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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System

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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System
熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
表現論 : (Inversionについて)
Author(s)
西川, 盛雄
Citation
熊本大学教養部紀要, 5(人文科学編): 1-32
Issue date
1970-03-15
Type
Departmental Bulletin Paper
URL
http://hdl.handle.net/2298/28408
Right
-1-
斐柵
表 現
(Inversionについて)
Lesmotsdiversemcntrangesfontundiverssenset
1
lesensdiversementrangesfontdiferentsefets.
-Pascal,P”s〃s
西 川 嚇 雄
序
文
私はこの論考を一つの間迦提起から始めていきたいと思う.
2
TheNewTestamentのMatthew;Chap.5の巾に"Blessedα'.e/he加0γi〃”〃〃'’という
一文がある.何もTheNewTestamentでなくても,小説などの地の文やversesの巾でもこう
いったいわゆる倒慨表現(Inversion)は珍しくない.今,ここでbelief-contextにおけるprop-
ositionalmeaningの同じ"Thepooγ〃s伽〃αγeblessed."というsentenceを併置してみる
と,ここからいろいろのことがいえるであろう.
Blessedarethepoorinspirit.-(A)
Thepoorinspiritarcblessed.-(B)
私はよく俗にいわれるように,(A)はいわゆるemphasisをめざした特殊な表現形式,(13)はそう
でない,いわゆるnormalな表現形式,といったような説IリIのしかたは好まない.むしろiiiij者と
もきわめて口常的なものであり,又そのfrequencyもけっして小さいものではない.しかしこの
2つの表現形式の間には「どこか」差述があるのである.
い)と(13)については,雛剛して次のように述べることができる.
(1)Sentenceの椛成要素として,川いられている諮(words)が同じである.
(2)belief-contextにおけるprepositionalmeaningはIi"1じである.そしてそれは(x)(Fx->
Gx)と形式化できるところのものである.
(3)g/vM(word-order)が異なり,「〃湘酬ハlの|仏|係のありうIノ.」が異なる.
(4)表現効果,又は炎現価仙が災なる.
史に,(A)と(B)を比較していくと,(A)が(13)に比して一般的にはjよりimpressiveであり,
inspiringであると直感的に剛解できる.又,(A)の方が(B)に比して,より強くsolemnity,piety
といったmoodが感じられることは否めないであろう.なぜなのであろうか?パスカルもいうよ
うに,語配列が異なれば表現効果(価値)が異なってくるのはどうしてなのであろうか?その内
奥に縦たわっているものは何なのであろうか?われわれはこのii'r感的な印象を出発点として大切
-2-
にし,人iujの認識椛造のあり方と,その反映としての言硲の柵造(structureoflanguage)を老
察していく中で,こういったI!'.]題を少しでもIリlらかにしていかなければならない.
(A)と(B)の差述は現象的には(3)の語順(word-order)の錐述として現われている.そのこと力
I
即ち(4)でいうように,表現効果(価値)の差述となってきているわけである.われわれは現象と
して現われている(3)を通して(4)の根源を少しでも探らなければならない.つまり本稿においてに
Inversionを形成している「語相互の1*1係のあり方」の総体をみていく中で,それがその内奥に*
いて人間の心n的,ないしは認識の椛造をどのような姿で反映しているか,そして逆に,言語表君
形態の一つであるInversionが認識上における感性的側面と剛性的側而の統一された椛造に支え彦
れてどのような独特の表現効果(価値)を喚起するのか,そういったところを検討していきたいと
‘思うのである.
IInversion研究の歴史
本論に入る前に,Inversionの研究は,今までどのようなものであり,その根本的な欠陥はどと
にあったかを簡単に述べておかなければならない.
Jespersenを含む伝統的な文法家Curme,Zandvoort,Poutsmaなどに共通していることは,
Inversionを"word-order"のi;W題として捕え,たとえばs+vがv+sになった.或はも少し淵
かく,S-i-V-fVがVI-V-I-s又はV-}-S-I-Vに「語順転換」した.といった,語配列のありう
にもとづいたInversionの分揃に終始していたことである.つまり彼らは,言語現象としてq
Inversionの惟理,分蹴に全力を尽くしはしたが,その内奥にある感性的側l/llと理性的側面の統c
れたものとしての人間の認識椛造が,いかにその語配列の中に反映されているかといった発想法荊
もつことばなかった.従って塑揃な言語事実のcollectionとobservationにもか食わらず,彼、
の中には一貫した人間の認識購造とその反映としての言語形式に関するprincipleが存在してい鳥
ということもなかった.JespersenのInversionについての考え方のいくつかの例をMEG,Par
4
Ⅷの>l'にみてみても.WiWl的にはVi-SのSentenceStructureの分蹴に終始しているといえる.
(1)Theword-orderVSisalsofoundextensivelyinexclamations.
(2)Inversion(VS)isveryfrequentinakindofshortsentencesappendedtomain
sentencestomakeitclearwhoorwhatismeantbyapronounusedlooselyin
thefirstsentence:DiX5Tノleyノladcleαγ,loud./"sty,so"d"gvoices,ノjadthese
Bels.
(3)FurthertheinversionVSissignificantinconditionalclauseswithoutanyconjunctio,.
(4)VSwasalwaysusedwiththearchaicquothノ形,etc,andisstillfrequentinshort
insertionsmerelytoindicatewhospoke;
(5)Inversionmaybefoundinthesecondmemberofacompositesentencewiththe
-3-
幽川膿雄:炎呪術(Inversionについて)
-¥co加加γα〃"e:
(G)VSisalwaysusedwiththeweaknon-localthere.
われわれはこの税の分類が到蒋点ではなく,一つの,T,発点にすぎないことを確認しなければならな
0^.IM]題は本来s+vの形式をとるべきものがv+sに「語順悔換」したという.表面的,形式的
な脱Iリ1ではなく,そのことI'l体のもっている表現論的意味を説明しなければならないのである.
s
R.W・Zandvoortも基本的にはJespcrsenと|『1棟の立場であった.彼はJespersenのV
(verb)の代りにP(Predicate)をとり,S-t-Pがstandardな誘順(word-order)として定め
P+SないしはP-i-S+PをInversionのgrammaticalcategoryとして次のように形式的分揃
を行っている.
(1)Asentencebeginningwithunstressedthereshowstheword-orderP-S
ex)Once邸加〃α〃"le'there〃"eda陶加g(2)InversionisfairlyregularwhenaNEGATIVEadjunctopensthesentence.
ex)Nosooneγ"dshesα〃〃sノノgγeα"zedノlermistα〃e、
(3)SentencesWITHOUTANOBJECToftenshowtheorderP-S,
whenthesubjectismoreimportantthantheverbalpredicate,
ex)BeforethemIの'〃"lesα"。〃"lesof〃"。"/α""gmoors.
(4)SentencesWITHANOBJECT(orasimilarADJUNCTtotheverbalpredicate)
openingwithanotherthananegativeadjunctoftenshowtheword-orderp-S-P.
ex)Mα"yα〃瓶e/jasノlegj"g〃加egoodadvice.
