅力に迫る
蔵│ Hitachi Storage Magazine Vol.1
特集
関連ソリューション紹介
12年連続国内1位──その背景と今後の展望
変化の激しいIT市場の中で、調査会社 IDC Japanによる外付型ディスクストレージ製品の市場
調査において、国内出荷金額が 12年連続の 1位に輝いた日立製作所のストレージ製品。その
システム事業部 事業部長 岩崎秀彦氏による特別対談から迫ってみたい。
RAIDシステム事業部 事業部長
日立製作所
サーバ/ストレージグループ ディレクター
IDC Japan
森山 当社がディスクストレージシステム
岩崎秀彦氏
森山正秋氏
背景や今後のストレージのあり方について、IDC Japanの森山正秋氏と、日立製作所の RAID
し続けようというマインドで事業を進めて
vices Oriented Storage Solutions」
に関する調査を開始したのは 1996 年で
きました。その意味で、
「信頼性」と「オー
というコンセプトの下、お客さまが複雑な
すが、日立さんはそれ以来、一貫して外付
プン性」、さらに積極的な「海外展開」は、
システム構成や運用を意識せずにストレー
型ディスクストレージシステムの出荷金額
我々RAIDシステム事業部の
“DNA”
であ
ジを活用できる事業を展開していますが、
で国内トップを維持しています。変化の激
ると言えます。
その柱の 1つになっているのが仮想化で
しい IT市場にあって、これは例のないこと
森山 今後の展望についてですが、世界
す。例えば、エンタープライズクラスの
だと言えます。
的には、ここにきて一段と容量に対する
「Hitachi Universal Storage Platform
岩崎 ありがたく思うと同時に、責任の大
ニ ー ズ が 増 大して い ま す 。2 0 0 0 ~
V」に備わる仮想化機能により、異種混在
きさも感じています。
2006年にかけて年率50%だった容量の
環境のストレージ資産を 1つのプールとみ
森山 日立さんのストレージ製品に対する
伸びは、今後は年率 60%を超える見込み
なして一元管理することが可能です。
高評価の要因はいくつか挙げられると思
です。それに加えて、ストレージに対する
森山 その際に重要なのが、データ・マネ
います。まずは、メインフレーム時代から
ニーズが多様化していきます。
ジメント戦 略ですね。これからは、どの
の実績に基づいた信頼性の高さと異種混
岩崎 おっしゃるとおり、ここにきて、管理
データをどう管理するかを長期的視点に
合環境への対応力、それから、市場の変
性の向上から、アクセスのしやすさ、改ざ
立って考え、ストレージ環境を整備してい
化に対応するために新技術をワールドワイ
んの防止、アーカイビング、検索用プログ
くことが求められると思います。
ドで積極的に展開されていることも支持に
ラムの開発、アプリケーションのアプライ
岩崎 そのためには、データをきちんと蓄
つながっていると思います。
アンス化などに至るまで、実に多岐にわた
え、それをいかに価値のあるかたちで提
岩崎 はい。技術力に磨きをかける一方、
るようになってきました。
供できるかが、カギとなるでしょう。我々
かねてから一貫して他社製品との接続性
森山 そうした中で注目すべきストレージ
は、そこに向けてお客さまごとに最適なス
を高めることに努めてきました。また、海
の技術トレンドといえば、仮想化技術です。
トレージ環境を提供していきたいと考えて
外のお客さまに対しても、最新技術を提供
岩 崎 同 感 で す 。当 社 は 現 在 、
「Ser
います。
Hitachi Storage Magazine Vol.1 │蔵
世界初となるストレージの仮想化技術
それは「技術の日立」の証
データ量の急激な増大およびデータタイプの多様化に伴って、企業のストレージシステム
本間繁雄氏は説明する。
の要件やデータマネジメントの手法が大きく変化してきている。そうしたユーザーニーズの
「サーバやスイッチなどにストレージ環
変化に高いレベルで応えるべく、日立製作所はさまざまなソリューションを展開する一方
境の仮想化機能を持たせることも可能で
で、新たな技術開発にも挑み続けている。ストレージの仮想化技術は、その1つである。
すが、サーバ CPUのボトルネックによる
I/O性能の低下などの問題が生じます。一
利用するといったことも実現している。
方、ストレージベースのアプローチであれ
「Services Oriented Storage
こうした多種多様なストレージを単一の
ば、容量の仮想化をはじめ、性能、機能、
Solutions」を掲げ、世界的な統一名称
プールとして管理可能にする
「ストレージデ
管理の各面でベストの環境を構築できま
「Hitachi Storage Solutions」
として製
バイスの仮想化」を日立は世界で初めて *
す。また、その際には、データのコピー、
品群を再編した。RAIDシステム事業部
ストレージベースで実現した。さらにUSP
販売推進本部長の家近啓吾氏は、その意
V/VMは「ボリューム容量の仮想化」にも
いったビジネス上の要求に関連する処理
図を次のように説明する。
対応している。
がより柔軟なものになります」
日立は 2007年春、新コンセプトとなる
1
バックアップ/リカバリ、アーカイビングと
「顧客ニーズが多様化する中で、スト
ボリューム容 量 の 仮 想 化を実 現 する
このほかにも、WANで結ばれた遠隔の
レージが担う役割が大きく変わってきまし
「Hitachi Dynamic Provisioning」は、
ストレージ間で仮想ボリューム自体のリ
た。そこで、これまで実績を築いてきた
エンタープライズストレージとしては世界
モートコピーができるなど、ストレージの
ハードウェアを核にソフトウェアとサービス
で初めて *2 投入された技術だ。これによっ
仮想化技術には、日立の技術力が随所に
を組み合わせることで、顧客視点に立った
て、ストレージの容量設計にまつわる労力
活かされているのである。
ソリューションをワールドワイドで展開して
やコストを大きく削減できる。
いくという意味が込められています」
これらのメリットはストレージベースの
そのため、エンタープライズおよびミッ
仮 想 化 だ からこ そ 得ら れるも の だと、
ドレンジのストレージから、NAS、アーカ
RAIDシステム事業部 事業企画本部長の
*1 2004年9月
*2 2007年5月
NAS:Network Attached Storage
WAN:Wide Area Network
イビング製品、ローエンドストレージまで
を網羅し、システム/機器の検討、設計・
構築、運用・管理をサポートするなど、あら
ゆる顧客ニーズに対して柔軟に対応できる
ソリューションとしての性格を強めている。
一方、技術面で
“日立らしさ”
をよく表し
ているのが、エンタープライズストレージ
の「 H i t a c h i U n i v e r s a l S t o r a g e
日立製作所
RAIDシステム事業部
販売推進本部長
家近 啓吾氏
Platform V」
(以下、USP V)および
「Hitachi Universal Storage Platform
VM」
(以下、USP VM)で提供している、
他社製品も含めた高い接続性と日立独自
の仮想化技術だ。
まず、接続性では、他メーカーのスト
レージが接続可能なため、それらの一元
管理が可能となる。例えば、ストレージの
新規導入時にUSP V/VMを採用し、既存
日立製作所
RAIDシステム事業部
事業企画本部長
本間 繁雄氏
のストレージを廃棄せずにUSP V/VM配
下に置いてもよい。しかも、仮想化技術に
より、あたかも USP V/VMの一部として
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特集
関連ソリューション紹介
“アクティブアーカイブ”を推進する
専用ストレージアプライアンス
「Hitachi Content Archive Platform」
アーカイブデータをコンプライアンス用途に加え、日常のビジネスにも積極的に活かしていく。こうした“アクティブアーカイブ”が、さまざ
