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Fuji Xerox technical report No.25_07-T2

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Fuji Xerox technical report No.25_07-T2
技術論文
高信頼ロングライフドラムユニット
Highly Reliable Long-life Drum Unit
要
旨
【キーワード】
地球温暖化防止、低炭素社会の実現に向けて、複合
ロングライフ、摩耗、感光体、クリーニングブ
機には「省エネ性」と「利便性」の両立が強く求めら
レード、外添剤、可視化、個別要素法
れている。この要求にこたえるべく、富士ゼロックス
ではドラムユニットの高信頼化、長寿命化のため、感
光体の摩耗のメカニズムを可視化計測や数値シミュ
レーション、材料分析により解明し、トナーから遊離
した外添剤量が感光体の摩耗の主要因であることを
明らかにした。さらに、クリーニングブレードから感
光体へ作用する垂直荷重の変動抑制、感光体表面の低
摩擦化、外添剤堆積量の抑制など、関連する重要なパ
ラメーターを最適化することで、従来のドラムユニッ
トに対して2倍の長寿命化を実現した。本ドラムユ
ニットは、カラー複合機「ApeosPort/ DocuCentreⅣ C2270/C3370/C4470/C5570」シリーズに
搭載し、全世界で100万台以上が販売され、CO2排出
量の削減とお客様の利便性向上に貢献している。
Abstract
【Keywords】
long life, wear, photoreceptor, cleaning blade,
additive, visualization, distinct element method
執筆者
中山 信行(Nobuyuki Nakayama)*1
新井 和彦(Kazuhiko Arai)*2
*1
*2
研究技術開発本部 基盤技術研究所
(Key Technology Laboratory, Research & Technology
Group)
デバイス開発本部 次世代マーキングプラットフォーム
開発部
( Advanced Marking Platform Development, Device
Development Group)
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
For the purpose of preventing global warming and
creating a low-carbon society, multifunction printers
must now be able to ensure both energy efficiency
and user-friendliness. In response to these
requirements, Fuji Xerox introduced its color
multifunctional
printer
series—ApeosPort-IV
C2270/C3370/C4470/C5570
and
DocuCentre-IV
C2270/C3370/C4470/C5570. In this article, we explain
the technology adopted in these series products to
make xerographic drum units more reliable and longer
lasting. In developing this technology, we investigated
the wear mechanism of drum units through
visualization of the photoreceptor cleaning process,
numerical simulation, and material analysis. This
investigation led to optimization of the parameters
affecting the service life of a drum unit, consequently
doubling the current service life. We have sold more
than one million products of the above series
