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構成的グループエンカウンター基礎コース

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構成的グループエンカウンター基礎コース
平成18年度
夏季公開研修講座
構成的グループエンカウンター基礎コース
岩手県立総合教育センター
1
教育相談室
最近の子どもたちの特徴
・「 人間関係を形成する意欲と技術」の問題
「一人一人違う種をもつ・・一つとして同じものはないから・・もともと特別なOnly
One」
・「 社会性」の問題
・「 心の叫び」
「命は大切だ。命を大切に。そんなこと何千何万回言われるより
あなたが大切だ
誰かがそういってくれたらそれだけで生きていける」
2
子どもたちに必要なこと
・人と関わる経験をもたせる
・相手を知る、自分を知ってもらう、自分を知る、自己肯定感(自尊感情)を高める
3
予防・開発的教育相談の視点 (育てるカウンセリング)
育てるカウンセリング
集団対象
予防・開発的
教師
従来の教育相談
個別対象
治療的
カウンセラー
「いじめや不登校などの学校教育問題を考えるとき、家庭や地域における集団体験の低下にとも
なう人間関係能力の低下が背景にある 」
( 國分 康孝:聖徳栄養短期大学教授 )
構成的グループエンカウンターは育てるカウンセリングの一手法
4 構成的グループエンカウンターとは ( Structured Group Encounter 以下SGE)
(1)SGEの特徴
◆三本の柱
インストラクション ・・エクササイズの取り組む前に、ねらい、大まかな内容、やり方、
ルール、留意点を説明すること
① 何をするのか
② 何のためにするのか
③ どんなふうにするのか
④ 参加するのにどのようなルールがあるのか
⑤ どのようなことが起こるのか
・初めての体験には不安が伴う(嫌な思いをしないか、傷つかないか、予測できない不安)
・自分が同じようにできるか、失敗して恥をかかないか、自分の能力
への不安もある
・意欲の喚起とともに①∼⑤までをイメージでいるように説明する
エクササイズ ・・・・・教師の考えるねらいを達成するために用意された課題
↓ (日常の授業でねらいを達成するための展開の部分に当たる)
・折衷的にカウンセリング諸理論に裏打ちされている
・ねらいの達成の方法が明確に示されている
-1-
シェアリング ・・・・わかちあいやふりかえり
↓
・エクササイズを振り返ることによってそこでの気づきや感情を明確
化し、ねらいを定着させる働きがある
・一人の生徒の気づきや感情を全員が共有する働きがある
・自己開示によって学級や学年集団が共通の気づきをわかちあう
◆「構成的」の意味
「非構成的」とは・・・非指示的でフリートーキングが中心に行われるカウンセリング技法
「構成的」とは・・・・時間・グループ・トピック等の 意図的な枠を与える
なぜ枠を与えるの?
心的な外傷の予防
自己表現をしやすくするしている
現実原則の体験学習
◆エンカウンターとは・・・ホンネとホンネの交流や感情交流ができる親密な人間関係(体験)
エンカウンターがめざすもの
①新しい行動の仕方を学習する
②新しい認知(考え方や受け止め方)を学習する
③新しい感情体験をする
つまり 、リーダーが意図的にプログラム( エクササイズ )を提供し 、その活動を通して 、
集団でエンカウンターを体験することを構成的グループエンカウンターという。
◆構成法のメリット
・参加者のレディネスに応じて進行のスピードを調整できる
・参加者のレディネスに応じてレベルを調整できる
・カウンセリング専門家でなくても展開ができる
・時間に応じてプログラムを短縮できる
・ 参加者同士のリレーションを短時間に高められる
↓
(2)なぜリレーションが短時間に高まるの?
