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「千葉学芸高等学校におけるマレーシア(研修旅行・国際交流・交換留学
「千葉学芸高等学校におけるマレーシア(研修旅行・国際交流・交換留学)の実施に向けて」
千葉学芸高等学校 総務部長:宮中正信
はじめに
本校では 1982 年(昭和 57 年)より,ギリシャ・イタリアに生徒海外研修を実施している。当初は,高
校生で海外研修をする初の高等学校ということで大変話題になり,朝日・毎日・産経・千葉日報の各紙
に取り上げられた。第 1 回の参加人数は 49 名(生徒・引率教員)であり,費用は 18 万円であった。ま
た,第 10 回の参加人数は 79 名と大規模な研修団となっている。現地ではギリシャのアルザキオン高等
学校と半日ではあるが,国際交流を実施しており,研修の成果として,アルザキオン高校から 1 年間,
本校に 1 名の女子生徒の留学を受け入れた。
西暦 2000 年に男女共学とし,校名を「千葉学芸高等学校」と改め,生徒海外研修をスタートした。
1年生を含め 19 名の参加となった。しかし,社会情勢がバブルの崩壊から不安定になると,参加人数
も少なくなり,2010 年以降催行人数に達していない。1982 年の第一回生徒海外研修実施開始からこれ
までに 1041 名の生徒の参加があり,生徒の外国への興味関心の動機付けになっている。
(海外研修での
交流会から,イタリアに興味関心を持った生徒の中には,イタリア語をマスターし,空港関係の仕事に
就いた者。また,海外の友人関係によりフランスに在住している者。CAとしてデルタ航空で働いてい
る者。青年海外協力隊の参加などがあげられる)そのような状況から,国際教育を理念に掲げる本校で
は,英語圏への修学旅行を模索し,その実施国を 2005 年にシンガポールとした。途中,本校に勤務し
ていたALTがオーストラリア人であったため 2010 年から 2015 年までの間,オーストラリアに変更
もあったが,現在はシンガポールとなっている。
しかし,現在実施しているシンガポールの修学旅行では現地高校生との交流はない。さらにギリシャ
情勢の悪化に伴い,アルザキオン高等学校との学校間交流も途絶えたままになっている。このような状
況から今回千葉県が主催する「教職員国際交流事業(マレーシア派遣)」に参加する運びとなった。
この研修での目的は,現在実施している修学旅行をシンガポールからマレーシアへ変更または,追加
研修地にできないか,また,中断している学校間交流を再開できるか,さらに相互の交換留学体制の基
礎確立まで実施することである。
1 本校の現状
本校は 1887 年(明治 20 年)に創立された千葉県で一番古い私立の高等学校である。裁縫技芸塾として
開校したが,現在では男女共学の普通科の学校となっている。学校は九十九里浜のほぼ中央に位置し,
東金市に立地している。生徒の通学範囲は広く,南は大原,北は柏・銚子,西は千葉,市原と千葉県の
ほとんどの地域から通学している。学力的にはそれほど高くはないが,それでも近年は 76%が大学や専
門学校に進学している。
その中で毎年数名であるが,卒業後に海外での語学留学やゴルフ留学などを希望する生徒が増えてき
ている。オーストラリアに短期留学を実施した生徒は,オーストラリアでの修学旅行で,現地の治安の
良さ,日本に対して好感を持っている現地の人柄,以前本校で勤務していたALTのアドバイスなどで
留学を決心していた。
また,現在常勤の講師としてオーストラリア人の ALT が勤務している。1年生の英語の授業の中で
ALT オリジナルの英会話教材を使用し,英会話の授業を展開している。大変工夫されており,親しみや
すい人柄もあって外国に興味を抱き,英語をもっと学びたいと思っている生徒が多くいる。
2 修学旅行先としてのマレーシア
(1)クアラルンプール市内
クアランプール市内は比較的治安も良く,日本人が違和感を抱きがちなイスラムの宗教色は全く垣間
