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月刊JASTPRO PDF 2012年9月号

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月刊JASTPRO PDF 2012年9月号
408
2012- 09
今月号の内容
記事1.
AFACT旅行関連日本部会の活動 ……………………………………………………… 1
………………………………………………………… 7
記事2.◇連載◇ 貿易契約の諸問題
(5)
早稲田大学名誉教授 朝岡 良平
記事3.国連CEFACTからのお知らせ ………………………………………………………… 18
=JASTPRO広報誌電子版のご案内=
裏表紙にJASTPRO広報誌電子版のご案内を掲載しておりますので、ご参照下さい。
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国連 CEFACT日本委員会(略称:JEC)は、貿易の円滑化と電子ビジネスのための国連センター
(以
下、
「国連 CEFACT」という。
)の活動を支援するため、1990 年 7月に設立され、現在同委員会には作
業部会として、
「国連 CEFACT 標準促進委員会」、
「AFACT 旅行関連日本部会」及び「サプライ
チェーン情報基盤研究会」
(略称:SIPS)が設置され、それぞれ活動しています。
この内、SIPSについては前号(JASTPRO407 号)にて紹介しましたが、今回は「AFACT 旅行関
連日本部会」について、部会長の鈴木耀夫氏にその設置趣旨及び活動概要を以下により説明して頂き
ます。
AFACT旅行関連日本部会の活動
(AFACT:Asia Pacific Council for Trade Facilitation and Electronic Business)
(貿易円滑化と電子ビジネスのためのアジア太平洋協議会)
AFACT 旅行関連日本部会 部会長 鈴木 耀夫
AFACT 旅行関連日本部会(以下本部会)は、国連 CEFACT日本委員会(JEC)の中に作業部会
として設置することが、2011 年 6月のJEC 総会において承認され、活動が開始されたものです。
まず、本部会の設置の発端は、2010 年 11月に横浜において開催されたAFACT 総会で、図 1に示
すような、AFACT 旅行関連作業部会(Travel Tourism and Leisure Working Group 以下 TT&L
WG)が設置された事に始まります。これによりAFACTメンバー各国の旅行関連業界が持つ電子商取
引に関する共通のテーマを検討整理する場ができました。近年、アジア太平洋地域は、旅行客が急速
に伸びてきており、各国とも自国に旅行客を呼び込むインバウンド旅行の増進に熱心に取り組む姿勢が共
通してある一方で、コンピュータの利用そのものを含めての標準化した取り扱いは少なく、更には商習慣
も様々なものがあり情報連携には多くの課題があります。AFACTの場を利用して本作業部会を開催す
ることには、正に時機を得たものとして参加各国の賛同を受け、同総会に合わせて開催された第 1 回
TT&L WGにおいて今後の活動の基本事項が決まりました。翌 2011 年 5月の台湾高雄において第 2
回 TT&L WG が開催され、それぞれの参加国においても個別に検討会を設置するなどTT&L WGの
開催を有意義なものとすることが話し合われました。この結果、我が国としての本部会の設立につながり
ました。
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図 1. AFACTとTT&L WG
1. 主たる活動目的
本部会の活動目的は、基本的にはAFACT TT&L WGに備えた検討を国内で推進することです
が、以下のような目的をもっています。
(1)我が国の旅行関連業界の関係者が集まり、主としてインバウンド
(海外から日本国内へ)旅行の促
進を進める上での問題点を検討する中で、我が国が持つ課題を明らかにし、解決策を検討して
いくこととします。このことは同時にアウトバウンド
(国内から海外へ)旅行の発展・改善にも役立つ
と考えられます。
(2)TT&L WGでは3 年計画で、今後必要性が大きくなる地域観光情報と地域観光商品の電子商
取引に関するテーマを設定し検討することとなっています。本部会でもこの基本的なテーマの下に
検討を進めることとします。