まなビジネスシーンに浸透し始めており、それを支えているのが、日立の「Hitachi Content Archive Platform」
(以下、HCAP)
であ
る。HCAPは、大容量データを簡単、安全、確実に長期保管できるアーカイブ専用ストレージアプライアンスであり、アメリカ航空宇宙
局(NASA)
をはじめ、すでに世界各地の企業や研究機関などに導入されており、大きな実績を上げている。
データアーカイブは
テープライブラリやDVDから
ハードディスクベースへ
強かった。
言えば、要求されたときに即座にデータを
そうした中で、内部統制をはじめとする
提示できないのでは、そのデータは何ら
コンプライアンス対応、さらにはアーカイ
かの改ざんが加えられた可能性があるとし
ブデータをビジネスに有効活用したいとい
て、証拠能力を失ってしまう可能性がある
昨今の企業内は、電子メール、画像、設
うニーズが出てきたことから、ハードディス
というわけだ。
計・開発データ、各種ドキュメントなど、非
クをベースとしたアーカイブソリューション
一方のビジネスの観点では、
「あらゆる
常に多くの非構造化データを抱えている。
が注目されるようになってきたのである。
帳票のデータをアーカイブ専用ストレージ
加えて、内部統制をはじめとするコンプラ
ただし、単にハードディスクに切り替え
に入れておき、高速な検索機能を駆使し
イアンス対応のため、契約書や伝票、財務
れば良いというものではない。ハードディ
て活用する」といったように、日常の業務
情報、電子メールなどはログデータを含め
スクベースのアーカイブソリューションが
を支援するための戦略ツールとして、アク
て、証拠として長期にわたって保存するこ
満たすべき要件について、日立製作所 情
ティブアーカイブの視点は不可欠となって
と、つまりアーカイブすることが必要とさ
報・通信グループ 事業主管の高梨勝也氏
きている。
れるようになった。
は、次のように考えている。
これまでアーカイブといえば、主にテー
「データ量の増大にともない、単なる蓄
プライブラリや DVDなどが使われてきた
積だけでなく、データをすぐに取り出して
が、メディア管理が煩雑なうえ、リストアす
活用できること、すなわち
“アクティブアー
るまでデータの破損が分からないなど、多
カイブ”
がキーとなります」
こうしたアクティブアーカイブに対する
くの問題を抱えていた。加えて、テープラ
現在の多くの法規制は、内部統制監査
さまざまなニーズに応えるのが、日立のコ
イブラリや DVDでは、アーカイブデータ
において「必要となれば迅速にデータを取
ンテンツアーカイブ向けの専用ストレージ
を活用するというよりも、保存という面が
り出せること」を企業に求めている。逆を
アプライアンス「 H i t a c h i C o n t e n t
運用管理の最適化を追求した
アーカイブ専用ストレージ
容量監視と自動バランスの機能
Hitachi Content Archive Platform
Hitachi Content Archive Platform
装置追加 ⇒ 容量拡張
初期ストレージ容量
拡張ストレージ容量
装置増設直後
装置追加 ⇒ 容量拡張
初期ストレージ容量
拡張ストレージ容量
自動負荷分散後
この機能によって個別のディスクの容量監視が不要になり、
ストレージ管理者は全体の容量を監視するだけで済む
10
Hitachi Storage Magazine Vol.1 │蔵
日立製作所
情報・通信グループ 事業主管
高梨 勝也氏
Archive Platform」である。
HCAPは、DVD-Rなどの追記型光ディ
スクのように、一度だけの書き込みと、そ
のデータの消去や変更ができないWORM
(Write Once Read Many:消去や変更
を出来なくする)機能を持ち、ファイル単
位でデータの改ざんを防止できるように
とながら既存のノードには目一杯にデータ
たことだが、それに加えて、アーカイブ
なっている。また、定期的なデータ真正性
が詰まっており、新しいノードは空の状態
データの厳重な保護と柔軟な運用を両立
チェック機能、データ消失の防止機能、暗
である。したがって、何もしなければ、その
で き ることも 、大 き な 要 因 となった 。
号化機能などの堅牢なデータ保護機能、
後もしばらくは既存のノードにのみアクセ
HCAPに格納されているアーカイブデー
高速全文検索ツールとともに、最大344T
スが集中するという状態が続いてしまう。
タは広く公開されているため、悪意によっ
バイトまでの容量拡張が可能という非常に
これに対して HCAPの自動負荷分散機
て改ざんされたり、システム障害やオペ
優れたスケーラビリティを備えている。
能は、ノードの追加が行われた際に自動的
レーターの不注意で消失してしまったりと
HCAPの数ある特長の中でも特筆して
にデータを移動させることにより、ノード
いった事故が起きたのでは、人類全体の
おきたいのが、その優れた運用性だ。
間の容量と負荷の最適なバランスをとる。
財産ともいえる貴重な研究資産が失われ
アーカイブ専用ストレージの運用におい
結果として、データ検索のトータルなパ
てしまうからだ。
ては、データの増加にあわせて装置(ノー
フォーマンスも向上することになる。
ド)
を増設していくことになるが、HCAPで
は「シングルネームスペース」と呼ばれる
機能が、それらのノードをすべてとりまと
めて 1つの仮想ファイルシステムとして見
国内に目を向けると、ある大手会社で
は、各支店で管理していた帳票データを、
NASAや国内大手会社の
大規模システムで高評価
中央のデータセンターにあるHCAPで一
括管理を行うようにした結果、これまでの
煩雑なメディア管理から解放され、全社規
せてくれるのである。
HCAPは、すでに世界各地で大きな実
模でのデータ検索にも即座に対応するこ
「HCAPでは複数のノードを運用する場
績を上げている。
とが可能となったという。
合でも、ユーザーは目的とするデータがど
例えば、アメリカ航空宇宙局(NASA)
アーカイブ向け専用ストレージに対する
のノードに保管されているのかを意識する
は、気象データシステム「OMIDAPS*」に
ニーズは、今後も確実に拡大していく。そ
必要はありません。また、HCAPが持つシ
HCAPを採用。地球大気に関する衛星観
れゆえ、
「ベースのストレージとして、ミッ
ングルネームスペースの機能によって、追
測データを収集管理し、従来に比べて圧
ドレンジのHitachi Adaptable Modular
加されたノードの自動認識が行われるため、
倒的に短時間で取り出せ、活用できるよう
Storage 2000シリーズを採用した新モ
サーバ側の設定変更なども一切不要であ
にした。現在、それらのアーカイブデータ
デルも検討しています」と高梨氏。今後に
り、ノードの追加がそのまま容量拡張となり
は、オゾン層や地球の気候変動といった環
向けて HCAPのラインアップは、ますます
ます」
(高梨氏)
境問題の研究に用いられている。
拡充されていくことになる。
ノードに関連して紹介しておきたいのが、
H C A P が採 用された最 大 の 理 由は、
「自動負荷分散」機能である。
ノードの追加を行った直後は、当然のこ
テープを用いたシステムに比べて、短時
間で必要なデータが取り出せるようになっ
*OMIDAPS:Ozone Monitoring Instrument Data
Processing System
蔵│ Hitachi Storage Magazine Vol.1
11
us
oc
Technology F
ストレ ー ジ 仮 想 化 の 技 術
解説
ビ ジネ ス ニ ー ズ に 応 える べく、つ ね に 進 化 を 続 け て い る ストレ ージ 製 品 。
そこ に は 、非 常 に 多 くの 最 新 テ クノ ロ ジー が 採 用 され て い る 。
本 稿 で は 、そうし た 中 で も 注 目 度 の 高 い 、
ストレ ージ に 採 用 され て い る「 仮 想 化 」の テ クノ ロ ジー に つ い て 解 説 す る 。
ストレージの仮想化
ばれるストレージ仮想化技術である。これ
ントローラ型」
と呼ばれる
(図1)。