見えない。
(アメリカ大使館への爆発予告で日本の高校が修学旅行を中止にしたが,現地では全く問題
にしていない)マレーシア国では,2020 年に先進国へ入るために,優秀な人材育成の一貫としての教
育分野の改革と推進が図られ,さらにいたるところで建設ラッシュとなっている。そのため慢性的な労
働力不足になっており,インド系タミール人がその担い手となっている。
民族は多民族国家であり,60%以上をマレー人が占めている。マレー人はイスラム教徒であるが,日
本人がイメージする IS(イスラム過激派)などのイスラム教ではなく,性格は温厚で優しく,フレンドリ
ー(親近感)であるので日本人と似ていると感じた。
クアラルンプール市内は交通事情が悪く,車優先で横断歩道を渡る
のは命懸けである。歩行者用の信号スイッチはほとんど壊れていた。
モノレールやバスはあるが,人口増加に追いついていない。現在,地
下鉄の工事を急ピッチで進めている。また,治安は良いが,チャイナ
タウンなどの一部の地域ではスリに注意を要する。ショッピングモー
ルなど出入り口に警備員を配備しているところは安全である。また,
シンガポールと違い,貧困の格差を垣間見ることもある。例えるなら
モノレール内の風景
シンガポールが日本の銀座であり,クアラルンプールは大阪ミナミの繁華街
から下町といった感じがした。
気候は年中夏で,研修期間中は必ず午
後 3 時にはものすごいスコールが発生し
た。道路の排水設備が十分に機能されて
おらず,いたるところで冠水している
が,直ぐに止むのであっという間に水が
引く。また,ホテルなど近代的な建物の
中やバスに入ると冷房が効きすぎてお
チャイナタウン入口
外国人貸出用衣装
り,上着が必要となる。
(温度調整が細か
く設定できないのかもしれない)
イスラムのモスクを見学する場合には,礼拝の時間は原則見学でき
ないが,それを除けば比較的簡単に入場可能である。履物は脱ぎ,肌
が出ている場合は隠さなければならない。女性には衣装を無料で貸し
出してくれる。中には日本語の案内書もあり,現地の案内係りも簡単
な英語で説明してくれる。宗教の問題はあるが,しっかりルールを学
べば何も問題はない。国際感覚を養う上でも事前研究と現地での見聞
により,理解がさらに深まると考える。
ピンクモスク(プトラジャヤ)
次に国立博物館であるが,展示ブースを4つに分けており,時間軸に構成されている。非常に貴重な
資料も多く展示しており,マレーシアの歴史と文化を理解するには素晴らしい施設である。館内は撮影
自由である。
今回特に気にしていたことは,第二次世界大戦下で日本の植民地下にあ
ったマレーシアでは,日本をどのように取り扱っているかということだっ
た。展示では簡単に紹介しており,日本に対する敵対意識は全く感じられ
なかった。それよりも彼らの意識に重くのしかかっていると感じたのは,
マレーシア国として独立前の民族紛争であると感じた。
日系企業のヤクルトを訪問させていただいたが,見学できる工場の規模
としては小さい。しかし,生産ラインは技術の塊である。(そのため工場機械
国立博物館
の撮影は許可されなかった)設置されている機械は全て日本製なので,トラブルによる修理・メンテナ
ンスについて非常に苦慮されていた。すでに日本の高校や企業等多くの人々が見学している。特に千葉
県立長生高等学校では SSH(スーパーサイエンンスハイスクール)として 2 回も訪問されており,実績を
上げている。今回も高校生が企業見学に来たという前提でスケジュールを組んでいただいたが,最初に
必ず話をしているという。約 1 時間であるが,現地に滞在している日本人としてマレーシアをどのよう
に感じたかを体験として語っていただけたので,時間が経つのを忘れるぐらいであった。本校でも全員
見学では難しいので希望グループに分け,とりわけ理系を希望している学生には参加を義務付けるぐら
いに実施してみたいと思う。
BS プログラム(現地の大学生がガイド役になって日本の高校生等を案内する)を利用した市内の自由
