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RFIDが切り開く新たなビジネス・ スタイル −−可視化が導くRFID

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RFIDが切り開く新たなビジネス・ スタイル −−可視化が導くRFID
RFIDが切り開く新たなビジネス・
スタイル
−−可視化が導くRFID業務革新
やまもと しゅういちろう
山本 修一郎 NTTデータ 技術開発本部 副本部長 兼 ビジネスイノベーション本部 ユビキタス推進室長
RFIDを業務へ活用する取り組みが各方面で行われています.NTTデータで
は,ユビキタス・ソリューションである「生産」「物流」「流通」「保守・メン
テナンス」「リサイクル・廃棄」「資産管理」「セキュリティ」の7分野を中心
に,RFIDを活用したシステムの提供を目指しています.ここではRFIDを利用
した実証実験と活用事例を紹介します.なお本記事は,本年7月12日に開催
されました「第8回CIO特別フォーラム」(主催:株式会社IDGジャパン,会
場:六本木アカデミーヒルズ49オーディトリアム[六本木])での講演を基に
執筆したものです.
ウォルマートやターゲットなど流通業
RFID市場の現状
界での取り組みは,すでに実用導入段
階に入っているといわれ,日本の業界
■RFIDシステム構築における日本
びFDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)の
「Compliance Policy Guide
*3
」に
関係者からも大きな注目を集めていま
おける,人体への悪影響を及ぼす医薬
の現状と米国の動向
す.中でもウォルマートが主導する,
品の偽造防止にRFIDを活用するな
日本においても,ICタグの導入に向
EPC( Electronic Product Code)
ど,各業界が高度なトレーサビリティ
けたさまざまな取り組みがみられ,2
グローバル方式でのRFIDパイロット
を実現しようとしています.
年ほど前からRFIDを業務へ活用する
プロジェクトは有 名 です. そこに参
■基幹業務系に食い込みはじめた
企業が出始めています.しかしながら,
加している8社の1つで,髭剃りや
現在は必ずしも爆発的な普及に至って
シェービングクリームなどを生産する
ところで,RFIDの活用は,単なる
いるとはいえません.その要因はいく
ジレットは,納入ケースのほとんどに
バーコードの代替や従業員の手間の削
つか考えられます.RFIDの認識率や
RFIDを添付し,製品パッケージング
減というだけではなく,今や在庫の削
読み取り距離などの技術が未熟なこ
の段階からICタグの活用を研究するな
減や商品のリードタイム短縮,欠品率
と,費用対効果(対ランニングコス
ど,労働コスト削減と効率化に向けた
の改善など,具体的な業務自体に投
ト)が不透明なこと,タグやリーダの
研究を続けています.このような流通
資対効果のデータを蓄積し始めていま
コストが依然として高額なことなどで
業界では,かねてより懸案であった余
す.これはまさしく,RFIDが基幹業
す.またRFIDにはベストプラクティ
剰在庫の削減,商品滞留の回避,検
務系に食い込み始めていることを示し
*1
*1
がないという意見もあります.そ
品作業の省力化,偽造品の防止など
の理由の1つには,RFID技術標準は
を実現させるために,RFID導入によ
確立過程にあり,現状はミドルウェア
る洗練されたサプライチェーンの実現
製品が発表されつつある段階で,パッ
に非常に貪欲です.
ス
ケージ製品がほとんど存在しないこと.
取り組みは流通業界だけではあり
もう1つには,個々の業態や業務に
ません.航空業界では,組み立て工程
合わせて,企業や団体が排他的なソ
管理や整備の正確性改善に,また自
リューションを構築している現状があ
動車業界では製造タイヤの追跡管理
るためです.
やリコールによる早期回収にRFIDが
一方,米国での状況は日本に比べ,
実に多くの取り組みがなされています.
30
NTT技術ジャーナル 2005.11
実用化されています.さらに製薬業界
においては,
「e-Pedigree法
*2
」およ
RFID
ベストプラクティス:課題の克服や問題解
決のためのすぐれた実践例.
