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光渦で探る「第二の地球」
2012年11月30日 大学院共通授業科目「トポロジー理工学 特別講義Ⅱ」 光渦で探る「第二の地球」 工学研究院 応用物理学部門 フォトニクス研究室 村上尚史 (A Part of) Drake Equation N = N ∗ f p ne f l f i f c L Ls (Drake, 1961) N : 銀河系内に存在する生命 生命に 生命に適した惑星 した惑星の総数 惑星 N ∗ : 銀河系内に存在する生命に適した恒星の数 f p : そのような恒星が惑星を持つ割合 ne : 生命に適した領域を公転する地球型惑星の数 宇宙は「第二の 第二の地球」であふれている!(かも) How to Observe? そもそも,太陽以外の恒星は, 太陽系のような惑星(系外惑星)をもつのか? 木星 火星 海王星 金星 天王星 地球 1.0 0.4 1.5 5.2 0.7 水星 9.6 土星 19 30 天文単位 (Astronomical Unit, AU ) How to Observe? たくさんあった!!! 現在までに800個以上の系外惑星を発見! 100 100 "The Extrasolar Planets Encyclopaedia (http://exoplanet.eu/)" 惑星質量(木星質量) 10 10 Jupiter 11 Saturn Neptune 0.1 0.1 Uranus ドップラー法 トランジット法 重力レンズ法 直接撮像法 太陽系の惑星 0.01 0.01 Earth Venus 0.001 0.001 Mars Mercury 0.0001 0.0001 0.01 0.01 0.1 0.1 1 100 1000 100 1000 主星からの距離(天文単位) 1 10 10 10000 10000 How to Observe? ~系外惑星観測が 系外惑星観測が困難な 困難なワケ~ ワケ~ 恒星の圧倒的な存在感! 地球 地球と太陽の比較 直径 質量 明るさ 1 : ~100 1 : ~330,000 1 : ~10,000,000,000 太陽が眩しすぎて直接見ることができない 太陽 How to Observe? ~間接法1 間接法1: ドップラー法 ドップラー法~ 惑星(見えない) 恒星 青方偏移 赤方偏移 青方偏移 観測者 赤方偏移 視線速度 時間 How to Observe? ~間接法2 間接法2: トランジット法 トランジット法~ 二次食 トランジット(食) 相対光強度 二次食 トランジット 時間 How to Observe? ~直接撮像法~ 直接撮像法~ コロナグラフ: 眩しい恒星光を除去して,暗い惑星のみを撮像 恒星:眩しい! 惑星: 暗くて見えない 恒星:「消す」 惑星: 消さずに残す 分光器・偏光計など: 惑星光を詳しく分析 How to Observe? ~直接撮像法~ 直接撮像法~ 惑星光を詳しく分析 惑星大気の組成・表層環境に関する知見 生命活動の痕跡(バイオマーカー)が発見されるかも? 大気 (レイリー散乱) 植生 Turnbull et al., Astrophys. J., 644, 551 (2006) 地球照 月 地球 酸素 地球スペクトル 地球スペクトル(「 スペクトル(「地球照 (「地球照」 地球照」スペクトル) スペクトル) 太陽光 Toward a Second Earth 系外惑星が直接撮像されはじめた! 100 100 "The Extrasolar Planets Encyclopaedia (http://exoplanet.eu/)" 惑星質量(木星質量) 10 10 Jupiter 11 直接撮像されている惑星 Saturn Neptune 0.1 0.1 ドップラー法 トランジット法 重力レンズ法 直接撮像法 太陽系の惑星 Uranus 0.01 0.01 Earth Venus 0.001 0.001 Mars Mercury 0.0001 0.0001 0.01 0.01 0.1 0.1 1 1 「第二の地球」に挑む! 10 10 100 100 主星からの距離(天文単位) 1000 1000 10000 10000 Imaging by Telescope コロナグラフに 適した瞳関数 副鏡 瞳関数 瞳関数 主鏡 (屈折式)望遠鏡 (反射式)望遠鏡 Imaging by Telescope 反射式望遠鏡で円形ビームを得る方法 (2)サブアパーチャ (1)軸外望遠鏡 (3)ビーム変換レンズ Fourier Optics 「コロナグラフ」の説明の前に・・・ レンズによるFourier変換作用 入射光波の振幅 レンズ後の光波の振幅 G ( x, y ) g (u, v ) f f Fourier変換 2π (ux + vy )dudv G ( x, y ) = ∫∫ g (u , v ) exp− i λf Angular Resolution 「コロナグラフ」の説明の前に・・・ 望遠鏡の空間分解能 点光源とみなせる天体 > λ D 分解できる 瞳関数 Fourier変換 < λ D Airyパターン λ D 分解できない Angular Resolution 「コロナグラフ」の説明の前に・・・ 望遠鏡の空間分解能 D = 8m λ = 1µm 望遠鏡の空間分解能 ≈ λ D = 1.3 ×10 −7 rad = 7.2 ×10 −6 deg 札幌 札幌から東京の 携帯電話を見込む角度 東京 ~10cm “Classical” Lyot Coronagraph Fourier変換 (FT) (A) 入射瞳面 ~恒星を 恒星を「隠す」~ FT-1 FT (C) 瞳再結像面 (B) 第一焦点面 Ref) Lyot, Mon. Not. R. Astron. Soc., 99, L580 (1939) (D) 最終焦点面 “Classical” Lyot Coronagraph Fourier変換 (FT) (A) 入射瞳面 ~恒星を 恒星を「隠す」~ FT-1 FT (C) 瞳再結像面 (B) 第一焦点面 恒星を「隠す」 (D) 最終焦点面 リオストップ(周縁光を除去) “Classical” Lyot Coronagraph ~恒星を 恒星を「隠す」~ 最終焦点面での像 (c) (b) (a) 10-4 10-8 11 'RADI_ClassLyot(woOMwoLS).dat' Simulation by N. Murakami 'RADI_ClassLyot(r2wzLS).dat' 'RADI_ClassLyot(r8wzLS).dat' (a) 掩蔽板なし (b) 半径2λ/Dの掩蔽板 (c) 半径8λ/Dの掩蔽板 0.1 Normalized intensity 規格化光強度 -2 0.01 10 0.001 -4 0.0001 10 1e-005 -6 1e-006 10 1e-007 -8 1e-008 10 1e-009 「第二の地球」像 -10 10 1e-010 00 55 10 10 15 15 20 20 25 25 Distance [lambda/D] 中心からの離角 (λ/D単位) 30 30 35 35 From “Classical” to “Advanced” Coronagraph 「光渦」を利用したコロナグラフ: 光渦コロナグラフ 恒星を「隠す」から「消す」へ 光渦 (波面が螺旋状) 平面波 位相分布(一定) 位相分布 0 Ref) Foo et al., Opt. Lett., 30, 3308 (2005) /Mawet et al., Astrophys. J., 633, 1191 (2005) 2lπ l: トポロジカルチャージ “Advanced” Coronagraph ~恒星を 恒星を「消す」~ FT-1 Fourier変換 (FT) (A) 入射瞳面 FT (C) 瞳再結像面 (B) 第一焦点面 (D) 最終焦点面 Ref) Foo et al., Opt. Lett., 30, 3308 (2005) /Mawet et al., Astrophys. J., 633, 1191 (2005) 0 掩蔽マスク:恒星を「隠す」 2lπ 光渦マスク:恒星を「消す」 “Advanced” Coronagraph ~恒星を 恒星を「消す」~ 第一焦点面マスクの例 掩蔽マスク 光渦マスク (チャージ2) 0 4π 瞳再結像面での像 瞳内部の光強度≠0 光渦マスク (チャージ4) 光渦マスク (チャージ6) 0 8π 0 12π 偶数トポロジカルチャージで恒星を完全消去 瞳内部の光強度=0 “Advanced” Coronagraph ~恒星を 恒星を「消す」~ 光渦マスクの「離散化」・・・製作が容易に 離散光渦マスク (分割数 N=12,設計チャージ ldes=4) 2π/3 4π/3 0 2π/3 4π/3 0 4π/3 2π/3 0 マスク関数の 「Fourier級数展開」 = Fourier係数 0 4π/3 2π/3 l= -8 … + a−8 × 16π 0 ldes= 4 +a 4 l= 16 × Ref) Swartzlander Jr., J. Opt. A: Pure Appl. Opt., 11 (2009) 0 8π + a16 × 0 32π l= 28 +a 