Comments
Description
Transcript
借入返済延滞と リスケジュール 対策
借入返済延滞と リスケジュール 対策 資金繰り Ⅰ 資金繰りに行き詰まった時に行うリスケジュール 1.間違ってはいけない支払いの優先順位/2.リスケジュールとは 3.リスケジュールを行うタイミング. Ⅱ リスケジュールを成功に導くための準備 1.リスケを行う前にすべきこと/2.借入条件別に異なるリスケ交渉 3.リスケの実行に必要な申請書類の準備 Ⅲ リスケ交渉に必須の経営改善計画書の作成ポイント 1.経営改善計画書の作成ポイント/2.自社の現状把握と業務リストラのポイント 3.経営改善計画書の文章化と実行 Ⅳ 銀行の言いなりになってはいけないリスケ交渉 1.リスケ依頼はメインバンクを優先する/2.日本政策金融公庫に対する交渉 3.書類内容が重視されるリスケ交渉/4.リスケ交渉にかかる時間と期間 Ⅴ リスケ成功のカギを握るリスケ後の取り組み 1.最優先すべき経営改善/2.月次決算による予実管理 3.資金繰り管理と改善/4.金融機関への定期的な業績報告 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り Ⅰ 資金繰りに行き詰まった時に行うリスケジュール 1 間違ってはいけない支払いの優先順位 会社の代表的な支払いは、従業員への給料、取引先への買掛金、諸経費、税金・社会保 険料、銀行融資の返済などがあります。資金繰りに行き詰まった時、これらの支払いの優 先順位をどうすべきか、意外に理解していない経営者が多くみられます。 資金繰りに行き詰まった場合にまず行うべきことは、銀行にリスケ交渉を行い返済を待 ってもらい、以下のような順で支払いを行います。 ①給料 2 → ②買掛金 → ③諸経費→ ④税金・社会保険料 → ⑤銀行返済 リスケジュールとは リスケジュールとは、毎月の融資返済が困難になった場合、銀行に依頼して、毎月の元 金返済を少なくしてもらったり、元利金の返済を猶予してもらったりすることです。 借入した際に銀行へ銀行取引約定書、金銭消費貸借契約書等を提出し毎月返済金額を金 銭消費貸借契約書に記載すると、その契約通りに返済を行わなければならないのですが、 業績の悪化や販売先の倒産等、借入をした当初には想定もしていないことが起こった時、 借入の返済が困難になります。 もうこれ以上約定通りの返済が不可能になった場合、銀行にリスケジュールを依頼する と、交渉次第ですが、毎月の返済金額を少なくしてもらったり、返済猶予してもらったり できることもあります。 【リスケのメリット・デメリット】 メリット 資金繰りが楽になるので、経営改善に集中できる デメリット リスケ中は新規の融資を受けることができない 3 リスケジュールを行うタイミング リスケジュールは、経営改善が可能であると銀行から判断されなければ認めてもらえま せん。なので、返済が困難になるギリギリまで頑張るのではなく、ある程度余裕を持って リスケの申請を行わなければなりません。 リスケを行うタイミングは、以下の2つになります。 1 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り (1)3ヶ月以内に資金不足が予想される場合 リスケジュールを行うべきタイミングは、まず資金不足が予測された時です。少なくと も、3ヶ月以内に資金不足に予測されるならば、リスケ交渉を行うべきです。 慢性的な赤字体質でギリギリの資金繰りが続いている状態だと、融資に頼らざるを得ま せん。しかし、この状態では銀行に融資を申し込んでも断られてしまいます。 このような場合、すぐに銀行にリスケジュールを依頼すべきです。リスケジュールによ って、返済額を抑えて資金繰りを無理なく回せる状況を作ることが正しい判断と言えます。 (2)折り返し融資を断られた場合 リスケジュールを行うべきタイミングは、銀行からの折り返し融資を断られた場合です。 折り返し融資を受けている会社からすると、すぐに借りられることを前提で資金繰りを回 しているので、折り返し融資が止まってしまうと即時に資金繰りが行き詰まります。 