(5)Whenasentenceopenswithanobjectwesometimesfindthesequencep-S-P.
ex)Mα"jノαγα助〃ノladhes"αγed,1"〃ノioiitthegame-kee〆γ〃0〃Cj"g〃・
史に全般的に考えてみても,伝統的な文法家では両.‘謡現象としてのInversionについての形式
的な分蹴は非常に謙細に渡り,蝋宿なものではあるが,その背蛾にある,表現理論の一環としての
Inversionの説11)J.つまりInversionを支えてある人|川の|ノ1面の心肌やi淑識のイn進への普及或いは
示唆はほとんどないところに,理論としての大きな欠陥があるといわなければならない.
Bloomfieldは主若Lα"g"ageのIllで,Inversionに|#|して述べているところがある.蔵・諾にお
けるetic的な(iwifiiとemic的なfill]mを分け,1CAnalysisを八M#にしていばぱ,mechanicalな
分肝操作を操り返していくアメリカ椛造主災のadherentsは当然のことながら,その心蝿学にお
ける行助主義的なS-R理論の背景において,人|ハlの心理的或は認識的な構造の解Iリlへの抜近を志
|nlすることはできなかった.Inversionの測りlについても然りである.たぎこの立場に立つ.Nida
-^Francisなどの分析による「語祁互のm係のあり方」の総体としてsyntaxを捕える捕えノノ・は,
彼らのModifiant-Modifieの|則係又はHead-Attributeの関係といったところにll葛まらず,史に
進めて,言語形式が人間の感性的側而やJ'lllノi-的(IWifiiの統一された認識椛造の反映として,瓦に弁,iii:
法的に媒介されたものであるという祝,1.1,iにfつllf,批、リ的に見返さなければならない示唆に↑;j;んで
-4-
いるといえる.
Inversionについては,Bloomfieldの言語学的な立場からして,actor-actionconstructionと
action-actorconstruction又はaction-goalconstructionとgoal-actionconstructionその間
の差述を論理的に説明することはできなかった.せいぜいのところ,
Certainspeechformshaveananimatedflavor,akintotheexclamatoryas,for
7
instance,theplacingfirstofcertainadverbs:Awayγα〃Jo",.A"αjノルeγα".
といえるのが粘一杯であったというべきであろう.問題は人間の認識椛造に根ざしたanimated
flavorの解明にあるのである.
E・BachはPermutationによってInversionについての説lリjを若干試みている.つまり(a)
〃e"γywen/αz{ノαyから(b)Awayuノe"/H2"γyをgenerateするruleはどうかという問題の提
8
出のしかたで両者のdeepstructureに探りを入れているのである.
(a)treederivationは彼によると次の通りである.
「
ド
m
謡
噌
鯛
柵
黒
i鯛
剛
dowt)evba蔦
鯛
澱
:鯛
値
‘
競
晋
!
/ 、
n弾’抑’
awayPastgoHenrv
”
away
Past
Henrv
goHenn
西川擬雄:表現論(Inversionについて)
-5-
11
そして次のように結んでいる.
Infact,whentransformationsaredefinedcarefuly(intermsofunderlyingelementarytransformationswhichmapeachtermoftheanalizedstringintosometerm
oftheresultantstringfromleftoright)thesecondalterativeisautomaticaly
given.
transformationalruleをめぐって多くの問題があろう.しかしやはり表現手段として,又人間
の創造性(creativity)を保証する第2次偏号系としての言語を考える場合,(a)と(b)との間
には瞳感的に考えてみても確かに差述はあるといえよう.単にparticleが前に来ているとして上
図のようなdeepstructureをもち,treederivationを柵いても,けっして(a)と(b)の間の
表理効果(価値)の差違の由ってくるところを説明しているとはいえない.むしろ.問題は相互に
規定し合ってphraseをつくっているその椛成要業であるVmot(go)とAux(Past),更にVP
(Past+go)とPrt(away),更に進んでVP(away+Past+go)とNP(Henry)の各々がいか
に人|Ⅲ}の認職椛迭のあり方を反映しているかを説|リlしていくことであろう.
IFPhraseについて
私はしばしば「人間の認識椛造」ということばを川いて来たが,これからphraseとは何か,を
考察していく中で,この概念をもっと明確にしていきたいと思う.
よくいわれるように,人間は合理的であると同時に非合那的である.理性的であると同時に非理
12
'性的又は感情的である.つまりわれわれ人間はさまざまに対立する理’性的な心理的要因と感性的な
心的要|川を同時にもち,それらを矛盾として内在化しているわけなのである.われわれはこういっ
た内而の認識椛造を,さまざまな「行為」において自らを開示し,具体的に「表現」していくわけ
なのである.言語による「表現」もこの行"為の一つに他ならないのである.従ってわれわれが相対
立する心的要因が内在化されている認識過程を,言語形式を媒介手段として表現する限り,その内
在化された矛盾が現象化した言語形式の中に統一されて反映されているはずである.その言語形式
とは具体的にはphraseであり,その&,',;成要糸としてのwordsであり,矛盾とは人間の認識にお
ける感性的tJ而と理性的側面の相互補完的に,又相互媒介的に,相対立する両側面の同II寺的存在で
ある.そしてわれわれは,言語形式を媒介手段とする言諦表現行為において,この両側而の統合を
不断に行っているのである.芝in進午氏のことばでは,この人間の内的矛盾とは,一方では第一次
信号系に根ざした認識における感性的側面であり,他方では塊二次信号系に根ざした認識における
13
理性的側面である.又,それぞれの側面はロシアの心理学者ヴィゴツキーが「われわれの意識の知
的側面とffi勢的側面との分裂は伝統的心理学の雅本的,:根本的欠陥の一つとなっている.」といい,
又「'tl'l動過程と知的過程との統一である動的な意味体系が存在する.」という時のそれぞれ,mm
14
的Illリ而と知的側面に対応しているのである.
今,phraseXが構成要素である語x,yから成り立っている時,Xとyは相互に規定し合い,
-6-
一方はそのphrase形成におけるThematicなものとして,又はReferentialなものとして認謝
における理・性的側而を反映しており,他方はExplicativeなものとして,又はSelf-expressiveな
ものとして,認識における感’性的側而を反映しているといえる.これを図示すると次のようになる.
X
/、
y
態
(orv)(orx)
(感棚M而)n捌而)
phraseXは又別の椛成喚莱Y(phraseの場合もある.)と関係を鮎んで,史に大きい(major"
phraseZをつくるのである.そのIIキにはXはYとの相互の関係のあり方において,‘認識における
理性的(又は感性的)側面を反映し,YはXに対して感性的(又は理性的)側の反映において関わ
るのである.そしてx,yはphraseXを媒介にしてphraseZを支え,zにおいて生かされるの
である.今,phraseの成り立ちをsPrとしてみる,CPはphrase(イリ)sはSensibility(感
15
性)RはReason(理性)のinitialletterである.)すると今までのところは次のように説明され
るであろう.
