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古文入門
古文とは 古文入門 「古文」とは、文語体で書かれた昔の詩文をいう。文語体で書き継がれてきたものの中で、主に奈良 時代から江戸時代までの作品が古典文学と呼ばれる。 これらの作品は成立年代が千年余の長きにわたるため、その時代によって文法や言葉の意味が多少異 なっている。だが、標準となっているのは平安時代の文法や単語である。 高等学校で扱われる古典文学を読解するためには、平安時代の文法や単語を学んでいくことが必要に なる。 歴史的仮名遣い 歴史的仮名遣いとは、簡単にいうと、古文で使われている仮名遣いのことである。平安時代中期の発 音をもとにしているので、音読するためには現代仮名遣いに直す必要がある。 歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに直すルールはわかりやすく、出題パターンも限られているので、苦 手意識を持たずに学習しよう。 【歴史的仮名遣いと現代仮名遣い】 ① 語頭と助詞以外の「は・ひ・ふ・へ・ほ」→「わ・い・う・え・お」に直す。 例いふ(言ふ)→いう(発音 ユー) 例あはれなり→あわれなり ② 「ゐ」 「ゑ」 「を」→「い」 「え」「お」に直す。 げん じ ものがたり まくらのそう し まんようしゅう ▼古典文学の中では、奈良時代の『万葉集』、平 つれ づれ ぐさ おく ほそ みち 安時代の『源氏物語』 『 枕 草子』、鎌倉時代の 『徒然草』 、 江 戸 時 代 の『奥 の 細道』 な ど が よ ▼ヤ行にも注意する。 く知られている。 例をとこ(男)→おとこ 例ゐる(居る)→いる 例こゑ(声)→こえ 語のワ行は「わ を」だが、古文のワ行は「わ ゐ う ゑ を」となる。 ※現代 古文 現代語「や ゆ よ」 「や い ゆ え よ」 「ゑ」は現代語表記では使わないので注意する。 「ゐ」 13.3.5 10:38:55 AM P002-005_古典_基礎編.indd 1 1 2 2 ③ 「ぢ」 「づ」→「じ」 「ず」に直す。 例はぢ(恥)→はじ 例よろづ→よろず ④ 「くわ」 「ぐわ」→「か」 「が」に直す。 例くわし(菓子)→かし ▼母音が「au」→発音「オー」 例ぐわんかけ(願掛け)→がんかけ ⑤ 「アウ」 「アフ」 「ワウ」 「ハウ」→「オウ」に直す。 母音が「eu」→発音「ヨー」 母音が「iu」→発音「ユー」 例かうべ(頭)→こうべ(発音 コーベ) 例あふぎ(扇)→おうぎ(発音 オーギ) 例わう(王)→おう(発音 オー) ア 例会はう→会おう(発音 会オー) ▼促音・拗音の表記 ようおん ⑥ 「イウ」 「イフ」 「ユフ」→「ユウ」に直す。 そくおん 例うつくしう(美しう)→うつくしゅう(発音 ウツクシュー) 「つ」「や」「ゆ」「よ」→「っ」「ゃ」「ゅ」 「ょ」に直す。 ⑦ 「エウ」 「エフ」 「ヤウ」→「ヨウ」に直す。 例きやうだい→きょうだい 例あつた→あった 例てふてふ(蝶々)→ちょうちょう(発音 チョーチョー) 練習問題 次の語を、現代仮名遣いに直しなさい。 13.3.5 10:38:56 AM P002-005_古典_基礎編.indd 2 練習問題 解答 ⑴ つわもの ⑵ におい ⑶ いなか ⑷ かなしゅう ) ⑴ つはもの ( ⑵ にほひ ( ) ⑶ ゐなか ( ) ⑷ かなしう ( ) ⑸ えかき ⑹ さぶろう ⑺ かじ ⑻ とうとし ⑸ ゑかき ( ) ⑹ さぶらふ ( ) ⑺ くわじ(火事) ( ) ⑻ たふとし ( ) 古文入門 3 品詞分類 品詞とは、単語を、文法上の性質や役割によって分類したもののことで、十一種類に分かれる。 ⎧言い切りがウ段(ラ変は「り」) 動詞 活用がある(用言) ⎨言 い切りが「し」 形容詞 ⎧ ⎩言い切りが「なり」「たり」 形容動詞 ⎧自立語 ⎨ ⎧主語になる(体言) 名 詞・代名詞 体言を修飾する 連体詞 ⎩活用がない ⎨用言を修飾する 副詞 単語 ⎨ 単語や文をつなぐ 接続詞 ⎩感動・呼びかけ 感動詞 付属語 ⎧活用がある 助動詞 ⎩ ⎨ ⎩活用がない 助詞 【現代語との違い】 ▼自立語 その言葉だけで独立した意味を持つ。 ▼付属語 つねに自立語に付属している。 ▼「ある」の品詞 ・動詞「あり」の連体形「ある」…存在を表す。 例家にある人。(家にいる人。) 例ある人来たり。(ある人が来た。 ) ・連体詞の「ある」…指示語の役割 ▼ラ変動詞は次の四動詞。 ⑵ 動詞 ⑶ 形容詞 ⑴ 形容動詞 練 習 問 題 解答 ① 動詞の言い切りの形 ウ段音・ラ変動詞は「り」で終わる。(現代語はウ段音のみ。) ) 「あり」「をり」「はべり」「いまそがり」 ( ② 形容詞の言い切りの形 「し」で終わる。(現代語は「い」で終わる。) ③ 形容動詞の言い切りの形 「なり」「たり」で終わる。(現代語は「だ」で終わる。) ) 練 習 問 題 次の用言の品詞名を答えなさい。 ( ⑴ 静かなり ⑵ をり ⑷ 思ふ ( ⑶ 清し ( ) ) ⑹ いみじ ( ⑸ 平然たり ( ) ) ⑺ 生く ( ) ⑷ 動詞 ⑸ 形容動詞 ⑹ 形容詞 ⑺ 動詞 13.3.5 10:38:56 AM P002-005_古典_基礎編.indd 3 3 4 応用問題演習 ほう ひ ぐちとみ じょう き こう じ A ① まひびと い 次の文章は『方丈記』の中の一節で、火事が起きた様子を描いた文章である。 ほ もと C けぶり ② D ⑤ 火本は、樋口富の小路とかや。舞人をやどせる仮屋より出で来たりけるとなん。吹きまよふ風にとかく ふぎ ③ ああ れなゐ ④ くく 移 り ゆ く ほ ど に、 扇 を 広 げ た る が ご と く 末 広 に な り ぬ。 遠 き 家 は 煙 に む せ び、 近 き あ た り は ひ た す ら B ほのほ 焰を地に吹きつけたり。空には灰を吹きたてたれば、火のひかりに映じてあまねく紅なる中に、風に堪へ ごと (『方丈記』安元の大火) ず吹き切られたる焰、飛ぶが如くして一二町を越えつつ移りゆく。その中の人、うつし心あらむや。 ( ) 単語チェック ・火本=出火元。 ・やどせる=宿せる。宿泊させている。 ・とかく=あちらこちらに。 ・末広に=末広がりに。 ・あまねく=広く行き渡って。 ・うつし心=気が確かではっきりしていること。 正気。 ・あらむや=あるだろうか、いや、ないだろう。 キーポイント 問一 現 代 仮 名 遣 い へ の 変 換 の ル ー ル を 思 い 出 そう。 問二 まず、活用があるかないかを見る。 「や」は活用がない。 A D 「吹きつけ」を修飾している。 問三 「 そ」は代名詞。現代語では「その」で一 語だが、古文では「そ」だけで一語である。 13.3.5 10:38:56 AM P002-005_古典_基礎編.indd 4 問一 傍線部①~⑤の語の読み方を現代仮名遣いに直して、全て平仮名で答えなさい。 まひびと ① 舞人 ( ) ( ) ② まよふ あふぎ くれなゐ ③ 扇 ( ) ④ 紅 ( ) ⑤ 堪へ ( ) 問二 傍線部A~Dの品詞名を答えなさい。 A や ) ( ) B 移りゆく ( D ひたすら ( C 遠き ( ) ) 問三 二重傍線部「その中」が指すものを、次のア~ウから選び、記号で答えなさい。 ア 火本の樋口富の小路の中。 イ 舞人をやどせる仮屋の中。 ウ 焰に包まれた町の中。 古文入門 5