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プロジェクト・ファイナンス - Personal.psu.edu

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プロジェクト・ファイナンス - Personal.psu.edu
古阪秀三
総編集
安藤正雄
平野吉信
山崎雄介
斎藤 隆司
関谷哲也
大武適伯
大松 敦
永易
修
編集
朝倉書店
者
芝浦工業大学
永 富英 夫
(
秩)フジタ
溝 上冷 二
(
秩)竹中工務店
丸
隆宏
(
秩)フジタ
湊
東京大学
村 岡益 一郎
(
株)大林組
藤 津 克樹
東京電機大学
横 須賀誠一
(
樵)フジタ
小松 幸 夫
早稲田大学
淳 口正彦
(
秩)フジタ
金 多
京都大学
新 原 浩 二
(
樵)フジタ
(
有)ア ドミックス
犬伏
昭
清水建設 (
秩)
佐 々木良和
(
株)竹中工務店
河村 光 昭
清水建設 (
樵)
佐 藤 隆良
(
秩)サ トウファシリティーズコンサルタンツ
小野
正
清水建設 (
秩)
蟹 揮 宏 剛
芝浦工業大学
名 知博 司
清水建設 (
秩)
中川輝 雄
(
樵)気工社
平
隆幸
隆
智 之
大森 文 彦
大森法律事務所
加 藤 達夫
前 (
秩) レック ・サービス
菅 原忠 弘
(
秩) フジタ
楠
(
秩)竹中工務店
土 田恭義
(
秩)フジタ
大 沢幸 雄
大成建設 (
秩)
田 中愛輔
(
秩)鴻池親
吉 田二郎
カリフォルニア大学パークレ 校
清 水 進 市
技術士
天野禎戒
(
秩) 日建設計
伊 佐
佐藤工業 (
秩)
浩一
真
東棟 隆郎
(
樵)三菱地所設計
平 田幸 光
佐藤工業 (
株卜
大 崎
京都大学
瀬 口健夫
前 大成建設 (
株)
栗 山知広
(
秩) 日建設計
中山光男
(
樵)鴻池組
杉 山
隆
(
樵)日建設計
清 水 健 司
(
樵)竹中工務店
小 菅
哲
(
秩)高島建築事務所
磯 村
(
株)フジタ
高 本孝 頼
(
秩)図研
蓑 輪 達 男
大成建設 (
樵)
浦江 真 人
東洋大学
三浦 延恭
国士舘大学
佐 治郁 夫
(
秩)西 日本住宅評価セ ント
汐 川
孝
(
秩)大林組
桜 井
潔
(
秩) 日建設計
三 山剛 史
(
秩) フジタ
小 栗
新
Ar
u
pJ
a
pa
n
藤 本悦 生
(
秩)大林組
八坂文子
鹿島建設 (
樵)
田丸紘夫
(
秩)大林組
岩下
(
秩)鴻池絶
柿 崎治郎
(
樵)竹中工務,
a
家 田高好
大成建設 (
秩)
植 野 修 一
東急建設 (
秩)
井 関裕 二
(
財)建材試験セ ンター
人見
亨
(
秩)竹中工務店
(
コラム執筆者)
阿保
昭
(
秩)TAK システムズ
三根 直 人
北九州市立大学
喜多喜久夫
(
秩)フジタ
野 中光 彦
(
秩)F
BS
古野秀二郎
(
樵)竹中工務店
角 山推計
(
株)テクノマテ リアル
中村 裕幸
(
秩)DCMC
森 田真 弘
(
樵)竹中工務店
栗 原信 弘
vsLJ
APAN (
秩)
前 田純一郎
清水建設 (
樵)
柳 田隆一
(
射
松 本信 二
シー ・エス ・ピー ・ジャパ ン (
秩)
純
智
エスシー ・マシーナ リ
渉
吹
木 本健 二
第 Ⅰ部
総
3
.
1
.
1 わが国における建築生産システムの変
1
. 建築市場 ・建築産業 ・生産組織
1
.
1 建設投資 ・市場 と建設活動 .
I
-
1
.
1
.
1 世 界 -・
1
.
1
.
2 日 本
-
I
.
・
-・
・
・
・
・
-2
-[
岩松
説
準]-2
3
1
.
1
.
3 住宅投資 ・市場・
・
・
- -・
-[
多治見左近]-7
1
.
1
.
4 建築生産のフローとス トック ------ 1
0
1
.
2 建設産業 と生産組織 ----1
2
3
.
1
.
2 建築生産システムの構成 ・
・
・
・
4
4
3
.
1
.
3 建築生産 システムの レベル・
・
・
3
.