① SGEのエクササイズには下記のねらいが組み込まれている。
ねらい
育 つ 力
自己受容
自分で自分のことを肯定的に受け入れること
信頼感
友だちや周囲の人を信頼し、安心して生活できること
感受性
心の苦しさや喜びを共感的に受けとめること
自己主張
必要なことを相手の気持ちを考えて表現すること
自己理解
自分自身のことをよく理解すること
他者理解
仲間をかけがえのない大切な一人の存在として受け入れること
②
リーダーが必要に応じて介入行動をとる(示唆・助言・説明・教示・コメント)ことで
・参加者は不安、混乱、劣等感を減らすことができる
・行動へのヒントが得られる
・リーダと参加者に信頼感、援助的関係をつくることができる
-2-
③
エクササイズの中で自己開示や他者からのフィードバックを受けることで
・対人関係の信頼感が成長する
・受容的・理解的態度が増す
・自分の長所や短所を発見することができる
・ありのままの自分でよいと思えるようになる→自己肯定感(自尊感情)
構成的グループエンカウンターとは
集団学習体験をとおして、行動の変容と人間的な自己成長をねらい、支え合うこ
とができるつながりのある人間関係づくりを援助するための一手法
5 SGEの基本的な展開例
(1)ショートエクササイズ
<ショートエクササイズの特徴>
・ロングエクササイズの核心部分を抽出し、簡潔に単純化(目的の明確化)が行われている
・数分間の活動であるため、ほとんど単一の技法で構成されてる
・集中力を維持しやすい
・毎日継続して、実施できる
・短時間活動であるため負担が少ない
・技法が単純化されいるのでリーダーのトレーニングとして有効である
・授業や学活、朝の会、帰りの会などの部分的な活動として組み込んで利用できる
<ロングエクササイズとの関係>
・ロングエクササイズの事前、事後の指導として利用する
・ロングエクササイズのウ オ ーミングアップ、クールダウン、場面展開方法として使用する
・複数のショートエクササイズを組み合わせて、ロングエクササイズと同じ目的を達成する
エクササイズの前に
気 持 ち を 和 ま せる 簡単
(2)ロングエクササイズ(1時間の授業)
な ゲ ー ム を 取 り入 れて
展
開
リーダーの役割
もよい
インストラクション
・ねらいの説明
(導入・説明)
・ウ オ ーミンングアップ
・エクササイズの内容 、方法の説明(デモンストレーション)
ねらいを達成するた
めの展開にあてる
・活動のルールの説明
エクササイズ
・ルールが守られているか確認
( ねらいに基づく体験活動 ) ・活動の援助
・活動の記録
エクササイズでの気
づ き や 感 情 を明 確化 し
・気づきや感想を発表させる
ねらいを定着させる
振り返りの項目(例)
シェアリング
・楽しくできたか
(活動を振り返っての
・自分の考えを表したり行動したりすることができたか
感情交流) ・誰のどんな考え(意見、行動)がよかったか
・この活動をとおして、どのようなことを感じたり気付
いたりしたか
・○○のとき、どんな気持ちがしたか
まとめ
( 定着 、般化 ) ・教師によるフィードバック
-3-
6 学校で行う場合の留意点
(1)エクササイズ選択の5つの原理
① ねらいによる選択 ・・・・・・・自分の学年や学級の現状、実施対象児童生徒の実態は?
学級、学年をどのようにしたいのか(目的地の明確化)
例
②
③
④
⑤
学級の人間関係が希薄、クラスの解体後の新学級
モチベーションのよる選択・・・初めてのSGE体験する児童生徒のモチベーション( 意欲 )
を高めるエクササイズを
レディネスによる選択 ・・・・・エクササイズの前の状態や様子によって、達成の度合いが
決まることが多い
↓
発達段階、実施時期、場所、意義、目的、アレンジの仕方
を考える
教師自身の経験度による選択 ・・リーダーの経験度によってエクササイズを選ぶ
(リーダーの体験が少ないときはショートを有効に)
エクササイズの配列 ・・・・・・エクササイズは抵抗の小さいものから徐々に深いものへ
(2)エクササイズの選択の5つの留意点
① 動きのあるものがやりやすい
言葉を使わずに非言語的に行うエクササイズがやりやすい。繰り返し展開できる
②