らの方式は、仮想化機能を提供するアプラ
これは簡単に言えば、同ストレージに内
複数のストレージのリソースをプールし、
イアンスサーバやインテリジェントSANス
蔵されているコントローラ(制御回路)の
アプリケーションごとに必要とする論理的
イッチをサーバとストレージの間に挟むこ
ファームウェアレベルの機能により、仮想
なボリュームを割り当てる。こうしたストレ
とで、複数のストレージを統合するという
化を行うというもの。ストレージに最も近
ージ統合を実現するうえでの基盤となって
ものだ。
いところでのコントロールを意味する。ス
いるのが、ストレージの仮想化技術である。
これに対して、日立のエンタープライズ
トレージの外部で仮想化を実現するアプラ
もっとも、一口にストレージ仮想化と
クラスのストレージ「Hitachi Universal
イアンスサーバ型やスイッチ/ルータ型に
言っても、さまざまな形態がある。比較的
Storage Platform V/VM」
(以下、USP
比べて、信頼性や処理性能などで大きなア
広く採用されているのが、
「アプライアン
V/VM)が提供するストレージデバイスの
ドバンテージがあるのはそのためである。
スサーバ型」や「スイッチ/ルータ型」
と呼
仮想化技術は、
「ネットワークストレージコ
日立製作所 RAIDシステム事業部 事業
企画本部 製品企画部 部長の島田朗伸氏
は、USP V/VMが提供するストレージデ
図1:ストレージ仮想化技術の比較
バイスの仮想化技術について、次のように
アプライアンスサーバ型
スイッチ/ルータ型
ネットワークストレージ
コントローラ型
サーバ
サーバ
サーバ
語る。
「USP V/VMでは、コントローラで仮
想化を行うため、サーバからデータを受け
取ってディスクに書き出すまで、ステップ
ごとにパリティチェックなどを行いながら処
理を進めることができます。こうした機構
にまで踏み込んでいるからこそ、ストレー
ジを仮想化してもデータを保証できるの
SANスイッチ
SANスイッチ
です」
そして、USP V/VMの仮想化技術で重
仮想化
機能
要なのが、エンタープライズクラスのスト
仮想化機能
インテリジェント
SANスイッチ
SANスイッチ
レージとしては世界で初めて *1 搭載された
ボリュー ム 容 量 仮 想 化 機 能「 H i t a c h i
Dynamic Provisioning」である。
SANスイッチ
SANスイッチ
仮想化機能
この機能では、物理容量よりも大きな仮
想ボリューム容量をサーバに割り当てるこ
とができる。例えば、ストレージ全体容量
が 50Tバイトしかない場合でも、5 台の
サーバに対して 20Tバイトずつ、トータル
で 100Tバイトの仮想ボリュームを設定す
ストレージ
ストレージ
その他のストレージ
SAN:Storage Area Network
12
Hitachi Storage Magazine Vol.1 │蔵
*1 2007年5月
るといったことが可能だ。
クロードバランスコントローラの機構に
これを実現するのは、
「プール」
という仕
よって一元管理され、サーバから見えなく
組み。書き込みデータ空き容量をプール
されます。これにより、どちらのコントロー
で一元管理し、全体を把握することによ
ラを用いて、どのボリュームに対してデー
り、物理容量よりも大きな仮想ボリューム
タを書き出すのかといった、従来のような
容量を設定可能にしているのである。
アプリケーション側でのパス設定は不要と
なります」
コントローラの仮想化
つまり、AMS2000シリーズ内に設置
された 2枚のコントローラは、外のサーバ
「 H i t a c h i A d a p t a b l e M o d u l a r
などから見ると、あたかも 1 枚のコント
Storage 2000シリーズ」
(以下、AMS
ローラとして機能する。ただし、仮想的に
2000シリーズ)
にミッドレンジクラスとし
1枚としただけでは不十分である。
て世界で初めて * 搭載されたのが、
「ダイ
ダイナミックロードバランスコントロー
ナミックロードバランスコントローラ」
とい
ラは、2枚のコントローラおよびその配下
うコントローラの仮想化技術(図 2)。ちな
に接続されたボリュームの使用率を常にモ
みに、コントローラはストレージ内部にあ
ニタしている。そして、ある閾値 (しきい
り、外部からの命令と物理的なディスクを
ち )を超えてそれぞれの負荷にバラツキが
つなぐ役割を持つ。
生じてきた場合、パスの再設定を行うロー
2
日立製作所
RAIDシステム事業部
事業企画本部
製品企画部 部長
島田 朗伸氏
コントローラは、事前の性能設計や運用開
島田氏は、ダイナミックロードバランス
ドバランス(負荷平準化)処理を自動的に
始後のチューニング作業を不要にし、シス
コントローラを次のように説明する。
実施する。これにより、2枚のコントローラ
テム全体としてのパフォーマンスの最適化
「AMS2000シリーズは、独立して動
は負荷の偏りを最小限にした状態で稼働
と高可用性をもたらしている。
作する2枚のコントローラを持っています
することになる。
が、それぞれのコントローラはダイナミッ
このようにダイナミックロードバランス
*2 2008年10月
図2:ダイナミックロードバランスコントローラを採用した「AMS2000シリーズ」
従来の場合
「AMS2000シリーズ」
の場合
サーバ#1
サーバ#2
仮想
サーバ
仮想
サーバ
負荷不均衡
サーバ#1
サーバ#2
仮想
サーバ
仮想
サーバ
ダイナミックロードバランスコントローラ
コントローラ#1
コントローラ#2
コントローラ#1
コントローラ#2
設定変更
従来ディスクアレイ
AMS2000シリーズ
・手動によるパス設定が必要
・コントローラの負荷不均衡が発生
・パス設定が不要
・コントローラの負荷は自動均衡化
蔵│ Hitachi Storage Magazine Vol.1
13
事 例
NASAの気象データシステムで採用された
「Hitachi Content Archive Platform」が
オゾン層や気候変動の研究をサポート
NASA(アメリカ航空宇宙局)は、気象
NASA のコンピュータ技術者である
常に大きなメリットとなります」
データシステム「OMIDAPS」*1において、
カート・ティルメス氏は、次のように話して
このアーカイブシステムは今後、地球環
日立のコンテンツアーカイブ向けストレー
いる。
境に関係する他の NASA関連のプロジェ
ジソリューション「 H i t a c h i C o n t e n t
「データを取得するのが、困難だったり
クトでも活用される予定である。
A r c h i v e P l a t f o r m 」を 採 用した 。
時間がかかったりすると、私たちの研究の
OMIDAPSは、地球大気の構成成分に関
支障となります。そのため私たちは、自動
する科学データを収集管理しており、その
で高速にデータを取り出し、すべ
アーカイブデータはオゾン層や地球の気
てを自分のデスク上で取り扱え、
候変動の研究に用いられている。
しかも操作が容易なアーカイブテ
地球温暖化といった環境問題への関心
クノロジ ー を 求 め て い ました 。
が高まる中、NASAは研究者に対して安
Hitachi Content Archive
全・確実でタイムリーにデータを提供する
Platformの最も良い点は、テー
ため、より短時間でデータを取り出せるよ
プベースのシステムでの遅さを感
うにしたいと考えていた。また、70Tバイ
じさせることなしに、アーカイブ
トにもなるOMIDAPSのデータに対し、シ
データの入出力が可能なことで
ステム障害でもデータ損失がなく、オペ
す。アーカイブデータを容易に操
レータが不注意でデータを消去してしまう
作できるというのは、研究者は地
ことがないようなシステムが必要とされて
球の環境診断に集中できるという
いた。
ことであり、私たちの組織では非
*1 OMIDAPS:Ozone Monitoring Instrument Data
Processing System
アワード
日立のストレージが
顧客満足度調査とパートナー満足度調査でNo.1に!