*2 e-Pedigree法:国内外から流入する偽造医薬
品のほとんどが,医薬品の流通過程で紛れ
込んでいる事実を踏まえ,医薬品メーカか
ら販売企業にいたる取引経路に関する記録
(Pedigree:系図)を,RFIDなどからの電子
データ管理するよう,州政府レベルで義務
付ける法案.
*3 Compliance Policy Guide:FDAと税関国境警
備局(CBP)が2003年12月に公表した,バイ
オテロ法食品関連施設登録規則の政策遵守
指針.バイオテロ法に基づき食品の安全性
を向上させながら,食品輸入の円滑な維持
を目指したもの.FDAは米国に輸入される
あらゆる食品の輸入事前通知,食品関連会
社のFDAへの登録という2つの規制を所轄.
L
ています.ジレットの取り組みも同様
て,各社のEPCIS(EPC Information
と,利用範囲が拡大し,機器やITの
ですが,欠品を防ぐために必要な商品
Service)どうしを相互に結ぶ「業界
“所有”から“利用”へとサービス形
をいち早く認識して生産し,目的の販
EPCIS」という,3つの方法を活用
態が変化していくでしょう.さらに,
売店へ速やかに配送するという,基幹
できることが分かります(図1).
企業間連携が始まると相互接続が必
系システムと連携したかたちに変えつ
■日本におけるRFID市場の成長
要となり,社会インフラ化によって広
日本国内におけるRFID活用に向け
範なサービスが出現し,RFIDエクス
ウォルマートのRFID導入にみる情
た取り組みは,2003年ごろよりRFID
トラネットの商用化,ASP化へと進む
報流通形態を参考にすると,取引先
関連の実証実験と並行して,閉域で
のではないかと考えています.
とのデータベースの共有には,既存の
の商用化が始まりました.その技術的
EDI(Electronic Data Interchange)
フィードバックがされることで,2005
ネットワークに接続してRFIDデータ
年度からのRFIDイントラネットの本
を活用する「業界データプール」,小売
格商用化が期待されています.また単
事業者とメーカの基幹系システムをつ
独で使用する閉域型ネットワークから,
ラットフォーム
なぐ「企業間エクストラネット」,そし
開放型ネットワークへの移行が始まる
ここで,NT Tデータの共通ソリュー
つあるといえます.
NTTデータのRFIDソリューション
■共通ソリューション基盤RFIDプ
ション基 盤 であるR F I D プラット
フォームを説明します.RFIDプラッ
メーカA
基幹系
業界データ
プール
基幹系
れたモノに対する情報の管理基盤のこ
とで,安全で高度な情報管理を容易
基幹系
社内
EPCIS
メーカB
トフォームとは,RFIDタグで識別さ
EAN.UCCがマスタデータベースを管理
コード情報をパートナ企業が参照
GDSNサービスにより互換性を確保
に実 現 することができるとともに,
小売
(スーパー)
EPCグローバルの各種標準に準拠する
企業間
エクストラネット
ことで,他のシステムとの連携や最適
社内
EPCIS
なシステムを選択できます(図2).
このRFIDプラットフォーム,およ
業界EPCIS
社内
EPCIS
びセンサネットワークプラットフォー
EAN: European Article Numbering
UCC: Uniform Code Council
GDSN: Global Data Synchronization Network
ムでは,生産者から物流事業者,小
売事業者,そして一般家庭に至る流
図1 情報流通形態
れの中の個々のシーンで,さまざまな
生産者
RFIDプラットフォーム・
センサネットワーク
プラットフォーム
端末(デバイス)の管理と統合
ユーザ管理
小売事業者
一般家庭
さまざまな端末(デバイス)を統一的に扱う仕組みを提供.
