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tENURE tRACk NEWS LEttER
Tenure Track News Letter No.3
published in March 2016
6 . メンター教員の立場から
6.1 工学部
今尾 茂樹 教授
工学部 機械工学科 機械コース
西田哲・テニュアトラック助教・メンター教員
西田哲先生は、岐阜大学におけるテニュアトラック教員第 1 号として採用され
に活用し、動的製膜システムの構築とともに学会・研
ました。テニュアトラック制度は、
そのとき学科長であった私にとっても急な話で、
究会活動を通して国内外のネットワークを形成されまし
5 年の任期付き研究専念型であること、研究エフォートは 70%以上であること、
た。その成果は論文となっているわけですが、ここで
早急に採用を進めることなど、慌ただしかった記憶が残っています。初年度は、
注目していただきたいのは、西田先生のテニュアトラッ
テニュアトラック制度受け入れ前に学生実験実習などを担当してもらうことを決
クとしての実質的な期間がわずか 3 年半あまりにすぎないという点です。5 年の
めていたポストで採用することになったため、研究エフォート条件はギリギリの
任期といいつつも、初年度は 3 ヶ月のみ、5 年度目は 5 ヶ月のところで最終審
状態になり、大変厳しい日々であったと思います。翌年度からは教務の分担を
査を受けているわけで、この間で学術誌に掲載可となった論文を揃えるのは並
減らし、研究エフォートを十分確保できるよう配慮しましたが、学科の先生方
大抵の努力では達成できません。解析やシミュレーションなどと比べて時間の
からは快いご理解とご協力をいただいたことに大変感謝しています。
かかる実験的研究ではなおさらです。
さらに、最近は論文査読が比較的早くなっ
西田先生がメインテーマとして取り組まれたのは、従来手法に比べて桁違い
たとはいえ数ヶ月かかることもしばしばあります。したがって、テニュアトラック
の高速でシリコン製膜が可能となるプラズマジェット CVD(化学的気相堆積)
期間を過ぎたこれからさらなる業績が期待できると思います。
法の開発です。実は、当初のメンター教授は栗林志頭眞先生でしたが、昨年
昨年 9 月に行われたテニュアトラック教員最終評価に係る公聴会及び最終評
度で栗林先生がご定年となられたため、私が引き継いだ形です。噴流は私の
価判定会議では、評価委員から、計画通り研究が進み目標を達成しているお
専門分野ですが、衝突噴流をこのように利用した例は初めてと思います。この
褒めの言葉とともに今後も積極的かつ主導的に研究を推し進めて一層活躍され
分野で実験的研究を推し進める場合、実験装置や計測・分析機器が相応に
ることを期待しているとのコメントをいただきました。その後、西田先生の業績
必要となることは当然ですが、それらが揃ってもスタートラインに立てたにすぎ
は所属学科(工学部機械工学科)の准教授任用基準を満たしていることから、
ません。そして、ノーベル賞を受賞された方々の言葉を引用するまでもなく、最
教員選考委員会を立ち上げ、調査検討した結果、機械工学科の准教授として
初から期待した結果が得られることはまずありません。残せる結果を得るため
適格であるとの判断から教授会での投票を経て、テニュアトラック期間終了後
には幅広い情報収集が不可欠であり、学内はもとより国内外の研究者とのネッ
の本年 4 月から任期のない准教授として任用が認められたことをご報告します。
トワーク形成が鍵となります。西田先生はテニュアトラックの研究資金を有効
6.2 応用生物科学部
土井 守 教授
応用生物科学部 生産環境科学課程 応用動物科学コース
只野亮・テニュアトラック助教 メンター教員
この1月の教授会で、
只野亮氏の准教授昇進が確定した。彼が本学のテニュ
が与えられ、研究に専念できる環境を整えて実績を上
アトラック助教に採用されたのが平成 24 年 1 月なので、私はメンター教員とし
げなければならない取組みである。そのため進捗や成
て正味 4 年間務めたことになる。当初何もかもが白紙の状態で先が見通しに
果についての書類を提出する義務があるので、年度末
くい事業であったがゆえに、この決定で瞬時に心の底から喜びと安どが広がっ
や年度初めになるととても多くのファイルがネットを飛び
た。
交った。これまで経験した大抵の事業は、当初ある程度は頭に描けるものな
思い返せば、彼の着任後たったの 3 ヶ月で事業 1 年目が終了し、その 2 年
のだが、この事業だけは五里霧中であった。その濃い霧の中を、いつも灯り