worldwide, thus contributing to both lower CO2
emissions and improved customer convenience.
63
技術論文
高信頼ロングライフドラムユニット
1. はじめに
地球温暖化防止、低炭素社会の実現に向けて、
複合機メーカー各社がCO2排出量の削減へ取り
組んでいる中で、「省エネ性」だけでなく、「利
便性」との両立が強く求められている。この要
請に対する取り組みとして、画像形成のための
ドラムユニットの長寿命化がある。従来のドラ
ムユニットの標準的なライフは、数万枚程度で
あった。ドラムユニットの長寿命化を実現でき
れば、廃棄ユニットの削減によって、廃棄する
ためのCO2排出量の削減に大きく貢献できる。
また同時に、修理、メンテナンスによるダウン
タイムが短縮され、お客様の利便性も高めるこ
とができる。
図1
この狙いに対して、富士ゼロックスは「高信
頼ロングライフドラムユニット」を開発した。
本ドラムユニットを開発するにあたって獲得し
た技術や性能の特長を以下に示す。
① 感光体の摩耗メカニズム解析技術
ApeosPort-Ⅳ C5570
2. 感光体の摩耗メカニズム解析技術
2.1
解析の着目点
ドラムユニットの断面構成を図2に示す6)。ド
ライフを決定する主因であるクリーニングプ
ラムユニットのライフは、クリーニングブレー
ロセスでの感光体の摩耗現象に着目し、可視
ドと感光体表面との摩擦による感光体の摩耗現
化計測/数値シミュレーション/材料分析の
象が最大の要因であると推定されていたが、こ
総合的な解析により感光体の摩耗メカニズム
のような現象を直接計測したり定量化したりす
1)-4)
を明らかにした
。
② ドラムユニットの実装技術
ることが困難であるため、そのメカニズムの詳
細は未解明であった。我々は、クリーニングプ
感光体の磨耗メカニズムから得た設計指針を
ロセスにおける感光体の摩耗に寄与する因子や、
もとに、感光体、クリーニングブレード、帯
画像形成条件との関係などのメカニズムを詳細
電ロールなどのドラムユニット構成部材とパ
に解明するため、クリーニングブレードと、ブ
ラメーターを体系的/総合的に最適化して実
レード近傍のトナーの挙動に着目して、新たに
5)
装した 。
③ 感光体の摩耗ばらつき、ライフ性能
可視化計測技術と個別要素法による数値シミュ
レーション技術を開発した1)-3)。
ドラムユニットの信頼性を向上させ、高い利
便性と省エネ効果を達成した。
本ドラムユニットは、従来のドラムユニット
クリーニング
ブレード
に対して2倍の長寿命化と信頼性の向上を実現
感光体
し 、 2009 年 に 上 市 し た カ ラ ー 複 合 機
「 ApeosPort/DocuCentre- Ⅳ C2270/
C3370/C4470/C5570」シリーズ(図1)
に搭載された。本ドラムユニットの採用により、
帯電ロール
お客様の利便性を高めるとともにCO2排出量を
削減し、省エネの向上に大きく寄与した6)。本
稿では、本ドラムユニット向けに開発した技術
と得られた性能について説明する7)。
64
帯電ロールクリーナー
図2
ドラムユニット
Drum unit
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
技術論文
高信頼ロングライフドラムユニット
駆動
モーター
現像ユニット
高速度
カメラ
トナー
長焦点マイクロ
スコープ
図4
ガラス製
ドラム
照明
クリーニング
ブレード
クリーニングブレード
高速度カメラ
システム
図3
2.2
ガラス製
ドラム
ブレード部可視化計測装置
Visualization measurement apparatus
可視化計測による解析結果
トナー
クリーニングプロセスは、トナーがドラムの
外添剤
回転に伴って、クリーニングブレード方向に搬
送され、ブレード先端部でトナーをせき止める
ことでドラム表面をクリーニングする。ブレー
ド先端部にはトナーや、トナー表面から遊離し
20 μm
ガラス製ドラム
た外添剤が堆積した状態(以降、ダム)が形成
される。図3は、クリーニングプロセスをモデ
図5
ル化したブレード部の可視化計測装置構成を示
堆積したトナーと外添剤の拡大図
Enlarged view of deposited toner and additives
す。ガラス製ドラム上にクリーニングブレード
ラム表面の堆積物を拡大撮影した結果である。
および現像ユニットを配置し、高速度カメラを
