...

“薬”のスペシャリストであり、 “医療”のジェネラリストでもある薬剤師。

by user

on
Category: Documents
29

views

Report

Comments

Transcript

“薬”のスペシャリストであり、 “医療”のジェネラリストでもある薬剤師。
8
医療法人社団三喜会横浜新緑総合病院
“ 薬 ”のスペシャリストであり、
“ 医療 ”のジェネラリストでもある薬剤師。
横浜新緑総合病院( 病床数199床、診療科目15科 )における薬剤部の活動は、
中小病院のチーム医療の活性化に加え、
病院運営への積極的参加の事例として大きく注目される。
長く同院薬剤部を牽引している部長の藤本康嗣先生に話をうかがった。
市2次救急拠点病院Bの補助金など
の要件ともなっており、これらを含
めた経済効果を算出すると、夜勤体
制に要する薬剤師の人件費は十分に
賄えます。今後の課題としては、薬
剤師の夜勤業務の環境整備が急務で
す。夜勤を担当する薬剤師が、より
安心して、万全の体制で勤務できる
ようにするのが私の責務と考えてい
ます 」
薬剤部長
藤本 康嗣先生
ム導入によって業務の効率化が進
薬剤師が活躍の場を広げるという
み、さらに2003年に外来処方を院外
点において同院で驚かされたこと
に出したのを機に、好機が到来した
は、薬剤師がNSTの専従者を担っ
同院薬剤部は2005年6月から夜勤
と感じた私は、薬剤師が夜勤や病棟
ている点。 もちろんNST回診を全
を開始し24時間365日薬剤師が常駐
常駐ができる環境を早急に整えまし
病棟( 回復期病棟も含む )で実施し
することで、医療の質及び安全性が
た。むしろ薬剤部から積極的に夜勤
ている。また、同院の退院時指導も
格段に向上した。薬剤部長の藤本康
体制を提案したのを覚えています 」
特徴的で注目すべきところが多く、
嗣先生が当時を振り返り回想する。
現在の薬剤部は藤本先生も含め常
見受けられた。一般的な薬情のほか
「 急性期病院としては当然なのです
勤薬剤師が16名。各病棟には基本的
にアレルギー、副作用、服用状況な
が、当院ではかなり以前から、当直
に3名の担当薬剤師がおり、日中は
どの患者情報を記載した退院時服薬
医師や看護師から薬剤師が不在の夜
うち1名が必ず常駐。この体制実現
指導書、入院中のすべての投薬歴を
間の投薬は、不安が払拭できずリス
によって、配薬カートへのセッティ
記載した薬歴管理表も渡し、退院後
クが大きいとの声が聞かれ、夜間の
ングを含めた薬の管理を薬剤師が実
の薬薬連携を意識した指導をしてい
薬剤師勤務の要望が出ていました。
施するようになり、誤投薬のインシ
るそうだ。
薬剤部もその必要性を十分に認識
デントは37.8%減少したという。
急性期病棟に薬剤師常駐
夜勤体制も導入
34
NST専従者は薬剤師
活躍の場を着実に広げる
「 退院時の指導にお薬手帳を用いる
していましたので準備を進めていま
「 薬剤師の夜勤体制は超急性期脳卒
ことで、2008年に後期高齢者退院時
した。2001年のオーダリングシステ
中加算( 年間30件以上算定 )や横浜
薬剤情報提供料、2010年に退院時薬
Medical Network 54
剤情報管理指導料を算定できるよう
『 医療のジェネラリスト 』にもなり
て、複雑な検査や投薬をセットオー
になりましたが、当院ではそのはる
うる存在です。そこで私は多職種の
ダーできるようにし、医師や看護師
か前から同様の取り組みを継続して
協業を円滑にマネジメントするため
の負担を大幅に軽減。さらに、すべ
いました。入院患者の薬歴を管理
にも、『 薬剤師が行ったほうがスム
てのパスをコード化、運用も管理も
し、その情報を退院する患者さんご
ーズにいくこと 』を見出し、積極的
非常に簡便に行えるようにしまし
本人や退院後に来院するかもしれな
にかかわっていこうと考えていま
た。パスのコード化で、パスの普及
い他の医療機関に確実に伝達するの
す」
率 は 急 速 に 広 が り ま し た(
【 資料
は、本来行われるべき病院薬剤師の
たとえば、院内IT化の先鞭。 オ
1】)」
責務だと認識しているからです。保
ーダリングシステム導入以前から率
険薬局や患者さんからもとても喜ば
先してIT化に取り組んだ薬剤部は、
れ、高い評価をいただいています 」
同システム構築において、インター
委員会活動の中心に
治験体制の構築も果たす
藤本先生のコメントからは、医療
フェイスのひな形を提供するなど重