回
/ 、
臼鯉竺鰯□
s(r;
P=[z
R(S)
具体的には,例えば,JespersenのThreeRanks説の用例でこの間の小wを説lリjしてみよう.
〃γjouslybαγ〃"gdogにおいては,3つのranksをなしているとはii'i!ちにいえない.むしろ次
のようにいうべきであろう.つまり,深胴にある兎胴椛造は,まず〃γj0"sly(x)と6αγ〃"g(y)
から成るphraseX{furiousノybαγ〃"*)であり,それとY{dog)との関わりにおいて,全’体
のmajorphraseが成立していると考えられるのであり,furiously{x)とbαγ〃"800は互
に相互に規定し,前者は後者の状況を具体的に税Iリ'し,(Explicative),後背をThematicなもの
ijiイ川搬雌:災リin'm(Inversionについて)
-7-
としている.次にXとYとの'1|わりにおいては,phraseX(ルイriouslybαγ〃"*)がY{dog)を
規定し,又具体的に税Iリ'し,その,1:,に話者の上側的な判11リr.戎は感情までも随められており,Y
(dog)は全体のCentralJIoReferentialなものとしてphrase全休を定耕させているのであ
る.これをまとめると次のようになる.
Z
furiouslybarkingdoi
子一
barkir
sPr
一一
一一
一一
一一
一一
一一
一一
一一
一一
furious
一一
一一
一一
一一
〉
9
因
fur1ousl
p=回
ここで付忌.しておかねばならないことは,椛成要業が全部で3つある時にはphraseの数は「3-
1」の2つあるということでありZが結局finalphraseと一致しているということである.
さてわれわれはpraseの認識柵造の反映の状態をもっと淋しくみていかなければならない.
(1)Determiner+Nominal
ex.)thebook
これはほとんどInversionとは1*1係はない.Nominal+Determinerとなることはまずありえな
いからである.しかしphraseを考える上で雌視することはできない.この場合booだが/"e腕g
で,aではなくて/"gなのだとして,この〃Jeが加0〃を規定しているのである.つまり/heの
中には〃00〃に対する話者の主肌的な判断規定が弱められ,I又映されているのである.boo〃は実
在する「もの」の言語によるnamingであり,間接的な実イ|把侃の仕方であり,尖在界の「もの」
に対する群伽惟をめざした71f実)リ断である.従って600〃のll,には禰者の認識における審槻性をめ
-8-
ざす剛性的側面が,又/"gの中には話者の認識における主槻的,感性的側面が反映されているので
ある.これを表で示せば次のようになる.
R
S
(理性的側ifii)
(感性的側面)
Phrase
(2)Adjectival÷Nominal
ex.)prettyflower
,γe"yは物象flowerに対する話者の主観的な感梢の入った判断であり,aflowerwhichis
prettyとして説Iリ]されうるものである.従って認識における感性的flt'Jjfljを反映しているといえる
又外界のperceptionを通じて概念として定若された物象flowerは,γe"yによって規定され,
、蝋かに脱|リlされているわけである.又語〃0"gγは本質的にnamingであり,referenceに対す
るSenseとして認識における理性的側面の反映なのである.この間のimを表示すれば(1)と同様
に考えて,次のようになる.
(3)Verbal+Adverbial
ex.)goaway
goα"αyは/dogoing-!-away/として示されるわけであるが,α"α1,
はgoに対する話者の主
槻的な関わり方が反映されている.つまり/dogoing/のあり方はout
でもなくalongでもな
く,α"αyなのだという風にその方向性又は主観的な認識柵造のvector
を現わしているといえる
西川盛雄:表現論(Inversionについて)
-9-
のである.goは/dogoing/であると解すれば,本質的にはある一つの。IF象(event)に対する
namingであり,referenceが物象としてのbooだや〃0"gγではないだけである.従ってphrase
X(goaway)の内goは測識における客観性をめざす理性的側面を反映しており,そしてこれと
1'f
α"αyによる主観的,感性的fll'jmとの統一においてphraseXが成り立っているといえるのであ
る.この|川の邪'¥!lを表に示すと次のようになろう.
VerbalfAdverbial
Verbal
Adverbial
…
幽
E心
j…
’
i|
(4)Auxiliary+Verbal
ex.)(They)wereshouting
これは一つの例としてProgressiveAspectの場合であるが,一般にauxiliaryverbはmain
verbをTense,Aspect,Mood,Voiceといった話者の心的態度で興休的に税Iリ」している.その
いみでその内には認撒における主観的な感性的側面が反映されているといえるのである.又この
auxiliaryverbによってmainverbは規定され,豊富に説明されているといえるのである.
s加況〃"gはshoutのpresentperticipleとして/doshouting/が根底となっている.そし
てこれは”ereとの側係においてverbalphraseXのCentral且つReferentialな存在として
機能しているのである.このll".]の邪Ii'iを表に示すと次のようになろう.
伽
"Ⅷ
"""{
Auxiliary+Verbal
・
I
五
F“
X
x
AuxiliaryVerbal
l:ン
-10-
(5)preposition-t-Nominal
ex.)inthegarden
(1)から(4)まではいわゆるendocentricconstructionの例であったが,これはexocentric
】6
construction例である.
thegαγde〃は(1)で述べたのと同様に/heをx.tfαγde〃をyとする椛成要素をもつendocentric
phraseXである.ここではpreposition{in)とphrase{thegαγden)との関係ということに
なる.
/"0gαγde〃は木蘭的には/舵によって規定されたnamingである.つまりメカeが加わってい
るとはいえ本質的にはreferenceに対するSenseとしての機能をもっている.従って,伽との関
係においては,いはv,認識における理性的側面を反映しているといえるのである,一方において,
"はthegαγde〃に対する話者の主体的な関わり分を示している.fromではなく,atでもなく
伽なのだという瓜にである.その意味で"はPeripheralであり,Self-expressiveであり,
そういう関わり分において/ノ'iegαγde〃を規定し,exocentricphraseとしてadverbialphrase
をつくり上げているといえるのである.これを表にすると次のようになる.
)ufい
i"|l“
'llfJ-iⅡ
u榊
吋
l削
墨
W
(6)Nominal-fVerbal
ex.)candlesburn
最後にbelief-contextのcoreともなるべき,いわゆるSubject-Predicateの関係,史に
Chomsky流でいうkernelsentence(S→NP+VP)についてみていけば,やはり同じことがい
える.後者の場合はkernelsentenceにおけるNPとVPとの認識榊造の反映のあり方はどうか
という問題になるであろう.
cα"diesはここではCentralなthemeとしての存在である.又この語それ自体では物象の
namingで終始しているだけである.つまりCa"diesはある-.定のreferenceをもち,その反映
としてのscnseなのである.この例は一つのpropositionalmeaningとして,形式的には,3
● ●
● ●
(*)(Fr-oGx)として示されるように,「ある何か、あってその何か曹何かである.」という命題
● ●
文である.その何か(candles)をうけて,これを規定,説lリ'し実現させるものとして6"γ〃があ
-11-
西川擬雄:表現論(Inversionについて)
るのである.従ってbi"〃はcandlesを規定し,本質的には話者の主観的な感性的なm面を反映
しているのである.この間の事傭を表示すれば次のようになろう.