行動であるが,前述したように治安に関して全く心配はないが,市内の交通事情が悪いため,実施する
ならば必ず BS プログラムを利用したほうが良い。しかし,これも場所と時間をよく検討した上で実施
すべきであろう。特に集合時間が現地の仕事が終わる時間に重なると戻って来られないかもしれない。
遅くとも午後 3 時には集合させることが必要と感じた。現地の大学生とのコミュニケーションを体験さ
せながら,市内自由研修をさせるのは良いことではあるが,生徒の安全面を考えると市内の見学場所に
はバスで移動し,バスに集合がよいと考える。
(2)カンポンビジット
今回の視察の目的の一つであるホームステイプログラムが「カン
ポンビジット」であった。
「カンポン」とはマレー語で「田舎・村」
を表している。マレーシアの郊外の村に訪問してショートスティ,
またはビジットを通して,伝統文化や自然,現地の人たちとの交流
を目的としている。本校では長い間,修学旅行を実施しているが,
このように現地の人達と交流する機会がほとんどなかった。実際に
視察し,実施可能かを見る良い機会となった。 今回訪問した村
は,ホームスティとホームビジットの二通り実施できる。どの家庭で
政府がホームスティを許可している家
も宿泊できるのではなく,政府の許可が必要となる。宿泊またはビジ
ット先は近代的な家と昔ながらの高床式の2つがある。生徒はおそらく近代的な家を希望するかもしれ
ないが,現地の風土慣習を体験できるのは高床式である。現代的な環境で育ってきた生徒たちは最初,
抵抗を感じるかもしれない。例えば虫が多いとか,暑く蒸しているのにクーラーがない。また,トイレ
に紙がないなどである。トイレに関しては,私も研修 2 日目からイス
ラム式の用(右手でホースを持ち,左手で洗う)を足した。慣れてし
まえば全く問題ない。しかも,マレー人は 100%イスラム教徒だが日
本人が誤解している過激な思想ではなく,我々日本人に近い優しさが
ある。特にここの住民は非常に寛容で温かい。言語は若いマレー人は
英語を話すことができるが,昔からいる老人は英語を話すことができ
ない。しかし,この問題は全く無視して良い。目的が異文化体験と異
文化の理解だからだ。日本人の奥ゆかしさは,裏を返せば消極的とい
うことになる。これではこれからの子どもたちが国際的な感覚を養え
るはずがない。
この村は小さな子供が必ずいる(マレーシアのカンポンビジットは全
て小さな子どもがいるという)ので,ホームスティ・ビジットはスムー
ズに溶け込めると考える。訪問先では,スティの場合,一つの家庭に
近代化された家にあるトイレ
シャワーまたは青の容器から水で洗う
生徒は基本 2 人である。部屋にはベッドが一つあり,その一つのベッ
ドで2人泊まる場合と,ベッドが2つでそれぞれが1台のベッドとい
うパターンがある。さらに村長の家では4名から8名が泊まれる。ま
た,本部として先生が宿泊する場合もある。
基本的な流れは,生徒は集会所に到着して,簡単な歓迎会を行い,
各ホームスティ先に村人と帰る。または,歓迎会で伝統的な結婚式の
デモストレーションを体験することもある。訪問先の家までは車で行
く場合と近くであれば,歩いて行く場合がある。宿泊先の周りには何
も無いので,タピオカの作業を体験,ゴム園やヤシ油の畑などが作業
を体験できる。各家では,セパタクローやできるだけ多くのビー玉を
取る「チョンカッ」も楽しむことができる。さらに伝統的な絵付けや
家庭によっては近くの町まで車で行き買い物を体験することも実施し
ている。多くの学校や人々が体験しており,異文化体験には素晴らし
いプログラムと思う。きっとこの体験を通して子どもたちは国際交流
へと羽ばたくに違いない。
昔からの高床式の家
最近多くなってきたコンクリートの家(エアコンもある)
ホームスティ用ベッド
(集会所には多くの国から沢山の学校や人々がホームスティ,ホームビジットをした写真が掲示してあ
った。下記に日本の高等学校が実施された内容を掲載する)