1
.
4 建築生産 システムの形態
45
45
46
3
.
1
.
5 建築生産システム革新の方向
3
.
2 建築プロジェク ト3
.
2
.
1 プロジェク トのマネジメン ト
--・
[
関谷哲也1-4
8
1
.
2
.
1 ビルデ ィングチームの典型的な構造
-・
[
遠藤和義]・
-1
2
1
.
2
.
2 主な主体の業城 ・職域 とその関係・
州 .
・
.
1
3
1
.
2
.
3 建設産業史- ・
-[
菊岡倶也]-1
6
-
4
8
3
.
2
.
2 事業化の手法 --
3
.
3設
-[
斎藤隆司]-5
0
-[
大武通伯]-5
4
計--・
3
.
3.
1 設計 ・監理業務発生の歴史-・
・
-5
4
2.
1 関係法制度--[
平野書信]-21
2.
1
.
1 技術基準 などを扱 う法令 -・
--21
2.
1
.
2 業務 ・資格 などを汲 う法令- ・
・
-2
4
2
.
1
.
3 契約関係 などを扱 う法令 -・
-2
5
3
.
3
.
2 設計業務の変遷-・
・
--5
5
3.
3
.
3 現在の建築生産における設計 -・ -・
5
6
3
.
4 発注 ・調達・
-・
--[
斎藤隆司]-5
9
5
9
341 工事発注区分
6
0
342 入札方式
61
343 契約方式
6
2
344 施工者選定 フロー
2
.
2 関係標準類・
2
.
2
.
1 標準契約約款類 ・
---
3
.
5 生産 ・製造 ・製作-・
・
-[
植野 潤]・
・
・
6
2
3
.
5
.
1 工業生産における工場での製造ない し
2. 建築生産 を取 り巻 く社会の しくみ
・
・
・
[
平野書信]・
・
・
2
6
-・
2
6
2
.
2
.
2 技術標準類・
-・
--2
7
2
.
3 専 門家の業務 とその支援 システム--- --2
8
2
.
3
.
1 資格 ・教育 ・訓練 -・---[
瀬口哲夫卜 一
2
8
・
.
--・
[
二宮照興]-3
3
2
.
3
.
2 専門家の倫理 ・規範 ・
2
.
3
.
3 業界団体 ・学術団体 --・
・
・
[
伊藤圭子]-3
5
2.
3
.
4 保証 ・保険 ・ボン ド類-・
・
・
.
[
平野書信]-3
7
2
,
4 政策 ・施策・
・
・
・
・
--・-・
--[
和田 恵]-3
9
2
.
4.
1 入札 と契約の適正化 -I
.
・
・
・
・
3
9
・
242 CM 方式への取組み
2
.
4.
3 設計委託方式 と品確法-2.
4
.
4 資格の国際化 ・
-・
4
0
--41
-.
・
42
3
. 建築生産システム とプロセス
3
.
1 建築生産システムの成 り立ち-[
山崎雄介]・
・
・
4
4
352 工業生産における自動生産
353 自動機 に対する情報の提供
354 木材のプレカ yト自動加工
36 現 場 施 工
361 現場施工 とは
[
永易
6
2
6
4
6
5
修] 6
6
6
6
362 現場施工の特徴
363 施工の流れ
6
6
6
9
37 維持 ・保全
[
野城智也] 7
0
--7
0
3
.
7
.
1 維持 ・保全 とは-3
.
7.
2 建築物の 日常管理 ・
・・
・
-・
・
-71
3
.
7.
3 建築物お よび構成材の物理的劣化対策 -71
-
3.
7
.
4 建築物の性能検証 -・
-7
3
・
・ ・
・
・
・
7
4
3
.
7
.
5 建築の要求条件へのす り合せ ・
3
.
7
.
6 マネジメン ト行為 としての維持保全 -=7
4
プ
イナンス
クト
ロジ
ファ
54
ェ
3
40
第Ⅲ部 5 多様なマネジメント
ネジメ ン ト活動 には,物 件管 理 ,面積 管理 , テナ ン
ト管現
維持 保 全管現
金管軌
不 動 産会計 管理 な ど,多様 で膨 大 な情報 マ
工事 計 画 ・実績 管理 ,入 出
ネ ジ メ ン トが 必 要 な た め,最 近 で は大 規 模 な ERP
(
Ent
e
r
pr
i
s
eRe
s
o
ur
c
ePl
a
n血 gpa
c
ka
ge
) システム
が開発 ・運用 されて い る
文
図5
.
3.
