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精神科での身体拘束患者における深部静脈血栓症
総 精 神 神経 学 雑 誌 第 1 0 9巻 第 11号 ( 2 0 0 7 ) 9 9 81 0 07貢 説 精神科での身体拘束患者 における深部静脈血栓症 西 尾 彰 泰,後 藤 太 郎,植 木 啓 文 Aki hi r oNi s hi o,Tar oM.Got o h,Hi r of umiUeki:De e pVe i nThr ombo s i s i nt hePs yc hi at r i cPat i e nt sunde rPhys i c alRes t r ai nt 深部静脈血栓症 ( d e e pv e i nt h r o mbo s i s;DVT)に起因 した肺血栓塞栓症 ( p u l mo n a r yt h r o m・ bo e mb o l i s m;PTE) ,いわ ゆるエ コノ ミークラス症候群 による死亡 は,精神科領域 において も決 し て まれではな く,身体拘束中の突然死の原因 としてい くつか報告 されている.DVT発症の要因 とし て( D静脈血流速度の低下,②血管壁 の損傷,③血液凝 固能の冗進 が Vi r c ho wの三徴 として知 られて お り,精神科の身体拘束患者では,身体拘束 自体が下肢静脈還流 を阻害 し, また向精神薬や脱水が血 液凝固を促進 していると考 えられている.DVTによる突然死 を阻止す るためには予防 と早期診断が 何 よ り重要である. しか し DVTを診断する とき,その臨床症状 に特異的な ものはないため容易では ない.身体科 においては超音波法や下肢静脈造影法によって診断 されているが,精神科病床の大半 を 占める単科精神科病院では人的 ・物的資源の制約か ら実施 は困難である.近年, よ り簡便 に DVTを 診断する方法 として,さまざまな生化学 的診 断法が開発 されつつある.中で も,D ダイマーを用いて DVTをスク リーニ ングで きる可能性が示唆 されている. この方法な ら少量 の採血のみでベ ッドサイ ドで診断で きるため,精神科の DVT診断の有力 な手法になる可能性がある.予防については,理学 的予防法 と薬物予防法がある.身体科では基礎疾患に応 じてい くつかの予防法 を組み合わせて使 うこ とが常識 となっているが,精神科においては どの方法が もっ とも適 しているかについていまだ模索途 上である.非 自発的に行われることが多い身体拘束において,患者の人権 を保護するためにも精神科 医療者は DVT対策 にこれ まで以上 に注意 を払 う必要がある. <索引用語 :深部静脈血栓症,静脈血栓塞栓症,肺血栓塞栓症,身体拘束> は じめ に 近年,エ コノミークラス症候群 という名前で世 とか ら,先 日の能登半島地震では行政 ・医療が協 力 してさまざまな対策 ・啓蒙活動が行われた.厚 の中に知 られるようにな り,医療者の間で も注 目 生労働 省 の調査 に よる と, ここ 1 6年 間 で PTE de e p vei n を集 めているのが,深部静脈血栓症 ( の患者数 は約 9倍 に増 えてお り ( 図 1),2004年 t hr ombos i s;DVT) を起因 とす る肺血栓塞栓症 の第 6回 ACCP ( Amer i can Col l e ge of Che s t ( pul monar yt hr omboe mbol i s m ;PTE) に よ る Phys i ci ans:米 国 胸 部 医 学 会)の Cons ens us 突然死 である.2004年の新潟県中越地震で は, Conf e r e nc eonAnt i t hr ombot i cThe r apyによる 車で寝泊 まりする車内避難 を続 けた被災者が,エ 静脈血栓塞栓症予防ガイ ドラインを基本骨格 とし コノ ミークラス症候群で死亡す る例が相次いだ こ た 「 肺血栓塞栓症/ 深部静脈血栓症 ( 静脈血栓塞 著者所属 :岐阜大学大学院医学系研究科神経統御学講座精神病理学分野,De p a r t me n to fPs y c h o p a t ho l o gy ,Di v i s i o n o fNe u r o s c i e n c e ,Gi f uUn i v e r s i t yGr a d ua t eSc ho o lo fMe d i c i n e 受 理 日 :2 0 0 7年 1 0月 6日 9 9 9 西尾・ 他 :精神科での身体拘束患者 における深部静脈血栓症 これに従 えば,一般的 に精神科で は, まず は患者 に鎮静 を試 み, それ にもかかわ らず鎮静が得 られ なか った時 に身体拘束が行われ,その後 も薬斉的こ よる鎮静 を試 みるのが一般であろうか ら,精神科 で身体拘束が行われている患者 は,基本 リスクの いかんにかかわ らず, ほぼ全症例が高 リスク群以 上 に位置づ け られ ると考 えられ る.指針 によると 高 リスク群 の患者では,間欠的空気圧迫法か低用 量未分画ヘパ リンを使用す ることになっている. しか し,実際の医療場面でそ こまで行 ってい るの VTの研 はかな り認識 の進 んだ施設で あ ろう.D 究領域では従来の診断 ・治療 ・予防法 に加 えて日 進月歩で新 しい方法 も開発 されている.そ こで本 図 1 PTE患者数の年次推移 ( 厚生労働省人 口動態統計) 稿で はそうした動向 も踏 まえなが ら精神科 におけ るD VT対策 について解説す ることとする. 血栓生成の機序 栓症)予防ガイ ドライ ン」12)が本邦 で発表 された. DVTの約 1 5 -2 0%が PTEを発症 す る とされ, 逆にP TEの 9 5%が DVTに起 因 す る とされ て い る27,42). D VTと PTEは 1つ の連 続 した病 態 般的 に,血栓 は大 き く動脈血栓 ( 白色血栓) と静 であるとの考 え方か ら,欧米ではこれ らを併せて 動脈血栓 とはその名 の通 り動脈血の存在下で生 じ 静脈血栓塞栓症 ( v e no u st h r o mbo e mbo l i s m; る血栓であ り,急性心筋梗塞や脳梗塞 の原因 とな VTE)と呼ぶ ことも多い.DVTとは,下肢 の総 る. また, その生成 には血小板が深 く関与 してい 腸骨静脈,外腸骨静脈や大腿静脈 な どの深部静脈 る.