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フェアトレードと消費者行動

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フェアトレードと消費者行動
2004/12/4
フェアトレードと消費者行動
∼コーヒー市場からの分析∼
五大学環境経済交歓セミナー発表論文
日時:2004 年 12 月 11,12 日
場所:代々木オリンピックセンター
一橋大学経済学部
寺西(第 23 期)・山下(第1期)合同ゼミ
フェアトレード班
大川 佑
太田 沙織
高橋 律仁
服部 清夏
山内 歩
米原 陽介
目次
0.はじめに...................................................................................................... 3
1.フェアトレードとは .................................................................................... 5
1−1.定義..................................................................................................................... 5
1−2.歴史..................................................................................................................... 6
1−3.フェアトレードの国際組織について................................................................... 6
2.フェアトレードコーヒーについて ............................................................ 10
2−1.コーヒー市場の現状とフェアトレード ............................................................. 10
2−2.ヨーロッパの現状 ............................................................................................. 14
2−3.日本の現状........................................................................................................ 18
3.マーケットシェア拡大への取組み ............................................................ 20
3−1.ヨーロッパでの取組み ...................................................................................... 20
3−2.日本での取組み................................................................................................. 24
4.日本の消費者行動の傾向........................................................................... 26
4−1.グリーンコンシューマリズム ........................................................................... 27
4−2.近年の消費者意識 ............................................................................................. 29
5.コーヒーに対する消費者行動の実証分析.................................................. 33
5−1.フェアトレードコーヒー取扱い店舗へのアンケート調査 ................................ 33
5−2.消費者に対して行った意識調査と結果分析...................................................... 37
6.結論 ........................................................................................................... 48
7.今後の課題 ................................................................................................ 49
8.おわりに.................................................................................................... 51
参考文献 ........................................................................................................... 53
巻末資料 ........................................................................................................... 56
2
0.はじめに
フェアトレード(Fair Trade)は、1900 年代半ば頃から欧米で始まった活動であり、元々
は経済的、社会的に立場の弱い生産者に対して、通常の貿易よりも高めに設定した価格で
継続的に商品を取引し、途上国の生産者の自立を目指すものであった。現在では、このよ
うな人道的側面だけではなく、持続的発展という、経済的、社会的、環境的要素が概念と
して取り入れられるようになっている。ヨーロッパでは、早くからフェアトレード運動が
活発で、消費者運動とも相まって、フェアトレード商品がスーパーに並ぶなど現在では消
費者の間に広く認知されている。日本でも 1980 年代後半から 1990 年代にかけて、フェア
トレード団体が設立されたり、新聞やテレビなどのメディアに取り上げられたりと、フェ
アトレードが少しずつ社会に広まりつつある。しかし、依然として日本ではフェアトレー
ドに対する認知度は欧米に比べかなり低く、フェアトレード商品の売り上げも、先進国の
中ではかなり低いレベルである 1。
そこで、この論文ではフェアトレード商品、特にフェアトレードコーヒーのシェアが日
本で小さいのは何故なのか、そしてこれからシェアを拡大させていくためにはどうしたら
いいか、を消費者行動との関係を通じて論じたいと思う。ヨーロッパでは、フェアトレー
ド商品がスーパーに置かれるように消費者が行動を起こすなど、消費者側からの運動が行
われてきたという経緯がある。一方で、日本では、生協運動のように普段買う商品に対し
てその背景や安全性を問う動き自体は存在するが、フェアトレードを推進するような目立
った消費者運動といったものはほとんど見られない。それでは、日本の消費者はどんな視
点で商品を選んでいるのだろうか?そしてこれから日本でより多くの消費者がフェアトレ
ード商品を選ぶようにするためにはどうすればいいのかだろうか?この論文ではこの問い
に答えながら、今後フェアトレードコーヒーを始めとしたフェアトレード商品が日本でシ
ェアを伸ばしていくために必要な点を明らかにしていきたいと思う。
この論文では、食料品、衣料品、雑貨、工芸品など、様々なフェアトレード商品の中で
コーヒーを中心に扱う。フェアトレード商品の中でコーヒーを選択した理由は、フェアト
レードコーヒーがフェアトレード商品の中でその歴史が比較的長く、また売上げの中で大
きなシェアを占めること、ヨーロッパやアメリカ、日本など、様々な国で売られていて各
地域間の売上げの傾向などの比較が可能であること、衣料品や雑貨のような品物の種類に
対する嗜好のばらつきがないこと、最近大手コーヒー会社やスーパーで販売が始まるなど、
日本でこれから最も売上げの伸びが期待されていることなどが挙げられる。また、この論
文で扱う「フェアトレードコーヒー」とは、IFAT に加盟している、またはその基準を満た
していると判断できるフェアトレード団体が「フェアトレードコーヒー」として販売して
いるものと、IFAT には加盟していない企業や団体が、FLO の認証を受けて「フェアトレー
ドコーヒー」として販売しているものを指す。IFAT、FLO については第1章で詳述する。
3
まず第1章では私たちがテーマとして扱うフェアトレードについて、その定義や歴史、
意義などを簡単に述べる。フェアトレードの定義や歴史については、様々な捉え方が可能
であるため、ここで論文の前提となる私たちのフェアトレードというものに対する見方を
まとめておく。そして第2章では、コーヒー市場における生産者の窮状を明らかにした上
で、日本とヨーロッパのフェアトレードコーヒーに関する現状を概観する。ヨーロッパと
日本ではフェアトレードコーヒーの歴史も市場規模も異なるが、その中でフェアトレード
コーヒーがそれぞれの国でどのように社会に認知されているか、どの程度普及しているか
などを見た上で、日本とヨーロッパのフェアトレードコーヒーの現状の違いを捉えるのが
ここでの目的である。第3章では、日本とヨーロッパのフェアトレード商品マーケットシ
ェア獲得に対する取組みに着目し、どのような取組みがマーケットシェア拡大につながっ
ているかを、いくつかの事例から探っている。第4章では、日本の消費者行動の傾向につ
いて、グリーンコンシューマリズムとの関係や、先行研究、マーケットリサーチの結果な
どから現状把握を試みる。さらに、そこで得られた結果から日本の消費者の意思決定に影
響を及ぼす要因を分析し、現在のフェアトレード商品に対する消費者の購買行動を予測す
る。ここまででフェアトレードコーヒーと消費者行動について一定の現状把握をした上で、
第5章以降では、フェアトレードコーヒーに対する消費者の購買行動の実証分析を行う。
調査内容としては、フェアトレードコーヒーを扱っている店舗の方へのフェアトレードコ
ーヒーの取扱いの現状や、消費者の反応などについてのアンケート調査と、学園祭でフェ
アトレードカフェを出店し、そこに来店した客に対するフェアトレードコーヒーに関する
アンケート調査である。これによって、消費者のフェアトレードに対する意識や、フェア
トレードコーヒーのシェアを拡大するための方法を、コーヒーの売り手側と買い手側それ
ぞれの視点から探ろうとするものである。文献調査とアンケート結果から言えることは、
フェアトレード商品の質や流通方法を消費者のニーズに見合ったものにしていくことが必
要であること、オーガニック市場などニッチ市場への進出に可能性があること、価格と質
のバランスを見直すことで消費者の購買行動に影響を与えられることの 3 点であり、第7
章でこの論文において問題としたフェアトレードコーヒーのシェア拡大へ向けた今後の課
題と可能性を明らかにして、論文を総括したいと思う。
フェアトレードの商品は、環境に配慮した商品や有機農産物のように健康に配慮した商
品などと同様に、商品の背景や、商品ができるまでの過程を重視している。しかし、フェ
アトレード商品は、その過程で消費地の環境や、消費者の健康に配慮しているかだけでは
なく、生産者の生活や環境にも配慮しているかを重視しているという点で評価できる。そ
ういった意味で、私たちはこの論文ではフェアトレードを支持する立場に立って議論を進
めたいと思う。これまで、日本でフェアトレードについて書かれた論文自体あまり多くな
いのだが、日本におけるフェアトレード商品の売上げやシェアと、消費者の購買意識や購
買行動というものの関係を実証したものは数少ないと考えられ、その意味でこの研究は意
義があると考える。今後この調査の内容が少しでも日本でのフェアトレードの普及に役立
4
てば幸いである。
1.各国のフェアトレード商品販売量(フェアトレードラベルのついたもののみ)
(出典:フェアトレード・ラベル・ジャパンHP)
1.フェアトレードとは
1−1.定義
「フェアトレード」の定義については、一義的に捉えることは困難であり、活動が世界
的になった今では、その目的や理念は様々である。最も一般的なものとして取り上げられ
るのは、フェアトレードの国際ネットワークである IFAT(International Federation for
Alternative Trade:国際フェアトレード連盟)が定めた以下のような基準 2 である。
1.経済的に不利な立場にいる生産者に機会を提供する
2.事業の透明性と説明責任
3.生産者の資質向上に努める
4.公正な対価を支払う
5.ジェンダー間の平等
6.労働条件への配慮
7.環境への配慮
8.フェアトレードの推進
9.フェアトレード商品は、FLO の認証ラベルまたはフェアトレード団体が扱う商品
であることによって認定される
5
この基準は、IFAT に加盟する約 60 か国 200 団体 3 によって定められたものであり、こ
の基準を守って活動している組織が「フェアトレード団体」として公式に認められる。し
かし、中には IFAT に加盟せず、独自の理念を持って活動している団体も存在する。それら
の団体は、自分たちの活動を「シェアトレード」や「民衆交易」と表現するなどして、フ
ェアトレードとは一線を画しているが、他のフェアトレード団体と対立することはなく、
協力関係にある。この論文では、これらの団体も IFAT の定める基準を守っているとみなし
てフェアトレード団体として取り扱う。
1−2.歴史
フェアトレードの歴史についても、その定義と同様に統一された見解は出ておらず、1940
年代にアメリカのメノナイト系協会が始めたという説や、同時期にアメリカの NGO が「オ
ルタナティブ・トレード(もう 1 つの形の貿易)」として始めたという説、また 1964 年に
イギリスの NGO であるオックスフォード飢餓救済委員会(OXFAM)が開始した「ブリッ
ジ計画」が始まりであるという説など様々である。これらの活動はいずれも、当初は途上
国への人道的な開発支援活動として始められたという点では共通している。すでに途上国
から物品を購入し、販売するという形をとってはいたものの、自立のためには経済問題の
解決が重要であると認識し始めるのは 1960 年代後半であった。その後、1970 年代後半か
ら 1980 年代前半にかけては、新左翼運動など社会構造の変革の動きが見られ、フェアトレ
ードは生産者の状況や情報を付加し、消費者の理解を広げるものとして、環境問題や女性
問題、南北問題などに対する 1 つのオルタナティブと捉えられた。1980 年代、フェアトレ
ードは次第にビジネスとしての広がりを見せたが、一方でフェアトレードの理念を尊重す
るあまり、財政破綻する団体が出始めるなどの問題も出てきた。これらの経験を経て、生
産者を含め、資本を規模に合わせて充実する必要性が認識され、それ以後、必要とされる
分野の専門性を深めるプロフェッショナル化への動きがでてくるようになった。また一方
で、1988 年にオランダで始まった「マックス・ハベラー計画」4 に代表されるような一般
市場への拡大を目指したラベリング運動も始まった。こうした活動内容の多様化から、フ
ェアトレードに関して統一した基準が必要であると考えられるようになり、1989 年には、
IFAT が設立された 5。1990 年代以降、フェアトレードはより多様化、プロフェッショナル
化、ファッション化され、2000 年代に入った現在でもフェアトレードの市場は拡大傾向に
ある。
1−3.フェアトレードの国際組織について
ここでは1−1で少し触れた、フェアトレードの国際組織である IFAT と FLO、そして
6
その他いくつかのフェアトレードに関連する国際組織について紹介したいと思う。
IFAT
IFAT は、1989 年に設立されたフェアトレード団体の国際ネットワークである。80 年代
からの活動の広がりに伴い、団体同士の協力と、フェアトレードに関する統一の基準が必
要であるというフェアトレード団体の認識から、設立にいたった。主な役割は、フェアト
レード基準を定め、それを遵守している団体を認証することである。2 年に 1 回行われる総
会では、フェアトレード全体に関する会議、デザインやマーケティングのワークショップ
などが行われ、各団体がフェアトレードの推進や共通の課題を解決することを目指して活
動している。IFAT では、先進国側の団体と、途上国の生産者団体が対等に話し合うことが
できるため、団体同士のマッチングの場としての役割も持っている。IFAT は、ILO
(International Labor Organization:国際労働機関)への正式オブザーバー資格を持ち、
WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)への参加も認められているため、定期
的に代表を送り、メンバーの意思を反映している。既述したように、2004 年 8 月現在、約
60 か国 200 団体が加盟しており、日本では「ネパリ・バザーロ」、
「ピープルツリー/フェ
アトレードカンパニー株式会社」、
「ぐらするーつ」の 3 団体が加盟している。
FLO
FLO は、1997 年に設立された、フェアトレード商品の認証ラベリング運動を行う団体の
ネットワークであり、世界的規模で最も大きな国際的、社会・経済的基準認定組織の 1 つ
である。フェアトレード商品へのラベリングに向けた動き自体は、1988 年にオランダで「マ
ックス・ハベラー(Max Havelaar)運動」として始まり、その後 1992 年にドイツで「ト
ランスフェア(Transfair)」という認証が生まれるなど、次第に各国でラベリング運動が行
われるようになった。この背景には、スーパーなど一般の小売店にもフェアトレード商品
が置かれるようになり、他の製品との差別化するためや、模倣品などと区別することが必
要となったことがある。ラベリングによって、フェアトレード商品の差別化が図れると同
時に、一般の業者がフェアトレード商品を扱うことが可能となった。また、消費者もラベ
ルによってフェアトレード基準が守られていることが保障されるので、これまでフェアト
レード専門店に行かなければ買えなかった商品を一般の店でも買えるようになり、より簡
単にフェアトレードに参加することができるようになった。こうして各国で様々なラベル
が登場する中、1997 年に 17 か国のフェアトレード組織が統括組織として FLO が設立され
た。
日本でも、1993 年にいくつかの市民団体(NGO)と教会組織が集まって「トランスフェア
ジャパン」を設立し、2003 年に世界共通の新しいロゴ 6 が採用されたのに伴い、2004 年 2
月に「フェアトレード・ラベル・ジャパン」に名称を変更、NPO 法人化している。
FLO の主な仕事は、その独立した権限によって、製品に社会的・経済的発展性のあるこ
7
とを認定し、それによってフェアトレードラベルに信頼性を与えることである。ラベルを
認定するためにはいくつかの基準があり、生産者、貿易業者、加工業者、卸売業者、小売
業者それぞれが守るべき基準や、いくつかの製品別に守られるべき最低限の質、料金、処
理方法などを定める個別のフェアトレード基準が存在する。
FLO のフェアトレード規格は、コーヒー、紅茶、チョコレート、砂糖、蜂蜜、バナナ、
マンゴーなどの果物、ドライフルーツ、フルーツジュース、米、ナッツ、香辛料、ワイン、
綿製品、ジャガイモやえんどう豆などの野菜、サッカーボールに定められており、さらに
現在、パパイヤなどのトロピカルフルーツ、オリーブ、エビなどの魚介類、その他の熱帯
産の日用品に対する規格が定められようとしている。
2004 年現在、FLO に加盟しているのはヨーロッパ各国、アメリカ、カナダ、日本合わせ
て 17 か国であり、アフリカ、アジア、ラテンアメリカを中心とする約 40 か国 274 の生産
者団体が生産者登録されている。FLO に認可され、フェアトレードラベルを製品に表示し
て販売するライセンスを持っている業者は加盟国全体で 416 団体、日本のみでは 14 団体存
在する。
その他の組織
EFTA(European Fair Trade Association ):
1990年に12の輸入団体、9カ国でスタート。EFTAメンバーによる売り上げは1億
ユーロをこえ、その殆どは世界ショップや連携団体による。
EFTAは書類の発行と団体会議などにより、メンバー間の情報交換とネットワーキ
ングによって活動している。また、メンバーのプロジェクトやデータ収集などに
協力している。ブリュッセルにある、キャンペーンオフィスではEUの機関の一つ
となり、商業や政治的意思決定にフェアトレードの意見を反映させることを目指
している。
News! (Network of European World Shops):
1994年に欧州統合の動きを受けて、ヨーロッパレベルでのフェアトレードショッ
プの同士の協力を目的として設立された。現在2700以上の店舗、13カ国からなっ
ている。NEWS! はメンバー間の情報提供(ニュースレター、ホームページ、ワー
クショップなど)を手助けしネットワーキングや協力関係を築いている。また、2
年ごとの店舗会議も開いている。また、ヨーロッパ中のキャンペーン活動を展開、
協力しメンバーに必要な物品提供や情報交換や啓蒙活動、政治的働きかけなども
行っている。
FTF(Fair Trade Federation):
1994 年に設立。北米地域を中心に活動するフェアトレード輸入業者、卸売業者、
小売業者、そして生産者の貿易団体であり、この団体は世界中の経済的不利な職
人や農民に対しての良い雇用機会と公正な賃金の提供に力を注いでいる。FTF
8
はまた、フェアトレード情報に関しての情報センターの役割を果たし会員(メン
バー)に対してリソースやネットワークに対する機会を提供している。
FTA(Fair Trade Association):
2003 年に設立。オーストラリアとニュージーランドのフェアトレード団体の連盟。
これらのうち、FLO、IFAT、News!、EFTA の 4 つのネットワーク組織は、FINE グルー
プと呼ばれ、協力関係にある 7。その他の組織についても、共同で市場調査を行うなど、FINE
グループらと連携して活動している。
3.