後の平成 25 年の年末に中間評価会が行われ、幸いにも平成 27 年 9 月 11 日
を灯し続けて下さった学長室の若井和憲先生には心より感謝を申し上げたい。
に最終審査会を迎えることができた。彼の人事を滞りなく進めていけたのも、
今さらながら思うことは、この事業内容が大学や学部の教員の中になかな
終始温かな雰囲気に包んでいただいた学部関係者の皆様のお陰である。ただ、
か浸透して行かなかったことである。メンター教員の度量のなさから、いろい
本事業開始後 4 年少しという時間が、
簡単に過ぎ去ったという自覚は毛頭ない。
ろな方面に誤解を与えてしまったのではなかったか、それゆえに彼を跼天蹐地
先ず、この事業開始当初の 2 年間は、年度末に文科省主催のシンポジウム
の立場に追い込んでしまったのではなかったかと深く自省している。ただ、私
に皆出向き、本部や統括責任者などの方々は数日間拘束されて大変そうだった。
はこの事業に取り組んでよかったと思える最たる点は、何といっても新規採用
私はといえば、末席で全国からの情報を見聞きしていた程度で済ませていただ
された教員と腹を割ってひとつのことに向かって熟議できたことである。
けだ。しかし、翌年そのシンポジウムは中止となり、その後も開催されなかっ
関門が多くあればあるほど、人は強くなれるものなのだろうか。彼は、いつ
たため、
残念ながら全国のテニュアトラック事業の状況がほとんど直に耳に入っ
しか事業個々に対する対応が手慣れたものになっていた。その様から、日々頼
てこなくなってしまった。一方で科学技術振興機構による機関訪問調査なども
もしくかつ浩然の気すらも感じたものである。今後はこれまでに多くの方々から
時折行われ、その度に只野さんは説明資料の作成や対応に追われていた。私
受けた熱く明るいたいまつの火を、自己でさらに大きくしながら、学生たちひと
も及ばずながら事業の進捗状況などの説明資料の作成を行い、学部長や大
りひとりに移し続けてもらいたい。彼が大学はもとより学界や業界を照らす大き
学本部にその資料を予め見ていただいて、
本番に臨んだものである。本事業は、
な明かりになって下されば、霧の中のようだったと形容したテニュアトラック期
当たり前のことながら、国や大学からテニュアトラック教員に対して多くの資金
間も後日澄み渡る日々であったと心に残ることになるだろう。
Tenure Track
News Letter
テニュアトラックニューズレター
まだまだ多くの課題はあるかと存じますが、皆様方には引き続きご理解、ご指導を賜りますよう、よ
らは准教授として出発されます。また3 年目採用の3 名が中間審査を受け、次のステップに進まれました。
ろしくお願い申し上げます。 (テニュアトラック助教・大橋史隆)
この事業をより多くの方にご理解いただくべく、第二回テニュアトラック教員研究発表会を、平成 27
年 10 月 30 日、31日に岐大フェアに初めて組み入れていただき実施するなど、この事業も一つの節目
を迎えました。これらの情報は右に示すホームページで紹介しています。
4
岐阜大学総合企画部企画課 email:[email protected]
HP:http://www1.gifu-u.ac.jp/~tenure/index.html (日本語版)
http://www1.gifu-u.ac.jp/~tenure/index_eng.html (英語版)
3
published in March 2016
disseminating project suppor ted by ME X T
1. テニュアトラック教員への期待
森脇 久隆 学長
研究の取組等に関して優れていると評価しました。本年4月からは、
岐阜大学は、平成 28 年 4 月から始まる
ており、今後のさらなる活躍を楽しみにしております。
第 3 期中期目標において、教育の基盤とし
「テニュアトラック普及・定着事業」の補助は、平成 27 年度で一
ての質の高い研究活動をそれぞれの分野
段落しますが、岐阜大学ではこの事業で得られた成果を今後の教員
で着実に実践するとともに、その中でも本
採用に活かすべく検討を行い、本年度から新たに岐阜大学独自のテ
学の強みである生命科学分野、環境科学
ニュアトラック制度を導入しました。さらに、平成 28 年度以降に採
分野、ものづくり分野における独創的な
用される教員のうち、助教については、原則としてテニュアトラック
研究領域の先進的拠点形成を目指し、そ
年俸制で採用することとしました。全てのテニュアトラック教員に対
工学部、応用生物科学部において准教授として採用されることとなっ