「マレーシアの方々との交流をメインテーマに,バングリス村のホームビジットを主として,体験学習
を行ないました。ホームビジットでは2~5人の生徒が各家庭に分かれ,その家族達と遊んだり,食事
を作ったり,村を見学したり一緒に生活体験を行ないました。言葉は上手く通じなかったようですが,
教員の心配をよそに身振り手振りでしっかりとコミュニケーションをとり,気持ちは通じ合えたようで
した。別れ際に泣き出す生徒もいたほどです。帰国後の感想文集にもこの体験がもっとも印象的でよか
ったという声が多くありました。また,バティック工房での布染色,ピューター工場でのトレイ作り,
市内自主行動などの自主体験学習。マラッカ,プトラジャヤの見学等,アジアの一途上国について想像
していたことと体験することの差異を,身をもって感じてくれたと思います。
」
引用:http://www.travelvision.jp/html/mm/viva/20050120/malaysia_0501.html
3 学校間交流の礎
(1)政府教育省との意見交換
研修2日目 10 時~13 時過ぎまでマレーシアの教育省で
活発な意見交換ができた。マレーシアの学校教育制度は,就
学前教育・初等教育・中等教育・高等教育の 4 段階からなっ
ている。この就学前教育を除くと,学校制度はイギリスの教
育制度を基本としており,6-3-2-2-3 となっている。す
なわち,初等教育(小学校)6 年,前期中等教育(中学校)
が 3 年,後期中等教育(高校)が 2 年,上級中等教育(大学
予備教育課程)が 2 年,高等教育(大学など)が 3 年となっ
ており,それぞれの段階が終了した時点で共通国家試験を受
教育省との活発な意見交換会
験することになっており,その成績で進路が決定されてい
る。マレーシアでは初等・中等教育は最近になって義務化さ
れたという。就学率は非常に高く,小学校で 94.6%,中学校
(前期中等教育)では 81.4%となっている。この 9 年間の初
等・前期中等教育は国家試験の結果に拘わらず自動的に入学
が可能で,無償となっている。
(教科書は有償)この初等・中
等教育(小学校・中学校)の特徴は,教育言語が異なるタイ
プ(マレー語とそうでない言語)の学校が併存することとそ
のマレー語と英語に重点をおいて教育を展開していることで
ある。さらに,イスラムの宗教の時間(非イスラムは道徳)を
教育省と千葉県教育庁視察団
設置していることにある。また,教育省が統一カリキュラムの
基本方針を策定しており,教育水準の確保を図っている。進学率は,中学校が 89.1%,高等学校が
95.8%,大学予備課程が 12.7%と日本の進学率と同じ数字に近づいている。教育水準を国が主導し,先
進国を目指して有能な人材を育成しているマレーシアとの交換留学はとても魅力的である。また,修学
旅行の一貫としての学校交流は比較的簡単にできそうである。教育省と文部科学省(実際は県教育委員
会)レベルの交渉から直接学校同士の交渉など様々な方法があるが,私立学校としては学校間で直接や
り取りするのがベターな方法であると感じた。しかし,事前情報のやり取りは必要であろう。マレーシ
アでは幼稚園から英語の教育は始まっており,数学など一部の教科では英語で授業が展開されていると
いう。これは多民族国家のため共通の言語が必要不可欠であるが,その教育政策はマレーシア政府が中
心となってリードしている。
(国家教育原理:マレーシアの教育は全体的で総合的な個人の潜在能力を
高めることを目指し,知的,精神的,情緒的,身体的な潜在能力を,神への信仰と服従を基盤として,
均衡のとれた調和的な人格を発達させるための継続的な努力である)
さらに,英語のアウトプットとしての会話テストの実施を展開するなど,日本の英語教育が大学受験
のための授業から脱皮しようとしている方向を先取りしていると感じた。日本の文部科学省では英語教
育の改革「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を進めているが,日本も国がより強力にイ
