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レギュラシオン理論を基礎とした環境対策と経済成長の長期分析: 日本

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レギュラシオン理論を基礎とした環境対策と経済成長の長期分析: 日本
レギュラシオン理論を基礎とした環境対策と経済成長の長期分析:
日本における経済・環境関係の長期的変化
Long-term analysis of environmental policy and economic growth based on the
Régulation theory: Long-term transformation of economy-environment nexus in Japan
大熊一寛 *
Kazuhiro OKUMA
【要旨】
地球生態系の危機は経済成長を制限しうる要因となっており,制度と進化の経済学は,
理論的な完全性のためにも,この問題を組み込むことが重要と言える.他方,環境政策は
経済成長への影響という問題に常に直面しているが,新古典派の環境経済学はこれに十分
には答えられておらず,制度と進化の経済学からのアプローチが貢献できる可能性がある.
本研究は,レギュラシオン理論を基礎として環境対策と経済成長の関係を分析することと
し,理論的枠組みを検討した上で,日本の高度成長期以降今日までの長期的な変化を実証
的に分析した.
制度形態の一つとして「経済・環境関係」を位置付け,同理論の概念を用いて制度的調
整の動態を明確化した.鍵となる指標として環境関係費用に着目し,理論的整理を行うと
ともに長期推計を行った.これらの情報及び制度形成の歴史に関する情報を総合し,高度
成長期から今日までを時期区分して経済・環境関係の特徴を特定した.主な特徴として以
下が挙げられる.1)1960 年代から 70 年頃:環境消費の外延的拡大により支えられた内
包的蓄積.2)1970 年代から 80 年代前半:コンフリクトを通じて形成された厳しい規制
が経済にも寄与.3)1990 年代から 2000 年代前半:弱いアクターを背景とした自主性と
柔軟性を重視した制度.4)2008 年以降:経済側と環境側のアクターの協調の下でのグリ
ーン成長を企図したいくつかの政策.
こうした歴史的分析から,いくつかの政策的及び理論的な含意を得ることができる.
キーワード :環境対策,歴史分析,カレツキアン,環境費用,グリーン成長
*
東北大学大学院法学研究科公共政策大学院 School of Public Policy, Tohoku University
〒980-8576 仙台市青葉区川内 27-1 TEL: 022-795-6204 E-mail: [email protected]
1
1
はじめに
地球生態系の危機は経済成長を制限しうる要因となっており,制度と進化の経済学にお
いてもこの問題を組み込むことが重要と言える.他方,環境政策は経済成長への影響を懸
念する反対意見に直面しがちだが,新古典派の環境経済学はこれに十分には答えられてお
らず,制度と進化の経済学からのアプローチが貢献できる可能性がある.
本研究は,レギュラシオン理論を基礎として環境対策と経済成長の関係の長期的変化を
分析する.環境問題は,経済成長に伴って発生し,汚染者と被害者の間の社会的摩擦を生
み,規制などの制度によって管理されるようになると,今度は経済成長に影響を与えるこ
ととなる.このように,環境問題はすぐれて経済の制度的調整の問題であり,制度と進化
の経済学,なかでもレギュラシオン理論による分析に適している.レギュラシオン学派に
おいては,リピエッツが環境問題について洞察と展望を示したが(Lipietz, 1995, 1999 等),
近年になって,環境問題を理論の核心部分に組込もうとする,より分析的なアプローチが
現れてきた(Becker and Raza, 1999; Rousseau and Zuindeau, 2007; Zuindeau, 2007).
それらは,レギュラシオン理論と環境に関する諸研究とを架橋し,
「経済と環境の関係」の
形態に着目して研究を進めることを提言している.これらの研究を基礎とし,分析方法論
をさらに深めていくこと,特に定量的データを用いた分析のための方法を検討すること,
具体的な国や時期を対象とした実証分析を積み重ねていくことが課題として残されている.
本稿は,指標として環境関係費用に注目すること等を通じてより具体的な分析の方法を
提示し,日本の 1960 年代から今日までを対象として実証分析を行うものである.
なお,本稿は学位論文である大熊(2013b)の研究の一部を抽出・加筆して,2015 年レ
ギュラシオン国際学会(Colloque international: Recherche and Règulation 2015, Paris)
で発表した内容を,再整理して報告するものである.
2
分析枠組みに関する理論的研究
2.1
3つの再生産としての社会経済システムと経済・環境関係
一貫性のある枠組の基礎を得るために,ポランニーの概念を出発点とし,剰余アプロー
チを参照することによって,まず,社会経済システムの概念を明確化する.
ポランニー(Polanyi, 1957)の歴史認識とレギュラシオン理論は,資本主義経済の制度的
調整の必要性を強調する点において整合的であり (Boyer and Hollingsworth, 1997; 山田,
2007),レギュラシオン理論の応用を検討する際にポランニーの直感にさかのぼることは有
益である.ポランニー(Polanyi , 1957) は,市場メカニズムの破壊的性質の根本的原因が
労働,土地,貨幣という「擬制商品」にあると考えた.労働,土地,貨幣は,いずれも販
売するために生産されるものではないので,市場メカニズムに委ねてしまうと破壊される
と指摘した.ここで,ポランニーが3つの擬制商品の一つとして,自然環境の別名として
「土地」を挙げ,過度な市場化によってもたらされる問題として自然環境の破壊に明確に
言及していたことが注目される.
持続可能性は再生産の概念と密接に関連しているので,環境問題を検討する際に剰余ア
プローチを参照することは合理的である.剰余アプローチにおいては,社会経済システム
は生産システムの再生産系と労働力の再生産系という二つのシステムによって構成され,
2
これらは制度によって調整されていると認識される(概説した文献として例えば,Bortis,
1996; 植村他, 2007 がある.).
ここで,上記のポランニーの概念を参照し,また,地球生態系の危機が顕在化している
今日の状況を踏まえれば,生態系が供給する天然資源等を労働とともに本源的な生産要素
として位置付け,これを供給する自然環境を独自の再生産システムとして捉えることが重
要と言える.こうした認識に基づき,社会経済システムを,(狭義の)「経済」の再生産,
「人間」の再生産,
「自然環境」の再生産という「三つの再生産」により構成されるシステ
ムとして捉えることができる 5.こうした認識を,図1のように表すことができる.
生産財
労働
天然資源+廃物吸収サービス
経済の再生産
(生産システム)
奢侈的消費
管理サービス
財
消費財
人間の再生産
生存・生活環境
自然環境の再生産
日常的管理
図1
三つの再生産としての社会経済システム
自然環境は,それ自身の生産力により維持される再生産システムであるが,経済の再生
産と人間の再生産から供給される管理サービスにより部分的に支援される.自然環境の再
生産は,生産システムに天然資源と廃物吸収サービスを供給するとともに,人間の再生産
に生存環境及び生活環境を提供する.自然環境の再生産が供給するこれらの財・サービス
を,本研究では,
「環境資源」と呼ぶこととする.自然環境の一部は私的財産として所有さ
れ,それにより供給される環境資源に対しては地代が支払われ,その一部は管理サービス
(例えば施肥,植林等)の入手に充てられる.しかし,多くの部分は公共財であり,地代
は支払われない.自然環境が再生産能力を超えて使用されると,質的又は量的に劣化し,
環境問題が引き起こされる.これら三つの再生産の相互関係は,市場メカニズムとともに,
関係主体間のコンフリクト)を経て形成される制度によって調整されていると理解するこ
とができる.