6
ビルの 「
所有一経営-管理」相 関図
(
ど)
I
,
マネジメント部会 .2000)13)
オーナーサポー ト業務
Ⅰ プロ パ
テ
ィマネ ジ メン ト業 務
運営業務 (ソフト分野の管理業務)
1
管理業務 (
ハ- ド分野の管理業務)
1
n リーシングマネジメント兼務
1貸 関連兼務
「
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
.コ ンストラクシ ョンマ ネジ メント業務
注
:(
)内の数 字 は
.
-
(
長期 的な)資産保全関連業務
さらに細分化 された業務 の数 を意味する
法務 ・税務 ・会計お よび渉 外業務 (7 )
レポー ト監修 ・報告 (
3)
管理業務の評価 (
1
)
管理企画業務 (
5)
渉外業務 (
3)
3)
利用者管理業務(
事務業務(
3
)
出納業務(
2
)
清掃衛生業務 (
4
)
設備管理業務 (
5
)
保安警備業務(
4
)
保全管理業務(
3
)
コス ト削減業務(
1
)
賃貸企画業務 (
1
)
契約管理業務 (
5
)
テナン ト交渉業 務 (
2)
4)
入退室関連業務 (
「
2
)
改修 ・修繕の必 要性検討 (
大/
・中規模改修.修繕計画 (
2
)
大 ・中規模改修.修繕実施 計画 (3)
渉外業務 (
3)
図 5.
3.
7 ビル経営代行業務 (
PM 業務)において発生する業務の体系 (
ビルマネジメント部会 ,2000より作成)13)
広義 の プ ロパ テ ィマ ネジ メ ン ト業務 ) にお け る業務
フ ト ・ハ ー ド両 面 の運用 管理 能力 (
例 えば,建築 設
体 系 を図 5
.
3.
7に示 す.広 義 の プ ロパ テ ィマ ネ ジ メ
備士 ,電気 主 任 技 術 者 な ど), リー シ ングマ ネジ メ
ン ト業 務 を遂行 す るため には, ビル経 営 を総 合 的 に
ン ト業務 で は賃借 の代理 も し くは媒介 を行 う法 的資
[
大 沢幸雄]
献
1
) FM 推進連絡協議会席 :ファシリティマネジメント ガ
イドブック,pp1
-1
4,日刊工業新聞社 (
1
99
4)
2) 不動産リノベーションビジョン研究会 不動産l
)ノベシヨンビジョン研究会報告書.p26,不動産流通近代
化センター (
1
9
9
7
)
3) 田中順一郎編 :最新区分所有ビル,商事法務研究会
(
1
98
6)
4) 日本建築センター '建築基準法に基づ く総合設計制度
9
96年度版,日本建築センター (
1
9
96)
の解説 1
5) ビル管理ハンドブック編集委員会編 ・ビル管理ハンド
ブック,オーム社 (
1
982)
6) ビル管理データブック編集委員会縮 ・ビル管理データ
ブック.オーム社 (
1
989)
7) ビル経営研究会編 :
最新ビルの経営と管理,商事法務研
1
9
84)
究会 (
8) ビルマネジメント研究会 :ビルマネジメント研究会報告
書.日本ビルヂング経営センター (
1
988)
9) 政府 ・与党金融再生 トータルプラン推進協議会 金融
再生 トータルプラン (
第 1次および第 2次とりまとめ)
(
1
99
8)
1
0) 不動産特定共同事業研究会編 改定 ハンドブック 不動
1
99
7)
産特定共同事業法,大成出版社 (
l
l
) 山崎和哉 :資産流動化法一改正 SPC法 ・投信法の解説
と活用法.金融財政事情研究会 (
2
001
)
1
2) オフィス基準 ・制度研究委員会 ・ニューオフィスミニマ
ム.ニューオフィス推進協読会 (
1
9
9
45)
1
3) 賃貸オフィスビルビジョン研究会ビルマネジメント部
会編 :新 しい時代のビルマネジメントービル経営代行
2
002)
業務 ・業務一覧,日本ビルヂング協会連合会 (
1
4) 鑑定評価理論研究会編 :
要説不動産鑑定評価基準 (
増補
版)
.pp.11
5-1
34,住宅新報社 (
1
9
9
6)
1
5) 大沢幸雄 :ス トックの時代におけるリニューアルの意義
と課題.第 1
2回建築生産パネルディスカッション雑文
&.pp5
966,E
l
SS#SS (
2
000)
1
6) 松村 徹 :新時代のオフィスビル経営.BELCA NEWS
第 63号 ,pp.