IFAT の HP に載っていたものを和訳した。2004 年 11 月 8 日現在。
4.
辻村英之,2004
5.
ネパリ・バザーロ HP より
6.
7.
新ラベル
従来のラベル
※現在は新旧のラベルが併用されている。
FINE グループに関するデータ
ヨーロッパにおける国際フェアトレード団体
FLO
創立
メンバー
の種類
国内メン
バー数
IFAT
1997
ラベリング団体
NEWS!
1989
EFTA
1994
生産者団体
ワールドショップ
オルタナティブ貿
ワールドショップ
易団体
連盟
1990
輸入団体
17団体17カ国
148団体48カ国 15団体13カ国
12団体9カ国
14団体14カ国
42団体13カ国
メンバー全て
メンバー全て
ボン
オックスフォード
ユトレヒト
マーストリヒト
ドイツ
英国
オランダ
オランダ
ヨーロッ
パメンバ
ー数
本拠地
9
(出典:EFTA
HP より引用)
2.フェアトレードコーヒーについて
2−1.コーヒー市場の現状とフェアトレード
コーヒーについて
コーヒーはもう何世紀もその味と質において、人類の生活に深く根付いている。現在で
ももっとも主要な農産物の一つであり、発展途上国の重要な外貨獲得手段となっている。
例えば、エチオピアの外貨獲得手段の54%がコーヒーに頼るものである。しかし、2001
年国際市場におけるコーヒーの値段は歴史的に低くなりそのような国や農民の生活に深刻
な影響を及ぼしている。現況では生産者より仲買人がコーヒーの収穫によって収益を上げ
ているという状況である。
コーヒーには2つの種類がある。アラビカ種はマイルドな味である。また生産が難しく、
収穫も天候に左右されやすいため高価である。その遠縁にあたるローバスタ種は主にイン
スタントコーヒーや強い焙煎に使用される。コーヒーはもともとエチオピア起源だといわ
れているが、現在では50以上の熱帯国、12以上の亜熱帯国で生産されている。これは1070
万ヘクタール程の熱帯付近の地域で、700万トンの生産量を誇っている。コーヒーは2000
万人以上の農民の生活の糧になっていて、その3分の2以上がわずか5ヘクタール以下の土地
で生産を行っている。コーヒーが無くてはこれらの農民は最低限の農業しか営めないだろ
うと思われる。世界中で推定1億人の人々(ほとんどが発展途上国)がコーヒーの生産、製
造、貿易、小売など何らかの形で生活を営んでいる。発展途上国にとってコーヒーは依然
として自国経済にとって重要な役割を担っており、現在のような低価格でも最も重要な一
次生産物であり、貴重な外貨資源である。コーヒーはエチオピア、ウガンダのような国で
は外貨資源もの半分を稼ぎ出しており、ルワンダ、ニカラグア、エルサルバドル、ホンジ
ュラスでは4分の1の外貨資源となっている。これらの国によって世界市場におけるコーヒ
ーの価格が国の社会や経済発展にとても重要となるのである。また、数百万の小規模の農
民はコーヒーで生計を立てている。フェアトレード団体はこのような人々、この貴重な植
物を実際に栽培する人たちの生活をより公正なものにするためにある。
10
この図は 2000 年における
コーヒーの売り上げ(US
$)とコーヒーが輸出に占
める割合を示している。
(出典:世界銀行「World Development Indicators 2000」)
コーヒー市場における歴史と特性
コーヒーの価格は 1997 年の突然の値上がり以降、低調である。1999 年の終わりにいく
らかの改善が見られたが、全体的に見れば悪化の一路をたどっている。2001 年 10 月には
1ポンドあたり US40 セントという歴史的に低い価格となった。これは、コーヒーの生産
コストよりも低い価格である。これにより、数百万の小規模なコーヒー農家は大打撃を受
けた。
下の図は 1989 年∼2002 年間のコーヒーのニューヨーク市場の価格とフェアトレードに
おける価格を示すものである。
11
(出典:Fairtrade Foundation 「New York Coffee, Cocoa & Sugar Exchange」 )
過去 15 年間において、コーヒーの世界市場を取り巻く動きは大きく変動している。国際
的に取り決められた割当て同意が破棄され、またコーヒー有力生産国としてベトナムの出
現が市場を大きく変動させた。供給過多となると、購買人が支配的権力を握り価格は急落
した。
レーガンの貿易自由化政策による圧力により、国際コーヒー協定は 1989 年 7 月 4 日に廃
止された。この協定は生産国と消費国の間で結ばれていて、コーヒー豆の供給に市場割り
当て制度を採ることで制限をかけ、価格をある程度安定させることに成功していた。しか
し、協定廃止により、生産者は収穫直後の価格が最低基準にあるときに売る必要性がおき、
在庫のダンピングが行われた。これにより、それまで保たれていた価格コントロールがで
きなくなった。
また、ベトナムのコーヒー産出国としての成長はこの状況をより悪化させた。ベトナム
は現在世界の10%のコーヒー生産量を誇っている。これにより、良質なアラビカ種の価
格も、ローバスタ種の供給の増加、価格の低下とともに急激に下落した。
生産国はまた、国によるコーヒー政策団体を解散させた。これらの団体はそれまで生産
計画を手助けし、小規模の農民と市場を結ぶ役割を果たしていた。結果、コーヒー生産に
よる助成金やサービスは削減され、私的な輸出団体が貿易の主役として登場した。この多
くの場合、コーヒー輸出による税金はカットされた。このため、当初農民はコーヒー豆に
関して輸出価格で受け取ることができたが、マーケットの崩壊とともにそのような利益は
消え去った。そして、コーヒー生産の規模にかかわらず、彼らは国際市場の変動の影響を
12
直に受けることになった。
残念ながらコーヒーの過去10年における生産量は消費量の2倍の速さで成長を遂げてお
り、競合する他飲料との兼ね合いからも消費量の急激な伸びは望めないとされている。
唯一この供給過多から恩恵を預かるとすれば、それは大手企業の消費者である。1980年以
来、数少ない企業がこの市場の多くを占めてきた。特にP&G,フィリップ
モリス、サラ
リ
ー、そしてネッスルである。この4つの企業で世界中の40%もの売り上げを占めている。
同様に6つの国際輸出企業が世界中のコーヒー市場の40%をコントロールしている。多く
のコーヒー企業は一部のブローカーとしか手を結んでいない9。
コーヒー市場における投機的側面
コーヒーはその価格流動性から投資家などから大きな注目を集めている。コーヒーは収
穫高と価格が予測できない天候によって収穫が左右されやすく、また為替レートによって
も影響される。価格は主にニューヨークやロンドンといった先物市場で決定される。先物
市場は製造者にとって価格変動によるリスクをヘッジすることができる。これにより製造
者は保護される。また、輸出業者も為替システムを利用し購入オプションを固定価格で行
うことができる。しかし、農民にとっては極めて少数の人間のみがこのシステムを利用す
る機会があり、残りの人々は市場変化のリスクを背負わなくてはならない。
投資家は先物取引を市場動向の推測評価額で行うが、このコーヒー市場の価格流動性が
ギャンブル性を持たせている。このことはこのコーヒー先物市場は、莫大な金額を手に入
れるか失うかの博打であり、多くの投資家が投機的魅力に惹かれるであろうということで
ある。この市場の肥大化によって、より少数の巨大企業のみが市場に影響を与えることが
できるようになる。1997年における急激な値上がりは投機家を活発化させるきっかけとな
った。投資ファンドが1996年の低価格に注目し、大量のコーヒー契約を行ったためである。
これにより、変動しやすいコーヒー価格はすぐに跳ね上がった。また、中央アメリカにお
ける低収穫、コロンビアの港におけるストライキ、ACPC(Association of Coffee Producing
Countries)による輸出制限表明、そしてブラジルにおける収穫予測の誤りなどによりコー
ヒー市場にパニックが起き拍車をかけた。
このような状況下で投機家は活発に動くので、値段も激しく上下した。結果、生産者は
とても価格変動に敏感になり売れるときにできるだけのコーヒーを現金化しようとした。
コーヒー貿易者も同様に、できる限りの仕入れをした。1997年5月にはUS300セントをNY
先物市場で超え、過去20年来の最高価格を記録した。投機家が利益を得た後に市場は徐々
に沈静化したが、逆に2001年には記録的なUS50セントという低価格を記録している。
フェアトレードコーヒー
フェアトレードにおいてコーヒーは最も重要な商品である。1973 年にオランダのフェア
トレード団体が最初のフェアトレードコーヒーをグァテマラの小規模農家の組合から輸入
13
して以来、フェアトレードコーヒーは一つのコンセプトになっている。その間、より多く
のコーヒー農民たちがフェアトレードの恩恵を受けると同時に、より多くの消費者がヨー
ロッパにおいてフェアトレードコーヒーを飲み始めた。
プランテーションなどで働く労働者はコーヒー産業において一番弱い立場にいる。彼ら
は地域市場発展にすら何もできず、仲買人に頼るしかなくなっている。フェアトレードは
そのような人々も最終的には市場で自立できるような環境を目指している。コーヒーを直
接農民団体などから購入することによって、不公平な仲買人を省きコーヒー農民をより強
い立場に立たせる。これによって、農民はよりよい価格を享受することができ、コーヒー
輸出市場に直接関わることができるようになる。公正価格を支払うフェアトレードは、コ
ーヒー生産者が世界市場の価格に依存することから脱却することを促し、最低買取り価格
を保証するのである。
2−2.ヨーロッパの現状
フェアトレード構造
現在、18カ国、100以上の輸入団体がフェアトレード市場に関与している。それらは、小
さな団体から世界規模のフェアトレード団体(ドイツのgepaなど)まで様々である。最も
大きい4つの輸入団体はそれぞれ年間1000万ユーロ以上の売り上げがある。
(出典:EFTA HPより引用)
殆どの大きな輸入団体はEFTAに加盟している。フェアトレード商品は消費者の手に様々
な流通経路を経て届く。そのうち、2つの最も重要な経路は約2700の世界ショップとスー
パーマーケットである。フェアトレードラベリング計画により、フェアトレード商品は現
在ヨーロッパ内で43000店舗以上のスーパーマーケットで手にすることができる。
他の小売経路は、地域の連携団体であったり、自然食品店、学校や地域行政であったり
する。最も大きい輸入団体や中サイズの団体はカタログによる通販も受け付けていて、そ
のような通販は通常は団体の10%弱を占めている。また、大きい団体はすでにインター
ネットによる販売も提供している。
ヨーロッパにおけるフェアトレード団体は1250以上の雇用機会を提供している。現在、
団体では約750名のフルタイム職があり、それに加えて500名の世界ショップ関連、ラベリ
14
ング団体のフルタイム職がある。これらの多くは依然としてボランティアでまかなわれて
おり、約10万人のボランティアが積極的にフェアトレード産業に関わっているとされてい
る。
フェアトレード市場
1988年以降、ヨーロッパにおいてフェアトレード商品の市場は顕著に変化してきた。現
在では14のラベリング団体が18カ国にある(ギリシャ、マルタ、ポルトガル、スペインを
除く)。これらの団体はフェアトレードのコンセプトをスーパーマーケットや小売店舗に
商品を流通させることで、フェアトレードを市場に広げるための重要な役割を果たしてき
た。
EFTAには以下のような数々のラベリング団体がある。
Max Havelaar (7カ国)
TransFair (4カ国)
Fairtrade Mark (イギリス、アイルランド)
Reilun kauppa (フィンランド)
Rättvisemärkt (スウェーデン)
※ (TransFair and Max Havelaar)ルクセンブルグでは2団体が存在。
輸入団体全体でおよそ年間1億2000万ユーロの総売り上げを上げていると推測される。世
界ショップなどの数値を入手することは難しく、なぜなら殆どの国の団体がそのメンバー
の売り上げ状態を知らないからである。残りのデータから推測するに、4160万ユーロを超
えることはほぼ明確である。この数値は1050店舗の平均小売売り上げから推測している。
この数値を仮に15%引いたとしても、ヨーロッパに置ける世界ショップの総売り上げは
9200万ユーロを超えることは確実である。
フェアトレードラベルされた商品においてはより正確な数値が出ている。フェアトレー
ドラベルを貼られた商品はおよそ2億1千万ユーロだとされている。ただし、これらの数値
を簡単に足すことではフェアトレードの小売におけるインパクトを推し量ることはできな
い。これは、この計測された数値がいくつかのカテゴリーで重複しているからである。重
複しないカテゴリーを加算した数値を出すと2億5600万ユーロという額が出る。これは最低
額である。これはラベルされていない食料品や世界ショップ以外で売られている食料品以
外のものは計算されていない。結果、フェアトレード商品のヨーロッパにおける、スーパ
ーなどによる流通経路による年間純売り上げは2億6000万ユーロを超えるということであ
る。
フェアトレードは消費者教育やキャンペーン活動による生産者への意識向上をやらなけ
ればフェアトレードとはいえない。よって、1000万ユーロ以上が毎年教育、大衆関係、マ
ーケティングに注がれている。フェアトレード団体が活発な国では、定期的に市場調査が
マーケットポテンシャルを評価するために行われている。フェアトレード認知度調査、支
15
払い意思額などのアンケートが中心である。一般的にラベルの認知度は高く、15%∼30%
の結果が得られている。これは、フェアトレード市場の成熟を国によって示すものである。
しかし、これらの数値は注意をもって考慮されなければならない。ラベルの認知はしてい
ても、その内容を知らない人がいることも調査結果で出ているからである。
極端に言えば、ラベリングのインパクトはマーケットシェアのみによって計測される。
殆どの商品が依然そのマーケットポテンシャルに達していないが、これらは将来的なフェ
アトレードの可能性を示している。
ヨーロッパ諸国におけるフェアトレード製品の市場シェア
マーケットシェア
コーヒー
4%以上
茶
バナナ
スイス4%
スイス15%
オランダ4.2%
ルクセンブルグ4%
3∼3.9%
ルクセンブルグ3.3%
スイス3%
2∼2.9%
オランダ2.7%
ドイツ2.5%
デンマーク2%
スウェーデン1.8%
1∼1.9%
デンマーク1.8%
デンマーク1.8%