折り返し融資を断るということは、銀行はその会社に対して相当消極的な状態にありま す。折り返し融資が出なくなったら、絶対にリスケジュールをしなければならないタイミ ングです。 2 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り Ⅱ リスケジュールを成功に導くための準備 1 リスケを行う前にすべきこと リスケ交渉に入ると、返済額が少なくなったりする代わりに、新たな借入は出来なくな ります。そのため、当面の運転資金に困らないよう、あらかじめ準備を行っておく必要が あります。リスケ交渉に行うべき準備には、以下のようなものがあります。 (1)当面の資金を確保する あらかじめ資金をある程度確保しておかないと、会社を再建するための原資が確保でき ないからです。再建のための資金は潤沢であればあるほど、対策を打ちやすくなり、それ だけ再建の可能性が高まります。リスケジュールを行うと、新たな融資を受けられる可能 性は低くなるので、再建のための資金を銀行から新たに融資してもらうことが難しくなり ます。 (2)売上入金と返済口座の管理 リスケ交渉に入った段階で、すぐにその月からの返済を止めます。リスケジュールの契 約には数ヶ月かかりますが、返済は交渉が成立しなくても止められます。ただし、銀行の 返済口座には残高が無い状況にしておきます。そうすれば、返済日になっても残高不足の ため、引き落とされずに済みます。 3 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り (3)口座を変更し手形の不渡りを防ぐ 融資の返済口座を普通預金ではなく当座預金にしていると、手形の決済口座で、売上の 入金口座かつ返済口座などという不都合な状態になります。その場合、下手に口座から資 金を引き出せません。口座を空にしてしまうと手形の決済ができなくなり、不渡りを起こ す危険性があるためです。 まだ資金繰りに困っていないのであれば、そうした状況に備え、返済口座の変更を適当 な理由をつけてあらかじめ依頼しておくことや、そもそも融資取引先のある銀行で手形を 振り出すことをやめて、融資を受けていない銀行で手形を振り出すことなどを考えます。 (4)手形の割引先を確保する リスケジュールを行うと、銀行が手形割引を行ってくれなくなることがあります。必ず しも銀行が手形を割引いてくれなくなるというわけではなく、リスケ依頼しても手形割引 だけは対応してくれることもあります。しかし、万が一銀行が手形割引に対応してくれな い場合に備えて、融資を受けていない銀行で手形をお願いできるところを確保しておく必 要があります。手形割引に対応する代わりに、リスケ交渉を銀行主導にしようとするとこ ろもあるので、融資を受けていない銀行で手形割引に対応してくれるところを確保するこ とは非常に重要なポイントになります。 2 借入条件別に異なるリスケ交渉 (1)長期分割返済は返済額の変更を依頼する 借入の条件によって、銀行へのリスケ依頼の方法が異なります。3年や5年などの長期 借入金の場合、予測資金繰り表を作成し、それをもとに新たな資金を調達しないとそのま ま返済することが難しいことを銀行に伝え、資金繰りが回せるようになるまで毎月の返済 額の変更を依頼します。ただし、利息は変わらず払い続けます。気をつけるべきことが1 点あります。リスケ交渉は自社主導で行うということです。安易に銀行から提案されたも のを受け入れて契約してしまうと、大変なことになりかねません。リスケ期間中にやっぱ り資金が回らないからと、さらに銀行に返済額を下げる交渉を行うのは、初回の交渉より もハードルが高くなります。 (2)期日一括返済の場合は段階を踏む 期日一括返済とは、決められた返済日に一括で全額を返済する契約です。借入期間が1 年以内の短期融資で、建設会社や不動産会社、ソフトウェア開発会社等が借入れることが 多いパターンです。 期日一括返済の場合には、分割返済に契約内容の変更を依頼します。そして、返済条件 も長期借入金と同じく、1年間は軽減して欲しいと依頼します。