(3)更に国際標準を必要とする事項が生じた場合には、国連 CEFACTフォーラムの場を活用して提
案を行うこととしますが、本部会での検討の成果はTT&L WGの場を経て国際標準の策定に生
かされます。
2. TT&L WG の具体的な活動と本部会の活動
TT&L WGでは、地域観光情報の国際連携の方策を検討する中で、以下のような具体的な内容
を推進することになりました。このことは本部会においても重要な検討事項になり、既に様々な検討が
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進められています。
(1)SLHプロジェクトとその実証実験の推進
2011 年 10月末∼ 11月初めに開催された台北での第 3 回 TT&L WGで、地域観光情報のプロ
ジェクトの進め方が議論されました。この時に、国連 CEFACT 方式による標準化の開発とその実
用化を推進するために適用する方法論が、タイから提案されました。この検討を進める中で、国連
CEFACTフォーラムで開発が進められているSLH(Small scaled Lodging House)Information
プロジェクト
(注 1)を具体的なテーマとして取り上げ、この方法論を使用して残余の開発を進め、
更に開発後の実証実験をAFACTメンバー国で行い、将来の実使用につなげる案が出されまし
た。この会議ではその方向性について大筋の賛同を得、更に各国での検討を踏まえて第 4 回の
TT&L WGにて本件の扱いを決定することになりました。第 4 回 TT&L WG が、本年 5月にイラン
のキッシュ島で開催され、参加各国の賛同を得た上で、図 2に示すような案をもとに推進することに
なり、参加各国での検討と共に我が国の本部会での対応についての検討が行われています。
図 2. SLH 実証実験プロジェクト推進案
(2)
地域観光情報の国際標準化案の検討
上 記のSLHプロジェクトに加えて、 広く地 域の持つ観 光 情 報(DTI: Destination Travel
Information)を国際的に流通させるとする案は、以前から韓国で検討されていました。これらの韓
国での検討内容を基に各国での検討と更にTT&L WGでの検討を加えることで、必要とする事項
を国連 CEFACTで標準化することを意図してTT&L WGでは初回から韓国での検討内容が公
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開され議論が進行しています。国内でも着地型観光商品(注 2)の開発に伴う地域観光情報の提
供には大きな関心が出されています。本部会としても重要な検討事項の一つとして作業を開始して
おります。図 3に本部会及び TT&L WGのこれまでの活動成果の一つである地域観光情報の提
供の現状と改善案を示しています。これは地域観光情報と商品情報は、我が国で発信する時には
日本語 +マルチメディア情報で、国際的に発信する時には、それを英語(国連 CEFACT 標準の
様式で)+マルチメディア情報で、受信した国では自国語に変換をして自国語 +マルチメディア情
報で自国内に発信をすることを可能としたものです。なお、これらの検討成果を生かして標準化を
実現する場として、近い将来国連 CEFACTフォーラムにDTI 関連プロジェクトが設置される予定
です。
図 3. 地域観光情報提供の現状と改善
3. 本部会の組織とその活動
本部会は上記に記したように国連 CEFACT日本委員会(JEC)の中の活動として位置づけられ、
この運営をNPO 法人旅行電子商取引促進機構(JTREC)が事務局として引き受けて推進されてい
ます。この位置づけは、JASTPRO 広報誌 407 号(2012 年 8月発行)の「サプライチェーン情報基盤
研究会」
(事務局長菅又久直氏)にも記述されている通りです。2011 年度は本部会開催の最初の年
で、準備会の他に計 7 回の部会が開催されました。本部会では上記の課題の検討に加えて、インター
ネットでの観光情報の活用や発信、SNSに加えてカーナビや出版印刷での新たな情報通信技術の活
用等を有識者の説明を基に意見交換を行うことや、我が国の観光地の事業者や地域の行政組織に
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対しての聞き取りやアンケートによる課題の確認を行う検討も行われました。この聞き取りと検討では実
際に箱根町を対象に、町役場や観光協会、事業者とのヒアリングの実施と団体客誘致に関する事業