以上の認識に基づいて,レギュラシオン理論に環境の側面を組み込む.レギュラシオン
理論は,資本蓄積と制度による調整に焦点を当て,制度形態,蓄積体制,調整様式という
概念を用いて経済の構造を分析する.制度形態として,貨幣・金融の形態,賃労働関係,
競争形態,国家の形態,国際体制への統合形態の5種類が挙げられている.(Boyer, 1986,
2000; 山田, 1991).
社会経済システムを三つの再生産として把える認識は,既に Beaud (1997) によって示されている.そ
こでは,地球,人間,資本主義の三つの再生産という用語が用いられている.
5
3
上記の三つの再生産の概念に照らせば,賃労働関係は人間の再生産と経済の再生産の関
係の調整に対応している.ここで,自然環境の再生産と経済の再生産との関係も制度的調
整の重要な分野として認識し,
「6 番目の制度形態」として認識することが有効と考える 6.
本研究ではこれを「経済・環境関係」と呼ぶ.
2.2
経済・環境関係における調整の動態
制度形態を分析するためには,その調整の動態を明確化することが必要である.賃労働
関係においては,より高い賃金を求める労働者が制度的調整の原動力となるのが典型的で
ある.経済・環境関係においてはどうだろうか.
資本蓄積を駆動力とする生産システムは,より大きな利潤を得るために,自然環境を,
より少ない地代により,より少ない管理サービスの下で,より多量に使用する傾向がある
と考えられる.再生産能力を超えて過剰に使用されると自然環境は劣化し,二つの経路に
より生産システムにフィードバックを与える.第一に,私的財産である自然環境の場合に
は,地代が上昇することとなる.第二に,公共財である自然環境の場合には,人間の再生
産への環境資源の供給が減少し,環境問題が発生することとなる.これにより,自然環境
の劣化を引き起こす者とそれによる被害を受ける者というアクターの間でのコンフリクト
が引き起こされ,これが,環境保全の対策を求める制度の形成につながることとなる.
これらのアクターの関係は,問題のタイプに応じて多様である.例えば,地域での産業
公害においては比較的明確だが,地球環境問題においては,空間的,時間的に拡散し,不
明確である.前者においては,公害の被害者が環境対策を求める主なアクターとなる.後
者の場合には,環境対策を求めるアクターは弱くなりがちだが,他者の被害を認識あるい
は予見して,その軽減のために行動する科学者,市民団体,行政組織等が,しばしば連携
しながら,アクターとして機能することができる.環境対策の諸制度を,こうしたアクタ
ー間の利害対立を通じて形成された妥協として理解することができる.
制度は,社会が自らを統治するガバナンスの特定の場において形成され,定着される.
その最も重要なものが国家である.環境問題は様々な空間的規模で発生する.地域レベル
の問題については,国家のみならずコミュニティや地方公共団体が重要な役割を果たす.
地球環境問題においては,国家レベルとともに,国際機関や国際条約を含む国際レベルが
重要となる.
ここで,原因となる活動,被害の発生,ガバナンスの場所といった調整に関わる各段階
には,それぞれの固有の空間的スケールや時間的スケールがあることに注意を要する.例
えば産業公害においては,健康被害は地域で発生するが,有効な対策には国家レベルの政
策決定を要する.気候変動においては,今日の経済活動の影響が将来世代に発生する.こ
のように空間的スケールや時間的スケールの乖離があると,被害から制度的調整に至るフ
ィードバックの経路が円滑にはつながらない.制度が形成されるためには,こうした乖離
を埋めるための政治的過程(例えば地域の声を国政につなげる民主主義の過程)が必要に
なる.このことが,対策の遅れや被害の拡大につながると考えることができる 7.本研究で
経済と環境の関係を6番目の制度形態として認識することは,既に Becker and Raza (1999)等によっ
て示唆されている.
7 環境社会学の分野において類似の概念が確立されている.船橋(1998)は,受益圏と受苦圏との分離
6
4
は,こうした現象を「調整の空間的・時間的乖離」と呼ぶ.
経済・環境関係における制度は,他の制度諸形態との相互作用の中で形成される.この
相互作用,特に制度変化の文脈における相互作用を,
「制度補完性」及び「制度階層性」の
概念に照らして分析することができる.制度補完性は,ある領域における制度が別の領域
の制度を強化している状態を指す.制度階層性は補完性の構造にとって特定の制度が相対
的な重要性を持っている状態を指す(Amable, 2003).この階層性は歴史の中で逆転するこ
とがある(Boyer, 2000).これまで経済・環境関係は一般に制度階層性の下位に位置してお
り,その形態を上位に位置する他の制度形態との補完性の観点から理解できる可能性があ
る.他方,もし環境制約が一層厳しくなれば,経済・環境関係が他の制度諸形態に影響を
及ぼすようになり,調整様式全体にも影響するようになる可能性がある.
2.3
指標としての環境関係費用
制度形態の分析において,歴史的な変化を追跡し,蓄積への影響を分析するために,定
量的な指標が重要な役割を果たす.賃労働関係においては賃金水準とシェアが主要な指標
となる.経済環境関係の分析においては環境に関する費用,すなわち地代や環境対策費用
等に焦点を当てることが有用である.自然環境再生産の劣化が生産システムに及ぼす影響
を貨幣タームで表すからである.
本稿では,地代として,リカード地代とともに,自然環境のソース又はシンクとしての
使用に対して支払われる多様な対価を含めて考える.自然環境が劣化しその希少性が高ま
ると,既存の財産権に係る地代率が上昇し,加えて,被害への補償が支払われ(例:漁業
補償等),また,環境資源の利用に関する様々な形態の課金制度(例えば排出権取引など)
も新たに導入される可能性がある.これらを地代の一種として考えることができる.
次に,環境対策費用について検討する.環境対策費用は各産業部門の他の費用の中に分
散して含まれるため,これを明確に定義し補足することが課題となる.この方法を,環境・
経済統合勘定(SEEA)を参照して検討する.SEEA は SNA 体系のサテライト勘定として
検討されてきた勘定体系である(United Nations, 1993; United Nations, et al., 2003).
ここでは,その一部である環境保護支出勘定の推計方法を基礎として,必要な変更を加え,
環境対策費用の定義と捕捉を行う(United Nations et al., 2003, pp. 169-213).