さらに、貸付形態も手形 貸付から証書貸付に変更してもらえるように交渉します。 4 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り 期日一括の短期融資の場合、銀行の対応は厳しくなります。それに、借りている側の経 営者も手形が不渡りになっては困るので、なかなか対等な立場で交渉することは難しいの が現実です。しかし、たとえ手形貸付の場合であっても、自社の資金繰りをきちんと伝え て交渉します。銀行は、資金繰り状況をきちんと踏まえて交渉してくる会社であれば、交 渉段階で一方的に手形交換書に回して不渡りにするようなことはしません。 (3)保証付融資とプロパー融資の交渉の違い 信用保証協会の保証付融資は、信用保証協会によって貸出金の 100%もしくは 80%の 保証がされています。一方、プロパー融資は、信用保証協会や保証会社による保証がつい ていないので、銀行が 100%のリスクを負います。これら2つは、銀行にとってのリスク が大きく異なるので、当然リスケジュールの対応も自ずと変わってきます。 保証付融資の交渉 信用保証協会の保証付の融資であれば、銀行は提出した依頼書や計画書などの資料を 確認したうえで、リスケ可否の判断は信用保証協会に委ねます。そして、信用保証協会 が承認すれば交渉が成立します。信用保証協会の保証付融資のリスケ交渉は、比較的ス ムーズに進みます。銀行にとっても対応しやすい案件といえます。 プロパー融資の交渉 プロパー融資の場合、銀行の見方もそれ相応に厳しくなります。保証付の融資と違い、 銀行が 100%のリスクを負っているからです。銀行によっては、利率の引上げや保証人・ 担保の追加などを要求してくることもありますが、これらの要求についても安易に承諾 せずに、自社の状況や資金繰りなどから判断すべきです。 3 リスケの実行に必要な申請書類の準備 リスケ交渉を行う際、必ず必要となってくるのが銀行に提出する申請書類です。リスケ 交渉時に必要となる書類には、以下のようなものがあります。 金融機関別 取引明細書 月次資金繰り表 5 5ヵ年損益予定表 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り (1)取引内容を整理して作成する金融機関別取引明細書 リスケ交渉を行うには、各金融機関との取引内容を整理することが大切です。しかし、 多くの経営者は、自社の融資取引状況をすべて把握しているわけではありません。自社が どの銀行とどのような内容の融資取引を行っているかを把握しておかなければ、対等な交 渉は行えません。そのため、取引金融機関ごとに取引内容を一覧にまとめる必要がありま す。そして、毎月の元金返済、支払利息はどれくらいか、信用保証協会の保証が付いてい るのかプロパーなのか、どの融資に誰が保証人になっているのか、どの融資にどの不動産 が担保に入っているのかなどを整理します。これを「金融機関別取引明細書」といいます。 (2)返済額を伝えるための月次資金繰り表 リスケ依頼を行うにしても、どのくらいまで減額してもらえれば無理なくお金を回せる のか、それが分からなければ銀行と交渉をすることはできません。 そのためには、自社の予測資金繰り表を作成し、資金の流れを把握する必要があります。 将来どのようなスケジュールで、どのくらいの売上入金が予測され、仕入れ代や諸経費な どがどのくらい出て行くのか、それらを表にまとめます。そうすることによって、簡単に 将来の資金繰りのシミュレーションができるようになります。これくらい下げれば楽にな るというような感覚ではなく、根拠のある数字として下げてもらいたい額を明示できるの で、自社主導で交渉を進めるために欠かせない資料になります。 (3)回復時期を伝えるための5ヵ年損益予定表 予測資金繰り表によって、リスケジュールの必要性と有効性を伝えることができれば、 銀行は大筋で納得する方向に向きます。しかし、銀行はリスケジュールに応じても、経営 がいつ回復するのかがはっきりしなければ、納得しないでしょう。そのため、5ヵ年損益 予定表を作成します。今後5年間で損益がどのように推移していくか、どの時点から黒字 に転換し、返済原資が出てくるのかということを示す表を作成します。 