動脈硬化 な どで血管の内壁が破綻 して血管内 に静脈 内血栓が生 じる疾患である.血栓が局所 に 皮下のコラーゲ ン繊維が露出す る と,血 中の v o n とどまっている間 は大 きな問題 を生 じないが,血 TEを起 こし, シ ョックや 栓が遊離 を起 こす と P Wi l l e b r a n d因子 ( V WF) とい う巨大糖蛋 白が コ ラーゲ ンに結合す る.す る と v WFの立体構造が 呼吸不全 を呈 し,死 に至 ることもある. 変わ り,血小板が コラーゲ ン繊維 に集積 し,血栓 従来 D VTは整形外科 な ど身体科領域での病態 そ もそ も血栓 とはいかなるものであろうか.一 脈血栓 ( 赤色血栓)の 2つに分 けることがで きる. を生成するのである.動脈血栓 の予防法 としては VTの認識が広が るにつ と考 えられていたが,D アスピリン,チクロピジンな どの抗血小板薬が有 れて,精神科 において も身体拘束中に同様 の事が 効である. 25, 28, 34, 35, 41) .上 あ る こ とが報告 され てい る7,13,16,18, 静脈血栓 は,D VTの原因 とな る血栓で, その 述の 「 血栓塞栓症/ 深部静脈血栓症 ( 静脈血栓塞 生成 には線容系が深 く関与 している. まず,繊維 栓症)予防ガイ ドライン」 に習い,精神科領域で 素であるフィブ リノーゲ ンが トロンビンとカルシ も 「 静脈血栓塞栓症予防指針」 3 3 )が作成 された. ウムの作用 により重合 しフィブ リンポ リマー とな それによる と,精神科領域 での D VTの リスク評 る. そ こに活性化第 ‡ Ⅰ Ⅰ Ⅰ因子が作用 し架橋 されて 価 としては( ∋2 4時間以上の下肢 を含 む身体拘束, 安定化 フ ィブ リンに変化 す る ( 図 2).それが静 お よび( 参2 4時間以上 の強 い鎮静 で 2段 階 リス ク 脈血栓である.赤血球 を くるみ こんで赤 く見 える レベルが増強 し,( ∋以外 の身体拘束,( 塾以外の鎮 ため赤色血栓 とも呼 ばれ る.静脈血栓が長時間血 静で 1段階 リスクレベルが増強す るとされてい る. 管内に存在す ると,血流障害等 を引 き起 こし,_ L l ・ . 1 0 0 0 精神経誌 ( 2 0 0 7)1 0 9巻 11号 ⑳ 堰 き⊥ ⑳ Fj bri n o g e n 恵 D XDFr a g T T mt l D D AI Fr a g me nt ∼ ㊨ 8 ∈ )Q D-Di mer 図 2 静脈血栓の生成 と分解 BEA: -ドr a BT m e nt 1 0 0 1 西尾・ 他 :精神科での身体拘束患者 における深部静脈血栓症 体 にとって不利益になる.そこで, これを分解す 凝固能の冗進が Vi r c ho w の三徴 として知 られて るのがプラス ミンという蛋白分解酵素である.プ いる4 2 , 4 3 ) .昏迷状態 にあるような患者では,第二 ラス ミンは重合する前のフィブ リノーゲンにも作 の心臓 とも呼ばれ る下肢筋肉の収縮が起 こらない 用 して,最終 的 に 2分子 の D分画 と 1分 子 の E ため下肢静脈還流のうっ滞が起 こる. また衝動性 分画へ と分解 され るが ( 一次線溶) ,安定化 フィ が高 く幻覚妄想状態 にあるような患者 を身体拘束 ブ リン ( 血栓)に も作用 し,DXD フラグメン ト する場合 には,身体拘束 自体が静脈血流の うっ滞 か YY フラグメ ン トを経て最終 的 に 2量体 の D を引 き起 こし, またその後の向精神薬 による鎮静 分画へ と分解 される ( 二次線溶) ( 図2 ) . この安 がさらに DVT リスクを高める. これ ら特殊 な状 定化 フィブ リンの分解産物 であ る 2量体 の D 分 態の患者だけではな く,精神科患者全体が もって 画が D ダイマーである ( 後述) .静脈血栓 の予防 いる T )スク として向精神薬 の使用があ る35・ 45・ 47) 薬 としてはワルファリンなどの抗凝固薬が使われ Zo r n be r gらによると抗精神病薬 の服用 によって DVTの リスクはで増加 し ( Odd s比 7. 1 ) , この る. 動脈血栓,静脈血栓 と区別 して説明 したが,坐 増加 はハ ロペ リドールな どの高力価薬 よりもクロ 体内では血小板のみによる純粋 な血小板血栓, フ ルプロマジンやチオ リダジンなどの低力価薬で よ ィブリンのみで血小板 を含 まない純粋 な凝 固血栓 り顕著であった という5 0 ) .抗精神病薬だけでな く, は存在 しない.体内にで きる血栓は全て血小板 と 抗 うつ薬 にお いて も DVT リス クの増加 が起 こ フィブリンの両者を含む混合血栓であ り,血栓の る39 ) . これ ら薬斉匝音DVT を引 き起 こすメカニズ 種類によって両者の比率が異なるにす ぎない.血 ムについての詳細 は不明であるが,鎮静 ・肥満 ・ 小板 と凝固系は互いに密接に作用 し合 う性質があ 高脂血症 ・抗 リン脂質抗体の誘導や血液凝固能の り,血小板が活性化 されると,活性化血小板の表 冗進 といった ことが想定 されている10・11). また薬 面で陰性荷電 した リン脂質が発現 し凝固系が活性 剤誘発性の DVT は服用開始直後の数 ヶ月で もっ 化 され,凝固系が活性化すると,凝固系カスケー とも多い とい う. ドの下流で強力な血小板活性化作用 を有す る トロ DVT の中で も腸骨静脈や大腿静脈主幹部で発 ンビンが産生 され血小板が活性化 され る とい う 生す るような近位部 DVT は,高い確率で PTE po s i t i vef e e d ba c k機構 がある.その結果,血小 に発展 し実際,重篤 な PTEの大 部分 が近位 部 板血栓ので きるところにはフィブリンがで き,フ ィブリン血栓のあるところには血小板が活性化 さ DVTか ら発生す る.