日経コンピュータ(発行:日経 BP)が
ばれた。同調査は、13分野の製品やサー
製品/サービスを「Hitachi Storage
2008 年 8 月 15日号で発表した「第 13
ビスを対象に行っており、日立はブレード
Solutions」でワールドワイドで統一。そし
回顧客満足度調査」において、日立がスト
サーバ部門や PCサーバ部門、Webアプ
て 、そ の コ ン セ プト を「 S e r v i c e s
レージ専用装置部門で No.1に選ばれた。
リケーションサーバ部門でも No.1となっ
Oriented Storage Solutions」として
同調査は 21 分野の製品やサービスを対
た。なお、日経ソリューションビジネスは、
統合ストレージソリューションを展開してき
象に行っており、日立は Webアプリケー
ソリューション・プロバイダを読者対象とす
ている。上記の調査結果は、この取り組み
ションサーバ部門、統合運用管理ツール部
る専門情報誌である。
が浸透したことも大きく寄与していると考
門でも No.1となった。なお、日経コン
日立は 2007 年、ストレージ関連の全
えられる。
ピュータは、企業の情報システムやネット
ワークに携わる人を読者対象とする IT総
合情報誌である。
一方、日経ソリューションビジネス(発
日経コンピュータ 2008年 第13回顧客満足度調査 ストレージ専用装置部門1位
行:日経BP)
が2009年2月15日号で発
表した「パートナー満足度調査」でも、昨年
に引き続き、ストレージ部門で No.1に選
14
Hitachi Storage Magazine Vol.1 │蔵
日経ソリューションビジネス2009年
第11回パートナー満足度調査
ストレージ部門1位
アワード
日立のストレージソリューション導入団体が
米Computerworld Honors Programを受賞
スペイン特許商標庁
1988 年に米 IDGによって設立され、
トレージの容量管理を容易にし、費用対効
20 年の歴史を持つ Computerworld
果の高い情報環境を提供したことで、快適
スペイン特許商標庁は、200 年分にも
Honors Programは、社会とITの発展に
な医療環境の実現に大きく寄与した。
なる膨大な特許関連のファイルを保有し
貢献した ITソリューションを表彰する最も
ており、それらを快適に利用でき、運用管
名誉ある賞の 1つとして知られている。同
インディアナ大学
理が容易なストレージ環境を必要としてい
賞では、教育や公共、医療、ビジネスと
インディアナ大学は、学術研究に不可欠
た 。そ こ で ス ペ イ ン 特 許 商 標 庁 は 、
いった 10 分野を対象としており、そのう
なストレージ環境が古くなっていたことか
「Hitachi Universal Storage
ちの 3部野において、日立データシステム
ら、より快適で信頼性が高く、運用管理が
Platform」と「Hitachi Adaptable
ズのストレージソリューションを導入した
しやすいストレージソリューションへのリプ
Modular Storage」を採用し、データ量
次の団体が、2008年の受賞者となった。
レースを検討していた。インディアナ大学
の増加に柔軟に対応できる高い拡張性と
が採用したのは、
「Hitachi Universal
信頼性を持つ階層化ストレージを構築。こ
S t o r a g e P l a t f o r m 」と「 H i t a c h i
の階層化ストレージは、日立のストレージ
アンフィア病院
オランダで最も大きな総合病院である
Adaptable Modular Storage」
によるス
管理ソフトウェアにより、スペイン特許商
アンフィア病院は、電子カルテやレントゲ
トレージソリューション。これにより、スト
標庁にストレージの階層を意識させること
ン写真イメージといったデジタルデータの
レージの階層化と仮想化、そしてレプリ
なく、シームレスに利用できる環境を提供
急激な増加という課題を抱えていた。その
ケーションなどを実装でき、ダウンタイム
している。階層化ストレージの実装により、
ためアンフィア病院は、高いスケーラビリ
のない信頼性の高いストレージ環境を構
スペイン特許商標庁は、データアクセスの
ティとパフォーマンス、および高い可用性
築することができた。また、学内のスト
レスポンスが向上し、バックアップと災害
と信頼性を備えたストレージシステムを必
レージの一元管理を実現したほか、アプリ
復旧のための体制も万全になったことか
要としていた。日立のストレージソリュー
ケーションのパフォーマンスが最大 25%
ら、本来の業務に集中できる環境が整った
ションは、こうしたニーズに的確に応え、ス
向上した。
と評価している。
新 製 品
大幅にデータ処理の高速化を実現するSSDとデータの暗号化機能を追加
日立は 2008年 12月16日、エンター
の構築に際して、アクセス頻度が高いデー
プライズ向けディスクアレイ「Hitachi
タを SSDに、保存期間が求められるデー
暗号化機能を容易に導入することができ
Universal Storage Platform V/VM」
タは低コストなHDDに保存するなど、ユー
る。
に、SSD(Solid State Drive)の搭載を
ザーのニーズに合わせた柔軟な
可能にし、さらに暗号化機能を追加すると
データ配置が可能となる。
発表した。発売は 2009年 1月末としてお
一方、データ暗号化機能では、
り、当初の容量は 73Gバイトおよび 146
高 い 信 頼 性を誇る暗 号 化 方 式
Gバイトとなる。
SSDは、フラッシュメモリーを使用する
なシステム設定の変更が不必要なため、
(AES256ビット)
を採用。ディス
クアレイ装置のドライブにデータ
ことにより、高速にデータの読み書きを実
を格納する際に、ストレージコン
現する記憶装置。HDD
(Hard Disk Drive)
トローラ上で直接、データを暗
と併用することで、HDDのみのシステム環
号化し、保存することが可能とな
境に比べ、データの処理速度の大幅な高
る。また、サーバやスイッチなど
速化を実現する。また、ストレージシステム
の上位側リソースの使用や新た
Hitachi Universal Storage Platform V
AES
(Advanced Encryption Standard)
:米国商務省標準技術局
(NIST)
によって選定された米国政府の標準暗号化方式
蔵│ Hitachi Storage Magazine Vol.1
15
先
進
事
例
第一生命保険相互会社
http://www.dai-ichi-life.co.jp/
Hitachi Universal Storage Platformの
仮想化技術によるコスト低減および運用改善の実現
第一生命保険相互会社では、2005年 8月にシステム統合を目的とした「WISE(ワイズ)
プロジェクト」が順調に本番運用を開始した。
しかし、バックアップ運用にかかる時間の伸び、およびストレージのデータ量増加により、想定を上回る新たな課題が発生した。この
課題を解決するため、
「Hitachi Universal Storage Platform」のソリューションであるストレージデバイスの仮想化技術を活用し、コ
ストの発生を極力抑え、運用改善を実現したシステムを2006年5月、本稼働した。
1
はじめに
り、十分なパフォーマンスを確保し、また
3.2 Hitachi Storage Solutionsを活
バックアップ時間は約 4 時間以内に完了
用したストレージ課題の対策
(Step2)
し、目標を達成した。
命)は、第一生命情報システム株式会社
まず、ストレージデバイス仮想化技術に
よるストレージの仮想化・階層化を検討し、
第一生命保険相互会社(以下、第一生
2.2 本稼働後の新たな課題
Hitachi Universal Storage Platform
(以下、DLS)のシステム開発取りまとめの
当初、各サーバの業務データ容量は最
(以下、USP)
を採用した。アレイに複数の
下、拠点オンラインシステムを全面的に刷
低でも 150Gバイト必要であり、将来の
ストレージサブシステムを外部接続するこ
新するための「WISE(Win of our IT
増分も見込み 250Gバイトのディスクの
とにより、サーバから外部ストレージをア
Strategy and Efficient System)
プロ
割り当てを考慮して 9980Vのストレージ
レイの内部ディスクとして仮想的に扱える
ジェクト」を 2003 年より着手し、2005
容量を設計した。本稼働が始まり、システ
機能である。ハイエンド、ミッドレンジなど