7
-1
4.建築・
設備維持保全推進協会 (
1
999)
1
7
) 大沢幸艶 紺谷高康ほか :
施設管理業務とその管理情報
の体系化 第 1
6回建築生産シンポジウム論文集,pp7380,日本建築学会 (
2000)
1
8) 大沢幸雄 :資産管理業務支援 ERPシステムにおける設
計開発手法の構築 日本建築学会計画系論文集,第 559
号 ,p
p.
2
41
-2
48.日本建築学会 (
2
0
02)
5
.
4
.
1
プ ロジ ェク トファイナ ンス とは
Pr
o
j
e
c
tFi
na
nc
e)と
プ ロジェ ク トフ ァイナ ンス (
は,発電 プラ ン トや石油採掘 な どの大 規模 な 「プ ロ
ジ ェ ク ト」 に対 す る金融 (
事業 主体 か ら見 る と資金
調達 ) の方法 で.原則 として対 象 とな る プ ロ ジ ェ ク
トか らの収益 のみ に よって債 務 を償 還 し,仮 にプロ
ジ ェク トが期待 どお りの収益 を生 まなか った場 合 で
もス ポ ンサ ー企業 が保 有す る他 の事業 の収益 や 資産
売 却 に よって債務償 還 す るので は な く, 当初 の契約
内容 に沿 って対 象 プ ロジェ ク トの範 囲 内で対 応 を進
め る方法 で あ る.
一般 に, プ ロジェ ク トフ ァイナ ンス とい う と国際
的 な 資 源 開発 の プ ロ ジ ェ ク ト等 を指 す こ とが 多 い
が,現在 日本 で注 目されてい るの は. 国内 で 実施 さ
れ て い る 「ノ ン・リコース1
」あ るい は 「リ ミテ イ ッ ド・
.i
i
リコー スL
i
」 に よる資金調達 で あ る (
注 :肩 付 の i
は節 末 の用語 解 説参照 .以下 同 じ).
わが 国 を代 表す るプ ロジェ ク トフ ァイナ ンスの事
例 と して は,ユ ニバ ーサ ル ・ス タ ジオ ・ジ ャパ ン,
神鋼 神戸発 電軌
苫前風力発 電施 設 , 六 本木 ヒル ズ
(
複 合不 動 産 開発 )な どが あげ られ る.ユ ニバ ーサ ル .
ス タジ オ ・ジ ャパ ンの プロジェ ク トにお い て は,紘
工 費約 1
,
70
0億 円 の うち 1
,
25
0億 円 に つ い て 1
8の
金融機 関が参加 す る プロジェ ク トフ ァイナ ンスが組
成 され た.神鋼神 戸発電所 の プ ロジ ェ ク トにお いて
は ,5金融 機 関が ア レンジ ャー と して約 2年 間 プ ロ
ジ ェ ク トフ ァイナ ンスの構 築 を行 い, 約 2
,
000億 円
の事 業 資 金 の うち 1
.
65
0億 円が
1
7の 金 融 機 関 に よ
りフ ァイナ ンス され た.ユ ニバ ーサ ル ・ス タジ オ ・
1
9
9
9年 , 神 鋼 神 戸 発 電 所 は 2000年 に
o
j
e
c
tFi
na
nc
eMa
ga
z
i
neの
英 金 融 専 門誌 で あ る Pr
ジ ャパ ンは
デ ィー ル ・オブ ・ザ ・イヤー に位 置づ け られ て お り,
国際 的 に も本格 的 なプ ロジェ ク トフ ァイナ ンス と し
て位 置づ け られ てい る.
5.
4.
2 どの よ うな場合 に プ ロ ジ ェ ク トフ ァ イナ ン
ス を使 うか
プロ ジェ ク トフ ァイナ ンス を用 い る典 型 的 なケー
企 画 ,計 画 ,管 理す る多様 な専 門的能 力 ・職 能 を必
檎 (
宅地建物取 引 主任者 )を要 し,コ ンス トラ クシ ョ
要 とす る. オ-ナー フ ォロー業務 にお い て は, ビル
ンマ ネジ メ ン ト業 務 にお いて は改修 ・修 繕 にかか わ
ス は.高 い事 業 遂行 能力 を有す る企業 が 有 望 な事業
経 営 ・施 設 運 営 管 理 業 務 を統 括 しう る職 能 (
例え
る計 画 ・施工 監理 能力 (
例 えば,一級 建築士 ,一級
機 会 を持 ってい るに もかか わ らず ,何 らか の理 由で
ば, ビル経 営管 理士 ,認定 フ ァシ リテ ィマ ネジ ャー
建築施 工管理技 士 な ど)が要 請 され る.