一方,下腿 に限局す る遠位 部 DVT は一般的に小さ く,重篤 な合併症 は生 じ れ混合血栓が形成 され るのであ る9). したが って, に くい. しか し, これ らが近位部 に進展す ると重 この両者 を厳密に区別することに意味 はないが, 篤 な PTEを起 こしうる.治療 を行わなかった場 どちらの血栓かによって引 き起 こされ る病態,そ 合 には,遠位部 DVTの約 2 0%が中枢 に伸展 し, の予防法が異なることは知 ってお く必要がある. その うち 4 0 -5 0%が臨床上有意 な PTEにな る また一方で,動脈血栓 に対 してのワル ファリン, と報 告 され て い る19).血 栓 形 成 直 後 の新 しい 静脈血栓に対 してのアスピリンにも一定の有効性 DVTが もっ とも遊離 しやす く,時間経過 ととも がある14).何 らかの理由で第-選択の薬物 を使 う に遊離 Lやす さは減少する.起立や歩行,排便 ・ ことができない場合 には,それ らの使用 も考慮す 排尿行為などの際には下肢の筋肉が収縮 し,筋肉 べ きである. ポンプの作用 により静脈環流量が増加することで 血栓が静脈壁 よ り遊離 しやす くな るため,PTE 深部静脈血栓症の病態生理 は排便 ・排尿行為や安静臥床後の初回歩行時な ど 静脈血栓の一種である DVT生成の要因 として によ く起 こる ことが報告 されてい る2 9 ) .DVTが ①血管壁の損傷,( 参静脈血流速度の低下,③血液 生成 されて しまった場合 には,PTEへ発展す る 1 0 0 2 精神経誌 ( 2 0 0 7)1 09巻 11号 前 に静脈 内フィル ターの設置や血栓溶解療法 とい った対処が必要 となるため,予防 と早期診断の重 要性 が様々な研究 で強調 されている4 0 ) . ないのが現状 であろう. これ ら方法の弱点 を補 うため,近年様々な生化 学的スク リーニ ング法が開発 されつつある. これ らの方法 は採血 のみでで きるため,手軽で繰 り返 深部静脈血栓症の診断 し行 うことがで き,評価 は容易 であ る.TAT, DVT を検 出す る方法 には,臨床症状,画像所 局,生化学的診断法の 3つがある. 臨床症状 として は,DVTが発生 し静脈が閉塞 Fop,D ダイマー,可溶性 フィブ リン22)な どの 有用性 が検討 されてい るが,特 に D ダイマ ー は す るかそれ に近い状態 になると,下肢 の腫脹,熱 特 異 的 に検 出 す る こ とが で き る とい う点 で, 感,表在静脈 の怒張,お よび立位潮紅 などが観察 DVT の検 出法 として注 目され てい る物 質 で あ され る.急激かつ広範囲 に静脈が閉塞 され,側副 る4,8・ 15, 20, 26・ 30・ 36・ 37・ 38・ 46・ 48) 血行 が不十分な場合 は,動脈 の拍動 も停止 し有痛 Dダ イ マ ー は,現 在 主 に La t e x凝 集 反 応 や ELI SA法 を用 いた定量法が行 われてお り, これ 性 の青股腰 と呼 ばれ る状 態 とな る ことが ある. 安定化 フィブ リンの分解産物であ り,二次線溶 を DVT の理 学的検 査 法 と して Ho ma n' ss i gn ( 足 らの方法 は D ダイマー測定 のゴール ドスタ ンダ 関節 を背屈 させる と俳腹部 に痔痛が誘発 される) , ー ドとみなされている1 ) . しか し,測定 す るため Luke ' ss i gn ( 下肢 や俳腹部 の痔痛 が立位 によ り we n be r g' ss i gn ( 肪腹部 を血圧計 増強 す る),Lo には遠心分離機や大型の機器 を必要 とす ることか マ ン シ ェ ッ トで 加 圧 す る と健 側 よ り20 -3 0 定することはで きず,精神科全体 に対 す る恩恵 は mmHg低圧 で痔痛が 出現 す る)な どが あ る. い ずれの臨床症状 も DVT を疑わせ る所見であるが, 少ない.一万, より新 しい方法 として, キッ トに ら中央検査部門 を擁するような総合病院で しか測 全 血 を滴下 す るだ けで迅 速 測 定 可 能 な定 性 法 も感度が低 くDVTのスクリーニ ング としては適 ( whol e bl ood aggl ut i nat i on法 や i mmunoc hr o ma t o gr a p hy法)が開発 されて い る5). この 方法 による DVT診断 は感度 94 -1 00%,特異度 40-53% で あ りDVTのス ク リーニ ング に適 し さない. ている. この方法 ならベ ッ ドサイ ドでわずかの量 そ れ ぞ れ の感 度 ( %)/ 特異度 ( %)が,腫 脹 ( 76. 2 / 44. 6),変 色 ( 42. 8 / 80. 8),熱 感 ( 61. 9 / 65. 9) ,Ho ma n' ss i gn ( 56. 2 / 85. 2 ) と1 ) ,いず れ 画像所見 には下肢静脈造影 と超音波法がある. の採血 を行 うだけでその場で測定が可能であ り, 下肢静脈造影 は診断を正確 に行 える という長所 も 精神科 における DVT診断のための有力 な手法 と あ り,確定診断をす るためには必須であるが,倭 な りうる. 襲性 の検査 であ り,造影剤の副作用および血栓 を ただ し,Dダイマーを用 いて DVT をスク リー 遊離 させ る可能性 な どの リスクがある.一方,超 ニ ングす る場合 には異常 と正常 を境す るカ ッ トオ 音波法 は非侵襲の検査であるとい う利点があ り, フ値 を決めなければならない.整形外科領域 では 感度 95%,特異度 98% と非常 に高い診断率 を示 塩 田 らがカ ッ トオ フ値 を 1 0J L g / mlに とると最 も す.静脈 をブローベで圧迫 した際 に,正常な静脈 鋭敏 な検査 となると報告 しているが43 ) ,D ダイマ であれば南平化す るが,血栓 を生 じた静脈 は南平 ーの測定手技 や,基礎疾 患や治療法 に よって D 化 しない. この扇平の有無 で診 断す る圧迫法 と, ダイマー値 の推移 にはかな りの違いがあることも ドップラー法 によって血流 を確認す る方法がある. 