また端末を管理することで,端末の故障や不正利用を検出
情報管理
情報利用者の認証・ロールを管理し,
情報へのアクセス制御を行い,プライ
バシやセキュリティを確保
サービス連携
プラットフォーム
物流事業者
RFIDタグやセンサに紐づくオブジェクトに対する情報を登録・
編集・参照.大量の情報を処理可能にする負荷分散や,高度な データベース
情報管理を可能にするメタ情報管理の仕組みを提供
コンテクスト・アウェアネス・マネジメント
プラットフォーム
個別アプリケーション
…
図2 共通ソリューション基盤RFIDプラットフォーム
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ノ」「環境」です.先に挙げた7つの
分野に照らし合わせてみると,保守・
メンテナンス,資産管理,セキュリ
ティの分野では“ヒトやモノの位置”
を管理し,物流や流通分野では“モ
ノの位置”を,さらに生産とリサイク
ル・廃棄分野では“モノに対する作業
(プロセス)”を管理します.それら,
ヒトとモノの位置や作業はすべて“環
境”ととらえることで,その関係性を
明らかにすることができます.
ここで,RFIDを利用した当社の
実証実験と活用事例をいくつか紹介
します.
(1)
表 分野別ユビキタス・ソリューションの概要
機密文書管理システム
RFIDには,電池を内蔵して数十
分 野
提供システムの概要
メートルの距離でもリーダ・ライタと
生 産
変種変量生産に対応した,平準化生産計画アルゴリズム,状況対応型処理順序計
画システム,リアルタイム生産実績把握システム 交信できる「アクティブタグ」と,電
物 流
パレット,通い箱,コンテナ,個品等を対象とした,在庫管理,所在管理,入出
庫管理,荷役管理 流 通
流通過程における,仕入・在庫管理,販売管理,コンテクストアウェアネス
マーケティング,CRM,トレーサビリティ,偽造品防止
池を内蔵せずリーダ・ライタのアンテ
ナが放つ電波で電磁誘導を起こし,数
十センチの距離なら電波の受発信が可
能な「パッシブタグ」があります.「機
保守・
メンテナンス
生産設備や社会インフラ等の,利用状況自動計測,老朽化・故障把握,メンテナ
ンス作業効率化,再販時の整備記録保証 リサイクル・
廃棄
リサイクル・廃棄における,分別支援,処理プロセス管理,処理費用配分管理 ティブタグを身に付けて位置管理を行
資産管理
固定資産,文書・情報媒体,リース・レンタル品,社会インフラ等の資産管理
い,機密文書にパッシブタグを貼り付
セキュリ
ティ
オフィス等における入退出管理,機密情報へのアクセス権等の権限管理,幼児等
のロケーション把握,防災や災害対策
密文書管理システム」では,人にアク
けて棚に保管することで,誰がいつ何
を持ち出したか(もしくは返却したか)
の履歴を,棚に設置したリーダ・ライ
端末(デバイス)を統一的に扱い,端
ということです.企業のビジネスプロ
タが読み取って記録するシステムとし
末の故障や不正利用を検出する仕組
セスと一体化したかたちでRFIDが活
ています.閲覧権限のない人が文書を
みを提供します.また「情報管理デー
用されていくということが明確になっ
持ち出そうとすると,音声で警告する
タベース」により,RFIDタグやセン
てきたことで, N T T データでは,
と同時にシステム管理者に通報して,
サに紐づくオブジェクトに対する情報
RFIDプラットフォームおよびセンサ
機密文書の紛失や不正持ち出しを防
を登録・編集・参照するとともに,大
ネットワークプラットフォームに支え
止します.
量の情報を処理可能にする負荷分散
られた分野別ユビキタス・ソリュー
(2)
やメタ情報管理の仕組みを提供しま
ションを,「 生 産 」「 物 流 」「 流 通 」
アクティブタグと非接触型ICカード
ユビスタイルコラボレータ
す. さらに, 情 報 利 用 者 の認 証 ・
「保守・メンテナンス」「リサイクル・
を併用して,会議室予約システムなど
ロール(役割)を管理する「ユーザ管
廃棄」「資産管理」「セキュリティ」の
を運用するオフィスでの実証実験を実
理機能」によって,情報へのアクセス
7つの分野を中心にRFIDが活用され
施しました.
制御を行いプライバシやセキュリティ
ていくととらえています(表).
を確保します.