イタリア1.22%
スウェーデン0.8%
英国1%弱
英国1%弱
オーストリア0.7%
スウェーデン0.8%
ドイツ1%弱
アイルランド0.5%
オーストリア0.7%
ベルギー0.6%
フィンランド0.3%
オランダ0.7%
ノルウェー0.3%
イタリア0.67%
イタリア0.13%
フィンランド0.1%以下
フランス0.1%
フランス0.1%以下
英国1.5%
ベルギー1.0%
ドイツ1.0%
1%以下
ルクセンブルグ0.1%以下
ノルウェー0.1%以下
(出典:EFTA HPより引用)
ヨーロッパにおけるフェアトレード
合計
16
付記
輸入団体
97 +
18 カ国
2,740 +
18 カ国
スーパーマーケット
43,100 +
18 カ国
他
18,000 +
14 カ国
合計
63,800 +
小売店
ワールドショップ
雇用(フルタイム扱い)
輸入団体
746 +
ワールドショップ関連
32 団体 18 カ国
32 +
18 カ国
ワールドショップ
394 +
16 カ国
ラベリング団体
71 +
合計
14 団体 14 カ国
1,237 +
ボランティア
96,000 +
18 カ国
(世界ショップ+グループ)
ラベル
14 カ国
売上げ(千ユーロ)
輸入団体
118,900 +
世界ショップ、純小売売上
ラベリング団体、純小売売上
合計
32 団体 18 カ国
41,600 +
11 カ国
208,900 +
14 カ国
369,400 +
教育・広告・マーケティングに関連支出(千ユーロ)
輸入団体
5,600 +
32 団体 18 カ国
世界ショップ関連
1,000 +
11 カ国
ラベリング団体
3,500 +
14 カ国
合計
10,100 +
フェアトレード認知度
ラベル・コンセプトの知識
6∼74%
11 カ国
フェアトレードラベルコーヒー
0.1∼3.3
14 カ国
フェアトレードラベル茶
0.1∼4.0
12 カ国
フェアトレードラベルバナナ
0.6∼15.0
9 カ国
市場シェア(%)
2740 の世界ショップの純小売売上概算(千ユーロ)
全流通チャンネルにおけるフェアトレード製品の
純小売売上概算(千ユーロ)
(出典:EFTA HPより引用)
17
92,000 +
260,000 +
2−3.日本の現状
フェアトレード構造
ここまでは、海外のフェアトレードの現状について概観した。この節と次の節では、日
本のフェアトレードの現状について述べる。
日本には、IFATに加盟している団体は3つ存在する。1991年にNGO「Global Village」
として発足した「ピープルツリー/フェアトレードカンパニー株式会社」と、1992年に設
立した「ネパリ・バザーロ」、1995年に設立した「ぐらするーつ」である。これらの団体は、
フェアトレード商品を販売するだけではなく、商品の企画から、輸入、卸、キャンペーン
活動など様々な取組を行っている。
この3つのほかにも、自らの活動を「民衆交易」
「コミュニティ・トレード」などと呼び、
フェアトレード活動と区別をつけて独自の理念で活動している「オルタートレード・ジャ
パン」「第3世界ショップ」などの団体も存在する。また、これらの大きな団体から商品を
買い取って販売する小売店や、カフェなども全国各地に存在する。現在、日本全国でフェ
アトレード商品を扱っている店舗は約600∼700軒、フェアトレード商品を専門に扱ってい
る店舗は約100軒と言われているが、詳細は把握できていない8。
日本でフェアトレードコーヒーを輸入している団体、企業は12存在する。そのうち、生
産者から直接豆を輸入して、自店で販売したり、生協や小売店に卸したりする形態をとっ
ているのが、
「オルタートレード・ジャパン」、
「有機コーヒー社」、「フェアトレードカンパ
ニー」、「ネパリ・バザーロ」、「第3世界ショップ」、「ピースウィンズジャパン」
、「わかち
あいプロジェクト」、「(株)ワタル」、「トーホー」、「アタカ通商」の10団体である。一方、
「フェアトレーディング」、「スターバックスコーヒージャパン」は、海外の輸入企業から
豆を輸入する形態をとっている9。
ここにもあるように、近年、スターバックスやイオンなど一般の企業が、企業の社会貢
献活動の一環として商品の一部をフェアトレード商品にする動きが見られてきた。スター
バックスジャパンでは2002年からフェアトレードコーヒーを販売、現在全国約500店舗で扱
っている。また、毎月20日を「フェアトレードコーヒーの日」に指定し、
「本日のコーヒー」
がフェアトレードコーヒーとなるキャンペーンも行っている。イオンでは2003年からフェ
アトレードコーヒーを扱っている。この他、2004年から成城石井、シェルガーデン、サミ
ット、紀伊国屋、オリンピック、富士シティオ、丸広百貨店、セーブオンの一部の店舗で
もフェアトレードコーヒーの販売が始まっている10。この他、大手の「キーコーヒー」や、
「UCC」でも、有機栽培や農園の環境、従業員の賃金などに配慮して栽培された「レイ
ンフォレストアライアンスコーヒー」を販売、コンビニエンスストアやレストランなどで
扱われている11。このように、近年になりフェアトレードコーヒーの販路は徐々にではある
が拡大傾向にある。
18
フェアトレード市場
日本におけるフェアトレード商品の売上げは、正確には把握することができない。これ
は、日本ではフェアトレードのラベリング運動が欧米ほど広まっておらず、ラベリングに
コストがかかることや、ラベリングに対する考え方の違いから、ラベルをつけて販売して
いる商品と、そうでない商品が混在しているためである。参考までに、フェアトレードラ
ベルのついているフェアトレードコーヒーの日本でのシェアを下の表に示した。
フェアトレードコーヒー(認証コーヒーのみ)のシェア
1998
日本のコーヒー輸入量(kg)
フェアトレードコーヒー
国内流通量(kg)
フェアトレードコーヒーのシェア
(%)
1999
2000
2001
2002
2003
6026969 6547483 6908006 6996204 7307455 6922575
6565
6210
6630
6569
9565
22738
0.109
0.095
0.096
0.094
0.131
0.328
(出典:ICOのHPの貿易統計、FLO Japanのデータから作成)
2001年から2003年にかけてシェアの伸びが見られるが、これは前節で述べたような企業
の参入のためだと思われる。このデータに含まれない、フェアトレードラベルの認証なし
でフェアトレードコーヒーを販売している団体は「オルタートレード・ジャパン」など日
本に7つ存在しているが、それぞれの団体の輸入量が把握できないため、正確なシェアは
不明である。しかし、実際のシェアは表にある数字よりも大きくなるため、フェアトレー
ドコーヒーのシェアに関しては、徐々にヨーロッパの水準12に近づいているといえる。
フェアトレードラベルのついた認証コーヒーを扱っている団体は以下の14団体である。
第一コーヒー株式会社 (東京都港区)
東京アライドコーヒーロースター株式会社 (東京都大田区)
スターバックス コーヒー ジャパン(株)東京都渋谷区)
NPO法人
e&g研究所(広島県福山市)
ワタル株式会社(東京都港区)
小川珈琲株式会社(京都市)
共和食品株式会社(京都府)
株式会社トーホー(神戸市)
株式会社 ユニカフェ(東京都港区)
19
兼松株式会社(東京都港区)
ハローコーヒー(青森県弘前市)
わかちあいプロジェクト (東京都墨田区)
斎藤コーヒー 株式会社(名古屋市)
株式会社和み(東京都)
株式会社プライムスタイル(東京都)
(出典:フェアトレード・ラベル・ジャパンHP)
この章では、日本と海外のフェアトレードへの取組みについて、フェアトレードに関わ
る団体と、フェアトレード市場の規模という観点から見てきた。日本では、近年市場規模
が拡大してきてはいるものの、フェアトレード活動の広まりが遅かったことなどから、海
外のフェアトレード先進国(スイスやイギリス、オランダ、ドイツ、フランスなど)と比
較すると、取組みの規模はまだまだ小さいものであると言える。
8.FTSN(フェアトレード学生ネットワーク)調べ
9.佐藤,2003
10.フェアトレード・ラベル・ジャパンHPより
11.日経産業新聞
2004年9月24日,
「安心・安全や環境配慮など、コーヒーに新たな価値−消費者の関心も追い風に。」より
12.2−2.
「ヨーロッパ諸国におけるフェアトレード製品の市場シェア」(表)参照。
3.マーケットシェア拡大への取組み
第2章では、ヨーロッパと日本のフェアトレードコーヒーの現状について述べた。この章
では、フェアトレード商品のマーケットシェアを伸ばすために行われているヨーロッパと
日本における様々な取組みと、現時点で生じている問題点を探り、それぞれの違いを明ら
かにしたいと思う。
3−1.ヨーロッパでの取組み
これまでのマーケットシェア拡大の要因
ヨーロッパにおけるフェアトレード商品の成長の一つとして品質が上げられる。生産者
の技術も向上し、品質主導の改善が見られ、それとともに市場のシェアも上昇している。
2002年に行われたニカラグアでのCup of Excellence competitionでは、上位20コーヒーの
20
うち7つがフェアトレード農協によって生産されたものである。このようなコーヒーが値
段と品質で既存のコーヒーと競争できるようなら、もっと需要があってもいいはずだとい
う考えもあるが、そうではないのは単にフェアトレードという考え方が多くの国で浸透し
ていないためだと考えられる。
1997年にFLOが登場して以来、フェアトレードムーブメントは一般によりわかりやすい
存在となり、消費者の認知度も向上した。しかし、FLO団体内の異なる団体がマーケット
でのわかりやすさを維持できているかは依然として不透明である。それぞれの認証団体が
必ずしも成功しているとはいえない可能性も否定できないからである。たとえば、オラン
ダにおけるMax Havelaarラベルは多くの消費者にブランドとして理解されている成功例
の1つである。FLOは認証制度において国際的に同じプロセスを経由させることが難しい
ことを理解している。
現状にみるフェアトレードの問題点
北半球のフェアトレードマーケットの動向は南側のフェアトレード商品生産の現在と未
来を握っている。そして、現在そのマーケットサイズと方向性において疑問がもたれてい
る。ヨーロッパではフェアトレードマーケットキャンペーンが10年近くも多くの国で行わ
れているにもかかわらず、フェアトレードコーヒーが国のコーヒー総売り上げに対する割
合はわずか1.2%である13。
ノルウェーやフランスのようにフェアトレードコーヒーが拡大し続ける国もある一方で、
フェアトレードコーヒーの売り上げはヨーロッパ全体で見ると不活発になっている。
フェアトレードコーヒーの売り上げの大きな成長は、最近国中で精力的なフェアトレー
ドキャンペーンが行われた北米市場に見られる。アメリカが持つ世界コーヒー市場への存
在感を考えると、アメリカのフェアトレードコーヒー市場はヨーロッパ市場を近い将来越
すことが見込まれるが、フェアトレードの基本的なダイナミズムが大きく変わらない限り、
アメリカ・カナダ市場はヨーロッパ市場と同様に頭打ちになるのではないかという懸念が
ある。
北側の市場での限界は、南側のコーヒー生産者達に多くの影響を与えることとなる。
まず、FLO認証を受けることができる基準にありながら、FLO認証を受けていないグルー
プはフェアトレードの恩恵を受けることができない。そしてFLO認証を受けていなくても、
フェアトレード購買者がいるという保障ができなくなる。FLOの推算では、ラテンアメリ
カ、アフリカ、アジアにおいてフェアトレードコーヒーを輸出することができる潜在的な
キャパシティーは現在のフェアトレード流通の7倍(およそ99,231トン)とされている。
主なフェアトレードの輸出・輸入国(2000 年)
※FLO 会員により、ラベルされた焙煎コーヒーのデータである
21
主な輸入国(トン)
主な輸出国(トン)
オランダ
3140 トン
メキシコ
3680 トン
ドイツ
3073 トン
ペルー
2172 トン
スイス
1382 トン
コロンビア
1601 トン
英国
1332 トン
グアテマラ
1332 トン
デンマーク
742 トン
ニカラグア
1428 トン
アメリカ
707 トン
タンザニア
1001 トン
世界合計
14400 トン
世界合計
14400 トン
(出典:FLO
International 資料)
フェアトレードネットワークにおける生産者の知識
フェアトレードにおいて、知識はムーブメントの発展を左右する極めて大きな鍵を握っ
ているとされる。しかし、世界的な調査によると生産者はフェアトレードに関する知識が
浅い。
フェアトレードは抽象的で日常に関係しないコンセプトだと多くの生産者に考えられて
いる。生産者の多くは有機栽培など日常的な活動に対しては理解を示すものの、フェアト
レード認証やマーケティングのような活動に関しては農協主導の団体単位で行われており、
これもまた生産者の理解が深まらない一端でもある。フェアトレードへの知識とコミット
メントはフェアトレードの長期的持続性において不可欠なものである。現在、フェアトレ
ードは通常より高い価格で生産者や農協からコーヒーを購入している。しかし、既存の通
常より高めのコーヒー価格での販売や、他市場での販売機会の少なさによりフェアトレー
ドに関するコミットメントが将来弱まる可能性は否定できない。いくつかのケースによる
と生産者が市場価格とフェアトレード価格の中間を選ぶこともあるようだ。このように他
市場でコーヒーが販売されると、契約違反によりその農協の認証が取り消されることにな
る。この認証取り消しが大量に発生すれば、供給過多気味にあるフェアトレードコーヒー
は逆に供給過小となり、フェアトレードシステムに対して大きな足かせとなることが予想
される。
FLOシステムによる統治問題
ラベリングとマーケティングに重点を置くことはフェアトレードの原点から反すること
である。このような問題はFLOの巡検プロセスにおいて発生した。いくつかの農協は、巡
検者とのコンタクトがまったく無いなどの問題を報告し、それにより農協活動に支障をき
たした。グァテマラでは、La Vozという農協の代表が、過去にまったく巡検者とコンタク
トを取っていないにも関わらず、農協はフェアトレードコーヒーを販売していた事実を報
告した。La VozメンバーはFLOが認証作業のために提出した評価報告を農協に渡さなかっ
22
たことも苦情にあげている。
このような中でFLOの認証取り消しは驚くべきか、それほどの批判を浴びていない。む
しろ、場合によって認証取り消しはポジティブに働くこともある、というのはこの認証プ