化提案を基に検討を行いました。この時に見えた課題を図 4, 図 5に示しています。
図 4. 地域観光推進の課題(その1)
図 5. 地域観光推進の課題(その2)
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また2012 年度は計 8 回の本部会を開催することで、TT&L WG への対応に備えてきています。韓
国からのDTIに関するプレゼンテーションもあり、これを基にした検討も行われ、熱心な検討が予定通
り進められてきています。
4. 今後に向けて
アジア太平洋地域を対象とした情報連携や国際標準化活動は、長い間の私達の希望でもありまし
た。我が国との旅行関連取引が最も多く、またこの地域内の各国相互での旅行取引量も多く、その
取引の改善では各国共大きな関心を寄せてきていました。しかしそのような中で欧米型の標準化活動
に対してはあまりにも障壁が高く、参画をすることができない状況が続いていました。従来からの長い
歴史の上に存在する独特な商慣習に加えて、各国の地域性があり、言語の多様性があり、更に地
域間の経済格差が大きく存在していたために、共通の話し合いの場を設定することも不可能な状況が
長く続いていました。国連 CEFACT 等の旅行関連部門に、アジア地域の関係者が姿を見せるように
なったのは、日本の他にはここ数年来の韓国があるのみでした。ここに記述をしたように、2010 年に入
りAFACTの場でのTT&L WGの設置は、正にこれら地域にとっては記念すべき第一歩が踏み出さ
れたことになります。
私達はこの場を活用して、広くアジア太平洋地域の国々と先ずは意見交換を進めながら、地域の
特状を理解しこれを生かしつつ、しかも情報連携が進展をすることで取引の近代化や公明性を確保
できるように一歩ずつ展開をして行きたいと考えます。SLH 実証実験プロジェクトの推進はこの目的に
沿ったものです。幸いTT&L WGの場においても参加国と参加者が増え、国内での本部会の活動
も、我が国の広い業界や関係者の理解を得て多くの方々の参加を得ています。これからも私達に必
要な活動資金を確保する努力を継続しつつ、本部会での検討と改善の流れをしっかりと定着させ、
その成果をTT&L WGの中で生かすことで、AFACT 関係国の旅行関連業界と消費者が受益でき
るように努力を続けて行きたいと考えます。
(注 1)SLHは、日本では日本型宿泊施設である旅館を主とした対象に、また世界各国に存在する歴史
的、或いは地域性のある宿泊施設を対象にした言葉として国連 CEFACTフォーラムで使用され
ますが、このSLHを対象として一般情報、商品情報及び予約情報を標準化するプロジェクトを指
します。
(注 2)着地型観光商品は、観光客を送り出す側が提供する従来からの商品でなく、受け入れ側が提
供する観光商品で、観光客に対して地元ならではのきめ細かい商品作りと提供に特徴があります。
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記事2. 貿易契約の諸問題
(5)
早稲田大学名誉教授 朝岡 良平
5. 見本売買に関する諸問題
5.1 貿易取引における見本売買
5.1.1 見本はそれ自体を語る
本稿では、見本売買に関する問題を取り上げたいと思います。しばしば引用される判例1にお
いて、Macnaghton 判事は、次のように述べています。
「見本は、契約の目的物について言語
では表現しえない点を、当事者の眼に訴えて説明する効能がある。換言すれば、見本はそれ自
体を語る(the sample speaks for itself)
ものである。しかしながら、如何に見本といえども、買
主が、その属する商人間の通常の知識により、合理的な注意をもってそれを検査して得られる説
明以上のものを与えるものではない。
」2
5.1.2 現品見本の提供が原則
上記のような見本の本質から、貿易取引で使用される見本は、相手方との間で締結される売
買契約の目的物それ自体の中から選定することを原則とします。通常は、見本による貿易契約は、
見本によって目的物(品質)を表示し、それにもとづいて価格を決定した上で、その見本と同一
品質の物品全体(the bulk)を引渡すことを条件として締結されるので、輸入地に到着した物品
全体の品質が見本と相違するときは、当然、クレームを生ずることになるのは明らかです。した
がって、売買の目的物である物品の中から選定した見本を買主に提供することを原則とします。
このような見本を現品見本(actual sample)