小学校低学年は短いもの同じものを
男女差がなく、児童同士の関係より担任との関係が強く、自己中心性が強い
そこで、授業や学級活動、朝の会等にSGEの手法を取り入れてショートのエクササイズ
を繰り返し展開し、エクササイズ中の体験を重視する
③
小学校中学年は、低学年のエクササイズに自己理解や他者理解を導入する
低学年と同じようなエクササイズを導入しながら、協同でできるもの、チャレンジや冒険
心を充たすようなものを行う。また、自分や友達について考えるものを導入する。振り返
りができるようになるので、振り返り用紙を活用する
④
小学校高学年は、身体接触への配慮をもって内面への探索を意図する
身体接触やへの抵抗や異性への意識の芽生えに配慮する。ポディティブな自己概念の形成
に役立つエクササイズの導入が可能。小学校全般を振り返るエクササイズ、中学校への準
備を意識したエクササイズの有効
⑤
中学校では、抵抗への配慮と学年統一のエクササイズを計画する
男女の性差を意識するので、身体接触に十分配慮する。また、疎外感や恥ずかしさへの配
慮も必要。男女を分けたエクササイズの工夫も必要。中学校では、学年統一でエクササイ
ズを計画した方が効果的な場面が多い。学年集会の導入に位置づけ、学年集団への凝集性
高めることもできる。部活動での展開も有効
⑥
高等学校
3年間を見通し、1年次で自己理解・他者理解、2年次で自己効力感(セルフエスティー
ム・自尊感情)3年次で自己表現というねらいの設定が効果的。傾聴スキルの習熟、学級
づくりへの主体的な参加をめざして、継続的に行いたい。SHR、総合的な学習の時間、
キャリア教育に関連して活用する
-4-
(3)リーダーの留意点
事前に考慮すべき点
①
集団の雰囲気・・比較的落ち着いているか。騒々しい雰囲気か、対人関係のトラブルを抱
えていないか等を考慮する
実施の時期・・・年度初めか、卒業・進級の思い出つくりをしたい時期か、年間計画に位
置づけ、つけさせた力の時期を明確にする
配慮を要する子・参加することに無理のある子どもはいないか(トラブルを生む可能性が高い子、身体接触や活
動的なエクサイズに過度に反応する子、思考を伴うエクササイズの罹患が困難な子)
教師の準備・・・SGEの基本理解をすすめ、SGEをできれば体験しておく。初めて行
うときは進行シナリオを書いた入り、経験者からのアドバイスを得たり
する。人の心を扱うことなので、慎重でありたい
②
③
④
エクササイズの最中に行うこと
①
参加の仕方を確認する。 教師のインストラクションを聞いているか。内容理解、意欲的な参
加 、ルールを守り真面目に取り組んでいるか(悪ふざけ、冷やかし、人をばかにするなどがないか)等を観察し対応する 。
②
ダメージ(心的外傷)を予防する。 小学校低学年は自己中心性が強く、表現方法も未熟。
子ども「ばか 」「でぶ 」「ぶす」→教師「先生は今聞いたよ」と確認し「聞いていてとても悲し
い、嫌な感じがした 」「二度としてほしくない」と教師自身がアイメッセージ(私が主語で)
伝える
③
メンバーの感情を観察し、抵抗がある場合はこれを取り除く。 エクサイズの趣旨が伝わっ
ていなときは再度説明する。参加したくないときは「不参加の自由」があることをとを伝え意
志を確認する。部分参加も認める
④
グループ内のコミュニケーションを観察する。 発言が均等か。本題からはずれていないか
はずれていれば「本題を先に話してみよう」などと介入する。視線やうなずき、姿勢、言語
のコミュニケーションも見る
⑤
ルール違反がないか確認する。 守られていないときは、その場で「違っている」ことを伝え
正しいやり方を指示する。なぜいけないのかきちんと説明する。必要に応じて、エクササイズ
を中断し、全体でルールの再確認もありえる。他の子どもの迷惑になっていないときは直接介
入ぜずに、子どもの動きを許容することもある
⑥
シェアリングで自分の感情に気づけるようにする。 慣れていない子は、放っておくと自分
の感情に気づかない 。教師の言葉に促されて気づくこともあるので 、適切に言葉がけをする 。
行動を読み取り言語化して返すことも有効である
⑦
教師が模倣の対象となる。 教師が自己開示のモデルになると、心の交流が促進される