上述した観測結果のとおり、プレニップ領域(ブ
用いてドラムに当接させたクリーニングブレー
レードとドラム表面とが接触するニップ部の直
ドにトナーと外添剤の粒子群が堆積する様子を
前の領域)のブレード最近接部に外添剤のみが
観測した。その結果を図4に示す。下方の黒い
筋状に堆積し、そのさらに上流側(図の上側)
領域がブレードであり、ブレード上端に白い筋
に外添剤を含むトナーが堆積していることがわ
として見えているのが外添剤、さらにその上方
かった。外添剤がブレード端部に筋状に偏在し
がトナーである。定常状態では、トナーと外添
ていることから、ブレードはこの堆積した外添
剤の粒子群が連続的に搬送されながらも、ク
剤を介してドラムに当接しており、外添剤が感
リーニングブレード先端部に堆積する量は大き
光体を損傷させて摩耗させることが推定できる。
く変化していないことから、ブレード先端部で
せき止められたトナーと外添剤の粒子群が循環、
対流している状態にあると考えられる。
図5は、図4に示されているブレード近傍のド
2.3
個別要素法シミュレーションによる
解析結果
前節で述べた観測結果を検証し、さらに、ト
ナーと外添剤の運動状態を定量的に検討するた
め、個別要素法による数値シミュレーションモ
トナー
外添剤
デルを構築した1), 2)。
数値シミュレーションモデルを図6に示す。
本シミュレーションでは、赤色で示したトナー
ブレード
図4
観測したブレード部近傍のトナーと外添剤
Toner and additives deposited around blade
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
と、青色および緑色で示した2種類の外添剤を
計算対象とした。トナーに外添剤を付着させた
状態で感光体上に配置し、感光体を一定速度で
65
技術論文
高信頼ロングライフドラムユニット
トナー
クリーニング
ブレード
積した状態が示されており、トナーから遊離し
た外添剤が、ブレード最近接部に偏在して堆積
していることがわかる。また、図8に示す速度
外添剤A
分布から、ブレードの先端部でトナーと外添剤
外添剤B
が堆積しダムを形成するが、それらは常に流動
し、反時計方向に循環対流していることがわか
る。一方で、ブレード最近接部に偏在して堆積
している外添剤の速度は小さく、ほとんど静止
していることが確認できた。
感光体
2.4
図6
トナー/外添剤挙動シミュレーションモデル
Model for motion simulation of toner and additives
外添剤堆積量と感光体摩耗レートの
解析結果
ブレード近傍に堆積した外添剤量を分析し、
移動させた。変形したブレード表面は剛体壁と
外添剤堆積量と感光体摩耗レート(相対値)の
して扱い、所定の周期数、振幅で正弦的に変位さ
関係を求めた結果を図9に示す。外添剤堆積量
せた。
と感光体摩耗レートは、ほぼ線形の相関があり、
シミュレーションから算出したトナーと外添
ブレード近傍に堆積した外添剤が摩耗を促進す
剤の分布状態を図7に、速度分布を図8に示す。
る主要因であり、外添剤の堆積量により、摩耗
図7では、トナーと外添剤が感光体によって搬
レートを制御できることがわかった。
送され、ブレード壁によってせき止められて堆
外添剤の堆積は、いわゆる粒度偏析の一種と
考えられ、この偏析にはトナーと外添剤の粒子
トナー
外添剤A
群の流動状態、すなわち速度の大小が影響する
クリーニング
ブレード
外添剤B
と考えられる。
2.3節で述べた数値シミュレーション技術に
より、トナーと外添剤の速度と外添剤堆積速度
の関係を求めた結果を図10に示す。横軸は、ト
堆積
外添剤
ナーと外添剤が対流しているときのトナーと外
添剤の粒子群の平均速度であり、縦軸はブレー
ド最近接部に堆積する外添剤の増加個数割合を
示す。トナーと外添剤の粒子群の平均速度増加
感光体 →
図7
トナー・外添剤挙動シミュレーション結果
Simulated results of motion of toner
particles and additives
により外添剤堆積の増加速度は低下しており、
外添剤堆積量が減少する傾向にあった。これら
から外添剤の堆積量は、トナーと外添剤の粒子
1.3
クリーニング
ブレード
堆積
外添剤
感光体摩耗レート[-]
速度ベクトル
1.2
1.1
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0
50
感光体 →