ロセスを経た団体は再び認証されるように努力するとともに、以前より注意深く生産に対
しての管理が行われるからである。
フェアトレード戦略におけるマーケティング機会と問題
現在ではメキシコのいくつかの農協組合において、スーパーマーケット、焙煎店、そし
て他のメキシコ内の北側の生産者団体(スターバックス、ノイマン、カレフールなどと直
接提携)などと直接的なマーケティング関係を結んでいることが強い傾向として現れてい
る。これらの戦略は農協の進化のための論理的な発展である。これらの新しいオプション
はフェアトレードシステムによって勝ち得たものだと考えられる。
このような手段は不可避のように思われる、というのは生産者団体がフェアトレードコ
ーヒー市場で吸収できる以上のコーヒーをフェアトレード状態で生産しているからである。
このような状態の農協はフェアトレードネットワークから移行し、他の農協へフェアトレ
ードの地位を譲るのである。これらの発展は、コーヒー生産者の生活を向上させる可能性
があると同時に低下させる可能性もある。このような直接契約は、フェアトレード認証と
売り上げにおける信頼性を低下させる可能性がある。というのは、これがフェアトレード
基準を曖昧にする可能性があるからである。
La Selvaというメキシコの農協はフェアトレード認証維持の問題から、彼らはフェアト
レードラベリング経路以外に良質な有機コーヒーを流通させるという異なる市場戦略を発
展させた。しかし、La Selvaの代表はこの手法は必ずしもフェアトレードほど信頼性がお
けるとも革新的であるともしていない。なぜなら彼らと契約している大手企業は良い品質
のものだけを購入し、料金前払いなどには応じないからである。La Selvaのロゴで流通し
ていても、これらのコーヒーは機械的なフランチャイズ制に基づくものなのである。
スターバックス、ノイマン、カレフールのような巨大企業による新認証は生産者やFLOに
とって注意深く検討されなければならない。利点として、市場の拡大が挙げられるが、同
時にこのような巨大企業が参入するというのは生産者やすでにフェアトレード登録をした
バイヤーなどにリスクをもたらす存在である。これにより、フェアトレードが単なる高価
格の市場になることが考えられ、ポリシーや理想を持たない存在になりえるからである。
農協にとってフェアトレードは一時的な一つのオプション戦略であるかもしれない。農
協がひとたび、フェアトレード認証を得ることで、彼らは自分たちの基準を設定できるよ
うになるからである。現在、フェアトレードの未来においてこれらの動向に対しての戦略
的ビジョンが求められている。
行政機関におけるフェアトレードへの関与
23
フェアトレードは時には間接的でありながら行政機関や政策に関わっている。フェアト
レードに対してヨーロッパの行政はなんら直接的に支援を行っていないが、インフラ整備、
技術支援、物品購入、輸出支援などにおいての間接的協力が見られる。メキシコでは、フ
ェアトレードに関する組合に関しての様々な地域行政が助成をしている。
3−2.日本での取組み
第2章の後半では、日本におけるフェアトレードコーヒーの現状についてみてきた。こ
の章では、日本でのフェアトレードコーヒーのマーケットシェア拡大に向けた取組みを明
らかにするとともに、様々なところで指摘されている日本のフェアトレードの問題点を整
理し、それが日本のフェアトレード商品のマーケットシェアの低さにどのように影響して
いるかを分析する。
ラベリング
第1章で紹介したように、日本には「フェアトレード・ラベル・ジャパン」というラベ
リング団体が存在する。ヨーロッパでもオランダの「マックス・ハベラー(Max Havelaar)
計画」などのラベリング運動によってマーケットシェアが拡大した経緯があるが、日本に
おいても、2−3で述べたとおり近年になって一般の企業がフェアトレード商品を扱うよ
うになった。そういった潮流において大きな役割を果たしているのがラベリングである。
ラベリングは、フェアトレードの共通の基準を設定し、参加する業者に「フェアトレード
ラベル」の使用を許可し、基準が守られていることを消費者のためにモニターする仕組み
になっている。国際基準を設定することにより、一般の業者が、フェアトレード商品を扱
うことができるようになるとともに、基準を守って輸入された商品には、フェアトレード
商品であることを表すラベルを張ることが許される。消費者はフェアトレードラベルを見
てその商品がフェアトレード基準を満たすフェアトレード商品であると判断することがで
きるのである。ラベリングのメリットは、企業の参加によりフェアトレード市場が飛躍的
に伸び、より多くの生産者が参加できるようになること、これまで不公平な取引を行って
いた企業をフェアトレード運動の広まりによって変えることが出来ること、消費者が客観
的な指標があるため安心して商品を買えるようになること、フェアトレード商品へのアク
セスが良くなることなどである。一方、デメリットとしては、参加企業に報告の手間やラ
イセンス料がかかるため、中小規模の企業の参入がコスト的に難しいこと、ラベルの認知
度が上がらなければ、ラベリングの効果がみられないということがあげられる。また、ラ
ベリングの問題として、商品にラベリングをしないフェアトレード団体などから、消費者
がラベルだけに満足してしまって、本当の問題に目が行かなくなると言われることがある。
この点に関しては賛否両論だが、環境ラベルの普及と共に、一般消費者の環境に対する意
識が下がったということはないのと同様に、ラベルは消費者への南北問題の理解へといざ
24
なう入り口として有効に機能すると思われる。つまり、スーパーなどで頻繁にフェアトレ
ードラベルのついた商品を目にすることによって、消費者のフェアトレードに対する関心
を集められるのではないかということである。
掴みきれない市場動向
第 2 章のフェアトレードコーヒーの日本の現状の部分でも触れたように、現在の日本に
おけるフェアトレード商品全体の売上げや、フェアトレードショップの店舗数、フェアト
レードに対する認知度など、日本のフェアトレードに関する正確で詳細なデータを入手す
ることは現状では不可能である。フェアトレードラベルのついた商品に関しては、フェア
トレード・ラベル・ジャパンが売上高などを把握しているが、日本の場合、ラベルのつい
ていない商品も数多く存在する 14 ため、全てを把握できてはいない。
団体間のコミュニケーション不足
何度かこの論文の中で述べてきたが、日本においては、いくつかのフェアトレード団体
は IFAT に加盟せず、独自の基準や理念を持って活動している。また、ラベリングに関して
も各団体で意見が異なり、統一性が無い。このように、日本では各団体のフェアトレード
の考え方がそれぞれ異なっていて、フェアトレード運動の整合性が無い。また、団体同士
のコミュニケーションが乏しく、共同で活動することもあまりない。そういったことから、
日本では、散発的で小規模なキャンペーンしか行われず、それも日本でのフェアトレード
の認知度の低さの一因となっていると考えられる。
企業や行政、メディアへの働きかけ不足
フェアトレードの日本と海外の取組で一番大きな違いが、企業や行政などへの働きかけ
の小ささである。企業の取組に関しては、第 2 章で紹介したようにフェアトレードへの参
入が進んでおり、CSR(企業の社会的責任)への関心が高まっていることなどから、今後
もその拡大が期待される。一方、行政に関しては、企業のような目立った取組はほとんど
行われていない。自治体レベルでは、フェアトレードコーヒーを共同購入するなどの動き
がやっと見られるようになったが、それ以外のところでは全くそのような取組はされてい
ない。メディアに関しては、ここ数年で、やっとテレビ番組でフェアトレードの特集が組
まれ始めた 15 ほか、新聞などでも段々扱いが増えてきた 16 が、まだ一般的に目にするよう
にはなっていない。一部のフェアトレード団体は、メディアに進出することで、フェアト
レードが一過性のブームになることを懸念しているが、フェアトレードの認知度を上げ、
消費者に対してフェアトレードをアピールするためには、メディアの役割は不可欠である。
以上の日本のフェアトレードの問題点に共通する原因は、フェアトレード業界全体の利
益を代弁する窓口となるフェアトレード関連団体の全国規模のネットワークの欠如である。
25
団体同士がネットワークを組んで協働することで、正確な市場調査や意識調査を行うこと
ができる他、大規模なキャンペーンを行って、消費者や、行政、企業、メディアなどに強
く働きかけることもできる。第 4 章の、消費者の環境に配慮した製品に対する購買行動に
関する分析のところで、フェアトレードに対する認知度が上がっても消費者の購買行動に
は結びつかない恐れがあるということを述べたが、現在の日本では、消費者の認知度の向
上が最重要課題である。まずはフェアトレードについてより広く大きく働きかけるために
も、フェアトレード団体のネットワーク化は必要である。現在、関東や関西、九州などで
フェアトレード学生ネットワーク
17
が結成され、フェアトレード団体と共同でイベントを
開催したり、セミナーなどを開いて、啓発活動を行ったりしているが、そうした動きにも
今後注目したい。
13.EFTA,2001
14.フェアトレード・ラベル・ジャパンのスタッフによる推定では、フェアトレード商品
のうち、フェアトレードラベルをつけて販売しているものは約 10%だという。
15.NHK「週刊こどもニュース」2004
年 7 月 24 日放送分
テレビ朝日「素敵な宇宙船地球号」2004 年 4 月 13 日、9 月 21 日放送分など
16.「朝日DNA」
、
「日経テレコン21」2つの情報探索サービスでそれぞれ見出し、ま
たは本文に「フェアトレード」という単語が含まれるものを検索した。
「朝日DNA」
は朝日新聞の朝刊、夕刊、日経テレコン21は日経 4 紙の記事を検索対象としている。
これまでに紹介された回数は、朝日新聞で 318 回(1992 年 11 月 6 日初出∼2004 年
11 月 2 日)
、日経4紙で 72 回(1975 年 7 月 17 日初出∼2004 年 10 月 20 日)。
17.FTSN(Fair
Trade Student Network)について
2004 年 5 月に発足したフェアトレードの学生ネットワーク。現在、関東、関西、九
州という 3 つの地域内でのネットワークを活動の拠点とし、それらの地域をつなぐ
広域的なネットワークである FTSN ジャパンを形成している。活動内容は、イベン
トの企画や勉強会、フェアトレード団体との共同調査など。
4.日本の消費者行動の傾向
第1章から第3章ではフェアトレード、あるいはフェアトレードコーヒーについて見て
きた。第4章以降では、日本の消費者行動の傾向を把握するとともに、フェアトレードコ
ーヒーがこのような日本の消費者に受け入れられるためにはどうしていくべきかを探って
く。第4章では、日本の消費者の環境に対する意識を中心に、先行研究から分析する。ま
ず、第1節では、グリーンコンシューマリズムについて、拡大の経緯と日本にもたらした
26
影響について述べ、さらにフェアトレードとの共通点と相違点を明らかにする。そして第
2節では、現代の消費者が環境に配慮した商品を選ぶ基準や、購買に対する意識を調べる
ことにより、日本の消費者像を明らかにする。これらから、フェアトレード商品が消費者
にどのように受け入れられるのかを予測することを試みたい。
4−1.グリーンコンシューマリズム
グリーンコンシューマリズムの始まりと拡大
「グリーンコンシューマリズム」とは、1980 年代以降、欧米の環境 NGO や消費者グル
ープが環境に配慮した製品やサービスを積極的に購買する行動を通じて、消費者の立場か
ら環境問題に取り組み始めたことに端を発する環境保全運動の新しい潮流である。日本で
は、少し遅れて「緑の消費者」の運動として紹介され、一般にも知られるようになった。
この節では、グリーンコンシューマリズムについて前半で簡単に紹介するとともに、後半
ではフェアトレードとの関係について述べたいと思う。
1980 年代後半に入って地球環境問題への関心が著しく高まる中、1988 年、イギリスで「グ
リーンコンシューマーガイド」が発売された。当時、ヨーロッパではチェルノブイリの原
発事故や北海でのアザラシの大量死、酸性雨の深刻化など様々な環境危機が相次いだ時期
であり、普段購入する商品がどのような環境影響を与えているかを明らかにし、スーパー
などの環境対策を5つ星で評価したこの本は、イギリスの人々の関心を集めた。これを契
機に、相次いで消費者に環境への負荷の少ない商品の選択を呼びかけるガイドブックが出
版され、「グリーンコンシューマリズム」という言葉が一挙に市民権を得ることとなった。
日本でも、この影響を受けた京都の「ごみ問題市民会議」のメンバーらが 1991 年に日本で
最初の地域版グリーンコンシューマーガイド「買い物ガイド・この店が環境にいい」を発
行したり、東京の「バルディーズ研究会」が企業への環境対策についてのアンケートをま
とめた「グリーンコンシューマーレポート」を出版したりするなど、各地にグリーンコン
シューマー活動が広まっていった。
「グリーンコンシューマー」という言葉と同時に、環境に優しい商品を消費者が選択す
るための目安となるマークをつける「環境ラベリング」も世界的な広がりを見せるように
なった。世界で初めて導入された環境ラベル制度は、1978 年に開始されたドイツの「The
Blue Angel」である。この制度は、認定を受けた紙製品や家具、電化製品などの製品やサ
ービスに対してラベルの使用を認めるもので、ラベルの下部にその商品の環境保護特性を
示すコメントを記載する。2003 年現在、3056 種類の商品が認定されている。この「The Blue
Angel」を参考に、日本でも 1989 年に「エコマーク」が開始された。
「エコマーク」は製品
のライフサイクル全体を考慮して環境保全に資する商品を認定し表示する制度で、日本で
唯一第三者機関による審査を受ける必要のあるラベルである。運営主体は、環境省の外郭
団体である財団法人日本環境協会で、対象物品は 2004 年現在 54 品目、5415 商品に上って
27
いる。
こうしたグリーンコンシューマリズムの広まりから、1996 年には環境庁(現環境省)が
中心となり、企業や自治体などが環境配慮型の商品を選択し、購入する「グリーン購入」
を推進する目的で「グリーン購入ネットワーク(GPN)」を結成した。さらに、2001 年に
は政府・国会・特殊法人にグリーン購入を率先して行うこと、民間企業も努力してグリー