年8月に本稼働を開始させた。既設オンラ
ムとして順調に稼働したが、時間経過とと
の複数のストレージをアレイのディスクと
インシステムは、各拠点にサーバシステム
もにバックアップ時間が長期化する問題や
して仮想化・階層化することにより、データ
を設置してデータセンターと連携する分散
予想以上のデータ容量増加があり、
「バッ
の重要度に応じて最適なストレージサブシ
型の形態をとっていた。拠点数は全国約
2,000ヵ所、クライアント数約 6 万台、
サーバ数 2,300台という大規模システム
クアップ時間に最長 12 時間を要する」、
「将来のストレージの容量不足」
という新た
な課題が発生した。
で、メールシステムなどの業務システムや
データの管理も拠点単位で実施していた。
WISEプロジェクトでは、拠点に分散し
ていた大量のサーバやデータを自社デー
ステムへのデータ配置が可能となり、トー
タルコストの低減を図ることができる。
さらに、Hitachi Universal Volume
ManagerとShadowImageを組み合わ
3
Hitachi Storage
Solutionsによる運用改善
せることにより、サーバレスで筐(きょう)
体間 Disk to Diskでのバックアップが可
能となる。ShadowImageの更新コピー
タセンターに集約することにより、
(1)運
3.1 課題に対する対策方針
機能と高速スプリット機能はバックアップ
用管理コストの低減、
(2)事業継続性の確
今回の課題への対策として、まずサー
時間短縮に有効である。
保、
(3)情報セキュリティの確保、
(4)情
バ台数を増やしてバックアップ能力を上
報集約によるデータの有効活用、という課
げ、単純にストレージ装置を増やす検討を
3.3 性能・信頼性を意識した Hitachi
題の解決を図った。
2
データセンターへの
システム集約と新たな課題
実施した。しかし、単にサーバ台数を増や
Universal Volume Manager接続
すだけでは、今後のデータ容量増加のた
性能・信頼性を確保するために以下の検
びにサーバ・ストレージの増設が必要にな
討を実施した。
ることから、根本的な対策とは言いがた
①性能を考慮した接続
い。DLSと日立グループは共同で以下の
両アレイ間での要求性能を満たすため
2.1 データセンターへのシステム集約(Step1)
方針によって再検討を実施した。
に、外部接続の 1パスで USPのプロセッ
第一生命は、データセンターへシステム
①サーバ可用性を向上するバックアップ方
サを占有させることにより、1パス当たり
を集約するために「Hitachi Storage
Solutions」、
「HA8000」、
「JP1」など、
日立のサービスプラットフォームコンセプ
トHarmonious Computingに基づく製
品群を採用した。このシステム構成によ
式
②重要度を考慮したデータのディスク配置
によるストレージ資産の有効活用
③システム性能を維持しながら、今回の開
発で発生するコストを極力抑止
最大の2Gビット/sの帯域を確保した。
②信頼性を考慮した接続
両アレイ間でのハードウェア障害に対す
る考 慮として、H i t a c h i A d a p t a b l e
Modular Storage 500(以下、AMS
※本稿は
「日立評論 2008.03」
に掲載した記事の縮刷版です。
16
Hitachi Storage Magazine Vol.1 │蔵
500)
のディスクを、二つのポートからそれ
ぞれ割り当てることで冗長化構成をとり、
リューム)へのバックアップは USP の
採用したため、業務サーバがバックアップ
ShadowImageを用いて実施した。
処理に占有されるという運用上の制約が
アクセスパスの耐障害性を向上させた。
なお、課題が発生していない業務サーバ
3.4 Step1における課題解決のためのシ
を残し、業務サーバに応じてUSPによる外
ステム変更および移行フェーズ
部ストレージの仮想化やサーバからの直結
Step1におけるシステム統合では、業
接続を残した柔軟な構成をとり、2006年
務データを9980Vに格納し、業務サーバ
5月、ストレージの再構築が完了した。
軽減された。
は、9980Vとサーバでの直結接続の構成
5
ここでは、第一生命保険相互会社の業
にインストールされたバックアップソフト
で、もう 1 台の 9980Vにバックアップ
データの格納を行った(図)。Step2にお
おわりに
務システムでのストレージ資産の有効活用
4
に仮想化を適用した事例について述べた。
仮想化技術採用による効果
まずStep1としてシステム集約を実現し、
ける外部ストレージの仮想化・階層化では、
Step2ではHitachi Universal Volume
下記の4フェーズを実施した。
Hitachi Universal Volume Manager
ManagerとShadowImageを組み合わ
①新たにUSPとAMS500を3台導入し、
で 3 種類のアレイのデータ再配置による
せ、ストレージ統合、ならびにバックアップ
適 材 適 所 化 を 進 め ることにより T C O
時間の短縮・ストレージ資産の有効活用を
USPの外部ストレージサブシステムとし
てAMS500を仮想化・階層化した。
(Total Cost of Ownership)の削減を
実現した。
②課題が発生している業務サーバの9980V
図った。再配置後も移行前と同等の性能
Step2では、
「仮想化ありき」ではなく
ディスクを、USPの外部ストレージサブシ
を確保でき、再配置後の 9980Vの空き
「さまざまな課題を解決しようとした結果、
ステムとして仮想化・階層化し、業務サー
領域は、今後の新規案件の業務データと
仮想化にたどり着き」、目的を達成した。
バもUSPに接続切り替えを実施した。
して再利用可能となった。
解決のプロセスでは、SEおよび日立製作
③ストレージ資産の有効利用のため、業務
また、Hitachi Universal Volume
所 RAIDシステム事業部が製品の特長を
データを USPに仮想化・階層化された
ManagerとShadowImageを組み合わ
活かし、顧客の運用の特性を考え、関係者
9980Vに残し、バックアップデータを
せることにより、バックアップ時間は、最大
との度重なる打ち合わせの結果、実現に
12 時間を要していたものが、データ容量
至った。さらに新たな仮想化技術は開発さ
④バックアップ時間短縮のため、9980V
AMS500に再配置した。
に関係なく2時間程度に短縮され、さらに
れるが、課題解決にはこのような取り組み
(正ボリューム)から AMS500(副ボ
外部ストレージ間でのバックアップ方式を
の重要度はさらに増すものと思われる。
外部ストレージの仮想化・階層化を採用したストレージサブシステムの構成図
Hitachi Universal Storage Platform
業務サーバB
仮想
仮想
ボリューム
ShadowImage
ボリューム
仮想
ボリューム
仮想
ボリューム
仮想
業務サーバA
ボリューム
HA8000
仮想
ボリューム
Hitachi Universal Volume Manager
実
ボリューム
実
ボリューム
実
ボリューム
9980V
実
ボリューム
実
ボリューム
実
ボリューム
Hitachi Adaptable Modular Storage 500
蔵│ Hitachi Storage Magazine Vol.1
17
先
進
事
例
ユナイテッド航空
http://www.united.com/
新技術の導入に慎重な社風を変えた
日立のボリューム容量仮想化機能
システムの停止が、社会に大きな影響を与えてしまう。最悪のケースでは、その範囲が世界規模になることも想定しなければならない。
航空最大手のユナイテッド航空が、IT投資において新技術の導入に慎重な姿勢を貫いてきているのは、こうした背景が大きく影響し
ている。ところが、その同社がストレージ分野の先端技術である日立のボリューム容量仮想化機能「Hitachi Dynamic Provisioning」
を最初に実装した企業となった。
ストレージの増強ではなく
ストレージ環境の改善へ
誘引する要因の1つとなっていた。
よく理解しているものの、最新技術の採用
こうしたストレージ環境では、ストレージ
に関しては非常に慎重な姿勢を貫いてき
管理者の作業負荷が大きいことも問題で
ていた。ミッションクリティカルな同社のビ
世界規模のフライトネットワークを持つ
あった。ユナイテッド航空のストレージ管理
ジネス要件が、そうさせていたのである。
航空最大手のユナイテッド航空。同社のグ
者は、日々の業務のおよそ50%をストレー
