...

不思議な銀色たまご

by user

on
Category: Documents
11

views

Report

Comments

Transcript

不思議な銀色たまご
不思議な銀色たまご
1
はじめに
中学校までの理科の学習内容との円滑な接続は、高等学校での理科教育における重要
なテーマの一つである。中学校まで定性的に学習してきた生徒たちが、高等学校入学後、
より発展的な内容や定量的な内容に触れ、そのギャップから理科に拒否反応を示すこと
も多い。そこで、生徒たちができるだけ取り組みやすく、興味をもちやすい観察、実験
の活用を考え、そこから発展的な視点へとつなげることができるよう工夫した。
2
目 的
光の反射、屈折及び全反射については中学校理科では観察を通して学習するが、これ
らの現象を高等学校理科では定量的に捉えることになる。そこで、ゆでたまごが銀色に
輝くように見える不思議な現象を題材にして、光の反射、屈折及び全反射を定量的に捉
えるきっかけとして理解を深める。
3
解
説
すす
ろうそくから出る煤には水を弾く性質がある。これをたまごの
表面に真っ黒になるまで十分に付着させ(図1)、水中に入れると、
たまごの表面に空気の薄い層ができる。この状態を観察すると、
たまごの外縁部は銀色に光り、中心部には黒い表面が見られる。
(図2)
これは、たまごの外縁部に向かう光が全反射を起こし、鏡に近
い状態になっているためである。また、たまごの中心部が黒く見
えるのは、外縁部に比べて光の入射角が小さく、たまごの黒い表
面まで光が達することができるためである。(図3)
図1
銀色に見える
黒く見える
水
空気の層
たまご表面
図2
4
図3
実験書の記入例
結 果
・たまごのふちの方が銀色に光って見えた。たまごの真ん中あたりは、表面の黒い部
分が見えた。たまごを回転させてどの角度から見ても、このように見えた。
考 察
1 ゆでたまごが銀色に光って見えたのはなぜか。
・ろうそくの煤は水を弾く。そうすると、たまごと水の間に空気の層ができ、外から
1
の光が空気の層の表面で全反射するから。
2
3
ゆでたまごの黒い表面が見えている部分があるのはなぜか。
・外からの光が空気の層に入射するとき、入射角が小さいので全反射が生じず、たま
ごの黒い表面まで光が届くから。
光の道筋を図示しなさい。
銀色に見える
黒く見える
水
空気の層
たまご表面
4
5
次の文中に適語を入れ、完成させなさい。
下図(a)のように、光が水から空気へ入射するときの入射角が小さいとき、光には反
射するものと、〔 ① 屈折 〕してたまごの黒い表面まで達し〔 ② 反射 〕してから
目に達するものがあるので、たまごが黒く見える。下図(c)のように、光の入射角が大
きいときは、光は〔 ③ 全反射 〕しているので銀色に見える。
光の入射角が十分に小さい角度からだんだん大きくなると屈折角もだんだん大きく
なる。そして、下図(b)のように入射角がある角度 i0 のとき、屈折角が 90°になる。
このときの入射角 i0 のことを『 ④ 臨界角 』といい、これ以上の入射角の場合、光
は全反射する。
発展
本実験では、光の反射、屈折及び全反射について定量的に理解を深めることを目的と
している。「科学と人間生活」ではそれほど定量的な扱いを求めてはいないが、中学校
理科から発展させることを踏まえると、生徒の理解度に合わせて定量的な要素を変えて
いく必要がある。今回は、定量的な扱いを抑えた授業展開案を示した。
発展的な学習では、あらかじめ光学水槽で「屈折の法則」を学習させた上で、今回の
実験を行うとよい。今回の実験のみで「屈折の法則」を導くことは難しいため、「まと
め」の段階で屈折の法則を用いて臨界角を数値で求めさせるとよい。更に屈折の法則を
深める場合は、「水の屈折率を求める」とよい。
【実験】水の屈折率を求めよう
(目的)水中で浮き上がる物体を観察し、水の屈折率を求める。
(準備)深い容器(メスシリンダーなど)、コイン、水
(方法)
① 深い容器に水を入れ、コインを沈める。(図4)
② コインの真上近くからコインをのぞき込み、どの位置にコインが見えるか観察し、
水面からの距離 d を測る。(図5、6)
③ d を数回測定して平均値を求め、(*)式から水の屈折率を求める。
2
図4
図5
図6
(解説)θ が十分に小さい場合、sinθ ≒ tanθ という近似式を用いる。
r
L
r
d
水
i
コインの虚像
屈折率 n
D
i
コイン(実物)
屈折の法則より
n =
L
sin r
tan r
d = D
≒
=
L
sin i
d
tan i
D
・・・(*)
水の屈折率=1.33、D=20 cm とすると、d = 15 cm 程度になる。
6
おわりに
光の屈折や反射及び全反射は、現象としては簡単で身近なものであるが、屈折の法則
等を用いて定量的に考え始めるとつまずく生徒が多い分野でもある。しかし、これら諸
現象は、光の波動性を示す大きな証拠であり、重要な学習事項である。言い換えると、
いかに生徒の興味を喚起しつつ分かりやすく教えていくかの指導方法が問われる分野
である。
3
Fly UP