ニシアチブを取って教育を指導しなければ,アジアの中で一番英語力の低い国から脱却するのは困難で
あると感じた。
(2)SMK(Seri Sentosa)
研修3日目 マレーシアでの最初の高等学校を訪問する。
この学校は普通高校であるが,マレーシアでは中学校と高等
学校が同じ敷地内にある。道路沿いに面した近代的な校舎
(10 階建ての校舎で三面が囲んでいる吹き抜けの建物)であ
り,日本では考えられないほどの規模である。生徒数は 1838
人。教員は 148 人。クラスはなんと 69 クラスもある。始業時
間は 7 時 30 分。授業は 40 分 1 コマである。そして,何より
も午前の部と午後の部で生徒が登校するということである。
この方策をとらないと全ての国民に平等に教育の機会を与え
られないのだろう。午前の部で授業を受けた生徒は放課後残っ
三面を10階建ての校舎で囲まれている
て特別な授業を受けることも可能であるが,ほとんどの生徒が
塾へ行くということである。
到着するとマレーシア式の熱烈な歓迎を受け学校に入った。そ
の後,体育館に移動し。歓迎式典を受けた。生徒による中国の獅
子舞と日本のソーラン節を見ることができた。その後,食堂に移
動し,教師用の食堂(生徒用と教員用で分かれていた)でマレー
シアの郷土料理であるカレーうどんのような麺を食べる。味は東
南アジア独特の辛さではなく控えめなスパイシーであったが,や
はり,ミルクティは日本人には甘すぎた。その後,国際会議がで
きるような部屋で学校案内のビデオを見る。音声による説明はな
く,BGM に映像だけであった。この学校は学力も常に上位であ
る上にスポーツにも力を入れている。特に陸上競技が強いという
説明を受けた。
学校案内のビデオを見た後で,エアコンのきいた公開授業用の
部屋へ移動した。授業はデング熱を予防するための PR を各班で
活発な授業
調べ,様々な方法で発表する形であった。さまざまな民族がいるなかで共通言語である英語で授業を展
開していた。生徒はインターネットを使用し,調査研究の成果をそれぞれの班で工夫しながら展示物を
作成して,完成したものを英語で発表していた。この学校は既に,幕張総合高校と千葉東高校と国際交
流を実施している。日本に非常に友好的な学校と感じる。男女も在籍しているので,是非本校も学校間
で交流を開始したい。
Academic(Seri Sntosa のリーフレットから抜粋)
Year
PMR(中学校の全校統一試験)
SPM 高等学校の全校統一試験)
STPM(大学予科の全校統一試験)
%Passes
%Passes
%Passes
GPK
GPK
%4
Principal
2012
95.8%
2.25
88.2%
3.90
100.9%
44.3%
2013
96.4%
2.27
92.78%
3.52
91.3%
2.00%
95.81%
3.43
100.0%
2014
(3)SAS(Sekolah Sultan Alam Shah)
2校目の学校はクアラルンプール市から 25km 離れたプトラジ
ャヤという都市にある。プトラジャヤはマレーシアの行政都市と
して連邦直轄領である。計画された都市開発の中に立てられた学
校であり,1校目の学校と対照的に広大な敷地に広く建てられた
学校である。そして全寮制の男子のみの学校である。マレーシア
で全寮制の学校はマレー人の育成のためにエリート校である。
こちらも到着後に熱烈な歓迎をされて LL 教室で学校の説明を
受ける。学力も高く,全国統一試験でも B 以下は3人しかいな
い。生徒を能力別に4つに分け,さらに寮においても色分けされ
生徒によるプレゼンテーション
ている。そのうちの一つレッドを見学した。部屋は9人分のベッ
ドのみが置いてある。また,出入り口や窓には鉄格子でロックさ
れている。吹き抜けの廊下には洗濯物がきれいに干されていた。
学校の PR スライドは学力でもスポーツでもボランティアでもマ
レーシア国で一番であることを話していた。特にオーケストラで