の成果を社会に還元することを掲げています。
して、
「テニュアトラック普及・定着事業」のような十分な研究環境
そのためには、優秀な若手研究者の採用・育成が重要であると考
や研究資金を提供できるわけではありませんが、今後も優秀な若手
えており、平成 23 年度から文部科学省科学技術人材育成費補助事
研究者の育成に努めてまいりたいと思います。
業「テニュアトラック普及・定着事業」の支援を受け、テニュアトラッ
最後に、テニュアトラック制度により採用された研究者の中から、
ク制度を導入しました。
研究主宰者としての資質・能力を身に付け、今後の岐阜大学を担うこ
この事業の開始から 5 年目となる本年度は、平成 23 年度に採用
とができる若手研究者が数多く育ち、本学の研究活動の活性化が
されました工学部の西田哲助教、応用生物科学部の只野亮助教の 2
図られることを期待しています。
人のテニュアトラック教員についてテニュア審査を行い、これまでの
2 . 岐阜大 学のこれまでのテニュアトラック普及・定 着事 業を振り返って
機関実施責任者
企画・評価・基金担当 理事
月にテニュア審査を受け、見事にテニュア資格を獲得されました。そ
文部科学省は、第三期および第四期科
れ、文字通り PI(Principal Investigator、研究主宰者)として活躍
学技術基本計画で科学技術人材育成を重
されることになりました。お二人およびそれぞれのメンター教員の 5
要な柱に位置付けています。テニュアトラッ
年間の思いが、2 ページ、4 ページで語られています。
ク ( 以後“TT“と略記 ) 制度に関しては、
平成 24 年度には、工学部が③の事業を背景に学部長の支援を受
第三期の①「若手研究者の自立的研究環
け、女性に限った公募を行い 1 名を採用、昨年中間評価を実施し、
境整備促進」事業を、第四期ではその後
来年度のテニュア審査に向け、鋭意頑張っておられます。
杉戸 真太
れぞれが所属する部局の教授会で来年度から准教授昇格が認めら
継として②「TT普及・定着事業」を掲げ、加えて③「女性研究者
平成 25 年度には医学部に 1 名、工学部に 2 名の計 3 名を採用、
研究活動支援事業(ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ)」
それらの方々は今年度中間評価を受けられました。3 ページにその
などへの予算的支援が講じられてきました。
印象が語られています。平成 26 年度には 1 名を採用し、総数 7 名
岐阜大学はこれらに応募し採択されて事業費を獲得、②では平成
という規模になりました。
23 年度に工学部 2 名、応用生物科学部1名を国際公募し、外部有
来年度以降、残りの 5 名の方々が順次審査を受けられ、テニュア
識者・専門家を含む委員からなる TT 若手育成審査委員会にて選抜・
資格を獲得されるものと信じていますが、皆様にも温かく見守ってい
採用しました。工学部採用の1名は外国人研究者で、TT 期間中に
ただければ幸いです。
海外の大学に移りましたが、残る 2 名が 2 年前に中間評価、昨年 9
編集 後記
本年度は、本学のテニュアトラック事業で、最初の 2 名がテニュア審査を受け、見事合格、4 月か
No.
3 . テニュアトラック教員在 籍 数
平成 23 年度
採用数
平成 24 年度
平成 25 年度
平成 26 年度
平成 27 年度
平成 28 年度
工学部 2 名
応用生物科学部 1 名
工学部 1 名
H24 予約型工学部 1 名
医学部 1 名、工学部 1 名
工学部 1 名
0
0
2
1**
3
4
6*
7*
7*
5**
修了者
在籍者総数
*:平成 25 年度に工学 部の一人が
海外に転出したため、採用数と在
籍者数との間にずれがある
**:予定
平成 28 年 3 月 1 日現在
1
Tenure Track News Letter No.3
published in March 2016
4 . テニュア資格を獲 得して
4.1 テニュアトラック期間を振り返って
工学部 機械工学科 機械コース
H 23 年度予算 H 24 年 1 月採用
5.1 中間評価を終えて
志賀 元紀 助教
工学部 電気電子・情報工学科 情報コース
H 25 年度予算 H 25 年 10 月採用
早いもので 2012 年 1 月の採用からもう 4 年が経ちました。本年度
感したこともありました。今後、教育の質をさら
平成 25 年 10 月 1 日付けで、工学部・電気電子・情報工学科(情報コース)
数多くの異なる情報源のデータを効率的に組み合わせる