23・ 26・ 32・ 44) , ある領域でのカ ッ ト 報告 されてお り2,3,6・ しか し,検 出率 は検者 の習熟度 に因 るところが大 オ フ値 をそのまま他 の領域 に持ち込む ことはで き きく, また骨盤部 の総腸骨静脈 の診断が不可能で ない.現在 まで に身体拘束 患者 にお ける D ダイ あるな どの欠点がある. いずれの方法 も,精神科 マー値 の推移 に関 しては報告がな く,最適なカッ 病床 の大半 を占める単科精神科病院では実施 で き トオ フ値 に関 して も決めることはで きない. この 1 0 0 3 西尾・ 他 :精神科での身体拘束患者 における深部静脈血栓症 ような現状 のなか,精神科 医療 の中で Dダイマ せ ることで,診断精度 をあげてい くことが必要で ーを DVT スクリーニ ングに用いようとした場合 あろう. どの ようにすればいいのであろうか. まず第- に 大切 なのは,D ダイマーの測定手法 により測定値 深部静脈血栓症の予防 にだいぶ差があるので,その施設での手法 と基準 DVT の予防 には大 き く分 けて理学予防法 と薬 値 を確認することである.現在一般的によ く用い 物予防法の 2つのアプローチがある.理学予防法 られ てい るの は,La t e x凝集反応 による測定 で としては,早期離床 を促す ことが まず第-であ り, ある.整形外科での手術後 などは当然,凝固系が その他 に弾性ス トッキング と間欠的空気圧迫法が 活発 に作動す るので D ダイマー値 は高 くな りや ある.簡便な方法 として下肢 の運動や下肢マ ッサ す くなる. よって整形外科で用いられているカッ ージも行われる. トオ フ値 1 0J J g/ mJは,身体拘束患者 に適応す る 弾性ス トッキング とは足首 に 1 6 -2 0mmHgの には高すぎるもの と思われ る.5 -1 0〟g/ mJの範 圧力のかか る靴下である.ス トッキング ・タイプ 囲で も赤信号が ともっているものと考 え,身体拘 とハイソックス ・タイプがあるが,着脱が容易で 束の解除や間欠的空気圧迫法 ( 後述)などのより あるため通常 はハイソックス ・タイプが用い られ 積極的な対策が必要 と考 えられ る. る.弾性ス トッキングが足の形 に合わない場合や D ダイマーの測定におけるもうひ とつの問題 は, 従来 Dダイマー による DVT の診断 はス ク リー 下肢病変のためにス トッキングが使用で きない場 合 には,弾性包帯 の使用 を考慮 す る.DVT の リ ニングを重視 しているので ( つ まりカットオフ値 スクが続 く限 り終 日着用するのが基本である.間 ne gaを低 めに設定 してあるので) ,陰性的中率 ( 欠的空気圧迫法は,出血の リスクが高い場合 にも t i vepr e di c t i veva l ue;NPV) は高いが陽性的中 有用である.カーフポンプ ・タイプ とフッ トポン 率 ( po s i t i vepr ed i c t i veval ue;PPV) は低い と プ ・タイプがある.原則 として臥床初期 より装着 いうことである.必然的に超音波法や下肢静脈造 を開始 し,少な くとも十分な歩行が可能 となるま 影を用いた確定診断が必要 とい うことになる.そ で終 日着用する.ただし無症候性の DVTが間欠 れを避けるための工夫がい くつか報告 されている. 的空気圧迫法 をきっかけに肺へ移動 LPTE を起 Wel l sらの方法4 8 ) で は事 前 に,癌 の存在,下肢 の麻痔 ・不動化状態,3日以上 のベ ッド上仰臥な こす こともある4 9 ) .従って,使用開始時 に深部静 脈血栓症の存在 を否定できない場合 には,十分な どの項 目によって患者の リスク状態 を点数化 しリ インフォーム ドコンセン トの もとに,注意深 く使 スク階層 を行 う. この リスクが低 くてか つ D ダ 用することが求められる. イマー陰性の場合 には超音波法 を行わずに DVT これ ら理学予防法 は大がか りな装置 も必要な く は否 定 して よ い とい う もの で あ る. また, 精神科患者 に適 していると考 えられ るが,弾性ス Akma nらは D ダイマー の測定 と,さ まざ まな トッキ ング着 用 に よる DVT発 生頻度 の低下 は DVT を示唆す る臨床症状 の組 み合わせを試 した 2 3% と間欠的空気圧迫法 ( 6 2%減少)や低分子 結果,D ダイマー と Ho ma n' ss i gnを組み合わせ ヘパ リン ( 7 0%減少)な どの薬物療法 に較 べて て 用 い る と,PPV9 0. 0%,NPV9 4. 4% と 著 しく低 い1 2 )とい うデータ もあ り,その有用性 PPV を顕著 に高 めることがで きる ことを報告 し にはしばしば疑問が付されている. また,間欠的 ている1 ) .上述 したように,単科精神科病 院で は 空気圧迫法はノイズが大 き く皮膚への不快感 も強 超音波法や下肢静脈造影が容易には行 えず, また い. この方法がた とえば幻覚妄想状態にある精神 た とえば疑い例 を確定診断のために移送 しように 科患者の精神状態 に悪影響 を与 えないか どうかは も移送 自体が PTEの リスクとなる という事情 を 今後の検討課題である. 考えると,D ダイマー と他の臨床所見 を組 み合わ 薬物予防法 としては未分画ヘパ リンを使 う方法 1 0 0 4 精神経誌 ( 2 00 7)1 0 9巻 11号 とワル ファ リンを使 う方法がある.未分画ヘパ リ ( 1 ) 精神科患者で身体拘束患者 は全員 DVT の高 ンの使 用法 として, 5000単位 を 8時 間 もし くは 1 2時間 ご とに皮下注射 す る方法 と,APTT ( 活 ( 2 ) 身体拘束開始前 には保護者 に DVT の リスク 性化部分 トロンボプラスチン時間)の正常値上限 についてインフォーム ド ・コンセ ン トしてお を目標 として投与量 を調節す るとい う方法がある. 