S
R
S
R
(理性的側而)
性
!l')i(的
ifiNI(
(感性的mi]面)
)ifi的
].'ml.oI
Phrase
Phrase
一
更に付言すればこのphrase形式における|ノⅧiの認識イル造の反映のあり方はkernelsentenceを形
成するNP,VPの間の関係のあり方から,更にVPを形成するAuxとMVのHi]の関係のあり
方(これはこの末(4)で既述した.)更には,MVといわゆるNP(object)との関係,又MV
(Vc)とNP(complement)又はAdjectivalとのiju係においてもみられるのである.そのmt>
り方はNP(object)it.絡(case)関係としていえば,dativeにしるaccussativeにしるMV
(Vt)を規定し,説明する存在であり,同様にComplementもMV(Vc)を規定し,説Iリ』し,MV
にか、わる話者の心的態度を蝋かに実現していく機能をもつ存在と考えることができるのである.
Ⅲ、認識の反映としてのphrase
われわれは前章において,人lHlの認識柵造とは,活者の感覚性,il'J助性にもとづく感性的illリIll)と
知性にもとづく概念形成に関するものとして,物象,リド象の把握の客剛性をめざす理性的側Iftiとの
統一されたものとしてあることをみて来た.そしてソI〔水的な6種のphrasesにおいて各phrase
の椛成要素が,いかなる関係のあり方においてこれらi惣搬におけるhiofiW而を反映しているかをみて
来た.今sPrの表記法を用いていけば,前職の6和のphrasesは棚潔に次のように示すことが
できるであろう.
①
book
the
Determiner-fNominal
S
Sp-R
②
flower
pretty
Adjectival
S - R
R
R
P
v●ご》・
P
坤一IS
型lR
Verbal-iR
,
十Nominal
S
P
③
I
Adverbial
P
手S
-12-
④
were
Auxiliary‐+‐Verbal
i'shouting
S - 一 - - R
P
⑤
S‘..‐~~~~一~一
P
Preposition-¥-Nominal
inthegarden
l
Spー一R
⑥
candlesburn
R-pS
S ‐ ‐ - ~ - - R
P
Nominal+Verbal
R
S
P
次にわれわれは認識における両fll'Jifii'の内容を更に詳しく堀り下げなければならない.
(1)ThematicとExplicative
一つのphraseには大旨topicになっている部分とcommentになっている部分とが相互規
定I'l1に支え合って存在している.一方はそのphraseにおいてThematicな性格特徴をもち,後
● ● ● ●
方はExplicativeな性to特徴をもっている.具体的には,例えば(1)ではboo陶について述べら
れてあり,それが/heにおいて規定され,脱Iリjされているわけである.そのいみにおいて,前者は
Thematicであり,後者はExplicativeであるといえるのである.つまり,前者は,物象book
に対するnamingとして事実判断を示す語であり,認激IW造の理性的側面を反映し,後者はαで
はなく/heをselectし,thebooだというcombinationを形成したのだといういみで,感性的
fll'Jifiiを反映しているわけなのである.こういった傾向は他のphraseにおいても顕著に現われる.
例えば,③④におけるflower,go,sノ10"〃"gなどはそれぞれ,phraseの意味形成においては,
Thematicな存在としてあり,それぞれpretty,α"αy,妙〃eなどによって規定され説明されてい
る.これらの前者3つをThematicなものと考えれば,後者3つはむしろExplicativeな性格特
徴をもつものとして機能しているといえるのである.⑤においても,phrasethegαγde〃はtopic
としてのThemeであり,これについての話者の主体的な判断にもとづく〃iegαγde〃の方向づ
け,又は位悩づけとして伽があり,これによって〃legαγde〃がしめく洩られているのである.
そしてそこにfromでもなく,onでもなくj〃においてそれが説lリ』され,Explicativeな性絡特
徴を火現しているのである.⑥においても,cα"diesはいわゆるsubjectとして,又はactorと
して,このphraseのthemeである.このthemeの11:火判断として,これをうけて只休化し,
脱|リlするものとして6"γ〃があるといえるのである.従ってこのpropositionalphraseも本賀的
には柵成喚衆のThematicな性絡特徴とExplicativeな性絡特徴の両{Il'J而をもっているといえる
のである.なおこの2つの性格特徴は,それぞれTopicalとCommentalといい換えても大差な
いところのものである.
一
(2)ReferentialとSelf-expresive
既述の①~⑥のphrasesに共通していることは,程度の差こそあれ,それぞれの柵成要素の
間には,(1)でみた場合と同様に,相互対立規定関係があるといえる.一方はReferential他方は
Self-expressiveである.それぞれのphraseのThematicな性;格特徴をもつ部分は,或は物象
-13-
西川礎雄:炎現諭(Inversionについて)
(book,flower,thegarden,candlesなど)に対するnamingであり,或は那象(go/do
going/,shout/doshouting/など)に対するnamingである.従って本質的にはSenseと
referenceという意味論で用いられる意味するものと意味されるものとの関係に支えられた人IH]
の理性的なZlI:実判断行為に深く根ざしているものなのである.他力,①~⑥それぞれのphraseの
Explicativeにあたる部分には本質的には認識椛造における感性的側面が反映されているわけであ
るが,その洲は,言語表現に際してThemeとしてのReferentialな性格的特徴に対して,話者
がいかなる主観的なSelfの表出性(Self-expressiveness)をもっているかというところを示し
ているのである.このSelf-expressiveな性格特徴のlI'には,perceptionから更に哲学でいう
apprehension,reproduction,更には又,emotionalなifiiも含まれるのである.
17
(3)CentralとPeripheral
(1),(2)と同様に,phrase形成における椛成要素の相且規定関係のあり方に,一方がCentralな
部分として,他方から規定され,説明されるものがあり,他分逆にこのCentralな部分を規定し,
税Iリ1するものとしてPeripheralな部分があるといえる.例えば①については,boo〃はこの
phraseのcoreとしてCentralな性絡特徴をもつことは|リj白であるが/"eはこれに対して
Peripheralな存ri§としての機能をもっている.②,③,④においてもそれぞれ,flower,go/do
going/,s加況〃"g/doshouting/がCentralな性絡特徴をもっている反而,,γetty,α"αv,were
はそれぞれPeripheralな性賂特徴において,Centralなfill)而を規定し,説lリ]しているのである.
⑤においてもthegαγd"2がCentralであり,それを支えて話者の主体的な心的態度のあり方の
反映としてPeripheralな〃が用いられ,両者の和互規定関係の総体としてexocentricphrase
が成立しているのである.⑥の場合も同様に説Iリlすることができる.
さて,こうしてみてくると,われわれが人iMjの認識椛造における感性的側而或は即性的側面とい
う時,その内実はかなり多岐にわたっていることがわかる.今までのところをまとめてみると次の
ようになるであろう.