そのため、ユナイテッド航空は Hitachi
ループでは、1 日あたりのフライト数が
ジの容量管理に費やしていたのである。
3,600を超えるという規模を誇る。また、
ただし、IT投資の予算は縮小される傾向
「ディスク容量はどれくらい減らせるのか」
世界 159ヵ国 912ヵ所の空港を結ぶ国際
にあり、そのため同社の IT 部門は、スト
「既存のアプリケーションに悪影響はない
的な航空会社ネットワーク「スターアライ
レージを増強するのではなく、ストレージ
か」
「管理負荷はどのくらいか」
「移行作業
アンス」の創立メンバーの企業としても知
環境の改善によって対処する必要に迫られ
の負荷はどのくらいか」などを入念に検証
られ、航空業界に絶大なる影響力を持って
ていた。
していった。
いる。
ユナイテッド航空にとって、フライトネッ
トワークの確実な運営は社会的な責務で
あり、それを支えるデータセンターは同社
Dynamic Provisioningを導入する前に、
検証対象としたのは、Microsoft SQL
最新技術に慎重な社風ゆえ
仮想化機能を入念に検証
Serverのデータベースを利用するアプリ
ケーション。同データベースのデータを増
やすことで、自動拡張機能を確認しようと
にとって最も重要なビジネスインフラの 1
そうした中で浮上してきたのが、日立の
いうわけだ。
つと言っても過言ではない。それゆえ、信
エンタープライズストレージ「Hitachi
テストで使われたデータは、600万件。
頼性と可用性の確保、および各データへ
Universal Storage Platform V」
(以
実環境で割り当てられていたのは 500G
下、USP V)
のボリューム容量仮想化機能
バイトだったが、テスト環境では 1,500G
「Hitachi Dynamic Provisioning」であ
バイトの仮想ボリュームを設定。ただし、
の高速アクセスなど、情報環境は高い水
準を維持することが求められている。
その同社が保有するストレージの容量
る。
専有するのは 264Gバイトとなり、実環境
は、約 500Tバイト。ところが、ほとんど
と い う の も 、同 社 に は「 H i t a c h i
の半分で済むことになる
(図)
。
の企業がそうであるように、ユナイテッド
Universal Storage Platform」(以下、
航空もデータ量の急速な増加による容量
USP)の仮想化機能による階層化ストレー
不足という課題に直面していた。
ジ の 活 用 実 績があり、そこに H i t a c h i
管理コストや新規投資を
20%以上削減できると判断
ユナイテッド航空が未使用のディスク容
Dynamic Provisioningが加わると、よ
量とデータベースに割り当てられたスト
り効果が上がると考えるのは自然な流れで
Microsoft SQL Serverによるテスト
レージの空きスペースから試算したとこ
あった。ちなみに、階層化ストレージには、
は、ストレージの利用率、ストレージの性
ろ、実際に利用されているのは 54%~
USPの配下にミッドレンジストレージを接
能、および管理負荷の軽減など、ユナイ
60%であった。しかし、各システムの担当
続することで IT投資を抑え、さらに複数の
テッド航空に多くのメリットを示す結果と
者は、予想される最大のディスク容量を要
ストレージシステムを 1つのディスクアレ
なった。
求するため、そのほとんどが既に割り当て
イとして管理することで、ストレージ管理
「データベースの性能向上は顕著に表
られており、実際には空き容量とは言えな
コストを軽減している。
れました。また、ディスク容量の管理が不
い。この何ヵ月も何年間も使用されない
ユナイテッド航空の IT部門は、こうした
要になるばかりか、新たなストレージの追
可能性があるディスク容量も、容量不足を
最新技術には多くのメリットがあることを
加時にアプリケーションを停止する必要が
18
Hitachi Storage Magazine Vol.1 │蔵
ないことも確認できました」
と、ユナイテッ
有効な容量をチェックすることのみになり
264Gバイトであったことから、1 年後の
ド航空のデータベースアプリケーション開
ます」
と、ユナイテッド航空でストレージ管
使用量も約 50%の 1Tバイトになると予
発者であるユージン・ケーガン氏。予想以
理者を務めるマリナ・スターナー氏は検証
想。この結果から、今後の 3年間で 5万ド
上の結果に驚きを隠せなかったという。
時の感想を語った。
ル以上のコスト削減を見込んでいる。さら
ストレージ性能は以前よりも 30%向上
また、Hitachi Dynamic Provision
に、ユナイテッド航空は、ストレージ管理者
した。すべてのアプリケーションにおいて
ingにより、ディスク容量を劇的に減らせる
の作業負荷軽減により、ストレージの管理
同様の性能向上が見られるとは限らない
ことも確認できた。余分なストレージを割
コストが1年あたりおよそ1万6,000ドル
と同社は冷静に判断するも、全体的な底
り当てる必要がないからだ。これにより、
削減になると考えている。
上げは確実だと見ている。
ユナイテッド航空では、新たなストレージ
この 1つのアプリケーションのコスト削
ストレージの管理負荷は、大幅に軽減さ
投資を 20%から 30%ほど抑制できると
減 だ け で も 、H i t a c h i D y n a m i c
れることになりそうだ。Hitachi Dynamic
考えている。
Provisioningソフトウェアの導入費用を
Provisioningにより、ストレージの容量
導入時の作業負荷としては、Hitachi
相殺することになる。同社では何百ものア
不足における対応が不要になるばかりか、
Dynamic Provisioningボリュームを作
プリケーションが稼働しているため、その
将来を予測したディスク容量の割り当てと
成するのも、標準のデータボリュームと同
効果は絶大である。
いった作業も必要ない。最低限のディスク
じくらい簡単であったという。
ユナイテッド航空は現在、これらの新技
容量を割り当てておけば、あとは自動的に
術を利用して、ストレージ環境の統合化と
ボリューム容量仮想化により
すべてのストレージを統合
ストレージはすべて USP Vに接続され、
気にするだけでよい。これによりユナイ
ユナイテッド航空は、実環境において
リューム下で管理されることになる。
テッド航空は、ストレージの管理コストを
Microsoft SQL Serverのデータベース
「今後については全く迷いがありませ
20%から 30%ほど削減できると考えて
に 500Gバイトの容量を割り当てており、
ん」
と、ユナイテッド航空でチーフアーキテ
いる。
1 年後には 2Tバイトにまで成長すると予
クトを務めるゲーリー・フィラファス氏は、
「私のすべき作業は、ストレージ全体で
想していた。実際の使用量は約 50%の
力強く語った。
設定してくれるからだ。また、システムごと
にディスク容量を監視する必要がなく、ス
トレージ管理者はストレージ全体の容量を
階層化を推進している。今後必要とされる
Hitachi Dynamic Provisioningボ
実環境とテスト環境におけるストレージの設定と利用容量の違い
SQLデータベース──一般的なボリューム
実データ量:264Gバイト
データベース使用容量:389Gバイト
割り当てたディスク容量:500Gバイト
ストレージ使用量:500Gバイト
SQLデータベース──Hitachi Dynamic Provisioningボリューム
実データ量:264Gバイト
データベース使用容量:264Gバイト
割り当てたディスク容量:1,500Gバイト
ストレージ使用量:264Gバイト
この部分は他のアプリケーションも使用可能
蔵│ Hitachi Storage Magazine Vol.1
19
日 立 ストレ ー ジ ソリュー ション 製 品 ラ イ ン アップ
S e r v i c e s
O r i e n t e d
S t o r a g e
S o l u t i o n s
ストレージシステム
エンタープライズやミッドレンジ、ローエンドといった各クラスに最適
化されたストレージに加え、さまざまなニーズに対応できる柔軟な NAS
(Network Attached Storage)
システムやアーカイブ用ストレージも
ラインアップしている。
ローエンドストレージ
「Hitachi Simple Modular Storage 100」
ディスクアレイの導入・運用・保守といったストレージ管理全体にわたっ
て、ユーザー自身の簡単な操作で取り扱うことができるローエンドスト