偶数チャージ成分のみ 28 × +… 0 56π “Advanced” Coronagraph ~恒星を 恒星を「消す」~ 光渦マスクの「離散化」・・・位相の2値化(製作がさらに容易に) 離散光渦マスク 8分割位相マスク (分割数 N=8,設計チャージ ldes=4) π 0 0 π π 0 0 マスク関数の 「Fourier級数展開」 = π l= -4 … + a− 4 × 8π 0 l= 12 ldes= 4 +a 4 × 0 8π Ref) Murakami et al., Publ. Astron. Soc. Pacific, 120, 1112 (2008) +a 12 × 0 24π l= 20 +a 偶数チャージ成分のみ 20 × +… 0 40π “Advanced” Coronagraph ~恒星を 恒星を「消す」~ 第一焦点面マスク 4分割マスク 掩蔽マスク 8分割マスク 12分割マスク (設計チャージ2) (設計チャージ4) (設計チャージ6) π 0 π π 0 瞳再結像面での像 瞳内部の光強度≠0 0 π 0 π π 0 0 π 0 π π 0 0 π 0 0 π 0 設計チャージ ldes=N/2で恒星光を完全消去 瞳内部の光強度=0 Ref) Rouan et al., PASP, 112, 1479 (2000) /Murakami et al., PASP, 120, 1112 (2008) /Carlotti et al., A&A, 504, 663 (2009) π How to Fabricate? 連続 & 離散化光渦マスクをどのように製作? 波長依存性のないマスク 広い波長域を一度に観測 惑星からのフォトンをたくさん集める 惑星の分光測定が可能 光渦マスク 8分割位相マスク π 0 2lπ 0 0 π π 0 0 π How to Fabricate? 複数材料の使用 ある程度改善 誘電体材料による位相変調 π π 0 n 位相差π 0 最適な誘電体板の厚み 波長に依存 d= d λ 2(n − 1) Mask Manufacturing 試作マスク,紹介の前に・・・ 両極: 円偏光 赤道上: 直線偏光 その他: 楕円偏光 偏光と,そのポアンカレ球表示 偏光状態を球上の1点に対応させる表示法 S3 直線偏光 円偏光 S1 S2 Mask Manufacturing 試作マスク,紹介の前に・・・ 半波長板: 直交する直線偏光間に λ/2 の 位相差を与える 速軸 半波長板 1/4波長板: 直交する直線偏光間に λ/4 の 位相差を与える 遅軸 速軸 1/4波長板 λ/2 遅軸 λ/4 Mask Manufacturing 試作マスク: SVBOE (Space-Variant Birefringent Optical Element) 空間的に速軸方位が変化する半波長板 8分割位相マスク (8分割半波長板) 1µm 速軸方位 π 2枚の偏光板に挟んで撮影 0 π 0 0 π 0 π 50µm 周期的ナノ構造をもつフォトニック 結晶(光学異方性を有する) θ Murakami et al., Astropys. J., 714, 772 (2010) 5mm 速軸方位 Murakami et al., Opt. Express, in press (2013) Manufactured by Photonic Lattice Inc. 光渦マスク (軸対称半波長板) Pancharatnam Phase 試作マスク: SVBOE (Space-Variant Birefringent Optical Element) 空間的に速軸方位が変化する半波長板 “幾何学的”位相 (Pancharatnam位相): 偏光状態の循環的な変化に伴うトポロジカルな位相 Eeiδp 偏光状態: ポアンカレ球上を一周 球の中心に張る立体角 Ω 位相変化 δp = Ω/2 (偏光変化にのみ依存) Ω 光波振幅 E Achromatic Coronagraph Masks 右円偏光子 「波長非依存」光渦マスク 偏光子 (0o) 1/4波長板 (45o) 左円検光子 1/4波長板 偏光子 (-45o) (90o) 入射波 (平面波) 軸対称半波長板 偏光子 (0o) 光渦 (チャージ l=2) o 偏光子 (90 ) π 入射波 (平面波) 0 8分割半波長板 π 0 0 π π 0 「波長非依存」8分割位相マスク Laboratory Demonstrations 瞳再結像面での像 波長非依存性を実証 光渦マスク 光渦マスク( マスク(トポロジカルチャージ =2) Simulation 8分割位相 分割位相マスク 位相マスク Simulation Experiment (λ=532nm) 瞳内部の光強度=0 Experiment (λ=532nm) Murakami et al., Opt. Express, in press (2013) Experiment (λ=633nm) Ref) Murakami et al., Astropys. J., 714, 772 (2010) Experiment (λ=633nm) Laboratory Demonstration of 8OPM Coronagraph 11 最終焦点面での像 0.1 (上)コロナグラフなし コロナグラフなし,( なし,(下 ,(下)あり Contrast @ 5λ λ/D 'RADI_DPSS_IM_Bright.dat' λ=532 nm 'RADI_HeNe_IM_Bright.dat' -7 'RADI_DPSS_IM_Null_60sec.dat' λ=633 nm 'RADI_HeNe_IM_Null_120sec.dat' -7 7x10 (λ λ=532nm) 4x10 (λ λ=633nm) λ=543nm λ=543nm λ=633nm λ=633nm 規格化光強度 -2 100.01 0.001 コロナグラフなし -4 0.0001 10 1e-005 1e-006 10-6 1e-007 コロナグラフあり 1e-008 10-8 00 55 10 10 15 15 20 20 25 25 中心からの離角 (λ/D) 斑点状の消し残し・・・ 「スペックル」 Murakami et al., Astropys. J., 714, 772 (2010) 30 30 Speckle Problem 「スペックル」は何故生じるか? コロナグラフ=入射光波の平面波成分を除去 乱れ成分は除去できない 残留スペックル発生 入射光(平面波) Ein = E0 (Const.) コロナグラフ Eout = C [E0 ] = 0 入射光(乱れた波面) コロナグラフ演算子 Ein = E0 e iφ ≈ E0 + iE0φ コロナグラフ Eout = C [E0 ] + iC [E0φ ] = iC [E0φ ] スペックル Speckle Problem 光波を乱す要因: 光学素子(ミラー・レンズなど)の面精度 平面波 平面波 平面波 理想的なミラー (つるつる) 波面が乱される 現実のミラー (ぼこぼこ) 光波面誤差の許容量 ~λ/10,000 rms (~60 pm for λ=0.6 µm) 「極限」補償光学が必要: 光波面を測定し,平面波へ補正 Adaptive Optics 補償光学: 補償光学 光波面を測定し,平面波へ補正 乱れた入射波面 補正された波面 (平面波) 可変形鏡 惑星検出 コロナグラフ サイエンスカメラ 波面測定 光波面センサ コロナグラフ用「 「極限」 極限」補償光学: 補償光学: 惑星検出と波面測定を同一の検出器で行なう High-Contrast Imaging Testbed (HCIT) HCIT (@ジェット推進研究所) NASAが開発した最先端コロナグラフシミュレータ 真空チャンバー, 極めて安定な環境 極限補償光学を搭載 様々なタイプのコロナグラフのテストが可能 下図: HCITで達成しているコントラスト 10-7 PIAA法 (2) ベクトル渦マスク法 (2.5-7) (2.75-6.3) コントラスト 8分割マスク 分割マスク法 マスク法 (2.7(2.7-7) 10-8 (2.5-12) バイナリ瞳法 (4-10) 木星/太陽強度比 10-9 バンド制限マスク法 (3-15) 地球/太陽強度比 10-10 0 10 スペクトルバンド幅 ∆λ/λ0 (%) 20 ※ 数字は,コントラストを測定している離角(恒星 モデルからの距離)をλ/D単位で表したもの High-Contrast Imaging Testbed (HCIT) 得られた8OPMコロナグラフ像: 中心波長 λ0=800nm,波長幅 ∆λ=160nm 「バンド幅」 λ0/∆λ=20% 惑星探査の外側限界 惑星探査の内側限界 10-5 36 λ0/D 規格化光強度 (対数スケール) 恒星モデル の位置 10-8 極限補償光学により 残留スペックル スペックルを低減 (惑星探査領域) コントラスト ~10-8 50 λ0/D Murakami et al., Proc. SPIE, 8442, 844205 (2012) レポート課題 レポート課題 以下のいずれかを選択し,本講義の感想と併せてA4用紙1~2枚 にまとめて下さい。 1. 天体観測機器を一つ調べて,説明して下さい (できれば,最新技術を搭載したもの)。 2. 光渦の応用例を一つ調べて,説明して下さい。