図8
66
100
150
外添剤堆積量[μm3]
トナー/外添剤挙動の速度分布
Distribution of velocities of toner
particles and additives
図9
摩耗レートと堆積した外添剤体積の関係
Relation between wear rate and volume
of deposited additives
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
技術論文
外添剤堆積速度[mm/s]
高信頼ロングライフドラムユニット
0.10
ムユニットの長寿命化、高信頼化のため、感光
0.08
体、クリーニングブレード、帯電ロールのそれ
0.06
ぞれを長寿命化する必要があった。これらに関
0.04
0.02
する主要因子を特定して、体系的、総合的に最
0.00
適化した技術について本章で説明する。
-0.02
-0.04
3.1
-0.06
2.0
4.0
6.0
8.0
トナーと外添剤の速度[/s]
図10 トナー/外添剤の速度と外添剤堆積速度の関係
Relation between deposition rate of additives
and average velocity of toner particles and additives
高
感光体の長寿命化
感光体の長寿命化のため、感光体の摩擦を抑
制する主要施策として、次の技術を導入した。
① 感光体表面へのブレード垂直荷重変化抑制
クリーニングブレード剛性を小さくすること
で、他の因子のばらつきによる感光体表面へ
5
の垂直荷重の変化を小さくする。
流動性グレード
4
② 感光体表面の低摩擦化
感光体表面に表面エネルギーの小さい材料を
3
用いたり、感光体表面に潤滑材料を配置した
2
りすることで、感光体表面を低摩擦化する。
1
低
③ 外添剤堆積量の変動抑制
外添剤の処方を最適化することにより、ブ
0
A
B
C
外添剤/トナーの処方
レードプレニップ領域に堆積する外添剤量を
図11 外添剤処方によるトナー/外添剤の流動性変化
Difference in fluidity of toner and additives
among different types of additives
減らし、画像形成条件による堆積量の変動を
群の流動性により制御できることがわかった。
主要施策②から、感光体は図12に示すような
さらに、トナーと外添剤からなる粒子群の流
層構造とした。アルミニウム基材上に下引層、
動性は、外添剤の種類に依存すると考えられる。
電荷発生層を形成する。さらに、電荷輸送材料
外添剤の種類の違いによる、トナーと外添剤の
とバインダにポリテトラフルオロエチレン微粒
流動性変化を評価した結果を図11に示す。外添
子を添加し分散した電荷輸送層を形成した構造
剤には、潤滑剤を含有しないAタイプと、潤滑
となっている。
抑制する。
剤を含有するBタイプ、Bとは異なる潤滑剤を含
有するCタイプの3種類を用いた。それぞれの外
添剤とトナーとの流動状態を観察してグレード
づけした。図11のとおり、外添剤の種類により
3.2
クリーニングブレードの長寿命化
クリーニング性能を長期間維持するためには、
次の要件を満たす必要がある。
流動性が変化することが検証できた。
以上より、外添剤の種類を適切に選択するこ
とで、トナーと外添剤の流動性と速度が制御で
電荷輸送層
きるようになった。それによって、ブレード近
傍の外添剤堆積量と、さらには感光体の摩耗
レートを制御できることが示された。
電荷発生槽
下引層
3. ドラムユニットの実装
前章に示したメカニズムをもとに、
「高信頼ロ
アルミニウム基材
図12 感光体の層構造
Layer structure of photoreceptor
ングライフドラムユニット」を開発した。ドラ
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
67
技術論文
高信頼ロングライフドラムユニット
像欠陥が発生して寿命となる。新規に開発した
裏面層
帯電ロールは、すべての構成材料を見直し、材
表面層
料の経時による物性の変化を緩和した。また、
帯電ロールの表面形状を制御することにより、
トナーや外添剤などによる耐汚染性を改善した。
ホルダー
同時に帯電時の低放電ストレス化を実現してお
り、感光体摩耗改善に対しても寄与している。
4. 感光体の摩耗量ばらつき・ドラムユ
ニットライフ性能
トナー
感光体
採用した技術における感光体の摩耗量ばらつ