煩雑 な方法 であるが,後者の方が効果 は確実 に得 られ るので,最高 リス クの患者 に推奨 され てい る12). ワル ファ リンを使 用 す る場 合 には,PT- I NR ( プ ロ トロンビン時間 の国際標 準化比) を 1. 5-2. 5 となるよう調節 しな けれ ばな らない. ワル フ ァ リンは内服 開始 か ら効 果 の発現 まで に リスク群 であることを関係者が共有す る. く.そのための説明文書 を用意 してお く. ( 3 ) 医師 ・看護師 は日常の診察 ・観察で下肢 の状 態 をチェックす る. ( 4) なるべ く身体拘束の一時解除 を行 うようにし て,拘束 した ままとしない. ( 5 ) 身体拘束前お よび身体拘束中,定期的 にルー チ ンで D ダイマーを測定する. 3 -5日間 を要す るた め,投与開始初期 には他 の ( 6) D ダイマー値が高値 を示 した場合,身体拘 予防法 を併 用することが求め られる. これ ら薬剤 束 は解除する.やむをえず解除で きない場合 について今後,使用経験 を積 み重ね ることによっ には,ヘパ リンを用 いて引 き続 き D ダイマ てノウハ ウを蓄積 し,それ を精神科医が共有 して ーの経過 を見 る. い くことが必要である. 文 ま と め 精神科医療 において身体拘束 は,患者本人 の意 献 1 )Akman,M.N. ,Ce t i n,N. ,Bayr a mo gl u,M. ,e t ∴ Val ueofDdi me rt e s ti n di a gno s i ng de e pve i n al 思ではな く精神保健指定医の判断の もとに非 自発 t hr ombos i si nr e habi l i t at i oni npat i e nt s . Ac hi ve sofPhys - 的 に行われ ることがほ とん どである.それゆえ, i c alMe di c i nea nd Re ha bi l i t a t i o n,8 5( 7);1 0 9 1 1 0 9 4 , 2 0 0 4 身体拘束 は代替 の手段がない場合 に限 られ, また 身体拘束中 は適切 な医療 および保護 を与 えること が法律 で義 務 づ け られてい る.身体 科 において DVT発症 の要因 ・診 断 ・治療 ・予防 に至 るまで 2 )阿部靖之,中野哲雄,越智龍弥ほか :大腿骨近位 0 7例における急性肺塞栓症の検討.骨折,2 4;1 部骨折 3 4 ,2 0 0 2 3 ) 阿部靖之,岡嶋啓一郎,中野哲郎ほか :大腿骨近 様々な科学 的知見が集積 され実践 されているの と 位部骨折における深部静脈血栓症の肺塞栓症発生頻度 と危 比較 して,精神科 においては これ まで DVT の認 識が不十分 であったために, そ もそ も身体拘束患 険因子の検討.整 ・災害,4 4;1 1 6 5 1 1 6 8 ,2 0 0 1 ,Que he n be r ge r ,P. ,Fe l i ks ,I . ,e t 4 )Buc e k,R.A. 者 も DVT の リスクに晒 されているのか, もし晒 al ∴ Re s ul t sofne wr api das s a y( c a r di a cDdi ne r )i n されている とした らそれ はどの程度の ものなのか, といった こ とさえ客観的データはない.今後,精 神科医 に求 め られ て い るの は,精神 科 にお け る DVT に関す る様々なデータ を集 め,現実の精神 科医療 にマ ッチ した診断 ・予防 ・治療法 を構築 し てい くことと考 えられ る. t hedi a gno s i sofde e pve i nt hr ombo s i s .Thr omb Re s , 1 0 3;1 7 2 3 ,2 0 01 5 )Ci ni ,MリLe gnani , C. , Caval l a r oni , K. ,e tal . :A ne wr api dbe ds i de a s s ay f o rDdi ne rme as ur e me nt ( s i mpl i f yDdi me r )i nt hedi a gnos t i cwor kupf o rde e p ve i nt hr ombos i s . ∫Thr ombHae mo s t , 1( 1 2 );2 6 8 1 2 6 8 3 , 2 0 0 3 6 )富士武史 :整形外科術後肺血栓塞栓症 ・深部静脈 参 考 4 4 9 ,2 0 0 5 血栓症マニュアル.南江堂,東京,2 まだ科学的に検証 された ものではないが,参考 7 )Fu j i t a,M.Q. ,Zhu,B.L. ,Qua n,L,e tal . : として現在著者 らの行 ってい る DVT 対策 につい Pul mo nar ye mbo l i s m:a c as eofs udde n une xpe c t e d て記 してお く. de at hi naps yc hi at r i cho s pi t al .Le g Me d,1;7 6 1 7 9 , 1 0 0 5 西尾 ・ 他 :精神科での身体拘束患者 における深部静脈血栓症 1 9 9 9 Thr o mbRe s ,91;1 01 1 0 4 ,1 9 9 8 8 )Gar di ne r ,C. ,Pe nnane ac ' h,C. ,Wal f o r d,C. ,e t l s ,P.S∴ Me t hodol o gyf ora 21 )Kl i ne ,∫ .A. ,We l al ∴ Ane val ua t i onofr api d Ddi me ras s aysf o rt h e r a pi dpr o t oc olt oml eoutpul monar ye mbol i s mi nt he e xc l us i o nofde e pve i nt hr ombos i s .Br∫Hae mat o l ,1 2 8 e me r ge nc yde par t me nt .AnnEme r gMe d,4 2( 2 );2 6 6 1 ( 6 );8 4 2 8,2 0 0 5 2 7 5 ,2 0 0 3 9)後藤信哉,岡本奈美 :血栓症治療 ・予防の原則. Me di c i