がテニュアトラックの最終年度ということで昨年の 9 月に最終審査を受
に向上させ、より良い岐阜大学の卒業生、修了生
の助教(テニュアトラック)に着任し、今年で 3 年度目になりましたので、先日、
方法の 2 つです。こうした理論研究のみではなく、ゲノム
け、何とか合格しテニュアを獲得することが出来ました。ここでこの 5
を世の中に送り出せるよう努力していきたいと思
平成 28 年 3 月10 日に中間審査および公聴会が行われました。審査を受けるに
科学、物質・材料科学、天文学への応用データ解析に
年度(4 年間)を振り返ってみたいと思います。
います。
あたり、ここまでの活動を振り返りました。
も携わっており、これらの各分野で役立つ新しい方法の
まずはエフォート70% とされた研究面について、2 年前のニュースレ
それ以外の部分では、学内外で、学科、専攻、
テニュアトラック教員ということで独立した PI(Principal Investigator)となり、
開発を目指しております。
ターでも紹介しましたが、私のテニュアトラック期間中の主な研究テー
専門分野を越えて多くの先生方との交流の機会を
自由に責任をもって研究できるようになったことがこれまでと大きな違いでした。
今回の中間審査ではこれらのうち、走査型電子顕微
マはプラズマジェット CVD 法を用いた高速製膜手法の開発と応用で
持つことが出来ました、研究分野を広げていく際
これによって、研究費を自ら獲得する必要があることが大変でしたが、共同研究
鏡データから調査対象試料の構造成分を決定する解析
す。私たちの身の回りでは、例えば PET ボトルの内面には DLC(ダ
に私が専門でない部分のアドバイスを頂くことができ非常に助かりまし
者などにご支援いただいたこともあり、科研費等を獲得することができました。
を自動化する手法の成果を中心に発表させていただきました。従来のデータ解
イヤモンド状カーボン)によるコーティングが使用されていますし、液
た。また学外では、いくつかの学会や研究会の幹事を担当し、岐阜
研究内容は、
これまでと同様に統計的機械学習という分野です。最近のニュー
析では、膨大なデータを人が見てチェックしていたため、解析者の主観が入ったり、
晶テレビや太陽電池などでは薄膜のシリコンが使用されていますが、
で開催される学会の講演会の実行委員を担当することができました。
ス等のメディアで、
「人工知能」や「ビッグデータ」という言葉を頻繁に聞くように
雑音に埋もれて重要な規則を発見できなかったりという問題があったので、統計
これらの膜はプラズマ CVD 法により作製されています。本研究では、
これらの機会を通じ学会の運営や講演会の開催について学ぶことが
なりましたが、これらと非常に密接に関係している分野です。ここでいう機械は
的機械学習による自動化によってこれらの問題点を解決したという成果です。こ
生産性の観点から問題になりうる従来のプラズマ CVD 法の数 nm/s
出来ましたし、同時に社会貢献できたのではないかと思っております。
数理モデル(コンピュータ)を指しており、人間と同じようにコンピュータに学習さ
のような応用研究を通じて社会にも還元できたらと考えています。
という制膜速度に対し、千倍速い数μ m/s での高速製膜を可能にす
私が岐阜大学工学部で初めてのテニュアトラック助教ということで前
せて、データ解析に役立てるための研究分野です。テニュアトラック期間中の主
中間審査を無事に終えられたのもメンターの先生をはじめ多くの方のご支援のお
な成果は、数多くあるデータの中から有用な情報を効率良く選択する方法、また、
かげと考えております。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
るプラズマジェット CVD 法を開発しました。本手法は、噴流(ジェット)
例がなく試行錯誤の部分も数多くありましたがこれも良い経験になっ
と非平衡プラズマ CVD 法を組み合わせたことに新規性とオリジナリ
たと思っております。また、本学のテニュアトラック教員の先生方には
ティがあります。テニュアトラック期間中、文部科学省並びに岐阜大学、
同じ立場にある同志として色々な相談に乗っていただき多くのアドバイ
工学部から資金的な支援を頂きました。この支援を利用し実験装置を
スを頂きました。同時期にご一緒できたのも何かの縁でありこれからも
新規に作製し、その実験結果の解析から本手法で高速製膜が起こる
交流を継続していきたいと思っております。
要因の解明を行うことができました。この成果により、化学工学会反
最後になりましたが、テニュアトラック期間にメンターとしてご指導頂