き、高信頼ロングライフドラムニットのライフ
性能を本章で説明する。
HSG
裏面層
4.1
感光体の摩耗量ばらつき
図14は、感光体の軸方向における摩耗量の分
布を示す。従来のドラムユニットでは、感光体
表面の軸方向両端部が中央部よりも大きく摩耗
表面層
図13 2層クリーニングブレードの層構造(上)とレイアウト(下)
Structure of two-layered cleaning blade (above) and its
location in a drum unit (below)
z 経時による垂直荷重の変化量が少ない。
z 感光体表面と接触するクリーニングブレー
ドのエッジ部の摩耗量、劣化が少ない。
この2つの要件は、ブレードゴム材料の特性
として相反する傾向があるため、機能分離して
感光体摩耗量(μm)(100kcyc時点)
板金
従来技術の感光体磨耗量
4.0
軸両端部が磨耗
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0
2種類のゴムを積層したブレードを新規開発し
50
100
150
200
250
300
感光体軸方向位置(mm)
比較して、ヤング率が高く、高硬度かつ低反発
の素材で形成されている。このような2層ブ
レードの採用により、垂直荷重の変化量、エッ
ジ部の摩耗量共に従来の半分以下を達成した。
同時に、垂直荷重を低めに設定することと、長
期にわたりトナーや外添剤のすり抜けを抑制す
ることが可能となり、感光体、帯電ロールの長
寿命化に対しても寄与している。
3.3
帯電ロールの長寿命化
帯電ロールは、経時・履歴による部材自体の
抵抗変化や、帯電部材表面へのトナーや外添剤
の付着による帯電特性の不均一化によって、画
68
感光体摩耗量(μm)(100kcyc時点)
た(図13)8)。ブレードの表面層は、裏面層に
本技術の感光体磨耗量
4.0
3.5
3.0
2.5
ばらつきを抑制
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0
50
100
150
200
250
300
感光体軸方向位置(mm)
図14 従来技術における摩耗量分布(上)と本改善技術におけ
る摩耗量分布(下)
Wear depth distribution of a conventional drum unit
(above) and that of an improved drum unit (below)
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
技術論文
高信頼ロングライフドラムユニット
摩耗レートばらつき [-]
悪
1.2
ている。さらに、長寿命化により廃棄ユニット
1.0
を削減することができ、上市からの5年間で、
40%減
0.8
約1.2万トン相当のCO2排出量削減を達成し、
低炭素社会の実現に向けて貢献している。
0.6
0.4
5. おわりに
0.2
良
本ドラムユニットの長寿命化・高信頼化を達
0.0
対策前
対策後
図15 改善前後の摩耗ばらつきの比較
Comparison of variations in wear
rate before and after improvement
成するため、感光体の摩耗メカニズム解明に取
り組んだ。その中ではクリーニングプロセスで
の、トナーと外添剤の挙動の可視化計測技術と
している。これに対して、新しく開発したドラ
数値シミュレーション技術を構築することによ
ムユニットの感光体では軸方向の摩耗ばらつき
り、プレニップ部でのトナーと外添剤の対流、
が抑制される。
および外添剤がブレード最近接部に偏在して堆
このような感光体摩耗ばらつき抑制効果を総
積する状態を明らかにした。さらに、トナーと
合的に評価した結果を図15に示す。新しく開発
外添剤の対流速度がクリーニングブレード最近
したドラムユニットの感光体の摩耗ばらつきは、
接部の外添剤堆積量に影響することと、外添剤
従来に対し40%程度まで抑制した。
の堆積量に依存して摩耗速度が変化することを
明らかにした。このようにして堆積した外添剤量
4.2
ライフ性能と貢献
が摩耗量を決定するメカニズムを示した。
クリーニングブレードや帯電ロールのライフ
本メカニズムをもとに、クリーニングブレー
も含めたドラムユニットのライフ性能を図16
ドの感光体への垂直荷重変動抑制、感光体表面
に示す。本ドラムユニットは従来のドラムユ
の低摩擦化、外添剤による堆積量抑制を施策と
ニットから、約2倍にライフを延長することが