S
感性的側ifii;iExplicativeSelf-expressivePeripheral
I
理
ヤ
的
kifl'
Phras(
’
Referential
Thematic
Centra
ただこうして表にしてしまえば,形式的な感はまぬがれないのであるが,実際はsc感性的側面)
9Dp,恥hvlp
とR(理性的側ifii)は別々のものではなく,感性に支えられて理性があり,このm性を媒介として
より感性が蝋宙にされていく'といった風に両側面は相互に媒介的な,弁証法的な関係にあるのであ
り,言語形式においてこれら両fill]面が統一的に反映されているわけなのである.
「人間は論理だけではない,感'titももっているのだ.」とか;「人間は割り切れるものだけでは
ない,割り切れないものももっているのだ.」という時,それは人間は相対立するものを両方とも
内在化しており,人間は両者の矛盾の統一において生きているのだという訓に解すべきであろう.
従って削り切れるものだけ先に割って形式化し,記号化し,削り切れないものをあとから考えると
-14-
いった発想法をもつ浦譜蝿諭は本質的に誤まりであり,総体としての言譜は遂に捕えることはでき
ない・言語表現は一つの行為として(堺実判断行為,価fll't判断行為のいづれの場合にしても,)
phrase形成の中に,i.i.j'fiii]而の矛盾としての存在が,それぞれの椛成要業への反映として統一され
ているからなのである.淋しく今までのところをまとめてみると次の表のようになってくる.
X(AG
X(BGroupノ
roupノ
一m四画ロ喜一一一
範
Verbal
Nominal
Determine1、
book
jhc
pretty
flower
Auxiliarv
Verbal
α”αV
go
ー
Verbal
Nominal
Nominal
Adjectival
Adverbial
伽、
candles
〃
J10ノs9"
“〔PrG
Nominal
Preposition
f雌garden
I〃
、
、
、
、
、
、一
、
、
、
、
、
、
、
、一
、
、
、
、
、
Thematic
Explicative
Referential
Self-expresive
Central
Peripheral
R
S
(理性的側ifii)
(感性的側面)
Phrase
更にこれをもつと別の角度から説明することができる.つまり,phraseは人間の認識椛造におけ
る感性的fll'l面と理性的側面の反映のあり方として一つのvector椛造を成すと考えることができ
る.具体的にはphraseXは構成要素x,yの統一されたvectorと考えて次のように図示でき
よう.
西川搬雌:炎呪術(Inverisonについて)
-15-
X
AGroup,BGroupそれぞれの場合は一般的には次のような'叉|になるであろう.
》一二へ
既述の6種の認識椛造におけるvector関係をみていくと,
u(book)
①では
②では
X(thebok)
y(flower)
X(pretyflower)
)ytt
-16-
③では
X(goaway)
n
卜●
④弓では
u(shouting)
X(wereshouting)
e
⑤、:では
y(thegarden)
X(inthegarden)
⑥では
y(burn)
X(candlesburn)
、
esj
IVInversionについて(1
さて,一まずここで日弧に吸って,提起した問題つまりInversionにおける人間の内的な認紬の
反映状況を考察していってみたいと‘恩う.具体的にはS・Ullmannの次のことば
Thebestwayofappreciatingtheadvantagesoftheinvertedorderistorewritethe
】8
sentenceinthecustomarysubject-verbsequenceandcomparethetwoversions.
西川盛雄:表現紬(Inversionについて)
-17-
を実行に移すことになる.
冒頭で問題提起したようにβlessedαγeノルe加0γ"sp"".とThe加0γ"sがγ"αγeblessed.
との間で,語配列が異なり,従って表現効果(価値)が異なるという時,厳密には「言語形式に反
映させられた話者の紹識構造のあり方が異なる.」というべきである.では具体的に両者はどう異
なるかを新に今までの理論を賄えて述べていってみたい.
(B)T肋加orj"spir〃αγeblsed.のいわゆるSVC又はSubject-Copulative-Predicateの柵
文の内的な認識椛造の反映のあり方は次のように表わすことができるであろう.
(B
T雌2皿:型聖璽L
blessed.
are
f-、l‘I
Po
’
-Pl
p*
州砂-4
III
P,
, l
Ps
椛成要素としての禰は全部で6つである.従っていはば,surfacestructureとして現われる
. . ‐ ド , . . 。
. 』 . ‐ f ↓ . ‐ ‐ ‘ ‘ 、
phraseの数は6-1=5で5つである.しかしpredicateverbの場合,この内にTenseAspect
MoodVoiceなどを含んでいるのでverb単独でPoと考えていくことにすると,phraseは椛成
′ 』 ! . ・ か j ’
要素の数だけあることになる.番号付・けを上|叉|のようにした理Illは,学問としての言語の把握は,
’、jL
桃成要素の相互関係によってphraseが,又そのphraseの総体としてsentenceが成立すると
いう立場を私は重視しているためである.
変形文法理論は,言語把握においては,「はじめに思惟ありき」という立場に立ち,その反映と
』 . 、
しての言語事実に至る,そのlHlのprocessをdeepstructureの分析と解Iリjにおいて明にせんと
したものである.そこに文法理論のexplanatoryadequacyを追求するものなのである,しかし,
言語事実から出発し,その分析から綜合に向うAll/納的な方法とaprioriな何かあるテーゼとして
の「実在」から降りていく分析過程を経て,言語事実に向う波紳的な方怯とは,実は形式的に切り
離されて対立するものではなく,両者は弁証法的に机互媒介的且つ相互袖完的なものとして関係し
合っているのである.たぎ本棚における私の立場は,行為として実現され実際に「表現」を火現して
いる言語は第一次的にはphonemes.に支えられ,syntacticalrulesを土台にして,R.Jakobson
流にいえば,wordsのselectionによるIcombination形成によって,いわゆるsurfacestruc
tureを生み出し!こ,のことによって意味形成をなし川又意味伝述を行って言語活動を全うしてい
るというところにおいている.その意味において,AddresserとAddresseeとの間のMessage
のあり方が「表現」の問題となるのである.
さて,本稲で問題にしているInversion表現,(A)β/essedαγethepooγ加妙〃〃・を|司じ要航
で図示すると次のようになる.
-18-
い
)
thepoorinspirit
Blessedare
Po
S p , R
仮
RFj-1S
Is'p;'r
R P , - S
S
P , R
注意すべきは,SPR-では(B)とは異って.(A)ではSがRに先行し,SP.Rでは|司様にSがRに先
行しているということである.つまり人間の認識椛造におけるS(感性的側面)が先行し,そこに
は主観的なAddresserの心的態度がはっきりと出ているということである.それはとりもii'iさず
既にみてきたように,phrase形成におけるExplicative,Self-expressive,Peripheralな側面
が前耐にⅢ'てきて(B)とは逆の内而の認識椛造の反映のあり方において言語形式が現われてきてい
ることを理解すべきであろう.ここにInversionの表現効果(価値)の説Ujの理論的根拠がある
のである.このlHjのmを表にすると,次のようになる.
史にい)におけるs,Rm係の分布を記述すれば次のようになる.
Ps
、
/
P.