応工学部会 CVD 反応分科会から若手研究奨励賞を頂くこともできま
きました、栗林志頭眞先生、野々村修一先生、今尾茂樹先生、本部
した。今後は、PI(研究主宰者)として、今まで以上に頑張っていき
のテニュアトラック教員支援担当の若井和憲先生に感謝します。そし
たいと思います。
て、機械工学科、環境エネルギーシステム専攻の先生方をはじめとす
教育面では研究室での卒業研究の実質的な指導や修士論文の指
る工学部の教員、職員の皆様にも大変お世話になりました。この場を
導を行いましたが、学生、院生への指導が自分自身を見つめ直し考え
お借りして皆様に感謝します。
直す良い機会であることを認識させられました。また、学部教育では
テニュアの獲得はゴールではなく新たなスタートだと思っております。
実験をはじめ講義や演習も担当し、大人数相手の講義の難しさを痛
今後も益々一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願いいたします。
4.2 これまでの 5 年間を振り返って
私は、2012 年 1 月 1 日付で応用生物科学部のテニュアトラック助
2
西田 哲 助教
5 . 中間評 価を受けて
只野 亮 助教
応用生物科学部 生産環境科学課程
H 23 年度予算 H 24 年 1 月採用
いて必要とされてきた時間や手間を大幅に短縮・
5.2 3年という区切りを迎えて
大橋 史隆 助教
工学部 電気電子・情報工学科 電気電子コース
H 25 年度予算 H 26 年 1 月採用
今年度末でテニュアトラック教員として 3 年間(着任時からは 2 年 3 ヶ月)が過
メンターの先生方、工学部の先生方、本部・テニュアトラッ
ぎました。中間審査を迎えて、改めて 3 年間の研究や自分の変化を見直す機会を
ク教員支援担当・若井先生、日々ともに研究を行う院生、
いただきました。以下に、
「研究」
、
「人脈」の観点から振り返りたいと思います。
学生の皆様などお世話になった方々は枚挙にいとまがあり
「研究」では「太陽電池の普及を目指すには」という背景のもとに「IV 族クラスレー
ません。ここでテニュアトラック教員として一つ特徴的な人
トの開発」
、
「反射防止膜、光閉じ込め技術の開発」
、
「電圧誘起劣化現象のメカニ
脈としてあげるとすれば、他のテニュアトラック教員の先生
ズムの解明」の三つのテーマについて取り組んできました。それぞれに対し一定の
方でないでしょうか。年齢、境遇は非常に近いですが、研
前進が見られることから、比較的研究は順調に進んでいると考えております。中間
究分野は大きく異なる先生方との関わりは、非常に刺激的
評価では、審査委員の方から多くのご質問をいただくとともに、より具体的に自分の
で励ましになりました。この繋がりは、研究者としてだけでなく、一個人として大事
研究成果として魅力的なものにするためのアドバイスをいただきました。
研究はグルー
にしていければと思います。
プ単位で行いますが、研究を進めるに従いどうしても自己満足に陥りがちな部分が
中間審査は研究者として評価を受けるとともに、今後、より自分を成長させるため
出てきてしまいます。中間評価でいただいた客観的な評価および今後の研究指針を
の一つの大きな区切りになるかと思います。様々な先生方からいただいたご助言、ア
もとに研究内容の修正を行っていきたいと思います。
ドバイスをもとに、より一層研究者、教育者として成長し、大学および地域に貢献出
テニュアトラック教員として着任したことにより得られた大きな宝物の一つが「人
来るよう精進していきたいと思います。皆様には引き続き変わらぬご指導ご鞭撻をい
脈」だと思います。日頃ご指導いただいている、野々村先生を始めとする先生方、
ただければ幸甚です。
教として採用され、昨年の 9 月に 5 年目の最終審査を無事に終える
効率化することができます。そのため、現在で
ことができました。これまでの約 5 年間(実質は、4 年弱となります)
、
は様々な農作物や家畜において、実際に用いら
テニュアトラック普及・定着事業によって、研究環境や研究資金など
れている重要な品種改良技術となっています。し
の点で多くのご支援をいただきましたことを誠に感謝しております。特
かし、残念ながら私の主な研究対象であるニワ
に、研究活動を開始するにあたり、多数の機器や装置を整備する必
トリやウズラなどの家禽では、ウシやブタなどの
要がありましたが、ご支援により順調に研究をスタートさせることがで
他の家畜に比べると、DNA やゲノム情報を活用
着任したのが 3 月だったので、ほぼ 2 年で中間評価を受けることになりました。