といいます。
5.1.3 輸出商談に用いる見本
しかし、貿易取引は一般に不特定物の売買契約ですから、多くの場合、輸出商は商品を手
元に保持することをしません。そして、海外の取引先と商談を進める際に、国内の供給者から
交付された見本および一定期間借受けた価格を採算の基礎として相手方にオファーを行い、契
約が成立したら、その見本と同一品質の物品を国内供給者から仕入れ、これを船積みするの
を常例とします。このような場合に、国内供給者から交付された見本は、必ずしも現品見本で
あるとは限らないので、同じ種類の物品の中から選出されることがあります。この場合には、最
初に提供した見本と船積のために仕入れた物品が同じ品質であるか否かを確認する必要があり
ます。
1 Drummond & Sons v. Van Ingen & Co. (1887) L.R. 12 App. Cas. 284, H.L.
2 Ibid., at p.297.
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5.1.4 買方見本、類品見本、船積見本
売主の提供した見本に対して、買主の方からカウンター・オファーとして、別の見本が提供さ
れることがあります。これを買方見本(buyer’
s sample)
といいます。この場合には、その見本と
同じような品質の物品を製造するか、あるいは他から類品を仕入れて、これを船積することになる
ので、このカウンター・オファーを直ぐに承諾しないで、買方見本と同種・同類の物品の中から選
出した見本(類品見本)を買主に送付し(売主からのカウンター・オファーになります)
、買主がこ
の見本を検査し、承諾の返事を得てから(契約成立)
、物品の船積を行うことが大切です。また、
船積した物品の中から中等平均の見本を選出して、その一部を船積見本として、買主に船積
通知と一緒に送付するとともに、一部は売主が手元に保管しておく必要があります。
5.2 1979 年 SGA 第 15 条
5.2.1 品質に関するSGA の規定
1979 年 SGAは75 箇条から構成されていますが、その中で品質(quality)
という言葉が出てく
るのは第 14 条、第 15 条および第 15A 条の3箇条だけです。わが国の貿易実務関係の文献で
は、貿易契約における物品の特定を、記述(または記載)
と見本による方法に大別し、さらに前
者について、銘柄、商標、仕様書などに細別しています。そして、その法的根拠として、例えば、
イギリスの売買法では、第 13 条(記述による売買)