な ど), 狭 義 の プ ロパ テ ィマ ネ ジ メ ン ト業 務 で は ソ
なお , プロパ テ ィマ ネジメ ン トお よびアセ ッ トマ
自社 の負 債 に よる資金調達 を した くない, あ るい は
す る こ とが で きない場合 であ る.例 えば,副 業 の不
34
2
第 Ⅲ部 5
.多様なマネジメント
5
.
4 プロジェクトファイナンス
らの工夫 によって.関係者の利害 を一致 させ なが ら
で設計 どお り分配するために,長期取引契約,燃料
各主体の責任 を明確 に し負担するリス クの範囲を限
供給契約,プロジェク ト預金 口座への質権設定.長
定 してい く.
この ように,プロジェク トファイナンスにおいて
期取引契約上の将来債権-の譲渡担保設定,保険金
は,事前 にあ らゆる可能性 を検討 し,関係者の役割
上の工夫が施 される.したが って,プロジェク トファ
分担 を明確化 し, コンティンジェンシーを明文化 し
イナンスの経験が豊富な弁護士の活用は不可欠であ
てい く.従来のプロジェク トにおいては,多 くの事
る.
神鋼神戸発電所の事業スキーム
振 によ り企業の信用力が十分でない場合, または企
されないままあいまいに進め られて きたために,辛
後的に問題が生 じるケースが数多 くあった・ プロ
法は. ファイナ ンスにおける事業評価 の基本原則 ・
ジェク トファイナ ンスの活用は,従来のプロジェク
慣行にのっとった ものであ り,それほ ど特殊ではな
ト推進の慣行 を変 えてい く可能性 を持 っている.
い.EBI
TDAx
uに主眼 をおいた事業計画 を作成 し,
能 となった要因である.
業規模 に比べて当該プロジェク トの規模が大 きす ぎ
る場合などがあげ られる・例 えば.米国の不動産開
発においては比較的小親模のデベ ロッパーがノンリ
そこか ら DSCR (
デ ッ ト ・サー ビス ・カバ レッジ ・
5
.
4
.
5 プロジェク トの リスク管理
5
・
4
・
4 プロジェク トファイナンスの特性
返還請求権-の質権設定,倒産隔離など様々な契約
b. 事 業 評 価
プロジェク トファイナンスにおける事業評価の手
項が明文化 されずに, または法的効力が十分 に検討
図5
・
4
・
1
343
プロジェク トの リスクには,天災, カン トリー リ
,LTV (ロー ン ・トウ一 ・バ リュ-)XLV
レシオ)Ⅹi.1
プロジェク トI
RR ・エ クイテ ィ I
RRx
v等 を計算 し,
またい くつかのケースについて感度分析 を行 う.
コースロー ンを用 いて大規模 な開発 を進めるのが通
常である.
プロジェク トファイナンスにおいては, リスクを
スク.工事完成 リスク,操業 リスク,市場 リスクな
適切 にコン トロールするための事業スキームの構築
ど様 々な ものがある.プロジェク トファイナ ンスに
事業評価 において重要なのは,キャッシュフロー
ただ し・後述の とお り, プロジェク トファイナ ン
とそれに伴 う利害関係者の役割調整が最重要課題で
ある.
スでは体 制構 築,契約締結 な どに費用がかかるこ
と,信用 リスクに応 じて比較的高い金利が設定 され
ることなどか ら・それ らの費用 を考慮 した上で もプ
おいては,これ らの リスクのコン トロールこそが要
変動の鍵 となる要素 に関 して十分 な調査 を行 うこと
諦であ り,表 5
.
4.
1に例示 されるように,数々の工
であるが.その際,利益相反のない専 門コンサルタ
コーポ レー トファイナンスにおいては,事業実施
夫が施 される.いずれも基本的な考え方は,それぞ
ン トを利用することが重要である. また. リスクコ
のための体制構築や関係者の利害調整はすべてスポ
れの リスクについて最 も適切 にコン トロール しうる
ン トロールの結果 を適切 に感度分析 に反映させ るこ
とも忘れてはな らない.
ロジェク トファイナ ンスを組成する意味がある場合
のみ検討が進め られる.
ンサー企業が行 い,金融機関に対 してはスポ ンサー
関係者が妥当なりター ンを得 なが らリスクを引 き受
企業が唯一の窓口として丸 ごと責任 を負 う形態 をと
けることによって,プロジェク トの リスクを限定 し
る・事業の リスクは一度スポ ンサー企業でプールさ
てい くことである.
5
・
4
・
3 なぜ今 日本 で注 目されているのか
れるため・資金提供者は事業 レベルでの厳密な リス
ク管理 を求めないことも多い.