自然環境が劣化すると,生産システムは,制度的調整を通じ,自然環境から供給される
環境資源を代替するための財・サービスの生産を強いられることになる.例えば,再生可
能エネルギー(化石燃料資源と温室効果ガス吸収サービスを同時に代替),廃棄物処理サー
ビス(廃棄物の分解・吸収サービスの一部を代替)が挙げられる.これらを「環境資源代
替財・サービス」と呼ぶこととする.環境資源代替財・サービスは,経済の再生産の生産
物の一種であるが,自然環境が豊富であったときには無償ないし極めて安価に得られてい
た自然環境の機能を代替するために,追加的な費用を用いて生産されるものであるという
点で,他の生産物とは異なる特性を有している.経済と自然環境の再生産の関係を分析す
る際には,これを他の生産物と区別して扱うことに利点があると言える.
環境資源の代替には,生産システムにおける代替と人間の再生産における代替とがある.
が環境問題を悪化させると指摘した.
5
前者は生産過程における中間消費として現れる.典型例として産業廃棄物処理サービスの
消費等が挙げられる.汚染防止のために行われる企業内部での設備や労働の投入も,他の
活動から切り分けることで,汚染防止サービスの中間消費として把握することができる 8.
後者は家計による最終消費として現れる.典型例として水質悪化により強いられたミネラ
ルウォーターの購入等を挙げることができる. 環境資源代替財・サービスの生産・消費活
動を環境対策と理解し,これに対する支出を環境対策費用と定義する.
これらの費用に加え,公共財である自然の減耗も環境費用の一つの形態として考慮され
る必要がある.これを潜在的環境費用と呼ぶこととする.これが潜在的であるのは,現時
点では支払われないが,例えば健康被害や資源費用の増加などの形で,将来的に誰かによ
り何らかの形で負担されることとなるためである 9.
これらの環境関係費用の中で,地代は市場メカニズムとともに分配に関するコンフリク
トを通じて決定される.加えて環境対策費用と潜在的環境費用も分配に関するコンフリク
トを伴う.環境対策は,典型的には生産者が負担することとなる対策費用を増加させる一
方,典型的には社会全体によって負担される潜在的環境費用を減少させるからである.こ
れらの費用の大きさと分担は,経済・環境関係における制度的調整の状態を反映する.
次のステップとして,これらの費用を測定しその影響を分析できるように,マクロ経済
の勘定体系と整合的な形で定式化する.本研究は,実際に支払われ経済に直接的に影響を
与えている地代と環境対策費用に焦点を当てる.
始めに,生産を 3 次元の分配の等式として表すことにより,地代を定式化する.生産は
資本,労働及び環境資源の投入により行われ,生産物は利潤,賃金,地代の間で分配され
る.従って,
pY = rpK + wL + ρN
(1)
ここで,Y は産出を, K は資本ストックを, L は労働投入を,N は環境資源消費を 10,r
は利潤率を,w は貨幣賃金率を,ρ は貨幣地代率を 11,p は価格を表す.この等式は粗ター
ムである.もし純タームで等式を構成すれば自然資本の減耗が明示され,これが潜在的環
境費用を表すことになる(Okuma,2013).
次に環境対策費用を定式化する.環境資源代替財・サービスを生産する活動に焦点を当
て,環境・経済統合勘定を基礎として参照すると(United Nations et al., 2003),経済の相
互連関を「環境資源代替部門」とそれ以外の「生産部門」とからなる2部門の投入産出モ
デルを用いて表すことができる(表1).
環境・経済統合勘定において,付随的活動(ancillary activities)を特定し,分離することの重要性が
指摘され,その方法が提示されている(United Nations et al. 2003, pp. 183-84).
11 このような潜在的な環境費用を把握し測定するため,幅広い方法論が提案されてきている.例えば,
1993 年版の環境・経済統合勘定は,維持費用(maintenance costs)を測定することを提案し(United
Nations, 1993),一方,2003 年版の環境・経済統合勘定は,被害ベースの評価(damage-based valuation)
を重視している(United Nations, et al., 2003).
10 生産システムで消費される,自然環境から供給された天然資源と廃物吸収サービスの総量を表す.こ
れをどのように測定するかは環境研究の重要な主題であり,エコロジカル・フットプリント,物質フロー
勘定などいくつかの指標が提案されているが,正確な測定方法は確立されていない.
11 地代率は,地代を環境資源消費総量(N)で除した値として定義される.
8
6
表 1. 投入産出構造における環境資源代替財・サービス
生産部門
Put
中
間
投
入
付
加
価
値
合計
中間消費
環境資源
代替部門
最終需要
計
消費
投資
計
合計
生産部門
-
(垂直統合)
-
pCp
pIp
≈ pY
≈ pY
環境資源
代替部門
peXep
-
peXep
p eC e ≈ 0
p eI e ≈ 0
≈0
peE ≈peXep
計
peXep
-
peXep
pCp
pIp
pY
pY +peXep
賃金
利潤
地代
wLp
wLe
wL
rpKp
rpKe
rpK
ρNp
ρNe
ρN
計
pY – peE
p eE
pY
≈ pY
p eE
pY + peXep
このモデルでは,環境資源代替部門は,自らへの中間投入物を生産する活動を含むもの
として定義されているため,生産部門から環境資源代替部門への中間投入を示す欄は空欄
となっている 12.また,各部門は単一の生産物を持つ統合された過程として認識されてい
るため,対角欄も空欄となっている 13.環境資源代替部門から生産部門への中間投入(peXep )
を,生産システムにおける環境対策費用として理解することができる 14.
以上の整理により,環境対策費用を経済理論と整合的に把握し,一部門のモデルに組み
込むことが可能となる.賃金率,利潤率,地代率が部門を通じ均一との仮定の下で,各生
産要素を環境資源代替財・サービスの生産に用いられる部分とそれ以外の生産に用いられ
る部分とに分割すると, (1)式は次式のように変形できる.
pY = rpKp + wLp + ρNp + peE
ここで peE = rpKe + wLe + ρN e
(1-1)
ここで,E は環境資源代替財・サービス消費(Xep に相当する.)を,pe はその価格を,Ke,
Le, 及び Ne は各生産要素のうち環境資源代替財・サービスの生産に用いられる部分を,
Kp, Lp, 及び Np は各生産要素のうちその他の生産に用いられる部分(以下,それぞれ「生
産資本」,「生産労働」,及び「生産資源」と呼ぶ.)を表す.
これは,環境対策費用を分配の要素の一つとして定式化している.これにより,環境対
策費用の蓄積への影響をモデルにより分析することが可能になる.
12
中間段階を統合することによって最終財としての商品の生産を直接間接に必要な労働量と資本ストッ
クとで表す「垂直的統合」の概念を参照して,この定義を用いている(Pasinetti, 1973).ただし,実証的
に追跡可能なモデルとするため,投資は毎年の中間投入に変換せず,したがって垂直統合していない.