na,41;9 4 69 4 8 ,2 0 0 4 , 0. ,So de r s t r om, T. G∴ As s o1 0 )Ha gg, S. ,Spi gs e t , c i a t i ono fve no ust br ombol i s ma ndc l oz a pi ne .Lanc e t 3 5 5;1 1 5 5 1 1 5 6 ,2 0 0 0 1 1 )Hagg,S. ,Spi gs e t ,0∴ Ant i ps yc hot i c i n duc e d ve noust hr omboe mbol i s m:ar e vi e w oft hee vi de nc e . CNSDr ugs ,1 6;7 6 5 7 7 6 ,2 0 0 2 深部静脈血栓症 ( 静脈血栓塞栓症) 1 2 )肺血栓塞栓症/ 2 2 )児玉隆夫,宝亀 登,長谷川雅一 ほか :可溶性 フ ィブ リン 人工関節置換手術後の深部静脈血栓症の早期診 断マーカー としての有用性について.骨 ・関節 ・靭帯 ,1 6 ( 9 );1 1 8 3 1 1 91 ,2 0 0 3 2 3 )小林俊之,伊藤博元,南 和文ほか :静脈造影法 による術後深部静脈血栓症 ( D∀T)の検討 と Ddi me r値 との関連.骨 ・関節 ・靭帯 1 7( 8 );8 9 7 9 0 3 ,2 0 0 4 2 4 )Laur s e n, S.B. , J e ns e n, T.N. ,Bol wi g, T. , e tal ∴ De e pve noust hr o mbos i sandpul monar yembol i s mf ol ・ 予防ガイ ドライ ン制作委員会 :肺血栓塞栓症/ 深部 静脈血 l o wi ngphys i c alr e s t r ai nt .Ac t aPs yc hi at rSc aれd,1 1 1 栓症 ( 静 脈 血 栓 塞 栓 症)予 防 ガ イ ドラ イ ン.Me di c al ( 4 );3 2 4 3 2 7 ,2 0 0 5 Fr o ntl n t .Lt d. ,東京,p5 8 ,2 0 0 4 1 3 )原田貴史,友竹正人,小笠原一能 ほか :精神科臨 3( 7 ); 床 にお ける下肢深部静脈血栓症.臨床精 神医学,3 9 3 9 9 4 6 ,2 0 0 4 1 4 )Har t ,R.G. ,Hal pe r i n,J .L. :At r i alB br i l l at i o n 2 5 )Laz ams ,A∴ Phy s i c alr e s t r ai nt s ,t hr omboe m・ bol i s m,andde a t hi n2pa t e i nt s .JCl i nPs yc hi at r y,6 2; 2 0 7 2 0 8 ,2 0 01 2 6 )Li ppi ,G. ,Ve r al di ,G.E. ,Fr ac c ar ol i ,M. ,e tal . : Vr at i onofpl as maDdi me rf ol l owi ngs ur gr y:i mpl i c a・ a ndt hr omboe mbol i s m;ade c adeofpr o gr e s si ns t r oke - t i onsf orpr e di c t i on ofpo s t ope r at i ve venoust hr om・ pr e ve nt i o n.AnnI nt e r nMe d,1 31;6 8 8 6 9 5 ,1 9 9 9 boe mbol i s m.Cl i nExpMe d,1;1 61 1 6 4,2 001 1 5 )He i m,S.W. ,Sc he c t man,∫.M. ,Si ada t y,M.Sリ ,K.M. ,Le Moi ne,J.R. :I se mbol i cr i s k 2 7 )Mos e r e tal ∴ Ddi me rt e s t i ngf orde e pve noust hr ombo s i s:a c ondi t i one d ofde e pve no ust hr ombos i s?Ann I nt e r n me t aanal ys i s .Cl i ni c alChe mi s t r y,5 0;1 1 3 6 1 1 4 7 ,2 0 0 4 Me d,9 4;4 3 94 4 4 ,1 9 81 ,0p j o r ds moe n,S∴ Thr o m1 6 )He m,E. ,St e e n,0. 2 8)室井秀太,佐伯吉規,小杉真一 ほか :入院中に肺 bo s i sa s s oc i at e d wi t h py hs i c alr e s t r ai nt s .Ac t a Pa y・ 血栓塞栓症 を合併 した統合失調症の一例.精神科治療学, c hi at rSc and,1 0 3;7 3 7 6 ,2 0 0 1 1 8;8 3 98 4 2 ,2 0 0 3 1 7 )Hul l ,R.D. ,Hi r s h,∫. ,Car t e r ,C.J. ,e ta l . : Pul mo na r yan gi o gr aphy, ve nt i l at i onl ungs c anni n g,a n d ve nogr a phyf orc l i ni c al l ys us pe c t e dpul mona r ye mbol i s m wi t habnor malpe r f us i o nl ungs c a n.AnnI nt e r n Me d,9 8;8 91 8 9 9 ,1 9 8 3 1 8 )岩田正明,小林孝文,松崎太志ほか :精神科入院 2 9 )中村真潮 :周術期における深部静脈血栓症診断の 5;1 3 7 1 1 3 8 1 ,2 0 0 6 ポイ ン ト.麻酔,5 3 0 )中村真潮,中野 赴 :肺血栓塞栓症.