省からのテニュアトラック経費によるご支援と、関係者の皆様
きました。
した育種改良は、研究段階と実用化の双方で非常に遅れているとい
筆頭または責任著者の論文を毎年 1 編以上発表でき、論文の質という意味では、生
の支えがあったからと、深く感謝しています。こうして大きな
5.3 早かった中間評価まで
丸山 貴司 助教
医学系研究科 腫瘍病理学分野
H 25 年度予算 H 26 年 3 月採用
私の専門分野は「動物ゲノム多様性学」であり、主に家禽であるニ
うのが現状です。そこで今後は、
「わが国初となる家禽の DNA 育種」
化学の分野で権威ある雑誌であるJBC にも発表できたこと、外部資金について少なく
期待と夢を持って解析にあたりましたが、
(結果として新規メ
ワトリやウズラを対象として、遺伝資源の保全や育種改良への貢献を
という目標を実現することができるように、
日々努力していきたいと思っ
とも科研費を1件という、当初自ら掲げた目標に短期間で達したことなどで、自己評価と
カニズムが明らかとならず)既存のメカニズムが最も重要であ
目的とした品種・系統の遺伝的多様性の評価や遺伝マーカーの開発
ています。
してはある程度満足した中で評価を受けました。
り、その詳細が分からずじまい…研究そのものが、スタート
などを実施してきました。
これまでは、研究専念型という立場であったこともあり、教育活動
しかし、BBRC に 2016 年 1 月に発表した論文は、私としても忸怩たる思いでした。
地点に帰りました。この研究で、一つの真理には到達し、論
現在、ウズラを対象に産卵率や増体性のような経済的に重要な形
に関わる機会はあまり多くはありませんでした。今年度から、学部生
この研究開始当初、炎症応答の起点となる核内 IkB ファミリー分子の発現制御を明ら
文という成果にはなりましたが、新規メカニズムを解明できな
質に関わる遺伝子座の特定を目指して、研究活動を行っています。こ
の講義や研究指導に携わる機会も大幅に増えましたが、そのような
かにする目的のもと、どう進めるか考えていました。そのような時、岐阜大学医学部にお
かった点、また、恩師の牟田達史先生の資材を用いての研究であったことから完全に
の研究によって、生産性の向上に有用となる遺伝子座の染色体上で
中で教育活動への難しさを感じることも何度かありました。今後は、
の位置を特定し、その遺伝子座と強く連鎖する(有用遺伝子座の近
教育スタッフとしても十分に貢献できるようにすることが、自分自身の
くにある)遺伝マーカーを見つけることができれば、このような遺伝
マーカーを目印として、目的とする遺伝子を持つ個体を正確に選抜し
いて、東京医科歯科大学の浅原教授によるセミナーがあり、拝聴させて頂いたところ、
丸山オリジナリルとは言えず、PI としてはさらに磨きをかけなくてはならないと考えていま
【cDNAライブラリーを使った大規模スクリーニング】のお話があり、大変感銘を受けた
す。もちろん、その過程では、様々な苦労や障害もあった中での実験でもあり、学ぶ事
重要な課題の1つであると考えています。
事を今でも覚えています。そこで私も、
(予定にはなかったが)思い切って cDNAライブ
も多く、研究者としてある程度成長できたと感じております。今後もリスクを恐れず、自
最後になりますが、メンターの先生方をはじめとした周りの方々の
ラリーを使った大規模スクリーニングを敢行してみました。実験系の立ち上げに数ヶ月を
分の思う研究活動を推進したいと考えています。
たり、有用遺伝子を確実に他の個体へ導入したりすることが可能とな
おかげで、これまでの研究教育活動を順調に進め、最終審査を終え
費やし、一昨年の暮れに本番を迎えました。東北大学の学生と夜通し数日間かけて実
また、岐阜大学での仲間が増やせなかったこと、所属が医学部基礎系で大学院学生
ります。このような遺伝マーカーを利用した育種改良法のことを
「DNA
ることができました。この場をお借りしまして、厚く御礼申し上げます。
験をした事、その際に高価な試薬(150 万円相当)があっという間に無くなった事(笑)
が少なく、結局継続性もあって前所属の東北大学の学生の継続指導のみになったこと
育種」と言いますが、この技術を用いれば、従来の育種改良法にお
今後ともご指導ご鞭撻の程、何卒よろしくお願いいたします。
を昨日の事のように覚えています。このような実験を敢行できたのは、ひとえに文部科学
などが、評価委員の先生からもご指導がありました。今後改善していきたいと思います。
3
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