今
日本でプロジェク トファイナ ンスが着 目され
ている理 由は一時 に 日本 で これ まで一般 的だった
コーポ レー トファイナ ンスt
l
'に対比す ると理解 しや
すい・戦後 日本 において事業資金の調達は大部分が
銀行か らのコーポ レー トファイナンスで行われてお
り・それ以外の資金調達 は極めて限定的だった. し
たがって・大規模 な事業 を実施する場合,グループ
企業内金融や親会社保証 など何 らかの形で大企業の
信用力 を利用する場合がほとん どだった.
しか し,近年の英米型の会計基私 企業評価手法,
債券格付 け・国際 的な銀行規制 な どの浸透 に伴 っ
て・従来の ように大企業が多種多様な事業 を企業グ
ループとして実施 し・また・その リスクをすべて親
会社が引 き受けて資金調達することが徐 々に困軌 こ
なってきた・それが・ プロジェク トベースで資金調
達するニーズの高 ま りにつながっている. また,機
を同 じくして資産証券化の導入 も進み,S
PCI
Vなど
事業 ・資産単位 で資金調達 を行 うための仕組 みが
整 って きたことも・ プロジェク トファイナ ンスが可
リスクコン トロールの仕組みが適切 に導入 されて
いれば,収入段階.投資額等の変動幅は限定 されて
a. 契 約 技 術
プロジェク トファイナンスにおけるリスクコン ト
お り,大 きな事業環境の変化 を想定 した場合で も十
分な水準のキャッシュフローを維持す ることがで き
一方・プロジェク トファイナ ンスにおいては,図
ロールの問題は,結局の ところ意図 したとお りの効
る.ただ し.プロジェク トファイナンスの返済原資
5
・
4・
1の神鋼神戸発電所の例 にあ る とお りプロジェ
果 を得 るためにどの ような契約 を作成す るか, とい
は当該 プロジェク トに限定 されていることか ら,大
ク トに直接関係する関係者が増 え, またそれぞれの
う問題 に集約 される.一般的に,プロジェク トファ
企業のコーポ レー トファイナ ンスに比べ ると信用 リ
契約 もプロジェク トファイナ ンス特有の もの とな
イナンスにおいては,コーポ レー トファイナ ンスと
スクは高い ことが多 く.資金 コス トは高 くなる傾向
る・資金提供者は・ コーポ L
,- トファイナ ンス と異
は比較 にならない分量の契約書類が作成 される.特
がある.
な り事業 リスクの影響 を受けるポジシ ョンに置かれ
に,いかなる状況において も事業の C
Fを当事者間
るため・スポ ンサー企業のク ッシ ョンな しで ファイ
表5
.
4
.
1
ナンスを行 うべ く・プロジェク トレベルで厳密 なリ
スク管理 を行い事業推進体制や契約内容に相 当の工
夫 を施す・ したがって・関係者間の調整 はよ り同時
進行 とな り・極めて労力のかかる ものとなる.
例 えば・プロジェク トファイナンスでは,ステ ッ
プイン ・ライ トV を金融団が行使で きるよう,事業
リスクの種類
天
災
関 して基準 を設定 してお き,その基準達成 を条件 と
して融資を行 う契約など,ある契約 に別な関係者間
の契約履行状況 を条件 として盛 り込む 「
条件付 き条
」が多用 される. これ
項 (コンテ ィンジェンシー)
リスクコントロールの手段 (
例)
地震保険
カントリー
」)
スク 政府からの確約看 国際機関の関与
工事完成リスク ターン.キー契約v
i
,ランプ.サム契約v
l
i
,
完成保乱 遅延損害金保証
会社が有する債権・契約上の地位,株式等 はすべて
金融団が担保 として取得する・ また,工事 の進捗 に
リスクの種類とリスクコントロールの手段
操業リスク
ペイ条項.長期取引契約 (
オフ.テイク
操業保証,長期供給契軌 サプライ.
オア契約)
.テイク.オア.ペイ条項V
i
i
i
.最低
収入保 証
キャッシュフ 財務制限条項.トランチングi
z
,
キャッシュデフイシュンシーサポー トx
.
(
プロジェク トファイナ ンス特有の用語解説)
プロジェク トファイナ ンスにおいては,国際的な
プロジェク トファイナ ンスか らそのまま導入 された
概念や手法が多いため,カタカナの特殊用語が多用
される.先の文中に登場 した特殊用語のい くつか を
最後に解説 したい.