13 Georgescu-Roegen (1971)は,過程(プロセス)の分析的な理解に従えば,フローとは境界を横切る要
素を意味するので,部門を統合して境界を除去した際には,内部のフローは削除されるべきであるとの考
え方を示している(pp.253-62).
14 ここでは,生産システムにおける環境対策費用 (pe X ep ) に焦点を当て,消費における費用(p e C e) その
他の最終需要における費用については捨象している.これは,消費における費用においては,若干の増加
はあったとしても消費支出総額を増化させるほどの大幅な増加はこれまでのところ起こっていないとの
認識に基づく.しかしながら,家庭部門の環境負荷削減対策の重要性及び政府の対策支出の大幅な増加の
可能性に鑑み,最終需要における費用についてさらに研究を進めることは,今後の重要な課題である.
7
2.4
経済・環境関係と成長レジーム
経済・環境関係は,様々な経路で成長レジームに影響を与える.鍵となる変数として地
代と環境対策費用に焦点を当てて,こうした経路の特定を試みる.レギュラシオン理論に
おける成長レジームの構造を参照して,これを行う.
成長レジームは,生産と生産性との関係を軸として把握される.生産性は,外生的な技
術革新により上昇するのみならず,動学的規模の経済の効果を通じて生産の増加によって
上昇する(生産性レジーム).生産は,完全稼働に達していない状態において需要に規定さ
れるが,生産性の上昇は,分配に関する一定の制度的な調整の下で 15,需要を増加させる
(需要レジーム).基本的なフォーディズム型の需要レジームと生産性レジームの構造を基
礎として,経済・環境関係の影響を検討することとする(図 2 の下の部分).
経済環境関係
制度的調整
潜在的環境費用
資源生産性
(-)
環境資源消費
環境対策費用
地代
技術
成長レジーム
(-)
地代
中間消費
生産性
賃金
消費
利潤
投資
(-)
(-)
(-)
純輸出
生産 = 需要
注: (-) は負の効果を表す.
図2
経済・環境関係と成長レジームの関係
経済・環境関係においては,環境資源の消費に対応して,地代,環境対策費用,及び潜
在的環境費用の水準が,市場とともに制度による調整の下で決定される(図2の上の部分).
経済成長は,資源生産性が上昇しない限り,環境資源の消費を増加させる.それが自然
環境の再生産能力の範囲内であれば,地代は低い水準に止まり,環境対策費用も発生しな
い.この場合には,経済・環境関係は成長レジームに目に見える影響は与えない.経済が
生態系の許容範囲を超えた場合であっても,環境資源がその再生産に必要な費用を支払う
ことなく使用される場合には,潜在的環境費用を発生させつつ,同じ状況が維持される.
レギュラシオン理論では,労働投入の量的拡大に支えられた 19 世紀の蓄積体制を「外延的
15
典型的なフォーディズムにおいては,生産性上昇にインデックスされた賃金上昇という労使の妥協に
よって,消費需要の増加が確保されたと言われている.
8
蓄積」と呼び,労働生産性の上昇に支えられた戦後の蓄積体制を「内包的蓄積」と呼んで
対比している(Boyer, 1986; 山田, 1991).成長レジームが,環境資源の投入の量的拡大に
支えられているときには,生産システムの外部からの投入の量的拡大に支えられていると
いう意味で,外延的な蓄積の性質を持っていると考えることができる.
他方,地代と環境対策費用が上昇すると,成長レジームに目に見える影響を与えること
になる. 地代が上昇すると,賃金と利潤への分配を減少させ,資源輸入国にあっては経済
からの漏出として働く.資源生産国にあっては,地代上昇の効果は,地代からの貯蓄性向
といった個々の経済の特性に依存することとなる.地代の水準は制度的な調整により左右
されるが,環境資源の消費が拡大し続ければ,長期的には地代率の上昇がすう勢になると
考えられる(図中の太い破線矢印の回路).地代の上昇が続けば,資源輸入国にあっては需
要が低下することとなる.これは,フォーディズムのように資源消費を拡大させる成長レ
ジームは,それ自身の基盤を掘り崩す内在的なメカニズムを持っていることを意味してお
り,このことが成長レジームの危機に寄与する可能性があると考えることが出来る.
環境対策費用が増加すると,需要レジームと生産性レジームの双方に影響を与える.需
要レジームへの影響は複数の経路を通じて作用する.第一に,環境対策の効果として,資
源生産性を高め,環境資源の消費を抑制し,地代を減少させる.これは,資源輸入国にあ
っては輸入を減少させる.本研究では,この効果を「資源節約効果」と呼ぶこととする.
第二に,環境対策費用の増加は,環境資源代替財・サービスの消費の増加を意味する.
中間消費としての環境資源代替財・サービスの場合は,その生産の増加は,労働と資本の
投入の増加を必要とするが,経済全体の付加価値を直接には増加させない.これは,数量
調整の下で実質賃金が一定と仮定すれば,賃金総額の増加と利潤の減少に反映される.こ
こで,賃金総額の増加は消費の増加につながり,利潤の減少は投資の減少につながるほか,
費用の増加は競争力に影響して輸出を減少させる可能性もある.以上の効果は,費用増加
から分配を経由して複合的に需要を変化させる効果であり,本研究では「費用需要効果」
と呼ぶこととする.
第三に,消費財・サービスとしての環境資源代替財・サービスの場合には,その消費増
は最終需要を増加させ産出を増加させる可能性があるが,これが起きるのは,消費性向全
体の値が変化し消費支出総額が増加するような,大きな増加がある場合に限られる.
第四に,環境資源代替財・サービスへの需要の増加は,その生産のための投資を増加さ
せる.環境資源代替財・サービスは新しい範疇の生産物であるので,その消費の増加は,
それを生産するための新しい種類の資本設備を必要とし,従って投資を増加させる.この
効果を,本研究において,
「環境投資誘発効果」と呼ぶこととする.この効果は,当該需要
が増加している間にのみ働くことに留意を要する.
第五に,環境対策の実施は,
「ラーニング・バイ・ドゥーイング」を通じて,環境技術の
革新を促進する.この効果は,環境資源代替財・サービスの消費拡大という構造変化の趨
勢の中での先行者利益として理解することができる.この効果を,本研究において「輸出
競争力効果」と呼ぶこととする.これは環境対策の経験が一定程度蓄積してから後に現れ
る効果と考えられる.
生産性レジームへの影響について検討すると,環境対策は,環境資源の代替とともに前
述の投資と技術革新の促進を通じて,資源生産性を上昇させる一方,中間消費のための労
9
働と資本の追加的投入を通じて,労働生産性と資本生産性を低下させる効果を持つ.これ
は,生産性レジームと需要レジームとの間の累積的因果連関を弱める可能性がある.