P.is)
/、
IS)Po
/
Pi(R)
帆
)
、
)S(>P
/、 /、
IS)(R
blessedarethepoorinspirit
ll
thepoo
(S)(R
|’
この図は恐らくはChomsky那諭のtreederivationに示されるようなphrase形式における椛
成要素|H1の‘忍識椛造の反映のあり方を説lリlする一つのkeyになってくるものといえるであろう.
これについては後H深めていかねばならない課題だと′思っている.
VInversionについて(2
ここではInversionの火際について,慰識僻造の反映のあり方をみていく'I'で,理論的に裏づ
西川盛雄:炎』』満(Inversionについて)
けていってみたいと,思う.
(I)SimpleTense
いろいろの分類があるが,ここでは学校文法的な立場はとらずにOwenThomasを参考にして
19
次の4つにしぼって考えてみた.
(1)/NP+Be-l-Predicate/
(2)/NP-!-Vi+AI
(3)/NP+Vt+NP(object)/
(4)/NP-I-Vc-l-Complement/
(1)/NP-l-Be+Predicate/
Ex.)Sweetisthescent(ofthehawthorn.)
-0.Wilde,The〃jgノj〃"gα/gα"dtheRose
この例文ではいわゆるSVC→CVSとなったところでのInversionではあるが全休の「椛成要
素の相互関係のあり方」の総体は次のようになる.
sweetisthescent
S p , R
*lS'p,'R
S p , R
これ全休表にすると
更に認識構造への反映のあり方をIlll出してS,Rの分布を拙くと次のようになる.
p.
/、
P.(S)P,(R)
/、/、
(S)Po(R)(S)(R)
||l
sweetisthescent
ここでは,SP.Rにおいては,sweet(S)がVerbPI,(R)に先行し,sPsRにおいてはP,(S)が
NPであるP,(R)に先行している.この時,いわゆるnormalwordorderである"thescentis
s"eet"とはSとRのあり方つまり言語形式による認識ル造の反映のあり方が異なるのである.ち
なみにこの場合のS,Rの分布のあり方は次のようなものである.
-19-
-20-
2QJ
P,R
Pl
S
》|IIS
scent
(ご|
幅一RIR
the
R-p¥
p.
/、
P.(R)P:IS)
/、/、
(S)(R)P。(It)(R)
’lll
thescentissweet
もとに戻ってsPaRをつくるP,(R)とP.CS)との順位が逆になってfいることはとりもii'r.さず,
phrase形成における.Explicative,Self-expressive又,Peripheralといった側而を含んだい
みでの認識隣造における感性的側面が前に出て来ており「独特な」表現効果(fiiiitfi)をもつに至っ
たわけである.こうして同種の語を川いていても評郷列が災なることによる表現効果(価仙)の差
途についての認識論的な説lリlができるのである.
(2)/NP+Vi+A/
Ex.)upwenthisarm
-L.L・Snyder,〃〃/gγα"。〃αzjs柳
この例文の全休の「|ル成要素相互の|A1係のあり方」の総体は次のようになる.
upwenthisarm
l号s'p,'R
S-F妄R
S - P , R
これ全休を表にすると
sPiR
UD
wenthis
arm
凸 ● - -
sP.RIR)
SPiR(S)
up
)S(
up
hisarm
went
Po(R)
)S(
’㈹
went
his
arm
更に認識椛造の反映のあり方を抽出してS,Rの分布を洲べてみると次のようになる.
-21-
西川擬雄:表現諭(Inversionについて)
Ps
/、
Picp,(r)
/、/、
(S)Po(R)(S)(R)
|lll
upwenthisarm
従って”偶)はPo(R){tue"#)に,P,(S)(upwe"オ)はP,(R)(hisαγ畑)に対して先行することに
よって認識における感性的ないろいろな'性格特徴(Explicative,Self-expressive,Peripheral)
を表現して,いわゆるnormalな,ノ"sαγ沈めentupとは,用語は同じで,又Propositional
meaningは同じであっても語配列,従って表現効果(価値)が全く異ったものとなってくるので
ある.そしてこの認識柵造の解明の.j-1にこのInversion説明における表現論的な理論的根拠があ
るのである.
(3)NP+Vt+NP(object)/
Ex.)Nowordspokethedeliverer.
-E、A.Poe,TheAssig"α〃0〃
この例文の全休の「I,',リ成要衆#Ⅱ互の関係のあり方」の総体は次のようになる・
nowordspokethedeliverer
II^Po
SP,R--P,R
S P , R
s.p-.ゞ唱艮
1
これ全休を表にすると
更にこのInversionの認識椛造のあり方を抽出してS、Rの分布を洲べてみると。
P4
/、
PiIS)P,(R)
/、/、
P,(S)Po(R)(S)(R)
どI111
nowordspokethedeliverer
従づてここではP,(S)(noworld)は感性的側面の性格特徴の反映においてPn
PoCEO,.(s加舵)に
-22-
か、わっていき,Pj{S)(nowords加舵)は同様,感性的側面の性絡特徴の反映においてPsffD
(thede""eγeγ)にか、わっている.従ってp.の椛成要素P3(S)とPzOOにおいてPalS)が前
位にselectされ又,PaiS)のli'lf要素P.OS)とPo(R)においてP,(S)が前位にselectされてい
るということによって,粂休として,認識における感性的側面の性絡特徴が前ifiiに出てInversion
の表現効果をあげているといえるのである.今紙面の都合もあってThedelivererspokenow
ord.との比較検討は割愛するが,これは本質的は本章の例(1)或は冒頭の例文において説明したの
と同じである.
(4)/NP十Vc+Complement/
Ex.)louderandloudergrewhersong
-O・Wilde,T"eⅣig"〃"gα/eα"dTheRose
この例文の全休の「椛成要衆相互間の関係のあり方」の総体は次のようになる.
louderandloudergrewhersong
I I P o
r',P|
~、
~'
S p , R
’
SP,R
P,
S P s R
これ全休を表にすると
OuQeranqlouQel‐里
更にこのInversionの認識イル造のあり方を抽出して,S,Rの分布を洲べてみると,次のようにな
る.
Ps
/、
PAS)Pj(R)
/、/、
Pi(S)PoCR)(S)(R)
4||l
louderandloudergrewhersong
従ってPz(S)(loudeγα"dlouder)は感性的側面の反映においてPo(R)(grew)にか典わってい
き,P,(S)(loudeγαndlowdergrew)は同じようにP3(R)(hersong)にか換わっていくPsに
おいて,その椛成要素.PAS)がP:,(R)に先行してselectされ,P.(S)においては,P.(S)が更
-23-
西川搬雄:炎呪,&(Inversionについて)
にPo(R)に先行してselectされ,全休のphrasecombinationを形成しているのである.これら
はとりもなおさず認識椛造の感性的側面の反映として,Explicative,Self-expressive,Peripheralな’性枯特徴を現わしているのである.ことにInversionの表現効果(価値)の特異性の根拠
があるといえるのである.
(II)CompoundTense
これば本質的にはSimpleTenseの場合と同じである.従って土台になるpatternsは次のよ
うになるであろう.