して行い、感光体の摩耗ばらつきを従来の半分
できた。新しく開発したドラムユニットは、カ
以下に抑制できることを示した。さらに感光体、
ラ ー 複 合 機 「 ApeosPort/DocuCentre-Ⅳ
ブレード、帯電ロールの材料、パラメーター、
C2270/ C3370/C4470/C5570」シリー
構成を総合的に最適化し実装することで、ドラ
ズに搭載され、上市した2009年以降、すでに
ムユニットの寿命を従来比で2倍を達成した。
全世界で100万台以上が市場に出荷されてい
る。本ドラムユニットの長寿命化により、複合
機の故障/メンテナンスの頻度を従来機の半分
以下に抑え、
「お客様の利便性」に大きく寄与し
6. 商標について
z 本論文の一部のコンテンツは、日本画像学会
が著作権を保持します。
ドラムユニットライフ(相対値)
2
摩耗ばらつき
改善とブレード
低荷重化
7. 参考文献
感光層
厚膜化
帯電ロール
長寿命化と
放電ストレス
低減
1) 新井和彦, 中山信行, 小笠原正, 織田康弘,
勅使川原亨: “ゴムブレードクリーニングに
1
おける感光体摩耗ばらつきの抑制”, 日本
画像学会年次大会(通算105回) “Imaging
Conference JAPAN 2010” 論 文 集 ,
pp.247-250, (2010).
0
従来技術
施策導入後
図16 ドラムユニットライフ改善結果と内訳
Improved life of drum units
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
2) N. Nakayama, K. Arai, M. Ogasawara, Y.
Oda, and T. Teshigawara: “Analysis of a
69
技術論文
高信頼ロングライフドラムユニット
blade cleaning system for reduction in
wear rate variation of the photoreceptor”,
Proceedings of IS&T NIP26, International
Conference
on
Digital
Technologies,
(Austin,
Texas,
Printing
USA),
pp.234-237, (2010).
3) 小笠原正, 長尾太介: “可視化技術を用いた
クリーニングブレード挙動解析”, 日本画
像 学 会 年 次 大 会 ( 通 算 105 回 ) “Imaging
Conference JAPAN 2010” 論 文 集 ,
pp.251-254, (2010).
4) 小笠原正: “可視化技術を用いたクリーニン
グブレードの挙動解析”, 日本画像学会誌,
Vol.50, No.4, pp.280-286, (2011).
5) 新井和彦, 織田康弘, 中山信行, 高橋良輔,
長尾太介, 湯浅宏一郎: “画像形成機構およ
び 画 像 形 成 装 置 ”, 特 許 5487632 号 ,
(2014).
6) 安藤良, 田村一夫, 岩井清, 矢野敏行, 黒石
健児, 野田聡, 織田康弘, 中山豊:
“ApeosPort/DocuCentre-ⅣC2270/C
3370/C4470/C5570省エネ大賞受賞”,
富士ゼロックステクニカルレポート,
No.20,
pp.124-132,
(2011).
http://www.fujixerox.co.jp/company/
technical/tr/2011/p_02.html (参照日:
2016.03.01)
7) 新井和彦, 中山信行, 小笠原正, 織田康弘,
勅使川原亨: “高信頼ロングライフゼログラ
フィドラムユニットの開発”, 第116回日
本画像学会研究討論会(京都), pp.75-78,
(2015).
8) 小島紀章, 重崎聡: “二層構成を有する高信
頼クリーニングブレードの開発”, 日本画
像 学 会 年 次 大 会 ( 通 算 109 回 ) “Imaging
Conference JAPAN 2012” 論 文 集 ,
pp.177-180, (2012).
筆者紹介
中山
信行
研究技術開発本部 基盤技術研究所に所属
専門分野:物理、機械工学、電子写真プロセス
新井
和彦
デバイス開発本部 次世代マーキングプラットフォーム開発部に所属
専門分野:物理、電子写真プロセス
70
富士ゼロックス テクニカルレポート No.25 2016
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