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高精度な位置決め制御可能な 自己組織化ビットパターンドメディア
アドレス領域 磁性ドット 高精度な位置決め制御可能な 自己組織化ビットパターンドメディア サーボパターン領域 サーボパターン領域 データ領域 が,記録再生ヘッドを1.5 nmの位置決 記録再生ヘッド め精度で制御できることを示唆してい 自己組織化 BPM ます。今回の検討で,自然現象を利用 した自己組織化 BPMでも,高精度の 位置決め情報が得られる可能性がある ことがわかりました。 自然現象を利用した配列制御で 大容量 HDD を実現する 有機材料の自己組織化を用いたナノパターニングは, データ領域 サーボパターン領域 図 1.自己組織化 BPM ̶ 記録再生ヘッドの位置決め用サーボパターンと記録 ビットを,ナノインプリント技術と自己組織化ナノパターニング技術で作製します。 図 3.自己組織化 BPM の SEM 像 ̶ 溝のように見えるパターンは 35 nm間隔の磁性ドット(平均サイ ズ28 nm)列で構成されています。 Ni スタンパ ランダムなビット配列でシミュレーション 自己組織化ナノパターニング技術を組み合わせて,ビット レジスト 磁気記録媒体 パターンドメディア(BPM)の作製に取り組んでいます。 ガイド溝 ① ナノインプリント技術で ガイド溝作製 ②自己組織化材料を ガイド溝に充てん 自己組織化ドット ③ガイド溝除去 精度を評価した結果,高精度の位置決め情報が得られる 100 パターニングは,10 nm 以下の微細パ 50 0 250 ④ 磁気記録媒体エッチング 図 2.自己組織化 BPM の作製フロー ̶ ナノインプリント技術でガイド溝を作 製し,そこに自己組織化材料を充てんすることでドットパターンを作製して,こ れをイオンビームエッチングのマスクとして使用します。 得られるかどうかが実用化の鍵になり PES 計算値 ます。精度向上には,自己組織化材料 0 の精製はもちろんのこと,データ領域, サーボパターン領域の両方で配列が乱 理想的な状態 0 500 750 1,000 メディア周方向位置(nm) 可能性があることがわかりました。 デバイスとして動作するための精度が 0.25 PES (任意単位) 現するため,光ディスクや半導体の量産加工プロセスに サーボ信号出力(任意単位) 東芝は,HDD(磁気ディスク装置)の更なる大容量化を実 組織化材料を配列させた BPM を試作し,サーボ信号の 有機材料の自己組織化を用いたナノ ターンを作製できる実力がありますが, 10 nm 以下の微細パターンを作製できる実力があります。 今回,複雑なサーボパターンを含んだガイド溝に自己 今後の展望 100 nm −0.25 70 80 90 100 110 120 メディア半径方向位置(nm) ⒜ サーボ信号 れないガイド溝の設計を進める必要が あります。 当社は,将来にわたってHDD 記録 ⒝ PES 図 4.サーボ信号波形と PES の計算結果 ̶ ドット配列にランダムなモデルを用いたため,サーボ信号 出力は大きくばらついていますが,PES は⒝のように線形性が良く,1.5 nmの位置決め精度で記録再生 ヘッドを制御できる可能性があることがわかりました。 密度のトレンドをけん引し続けていくた め,光ディスクや半導体のプロセス技 術だけでなく,他分野の技術を積極的 構成したサーボパターンがHDDの動作 容量に相当します。 BPM 作製上の課題 に必要な精度を持つかは未知数です。 ングを用いて磁性体を削ることで自己 サーボパターンの特性評価 組織化BPMを作製しました。 ドットサイズ分 散 が 位 置 誤 差 信 号 なおこの研究は,独立行政法人 新エ (PES)にどの程度影響を与えるかをシ ネ ル ギ ー・ 産 業 技 術 総 合 開 発 機 構 BPMは,1ビットの大きさに切り取っ ドットは,自然で安定な格子配列を取 自己組織化技術で作製した磁性ドット た磁性ドットを配列させた記録媒体で, るため,そのままではHDDの記録再生 のサイズばらつきは,サーボ信号出力ノ 図 3 は,作製した自己組織化BPM 従来用いられてきたHDD用媒体と比 ヘッドの位置決めに必要となるサーボ イズに影響し,記録再生ヘッドの高精 のアドレス領域,サーボパターン領域, べ高密度記録した際の記録安定性に優 パターンのように人為的なパターン形状 度動作の阻害要因になると考えられま 及びデータ領域を撮影した低倍率の走 サーボ信号とPESの計算結果を図 4 れているという利点から,HDD 向けの に配列させることが困難です。 