目覚しい活動の積み重ねにより、
の質と病院経営の双方から薬剤師の
要な役割を果たした。その延長線上
同院では薬剤部がさまざまな委員会
貢献を定量的に評価し、その妥当性
で、院内クリティカルパス開発にも
活動の中心的存在となっていった。
を明示していくことが薬剤師の活躍
積極的に関与。クリティカルパス運
現在、薬剤部が事務局を担う委員会
の場を広げていくのにきわめて重要
営委員会の事務局を引き受け、リー
は薬事審査委員会、治験審査委員
だとわかる。
ダー的な役割を担い、オーダリング
会、クリティカルパス運営委員会、
システムに連動した「 オールインワ
がん化学療法委員会、緩和ケア委員
ンパス 」の運用を具現化した。
会、輸血療法委員会と6つにも及ぶ。
薬剤師は医療の
ジェネラリストにもなれる
「当院のクリティカルパスの特徴は、
「 事務局を引き受けるのは業務増大
「 質の高い医療 」への薬剤師の貢
8診療科にわたり108疾患、177のパ
と懸念する向きもありますが、他職
献に関し、藤本先生はさらに明確な
ス(2010年10月1日現在 )が開発、
種の理解を得ながら自らの活動環境
意見を持つ。
運用されている点にあるでしょう。
を整備するにはかっこうの機会と考
「 薬剤師は『 薬のスペシャリスト 』
同一疾患であっても異なる治療内容
えるべきでしょう 」
であると同時に、薬以外も含めた
ごとに細分化した電子パスを構築し
中でも治験に関しては、薬剤部内
に治験管理室を開設。自院の疾病構
【 資料1】クリティカルパスの数と運用状況の推移
成を薬剤部が分析し、治験のセレク
ト、進捗管理、経理マネジメントま
で引き受け、治験症例数の増大につ
なげている。
「 治験を積極的に行うには、エント
リー症例の的確なセレクトと透明性
を持った運営が不可欠です。ここで
も、薬剤師の専門性と立ち位置の中
立性が大きな威力を発揮していると
言えます 」
藤本先生はまた、治験の実施医師
に適正な報酬が支払われる仕組みの
構築にも力を注いだ。経営層の了解
Medical Network 54
35
【 資料2】横浜新緑総合病院薬剤部の組織図
一般調剤室
薬剤科
調剤業務係
無菌調剤室
薬剤部
ドラッグインフォメーション
医薬品情報管理室
薬剤管理指導
麻薬管理者
医薬品管理課
調剤室在庫管理
医薬品在庫管理係
病棟薬剤在庫管理
医薬システム管理係
医薬品安全管理責任者
クリティカルパス運営事務局
クリティカルパス運営委員会
治験薬管理者
治験管理室
SMO
治験事務局
CRC
治験審査委員会
CRO
治験審査委員会事務局
ることは新しい医療とかかわること
現場に年間1万2,000名のペースで輩
を意味し、医療の質を向上させると
出される6年制教育を受けた有望な
ともに、治験収入によって病院経営
薬剤師たちの活躍の場を確保するた
にも大きく貢献できます。当院で多
めにも、不可欠の取り組みだと考え
くの治験が可能になったのは、『 医
ます 」
療のジェネラリスト 』たる薬剤師の
治験審査委員会の様子
職能が最大限発揮されたからでしょ
う」
36
のもと、研究費の2割を担当医師に
藤本先生に今後の抱負を語ってい
報酬として支払うシステムとし、同
ただいた。
時にITシステムを構築して治験セ
「 薬剤師が積極的に院内の制度整備
ンター内で管理と運用を行うことと
にかかわっていく方針は、今後も堅
した(
【 資料2】
)
。
持します。他職種から認められ、頼
「 設備の整った大病院とは異なり、
られることが、薬剤師の活動環境を
中小病院で治験を積極的に行ってい
向上させ、医療の質の向上にもつな
るところは稀だと思います。しかし、
がると信じるからです。
GCPに対応可能な院内体制と、医師
これからの薬剤師は、薬剤師の存
が治験に積極的にかかわれる環境を
在を医療の質と経済性の両面から評
整備すれば、病院の規模に関係なく
価されるように活動し、院内外に発
治験は可能。そして、治験に参加す
信していくべき。来年度から医療の
Medical Network 54
DATA
医療法人社団三喜会
横浜新緑総合病院
所在地:〒226-0025
横浜市緑区十日市場町1726-7
TEL :045-984-2400( 代表 )
URL:http://www.shinmidori.com/index.
html
病床数:一般199床( うち37床 回復期リ
ハビリテーション病棟 )
*同院ホームページより転載
【 資料1・2】
:横浜新緑総合病院より
Fly UP