・ノン ・リコース (
No
nRe
c
o
ur
s
e
):リコースとは 「
遡
及」という意味で,事業の資金調達についてその返済
をスポンサー企業が保証する (
スポンサー企業に遡及
する)ことである.ノン ・リコースは遡及しないタイ
プ,リミテイッド・リコースは遡及が限定的なタイプ
で,いずれも債務の返済を原則としてプロジェクトに
依存する融資の形態である.
Li
mi
t
e
dRe
c
o
ur
s
e
):
「
iノン・
・リミテイッド・リコース (
344
54 プロジェクトファイナンス
第Ⅱ部 5
. 多様なマネジメント
リコース」を参照
"
Jコーポ レー トファイナンス (
Co
r
p
o
r
a
t
eFi
na
nc
e):
コポ レー トファイナ ンスでは,事業 のスポ ンサ ー企業
が.その事業だけでな く他の事業 も実施 してい る企業
体 として金融機関か ら資金調達 をする,調達は,個 々
の事業 ごとに行 うのではな く,む しろ年度の必要資金
を設備借入,運転借入 社債,増資などの組合せによ
りまとめて調達する.仮 に当該 プロジェク トの リスク
が高 くて も,資金調達をす る企業 自体 に信用力がある
場合 (
他の事業が極めて安定軌 企業の財務内容が極
めて良好など)には有利 な条件で資金調達が可能にな
る.ただ し.逆に実施 しようとする事業の信用 リスク
は低 くて も,企業体 自体の信用 リスクが高い場合には
企業の信用 リスクに応 じて高い資金 コス トとなる.さ
らに.当該事業は順調で も他の事業の失敗 によ り企業
がデフォル トした場合には.当該事業 も会社再建 ・整
理のなかで対処方針が決定 される.
I
.J
、l J
I
IJ
・
〟spc (
S
pe
c
i
a
lPur
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s
eCo
mpa
ny):SPC と は, 特 定
∼
14
-.
.
I
-1 、 J I、I ・・
I,
のプロジェク トから生み出されるキャッシュフローを
親会社の信用 と切 り離すために設立 される特別 目的会
社 .プロジェク トファイナンスにおいでは,プロジェ
ク トの独立性 を法人格的 に担保す るため に設立 され
る.わが国においては.平成 1
0年 9月 1日施行の 「
特
定 目的会社による特定資産の流動化に関す る法律」お
よび,平成 1
2年 11月 3
0日施行 の 「資産 の流動化 に
関する法律」 によって法律面の整備が進め られた.
∨ステ ップイン・
ライ ト (
St
e
pi
nRi
g
ht
):
ステ ップイン・
ライ トとは事業介入権のことである▲仮にプロジェク
ト会社にデフォル ト事由が発生 したときに,プロジェ
ク トファイナ ンスにおいては各種契約 を終了 させて資
産売却により資金回収 を図ることは困難である (
資金
回収の見込みはほ とんどない).可能な限 り安定的に
事業 を継続するべ く,金融団は期限の利益 を喪失 させ
た上 で,プロジェク ト会社の契約上の地位やプロジェ
ク ト会社 の株式を譲 り受け,金融機関が指定する第三
者 に事業 を引 き継がせる. この事業介入権 を行使で き
るように,プロジェク ト会社が有する債権 ,契約上の
地位,
株式などはすべて金融団が担保 として取得する.
W
'ターン・キー契約 (
Tu
r
nke
yCo
nt
r
a
c
t
):ターン・+一
契約 とは,工事の請負形態の一種であ り,元請 となる
業者が施設の建設 と機材の配置,試運転等 をすべ て完
了 し.あ とは操業 を開始す るのみ (
キーを回すのみ)
の状態で工事 を引 き渡す契約のことである. この形態
をとることにより,施工か ら完成時の性能に至るまで
の リスクをコン トラクターが引 き受けることになる.
w
lランプ ・サ ム契約 (
Lu
mps
u
m Co
nt
r
a
c
t
):ランプ ・
サム契約 は,請負契約時に対象 プロジェク トの建設代
金を確定する方式で,施工 コス トのリスクをプロジェ
ク トの施工業者が負 う契約方法である.スポ ンサー企
業にとってはコス トオーバーランを防 ぐことがで きる
メリットがあるが,業者側で予備費等 を多 く設定する
ため契約額は割高 となる傾向にある.
Ta
ke
o
r
pa
yCo
nt
r
a
c
t
):
v
iテイク ・オア ・ペ イ条項 (
テイク ・オア ・ペ イ条項により,買い手は将来必ず一
定額以上の支払いを行い,一定量の財 またはサー ビス
の引取 りを無条件で約束する.買い手は契約量を下回
る財 またはサー ビスの引渡 ししか受けない場合で も定
められた最低金額 を支払 う義務がある.こういった契
約は一般に長期の販売契約 と解 されるが,その実態は
間接的保証であ り,支払い額が元利金支払いと操業費
をカバーするようにセ ッ トされていれば.市場 リスク
をほぼ完全に買い手に転嫁す る方法 となる.