■7つのユビキタス・ソリュー
ユビスタイルとは,ユビキタスコン
ピューティング技術を活用した新しい
NTTデータの取り組みと事例
ション
情報インフラのことで,センサネット
ワークやRFIDなどを活用し,現実情
今注目されているのは,業務プロセ
RFIDを活用するうえで重要な視点
報をシステムに取り込み,必要に応じ
スの中でRFIDをどう生かしていくか
が3つあります.それは,「ヒト」「モ
て人間の支援を行うための概念です.
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NTT技術ジャーナル 2005.11
L
これを応用した会議室予約システム
話で支払いを済ませたりできるなど,
(4)
中国IDキャリア実験
では,予約した人の情報の閲覧,会
顧客の快適なショッピングを支援する
NT Tデータでは,本年の3月21日
議室を利用している人の履歴,予約
システムです.店舗側は,顧客のショッ
から25日の期間に,中国の4大通信
状況と利用状況の乖離の把握などの
ピング中にお薦め情報を流すなど,リ
会社の1つであるChina Netcomおよ
管理を行いました.その実証実験で
アルタイムなOne-to-Oneマーケティ
び,中国でインターネットやeコマー
用 いたアクティブ型 の無 線 タグは,
ングを実行することも可能です.ここ
スビジネスを広 く展 開 するB e i j i n g
3 1 5 , M H z / 3 0 3 . 8 2 5 , M H z の周 波 数
での主要技術要素には,コンピュータ
Sparkice Electronic Commerce
を使い,データの送信間隔は1.0秒,
やネットワークが人間の生活の状況
と3社共同で,商品物流過程におけ
タグはボタン付きの防水・堅牢仕様の
を認識する「コンテクストアウェアネ
るRFIDタグの有効性検証の実証実
ものです.
ス技術」のCRM(Customer Rela-
験を実施しました(図 4 ).複数の
会議室の予約については,PCから
tionship Management) 分 野 への
プレイヤ間で情報共有が必要な業務
はもちろん,携帯電話の液晶画面から
適用と,RFIDと携帯電話との連携な
(サービス)を,RFIDを利用した共同
でも利用できるようにしました.利用
どがあります.
利用型サービスとして構築・提供する
画面(図3)には,RFIDによる人の
所在地情報をはじめ,現在の会議室
携帯
の利用状況,予約システムに予約され
PC
RFIDレシーバ
ている情報を見ることができます.こ
のようなユビスタイルの活用によって,
RFIDによる
所在地情報
会議室の稼動率向上だけではなく,オ
フィススペースの環境改善にもRFID
アクティブ型無線タグ
が大きく役立つものと思われます.
(3)
Express Shopping
予約状況確認
ショッピングのデモンストレーショ
会議室予約
RFIDによる
利用状況
ン事例として「Express Shopping」
予約システムに
よる予約状況
があります.これは,RFIDリーダ付き
ショッピングカートを利用する消費者
・315 MHz/303.825 MHz
・ボタン付き防水・堅牢タグ
・送信間隔1.0秒
が,FeliCa携帯電話で買い物の内容
と金額を確認し,リアルタイムでクー
図3 ユビスタイルコラボレータ
ポン情報を受け取ったり,また携帯電
RFIDプラットフォーム(ucode対応 )
トレーサビリティ機能
アクセス管理機能
端末管理機能
流通過程における各種検知アプリケーション
1 タグ供給
2 出荷記録
読取り
3 入荷記録
4 出荷記録
読取り
読取り
5 入荷記録
6 販売記録
読取り
7 商品情報参照
読取り
読取り
高級酒
製造事業者
別の製造事業者
卸事業者
発送誤りの商品や予定外の入荷
等の有無を検出
小売店
流通過程の商品の
賞味期限をチェック
開封済み,タグなし等
商品の有無を検出
流通過程での商品シュリン
ケージ*の有無を確認
*シュリンケージ:万引きや抜き荷などによる商品の減少
図4 中国IDキャリア実験システムの構成
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ためのノウハウの獲得や,中国市場で
リティの有効性や,医薬品流通各業
な改善に柔軟に対応が可能なRFID管
のRFIDビジネスのニーズや有効性を
務の効率化におけるRFIDタグの有効
理システムが実現します.