ン購入を行うことを定めた「グリーン購入法」が施行され、環境対策の促進と、環境配慮
型の商品・資材の需要拡大が期待されている。
グリーンコンシューマリズムとフェアトレード
こうして世界的に広まっているグリーンコンシューマリズムだが、この運動は、フェア
トレードと深い関わりを持っていると言える。以下では、フェアトレードとグリーンコン
シューマリズムを比較し、その共通点と相違点を明らかにすることからフェアトレードの
拡大に必要なものを探りたいと思う。
第2章では、フェアトレードのラベリングについて触れたが、フェアトレードラベルの
海外での成功は、マーケティング研究者の間ではラベリングの「第4の波」と称されてい
る。「第1の波」は消費者に対する商品の安全性の保証、「第2の波」は商品の消費に伴う
消費地の非環境破壊の保証(「環境にやさしい」の第1段階)、「第3の波」は商品の生産に
伴う生産地の非環境破壊の保証(「環境にやさしい」の第2段階)、そして「第4の波」は
商品の貿易における生産者の公正な待遇の保証である。つまり、フェアトレードはこれま
での「環境配慮」の考え方から前進した、「生産者配慮」の考え方を採用しているといえる
のである。言いかえれば、生産地の自然環境という概念から、生産者の生活や、インフラ
など全てを含めた環境という、より広い概念に対して配慮しようとしているのがフェアト
レードなのである。その意味で、フェアトレードは、グリーンコンシューマリズムの発展
形であると捉えることもできる。
フェアトレードの始まりは、グリーンコンシューマリズムよりも早いが、オランダでラ
ベリング活動が始まり、ヨーロッパ社会に広まっていったのは 1980 年代後半から 90 年代
にかけてのことである。フェアトレード運動は、グリーンコンシューマリズムのような勢
いは無かったが、少しずつ社会に浸透していった。イギリスなどでは、環境にやさしい製
品を求める消費者運動と同じように、フェアトレード商品を求める消費者運動もみられた。
また、フェアトレードを推進するようなNGOや消費者団体も作られるなど、活動の内容
などについては、グリーンコンシューマリズムとほぼ同じような経緯をたどっていったと
言える。
グリーンコンシューマリズムとフェアトレードの最も大きな違いは、それぞれの活動の
規模と消費者の認知の度合いだろう。この 2 つは互いに強く関係しているのだが、それぞ
れ日本と海外の例から見てみたい。日本では、既述の通り、環境省が「グリーン購入」を
行うなど、政府が率先してグリーンコンシューマリズムを推進している。また、グリーン
28
購入の目安となるエコラベルに関しても、多様な製品につけられ、消費者にとっても見慣
れたものとなっている。これに対して、フェアトレードは、企業が少しずつ取組を始めた
のに対し、未だ政府での取組はなされていない。フェアトレードラベルに関しても、ラベ
ルの統一が図れておらず、つけられている製品も限られているため、消費者に十分に広ま
っていない。一方海外では、様々な企業がフェアトレード商品を取り扱っているだけでな
く、イギリスやフランスなどの官庁でフェアトレードコーヒーが飲まれているなど、日本
のグリーン購入と同様に、政府がフェアトレードの推進に協力している。また、ラベリン
グ活動が始まったオランダでは、国民のフェアトレードラベルに対する認知度が90%を
超えるとも言われ、認知度の高さが伺える。ここからわかるように、グリーンコンシュー
マリズムとフェアトレードの違いがより明確に表れているのは日本であり、その原因は主
にフェアトレードに対するフェアトレード団体、企業、行政それぞれの取組の小規模性と、
それによる消費者の認知度不足によるものである。
しかし、グリーンコンシューマリズムに比べて、フェアトレード活動があまり日本で広
まっていない理由は、認知度の不足だけが原因なのだろうか。次に、近年の日本の消費者
の環境に対する意識と、普段の消費行動に対する意識を探ってみたい。
4−2.近年の消費者意識
社会全体の環境への危険感
個人としての環境悪化への危機感
強く感じてい
る・・・31.2%
非情に高まっ
ていると思う…
17.6%
やや高まって
いると思う…
46.3%
それほど高まっ
ていないと思う
…29.5%
全く高まってい
ないと思う…
4.2%
わからない…
ある程度感じ
ている・・・
52.3%
あまり感じてい
ない…14.5%
全く感じていな
い・・・1.4%
東京と政策報道室「循環型社会作りに関する世論調査」1998 年より
日本では、高度成長期と比較して、最近では環境問題に対する消費者の意識は大きく変
わった。その背景には、2度のオイル・ショック及びバブル崩壊で不況が長期化したこと
などで、環境意識も含めて消費者の日常生活の価値観が大きく変わったものと考えられる。
特にオイル・ショックによって人々は、資源の有限性、資源の循環的利用の重要性と環境
問題との密接な関連性を認識し、バブル崩壊による長引く不況の中で、大量生産・大量消
費・大量廃棄といったバブル型経済行動様式に対する意識改革の必要性を感じ取ったとい
える。
29
上のグラフからわかるとおり、近年の環境問題に対する危機意識の調査では、社会全体
としては、
「高まっている」と「やや高まっている」と考える人は 63.9%であるが、個人と
して、環境悪化についての危機感を「強く感じている」人と「ある程度感じている」人を
合わせると 83.5%となっている。
また、環境問題に対して「私たち一人一人が加害者である」と考える人が 77.3%、更に
環境保全のために「生活が不便になっても構わない」と考える人は 54.6%と半数を超える。
このような意識に伴って、社会全体として環境悪化を防ぐためには、「一人ひとりが日常
生活の中でできることから環境に配慮した行動をとる」といった社会状況を作ることが必
要であると認識する人が 43.3%にもなっている(国立環境研究所が 1998 年に行った調査に
よる)。
では、「一人ひとりが日常生活の中できる環境に配慮した行動」のひとつともなり得るで
あろう「消費行動」が、欧米に見られるほど実際に行動に移されていない理由はなぜだろ
うか。
消費者の環境意識と行動の間には、次の3つの局面で明らかなギャップが存在している
と考えることができる。
a「選択・購買」局面の意識と行動のギャップ:消費者は消費行動において、時として「価
格・見栄えを優先した行動」とることがある。
b「使用・管理」局面の意識と行動のギャップ:消費者は、購買行動において商品の機能
性、利便性を優先した行動を撮ることが多い。
c「処分・廃棄」局面の意識と行動のギャップ:消費者は、ダイオキシン問題等に関心を
持ち処分・廃棄に十分注意を払いながらも、使い易さや住環境等から「使い捨て」とい
う消費行動を優先させる場合がしばしばある。
これらの消費者の「意識と行動のギャップ」の背景には、第1に「環境調和型消費者行
動を支援するシステム作り」が不十分である、つまり消費者が製品を購入するときの購入
条件にそぐわないことが考えられる。第2に、環境への影響に関する情報提供が十分でな
いこと、第3に消費者啓発、環境教育等に十分な社会環境が作られておらず消費者のグリ
ーン購入に対する意識が低いことなどが指摘できる。
ではここで、日常の買い物が、一般的にどのような基準、心理で行われているかも見て
みたい。
2002 年に行われた、マイクロミル社によるアンケート(回答者 11,103 名)によると、
30
1.銘柄や品質、性能に納得して買うかどうか。
⇒70%以上の消費者が「銘柄や品質、性能に納得のいくもの」しか買わないと回答。
2.テレビ等の広告を見て買うことがよくあるか。
⇒「テレビや新聞、雑誌の広告でみた新製品を買うことがよくある」と回答した人は41%
で、若年層ほどその傾向が強い。
31
3.評判等の様子を見てから買うか。
⇒「新製品は、評判等しばらく様子を見てから買うほうだ」と答えた人は 65%。
4.流行しているものを買うか。
⇒「流行しているものや皆が持っているものはついつい買いたくなるほうだ」と回答した
人は 26%で、「当てはまらない」と答えた人(47%)のほうが多い。
この調査から、一般的に消費者が買い物をするとき、テレビや新聞などの広告から影響
を受けつつも、品質や性能に納得のいくもののみを買う傾向があること、新しいものは評
判等しばらく様子を見てから買う傾向があることがわかった。
この2つの調査から言えることは、日本の消費者は、環境に対する問題意識は持ってい
るにもかかわらず、実際の消費行動においては、商品の背景にある問題はあまり意識せず、
32
品質や性能において自分が納得したものを買う傾向があるということである。この結果を
フェアトレード商品に当てはめて考えると、フェアトレードに対する認知度が上がり、消
費者がフェアトレードの背景にある環境問題や社会問題を意識しただけでは、実際のフェ
アトレード商品に対する消費行動にはつながらない可能性がある、ということである。
10月に行われたフェアトレードについてのセミナーの中で、第2章で紹介した「フェ
アトレードカンパニー」、「ぐらするーつ」、「オルタートレードジャパン」の3つのフ
ェアトレード団体の代表の方に、日本の消費者の特徴についてどう感じているかという質
問をしたところ、「フェアトレードカンパニー」と「ぐらするーつ」の2つが日本の消費
者は品質に対して厳しく、消費者を満足させるためには商品自体を魅力的にしていく必要
があると回答した。
日本の消費者にフェアトレード商品が受け入れられるためには、認知度の向上とともに、
商品そのものを消費者のニーズに見合ったものにしていく必要があることがこれらから明
らかになった。
5.コーヒーに対する消費者行動の実証分析
第4章までは、フェアトレード、フェアトレードコーヒー、そして消費者行動について、
先行研究や文献などから客観的な分析を行った。ここからは、実際にフェアトレードコー
ヒー取扱店のスタッフや消費者に対して行った調査と、その結果について述べる。調査は、
フェアトレードコーヒーを扱っているショップ、又はカフェのスタッフに対してメールな
どで行ったアンケート調査と、大学の学園祭で出店したフェアトレード商品を扱うカフェ
に来店した消費者に行ったアンケート調査の2つである。この調査によって、売り手側と
買い手側のフェアトレードコーヒーに対する意識をそれぞれ把握したいと思う。
5−1.フェアトレードコーヒー取扱い店舗へのアンケート調査
調査方法
フェアトレードコーヒーを取り扱っているショップに対してメールでアン
ケート(別紙参照)を送付し、回答を頂いた。また、カフェスローに関して
は実際にショップを訪ねてヒアリングを実施した。
調査目的
市場には売り手と買い手が存在する。一橋祭で実施したアンケートは買い手
のみに焦点を当てた調査であった。この調査によって売り手の視点から見た
フェアトレード市場の現状や問題点を考えたい。
回答数
6件(ヒアリングもアンケートに基づいて行ったため含む)
33
調査団体プロフィール(店名、住所、業態)
・アースジュース、国分寺市本町4−13−12、小売り・カフェ
・カフェスロー、府中市栄町1−20−17、直営・カフェ
・ぐらするーつ、豊島区東池袋3−1−3サンシャインシティー5F、直営
・ふろむあーす、世田谷区三軒茶屋2−13−16エコー仲見世内、小売り
・PROVIGOR、北区浮間1−5−6−507、焙煎・卸売り・小売り・
コンサルティング
・ネパリ・バザーロ、横浜市栄区小菅ヶ谷4−10−15マリーク1F
各質問に対する回答
まずは問ごとに結果を見ていきたいと思う。各問に対して簡単な補足、説明、考察を付
け加える。
1.いつからフェアトレードコーヒーを扱い始めましたか?(回答数:6)
・1993年、1994年、1995年、1999年、2001年、2003年
ショップ開設時からコーヒーを扱っているところが多い
2.どうしてフェアトレードコーヒーを扱おうと思われたのですか?(回答数:6)
・フェアトレードの代表的なアイテムだから
・日常的に消費するものだから
・資本主義の矛盾を感じたから
・市場がなく、農民が困っていたから
・消費者、生産者、地球の全ての安全を達成できるものはフェアトレードしかないから
フェアトレード商品の中でなぜコーヒーを選んだか、という意味にもフェアトレード
に関わろうとしたきっかけは何か、という意味にも取れる問になってしまったため、
両方の回答が現れてしまった。
3.どこで生産されたコーヒー豆を扱っていますか?また、価格はいくらのものを扱って
いますか?また、どこから仕入れていますか?(回答数:6)
・ 東ティモール、メキシコ、タンザニア、エクアドル、ケニア、ブラジル、ペルー、
ネパール
価格に関しては単位の違いから単純比較できなかったが、世界一高い仕入れ値だと思
うという回答が二件あったことが興味深い。
34
4.フェアトレードコーヒー以外のコーヒーも扱っている方にお聞きします。フェアトレ
ードコーヒーの他にどのようなコーヒーを扱っていますか?また、その価格はフェア
トレードコーヒーと比較してどのくらいに設定されていますか?(無回答)
5.フェアトレード豆を輸入する際苦労することはありますか?(回答数:4)
・流通経路の確保(保管を含む)
・中間業者を介さない輸入ルートの確立
当然のことながら自社で輸入している店からの回答のみとなった。
6.消費者のフェアトレードコーヒーへの反応はどうですか?(味、価格等に関して)
(回答数:6)
・価格は若干高め、理解ある方に買われている
・日本の市場に合わせているためリーズナブル
・味はどの店も好評
・安心という声も聞こえる
7.フェアトレードコーヒーを注文(購入)する方はどのような客層の方が多いですか?
(回答数:5)
・広い年齢層に渡っている
・30∼50代の女性中心
・フェアトレードだからという人もいるが、美味しいコーヒーが好きという人の方が多
い
広い年齢層に渡っているという回答が三件あった。
8.カフェで出すフェアトレードコーヒーと、豆の販売を両方手がけている方にお聞きし
ます。その二つを比較してどちらの売れ行きが良いですか?(無回答)
9.フェアトレードコーヒーの売り上げは順調に伸びていますか?(回答数:5)
・伸びている
・少しずつ伸びている
・伸びていない
はっきり伸びているという回答は一件、少しずつ伸びているという回答が二件、伸び
35
ていないという回答が二件。現状はなかなか苦しいようだ。
10.フェアトレードコーヒーの品質に関してどう思いますか?(回答数:5)
・いい
・一概にいいとは言えない
・回転が良くなればもっとよくなるはず。現状では保管期間がながくなってしまうの
でどうしても品質が落ちる
11.日本におけるフェアトレードコーヒーのシェアの低さについてどう考えています
か?また、シェアを上げるためにどのようなことをしていますか?