(1)/NP-!-Aux+Be+Predicate/
(2)/NP+Aux+Vi+<i>/
(3)/NP+Aux+Vt+NP(object)/
(4)/NP+Aux4-Vc4-Complement/
型に今一つ(3)とも|災|係はするが,異質のVoiceの場合について述べなければならない.
(5)/NP4-Aux4-Aux(be)4-Vt/
ここでAuxとはTense,Aspect,Mood等々を含むもので,次のような順位椛迭をもつもので
ある.
P
P
P(S)
)R(
(R
)S(
V
V 7 V S
Vβ
Va
---一一一-----------’
Nominal
Tense
Modal
Verbal
Perfect
Aspect
Progresive
Aspect
Voice
(1)/NP+Aux4-Be4-Predicate/
Ex.)sogreathadbeenhislove
-O・Wilde,T"eB〃"idayoftheInfanta
この例文の全体「椛成要素和互間の関係のあり方」の総体は次のようになる.
sogreathadbeenhislove
PoII
S P , R S P , R S P , R
S p , R
S P , R
なおTenseModalAspectVoiceなどを決定するのはAuxであるため-PoはAuxのところ
-24-
におかなければならない.これを表にすると
更にこのInversionの認識柵造のあり方を抽出して,S,Rの分布を淵べてみると,次のようになる.
Ps
/、、
P4(S)P3(R)
ノ灯廷|
(S)(R)Po(S)(R)(S)
(R
’|’|’
SO
greathadbeenhislove
ここにおいて,Pa(R)に対してP.(S)が,P.(R)に対してP,(S)がそれぞれ先行し,認識におけ
る感性的側而の反映された語が,前位にselectされているという点において,このInversionの
表現効果(価仙)が大きくなっているのである.
(2)/NP+Aux4-Vi4-4>/
Ex.)outofitwillcomethecreativ
一
〃
,redypSL′
ノ"α
'α
"。msiz
この例文の全休の「柵成要素相互間の関係のあり方」の総体は次のようになる.
outofitwillcomethecreativeman
| | 『 。 | l l
RP:SSP,R
SP,R
$隅!、|§一厩R
S " p . R ' !
s " p , ' し R
-25-
西川盛雄:表現論(Inversionについて)
(1)と同様に考えてこれを表にすると次のようになる.
P7
creativeman
outofitwillcomethe
SPsR(R)
SP.R(S)
outof
RlO-
1|肌
信一fl
S一皿一
outof
P
SP:R(S)
the
itwillco
willcome
| SPiR(R)
! willcome
creativeman
)S(
the
sPjr(R)
reativemao
(R)j(S)|(R)
itwillcome
更にこのInversionの認識柵造のあり方を抽出して,s、Rの分布を渦べてみると次のようになる.
p.
/、
ノ前|了
R)
、
(R
|lllll
man
ここにおいて,P(R)に対してPsfiS)が,P,(R)に対してP(S)が,そしてPjCS)が,それぞ
れ先行し,認識における感性的{Il'J面の反映された語が前位にselectされているのであるその感性
的側面を反映する柵成要衆の性j格特徴はすでに第3厳でみた通りである.
(3)/NP4-Aux4-Vt4-NP(object)/
Ex.)thinkofthemImust
-G、Gissing,γノ、ePγ/"αjePapersofHenryRyecroft
この例文の全休の「椛成要糸111の州互の|卿係のあり方」の総体は,
thinkofthemImust
Po
!s'p,R
R-一~---一-s
lや
SP,R
l
SPsR
l
-26-
となる.又これはかなり特殊な例文であるが,本質的には(0(2)と同じである.これを表にすると
次のようになる.
P.
thinkofthei
them
SPiRIS)
叩l
旧而I-ofthem
(R)1SP.R(S)
sPiR(R)
think
(R
think
Imust
SPiR(S)
-’一
must
sPr(R)
ofthem
must
(S)(R)
Po(S)
ofthem
must
更にこのInversionの惚搬椛造のあり方を抽出してS、Rの分布を洲くると次のようになる.
Pi
/、
)R(
Ps(S)
P2
/
)R(
S)
think
of
them
ク
must
ここにおいても既に述べてきたのと|司級にPa(S)が史にP,(S)に対してP.(R)が前位にselectさ
れている.そして介休の,撤識椛造のありフノノ.は図の通りである.
(4)/NP+Aut‐|‐Vc+Complement/
Ex.)soimpatientdidIbecome
-G,Gissing,TノiePri"αtePapersofHe"γyR)ノ“γ0〃
この例文の全休のn脚成要来州互の関係のあり方」の総体は次のようになる.
soimpatientdidIbecome
月,ll
S P , R S P , R
S p , R
S p , R
これを災にすると,
-27-
西川盛雌:炎現肺(Inversionについて)
更にこのInversionの認識椛造のあり方を抽出してS、Rの分布を調べると次のようになる.
P4
//、、
Pa(S)(R)
/、、
P2(S)P,(
/、/
(S)(R)(S)
)R(
’ | I
SO
impatientdid
I
become
つまりこういう認識椛造の反映のあり方においてこの表現が成立しているわけなのである.
岐後にPassiveAuxの入った場合について局・及しておこう.
(5)/NP4-Aux4-Aux(be)4-Vt/
Ex.)Ignoredhasbeenthesimpletruth.
-A・HMarckwardt&R・Quirk,ACO加加0〃Lα〃g"age
この例文の全体の「構成要莱相互'111の関係のあり方」の総体は
ignoredhasbeen
the
simple
子。l
truth
l
Sp,R
P.
R P , S
Pj
Ps
これを表示すると
R
R
-28-
§
P
ignoredhasbeenthesimpletruth
sP<R(R
SPsR(S
simpletruth
je
伯
ht
ignored
thesi
j
n
一価や一e
侭
)
n一眼一旗
唯一銀一睡一
has
ignored
sPjR(R)
jsimpletrut
可
)S(
simple
㈹
truth
更にこのInversionの細細柵造のあり方を抽出してS.Rの分布を調べてみると次のようになる.
Ps
/、、
PaCs)p4(r;
/ 、 / ~、
(R)Pi(S)(S)
/、
I
|門
P2(R)
(S)(R)
ignoredhasbeenthesimpletrutl
ここにおいてP,(R)に対してPac)が先行し,認識における感性的側面の反映された語のselectionにおいてこのInversionの表現効果(価値)が独特なものになっているのである.
Ⅵ 結 び
これは一つの|州じられた「結び」ではない.やっと問題は何かということが少しでも理解された
賞けである.その意味でこの’~結び」は開かれた「結び」つまり次のより発展した理論の踏台とも
なる出発点にすぎないのである.
われわれの岐初の問題提起はβ/essedαγg#"e加0γ"s〃γ〃とT"g加0γinsp"〃αγebressed
の両文において.
(1)Sentenceの椛成要業として,用いられている語(words)が同じである.
(2)belief-contextにおけるpropositionalmeaningが同じである.
にもか及わらず
(3)語配列,つまり,「謡相互間の関係のあり方」の総体が異なり
西川搬雄:表現諭(Inversionについて)
-29-
(4)表現効果(価値)が異なる.
