Comments
Description
Transcript
大型製材工場に対応した原木の供給と皆伐後の更新推進に関する研究
高知県立森林技術センター 平成 27 年度研究成果報告書 平成 28 年 4 月 大型製材工場に対応した原木の供給と皆伐後の更新推進に関する研究 (スギコンテナ苗の秋期・春期植栽試験) 森林経営課:藤本浩平・渡辺直史・山﨑 真 ■目 的 高知おおとよ製材の稼働に伴い、既存の製材工場への原木供給も併せて安定的な供給が重要 となっており、皆伐も考慮した集約化が必要であると考えられる。資源の循環利用には皆伐後 の再造林が必要となる。造林・保育の低コスト化の手段の一つとして、コンテナ苗の活用が期 待されているが、事例が少なく活着に関する評価が十分ではない。 本研究では、秋期と春期に植栽したスギコンテナ苗の活着と成長について検討を行った。 ■内 容 土佐郡土佐町の皆伐地において、秋期植栽として平成 26 年 9 月にスギ実生 300cc コンテナ苗(JFA300、苗齢 2.5 年生) を運搬当日および現地 14 日保管後に植栽した。 また、春期植栽として平成 27 年 3 月にスギ実生 300cc コンテナ苗(JFA300、苗齢 3 年生) 、スギ実生 150cc コ ンテナ苗(JFA150、苗齢 1 年生)およびスギ実生裸苗 (苗齢 2 年生)を植栽した(図 1) 。いずれも高知県内の 精英樹採種園で採取された種子を用いた育種苗である。 植栽直後および 4 月、10 月または 12 月に植栽木の状態 と樹高および地際直径を測定した。 ■成 果 図 1 コンテナ苗(300cc)(右) 秋期に当日植栽した苗は、約 1 年後には 27%が枯死し と裸苗(左) たが、14 日間現地保管して植栽した苗では 1%が枯死し ただけであった(図 2) 。春期に植栽した苗はいずれも高い活着率を示した。春期植栽の 150cc では植栽直後にウサギによる食害がみられたが他の苗ではみられなかった。 秋期植栽木では、植栽後から翌春まではほとんど樹高成長がみられなかったが(図 3) 、直径 成長がみられ(図 4) 、形状比が低下した(図 5) 。春から秋までの成長期では樹高、地際直径と も旺盛な成長がみられたが、樹高成長よりも直径成長が多く、それに伴い形状比が低下した。 春期植栽では、植栽時の樹高・地際直径がほぼ同じである 300cc コンテナ苗と裸苗の成長は 同程度で植栽時の約 50%増であった。150cc では樹高が約 80%増、直径が約 90%増で成長が 著しかった。形状比は 150cc では低下する傾向がみられたが、300cc コンテナ苗および裸苗で はいずれも上昇した。 - 21 - 高知県立森林技術センター 平成 27 年度研究成果報告書 平成 28 年 4 月 枯死 (生理 障害) 1% 枯死 (生理 障害) 27% 健全 72% 枯死 (生理 障害) 1% 健全 99% 衰弱 1% 秋植栽・300ccコンテナ苗・当日 ウサ ギ害 7% 枯死 (生理 障害) 3% 健全 93% 健全 99% 秋植栽・300ccコンテナ苗・14日保管 春植栽・300ccコンテナ苗 健全 97% 春植栽・150ccコンテナ 春植栽・裸苗 図 2 植栽木の健全状態(H28 年 10~12 月確認) (cm) 100 80 60 40 20 0 H26 10月 月 H27 4月 月 H27 10月 月 H26 10月 月 H27 4月 月 H27 10月 月 14日保管後植栽 日保管後植栽 当日植栽 H27 4月 月 H27 12月 月 H27 4月 月 300cc 秋植栽 コンテ ナ苗 H27 12月 月 H27 4月 月 H27 12月 月 150cc 春植栽コンテナ苗 春植栽裸苗 図 3 植栽木の樹高成長 (mm) 12 10 8 6 4 2 0 H26 10月 月 H27 4月 月 H27 10月 月 H26 10月 月 H27 4月 月 H27 10月 月 14日保管後植栽 日保管後植栽 当日植栽 秋植栽 コンテ ナ苗 H27 4月 月 H27 12月 月 300cc H27 4月 月 H27 12月 月 H27 4月 月 H27 12月 月 150cc 春植栽コンテナ苗 春植栽裸苗 図 4 植栽木の地際直径成長 ( 樹高/直径) 100 80 60 40 20 0 H26 10月 月 H27 4月 月 当日植栽 H27 10月 月 H26 10月 月 H27 4月 月 H27 10月 月 14日保管後植栽 日保管後植栽 秋植栽 コンテ ナ苗( 300cc) ) H27 4月 月 H27 12月 月 300cc H27 4月 月 H27 12月 月 H27 4月 月 H27 12月 月 150cc 春植栽コンテナ苗 春植栽裸苗 図 5 植栽木の形状比の変化 ■今後の課題 今後も成長量の測定を継続し、苗の特徴と成長様式の違い等について検討を行う。 - 22 -