検証するものです.「製造業」「卸売
性,および利用者側の利便性,問題
NT Tデータでは,ユビキタス社会の
業(倉庫・輸送業)」「小売業」の3
点の抽出,課題の確認などの検証が
浸透によって生み出される全く新しい
つの拠点を仮想的に設置し,その拠点
目的です.
社会の関係性を「e-コラボレーション」
間で商品(本実験では酒類をサンプル
その具 体 的 な実 験 内 容 は, 製 薬
として利用)を流通させ,各拠点での
メーカや医薬品卸,病院の各フェーズ
入出荷作業や検品作業などを実施し
における医薬品トレーサビリティと,
「可視化」と「改善」です.可視化と
ました.
注射剤の計400本に付与したucode
は状態モニタリングを目的にしたもの
具体的には,ユビキタスIDセンタが
タグの流通履歴や品名,使用期限な
で,目標達成状況や問題点の把握・
標準化を進めている「ucode」を格納
ど医薬品情報の確認です.この実証
分析・評価と,監視結果を分析して
したRFIDタグを商品に貼付します.
実験により,ロット番号や品質の把握
モデルを見直すことにより,経済性の
そして,商品が製造,卸,小売のそ
など,入出荷管理の効率化が図られ
継続的な追及を可能にします.
れぞれに入出荷されるときや,消費者
ることが明確になりました.
コラボレーション実現のポイントは,
また改善を進めるためにはプロセス
に販売されるときにRFIDタグを読み
モデリングを用います.対象業務にお
RFIDによるプロセス改善
取り,事前にデータベースに登録され
けるプレイヤ間のデータ統合と連携や,
ている「流通予定情報」等の情報と
自動的に情報照会を行うことで,正
と表現しています.RFIDを用いたe-
対象業務の適切なモデル化による業務
■「可視化」と「改善」がRFID導
プロセスの連携と見直し,さらには
規品か模造品かの真贋判定をする実
入のキーワード
RFIDでプロセスの状態を監視するこ
験システムです.
当社では,現在RFIDで管理する情
とで,柔軟性・迅速性の向上を目指
(5)
RFIDによる医薬品管理の実証
実験
報モデルの作成を進めています.
①
プロセスモデル作成:BPMN
します.
*4
を用いてビジネスプロセスを作成
昨年12月から本年3月までの期間,
YRPユビキタス・ネットワーキング研
し,「ロール(人)
」と「アクティ
究所,ユビキタスIDセンター,東京大
ビティ(活動)」を抽出
リックスに表すことができます.
可視化や改善が進んでいない「混
沌」のフェーズでは,RFIDを導入し
エンティティ(実体)抽出:ア
ていない段階で,プロセスの定量的な
院情報学環21世紀COE「次世代ユ
クティビティに対して必要なエン
分析ができないため,どこをどう改善
ビキタス情報社会基盤の形成」,三菱
ティティを抽出
していいか分からない状態を示します.
学医学部附属病院,東京大学大学
ウェルファーマ, ベネシス, そして
NTTデータが参加して,RFIDによる
②
それをまとめると図5のようなマト
③
属性抽出:抽出されたエンティ
ティの属性情報を付与
一方,「改善」のフェーズでは,RFID
導入に向けビジネスプロセスを見直す
医薬品管理の実証実験が行われまし
これら3つのステップにより,ビジ
ことでプロセスを改善しますが,効果
た.RFIDを用いた医薬品トレーサビ
ネスモデルとの高い一貫性と,断続的
を定量的に把握できないので最適化で
きていません.
また反対に,RFIDの導入により作
可視化
業プロセスの状況を管理できると可視
化が進みますが,プロセス改善に向け
可視化
継続的改善
た課題を抽出する必要があります.し
改善
たがって,RFIDによる作業プロセス
*4
混沌
改善
図5 RFIDによる継続的なプロセス改善
34
NTT技術ジャーナル 2005.11
BPMN( Business Process Modeling
Notation):ビジネスプロセスモデリング表
記.ビジネスプロセス(BP)管理の標準化
を行っているNPOのBPMI(the Business
Process Management Initiative)によって作
成された,BPの設計と実行のための表記法.