6 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り Ⅲ リスケ交渉に必須の経営改善計画書の作成ポイント 1 経営改善計画書の作成ポイント 取引銀行にリスケジュールを申請する際「経営改善計画書」の提示、あるいは作成を求 められます。銀行によっては、企業に経営改善計画書作成マニュアルを渡して、これに沿 って作成し、数週間後に提出するよう求めるケースや専門家に依頼して作成するよう求め るケースがあります。しかし、銀行に「経営改善計画書」を提出できる企業はほんの僅か というのが実情のようです。 (1)経営改善計画の目的 経営改善計画を策定する目的は以下の2つになります。 ●変化する経営環境へ対応し更なる利益の増加や生産性の向上を図るため ●資金繰り悪化から緊急で経営改善が必要になることへの対応 前者の経営改善計画は「経営計画」ともよばれ、5年後、10 年後を見据えて策定され ます。後者は、決算で債務超過となり、借入金の返済が困難となったり、金融機関からの 新規借入が困難となるような場合に策定されるものです。 これら2種類の経営計画はともに、 「経営環境の変化に対応する」という面では同じ性格を 持っていますが、前者が前向き・長期の計画であるのに対し、後者は緊急事態への対応・ 短期という違いがあります。 (2)経営改善計画書作成の7つのポイント 経営改善計画書の策定するにあたってのポイントは、次のようになります ①計画の必要性を認識する ②自社の現状を認識する ③事業内容、財務、収益の3分野から重要点をまとめる ④経営環境の変化を予測する ⑤具体的な行動計画を策定する ⑥キャッシュフローを確認する ⑦経営管理を徹底する 7 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り 2 自社の現状把握と業務リストラのポイント (1)自社の現状を把握する 経営改善計画書を作成するには、自社の現状をしっかりと把握しなければなりません。 自社の現状を把握する代表的な手法には以下のようなものがあります。 ①外部環境分析 まず、自社に影響を与える外部環境の分析から行います。外部環境分析を行う際の視点 として、1つはどんな事業にも共通して影響を与える「全般的な環境要因」で、もう1つ は特定の事業や業界に影響を与える「直接的な環境要因」です。また、「競争環境の変化」 を把握し、予測することや競合企業の動向を見極めておくことも重要です。これらの分析 による変化の予測から、自社にとっての競争優位の「機会」となるか「脅威」となるかを 検討します。 ②内部環境分析 自社を経営改善しようとしてもどこをどう改善したらよいのかわからない、という経営 者が多く見受けられます。自社の「強み」や「弱み」をよく知ってこそ、自社に合った「経 営改善計画」が具体化できます。強みを生かし、弱みを補うことは、経営戦略づくりの定 石です。 ③SWOT分析 外部環境分析と内部環境分析から「強み」と「弱み」をまとめていきます。SWOT分 析とは、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat) の頭文字を並べたもので、4つの要因の組み合わせによって、戦略案を抽出し、最善の方 策を選択しようとする分析手法です。 8 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り (2)業務リストラのポイント 業務上のムダを省くことが、他社の影響もなく自社で行えるため、経営改善を行う1番 の近道です。業務リストラには、次のようなものがあります。 ①適正在庫の実現 在庫は経営にとって最も注意しなければならないチェック項目です。在庫は売上が上が るまで現金を回収するめどが立ちません。自社にとって最低限必要な在庫(適正在庫)数 量を決定し、現在どれくらいの余剰在庫を抱えているのかを把握する必要があります。 ■適正在庫の実現ポイント ●現状の在庫を把握する ●在庫管理の仕組みを確立する ●適正在庫を決定する ●余剰在庫は早めの売却・返品等を考える ●毎月正確な棚卸をする ②経費削減の実現 経費は概ね、人件費、外注費、販促費、管理費に分類されます。製造業の場合は、材料 費、労務費(人件費)、外注費、製造経費に分類されます。経費削減の見直しは、次の順番 で行っていきます。 管理費(製造経費)→ 外注費 → 販促費 → 材料費 → 人件費(労務費) 3 経営改善計画書の文章化と実行 自社の現状分析を行い、経営改善の課題が見えてきたら、それを文書化し経営改善計画 書を作成します。 (1)経営改善計画を文書化する 経営改善計画書には特定の書式があるわけではなく、任意の書式で作成します。銀行に 計画実現が可能であることや、経営者の思いを伝えられるよう、しっかりとした経営改善 計画書を作成しなければなりません。記載する具体的な項目は、以下のようなものになり ます。 ●経営改善に向けた決意 ●目標達成のための行動計画 ●経営の問題点 ●財務改善計画 ●経営目標 ●借入返済計画 9 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り (2)実現させてこそ意味をなす経営改善計画 返済条件変更のために、初めて経営改善計画を策定する経営者も多いことでしょう。経 営改善計画策定の目的が、返済条件変更のためになってしまっては意味がありません。な ぜ銀行は、経営改善計画の提出を求めるのか。それは、経営改善計画を実行することで、 銀行は計画終了時に正常な融資先になっていることを期待しているからなのです。経営改 善への取り組みを通じ、企業は高い収益性を実現し、存続・発展への道筋を作ることが出 来ます。 10 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り Ⅳ 銀行の言いなりになってはいけないリスケ交渉 1 リスケ依頼はメインバンクを優先する リスケ依頼のための銀行訪問は、まず自社のメインバンク、次にサブバンクの順番です。 基本的に融資残高の多い順に回りますが、サブバンク以降は相手のスケジュールにもよる ので、順番は気にしなくても大丈夫です。サブバンクは、多くの場合基本的にメインバン クの動向を気にします。メインバンクがリスケジュールに難色を示して応じてくれない場 合、ほかのサブバンクも応じてくれなくなります。そのため、リスケの交渉ポイントは、 まずメインバンクを説得することです。メインバンクが早期に動くように交渉し、その都 度サブバンクに状況報告を行いながら、全体の交渉を進めます。メインバンクが動き出す と、一斉にサブバンクも動き出すというのがリスケ交渉の基本形です。 11 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り 2 日本政策金融公庫に対する交渉 銀行や信用金庫、信用組合という市中金融機関には、全行一律同条件という暗黙のルー ルがあるのですが、日本政策金融公庫は政府系の金融機関という理由から、他の銀行と足 並みを揃えないケースが少なくありません。しかし、日本政策金融公庫のすべての支店が 据え置きに対応しないというわけではなく、対応の方法は支店によって異なるので、注意 が必要です。どの支店にも共通するのは、返済額を1年や6ヶ月ごとに随時交渉するので はなく、5〜10 年くらいの期間を設定し、その間にどのようなスケジュールで返済を行 うのか、初めから返済計画として提出を求めます。 3 書類内容が重視されるリスケ交渉 リスケ交渉は多くの場合、担当者と融資上席の2名が対応します。この時、支店の最終 決裁者である支店長が交渉の場に出てきてくれれば話が早いのですが、会社の規模が大き かったり、その支店にとって取引の大きな会社や業歴が長く支店との付き合いも長い会社 でないと、支店長が対応してくれることはありません。そこで、経営改善計画書の提出が 重要となります。口頭の説明だけでなく、文章にして提出することが非常に重要です。担 当者と融資課長によって、経営者が説明した内容を正確に、支店長へと伝わることはあり ません。そこで、こちらが伝えたいポイントを文書にして渡します。