∼シェアの低さについて
・フェアトレードの認知度の低さが問題
・国外のことに関心を向けない人が多い
∼どのようなことをしているか(どのようなことをすべきか)
・商品力とマーケティングが必要
・地道に試飲などのイベントをやっていく
・店での販売を増やすしかない
・メディアでブームにしてはならない
・フェアトレードを支える人材の確保
・店で地道にPR活動をする
時間はかかるかもしれないが草の根的な広め方をすべきという声が多かった。
まとめ、感想
日本におけるフェアトレード市場はまだまだ発展途上である。その問題点は大きく二
つに分けられる。すなわち、認知度不足と日本の消費者の消費性向の問題である。認知
度不足に関しては最も一般的に言われていることで、ここでわざわざ述べる必要はない
と思う。日本の消費者の消費性向に関しては、この調査を始めるまではあまり問題視し
ていなかったが、実際にフェアトレードに携わっている人の声を聞いた今では最大の問
題であると考える。そして、その日本人的な消費性向の多くは自分自身にも当てはまる
ものであり、赤面の思いであった。価格重視の考え方や国外の出来事に対する関心の低
さなど、日本人にはフェアトレードの浸透を阻む性向が多く見られる。この日本人的な
部分をいかにして変えていくかが最大の問題であると思う。この課題は一朝一夕になせ
るようなものではない。しかし、一人一人が恥を自覚し、それを周りに伝えるべく努力
していけば、そして十年、二十年という長いスパンをかければ、きっと解決できる課題
であると信じる。
36
5−2.消費者に対して行った意識調査と結果分析
実施日
2004 年 10 月 29 日∼31 日
実施方法
一橋祭で出店したフェアトレード商品を扱ったカフェ、「Café fair fair」
に来店、店内で食事をした客全員にアンケートを依頼し、席で回答しても
らった。アンケートは、フェアトレードについて簡単に説明した文章を付
けて渡すものと、何も付けずにアンケートのみ渡すものの2種類を用意し、
ほぼ 5 人ごとに交互に渡した。これは、フェアトレードに関する情報量の
差が消費者に与える影響を見るためのものである。注文時にカウンターで
アンケートを手渡ししたため、ほぼ全員から回答を得ることができた。た
だし、無回答や、回答の判別が困難なものが一部あったため、回答数は必
ずしも一致していない。Q3、Q5 は複数回答、それ以外の問いはあてはまる
もの 1 つに○をつけてもらう形で回答してもらった。
カフェでは、フェアトレードのコーヒー、紅茶を使ったドリンクと一部フ
ェアトレード商品を使って作ったケーキなどの軽食を販売した。コーヒー
は、People Tree で販売している、ペルー産の中深煎りアラビカコーヒー豆
を中挽きしたオーガニックのフェアトレードコーヒー(200g ¥840)1 種類
を使い、コーヒーは 1 杯¥160 で販売した。
目的
①消費者の一般のコーヒーに対する嗜好
②フェアトレードに対する認知の度合い
③フェアトレードに対する意識
④フェアトレード商品に対する潜在需要
を把握すること。
回答数
269
各質問に対する回答数
Q1:あなたは普段どの位コーヒーを飲みますか?
1.ほぼ毎日
(説明あり)68 人
(説明なし)
67 人
(合計)
135 人
(説明なし)
15 人
(合計)
31 人
(説明なし)
24 人
(合計)
38 人
2.週に 1∼2 回
(説明あり)16 人
3.週に 3∼4 回
(説明あり)14 人
37
4.月に 1∼2 回
(説明あり)14 人
(説明なし)
10 人
(合計)
24 人
20 人
(合計)
40 人
5.ほとんど飲まない
(説明あり)20 人
(説明なし)
Q2:あなたはコーヒーをどのような形で飲むことが多いですか?(最も多いものに○)
1.自分でレギュラーコーヒーを入れて飲む
(説明あり)53 人
(説明なし)
67 人
(合計)
120 人
(合計)
87 人
2.カフェなどの飲食店でコーヒーを飲む
(説明あり)38 人
(説明なし)
49 人
3.自販機やスーパーなどで缶やパックのコーヒーを買って飲む
(説明あり)38 人
(説明なし)
36 人
(合計)
74 人
Q3:Q2で答えたような形で飲むコーヒーを購入する時、どのような点を重視しますか?
(複数回答可)
1.価格
(説明あり)47 人
(説明なし)
55 人
(合計)
102 人
(説明なし)
74 人
(合計)
157 人
(説明なし)
11 人
(合計)
16 人
(説明なし)
15 人
(合計)
32 人
(説明なし)
11 人
(合計)
23 人
(説明なし)
25 人
(合計)
54 人
(説明なし)
9人
(合計)
11 人
(説明なし)
6人
(合計)
11 人
2.味
(説明あり)83 人
3.商品のデザイン
(説明あり)5 人
4.イメージ
(説明あり)17 人
5.有機栽培・無農薬
(説明あり)12 人
6.手に入れやすさ
(説明あり)29 人
7.豆の産地
(説明あり)2 人
8.その他
(説明あり)5 人
Q4:これまでフェアトレードについて知っていましたか?
1.知っていた
(説明あり)49 人
(説明なし)
53 人
(合計)
102 人
(説明なし)
78 人
(合計)
159 人
2.知らなかった
(説明あり)81 人
Q5:「フェアトレード」と聞いて思い浮かぶものを下の選択肢から選んで下さい
(複数回答可)
38
1.公平
(説明あり)52 人
(説明なし)
61 人
(合計)
113 人
(説明なし)
27 人
(合計)
47 人
(説明なし)
13 人
(合計)
45 人
(説明なし)
50 人
(合計)
114 人
(説明なし)
15 人
(合計)
27 人
(説明なし)
34 人
(合計)
72 人
(説明なし)
30 人
(合計)
50 人
(説明なし)
3人
(合計)
6人
(説明なし)
20 人
(合計)
42 人
(説明なし)
16 人
(合計)
30 人
(説明なし)
22 人
(合計)
35 人
2.環境保護
(説明あり)20 人
3.ボランティア
(説明あり)32 人
4.途上国支援
(説明あり)64 人
5.有機
(説明あり)12 人
6.生産者支援
(説明あり)38 人
7.南北問題
(説明あり)20 人
8.男女平等
(説明あり)3 人
9.手作り感
(説明あり)22 人
10.持続可能性
(説明あり)14 人
11.民族文化
(説明あり)13 人
Q6:これまでにフェアトレードの商品を購入したことはありますか?
1.はい
(説明あり)19 人
(説明なし)
24 人
(合計)
43 人
→商品
雑貨
26 人(アクセサリー、バッグ、カレンダー、楽器など)
食品
20 人(コーヒー、紅茶、砂糖、塩など)
衣料
11 人(帽子、シャツなど)
その他
0人
→理由
買うなら社会的によいものを
デザインがかわいい
コンセプトに共感した
品質・デザインがよかったから
バングラデシュ女性をサポートする会に入っている
39
フェアトレードの商品だから
かわいい品物で気に入ったから
めずらしい
手作りだから
無農薬だから
生協にあったから生産者支援のため
丈夫そう
色・形が気に入ったので
興味がある
リーズナブル
友人にすすめられて
2.いいえ
(説明あり)109 人 (説明なし) 105 人 (合計) 214 人
→理由
知らなかった
出会わなかった
意識していなかった
機会が無い
高い
身近に無い
生産者に思い至らなかった
いつでもどこでも入手できない
他にひいきの店がある
味が好みに合わない
自分からあまり足を運ばない
特に関心が無く漫然と商品を手にしていたため
※ 似ていると判断した理由は省いた。理由については、回答数の判別が困難であるため記
入していない。
Q7:仮に今、味などの品質が全く同じコーヒーが2つあり、1つはフェアトレードでない
コーヒー、もう1つはフェアトレードコーヒーであるとします。一般的にフェアトレ
ードコーヒーの方が価格は高くなる傾向にあるのですが、フェアトレードでないコー
ヒーの価格を200円とした場合、フェアトレードコーヒーがいくらであれば買おう
と思いますか?(最も考えの近いものに○)
1.200円
(説明あり)24 人
(説明なし)
35 人
2.230円
40
(合計)
59 人
(説明あり)33 人
(説明なし)
32 人
(合計)
65 人
(説明なし)
34 人
(合計)
86 人
(説明なし)
27 人
(合計)
46 人
1人
(合計)
1人
3.250円
(説明あり)52 人
4.300円
(説明あり)19 人
5.400円以上
(説明あり)0 人
(説明なし)
Q8:あなた自身についてお答え下さい。
(性別)1.男
100 人
2.女
163 人
(職業)1.一橋生
50 人
2.一橋生以外の大学生
3.高校生
17 人
4.会社員
49 人
10 人 7.その他
21 人
6.フリーター
79 人
5.主婦
43 人
(年齢)1.10代
46 人
2.20代
112 人
3.30代
33 人
4.40代
19 人
5.50代
31 人
6.60代以上
11 人
アンケートと説明文は巻末資料を参照されたい。次に、アンケート結果の分析を行う。
結果分析
ここでは一橋祭で行ったアンケートの結果に対して、まず自分達が設けた仮説の検定を
行う。その後、仮説以外に何らかの相関が見受けられるポイントに関しても検定を行う。
なお、Q7が関わる量的データの検定には t 検定を、それ以外の質的データの検定には χ2
乗検定を用いる。なお、検定での有意水準は全て5%としている。
仮説
①フェアトレードに関する情報量が多ければ多いほど、支払意思額は高くなる。
フェアトレードの基準の1つとなっている生産者に対して公正な対価を支払う、と
いう部分を理解している、フェアトレード商品の購入経験があるなどフェアトレー
ドに理解があるほど支払い意思額は高くなるのではないかと考えた。
②「コーヒーを飲む習慣と支払意思額に相関がある」
普段、レギュラーコーヒーを飲む人は、普段、缶やパックなどで売られているコー
ヒーを買って飲む人に比べてコーヒーに対する評価が元々異なると思われる。ここ
では普段レギュラーコーヒーを飲む人の方が、コーヒーに高い金額を払うことを厭
わないという予想を立てた。
③有機を重視する人の支払意思額は高い
フェアトレードコーヒーのほとんどは、有機栽培によって作られた豆を使った「有
機コーヒー」である。有機コーヒーは、一般的な(有機でない)コーヒーに比べ価
41
格は比較的高めである。普段飲むコーヒーが有機である人は、仮説 と同様に、普
段飲むコーヒーに高い金額を払うことに抵抗がないため、フェアトレードコーヒー
に対しても有機コーヒーと同等の評価をするのではないかと予想した。
④価格を重視する人の支払意思額は低い
仮説①でも述べたように、フェアトレードコーヒーは、生産者に公正な賃金を支払
うという目的を持つため、一般的なコーヒーよりも価格は高めである。そのため、
普段飲むコーヒーに価格が低いことを求める人はコーヒー自体が一般的なもので
あれ、フェアトレードコーヒーであれ、それほど高い価格を支払わないのではない
かと考えた。
<検定方法について>
・ χ2乗検定
仮に「2つの質問に対する回答が互いに独立である」とした場合のそれぞれの回答に
対する期待度数を求める。χ2乗値は期待度数と実測度数の離れ具合を表した数値で
あり、その値が出る確率が十分に小さければ「2つの質問に対する回答が互いに独立
である」という前提が正しくない→2つの質問に対する回答には相関がある、という
論理。
χ = ∑∑
2
(実測度数 − 期待度数 )2
期待度数
Q7 の回答を FT コーヒーに対する支払意思額とし、私たちはそれに関する以下の4つの
仮説を設けた。
①FT に関する情報量が多ければ多いほど、支払意思額は高くなる
②コーヒーを飲む習慣と支払意思額の間には相関がある
③有機栽培・無農薬を重視する人の支払意思額は高い
④価格を重視する人の支払意思額は低い
①…「Q4 で知っていると答えた人」
、「説明の付いている用紙で Q4 において知らなかった
と答えた人」
、
「説明の付いていない用紙で Q4 において知らなかったと答えた人」の3
つのグループに区分して、それぞれの Q7 の回答を比較する。
②…Q2 の回答別に Q7 の回答を比較する。
③…Q3 で「有機栽培・無農薬」を選択した人と、選択しなかった人、それぞれの Q7 の回
答を比較する。
④…Q3 で「価格」を選択した人と、選択しなかった人、それぞれの Q7 の回答を比較する。
42
① 「FT に関する情報量が多ければ多いほど、支払意思額は高くなる」という仮説
グループ 1…Q4 で「知っている」を選択
グループ 2…Q4 で「知らなかった」を選択、かつ説明あり
グループ 3…Q4 で「知らなかった」を選択、かつ説明なし
200 円 230 円 250 円 300,400 円
グループ 1
11
32
29
10.89% 31.68% 28.71%
グループ 2
19
17
32
25.68% 22.97% 43.24%
グループ 3
28
16
22
35.90% 20.51% 28.21%
58
合計
65
83
22.92% 25.69% 32.81%
χ2乗値
合計
自由度
片側確率
101
グループ 1∼2
18.25585
3 0.000389511
28.71% 100.00%
グループ 1∼3
18.09662
3 0.000420121
グループ 2∼3
5.504108
3 0.138393112
29
6
74
8.11% 100.00%
12
78
15.38% 100.00%
47
253
18.58% 100.00%
(χ2 乗検定を行うため、300 円と 400 円の回答をまとめて一つにした)
有意水準 5%で「グループと Q7 の回答が互いに独立である」という帰無仮説を棄却でき
るのはグループ 1∼2、1∼3 の間であり、2∼3 の間については帰無仮説を棄却できない。
よって、Q4 で「知っている」と回答した人は「知らなかった」と回答した人より高い支払
意思額を示すが、説明の有無は支払意思額に影響しないという結果を得た。
なぜ、説明の有無が Q7 の回答に影響しなかったのだろうか。まずは説明の文章そのもの
を検討することから始めたい。説明の文章の中からフェアトレードを象徴するキーワード
を抜粋し、それから連想される Q5 の回答を並べてみる。
・ 「貧困」
・ 「途上国」…4.途上国支援
・ 「対等」「公正」…1.公平
・ 「生産者の人々を支援」…6.生産者支援
・ 「環境に不可をかけない」…2.環境保護
・ 「持続可能な方法」…10.持続可能性
説明の文章はこの順序でフェアトレードに関する情報をアンケート回答者に対して与え
ていたことになる。これらの情報がアンケート回答者に正確に伝わったとするならば、グ
ループ 2 の方がグループ 3 よりも上記の 5 つの選択肢を選択すると考えられる。
43
公平
グループ 2
環境
35
ボラ
10
途上国
22
有機
30
生産者
3
南北
9
男女
8
手作り 持続
2
46.05% 13.16% 28.95% 39.47% 3.95% 11.84% 10.53% 2.63%
グループ 3
32
13
6
19
8
38.55% 15.66% 7.23% 22.89% 9.64%
7
9
1
5
民族
4
4 76
6.58% 5.26% 5.26%
10
0
9 83
8.43% 10.84% 1.20% 12.05% 0.00% 10.84%
上の表は各グループの Q5 に対する回答である(複数選択可のためパーセンテージの合計
は 100%とならない)。グループ 3 よりグループ 2 の方が多くなるはずの「公平」
「環境保
護」「途上国支援」「生産者支援」「環境保護」「持続可能性」では有意性が見られない。
また、説明の中で「寄付や援助とは異なり」としているにも関わらず、「ボランティア」
に関してグループ 2 の方がグループ 3 よりも選択するという結果が見られた(片側確率
0.0016)。
これらのことから、説明の文章ではフェアトレードに関する情報が十分にアンケート回
答者に伝わらなかったということが考えられる。よって、Q7 でグループ 1∼2、グループ 1
∼3 において相関が認められなかったのは、この説明の文章の不十分さが原因であると言え
る。
② 「コーヒーを飲む習慣と支払意思額に相関がある」という仮説
グループ 4…Q2 で「レギュラーコーヒー」を選択
グループ 5…Q2 で「カフェ」を選択
グループ 6…Q2 で「缶・パック」を選択
200 円 230 円 250 円 300,400 円
グループ 4
20
27
40
17.70% 23.89% 35.40%
グループ 5
15
25
22
20.55% 34.25% 30.14%
グループ 6
23
13
20
31.51% 17.81% 27.40%
合計
58
65
82
22.39% 25.10% 31.66%
合計
26
113
23.01% 100.00%
11
73
15.07% 100.00%
17
73
23.29% 100.00%
54
259
20.85% 100.00%
44
χ2乗値