以上のような複層的な効果は,総体として見た場合,経済の状態と環境対策の性質に応
じて,成長レジームの構造を支持する場合と阻害する場合とがある.総合的効果について
より明確に分析するために,Okuma(2012)は,カレツキアン・モデルを応用したモデルを
示した.カレツキアン・モデルはレギュラシオン理論と共通する視点を持ち,これまでも
同学派の研究者によって用いられてきた(例えば,Bowls and Boyer, 1990).ここでモデ
ルの概要を示す.
Lavoie (1992; 2010) と Blecker (2002)
を参照すると,閉鎖経済の基本的なカレツキア
ン・モデルは,次の3つの等式によって表すことができる.
r = πuv
(2)
gs
(3)
= srr
gi = γ0 + γuu + γrπv
(4)
ここで,π は利潤シェアを,v は完全稼働における産出資本比率を,gs, gi はそれぞれ資本
ストックで標準化された貯蓄,投資を,sr は利潤からの貯蓄性向を表している.比較静学
分析によって,利潤シェア (π)が稼働率 (u) と利潤率 (r)及ぼすな影響分析される.
利潤方程式(2)に前節の(1-1)式を用いて地代と環境対策費用を組み込むとともに,資源輸
入国を想定して輸入と輸出の方程式を加えることにより,環境対策費用が成長に及ぼす影
響を分析するモデルが得られる.その概要を表2に示す.
表 2
モデルの概要
主な方程式
r =[π0 – (1−θ)(1 – ϕ)e]uvp
(2-1) (e: 環境対策費用シェア; θ: 環境対策費用の賃金による負担割合;
ϕ: 環境対策の費用回収率; v p: 潜在産出・生産資本比率; u: 稼働率)
gs = s r r
(3)
gi = γ0 + γuu + γrπpvp+ γ0e (4-1) (πpvp: 完全稼働利潤率)
m = m 0 + m u u − m ee
(5)
(m: 資本で標準化した輸入)
x = x0 + xππp + x0e
(6)
(x: 資本で標準化した輸出)
s
i
g = g + x −m
(7)
環境対策費用の影響の分析
①稼働率上昇の条件: Fu(1 – ϕ) + me > 0 ここで Fu = (sr uvp − γuvp − xπ)(1 – θ)
②利潤率上昇の条件: Fr (1 – ϕ)+ me > 0 ここで Fr = [(γu − mu)u/πp– (γrvp + xπ)] (1 – θ)
③利潤率を上昇させる環境対策の費用回収率を求める不等式: ϕ/(1 − ϕ) > − Fr/uvp
e の u 及び r への影響が比較静学によって分析される.その要点は表2の①から③に示
されている.①と②において Fu と Fr は前述の費用需要効果を,ϕ と me は資源節約効
果を表す.条件②が満たされているとき,環境対策費用の増加は利潤率を上昇させる.こ
の現象をローソン(Rowthorn, 1982)にならって「環境対策の費用の逆説」と呼ぶ.この
現象が「グリーン成長」であると理解することができる.③の不等式を用いると,費用回
収率の点でどのような環境対策であれば利潤率を上昇させるかを推計することができる.
このモデルに,動学的な性質を持つ二つの追加的な要素,すなわち前述の環境投資誘発
効果と輸出競争力効果を組み込むことができる.これらを組み込むと,投資関数と輸出関
数はそれぞれ次のように変化する.
10
gi = γ0 + γ uu + γrπvp + γeĖ/K
x = x0 + xππ + xeT/K
(6-1)
(4-2) (Ė =Et – Et-1 は E の増分)
(T は経験の蓄積 : Tt = Et + (1 – δ) Tt-1)
これらは動学的性質を持つ効果であり比較静学の範疇に収まるものではないが,これら
の効果が表れる時期に関して慎重に解釈するならば,①と②の不等式において me に
[(γeĖ/K + xeT/K)/e] を加えることによって,これらの効果を評価することができる(モ
デルの詳細な説明については Okuma(2012)を参照されたい).
このモデルにより,前述の複層的効果を理解でき,実証分析にも用いることができる.
3
日本における長期的変容の実証分析
前述の分析枠組みを用いて,戦後高度成長期以降の日本の歴史を分析する.まず,鍵と
なる指標として,環境関係費用の長期推計を行う.また,これら指標を用いてカレツキア
ン・モデルによる計量分析も行う.これらの情報と制度形成の経緯に関する情報を総合す
ることによって,経済・環境関係及びその成長レジームとの関係の長期的変容を分析する.
3.1
環境関係費用の長期推計
客観的な指標を得るために,環境関連費用(環境対策費用,地代,潜在的環境費用)に
ついて長期推計を行った.以下にその概要を示す.まず,環境・経済統合勘定の推計を行
った日本総合研究所(2004)の方法を参考としながら,生産システムにおける環境資源代
替財・サービスへの支出を,環境対策費用として推計した.対象項目として内部公害防止
費用,内部省エネルギー費用,廃棄物処理費用,環境研究開発費用の4つの類型を取り上
げている.環境対策費用産出比率(環境対策費用シェア)の形で推計した結果の概要を図
3に示す.日本総合研究所(2004)と比較すると,長期にわたる連続的な推計を行ってい
ること,そのために対象分野を一部捨象する一方,地球温暖化対策と技術競争力への関心
から省エネルギー対策費用と環境関係研究開発費用を対象に加えていることが特徴となっ
ている.データ出所を含め推計の詳細については大熊(2013a)を参照されたい.
次に,地代については,日本のような資源輸入国では,ほとんどの部分は輸入に含まれ
ると考えられる.正確には,様々な財・サービスの中にも地代相当部分が含まれると考え
られるが,ここでは,大きさとデータ入手可能性の観点から,天然資源の輸入価額を地代
相当額とみなすこととした.産出に対する比率として算出した結果を図4に示す.
最後に,潜在的環境費用については,非市場価値を貨幣評価することに伴う内在的な困
難を認識し,他の環境関係費用と比較しつつ大局的傾向を観察する上で必要な範囲に限っ
て最小限の推計を行った.様々な推計方法の中で,ここでは,自然資本の減耗という 2.1
節の概念と整合する方法として維持費用評価法を用いた.日本総合研究所(1998)による
推計を基礎として用いつつ,推計期間を連続的長期に広げる一方で,対象項目を狭めるこ
とによって,硫黄酸化物及び窒素酸化物の排出と二酸化炭素の排出について長期推計を行
った 16.産出比として表した推計結果を図5に示す.
16二酸化炭素の推計値は,推移の観察はできるが大きさ評価には使えない参考データとして理解される必
要がある.自然吸収量を超過する排出量全ての削減は実施不可能であり,その費用も算定不能との認識の
上で,1990 年比マイナス6%削減の対策における削減費用原単位を用いて参考として推計されたもので
あるためである(日本総合研究所,1988).