レージ。簡易セットアップウィザードにより、装置開梱からサーバによる認
識までを約 30分で実行できるシンプル導入を実現。運用・保守について
エンタープライズストレージ
「Hitachi Universal Storage Platform V/VM」
も、システム管理者の負担を大幅に軽減している。一方で、RAID6の採
日立が提唱する
「Services Oriented Storage Solutions」のコン
用や、主要コンポーネントの二重化/冗長化を行うなど、高信頼性ニー
セプトを実現する中核ストレージ。エンタープライズクラスとしては、世
ズにも応えられる機能を持っている。
界で初めて * ボリューム容量の仮想化を実現したことで、ユーザー企業
1
による容量設計が不要となっている。これにより、ストレージへの投資対
効果の向上と管理コストの大幅な削減が可能である。また、異機種スト
ファイルストレージ(アーカイブ)
「Hitachi Content Archive Platform」
レージが混在する環境でのデータ管理/コピー運用の統一化、簡素化を
電子メールや契約書、公的文書、図面などのコンテンツを長期保管す
実現。ストレージ仮想化機能の進化により、多様化する業務環境に最適
るコンテンツアーカイブ市場向けストレージアプライアンス。データ改ざ
なストレージ環境を提供し、データ量増大やサービス拡大にも柔軟に対
ん防止機能、高速な全文検索とデータアクセス、高い信頼性と優れたス
応することができる。
ケーラビリティといったアーカイブシステムの要件に最適化された機能を
*1 2007年5月
持つ。また、ハードウェアとソフトウェアをオールインワンで提供すること
*2007年5月
ミッドレンジストレージ
「Hitachi Adaptable Modular Storage 2000 シリーズ」
クラス最高の高性能・高信頼アーキテクチャーを搭載するミッドレンジ
ストレージ。システム稼働中の性能調整を自動化し、容易な運用管理を
により、既存のシステムに容易に追加、導入できるようにしている。
ファイルストレージ(NAS ゲートウェイ)
「Hitachi Essential NAS Platform」
実現する
『ダイナミックロードバランスコントローラ』
をミッドレンジクラス
FC(Fibre Channel)
インタフェース接続により、任意の日立ディスク
としては世界で初めて * 搭載している。また、システム環境の変動にも動
アレイサブシステム製品と接続可能なNASゲートウェイ製品。既存SAN
的に追従することができ、サーバの仮想化などによる上位側の大幅なシ
(Storage Area Network)環境との融合が可能であり、既存資産を有
2
ステム環境の変化にも、ユーザーに複雑な構成を意識させずに、スト
効活用できることから、少ない投資でコストパフォーマンスに優れたスト
レージ側で柔軟に対応する。
「Hitachi Adaptable Modular Storage
レージシステムが構築できる。
2000シリーズ」は、多彩なビジネスニーズに応えるべく、
「2500」
「2300」
「2100」
という3つのモデルを用意している。 *2 2008年10月
このほか、ストレージに蓄積される大切な情報を不慮の消失から復元す
ることができるバックアップ用のテープアレイ装置も用意している。
先進の仮想化ソリューションを提供する
エンタープライズストレージ
性能・機能
エンタープライズストレージ
Hitachi
Universal Storage Platform V
Hitachi Universal
Storage Platform Vのエントリーモデル
Hitachi
Universal Storage Platform VM
ミッドレンジストレージ
業務に適応して拡張できる
高性能ストレージ
Hitachi
Adaptable Modular Storage
AMS2100
ローエンドストレージ
ファイルストレージ
20
Hitachi Storage Magazine Vol.1 │蔵
SMS100
デジタルコンテンツを
長期保存するための
ストレージアプライアンス
Hitachi
Content Archive Platform
AMS2500
AMS2300
シンプル導入、
シンプル運用、
シンプル保守を実現したストレージ
Hitachi Simple Modular Storage
コストパフォーマンスに優れた
NASゲートウェイ製品
Hitachi Essential NAS Platform
スケーラビリティ
ストレージ管理ソフトウェア「Hitachi Storage Command Suite」
ストレージ管 理ソフトウェア製 品 の 総 称を「 H i t a c h i S t o r a g e
Command Suite」
として体系化し、以下の製品を提供している。
ストレージシステム稼働管理
「Hitachi Tuning Manager Software」
SAN/NAS環境に分散するサーバ、データベース、ストレージ装置、
スイッチを監視し、ネットワーク全体から個々のリソースまで、性能や容
ストレージハードウェア管理
「Hitachi Device Manager Software」
量情報を統合的に管理、分析、予測する。リソース関連の情報は GUI
大規模な SAN/NAS環境に分散するストレージのディスクリソースや
ハードウェア構成を一元的に管理。
「ストレージ装置別」
「サーバ別」
「グ
(Graphical User Interface)
で簡単に確認できるため、性能ボトルネッ
ク解析時にも役立つ。
ループ別」など、さまざまな単位による運用管理を実現する。
データプロテクション管理
「Hitachi Protection Manager Software」
ストレージリソース割当管理
「Hitachi Provisioning Manager Software」
日立ディスクアレイサブシステムの高速なボリュームレプリケーション
ボリュームの割り当て・拡張に必要となる複雑な操作が、管理コンソー
機能、データベース製品、アプリケーション製品、バックアップ管理製品
ルからの一元的な操作で容易に行えるようになる。ストレージ装置の設
を統合的に制御し、確実なデータ保護運用を支援する。
定からサーバでのファイルシステム作成までの一連の操作を簡素化し、
管理者の負担を軽減する。
ストレージレプリケーション管理
「Hitachi Replication Manager Software」
日立ディスクアレイサブシステムの高度なボリュームレプリケーション
データ入出力パス管理※
「Hitachi Dynamic Link Manager Software」
(TrueCopy/Universal Replicator/ShadowImage/Copy-on-write
サーバからストレージ装置までのデータ入出力パスを多重化すること
Snapshotによるボリュームコピー)機能を使った、レプリケーションのペ
で、ストレージアクセスの負荷分散を図り、アクセス性能を向上させる。
ア作成・削除・設定変更などの構成管理や稼働監視を支援。レプリケーショ
特定のパスに障害が発生した場合でも、
「残りのパスで縮退運転」
「別の
ン環境の効率的かつ確実な管理により、バックアップ/ディザスタリカバ
待機パスへ自動切り替え」
といった運用ができる。
リシステムの安定稼働が可能になる。
階層ストレージリソース管理
「Hitachi Tiered Storage Manager Software」
グローバル入出力パス稼働管理※
「Hitachi Global Link Manager Software」
大規模ストレージシステムを構成する全サーバに対して、Hitachi
業務システムに影響を与えることなく、オンライン中のデータ移行
(マイ
Dynamic Link Manager Softwareで多重化したデータ入出力パス
グレーション)
を実現。データの利用価値・特性やライフサイクルに応じて適
の稼働状態をリアルタイムに集中監視し、障害に関連した複数サーバの
切なストレージにデータを移行したり、ストレージ装置内でのリソース競合に
入出力パスを一括操作するなど、ストレージシステムの安定稼働を支援
よる性能劣化時に別ボリュームへデータを移行するなどの運用を支援する。
する。
※データ入出力パス管理「Dynamic Link Manager」
と、グローバル入出力パス稼働管理
「Global Link Manager」
を同梱した
「Dynamic Link Manager Advanced」
を提供。
ストレージハードウェア管理
複数・異機種ストレージ装置を一元的に管理し、