診断 と治療, 9 2;1 01 1 1 0 ,2 0 0 4 31 )Ne al e,D. ,Tove y,C. ,Val i ,A. ,e tal ∴ Eval ua・ t i onoft heSi mpl i f yDdi me ras s ayasas c r e e nl ngt e s t 中に深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症 に躍思 した症例の臨床 f ort hedi agnos i sofde e pve i nt hr ombos i si nane me r ge n・ 的検討.精神医学 ,4 5;8 01 8 0 8 ,2 0 0 3 c yd e par t me nt .Eme r gMe d∫ ,21( 6 );6 6 3 6 6 6 ,2 0 0 4 1 9 )Kakkar ,Ⅴ.V. ,Howe ,C.T. ,FI a nc,C. ,e ta l . : Nat ur a lhi s t or yofpr os t ope r at i vede e pve i nt hr ombo s i s . La nc e t ,2;2 3 02 3 2 ,1 9 6 9 2 0 )Kawas aki ,T. ,Shi noki ,N. ,I wamot o,S. ,e tal ∴ Di agno s t i cval ueofpl as mat hr o mbi nan t i t hr ombi nI I I c o mpl e xa nd Ddi ne rc onc e nt r at i o ni npat i ne t swi t h va r i c o s eve i nsf ore xc l us i onofde e pve i nt hr ombos i s . 3 2) 日本臨床検査医学会標準化委員会血液凝固委員 : 日本血液学会標準化委員会血栓 ・止血検査標準化小委員会 合 同 プ ロ ジ ェ ク トHo me page( ht t p:/ / c s ws . t oky0- me d. ac . j p/ c s ws / c oags t dz / r e a ge nt / DDr e age nt . ht m) 3 3 ) 日本総合病院精神医学会教育 ・研究委員会 :静脈 1 73 4 ,2 0 0 6 血栓塞栓症予防指針.星和書店,東京,p. 3 4 )岡田保誠,寺田泰蔵,稲川博司 ほか :精神病院 に 1 0 0 6 おける急性肺血栓塞栓症一身体拘束患者 に対 する DVT予 防の必要性-.臨床精神医学,3 2;1 5 3 9 1 5 4 4 ,2 00 3 3 5 )岡田保誠,佐伯吉規,小杉真- ほか :入院中に肺 血栓塞栓症 を合併 した統合失調症の一例,精神科治療学, 1 8:8 3 9 8 4 2,2 0 0 3 精神経誌 ( 2 0 0 7)1 0 9巻 11号 4 3 )塩 田直史,佐藤 徹,松尾真嗣 ほか :大腿骨近位 部骨折術後の深部静脈血栓症の発症 と治療.臨整外, 3 8; 5 9 35 9 9 ,2 0 0 3 4 4 )Shi ot a,N. ,Sat o,T. ,Ni s hi da,K. ,e t al . : Change si nLPI ADdi me rl e ve l sa f t e rt o t alhi porkne e 3 6 )01 i vi e r ,B. ,J ac que s ,W. ,Ro bi n,P. ,e tal . :D- ar t hr op】 as t y r e l e vant t o de e p-ve i n t hr ombos i s di me r pl as ma me as ur e me nti n pat i ne t s unde r goi n g di agnos e dbybi l at e r alas c e ndi ngve no gr aphy.∫Or t hop ma j o rhi ps ur ge r y:us ei nt hepr e di c t at i ona nddi agno・ S°i ,7;4 4 4 4 5 0,2 0 0 2 s i sofpos t ope r at i vepr oxi malve i nt hr ombos i s .Thr om・ bos i sRe s ar c h,7 4;4 8 7 4 9 3 ,1 9 9 4 3 7 )Ot a, S. , Wada,H. , No bor i , T. , e tal ∴Di a gnos i s ofde e pve i nt hr ombos i sbypl as mas ol ubl e丘b r i norDdi me r .Am ∫He mat ol ,7 9;2 7 4 2 8 0 ,2 0 0 5 3 8 )Ot a, S"Wada,H. ,No bor i,T. , e ta l. :Di a gno s i s ofde e pve i nt hr o mbos i sbypl as mas ol u bl e丘b r i norDdi me r .Am JHe mat ol ,7 9( 4);2 7 4 2 8 0 ,2 0 0 5 gg, D.C. ,He r bi s o n,G. P. , e tal ∴ 3 9 )Par ki n,L,Ske Ps yc hot r opi c dmgs and f at alpul monar ye mbol i s m. Pham ac oe pi de mi oIDr ugSaf ,1 2( 8 );6 4 7 6 5 2 ,2 0 0 3 4 0 )Pi ni ,MりSpyr opoul o s ,A.C∴ Pr e ve nt i o no f ve noust hr ombo e mbol i s m.Se mi nThr ombHe mo s t ,3 2 ( 8);7 5 5 7 6 6 ,2 0 0 6 41 )Rami r e z ,M. ,I maz ,H. ,Rui z∫ .H. :Thr om・ 4 5 )諏訪 望,山下 格,伊藤耕三 ほか :向精神薬長 期服用時の副作用の検討.精神薬療基金研究年報, 1;1 1 3 - 1 1 7 ,1 9 6 9 4 6 )巽 典之,樫井錠治 :臨床検査室 にお ける FDP とD-ダイマー測定の現状.