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外傷センター

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外傷センター
札救会講演会(平成19年6月27,28日)
私が「外傷センター」を
始めようとしたわけ
北海道外傷マイクロサージャリーセンター
土田芳彦
日本の医療レベルは高く、
国民は質の高い医療を享受しています
日本の「救命救急センター」は、
高い救命率を誇っています
日本の「整形外科治療」は、
世界のトップレベルです
しかし残念ながら、
外傷治療体制は十分とは言えません
特に「重度な四肢外傷」は専門の施設
(センター)での治療が必要です
重度四肢外傷をはじめとして、
患者の早期社会復帰を目指すべく、
我々は平成19年4月1日に、
「外傷マイクロサージャリーセンター」
を設立しました
どうして、札幌医大に
設立しなかったかですか?
これには、
難しい問題があるんですよ
それは、のちほど・・・
それでは、
日本の外傷治療の
悲しい事例の一つを
お知らせします
多発外傷症例
初診時
79歳 男性
ISS:27
MESS: 6
Hannover Fracture Scale
髄内釘術後
道路横断中、バスに轢断され受傷
救急搬送
(血行動態安定、GCS15)
合併症:外傷性くも膜下出血
右大腿閉鎖性骨折
初診時
下腿切断術後
緊急手術
※左下腿切断
※右大腿髄内釘固定
手術中より出血性ショック
左下腿開放性骨折
Gustilo
ⅢB/C
:5
傷病経過
12:50
13:37
初診時
受傷
搬送
・・・血行動態安定・意識清明
17:10
くも膜下出血
手術開始
Shock vital !
BT: 35.8℃
血液検査:動脈血 pH 7.218 Hb
7.7
24:30
12時間後
手術終了
・・・出血性ショックの遷延、意識覚
醒せず
血液凝固能破綻・・・頭蓋内出血の増悪
出血の増悪、脳腫脹
世の中には多くの、
避けられた後遺障害があります
それは、
切断、変形、偽関節、麻痺、
などなどです
我々が目指している
外傷医療とは?
20歳、男性、右下腿開放骨折(GustiloⅢB)
自動車乗車中にキツネをかわそうとして横転
搬入時 Shock Vital : responder
合併損傷: 骨盤骨折(lateral compression)
下腿内側後方
25cm長の開放創
筋体の挫滅高度
TA、PTA 触知不可
足底知覚 S1
AO 42 B2
緊急手術
デブリドマン、創外固定(MONO tube)
Gastrocunemius以外の筋体挫滅+++
TP A/Nは連続性あり、その他TA/Perは断裂
遊離広背筋移植:後脛骨動静脈にflow-through
術後5ヶ月
術後1年
外傷治療の目標とは何でしたか?
JPTEC/JATECでさかんに言われている
「避けられた死」の回避
救命は医療の基本です
でも、これだけでは、
問題は解決されないのです
外傷患者と家族の苦悩
・死にゆく悲しみ
・後遺障害をかかえながら
生きていく苦しみ
世の中には多くの、
避けられた後遺障害があります
それは、
切断、変形、偽関節、麻痺、
などなどです
外傷の犠牲者
・事故そのものによる犠牲
・外傷医療による犠牲
さまざまな種類の外傷患者
多発外傷
(体幹臓器外傷)
重度四肢外傷
命が危ない
生活が危ない
単純四肢外傷
外傷統計⇒英国統計から類推(/100万)
(Court-Brown 1997 JBJS)
(体幹臓器外傷)
重度
四肢外傷
単純
四肢外傷
150人
1000人
1万6000人
多発外傷
救命救急センター
整形外科病院
外傷治療とは何でしょう?
・命が救われる
・生活機能が取り戻される
・仕事ができる
後遺障害をなくすことができて、
はじめて外傷医療なのです
命は救われたのでしょうか?
修正PTD/外傷死亡者
20%以下:10施設
65%以上:10施設
(大友康裕ら 2002)
大きな地域間格差と
病院間格差があります
後遺障害はおきていないのですか?
避けられた
後遺障害
多発外傷合併
発生数
(/100万)
100
重度四肢外傷
1000
10−90%
他の整形外科外傷
16000
10%
Court-Brown 1997 JBJS、
土田ら 2004
10−50%
なぜ、このようなことが起きるのですか?
救急医療と外傷医療との相違
専門
リハ
救
各科
病院
命
乏しい病診連携
救
他
施設
急
病院
外傷センター
一貫した治療体制
救急⇒最終治療⇒リハ
時間
イギリスのCourt-Brown博士
はこう述べています・・・
・整形外科外傷治療は実は難しい
・変性疾患の合間に治療
・外傷専門医がいない
・外傷専門施設がない
問題の多い整形外科外傷治療体制
手術数
体制
変性疾患手術
50%
定期
同等あるいは、やや外傷難
かなり少ない
多い
専門施設
ない
あり
術者
見習い医
一般整形外科医
変性疾患専門医
一般整形外科医
見習い医
外傷専門医
<
専門医
<
難易度
外傷手術
50%
緊急・臨時
私を治して
避けられた後遺障害
くれるのは
があることに気づいて
だれ??
いません
患
者
救命救急センター
病院(整形外科)
外傷患者治療のあまりよくない結果に
対して、今のところ社会の目はそれほど
厳しくはありません。しかし、外傷治療を
担っている救命救急センターの管理者
と整形外科治療の管理者が外傷に対
するアプローチを変えなければ、今後、
社会的・訴訟的問題へと発展していくこ
とでしょう。そうならないうちに早く手を
打つべきなのです。
解決策はあるのでしょうか?
日本に夜明けはくるのでしょうか?