■
x トランチ ング (
Tr
a
nc
hi
ng):資金調達の際 に債権 に
優先 ・劣後の設定 をす ること 優先的に元利金返済 を
受ける債権 と返済が劣後 となる債権 を複数種類設定す
x
ることによって,金利 は低いが償還確実性の高い債権
のクラス (トランシェ)か ら金利は高いが償還確実性
が低 い トランシェまで複数の投資対象を作 り出 し.投
資家の様々な投資ニーズに対応で きるようになる.
キャッシュデ フ イシ 工ンシーサ ポー ト (
Ca
s
hDe
i
f
-
c
i
e
nc
ySu
ppo
r
t
):プロジェク ト建設段階の不足資金
がスポ ンサーに よる完 成保証に よ り保証 されるよう
に. プロジェク ト完成後の運転段 階において不測 資
金が発生す るリス クをスポ ンサーが引 き受けるのが
キャッシュデフイシェ ンシーサポー トである.通常,
不足資金は追加出資 または劣後ロー ンの形で提供 され
る,不足額は. プロジ.
1ク ト会社が無理な く操業 を続
け,返済を行えるだけのキャッシュフローを基準に設
定 し.時には一定の財務比率 を維持するように義務づ
けるものもある.
x
lェスクロー口座 (
Es
c
r
ow Ac
c
o
un
t
):対象プロジェク
トが生み出 したキ ャッシュを,各種費用,修繕費用,
元利金支払いなどの 目的に確実に充当するために.銀
行や信託銀行 に支払いの 目的ごとに開設する口座のこ
と,
x
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TDA (
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x,De
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t
i
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a
t
i
o
n)二利払 ・税金 .償却 ・引当前
・
利益のことで,事業 レベルのキャッシュフローを合わ
せた指標の 1つ.最終利益 に,現金支出を伴わない減
価償却や引当を戻 してキ ャッシュベ-スにし.さらに
税金 と金利支払を戻すため,財務構造の違いに影響 さ
れない事業 レベルのキャッシュフローを表す指標 とし
て標準的に用いられている.
癌DSCR (
De
b
tSe
r
vi
c
eCo
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r
a
geRa
t
i
o
):デ ッ トサ ー
ビスとは元利金返済額の ことで.ある期間において元
利金返済前のキャッシュフローが元利金返済額の何倍
あるか を計算 した指標 (
元利金返済前 キ ャッシュ フ
ロー/元利金返済額)
.元利金返済の確度を表 している.
融資契約上 DS
CRに財務制限条項 として基準 を設け,
借入人が一定比率以上 の DSCR維持 を誓約す ること
も多い.
I
"IJ
TV (
Lo
na
To
Va
lue
):対象資産価値 (プロジェク
トの事業価値) に占め る債務残高の比率 (
債務残高
/資産価値)
.事業資産の価値 は.融資などの債権者が
優先的に保有する価値 (
プロジェク ト会社の債務残高)
とエクイティ投資家が劣後順位で保有する価値 (
債権
者保有分以外の価値) とに分けることがで きる 債権
者にとっては.エ クイテ ィは事業価値が減少 したとき
の クッシ ョンとして機能するため.高い LTV.す な
わち少ないエ クイテ ィ比率は債権者 にとってリスクの
高い財務構成であることを表 している・LTVが高い
状態をエクイテ ィ投資家の観点から見ると,少ないエ
クイティ投資で規模の大 きな事業を行っていることか
ら,高い 「レバ レッジ」をかけていると表現 される・
x
vI
RR (
I
nt
e
r
na
iRa
t
eo
fRe
t
u
r
n):
内部収益率 と訳 され.
割引現在価値法により事業価値 を計算する際に・正味
NPV‥
Ne
tPr
e
s
e
n
tVa
lue
)がち ょうど0に
現在価値 (
345
れ る 事 業 レベルのキャッシュフローに より計 算 した
I
RRを 「プロジェク トI
RR⊥ 元利金 を返済 した後のエ
クイテ ィ投資家にとってのキャッシュフローで計算 した
I
RRを 「エクイテ ィI
RR」 とい う.エ クイティ投 資は レ
バ レッジがかかる分 リスクが高いため.投 資家 が要求
RRの水準 はエ クイティ I
RRの方が プロジ ェク ト
するI
I
RRよ り高い.
【
吉 田 二郎]
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