11
2.00%
1.50%
1.00%
0.50%
0.00%
2008
2006
2004
2002
2000
1998
1996
1994
1992
1990
1988
1986
1984
1982
1980
1978
1976
1974
1972
1970
1968
1966
1964
2009
2007
2005
2003
2001
1999
1997
1995
1993
1991
1989
1987
1985
1983
1981
1979
1977
1975
1973
1971
1969
1967
1965
1963
2008
2006
2004
2002
2000
1998
1996
1994
1992
1990
1988
1986
1984
1982
1980
1978
1976
1974
1972
1970
1968
1966
1964
1962
1960
-0.20%
内部公害防止費用
内部省エネルギー費用
廃棄物処理費用
環境研究開発
図3 環境対策費用産出費の推移
9.00%
8.00%
7.00%
6.00%
5.00%
4.00%
3.00%
2.00%
1.00%
0.00%
図5 潜在的環境費用産出費の推移
12
二酸化炭素(参考値)
硫黄酸化物+窒素酸化物(固定発生源)
鉄鉱石
非鉄金属鉱
鉱物性燃料
木材
図4 地代産出費の推移
0.80%
0.60%
0.40%
0.20%
0.00%
これらの環境関係費用の推計値は,3.4 節における経済・環境関係の長期的変化の解釈
において重要な指標として参照される.
3.2
成長への影響の計量分析
環境関連費用の推計値を用いて計量分析を行うことにより成長への影響を評価すること
ができる.大熊(2013a)は,2.4 節で示したカレツキアン・モデルを用いてこれを行って
いる.ここでは結果の概要を示す.
2.4 節で示したモデルに現実の経済について計量分析を行うための調整を加えた上で 17,
前節で推計した環境対策費用及び地代と利潤率,稼働率等の経済諸変数とを用いて各方程
式について重回帰分析を行い,構造変化を考慮して区分された時期ごとに各係数を推定し
た.そして推定された係数により,Fr (費用需要効果を表す),[Fr(1–ϕ)+me] (費用需要効
果と資源節約効果を表す)及び [Fr+(γeĖ/K+xeT/K)/e] (費用需要効果,環境投資誘発効
果,輸出競争力効果を表す)を推計した.これらの値を用いて環境対策の費用の逆説が働
いたのか否か,またどのような効果により働いたのかを分析した.結果概要を表3に示す.
表3
環境対策費用の利潤率への影響
費用需要効果
費用需要効果
+ 資源節約効果
Fr
Fr(1–ϕ) + me
費用需要効果
+ 環境投資誘発効果
・輸出競争力効果 *
Fr+(γ eĖ/K+xeT/K)/e
1971-1974
1975-1982
1983-1987
解釈
-0.80
-0.65
-0.90
利潤率低下.
-0.80
28.46
23.17
資源節約効果により利
潤率上昇.
⇒ 費用の逆説が成立
4.02
3.41
2.72
環境投資及び輸出競争力効
果により利潤率上昇.
⇒ 費用の逆説が成立
2001-2008
解釈
-0.61
利潤率低下.
-0.36
輸入削減は検出されず.
(対策が強化された場
合の効果は不明)
-0.61
動学的効果は検出されず.
(対策が強化された場合の
効果は不明)
*
比較静学によっては分析できないが,[(γeĖ/K+xeT/K)/e]が期間を通じてほぼ一定の値を示していたことを確認
の上,期間の平均値を用いて評価したもの.なお,資源節約効果は除外している.
2000 年代前半と同様の状況を仮定して,仮に環境対策が顕著に強化されたとした場合に
成長にプラスの効果を持ちうるか否かについて考察する.上記の結果は,1970 年代に極め
て高い資源節約効果,環境投資誘発効果,輸出競争力効果が表れたことを示している.値
の大きさからみて,当時より大幅に小さい効果であっても,環境対策の費用の逆説が働く
ことが分かる.これを踏まえれば,環境対策が強化される場合,これら効果が働くように
配慮された形で実施されるならば,利潤率にプラスの効果を持つ可能性は十分に高いと考
えることができる(より詳しい説明について,大熊(2013a; 2013b)を参照されたい).
17
具体的には,実質賃金は制度的調整により決定されると仮定して利潤方程式を修正するとともに,賃
金からの貯蓄を考慮して貯蓄方程式を調整した.
13
3.3
経済・環境関係の長期的変容の解釈
前2節の結果と環境制度形成に関する諸情報を用いて,歴史を時期区分し経済・環境関
係を特徴づけていくことによって長期的な変容を分析する.日本の戦後以降の経済・環境
関係は 1960 年代から 1970 年頃まで,1970 年頃から 1980 年代前半まで,1980 年代前半
から 1990 年頃まで,1990 年頃から 2008 年頃まで 2008 年頃以降に区分することができる.
3.4.1.
1960 年代から 70 年頃
高度経済成長の中,資源・エネルギーの消費量及び汚染物質の排出量が急増した.これ
により各地で産業公害が発生し,深刻な健康被害が発生した.これらの地域では,被害補
償や排出差し止めを求める住民運動が起こったが,企業も行政も有効な対策を取らなかっ
た(川名,1987).被害を受ける地域住民と経済開発を主導する大企業や政府との間で,
地域と国という乖離があったこと(調整の空間的・時間的乖離)が,対策の遅れの一因と
なった.また,地代を反映している石油価格も低水準で維持された.
このように,この間の経済・環境関係は,低い地代及び環境対策費用と,高い潜在的環
境費用を特徴としている.これを「環境資源低コスト多消費型」と呼ぶこととする.
成長レジームとの関係を見ると,この時期には,生産の増加と生産性の向上の累積的因
果連関を特徴とする,いわゆるフォーディズム型の成長レジームが機能していたが 18,こ
れは大量生産・大量消費を必然的に伴うものであった.これに伴い,天然資源の消費と廃
棄物の排出が増大したが,地代と環境対策費用が低い水準に抑えられることによって,生
産費用の増加が抑制され,高水準の利潤が確保されて,これが高水準の投資につながるこ
とにより,成長レジームが支持されていたと考えられる.従って,上記の経済・環境関係
は,この成長レジームの成立と維持に寄与していたものと考えられる.
関連して,フォーディズムは,生産要素である労働力の投入における(量的拡大ではな
く)生産性の拡大に支えられていたという意味で内包的蓄積であると特徴づけられている
が,生産要素である環境資源の投入に着目した場合には,その量的拡大に支えられており,
フォーディズムは環境側面については外延的な性格を持っていたと考えることができる.
3.4.2.
1970 年代から 80 年代前半まで
1970 年には,公害対策の法制度が導入され厳しい規制が実施に移された.1960 年代後
半から産業公害の深刻化を受けて各地で住民運動が多発し,訴訟も提起された.これを受
けて公害反対の世論と運動がマスメディアや科学者の支持を得ながら全国に広がり,国政
上の重要問題となっていった(川名, 1987;宮本,1989).民主主義のメカニズムが,地域
住民と国レベルの政治との間の乖離を埋めたと理解できる.また,1970 年代半ばからは,
石油危機に対応し,省エネルギーを促進するための政策も導入された.