自由度 片側確率
グループ 4∼5
3.665467
3
グループ 4∼6
5.302783
3 0.150921897
グループ 5∼6
6.854637
3 0.076678172
0.29992709
どのグループ間においても、有意水準 5%で「Q2 の回答と Q7 の回答は互いに独立であ
る」という帰無仮説を否定できない。よって、コーヒーを飲む習慣と支払意思額の間には
相関はないという結果を得た。
③ 有機栽培・無農薬を重視する人の支払意思額は高いという仮説
グループ 7…Q3 で「有機栽培・無農薬」を選択
グループ 8…Q3 で「有機栽培・無農薬」を選択しない
200 円 230 円 250 円 300,400 円
グループ 7
1
4
8
4.35% 17.39% 34.78%
グループ 8
59
62
60
合計
66
10
37
グループ 7∼8
13.48983
自由度
片側確率
3 0.003688628
237
15.61% 100.00%
87
23.08% 25.38% 33.46%
23
χ2乗値
43.48% 100.00%
79
24.89% 26.16% 33.33%
合計
47
260
18.08% 100.00%
有意水準 5%で「有機栽培・無農薬を重視するかどうかということと Q7 の回答は互いに独
立である」という帰無仮説を棄却できる。よって、Q3 で有機栽培・無農薬を選択する人の
支払意思額は選択しない人のそれより高いということが言える。
④ 価格を重視する人の支払意思額は低いという仮説
グループ 9…Q3 で「価格」を選択
グループ 10…Q3 で「価格」を選択しない
200 円 230 円 250 円 300,400 円
グループ 9
29
29
30
28.71% 28.71% 29.70%
グループ 10
29
37
54
合計
13
101
12.87% 100.00%
32
152
45
χ2乗値
自由度
グループ 9∼10 5.804286
19.08% 24.34% 35.53%
58
合計
66
3 0.121530235
21.05% 100.00%
84
22.92% 26.09% 33.20%
片側確率
45
253
17.79% 100.00%
有意水準 5%で「価格を選ぶかどうかということと Q7 の回答は互いに独立である」という
帰無仮説を棄却できない。よって、価格を重視する人の支払意思額は低いという仮説は否
定される。
以下は、その他の設問ごとに χ2 乗検定を用いて調べたところ、相関が見られたものであ
る。
<Q1 と Q2>
(相関 A)Q1 で「ほぼ毎日」と回答した人は、Q1 で他の回答をした人より Q2 で「レギュ
ラー」を回答する。(≒0)
<Q2 と Q3>
(相関 B)Q2 で「カフェ」または「缶・パック」を選択した人は「レギュラー」を選択し
た人より Q3 で「イメージ」を選択する。(0.00054)(0.00071)
(相関 C)Q2 で「レギュラー」または「缶・パック」を選択した人は「カフェ」を選択し
た人より Q3 で「手に入れやすさ」を選択する。
(0.0036)(0.00044)
(相関 D)Q2 で「レギュラー」または「カフェ」を選択した人は「缶・パック」を選択し
た人より Q3 で「味」を選択する。(0.020)(0.0044)
(相関 E)Q2 で「レギュラー」を選択した人は「カフェ」または「缶・パック」を選択し
た人より Q3 で「有機栽培・無農薬」を選択する。(0.048)(0.024)
<Q2 と Q8>
(相関 F)女性は男性より Q2 で「レギュラー」を回答し、男性は女性より「缶・パック」
を回答する(0.00013)
<Q3 と Q8>
(相関 G)女性は男性より Q3 で「有機栽培・無農薬」を回答する。(0.00072)
<Q4 と Q5>
(相関 H)Q4 で「知っている」と答える人は「知らなかった」と答える人より Q5 で「途
上国支援」(≒0)「有機」
(0.015)「生産者支援」
(≒0)「手作り感」(0.00024)
「持続可能性」(≒0)「民族文化」(0.0011)を選択する。
<Q5 と説明の有無>
(相関 I)説明有りの方が説明無しより Q5 で「ボランティア」を選択する。(0.0016)
この調査から明らかになったことを以下にまとめる。
46
支払い意思額
・
フェアトレードについて知っている人は、知らない人に比べてフェアトレードコーヒ
ーに対する支払い意思額が高い。
・ 普段飲むコーヒーが有機であることを重視する人のフェアトレードコーヒーに対する
支払い意思額は、他の点を重視する人よりも高い。
この結果に関して予想外だったのが、フェアトレードに関する情報(別紙参照)をつけ
た場合とつけない場合で差があまり出なかった点である。これについては、既述のとお
り説明の不十分さが原因であると考えられ、残念な結果であった。また、仮説④に対す
る検証にあった、コーヒーを選ぶ際に価格を重視する人の、フェアトレードコーヒーに
対する支払額が低いとは限らないという点も意外であった。ただし、Q3 に対する「価
格」という選択肢は、
「価格が安いことを重視する」という意図で設けたものだが、
「安
価である」ということを明示していなかったために「高くても買う」という意識の人も
含まれてしまった可能性がある。これについても、選択肢の設定の不備によるものであ
ると考えられるので、ここで結果とすることは避ける。
コーヒーの飲み方と重視する点
・
ほぼ毎日コーヒーを飲む人は、家などでレギュラーコーヒーを入れて飲む人が多い。
・ 普段レギュラーコーヒーを飲む人
→「手に入れやすさ」「味」「有機」を重視する
・ 普段、カフェなどでコーヒーを飲む人
→「イメージ」「味」「有機」を重視する
・ 普段、缶やパックのコーヒーを飲む人
→「イメージ」「手に入れやすさ」を重視する
フェアトレードコーヒーは、レギュラーコーヒーの形で売られたり、カフェなどで売
られたりすることが多い。このことから、フェアトレードコーヒーの品質を高め、そ
の味が消費者に認められれば、シェアの拡大につながると考えられる。また、有機コ
ーヒーであることをラベルなどによってアピールすることも有効だろう。一方、第 2
章でも少し触れたが、最近では、大手コーヒー企業である UCC やサントリー、ユニカ
フェがそれぞれ、
「レインフォレストアライアンスコーヒー」、
「レインボーマウンテン」
という、有機栽培、農園の環境、従業員の賃金、教育などに配慮して生産された「サ
ステイナブルコーヒー」を使った製品を、缶・パックなどの形で販売している。この
ような取組みは、普段缶やパックのコーヒーを飲む人に対してフェアトレードコーヒ
ーをアピールする重要な手段になると考えられる。
47
男女の差
・ 男性は女性よりも缶やパックでコーヒーを飲む傾向が強い
・ 女性は男性よりもレギュラーコーヒーを飲む傾向が強い
・ 女性は男性よりも普段飲むコーヒーが有機・無農薬であることを重視する
フェアトレード商品を買う人は、女性が多いと言われている。女性の視点に立った商品
開発や、マーケティングがフェアトレードコーヒーのシェア拡大には不可欠である。ま
た、これまで顧客となりにくかった男性については、前項で紹介したような缶やパック
でより手軽にフェアトレードコーヒーを飲めるような取組みなどが有効であると言え
る。
フェアトレードの捉え方
・ フェアトレードを知っている人は、フェアトレードに対して「途上国支援」
「有機」
「生
産者支援」「手作り感」「持続可能性」「民族文化」というものを思い浮かべる傾向にあ
る。
・ 説明によって、フェアトレードに対して「ボランティア」を思い浮かべる人が増加した。
フェアトレードを知っている人は、その目的である「途上国支援」「生産者支援」を理
解していることがこの結果からわかる。また、フェアトレード商品の購入経験がある人
が多いためか、
「民族文化」
「手作り感」という商品から思い浮かぶイメージを選ぶ人も
多い。「有機」を選ぶ人が多い事に関しては、フェアトレード=オーガニック(有機栽
培)と捉える人が多いことを示していると考えられる。
6.結論
これまで、文献調査やアンケート調査などから、フェアトレードコーヒーを初めとする
フェアトレード商品の現状と問題点を探ってきた。この章では、ここまでの調査から明ら
かになった、フェアトレード商品のマーケットシェア拡大のために必要なことをまとめた
いと思う。
日本の消費者はこれまで、グリーンコンシューマー運動などによって環境に配慮した製
品を求めてきた。しかし、現在は環境問題に対して関心はあるものの、自ら環境に配慮し
た製品を購入しようとは考えなくなった。この原因としては、現在、様々な商品が市場に
存在する中で、環境に配慮した製品が、価格や機能、利便性などの点で他の商品に比べて
消費者の求める基準を満たしていないためだと考えられる。
48
このことをフェアトレード商品に対して当てはめてみたい。現在、食料品から、衣類、
雑貨、工芸品など様々なフェアトレード商品が存在するが、商品によっては、輸送の過程
で破損したり、腐食してしまったりすることがある。また、生産者がいいと思って作った
ものでも、日本人の目から見れば品質に問題があると捉えられることもある。フェアトレ
ード商品のシェアが低い原因として、フェアトレードの認知度の低さが挙げられることが
あるが、もし認知度が上がったとしても、フェアトレード商品が日本の消費者の求める基
準に満たないものであれば、商品のシェア拡大は困難であることが考えられる。
フェアトレードコーヒーに関しては、フェアトレードコーヒー取扱店へのアンケート調
査から明らかな通り、味に関して消費者の評判はよく、他のフェアトレード商品に比べて、
企業の参入によってスーパーなどに進出するなど、販路の拡大にも成功している商品であ
る。このことが、近年の急激なシェア拡大の一因であると考えられる。また、消費者行動
に関する調査では、価格が消費者行動に対して少なからず影響をもたらすことが示された。
価格に関しては安くすることが一概にいいこととは言えない。特にフェアトレードは、生
産者への公正な賃金を支払うことを目的としているため、価格を下げることは、生産者が
フェアトレードに参加するインセンティブを失うことにつながってしまうのである。価格
を下げずに商品を売るためには、やはり高い価格を支払っても消費者が納得できるような
品質を実現することが不可欠である。消費者に対して行ったアンケートでは、普段飲むコ
ーヒーが「有機」であることを重視する人の支払い意思額が高かったことなどから、オー
ガニック市場など、ニッチの市場への進出も有効ではないかと考える。オーガニック市場
では、商品の価格が一般の商品に比べて高いが、それでも需要は存在する。フェアトレー
ド商品も、オーガニック商品を扱うスーパーや専門店に置くことで、需要を増やしていけ
るのではないだろうか。ただ、問題点としては、アンケート結果にもあったように、フェ
アトレード商品とフェアトレードでない有機の商品が混同されてしまう恐れがある。その
点については、一般の商品との区別の意味も含めて、フェアトレードラベルの統一とラベ
リングの徹底、そして何よりもラベルに対する消費者の意識の向上が望まれる。
一方、今回調査の対象としなかったフェアトレードコーヒー以外の衣料品、雑貨などの
商品に関しては、まだ販路も専門店などに限られていて、製品の質にもばらつきがあるも
のが多い。仮に販路が確保できたとしても、生産者側が急激な需要の増加に対応できない
恐れもある。これらのマーケットシェア拡大に関しては、品質の改善とともに、生産技術
の向上などの安定供給への取組みが必要である。
7.今後の課題
前章で、フェアトレードコーヒーを中心に、フェアトレード商品のマーケットシェア拡
大に必要な事項を整理した。この章では、明らかになった必要事項を実現していくための
49
今後の課題を述べる。
フェアトレード商品のマーケティング
第 3 章で明らかになったように、日本の消費者は自分の納得する品質のものを買う傾向
にある。フェアトレード商品は、生産者が持つ技術を活かして作られているものであるが、
現在の状況では、全ての商品が必ずしも日本の消費者に広く受け入れられるものであると
は言いがたい。そのことが、フェアトレード商品のシェアの小ささにつながっている要因
の 1 つであると考えられる。フェアトレードの一部の商品は、天候など生産地の環境の変
化によって安定的に供給が行えないことがある。また、現状では生産者に日本の消費者の
情報が十分に伝わっていないために、商品の質に対する考え方などに食い違いが見られる
ことがある。このような品質に関する問題は、フェアトレードという方法をとる限り避け
ては通れない問題である。これに関しては、現在主にフェアトレード団体が、生産者の技
術向上や現地での生産の効率化などを目指して活動しており、消費者と生産者との橋渡し
的役割も担っている。今後は、フェアトレードを社会貢献活動として行っている企業など
もこうした活動に積極的に関わり、フェアトレード商品を販売するだけでなく、フェアト
レードを推進するような取組をしていくべきである。また、商品開発や販路の確保といっ
た点に関しても、現在のフェアトレード団体の取組だけでは限界があり、他の団体や企業
と共同の取組が必要ではないだろうか。ただし、その際に注意しなければならないのは、
生産者側の技術力や原材料の供給力など、生産側の意向を重視するというフェアトレード
の理念を守らなければならないという点である。販売側の意向を押し付けたり、売れるも
のなら何でも売る、というのではフェアトレードとは言えなくなってしまうからである。
日本の消費者の商品に対する目は厳しく、近年「消費不況」と言われる状況の中で、消
費者は本当に買う価値のあるものを求めている。「価値」の基準は人それぞれであるが、日
本ではそれが商品の見た目や機能性、利便性に置かれる傾向があるということがわかった。
一方で、フェアトレード商品の消費者は、質や価格だけでなく、商品の背景にある問題や
生産の過程も考慮した上で商品を買う傾向があることが調査から明らかになった。現状で
は、フェアトレード商品は「高くて質のよくない」商品と捉えられがちであり、フェアト
レード商品を買う人は、商品が欲しいというよりもフェアトレードの背景にある問題意識
から、商品を手に取っていると考えられる。本来、事業目的は商品の付加価値であり、フ
ェアトレードそれ自体が商品となってはならないのである。今後、フェアトレード商品が
シェアを伸ばしていくためには、まずはフェアトレードについて知らない消費者の興味を
引き出さなければならない。そのための手段が商品の質の改善であり、マーケティングの
工夫である。つまりフェアトレード商品を「高いが質のいい」、魅力的な商品にしていくこ
とが求められているのである。
50
消費者への啓発活動
この論文では主に、現在の日本の消費者に受け入れられるためにフェアトレードがどう
変わっていかなければならないか、というスタンスを取ってきた。この姿勢に、異議を唱
える人ももちろんいるだろう。フェアトレードが消費者のニーズに合わせるのと同時に、
消費者もフェアトレードに関心を持つようにならなければならない。
論文の中で何度か述べたように、日本の消費者のフェアトレードに対する意識の低さは
様々なところで指摘されている。フェアトレード団体の多くは、独自にワークショップや
イベントを行うことによって、顧客などに対し、フェアトレードについての情報提供を行
っている。アンケート調査を行ったフェアトレードコーヒー取扱い店舗でも、顧客の一人
一人にフェアトレードコーヒーの背景やフェアトレードについて、説明を行っているとこ
ろがほとんどであった。このような草の根的な取組は重要であり、今後も続けていっても
らいたい。それと同時に、企業や行政、メディアなどがフェアトレードに関心を持ち、き
ちんとフェアトレードについて理解した上で、これを推進する方向に消費者に働きかける
必要がある。消費者に大きな影響を及ぼすこれらの 3 つの主体の取組が、消費者のフェア
トレードへの関心を集める上では非常に大きな役割を果たすと考えられるためである。既
に、第 2 章で紹介した「フェアトレードカンパニー」などでは、一般企業と協力する動き
も見られる。このような、フェアトレード団体と一般企業、さらには行政組織とのコラボ
レーションも、消費者へのPRとしては有効であり、今後増やしていくことが必要である。
近年、狂牛病や鳥インフルエンザなどの問題で、消費者の食に関する安全性への意識は
高まっており、トレーサビリティを重視するなど、少しずつ消費者が商品の背景に目を向
けるようになってきた。そういった潮流の中で、フェアトレードは今後まだまだ成長が見
込めるものである。フェアトレードが消費者に受け入れられるためには、消費者が、商品
がどのような目的で生産され、販売されているかを意識し、その背景を理解して商品を購
入するような「サステイナブルコンシューマー」の意識を持つことが必要なのである。
8.おわりに
日本は、アジア圏で唯一のフェアトレード商品のバイヤーであり、欧米とは異なった価
値観を持っている。インドやバングラデシュなど、アジアにはフェアトレードを必要とす
