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Invar合金の熱膨張における非調和振動と量子効果

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Invar合金の熱膨張における非調和振動と量子効果
Invar合金の熱膨張における
非調和振動と量子効果
1
分子研、2 総研大
横山利彦1,2、江口敬太郎2
Invar合金の熱膨張
1897 C. E. Guillaume 発見
1920 ノーベル物理学賞
C. E. Guillaume,
CR Acad. Sci. 125, 235 (1897).
Weissの高スピン-低スピンモデル
R. J. Weiss, Proc. R. Soc. London.
A 82, 281 (1963).
fcc FeNi合金
36Invar Fe64.6Ni35.4
42Invar Fe58Ni42
Kovar Fe54Ni29Co17
45Permalloy
Fe55Ni45
Inconel Fe28Ni72
78Permalloy
Fe22Ni78
Fe
高スピン(HS)
低スピン(LS)
安定
長結合距離
不安定 短結合距離
温度上昇に伴うFe(LS)密度の上昇
正常な熱膨張とキャンセル
低温から室温以上まで熱膨張がほとんどない
本研究の目的
1. 熱膨張 熱振動に由来
低温での量子効果は?
経路積分有効古典ポテンシャル法
Path Integral Effective Classical Potential (PIECP)
2. HS⇔LS変化はFe原子のみ
特にNiの局所熱膨張は?
EXAFSとPIECP法の併用
3. 熱膨張のない系での非調和性?
通常の物質で低温で
熱膨張が小さくなるのは
量子効果
Weissモデルでは
Feのみが異常
通常の熱膨張は
非調和potential
由来
EXAFSの測定・解析
KEK-PF BL9C Si(111)二結晶
Fe64.6Ni35.4 箔(8µm)市販品
透過法
EXAFS関数k3χ(k)とそのFourier変換
I0 N2 100%
I Ar 50% + N2 50%
温度校正
*校正済みSiダイオード
*Cu foil EXAFSを参照
1st NN
1st NN
3rd NN
χ (k )
NS02
kR
2
e
−2C2 k 2
4
sin 2[kR + φ (k ) − C3 k 3 ]
3
3rd NN
C2 =
< (r − R) > 平均二乗相対変位
2
C3 =
< (r − R )3 > 平均三乗相対変位
距離絶対値
FEFF
距離相対値
経験的
PIECP MCシミュレーション
経路積分有効古典ポテンシャル法
EAM法によるポテンシャル曲線
Path Integral Effective Classical Potential (PIECP)
A. Cuccoli, R. Giachetti, V. Tognetti, R. Vaia, and
P. Verrucchi, J. Phys.: Condens. Matter 7, 7891 (1995).
T. Fujikawa, T. Miyanaga, and T. Suzuki,
J. Phys. Soc. Jpn. 66, 2897 (1997).
T. Yokoyama, Phys. Rev. B 57, 3423 (1998).
非調和ポテンシャル下での
簡便な量子シミュレーション法
Monte Carloシミュレーション
FeNi 500原子 (125 fcc格子)
周期的境界条件
Fe:Ni=64.6:35.4 ランダム配置
T=0 K, 完全なfcc格子(原子間距離均一)
11種類
原子ポテンシャル
Embedded Atom Method (EAM)
金属固体の経験的ポテンシャル
M. S. Daw and M. I. Baskes,
Phys. Rev. B 29, 6443 (1984).
S. M. Foiles, Phys. Rev. B 32, 3409 (1985).
系
fcc Fe
fcc
Fe65Ni35
fcc Ni
状態
Re (Å)
E(Re) (eV)
備考
HS
2.530
-4.292
LS
2.492
-4.300
LSが8 meV
安定
HS
2.530
-4.388
LS
2.504
-4.363
2.490
-4.450
HSが25 meV
安定
熱膨張のEXAFS解析結果
第1・第3配位の原子間距離相対値
< u⊥2 > 結合距離(原子間距離)と
R
Rlattice +
=
bond
2 Rlattice 格子点間距離の違い
Rlattice
第1・第3配位の平均二乗相対変位
Rbond
原子の結合垂直
方向の振動
1st NN
< u⊥2 >
Debye温度から
計算可能
3rd NN
Fe第1配位
Ni第1配位
第3配位
熱膨張ほぼなし
fcc Niより小さい熱膨張
双方ともほぼ格子に追随
第1配位・格子熱膨張の計算結果
量子論
原子間距離・格子定数の絶対値・
熱膨張とも実験とよく一致
古典論
低温(<100 K)で大きな熱膨張
低温で実験とのずれが大きい
目的1:熱膨張の量子効果
低温で非常に重要。
量子効果がなければ
正常に近い熱膨張が生じる
第1配位熱膨張の各配位成分の解析
Fe-Fe配位 熱膨張ほぼなし
HSのみの仮想的熱膨張とのずれ最大
Ni-Fe, Ni-Ni配位
やはり熱膨張は小さい
EXAFSのFe av., Ni av.ともよく対応
Feポテンシャル変化の影響
Ni-Fe配位の方がNi-Ni配位より
熱膨張が大きい
*Niが多く配位しているFeはHS
*Ni-Niポテンシャルの方が柔らかい
• 格子に従いやすい
EXAFSでは第1配位圏のFe-Fe, Fe-Ni
あるいはNi-Ni, Ni-Feの区別困難
PIECP MC法で識別検討
本来想定される仮想的熱膨張を得るため
FeがHSのみの状態も計算(破線)
目的2:局所熱膨張
NiもFeポテンシャルの影響で
本来の熱膨張を示さない
非対称性・非調和性
第1配位
Fe, Ni周囲とも正常なC3に近い
目的3:熱膨張のない系での非対称性
熱膨張がなくとも分布は非対称
非調和性は普通に存在する
第3配位
Fe, Ni周囲とも非対称性は0に近い
第3配位は結合がなくポテンシャルの
非調和性は反映されない
相互作用のない2体の分布
中心極限定理 Gauss型
T. Yokoyama, T. Ohta, and H. Sato,
Phys. Rev. B 55, 11320 (1997).
おまけ
fcc Fe
アンチインバー効果
LSが安定のため
通常より大きな熱膨張
42Invar Fe58Ni42
Kovar類似
36Invarと比べれば
わずかに熱膨張あり
78Permalloy Fe22Ni78
通常の熱膨張に近い
まとめ
EXAFSとPIECP法の併用によりInvar合金Fe64.6Ni35.4の熱膨張を検討
1. 熱膨張 熱振動に由来 低温での量子効果は?
低温の熱膨張に対する量子効果は非常に大きい。
量子効果がなければ正常に近い熱膨張が生じる。
2. HS⇔LS変化はFe原子のみ
特にNiの局所熱膨張は?
Fe第1配位はほぼ熱膨張がない。
Ni第1配位(Ni-Ni)もFeポテンシャルの影響で
本来の熱膨張を示さない。
3. 熱膨張のない系での非調和性?
本来熱膨張の原因は非調和性で
あるが、熱膨張がなくとも分布の
非対称性(=ポテンシャルの3次の
非調和性)ははっきりと存在する。
T. Yokoyama and K. Eguchi, Phys. Rev. Lett.
107 (2011).
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