必要十分な表現力を備えつつ,シンプルで
直感的に理解しやすい表記法となっており,
アナリストや経営者でも読みやすいという
特長があります.
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モビリティの拡大
A社
IDコマース
サービス
要求
特定の端末を意識せ
ずにサービスをどこ
でも利用できる
ヒト・モノ
の流れ
フロント
エンド
デバイス入出力共通化
アクセス制御
基幹
システム
データ相互変換
アプリケーション接続・
サービス連携
遍在性の出現
動的状態管理
パーソナライズ
B社
サービス
要求
モバイル網
無線LAN
RFID
フロント
エンド
パーソナル
プロファイル
基幹
システム
コンテンツ
センサ
デバイス
RFID・センサ
ID
これまで取れなかった利用者
の情報(周りの状況,感性)
によって,より個人に最適化
されたサービスが利用できる
導入技術
ユビキタス情報システム
構築技術
基盤技術
図6 ユビキタス時代の情報システムが目指すべき姿
の生産性をリアルタイムに監視し,最
しかし,それを支えるRFIDシステ
適化に向けて継続的に作業プロセスを
ム基盤の実現にはさまざまな課題が存
を目指すのがe-コラボレーションです
改善する「継続的な改善」が望まし
在します.まず,既存の業務システム
が,そこでは情報共有が進展すること
い状態といえます.
とID情報システム間の連携が進んで
で,パーフェクトアウェアネス
いないため,サービス提供に限界があ
透や多様なコンテンツの活用,共有範
RFID技術導入の恩恵を最大限に享受
ること.そのために,両システム間を簡
囲の広域化・国際化が進む反面,ト
するためのキーワードです.ビジネス
便に連携できる仕組みが必要でしょう.
ランザクション量の爆発や情報漏洩,
プロセスを可視化することで新たな課
また企業や業界が異なると,同じモ
題を発見し,そこで得た定量的データ
ノに対して異なるID情報を付与してい
を分析して業務改善につなげていく.
る場合があるため,個別のシステムご
協働化,いつでもどこでも化,自動化
そのサイクルを繰り返すことが,業務
とにID情報を相互に流通させるシステ
が進みますが,それらも意思決定の細
革新を真に実現すると考えています.
ムを構築しなければなりません.そこ
分化や集中力・判断力の低下,人為
で,異なるID情報を相互に連携する
ミスの増加といった側面があることを
仕組みが必要となります.
認識しておくべきでしょう.
可 視 化 と継 続 的 な改 善 こそが,
ユビキタス時代に向けた展望と課題
化”が進み,“ヒト・モノの協働化”
*5
の浸
情報格差の拡大が課題となります.
また意思決定が迅速になることで,
さらに昨 今 , I T システムと外 部
■情報システムが目指すべき姿
今 後 , サービス利 用 環 境 の変 化
(ユーザ,モノなど)との接点が増加・
多様化し,セキュリティ面でのリスク
(モビリティの拡大,遍在性の出現)
が増大しています.サービスを安全に
に応じて,多様な利用形態,動的変
提供するためには,ネットワーク,端
化に対応でき,誰もが簡単かつ安心し
末,ID情報へのアクセスを安全に実
て利用できる情報システムが必要とな
現する仕組みが求められています.
ります(図6).
■RFIDの浸透によるe-コラボレー
*5
パーフェクトアウェアネス:モノやヒトが
どこにあって,どんな状態であるかの情報
取得・蓄積,および,その状況に応じた情報
配信や情報共有の最適化技術.
◆問い合わせ先
NTTデータ
技術開発本部 企画部 企画戦略担当
TEL 03-3523-8060
FAX 03-3523-8070
E-mail [email protected]
ションの課題
RFIDの浸透によって“モノ・情報
の共有化”および“意思決定の迅速
NTT技術ジャーナル 2005.11
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