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食物繊維(アップルファイバー)を 用いた便性異常の改善の

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食物繊維(アップルファイバー)を 用いた便性異常の改善の
高齢者の栄養管理
最 新 News Vol. 4
食物繊維(アップルファイバー)を
用いた便性異常の改善の試み
つくばセントラル病院
外科・日帰り手術センター長 看護部
写真:山本祐二
文責:山本
祐二 はじめ に
一般に、下痢、便秘など、便性異常に食物繊維の摂取が
有効とされている。経腸栄養を必要とする患者、特に高
齢者では、消化管の機能低下による下痢や便秘を発症し
やすい。そのような場合、不足している食物繊維を補う
ことで問題が解消することが多い。当院では、経腸栄養
患者にこうした問題が発生した場合の第一選択として、
アップルファイバーを用いている。今回、当院でのアッ
プルファイバー使用経験を紹介する。
当院におけるアップルファイバーの使用条件
下痢、便秘などの便性異常で、細菌感染および器質的疾
患が否定あるいは考えにくい場合に、アップルファイバ
ーを経管注入する。
対 象
2012 年 5 月に療養病棟入院中の嚥下障害による経管経
腸栄養患者7名
■ 対象者年齢:45歳∼76歳(平均年齢61.6±13.7歳)
(男性3名、女性4名)
■ 期 間:観察期間2週間(観察期間終了後も必要であ
れば使用は継続)
■ 原疾患:脳神経疾患6名、慢性腎不全合併糖尿病性腎
症1名
■ 便性状:下痢の患者4名、便秘傾向の患者3名
アップルファイバーの使用方法
アップルファイバーを1回1∼ 2包、
1日当たり2∼3回(計3包∼6包)
を、流動食注入後に常温の水に溶
いて注入した。
アップルファイバー栄養成分(一袋2.5g当り)
エネルギー たんぱく質 脂質 糖質 食物繊維 ナトリウム リ ン カリウム
7kcal 0.1g 0.1g 0.8g 1.3g 0mg 3mg 12mg
結 果
下痢傾向の4例は、アップルファイバー 使用中は排便回
数が優位に減少した(p<0.05)。また、便性も全例で水様
便から普通便へと改善した。便秘傾向の3例は、排便回数
に著変はないものの、便性は軟らかくなり保水性が高ま
ったと考えられた
(右記表参照)
。ただし、便秘傾向の患者
のうち2例については、アップルファイバー注入前から
大谷
勝枝
緩下剤を使用しており、念のため注入中の2週間にも2日
∼3日毎に使用した。
アップルファイバーの注入は、すべて順調に行われ、作業
上のトラブルは発生しなかった。また、期間中に排便状
況が増悪したケースは1例も認めなかった。アップルフ
ァイバーによるアレルギー・発熱・発疹等、急性期の有
害事象もなく安全に使用できた。
①下 痢
使用前平均
使用前
使用中平均
使用中
性別 年齢 病名 使用流動食 便性
便性
排便回数
排便回数
男性 68
脳出血
K-4S
1.5回
水様便 普通便
1回
女性 76
腎不全 DM HD
リーナレン
経口とろみ食
4.5回
水様便 普通便
1.9回
男性 80
脳梗塞 DM
K-4S
2.5回
水様便 普通便
1.4回
リーナレン
2回
水様便 普通便
1.1回
2.63回
1.35回
女性 46
腎不全 DM 脳出血 HD
平均 67.5
②便秘
使用前平均
使用前
使用中平均
使用中
性別 年齢 病名 使用流動食 便性
便性
排便回数
排便回数
女性 60
くも膜下出血
K-4S
3.5回
軟 便 軟 便
2.4回
男性 46
頭部外傷
K-4S
0.7回
硬い便 普通便
0.5回
女性 55
脊髄腫瘍
K-4S
1.5回
硬い便 普通便
1.3回
1.90回
1.40回
平均 53.7
食物繊維について
食物繊維は、一般的に、消化管内容物を膨張、潤化させて、
食塊を大きくすることで蠕動運動を促進し、糖質、脂質
等の吸収を緩徐にすると言われている。食物繊維には、不
溶性のものと、水溶性のものがある。セルロースに代表さ
れる不溶性食物繊維は、保水性が高く、腸管内で水分を
吸収して膨潤化し、結腸では便容積を増大させて、蠕動
運動を刺激し、排便を促す。一方水溶性食物繊維は、食塊
を大きくして粘性を増し、胃腸内の食物の滞留時間を延
ばすことで便形状を整える。加えて、糖やコレステロー
ルの吸収を緩やかにすると言われている。アップルファ
イバーは、不溶性食物繊維を約85%、水溶性食物繊維を
約15%含むため便性改善に適用しやすい。ただし、炎症
性腸疾患患者などでは食物繊維の刺激が強い場合がある
ので注意が必要である。
院内で使用しているその他の食物繊維について
R E F - P1
( 粘度調整食品)は一袋90g中に、水溶性食物
繊維であるペクチンを1.4g 含んでいる。流動食を胃内
で半固形化することで 、胃食道逆流の予防、リーク改善
目的に使用しているが、ペクチンによる水溶性食物繊維
の働きにより下痢症状の改善にも効果を発揮する。当院
でもアップルファイバー で下痢の改善効果が弱い場合に
は、REF- P1を 使用する事で、便性の改善を図っている。
食物繊維の種類と生理作用
●食物繊維とは
食物繊維は人の消化酵素によって消化吸収されない、食物に含まれている難消化性成分の総称である。食物繊
維の効果としては古来から小麦ふすまに便秘予防効果があることが知られていたが、1960年代以降様々な生
理作用が明らかになってきた。食物繊維は大きく水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けられるが、それぞれ
生体への影響は異なっている。
分類
水溶性食物繊維 不溶性食物繊維
食物繊維名称
ペクチン
多く含む食物
リンゴ、レモン
など
低分子
グアーガム
寒天
グアー豆
紅藻類
難消化性 ポリデキス
デキストリン トロース
トウモロコシ
デンプンなど
トウモロコシ
デンプンなど
を加工
を加工
セルロース
リグニン
キチン、
キトサン
きのこ
ピーナッツ
エビ、カニ
機 能 粘性の増加 吸収阻害 保水性 発酵性
生理作用
消化管通過速度の
遅延、下痢の改善
消化管各部位で発現する
生理作用
小腸
●血清インスリンの分泌刺激及び
糖尿病患者の血糖値の上昇抑制
、
●小腸粘膜の保護、
消化管ホルモン分泌への影響など
参考:
(食物繊維 基礎と応用,日本食物繊維学会編集委員会編より改編)
血糖値の上昇抑制 便秘の改善 腸内細菌叢の改善
胃
●粘性増加による
胃排出速度の遅延
大腸
●大腸がんなどの予防 、
●プレバイオティクス効果
乳酸菌やビフィズス菌などの
有用細菌に選択的に利用され、
有害菌の増殖を抑制して腸内
細菌叢のバランスを改善する
●保水性・かさ形成による便性改善
、
■ 発 行:株式会社医薬広告社
■ 資料提供:キユーピー株式会社
201211
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