以上の結果,1970 年から 80 年頃にかけて環境対策費用が大きく増加し,次いで,原油
輸入価格としての地代も増加した.これに対応して,公害に係る潜在的環境費用が大幅に
18
日本においてはインデックス賃金という典型的な労使妥協はなかったことなどから,フォーディズム
であったのか等について多様な見解が示されている(山田, 2008).
14
減少し,また,二酸化炭素に係る潜在的環境費用も,増加から減少傾向に転じた.
このように,この間の経済・環境関係は,制度的調整の強化による環境対策費用及び地
代の増加を特徴としており,これを「公害規制・省エネルギー型」と呼ぶこととする.
成長レジームとの関係を見ると,高度成長を支えた蓄積体制は耐久消費財市場の飽和と
賃金上昇等により 1970 年前後に限界を迎えて危機に突入したが,1980 年代には,輸出と
これに対応する投資により特徴づけられる輸出主導型の成長レジームが形成され,安定的
な成長が実現したと理解されている(Uemura, 2000).一方,この時期の厳格な環境規制
は,公害防止設備への投資を増加させるとともに技術的競争力の強化に寄与し,経済にプ
ラスの影響を与えたといわれている(OECD, 1991; 環境庁, 1992).3.3 節で参照した計量
分析は,この時期の環境対策費用の増加は,資源節約効果,投資誘発効果及び輸出競争力
効果を通じて,経済成長にプラスの影響を与えたことを示唆している.この期間の公害規
制・省エネルギー型の経済・環境関係は,危機から次の成長レジームの成立までの移行を
円滑化する効果を有していたと考えることができる.
3.4.3.
1980 年代後半
産業公害が沈静化する一方で,大量生産,大量消費が継続する中,都市生活型公害(大
都市圏の自動車公害等)が表面化した.都市生活型公害においては,汚染原因者と被害者
は広くい経済活動の中に拡散しており,産業公害に比較すれば住民運動の圧力は弱まった.
環境対策は政治的調整において推進力を失い,制度強化の動きが停滞した.環境対策費
用についても,産出比で見た場合,増加が見られなくなった.この時期を,制度形成の停
滞期として理解することとする.
3.4.4.
1990 年代から 2000 年代前半まで
大量生産,大量消費,大量廃棄型の経済活動による環境負荷の蓄積は,廃棄物問題と地
球環境問題として顕在化してきた.また, 92 年には地球サミットが開催されるなど,国
際的な議論が進んできた.これに対し,市民団体や科学者が環境の利益を支持する新たな
アクターとして現れてきた.さらに,地球環境問題に関心を持つ政治家も現れてきた.
こうした新たなアクターの出現が,環境対策を促進する制度の形成につながっていった.
1993 年には環境基本法が制定された.容器包装リサイクル法(1995 年),家電リサイクル
法(1998 年)など分野ごとの制度が整備され,2000 年に循環型社会形成推進基本法も制
定された.京都議定書の採択(1997 年)を契機として 1998 年に地球温暖化対策推進法が
制定されるとともに省エネルギー法が改正され,経団連は 1997 年に「自主行動計画」を
策定した.一方で,炭素税や排出量取引制度は,産業界の反対により導入されなかった.
これらの制度は,70 年代の公害規制と比較すると,一般に,消費者を含む幅広い関係者
の協力と役割分担が重視され,また,対策の実施及びその内容について企業の自主性と柔
軟性が重視されるという特徴を持っている 19.環境への負荷の原因となる幅広い活動にア
19
例えば,省エネルギー法は事業者にガイドラインを示し取組を促す仕組みとなっている.家電リサイ
クル法は関係者の役割分担を設定し,費用は消費者が負担する仕組みとなっている.経団連の自主行動計
15
プローチする必要があるという事情とともに,対策強化を求めるアクターの圧力が公害被
害者の場合に比較すれば拡散しているため,制度の形成に当たって関係者,特に産業界か
らの同意が一層重要であったことも要因となっている.地球環境問題においては,工業国
と脆弱地域(島嶼国等),現在世代と将来世代といった形で,原因者と被害者に乖離がある.
こうした調整の乖離が,アクターの圧力を弱め,制度的な調整の強度を弱めている.
その結果,環境対策費用の水準に顕著な増加は見られなかった.一方,潜在的環境費用
も,二酸化炭素の排出などにより概ね同程度の水準の費用が発生し続けていた.
このように,この間の経済・環境関係は,環境対策費用の増加を伴わない自主的な性質
を持つ制度という特徴を持っており,「自主的取組型」と呼ぶこととする.
調整様式及び成長レジームとの関係について見ると,経済・環境関係において企業の自
主性と柔軟性が重視されたことは,競争的な国際体制の下で賃労働関係においてフレキシ
ブル化が進んだことと軌を一にしている.したがってこの時期の経済・環境関係の特性を
説明する要因として,制度補完性という視点を考えることができる.この経済・環境関係
の下で環境対策費用が増加しなかったことは,生産費用の抑制を通じて,2000 年代前半の
輸出主導型の成長と整合的であったと考えられる.しかしながら,いくつかの環境関連製
品(例えば風力発電設備)については,日本はより強固な制度を持つ国々に競争力で後れ
を取っており,より長期で見て成長に負の含意を持つ可能性もある.
3.4.5.
2008 年以降
サブプライム問題を契機とした世界経済危機に直面するとともに,温室効果ガスを 2050
年までに世界全体で半減する必要があるとの共通の認識に後押しされ,
「グリーン成長」や
「グリーン・ニューディール」というアイデアが,日本を含む各国で政治的に高いレベル
で提案された.これは,経済的利益を支持するアクターと環境上の利益を支持するアクタ
ーとの協力の下で成立した制度的調整であると理解することができる.
日本においては,時限的な財政出動措置としてエコカーや省エネ家電等の購入に対する
大規模な補助制度が導入された.一方,生産費用の増加を伴う制度は,反対も強くなかな
か導入されなかったが,政治的な調整を経て固定価格買取制度(FIT)と地球温暖化対策
税が 2012 年から導入され,整備が始まったところである.
現在展開しつつあるこうした経済・環境関係は,経済上の利益と環境上の利益の同時追
求という特徴を持っており,暫定的に「環境主導成長志向型」と呼ぶこととする.
他方,2011 年に発生した東日本大震災と原子力発電所事故は日本の経済と社会に大きな
ショックを与えた.また,安倍政権の政策は経済成長を特に重視している.これらが経済・
環境関係をどのように変化させていくのか,そして「環境主導成長志向型」が果たして成
立し持続するのか否かは,現時点では明らかではない.
こうした経済・環境関係が成長パターンに与える効果を評価するには時期尚早だが,現
時点で可能な範囲で考察を試みる.前述の補助制度はエコカー,エコ家電等の売上を増加
させ,経済刺激策として一定の効果を上げた(環境省他, 2011).しかし,財政制約の下で
こうした措置を長期的に続けることはできない.他方,生産費用の増加を伴う対策は,も
画に,政府の計画の中で重要な位置づけが与えられている.