外傷医療先進国ドイツを、
覗いてみましょう
日本とドイツの外傷システムの違い
ドイツ
日本
人口
8400万
1億3千万
面積
357,021 sqkm
377,835 sqkm
外傷センター
90
なし
(救命救急センター
多発外傷
/センター/年
外傷手術
/センター/年
100-250
199)
100
(某救命救急センター)
3000-10000
250
(某救命救急センター)
多発外傷
(体幹臓器外傷)
重度
四肢外傷
四肢
単独外傷
外傷センター
救命救急センター
病院(整形外科)
ドイツの外傷 System
Trauma Center Murnau
Prof. Dr. Volker Buren
ほんとにさびしい
こんなところに
外傷センター???
・患者数:11000人程度/年
・搬送形態
ヘリコプター(1300/年)
救急車
自家用車
・ベット数:450
ICU、一般、脳外科、脊損、感染
・巨大なリハビリ施設
勤務医師
外傷外科
脊椎外科
整形外科
ICU
内科
泌尿器科
脳神経、精神科
形成、手の外科
放射線科
麻酔科
39
10
7
24
6
5
18
10
10
23
外傷外科医とは、、、
・一般外科研修(6年)+外傷外科研修(6年)
・腹部外傷と整形外科外傷の手術が可能
・最近外傷外科と整形外科が一緒?
手術室
手術室数
特徴
手術数
10(一般用)+3(感染用)
手術前室、回復室の存在
11000
(95%が整形外科外傷の手術)
脊椎 200−300
脊損 150
骨盤輪 70
寛骨臼 120−130
四肢外傷 7000
巨大なリハビリテーション施設
理学療法士:62 作業療法士:20
プール 2
アーチェリー施設
バスケットボールコート
自動車訓練施設
模擬家庭
まとめ:これがドイツ外傷センターだ
1、外傷センターは過疎地にある
2、walk in患者は来ない(病院は閑散)
3、病棟も閑散(廊下なんか歩いていない)
4、初療室の隣にCT(胸部X線は不要)
5、桁が違う手術数(数千∼1万)
6、手術のほとんどが整形外科手術
7、外傷外科医は40人
8、映画のようなプレゼンテーション
9、病院の中にパブ(患者もビール)
10、入院期間はほとんどが1週間以内
さて、日本では
どうしたらよいのでしょう?
救命救急センターを
外傷センター化しますか?
私も、それが良いと、
思っていました
それを、夢見ていました
でもそれには、
かなり大きな問題がありました
困難な管理者たちの意識改革
厚生労働省
日本救急医学会
日本外傷学会
日本整形外科学会
何が問題かと言うと・・・
制限された治療環境
多い内因性疾患 (外傷だけではないんです)
少ないベット (10-15ベットしかないのです)
少ない専門スタッフ (雇う余裕はありません)
劣悪な手術環境 (外傷専用の環境は望めません)
悲しいリハビリ体制 (本当に狭いのです)
とってもじゃないけど、
無理なんです
まだまだ、問題はあります
・劣悪な環境は経験のある専門家を他へ
・救急外傷の現場は若手医師が支える
考えてもみてください
若手医師とは、未熟な医師のことですよ
知識と経験と技量のある医師が
現場の第一線で働いて、
はじめて外傷医療レベルは保たれるのです
それなら、独立した「外傷センター」を設立
いったい誰が?
厚生労働省の役人は、こう考えてい
ます
「日本には立派な救命救急センターがあ
るではないですか? 実際、どの程度後
遺障害が起きているのです? データを出
してください? 先生方から以外は、そん
な話は聞きませんよ」
だから、考えたのです
民間病院の力で、
大規模機能再建型
外傷センターの設置を
(体幹臓器外傷)
重度
四肢外傷
救命救急センター
機能再建型
外傷センター
多発外傷
四肢
単独外傷
病院(整形外科)
既存の救命救急センターとの
関係はどうするのですか?
多発外傷
(ISS 20>)
重度四肢外傷
・その他
重度多発外傷
(ISS 30<)
機能再建型
外傷センター
既存救命救急
センター
民間病院が「外傷センター」を
構築するには大きな問題が、、
・許容できない不採算医療
・設備や人材投入の困難さ
・立ちはだかる三次選定基準
民間病院における発展段階
たくさん患者さんがやってくる
⇒優秀な医療スタッフをそろえる
⇒もっと、たくさんの患者さんがやってくる
それならば、、
⇒ベットを増やそう
スタッフも増やそう
設備を整えよう、病院を建て替えよう
⇒外国に負けない外傷センターの出来上がり
我々の「外傷センター三段階計画」
第一段階 (∼2008年3月)
四肢外傷センターの確立
重度四肢外傷患者をはじめとして多
くの四肢外傷患者を集約する
⇒スタッフとベットを確保する
⇒ますます、患者を受け入れられる
第二段階(2008年4月∼)
胸腹部外傷患者の受け入れ
⇒多発外傷患者治療ができる
手術症例数が2000<になる
第三段階(2009年4月∼)
インフラの整備を伴い、
本物の外傷センターが構築される
「外傷センター」の治療体制 (2009年度)
①専門スタッフ
外傷整形外科医(10名)、
脳外科医(1名)、一般外科医(2名)、
専門看護師、etc
③専用ベット(50)、④専用手術室(3室)
⑤画像、血液検査部門
⑥ICU管理
⑦リハビリテーション専用施設
⑧共通のプロトコール
まずは、お願いです
重度四肢外傷患者に関して
救命救急センターを
バイパスして下さい
救命救急
センター
高度な
治療レベル
我々の
外傷マイクロ
サージャリー
センター
これは、
患者さんの為です
四肢外傷患者さんの
後遺障害は、
確実に減ります
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