というところから,Pascalも指摘しているように,語配列と表現効果の間の関係を分析検討して
いくことであり,具体的にはInversionを考察していくことであった.
表現における言語の形式はあくまでも人間の認識の反映である.その認搬の実体は,用語こそ異
なれヴィゴツキーもいっているように,人間における感'性的側面と理性的側面(或は感情的側面と
知‘性的側面)の弁証法的な関係から成り立っている.つまり前者に支えられて後者が生じ発展し,
同時に後者を媒介として前者がより盤かになっていくという弁縦法的な関係である.そしてこれら
両側而が言語形式を媒介として統一されていくprocessにおいて,「表現」としての言語行為が
実現されていくわけなのである.従って現象として現われる言語形式の中には,人間の心的態度と
しての認識椛造が反映されている筈である.つまり,言語とは認識であって,問題は言語の多様性
に内在する人間の認識椛造の豊備な多様性をみることなのである.いわゆる特異なnormalでない
表現形式もnormalな表現形式も,この観点に立てば「認識柵造のあり方」として問題を捕え直す
ことができよう.このようにして,本稲では,具休的にはTheNewTestamentの例文から出発
して,いろいろのInversionをみていく巾で,独特な表現効果(価値)の生じてくる源を人間の
「認識構造のあり方」との関係において,少しでも明らかにして来たわけである.
「表現」としての言語行為とは,外界に対するわれわれの躯実判|折,或は価値判断として,「あ
● ●
● ●
る何かがあって,その何かが何である.」という意味内容があり,それは「脊声」に支えられて,
「統語構造」を土台にして,実現されるものである限り,「統語桃造」の側面からと同時に又,
phonemes又はsupra-segmentalphonemesの面からもInversionを捕えなければならないで
あろう.
簸後にInversionについて,一応のまとめを記してこの論考にコンマを打ちたいと′思う.
(1)従来のInversionについての考案は伝統文法家などに代表されるようにword-orderの問
題で終始していた.
(2)従って豊富且つ世軍な言語事実としてのInversionの盗料をわれわれに提供してくれる.
しかしそこには人間の認識論に根ざした理論はない.
(3)認識に根ざした理論とは,人間の認識を感‘性的側Ifiiと理'性的側面の統一されたものとしてみ
る考え方であり,その反映として,さまざまな言語リ実があるとする考え方である.そこでは
言語事実の多様性,無限性は同時に,人間の認識活動の多様性と無限性に他ならない.
(4)語配列の差述は同時に話者の認識活動のあり方の差述である.
(5)Inversionにおいては,感性的fll'l面を反映する語が前位にselectされ,そのvectorがい
わゆるnormalな場合よりも,強く,長くなるわけなのである.
(6)そしてここでいう感'性的側面のもつ性格特長は一般的にExplicative,Self-expressive,
Peripheralなものであり,理'性的側而はこれらに対応してそれぞれThematic,Referential.
Centralな性格特徴をもつIているといえるであろう.
-30-
(7)Inversionといわゆるnormalなsentenceとの間で,目頭で問題提起したように,用語も
同じbelief-contextにおけるpropositionalmeaningが同じであるにもか出わらず,「何
か」が異なるというとき,その「何か」とは観念的なものではなく,Iリj雌に1*1示してきたよう
に,認識イft迭の反映のあり方が異なるのである.
(8)その腿識|:#辿の反映のあり方の実体は本稿において,I*]や表を川いて示してきたところであ
り,phraseにおける「ttI成要業相互間の関係のあり方」の総体として示すことができるとこ
ろのものである.
一一一一06
も罰哩
1.Of.PensecsdePascal,ArticlePremier'Pens'eessuγノ'Espγ〃ets"γノeStyle';Editions
GarnierFreres.
2.TheGospelAccordingto"MatthewChapter5"
3.Cf.G・Curme,SyntarCノtapX¥1I
Themostcommonorderis:Subjectinthefirstplace,Verbinthesecond.'Theboy
loveshisdog.'Thisiscallednorr"αノordeγ・Ifanyotherworldforemphasis,orto
establishanearerrelationwithwhatgoesonbefore,orbecauseitliesnearerin
thought,standsinthefirstplace,theverboftenstilmaintainsthesecondplace,
folowedbythesubjectinthethirdplace.Thisiscaledi"ertedorder.
4.Cf.o・Jespersen,Esse"がαノsofEnglishGγα加加αγcノlap.X,ここでJespersenは次のようにい
っていることも府過されてはならないWord-orderisoftenregulatedbyconsiderationsof
balanceinthesentence.
5.Cf.A〃α"d加okofEngノ”〃G/α"""αr
OntheassumptionthatS-Pisthe'nomal'order,P-Sandp-S-Paresometimes、called
the,inverted'order,andtheplacingofthesubjectafter(partof)the(verbal)predicateisknownas'inversion'.
6.Cf.AHα"d加okofEnglishGγα"""”・PartVI.
7.Cf.L.Bloomfield,Languagechap.9.'Meaning*
8.Cf.E.Bach,A〃伽〃oductio〃”Tγα"”""α"0"α/Gγα"""αγ5Chap.4"GrammaticalTransformations'
9.Ibid.
10.Ibid.
11.Ibid.
12.こういう存在としての人|川の形式的災呪手段が言語である限りJespersenの次のことばはlliしい
Nolanguageislogicalineveryrespect,andwemustnotexpectusagetobeguided
alwaysbystrictlylogicalprinciples.
Cf.Jespersen,Growt〃α"ds〃"“"γeofj〃eEnglishLα"g邸噌e.Chapter1.15.
13.Cf.芝Ill進午,「人|川性と人絡の理約」
14.Cf.(f.ウイゴツキー(柴川錠松・訳)「,思考と言活」
15.ここではKant哲学でいう厳栴な1洲動性を排した「感性」そのものというよりも,折荷のK剛的なU'k^_
断,fillidi'i判断に伴う」;体の心的態度も含めた意味での「感性」である.
16.Cf.Bloomfield,Lα"gtイageChap.12.
BlochandTragcrexplain"Ifaphrasehasnotthesamefunctionasanyofitsimm-
西川擬雄:表現為(Inversionについて)
ediateconstituents,itisanExocentricPhraseandhasanExocentricconstruction.
17.Cf.TrarauxLinguistiquedePrague2,1966
F.Danes,TheReIα"0〃"Ce"ノγgα"dPeγ幼heγya3α“"g"αgeUniversαノ.
TherelationofC(centre)andP(periphery)inthedomainofdiscourseisfinally
metwithalsoontheleveloftheso-colledfunctionalsentence-perspectivei.e.inthe
analysisoftheutteranceintothetheme(topic)andtherheme(comment)
18.Cf.S.Ulman,Lα"g"ageandSty/eChap.VI,"NewBearinigsinStylistics"
19.Cf.O.Thomas,Tγα"sfoγ柳α"0"αノGγα加加αγα"αメカeTeacherofEnglish"(2)TheEnglish
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