⑧
ねらいからはずれないよう、舵取りをした介入をする。 日常の関係を引きずっている子は
ねらいからはずれた行動をすることがある。教師が介入して軌道修正する
○
○
○
○
○
教師の自己開示はシェアリングの質を高め、児童生徒のモデルとなることを意識すること
指示は簡単明瞭、要領を得ている、途中で変更しない、時間内に終結すること
参加者一人一人への理解と敏感な反応をすること
心的外傷を防ぐ配慮をすること (子ども同士の中傷や、組を作る場合に一人取り残される子がいないようにする)
学級行事や特別活動、学年、学校行事の中で年間実施計画を作ること
(集団に入れない生徒、入らない生徒、心に傷を負う生徒、エクササイズの流れをかき乱す生徒が存在することを想定して)
-5-
7
演習
エクササイズ名
1
駅のベンチの会話
ね
ら
い
・今、ここで感じていることを語る。今
目
的
背景となる理論・技法
他者理解
自己開示
の心の距離を感じ取る。簡単なリレーシ
かかわり技法
ョン(うちとけた良好な関係)づくりの
体験をする。
2
30秒じゃんけん
・不安、緊張を和らげ、他者と段階的に
自己理解
かかわり技法
アドじゃん
かかわる。
他者理解
無条件の積極的関心
3
4
2人でリズム
・ペアで協力して役割を演じる。
感受性の促進
非言語コミュニケーション
アウチ
・アイコンタクト通して親和的な出会い
感受性の促進
アイコンタクト、
5
握手であいさつ
・非言語コミュニケーション(目線や姿
自己理解
実存主義、アイコンタ
勢、態度)等の重要性を知る。
他者理解
クト、スキンシップ
6
自己紹介①( かかわり合
・お互いの名前や特徴(リソース )を知る 。 自己理解
をつくる。
抵抗の低減
自己開示、受容
他者理解
非言語コミュニケーション
・相手に関心をもたれたときの気持ちを
自己主張
無条件の肯定的関心
体験する。
他者理解
う聴き方)
自己紹介②( かかわりの
少ない聴き方)
7
8
9
一問一答
トラストウ オ ーキング
班編制
・体験的に他のメンバーのあたたかさや 、 信頼体験
防衛機制、交流分析
やさしさ相手への信頼感をもつ。
精神分析的発達論
感受性の促進
かかわり技法
・想像力を態度や表情で伝え、相手の非
自己理解
非言語コミュニケー
言語のメッセージを読み取る。
他者理解
ション、ロールプレイ
・他者理解を促進し、交友関係の輪を広
自己理解
ロールプレイ(役割演
げる。
他者理解
技)
・自己開示を促進し、相手の話を受容的
信頼体験
スキンシップ
・緊張が軽減された状態で新たなグルー
プづくりをする。
10
11
12
椅子の利用
他己紹介
肩もみエンカウンター
に聞く。甘える、甘えさせる原初的な信
自己開示
頼体験をする。
・話を聞く体験、話を聞いてもらえた体
自己理解
験をとおして自分と他者を考える。
他者理解
・個人の決定から全員が意志決定してい
自己理解
自己開示
13
スゴロクトーキング
14
月からの脱出
くときに生じるさまざまなことに気づく。 他者理解
私 は 私が 好 き で す。 な
・自分のよいところ願望を表現し自己概
自己開示
ぜ な らば ・ ・ ・
念の再構成をする。
自己受容
・エクササイズをとおして、他者へのプ
自己受容
支持、強化法(ゲシ
ラスのストロークを与える。
自己理解
ュタルト療法 )
15
主張反応( 行動療法 )
ゲシュタルト療法
将来願望
16
ホットシート
・エクササイズの役割への達成感をもつ。 信頼体験
【参考文献】
國分
康孝著
「エンカウンター心と心のふれあい」
誠信書房
1981
國分
康孝著
「構成的グループエンカウンター」
誠信書房
1996
國分
康孝監修
「エンカウンターで学校が変わる」
図書文化
1996
諸冨
祥彦著
「学校現場で使えるカウンセリングテクニック」
誠信書房
2002
國分
康孝・久子総編集「構成的グループエンカウンター事典」
図書文化
2004
高橋
信二・八巻寛治編著「保護者会で使えるエンカウンター・エクササイズ」ほんの森出版
2003
河村
茂雄編著
「グループ体験による学級育成プログラム
ソーシャルスキルとエンカウンターの統合」
-6-
図書文化
2004
Fly UP