す。そこで,サーボパターン領域とデー 査型電子顕微鏡(SEM)像です。拡大 に示します。サイズ分散によってドット そこで東芝は,次世代半導体製造プ タ領域の両方を自己組織化でパターン 図からわかるように,一見溝のように見 ピッチがばらつく最 悪 の場 合として, ロセスとして期待されている“ナノイン 化したBPMを作製して,その信号品質 えるパターンは35 nm 間隔の磁性ドッ ⒜の挿入図に示すようなドット配列が BPMを作製するうえで最大の課題 プリント技術”を用いて,ナノスケール を評価しました。 ト列で構成されています。磁性ドットの 完全にランダム化したモデルを用いまし は,いかにして微細パターンを作製する の凹凸構造を持つニッケル(Ni)スタン 平均サイズは 28 nmで,ドットサイズ た。ランダム配置のため,計算で得ら 分散は16 %でした。ドットサイズ分散 れたサーボ再生波形は,⒜のように信 次世代記録媒体として期待されていま す(図 1)。 自己組織化 BPM の作製 ミュレーションで見積もりました。 かという点です。細かなパターンを作製 パをプレスすることでガイド溝を作製 する技術として,自己組織化を起こす し,そのガイド溝の中に自己組織化材 自己組織化を用いたBPM 作製方法 が大きめの値になったのは,配列制御 号出力が大きくばらついています。しか 材料を用いたリソグラフィが研究されて 料を充てんすることで人為的な配列制 を図 2 に示します。サーボパターンを含 用ガイド幅が最適化されていないため し,この波形から計算したPESは,⒝ んだ配列制御用ガイド溝をナノインプリ と考えています。 のように 線 形性 が良く,線 形 誤 差は おり,サイズとして10 nm 間隔以下の ドットパターンを作製できることが知ら ⑵ 御を行う方法を開発しました 。 次の課題として,記録再生ヘッドの位 ント技術で作製し,そこに自己組織化 今後,データ領域及びサーボパター 置決めに用いるサーボパターンの品質 材料を充てんして,熱処理を加えるこ ン領域のすべてにわたり,ドットサイズ HDDでは,記録再生ヘッドの位置は (テラ:10 )ビット/in の記録密度に が挙げられます。サーボパターンは複雑 とにより,溝に沿って配列したドットパ 分散を小さくできるようにガイド設計を PES 信号によって制御されます。得ら 当たり,2.5型HDDでは12 Tバイトの であるため,前述の自己組織化配列で ターンを 作 製しました。このドットパ 進めていく計画です。 れた結果は,モデル検討ではあります ⑴ れています 。これは単純計算で10 T 12 50 しかし,自己組織化で得られる微細 に導入し,更なる大容量HDD 媒体の実 ターンをマスクとしてイオンビームエッチ 2 東芝レビュー Vol.65 No.10(2010) 現に向けてチャレンジしていきます。 (NEDO)の「超高密度ナノビット磁気 記録技術の開発(グリーンITプロジェク ト)」の支援を受けて実施しました。 文 献 ⑴ ⑵ Park, S., et al. Macroscopic 10-Terabitper-Square-Inch Arrays from Block Copolymers with Lateral Order. Sience. 323, 2, 2009, p.1030−1033. 櫻井正敏,ほか.磁気量子ドットが配列した 次々世代記録媒体“パターンドメディア” .東芝 レビュー.57,12,2002,p.52−55. 1.5 nmと見積もられました。 高精度な位置決め制御可能な自己組織化ビットパターンドメディア 鎌田 芳幸 研究開発センター 記憶材料・デバイスラボラトリー主任研究員 51