そうすることによっ て、経営者の思いはそのまま支店長に伝わり、本部まで間違いなく伝わります。 4 リスケ交渉にかかる時間と期間 リスケ交渉の時間は、初回であれば 30 分から長くても1時間程度です。担当者が資料 をその場で細かく見ることはないので、こちらからの説明と銀行側からの簡単な質問程度 で終わります。その後、電話での質問に対応したり、再度訪問したりと、必要に応じて対 応は異なります。1回で終わる場合もあれば、複数回訪問する場合もあります。 平均的なリスケ交渉で、提出資料の補足説明や質問への回答などの電話応対や訪問を含 め、少なくとも3〜4回のコンタクトは必要です。 平均的なリスケ交渉の期間は、交渉自体は早ければ1ヶ月で終わります。その後の事務 手続きなど最終的な契約完了までは、2ヶ月ぐらいはかかります。ですが、交渉が難航す ると半年以上もかかることもあります。 12 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り Ⅴ リスケ成功のカギを握るリスケ後の取り組み 1 最優先すべき経営改善 何ヶ月もかけて銀行とリスケ交渉を続け、やっと銀行の承諾が出た途端、多くの経営者 は全ての仕事が終わったような感覚になりがちです。また、リスケを行ったが事業の赤字 が改善できておらず資金繰りが良くならない、という話も良く聞きます。銀行に承諾して もらったリスケ期間というのは、元金返済を減額して資金繰りに余裕を与えてもらい、経 営改善を行う猶予期間なのです。リスケ交渉時において金融機関に提出した経営改善計画 内容を実行し、赤字の状態を黒字に転化する経営改善を最優先にすべきです。 ■経営改善計画を実行に導くポイント ●計画内容の役員・職員への周知徹底 ●進捗管理の徹底 ●実行すべき内容と責任の所在の明確化 ●目標と実績がかい離した場合の修正を機動的に行うこと 2 月次決算による予実管理 月次決算を行い、月次のデータが確定すれば、予算と実績とを比較しその差異原因を調 査します(予算実績差異分析)。また、経営指標を使っての経営分析を行います。予算実績 差異分析とは、事業年度が始まる前に作成した予算と、実際の毎月の結果(実績)を比較す ることです。また、経営分析とは、毎月の経理データの結果から、経営指標(財務諸表上 の数値を一定の算式にあてはめて計算した比率)を計算し基準数値と比べどのような状態 にあるかを確認することです。毎月の経理データがきちんと入力され、月次決算が実施さ れている会社においては、有効な経営改善の手段となります。 3 資金繰り管理と改善 会社の資金繰り管理が徹底できていないと、毎月、現金の収入よりも支出が大きくなる 傾向にあります。経営者の多くは日々の業務に追われ、資金繰り管理を疎かにしがちです。 資金は会社にとって生命線です。その生命線を立ち切らないためには、日々の業務におい ても資金繰りの管理を行なう必要があるといえます。 13 借入返済延滞と リスケジュール対策 資金繰り 4 金融機関への定期的な業績報告 リスケ交渉後、銀行に支援を継続してもらうために、3ヶ月ごと(最低でも6ヶ月ごと) に試算表や資金繰り表などで改善計画の進捗報告を行います。 銀行への進捗報告は銀行のためだけではなく、自社のために行うものです。リスケ後も きちんと状況を報告することによって、銀行も数字をしっかりと把握できます。 また、計画通りに経費の削減ができていなかったり、計画よりも売上が上がっていなく ても、マイナス要因も含めて状況は正直に銀行に伝えます。 一切、銀行に報告を行わず、契約期間の終了間近になって、状況が改善されていないの で再度リスケを頼もうと思っても、銀行は支援体制を継続してくれません。 銀行は進捗確認を行うといっても、実際には銀行側からの連絡はほとんどありません。 経営者自ら銀行に出向き、進捗報告を行わなければなりません。定期的に銀行に進捗報告 を行い、コミュニケーションを密にとることが重要です。 ●リスケ後、3 ヶ月(最低でも 6 ヶ月)ごとに改善計画の進捗報告に出向く ●マイナス要因も隠さず伝える ●銀行からの呼び出しを待たず自ら報告に出向く 14