医学 と生物学,1 4 9( l l );4 3 7 - 4 4 3,2 0 0 5 4 7 )Thomas s e n,R. ,Vande nbr o uc ke ,J .P. ,Ro s e ndaal ,F.R∴ Ant i ps y c hot i c me di c at i o n and ve no us t hr ombos i s .Br∫Ps yc hi at r y,1 7 9;6 3 6 6 ,2 0 0 1 4 8 )We l l s , P. S. , Ande r s on, D. R. , Ro d ge r , M. , e tal . : Eval uat i o nofDdi me ri nt hedi a gnos i sofs us pe c t e d de e pve i nt hr ombos i s .N Engl∫Me d,3 4 9( 1 3 );1 2 2 7 1 2 3 5 ,2 0 0 3 4 9 )Yamada,N. ,Nakamur a,M. ,I s hi kur a,Kリe t al . :Tr i ge e r sofac ut e pul monar yt hr omboe mbol i s m boe mbol i s m af t e rphys i c alr e s t r ai nt .Ac t aPs y c hi at r de ve l ope di nhos pi t al ,Wi t hf oc us i n gont oi l e ta c t i vi t i e s Sc and,1 0 4;4 7 3 4 7 4 ,2 0 0 1 ast r i gge r i ngac t s .I nt∫Car di ol ,9 8;4 0 9 41 1 ,1 9 8 3 4 2 )Sc he l l on g,S. MリSc hwar z , T. ,Hal br it t e r , K. , e t 5 0 )Zor nbe r g,G.L. ,J i ck,H. :Ant i ps yc ho t i cdr ug al . :Compl e t ec o mpr e s s i onul t r as ono gr a phyoft hel e g us eandr i s koff ir s t t i mei di opa t hi cve no ust hr o mboe m・ ve i nsasas i ngl et e s tf ort hedi a gnos i sofde e pve i n bol i s m:ac a s e c ont r ols t udy.La nc e t ,3 5 6;1 2 1 9 1 2 2 3 , 2 0 0 0 t hr ombos i s .Thr o mbHae mos t ,8 9;2 2 8 2 3 4 ,2 0 0 3 Powered by TCPDF (www.tcpdf.org) 1007 Deep Vein Thrombosis in the Psychiatric Patients under Physical Restraint Akihiro NISHIO, Taro M. GaToR, Hirofumi UEKI Department of Psychopathology, Division of Neuroscience, Giju University Graduate School of Medicine Pulmonary thromboembolism induced by deep vein thrombosis (DVT) , which is known as economy-class syndrome, is one of sudden death in psychiatric patients under physical restraint. (1) A decrease in venous blood flow, (2) damage to vessel walls, and (3) the enhancement of blood clotting are the major risk factors for DVT (Virchow triad). It has been speculated that physical restraint inhibits venous blood flow, and that antipsychotic drugs facilitate blood clotting. In order to prevent sudden death due to DVT, prophylactic measures and early diagnosis are crucial. Whereas Doppler ultrasonography and contrast venography are the gold standards for the diagnosis of DVT, more simplified methods are now under development. Of those, D-dimer measurement, which can be conducted with a small blood sample, is the most potent candidate for the biochemical diagnosis of DVT. Although there are many prophylactic measures, including anticoagulant medications and physical therapies, it is not clear which is the most effective and suitable in psychiatric practice. Psychiatric professionals should pay closer attention to DVT in psychiatric patients under physical restraint. <Authors' abstract> <Key words: deep vein thrombosis, venous thromboembolism, pulmonary thromboembolism, physical restraint>