る生産者が多く存在するが、日本はアジアの中の一員として、フェアトレードを通じてこ
れらの国々に貢献していくことが期待されている。そういった意味で、今後日本でのフェ
アトレードの拡大が一層求められるだろう。この論文では、フェアトレード商品の量的拡
大を主に目的としたが、同時にフェアトレードの質的拡大の重要性も忘れてはならないこ
とを喚起したい。
最後に、この論文を作成するにあたり、先生方を始めとして様々な方に協力していただ
51
いた。また、ほとんどのメンバーがこのような形式での調査や論文作成の経験が無く、消
費者や店舗へのアンケート調査では、迷惑をかけてしまった部分もあった。この場を借り
てお詫びするとともに、協力していただいた方々に心から感謝したいと思う。
52
参考文献
文献資料
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新評論
辻村英之[2004]「コーヒーと南北問題−『キリマンジャロ』のフードシステム」
日本経済評論社
オックスファム・インターナショナル[2003]
「コーヒー危機−作られる貧困」筑波書房
佐藤絵里奈[2003]「日本におけるフェアトレード市場の現状と課題−コーヒーを中心に
−」一橋大学修士論文
小穴杏子[2004]「フェアトレード−拡大とそれに伴う課題」『Hermes』55 号
一橋大学ヘルメス編集委員会
「imidas 2004」集英社
「朝日現代用語
知恵蔵 2004」朝日新聞社
「現代用語の基礎知識 2004」自由国民社
板倉世典[2003]
「コーヒーの社会科学的分析−果たして有機コーヒーは市場を拡大でき
るのか?−」宇都宮大学卒業論文
田中勝人[1998]「統計学」新世社
坂田周一[2003]「社会福祉リサーチ」有斐閣
参考 URL
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グローバル・ヴィレッジホームページ(http://www.globalvillage.or.jp/)
People Tree ホームページ(http://www.peopletree.co.jp/)
ネパリ・バザーロホームページ(http://www.yk.rim.or.jp/~ngo/indexj.htm)
福猫屋ホームページ(http://www1.jca.apc.org/fc-company/fukuneko-ya/)
Earth Juice ホームページ(http://www.earthjuice.net/)
カフェスローホームページ(http://www.cafeslow.com/)
ぐらするーつホームページ(http://grassroots.jp/)
地球雑貨ふろむ・あーすホームページ(http://www.from-earth.net/)
わかちあいプロジェクトホームページ(http://www.wakachiai.com/)
オルタートレード・ジャパンホームページ(http://www.wakachiai.com/)
ピースウインズジャパンホームページ
(http://www.peace-winds.org/jp/main/index.html)
ウィンドファームホームページ
53
(http://www.windfarm.co.jp/)
フェアトレード・ラベル・ジャパンホームページ
(http://www.fairtrade-jp.org/index.html)
世界フェアトレードデーセミナー上級「フェアトレードコーヒー」
(http://www.wftday.org/pages/04report_j02_coffee.html)
Fairtrade Foundation ホームページ
(http://www.fairtrade.org.uk/downloads/pdf/spilling_the_beans.pdf)
EFTA(European Fair Trade Association)ホームページ
(http://www.eftafairtrade.org/Document.asp?DocID=237&tod=195911)
FTF(Fair Trade Federation)ホームページ
(http://www.fairtradefederation.com/2003_trends_report.pdf)
Colorado University Fair Trade Research Group ホームページ
(http://www.colostate.edu/Depts/Sociology/FairTradeResearchGroup/doc/fairtrade.pdf)
Specialty Coffee
Association
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(http://www.scaa.org/pdfs/2003_ARDPressReleaseSustainableCoffee.pdf)
My Voice ホームページ(http://www.myvoice.co.jp/excite/4301/index.html)
スターバックスホームページ
(http://www.starbucks.com/default.asp?cookie%5Ftest=1)
イオンホームページ(http://www.aeon.info/)
NHK「週間こどもニュース」ホームページ(http://www.nhk.or.jp/kdns/)
朝日テレビ「素敵な宇宙船地球号」ホームページ(http://www.tv-asahi.co.jp/earth/)
環境省ホームページ(http://www.env.go.jp/)
EIC ネットホームページ(http://www.eic.or.jp/index.html)
環境 NGO「環境市民」ホームページ(http://www.kankyoshimin.org/)
「フェアトレードとは」矢島祐香(http://home9.highway.ne.jp/fukuchan/whatsFT.html)
グリーンコンシューマー大阪ネットワークホームページ
(http://www.mmjp.or.jp/gcon/index.html)
「What Are the Limits of Fair Trade?」Cameron Baughen
(http://www.globalpolicy.org/socecon/trade/2003/1215limitsfairtrade.htm)
WEB マガジン『レアリゼ』「フェアトレードラベルへの違和感」三沢健直
(http://www.realiser.org/040727.htm)
その他の参考資料
朝日新聞
2004 年 2 月 2 日朝刊
「フェアトレードコーヒーを−途上国支援へ公正貿易広がる」
54
2001 年 11 月 3 日朝刊
「『フェアトレード』静かに広がる−買い物で途上国を支援」
他記事
日経産業新聞
2004 年 9 月 24 日
「安心・安全や環境配慮など、コーヒーに新たな価値−消費者の関心も追い風に」
日経流通新聞 MJ 2004 年 7 月 22 日
「途上国を支援する『フェアトレード商品』−身近に、おしゃれに」
日本経済新聞
2004 年 7 月 5 日朝刊
「CSR で競う企業の社会的責任(6)フェアトレードで途上国支援」
毎日新聞
2004 年 6 月 13 日東京朝刊
「[丸かじり探検隊]グリーンコンシューマー−社会的意味考えて、必要な量だけ買う」
2004 年 5 月 13 日大阪朝刊
「フェアトレード:消費を通じて途上国の生産者支援−いいモノを適正な値段で」
他記事
日本消費経済学会年報第 22 号
フェアトレードカンパニー「ソーシャル・レビュー2002 報告書」
セミナー「フェアトレード最前線!」(2004 年 10 月 16 日、渋谷ウィメンズプラザ)
FTSN メールマガジン
Vol.1∼12
55
巻末資料
一橋祭で実施したアンケート調査で使用したアンケート用紙と説明文
<アンケート用紙>
フェアトレードコーヒーに関するアンケート
こんにちは!私たち、寺西・山下ゼミ フェアトレード班では、現在「フェアトレードコーヒーに対す
る消費者の意識調査」を行っています。そこで、Café Fair fair にご来店の皆様にいくつかご質問さ
せて頂きたいと思います。アンケートの形式は、質問毎に選択肢の番号に○をつけるか、簡単に
記入して頂くものです。アンケートに関してわからないことがありましたら、スタッフまでお尋ね下さ
い。ご記入されたシートは、スタッフにお渡し下さい。よろしくお願いします。
Q1 あなたは普段どの位コーヒーを飲みますか?
1.ほぼ毎日
2.週に 1∼2 回
3.週に 3∼4 回
4.月に 1∼2 回
5.ほとんど飲まない
Q2 あなたはコーヒーをどのような形で飲むことが多いですか?(最も多いものに○)
1. 自宅でレギュラーコーヒーを入れて飲む
2. カフェなどでコーヒーを飲む
3. 自販機やスーパーなどで缶やパックのコーヒーを買って飲む
Q3 Q2で答えたような形で飲むコーヒーを購入する時、どのような点を重視しますか?
(複数回答可)or(下から3つ選んで下さい)
1.価格
2.味
3.商品のデザイン
6.手に入れやすさ
7.豆の産地
4.イメージ
5.有機栽培・無農薬
8.その他(
)
Q4 これまでフェアトレードのことを知っていましたか?
1.知っていた
2.知らなかった
Q5 「フェアトレード」と聞いて思い浮かぶものを下の選択肢から選んで下さい(複数回答可)
1. 公平
2.環境保護
7.南北問題
3.ボランティア
8.男女平等
9.手作り感
4.途上国支援
10.持続可能性
5.有機
6.生産者支援
11.民族文化
Q6 これまでにフェアトレードの商品を購入したことはありますか?
1.はい
→購入したことのある商品(
→購入した理由
)
(
)
2.いいえ→購入したことのない理由(
)
Q7 仮に今、味などの品質が全く同じコーヒーが2つあり、1つはフェアトレードでないコーヒー、も
う1つはフェアトレードコーヒーであるとします。一般的にフェアトレードコーヒーの方が価格
は高くなる傾向にあるのですが、フェアトレードでないコーヒーの価格を200円とした場合、
フェアトレードコーヒーがいくらであれば買おうと思いますか?(最も考えの近いものに○)
56
1.200円
2.230円
3.250円
4.300円
5.400円以上
Q8 あなた自身についてお答え下さい。
<性別>1.男
2.女
<職業>1.一橋生
2.一橋生以外の大学生
6.フリーター7.その他(
<年齢>1.10代
2.20代
3.高校生
4.会社員
5.主婦
)
3.30代
4.40代
5.50代
6.60代以上
ご協力ありがとうございました。このアンケートの結果は、研究目的にのみ利用され、第
3者に個人情報が漏洩するようなことはありません。
<説明文>
フェアトレードとは・・・
・
「フェアトレード」は、世界経済や流通システムの歪みによって貧困に追いやられ
ている途上国の人々を支えるために始められました。
寄附や援助とは異なり、立場の弱い人々が自立することを共に目指す、対等な
パートナーシップによる貿易です。
・ フェアトレードでは、公正な賃金を支払い、必要に応じて代金を前払いしたり、継続
的に安定した発注をしたりして生産者の人々を支援します。
・ また、生産地で豊富に採れる原料や伝統的な技術を活かしながら、広く消費者に
受け入れられる商品を開発するために、生産者にデザインのアドバイスやマーケ
ティング情報を提供します。
・
環境に負荷をかけない持続可能な方法でつくられたフェアトレード製品は、つくる
人にも、地球にも、そしてそれを身につけたり食べたりする私たちにもやさしいの
です。
57
____「People Tree」HP より(一部改訂)
<実測値廟>
相関 A
レギュラー
25
135
65.93%
15.56%
18.52%
100.00%
5
14
10
29
17.24%
48.28%
34.48%
100.00%
14
10
12
36
38.89%
27.78%
33.33%
100.00%
5
15
4
24
20.83%
62.50%
16.67%
100.00%
7
13
11
31
22.58%
41.94%
35.48%
100.00%
120
73
62
255
47.06%
28.63%
24.31%
100.00%
手に入れやすさ
手に入れやすさ
を選ぶ
を選ばない
週3∼4
月1∼2
飲まない
合計
カフェ
缶・パック
合計
相関 B
合計
21
週1∼2
レギュラー
缶・パック
89
毎日
相関 C
カフェ
イメージを選
イメージを選
ぶ
ばない
レギュラー
カフェ
缶・パック
合計
合計
6
112
118
5.08%
94.92%
100.00%
16
59
75
21.33%
78.67%
100.00%
13
47
60
21.67%
78.33%
100.00%
35
218
253
13.83%
86.17%
100.00%
味を選ばな
相関 D
合計
29
89
118
24.58%
75.42%
100.00%
6
69
75
8.00%
92.00%
100.00%
19
41
60
31.67%
68.33%
100.00%
54
199
253
21.34%
78.66%
100.00%
レギュラー
カフェ
缶・パック
合計
58
味を選ぶ
い
合計
74
27
101
73.27%
26.73%
100.00%
52
23
75
69.33%
30.67%
100.00%
27
33
60
45.00%
55.00%
100.00%
153
83
236
64.83%
35.17%
100.00%
有機を選ば
相関 E
レギュラー
カフェ
缶・パック
合計
有機を選ぶ
ない
相関 F
合計
17
101
118
14.41%
85.59%
100.00%
4
71
75
5.33%
94.67%
100.00%
2
58
60
3.33%
96.67%
100.00%
23
230
253
9.09%
90.91%
100.00%
レギュラー
カフェ
缶・パック
合計
34
23
36
93
36.56%
24.73%
38.71%
100.00%
84
49
26
159
52.83%
30.82%
16.35%
100.00%
118
72
62
252
46.83%
28.57%
24.60%
100.00%
男
女
合計
有機栽培・無
相関 G
男
女
合計
有機栽培・無
農薬を選ば
農薬を選ぶ
ない
相関 H
合計
1
92
93
1.08%
98.92%
100.00%
22
138
160
13.75%
86.25%
100.00%
23
230
253
9.09%
90.91%
100.00%
知っている
知らなかった
有機を選ぶ
ない
16
11
27
59.26%
40.74%
100.00%
85
155
240
35.42%
64.58%
100.00%
を選ぶ
を選ばない
36
101
64.36%
35.64%
100.00%
51
115
166
30.72%
69.28%
100.00%
116
151
267
43.45%
56.55%
100.00%
合計
知っている
知らなかった
59
合計
65
知らなかった
相関 H
合計
途上国支援
知っている
有機を選ば
相関 H
途上国支援
生産者支援
生産者支援
を選ぶ
を選ばない
合計
56
45
101
55.45%
44.55%
100.00%
18
148
166
10.84%
89.16%
100.00%
101
166
267
37.83%
62.17%
100.00%
合計
相関 H
手作り感を
手作り感を
選ぶ
選ばない
26
75
101
25.74%
74.26%
100.00%
15
151
166
9.04%
90.96%
100.00%
41
226
267
15.36%
84.64%
100.00%
知っている
知らなかった
合計
相関 H
知っている
知らなかった
合計
相関 H
合計
民族文化を
民族文化を
選ぶ
選ばない
22
79
101
21.78%
78.22%
100.00%
13
153
166
7.83%
92.17%
100.00%
35
232
267
13.11%
86.89%
100.00%
193
267
27.72%
72.28%
100.00%
持続可能性
持続可能性
を選ぶ
を選ばない
76
101
24.75%
75.25%
100.00%
4
162
166
2.41%
97.59%
100.00%
29
238
267
10.86%
89.14%
100.00%
知らなかった
合計
説明有り
説明無し
合計
60
合計
25
知っている
相関 I
合計
74
合計
ボランティア
ボランティア
を選ぶ
を選ばない
合計
29
88
117
24.79%
75.21%
100.00%
12
113
125
9.60%
90.40%
100.00%
41
201
242
16.94%
83.06%
100.00%
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