は有名らしい。授業は7時 30 分から始まり,1コマは 40 分であ
る。終業は 14 時 40 分であるが,放課後も特別授業が展開されて
いる。この学校は ICAS(International Competition Assessment
for school)「国際学力別コンテスト(170 万人が参加し,東南ア
数学の授業(マレー語であった)
ジア・オセアニア諸国が参加しているが,日本は参加していな
い。テストは英語・数学・CP・科学で行われる。)
」において常に上位を占めるなど,素晴らしい学力の
学校である。
その後英語教育についてレクチャを聞いたが,日本の英語教育の最大の欠点を見事にカバーしてい
た。マレーシアの国柄,英語は必要不可欠ではあるが,
「なぜ英語を学ばなければならないか」という
最初の動機付けが重要であると話されていた。新聞や求人広告を見せて英語を学ばなければ職に就けな
いことを子供たちに教えるそうだ。さらに理解に達しない生徒を出さないために,学力別にクラスを編
成している。さらに英語の授業では 3 クラスを 4 分割し,一番下のクラスを最も人数を少なくしてい
る。英語の授業では日本の過去の教授方法のように一方的に教えても身に付かない。この学校ではコー
ラスや演劇等で生徒個人や全体をキャスティングすることで会話をどんどんさせること身につけさせて
いた。日本人が一番苦手で,これからの英語教育の要である言葉が次の通りである
Tips to speak well in English
①Speak, speak , speak
②Listen ③Read outload
⑤Do interesting activities in English
PRACTICE MAKES PERFECT
④Learn a new word everyday
⑥Don’t be afraid to mistakes
(スライドから引用)
言われてみれば,その通りである。英語科の教員として考え直す良い機会となった。
これほど教育に熱心で,寮もあるこの学校への学校間交流はきっと得るものが沢山あると思う。男子
校なので女子生徒の現地での直接的な交流は方法を検討しなければならないが,男子のみを寮に宿泊さ
せるのも一考である。
4 まとめ
マレーシアは,英語が通用するアジアの英語圏である。異なる多民族間の共通言語として英語が使われ
ている。2 カ国語を話すバイリンガル,3 カ国語を操るトライリンガルも多く,世界でも有数なマルチリ
ンガル環境を創り上げている。グローバル人財育成の教育拠点として,海外留学生の受け入れにも積極
的である。これは近年,東南アジア,東アジア諸国,中東諸国などからの留学生が急増しているデータか
らも伺うことができる。
マレーシアの特徴として真っ先に挙げられるのが「多様性」である。マレー系,中国系,インド系をは
じめとする多くの民族がお互いの文化や習慣を尊重しながら共存し,グローバル社会を形成している。
人々は穏やかで親切であり,人種差別や偏見も少なく,海外からの留学生なども柔軟に受け入れる姿勢
を持っている。さらに,マレーシアは,渡航費用がシンガポール(現在修学旅行を実施)と比較しても格
段に安い。さらに,前述したように教育水準も高いの
で,ヨーロッパやアメリカ,オーストラリアなどの大
学に編入しやすい面も見逃すことができない。また,
治安も比較的安全で親日的な国のため快適な生活が
できる利点もある。様々な面から学校間交流とホーム
スティを入れた修学旅行には理想的な環境の国であ
ると感じた。多様な人種,言語,文化,宗教というマ
レーシアならではの環境下で勉強し,生活してこそ,
真の「国際教育」が可能になると考える。本校として
もマレーシア修学旅行の実施へ向けて積極的に検討
していきたい。
SMK(Seri Sentosa)の先生方と千葉県国際交流視察団
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