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スチレン系熱可塑性エラストマー「ラバロン」
三菱化学㈱ スチレン系熱可塑性工ラストマー丁ラパロン』 1.スチレン系熱可塑性エラストマー「ラバロン」の 概要 「ラバロン」は三菱化学が永年にわたるプラスチック及 び合成ゴムめ豊富な経験と優れた配合設計技術及びコンパ ウンド技術を駆使して開発したユニークなスチレン系熱可 塑性エラストマー(TPS)である。「ラバロン」には成形 性に優れる一般・工業部品用のSシリーズと,食品・医療 衛生性に適するMシリーズを標準グレードとしてライナッ プしており,主な特徴として下記①∼④が挙げられる・ 写真1 コンソールボックス 要求性能:二色成形性,融着性,触感,外観,耐候性 ①圧縮永久歪,:永久伸びに優れたゴム弾性を示す。 圧縮永久歪(70℃×22H)=30∼45% ソールボックスの写真を示す。 ②硬度(JIS−A)が15∼95と幅広く機械的強度に優れる。 なお,非オレフィン系硬質樹脂(ABS,PC等)と複合 引張破断点伸度:700∼950% 化する場合には三菱化学のポリエステル系熱可塑性エラス 引張破断点強度:8∼20MPa トマー「プリマロイ」が,柔軟性(硬度55A∼)と圧縮永 ③クロロプレンゴム並の優れた耐油性を有す。 久歪み(55∼65%)が良好な上に,熱融着性や耐摩耗性に ④二重結合を持たないため,耐候性,耐熱性に優れる。 も優れることから,現在幅広い用途に使用されている。 また,超低硬度グレード,透明グレード,フィルムグレ ード,高反発弾性グレードなどの特殊グレードも上市して 3.「ラバロン」透明グレードの概要 いる。本稿ではその中で,近年開発した各種グレー『ドの特 このシリーズは,従来軟質塩化ビニル樹脂材料が用いら 徴と用途事例を紹介する。 れていた透明性の要求される用途向けに設計した新材料で ある。一般リスチレン系熱可塑性エラストマーは,使用樹 2.「ラバロン」複合成形用(二層射出成形)グレードの 脂の結晶による散乱,並びにスチレン系ゴムのミクロ相分 概要 離構造に起因する可視光の散乱のため,半透明であり,透 近年,工程合理化やリサイクルの間題から,エラストマ 明性の要求される軟質塩化ビニ1ル樹脂が使用されている分 ーと硬質樹脂との複合化(二層射出成形法)が,気密性や 野への使用は困難であった。三菱化学は使用樹脂の結晶化 防水性,成形体の衝撃緩和,あるいは肌触りの改良を目的 及びスチレン系ゴムのミクロ相分離構造を制御することに に行われることが多くなっている。特にスチレン系やオレ より,従来のラバロンよりも透明性に優れる材料の開発に フィン系の熱可塑性エラストマーは,ポリプロピレンなど 成功し,この材料をFJ70シリーズとしラインナップし、て のオレフィン系の硬質樹脂と複合化することが以前から広 いる。表1に示すHAZE(霞度:小さいほど透明性が良い) く行われていたが,製品の外観,触感,傷付き性が不十 から明らかなように非常に透明性が高いことが分かる。 分であるという問題を抱えていた。三菱化学では上記間題 を改良した感触部品用グレードをラインナップしている 4.「ラバロン」チューブ向けグレードの概要 (JP2925982)。また,ポリオレフィンを介在し七金属とス 三菱化学はチューブ状に成形したときの性能に優れたチ チレン系TPEを複合化する技術も開発し提案をしている ューブ向けグレードの開発を進めている。チューブを押出 (JP3077914)。写真1にその一例としてポリプロピレンを 成形する場合に重要なのは,押出時の形状の保持,成形品 芯材とし,表層にラバロンを二層射出成形した自動車コン 表面の平滑性,目やにの発生の低減である。・また,チュー 72 PoIyfiIeポリファイル2004、6 表1 ラバロン透明グレード物性表 項 目 条 件 硬 度 JIS−A 密 度 試験法 単 位 JIS K6253 『 JIS K7112 9/cm3 引張破断点強度 HAZE M F R FJ6370C FJ7370C 一般グレード 51 65 75 58 0.89 0.89 0.89 MPa 7.6 7.3 8.2 % 720 670 660 JIS K6251 引張破断点伸度 FJ5370C 2mmシート JIS K7105 % 11 10 17 23 3mmシート JIS Kl7105 % 19 18 26 35 4mmシート JIS K7105 % 22 26 39 50 230℃,2,16kg JIS K7210 9/10min 59 47 48 試験片;射出成形2mmtシート,引張試験;TD方向打ち抜き 表2 各種熱可塑性エラストマーの比較物性表 項 目 試験法 硬 度 JISK6253 密 度 JISK6758 〆部分架橋TPO 完全架橋TPO 高ゴム弾性・耐油ラバロン ラバロンカタログGr サーモランカタログGr 他社品 JIS−A 75 70 76 80 9/cm3 水中置換法 0.89 0.89 0.88 0.97 500mm/min 8.4 15.0 10.0 9.1 3号ダンベル 400 920 730 560 70℃×22hr 37 46 47 42 100℃×22hr 44 59 57 46 120℃x22hr 50 68 68 55 20 42 98 45 〃 圧縮永久歪み JISK6262 Mpa % % 耐油性 (重量変化率) 非架橋TPS 一 引張破壊強さ JISK6251 引張破壊伸び 架橘TPS 試験条件 単位 軽質流動パラフィン 』 % 80℃×24hr ブの耐キンク性も非常に重要である。