16
し導入されれば持続できる制度となりうる.1970 年代には,そうした対策が「費用の逆説」
を通じて成長にプラスの影響を与えた.費用の逆説が成立する条件はより厳しくなってい
るものの,資源節約,環境投資誘発及び輸出競争力強化の効果が発揮されるような形で実
施されれば,環境対策が成長にプラスの効果を持つ可能性は高いと考えられる.
このような対策が実施されるか否かは,アクター間の妥協として制度が形成できるか否
かによって決まることとなるが,この妥協は,経済側と環境側のアクターのこれまでの協
調の射程を超えることに注意を要する.ここでの経済へのプラスの効果は,企業にとって
直接的には費用増加に見えるという逆説的なものであるからである.そうした制度的調整
の実現可能性は,環境の新たなアクターの力がどこまで強くなるかという点とともに,ア
クター間の協調の射程がどこまで広がりうるかにも依存すると考えられる.
4
結論
本稿は,レギュラシオン理論を基礎とした経済と環境との関係の分析に取り組み,分析
の枠踏みを提案するとともに日本の事例について歴史分析を行った.
理論的基礎として,社会経済システムを経済,人間及び環境の三つの再生産として認識
した上でそのうちの経済再生産の環境再生産の関係を制度形態の一つ(経済・環境関係)
と位置付けた.そこでの制度的調整の原動力となる主たるアクターは,環境問題の被害者
とそれを支持する者である.関係するアクターの間には,地球環境問題に典型的に見られ
るように,しばしば空間的・時間的な乖離があり,それが制度の形成を遅らせる要因とな
る.制度階層性と制度補完性も制度の特性に影響を与える.環境関係費用,すなわち,環
境対策費用,地代及び潜在的環境費用が,経済・環境関係の特徴を特定し,その成長レジ
ームへの影響を分析する上で重要な指標となる.これら指標によるモデル分析も可能であ
り,カレツキアン・モデルを応用した分析を参照した.
この枠組みを用いて,日本の高度成長期以降今日までの歴史について実証分析を行った.
環境政策制度の整備を時系列的に確認し,環境関係費用の長期推計を行った.モデルを用
いた計量分析も参照した.これらの情報を総合して,経済・環境関係を時期区分し,時期
ごとの特性を特定した.その結果,以下のような時期ごとの特性が特定された.1)1960
年代から 70 年頃:環境資源の外延的消費に支持された内包的な蓄積体制がみられ,環境危
機につながる内在的なメカニズムを伴っていた.2)1970 年代から 80 年代前半:汚染者
と被害者の間のコンフリクトを通じて形成された厳格な規制による制度的調整であり,こ
れは,「費用の逆説」を通じて成長を支持した.3)1990 年代から 2000 年代前半:自主
性と柔軟性を重視し,費用上昇を伴わない制度的調整が見られた.その要因として,環境
面のアクターがかつてより弱いこと及び競争志向的な制度階層性とがある.4)2008 年以
降:経済側と環境側のアクターの協調の下で,グリーン成長を志向するいくつかの政策が
見られた.
こうした歴史的な分析から,いくつかの政策的含意を導き出すことができる.第一に,
制度の形成において,強いアクターの不在と空間的・時間的乖離という構造的な問題に我々
が直面していることが改めて確認される.特に地球規模の環境問題においては,制度によ
る調整は円滑には進まず,問題と対策との間に大幅なタイムラグが生じる可能性が高い.
この調整の乖離をどのようにして埋めることができるかが,環境政策の本質的な課題とな
17
る.国際的なルール作りの重要性は言うまでもないが,その完成を待つことなく漸進的に
対策を進めていくための工夫,例えば,国単位での先進的な環境政策を国際的に広げてデ
ファクト・スタンダード化を図っていくこと,コミュニティなど地域レベルで先鋭的なモ
デルを構築していくこと,環境面の利益を代表しうるアクターの強化や拡張を図っていく
こと(市民社会の強化のほか,金融における長期的視点の強化との連携も含まれる.)等の
戦略を模索していくことが重要となってくる.
第二に,1970 年代には,環境対策は「費用の逆説」を通じて経済にプラスの影響を与え
た.今日でも,もし社会的な妥協が実現すれば,この逆説的効果を通じて,中期的にグリ
ーン成長が実現する可能性は十分にあると考えられる.グローバル・ガバナンスが不足す
る中,この効果を企図した国単位の環境政策は,当面の現実的な戦略となりうる.環境面
の供給制約の深刻さを考えれば,グリーン成長が永続的な解決となるとは考えられないが,
少なくとも時間を稼ぐ戦略として極めて重要と考えられる.関係アクター間でこの逆説的
効果についての理解が共有されれば,こうした妥協の実現に寄与するだろう.
第三に,以上のような歴史的認識は,経済成長の本質的課題を示唆している.資本蓄積
の歴史を見ると,19 世紀には労働と市場の量的拡大に支えられた外延的蓄積が進んだが,
ルイスの転換点も経て外延的蓄積が限界に達し,20 世紀前半の断続的な危機の時代を迎え
た.そして戦後黄金期の生産性の上昇に支えられた内包的蓄積体制が成立したと言われて
いる.しかし,前述のように,労働と並ぶ生産要素として環境資源を位置付けたとき,黄
金期の内包的蓄積は,環境資源の投入の面では大幅な量的拡大に依存しており,外延的な
性質を持っていた.つまり,資本主義のこれまでの歴史において,労働・環境両面で外延
的な拡大を伴わないものはなかったと言える.そして今,人類の経済活動は地球生態系の
許容量を超過したことが顕在化しており,いわば,環境面でのルイスの転換点を迎えたと
も言える.将来にわたり経済成長を続けていく必要があるとすれば,労働,環境両面で生
産性の上昇のみに支えられた成長という,かつてない蓄積体制を模索しなければならない
状況に置かれていることを意味している.こうした認識は,環境政策が真の持続可能性を
求めるならば,社会全体の変革の可能性をも視野に入れた,射程の長い政策を模索してい
かざるを得ないことを示している.また,経済学の面でも,経済成長と資本蓄積に関する
理論的及び歴史的研究において,労働とともに環境の視点が考慮されることの重要性を示
唆していると考えられる.
本稿は,理論と実証の両面での前進に努めたが,いくつかの重要な分野は十分に扱うこ
とができず,今後の研究課題として残されている.例えば,生産性レジームに光を当てた
長期的なモデルの構築,最終需要における環境費用についての一層の分析,環境関係費用
についての推計の改善,最新の政策展開等を織り込んだ計量分析及び歴史的分析の更新が
挙げられる.経済・環境関係の理解を深めるために,他の国や地域に関する歴史的分析や
各国間の比較分析を進めることも重要な課題である.
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