ストレージ運用を簡素化
階層ストレージリソース管理
オンライン中のデータ移行を実現し、
ストレージ資産の効率的活用を支援
ストレージリソース割当管理
サーバへのボリューム割り当てや
ファイルシステムの作成操作を簡素化
対処
構築
データ入出力パス管理
多重化したデータ入出力パスを最大限に活用し、
ストレージアクセスの可用性を向上
運用・監視
データプロテクション管理
グローバル入出力パス稼働管理
日立ディスクアレイサブシステムの高度な
バックアップ・リストア操作を簡素化し、確実なデータ保護を実現
データ入出力パス管理で多重化した
すべてのサーバのパス稼働状況を集中監視
ストレージレプリケーション管理
ストレージシステム稼働管理
SAN環境に分散するボリュームレプリケーションの
構成・稼働状況を一元管理
SAN/NAS環境全体の性能・容量を一元的に監視し、
ストレージシステムの安定稼働を支援
SAN:Storage Area Network NAS:Network Attached Storage
蔵│ Hitachi Storage Magazine Vol.1
21
日立のストレージといって何を思い浮かべて
くれるだろう。ストレージ仮想化、高性能に加
え、信頼性が高いということであってくれると
うれしい。われわれは、信頼性を高めることに
非常に力を入れている。
今日のストレージは、OS並みの規模を持つ
マイクロプログラムで動いている。われわれ
は、日々寄せられるお客さまや、パートナーか
らの要求に応えるために、このマイクロプログ
ラムを改良し続けている。メジャーバージョン
信頼性確保へのこだわり
column
アップデートが年 4 回程度、つまり3カ月に 1
となるストレージを外部ストレージと呼んでい
る)。しかし、ストレージによっては、ベンダー
固有のコマンドを使っていたりする。つまり、
実際にシステム検証してみなければ、正常に
外部ストレージとして動くかどうかがわからな
いのだ。そのため、お客さまからストレージデ
バイスの仮想化の要求があると、実際にその
ストレージで検証を行う。われわれだけでは準
備 が で き な い 場 合 は 、H i t a c h i D a t a
Systems Corp.をはじめ、世界中のパート
ナーにも協力を依頼して検証を行っている。
回のペースである。
また、運用面の検証でも、さまざまな課題
マイクロプログラムがアップデートされる
に対応している。バックアップ運用での例を挙
と、出荷後に不具合が発生しないよ
げると、このようなことがあった。
うに、徹底してシステム検証を行う。
バックアップ対象となるデータは、
システム検証では、接続確認などの
外部ストレージ内にあるのだから、
基本的なものから実際の運用を想
実際に、外部ストレージからデータ
定したものまで、さまざまな検証を
を読み出してみる。しかし、更新さ
行う。内容が多岐にわたるため、多
れているはずのデータが更新され
くの装置を 24時間稼働し続けて検
ていない。何が起きていたかという
証を進めていく。そのため、われわ
と、更新データは、ストレージコント
れがシステム検証に費やす時間は
ローラのキャッシュメモリー上にま
年間延べ数百万時間にも及ぶ。
だあったのである。外部ストレージ
こうした検証をクリアして、ようや
に書き込まれる前に、外部ストレー
く出来上がったマイクロプログラム
だが、これが動作するハードウェアの
信頼性が低いと、せっかくのマイクロ
日立製作所
RAIDシステム事業部 開発本部 担当本部長
橋本 崇弘
プログラムも台無しになってしまう。
ジからデータを読み出したため、更
新前のデータが読み出されたという
わけだ。ストレージの動作としては
正常だが、ストレージ仮想化環境で
日立はもともと「モノづくり」が原点の会社
そして、出荷された装置が正常に稼働してい
お客さまの運用に余計な負担を強いることの
であるため、ハードウェアの信頼性には徹底的
るか 24 時間体制で世界中の装置を監視し、
ないよう改良を行った。このように、お客さま
にこだわる人間がそろっている。そのため、マ
万一の障害に迅速に対応するため、その中枢
の運用に柔軟に対応しつつ、データ保全性を
イクロプログラム同様に、ハードウェアの検査
となるサポートセンターを世界に4カ所設置し、
確保するための改良と検証を繰り返している。
にも多くの工数をかけている。大型のディスク
つねにどこかのサポートセンターでグローバル
アレイの組立ては約 5 時間、つまりほぼ半日
に24時間対応可能な体制を構築している。
で終わる。そして、ここからさまざまな検査が
われわれは絶えず先進的な技術を各製品に
いち早く取り込む努力を行うが、一方で信頼
行われる。低温から高温までさまざまな温度
ここ数年、日立のストレージは、仮想化技
性の高い製品を提供するためにも、日々格闘
環境での正常動作を検査し、高負荷状態にお
術、特にストレージデバイスの仮想化で世界
している。今後、日立のストレージを目にする
いて十分な性能が満たされているかなどの検
中に認知されている。このストレージデバイス
機会があったときに、われわれのこうした取り
査を 24 時間×6日間かけて行う。そのあと、
の仮想化が、なかなかの曲者だった。ストレー
組みを思い出してもらえると幸いである。
さらに単一障害でも稼働し続けるかを検査する
ジコントローラによるストレージ仮想化という
「擬似障害テスト」、装置稼働中の保守などの
世界初に挑戦し、今まで経験したことのない、
検査を行い、日立の基準に満たない装置を徹
さまざまな課題が発生した。
底して洗い出す。このような検査に合格した装
ストレージデバイスの仮想化機能は、標準
置だけが最終工程に進み、出荷検査を経て、
プロトコルに準拠しているストレージであれば
めでたく出荷となる。
仮想化できる仕様にしている
(この仮想化対象
22
Hitachi Storage Magazine Vol.1 │蔵
1984 年
(株)
日立製作所入社。小田原工場
(現
RAIDシステム事業部)
にて、ディスクアレイ装置
の海外展開に従事。2003 年 4月より海外事業
企画部長を担当、2006 年 4月には事業企画本
部 製品企画部長を担当、2006 年 10月には事
業企画本部 担当本部長を担当後、2007年 10
月より現職。
Services Oriented Storage Solutions
「Services Oriented Storage Solutions」とは、みなさまの業
務に重点をおくことにより、複雑なシステム構成やその運用を意識し
ていただくことなく、ストレージ資産の最適な活用を実現する日立スト
レージソリューションのコンセプトです。
このコンセプトの下、日立はみなさまのビジネスや ITシステムの価
値を高めつつ、ストレージの TCO(Total Cost of Ownership)を削減し、
ROI(Return On Investment)向上を支援していきます。
編集後記
蔵とカギ
蔵のカギを手に持ったことはありますか。
江戸時代の蔵は、平和な時代であったために、あまりカギを使うことがなかった
そうです。とはいえ、まったくなかったわけではなく、例えばカギの先が直角に曲
がった形状になっている金属製のものが使われていました。そのカギは、先を蔵の
扉の穴に差し込んで、ぐるっと回して施錠を解くのですが、なかなか文章での説明
は難しいですね。
ところで、カギカッコ
(鉤括弧)の「鉤」ですが、その蔵のカギ
(鍵)
をイメージして
名づけたとの説があります。
「鉤」
とは、先が曲がった器具を意味するとのことです
から、うなずけます。日本人にとって蔵は、とても身近な存在だったとも言えるの
でしょうね。
本誌は、その「蔵」をタイトルにし、この度、創刊させていただきました。
「蔵」に
は、情報の保管のみではなく、その活用を目指す日立ストレージソリューションの
意気込みを込めています。
そして、
「蔵」ではストレージにまつわるさまざまな最新情報をお届けするととも
に、ストレージ資産の最適な活用を実現するための「カギ」
となるようなご提案をさ
せていただく所存でございます。
末永く、お読みいただけますようお願い申し上げます。
[企画・編集]
株式会社日立製作所 RAIDシステム事業部
〒140-8573 東京都品川区南大井六丁目26番2号
大森ベルポートB館12F
http://www.hitachi.co.jp/storage/
本誌に記載している会社名・製品などは、それぞれの会社の商標または登録商標です。
蔵│ Hitachi Storage Magazine Vol.1
23
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