チューブのキンクと はチューブに外力が加わり,チューブが折れ曲がって降伏 し閉塞している現象であり,このときキンクした管状体の 外側では伸長が,内側では圧縮が起こっていることになる。 チューブが閉塞すると液体や気体,粉体等が通過できずに 不具合が生じる。このグレードは,上記特性を改良したも のである。写真2に各種押出チューブの写真を示す。現在, キンク性を改良したグレードと,キンク性と透明性を改良 したグレードの開発を進めている。グレードについては相 談願います。 写真2 各種チューブ 要求性能1成形性,衛生性,耐キンク性,透明性 5.高ゴム弾性・耐油グレード りも大幅にゴム弾性及び耐油性を改良した高ゴム弾性・耐 三菱化学は「ラバロン」の系に架橋剤,架橋助剤,及び 油グレードの開発を進めている。表2に各種TPEと比較 動的架橋技術を最適化することにより,既存のグレードよ した結果を示す。この結果から,今回開発した「ラバロ PoIyfileポリファイル2004・6 73 ン・高ゴム弾性・耐油グレード」は非架橋TPS,部分架橋 るものと思われる。また,我々の身g廻りの商品の機能が TPO,完全架橋TPOと比較し,広い温度範囲で圧縮永久 日々向上していく中で,素材に対してもさらなる高性能化, 歪みが小さく,ゴム弾性に優れることが判る。特にスチレ 高機能化が求められる時イ脳こなってきている。三菱化学の ンブロックのガラス転移温度よりも高温の120℃でも他の TPEは,安定した品質及び絶え間ない品質改良により市 系よりも圧縮永久歪みが小さく,これまでのTPSの弱点と 場二一ズに対応し,カスタマーの高い信頼を得てきた。三 言われていたゴム弾性の必要な耐熱部品への適用が期待さ 菱化学では「ラバロン」の他に,オレフィン系熱可塑性エ れる。また,耐軽質流動パラフィン性に優れるため,ハン ラストマー「サーモラン」,ポリエステル系熱可塑性エラ ドクリームやサンオイルに対して耐性が優れると推測さ ストマー「プリマロイ」,重合型TPO「ゼラス」と総合的 れ,グリップ類に好適に使用できると考えられる。また, に熱可塑性エラストマーを取り扱っており,今後もより一 他のオイルに対する耐性も優れている。さらに,TPSの長 層の高性能化と高機能化を目指し,カスタマー二一ズはも 所である柔軟性を失うことはなく,低硬度領域(JIS A: とより社会二一ズ,環境二一ズに応えた商品として成長さ 30A∼)の材料設計も可能であり,各種成形法(射出成形, せていきたいと考えている。 押出成形等)に適した材料設計も可能である。今回,我々 が開発した「ラバロン・高ゴム弾性・耐油グレード」を用 いることにより,これまでのTPEで置き換えの出来なかっ た加硫ゴムを代替し,製造工程の合理化,製品の軽量化に ■お問い合せ先 繋がり,さらには新しい用途が拡がることを期待している。 三菱化学株式会社 アメニテイライフ部門 機能性樹脂事業部 6.終わりに マーケティンググループ 担当 内山 この21世紀において,地球規模での環境問題への対応は 〒108−0014 東京都港区芝5−33−8 避けて通れない問題であるといえる。したがって,軽量化, TEL O3−6414−3300FAX O3−6414−3327 リサイクル化,脱ハロゲン化といった要求がますます強く E−mai1:6206098@cc.m−kagaku.cojp なり,加硫ゴムやPVCからTPEへの代替は更に促進され URL:http://www.m−kagaku.cojp/ テクノネット社の技術図書 光硬化技術実用ガイド・噺刊一 難燃材料活用便覧一新刊一 監修 市村國宏,角岡正弘 ●A4判 本文180頁 広い分野の最新情報を解説。 監修:西沢 仁,武田邦彦 協力:日本難燃剤協会,難燃材料研究会 ●B5判・本文420頁 ●定 価:本体8,200円+税 難燃,燃焼に関わる幅広い分野の研究・開発,企画・営業担 当者が1青報源として活用できる最新の総合ハンドブック。 光硬化技術データブック材料編 機能性フィラー総覧 監修 市村國宏,加藤清視 テクノネット社編 フィラー研究会 編 ●A4判 本文312頁 ●定価 本体6,800円+税 これからの複合材料の鍵を握る多彩な機能性フィラーの技術 ●定価 本体4,800円+税 光硬化技術の広がりを応用面からとらえ,エレクトロニクス, LCD,光通信分野,塗料・コーテイング,印刷・情報など幅 ●A4判 本文160頁 ●定価 本体6,600円+税 光重合性モノマー,オリゴマー,光重合開始剤,感光性材料 を一覧表に整理。関連製品メーカーリストもあわせて掲載。 詳しい内容,申込は 74 動向をまとめる。 http=//www5e.bigIobe.ne,jp/”TC−net/ まで Polyfileポリファイル2004.6