と第 15 条(見本による売買)で品質に関する
規定を設けていると説明しています。しかし、本稿ですでに述べたように、第 13 条は、売買契
約の目的物である物品の特定方法が記述による場合について規定しています。物品の記述に
は、その物品の種類・包装の形態・数量・引渡方法などが含まれますが、品質に関する要素
は除かれます。第 13 条第 2 項では、
「記述に加えて見本による売買の場合には、物品全体が見
本に合致するだけでなく、記述にも合致しなければ十分でない」と規定していますが、この場合
の見本は品質を表示するのではなく、種類を表示する意味で使用されます。SGA 第 14 条につ
いては本誌第 404 号と第 405 号で説明しましたので、本稿では第 15 条を中心に見本による売買
について説明したいと思います。
5.2.2 見本売買に関する規定
現行の1979 年 SGA 第 15 条は見本による売買について、次のように規定しています。これら
の規定は、実質的にコモン・ローの規則を明確に成文化したものです 3。同条は、第 13 条と同
様に、しかし、第 14 条と異なり、営業している売主に制限していません。
「第 15 条 見本による売買
第 1 項 売買契約の中に、見本による売買である旨の明示または黙示の条項がある場合、
3 Hibbert v. Shee (1807) 1 Camp. 113; Wells v. Hopkins (1838) 5 M. & W. 7; Smith v. Hughee (1871) L.R. 6 Q.B.
597. なお、1980 年国際物品売買契約に関する国連条約(ウィーン条約)第 35 条第 2 項 (c) 号を参照されたい。
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その契約は見本売買に関する契約である。
第 2 項 見本売買に関する契約の場合には、下記の黙示条項が存在する。
(a)物品全体(the bulk)
が、品質について見本に合致する旨
(b)
(削除)
(c)見本の合理的な検査によっても発見することのできないような、物品の品質を不満足なも
の
(unsatisfactory)
にする瑕疵がない旨。
第 3 項 イングランド、ウェールズおよび北アイルランドに関しては、上記第 2 項に黙示されてい
る「条項」は「条件」である。
第 4 項 下記の付表1の第 7 項は、1973 年 5月18日以前に成立した契約に関連して適用さ
れる。
」
5.2.3 第 15 条は不要か
現行の第 15 条は実質的に第 2 項の規定が中心になりますが、見本による売買の問題は第 13
条および第 14 条により適切にカバーされているので、第 15 条は不要であるという意見がありまし
たが、法律委員会は、不要であるか否かは別として、第 15 条を削除した場合に、予測しえな
い結果や望ましくない出来事が生ずるおそれがあり得るので、このような不測の事態が全く生じな
いことが明確になるまでは、削除しないよう提言しています 4。
5.2.4 1979 年 SGA 第 15 条の改正
1893 年 SGA 第 15 条は、上記の1979 年 SGAの第 1 項と第 2 項から成っていました。1893 年
SGAでは、第 2 項で「黙示条件が存在する」となっていましたが、1979 年 SGAでは、
「黙示条
項が存在する」
と変更され、第 3 項が追加されました。また、
1893 年 SGAでは、第 2 項(b)号で、
「買主は、物品全体を見本と比較検査する合理的な機会を有する旨の黙示条件が存在する」と
定めていましたが、第 34 条に買主の物品検査権が規定されているので、削除されました。さらに、
1979 年 SGA 第 15 条は、the Sale and Supply of Goods Act 1994(以下、1994 年 SSGAと
略称)により、次の点が修正されました。
(1)SSGAの第 7 条および付表 2 第 5 項(6)
(a)により、
第 15 条第 2 項の「条件」が「条項」に変更されました。
(2)SSGAの第 7 条および付表 3により、
第 15 条第 2 項(b)号の規定が削除されました。その趣旨はSGA 第 34 条に再現されています。
(3)SSGA 第 1 項
この変更は法律委員会の報告書に述べられている提言 5 によるということです。
(2)により、SGA 第 15 条第 2 項(c)号の“rendering them unmerchantable”
という文言に代
えて、
“making their quality unsatisfactory”
という文言に変更されました。
(4)
第 15 条第 3 項は、
「第 2 項(c)号に定める
“unmerchantable”
という文言は、第 14 条第 6 項に従って解釈されるも
のとする」となっていましたが、付表 2のpara.5(6)
(b)により、上記の第 3 項に変更されました。
4 The Law Commission and the Scottish Law Commission, The Sale and Supply of Goods, (Law Com. No.160)(Scot.
Law Com. No.104), 1987, paras. 6.24 et seq.
5 Ibid. , para. 6.28.
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5.3 見本売買の定義
5.3.1 見本売買である旨の契約条項
SGA 第 15 条第 1 項に、
「売買契約の中に、見本による売買である旨の明示または黙示の条
項がある場合、その契約は見本売買に関する契約である」
と規定しています。古い判例によると、
契約が書面で作成され、その中に見本に関する記述が全くない場合、その売買が見本によるも
のであるという意思を外部証拠(extrinsic evidence)によって証明することは認められませんでし
た 6。第 1 項の規定はこのような判例を顧慮して作成されたのかもしれません。けれども、これらの
判例においては、見本を参照して(by reference to a sample)物品を特定するために、このよ
うな証拠を導入した可能性があるということです 7。あるいは、物品が見本に等しいことを保証す
る付随的契約(collateral contract)を証明するために 8、もしくは、この売買が見本によるもので
あるという取引慣習を証明するために 9 導入されれたとする判例もあります。しかし、これは口頭
証拠の規則を適用するもので、現在は以前に比べてほとんど重要でないということです 10。
5.3.2 見本売買である旨の意思表示は不要
1979 年 SGA 第 15 条第 1 項に定める見本売買の定義は、
「全く役に立たない。それは、あた
かも、見本売買とは、その売買において、売主が明示的または黙示的に、
『(提供する)物品が
契約時に示された小包に関する記述に合致する』ことを約束するのに等しい」という厳しい意見
があります 11。1893 年 SGA 第 15 条に対応するアメリカの1906 年統一売買法(USA)第 16 条の
規定では、第 1 項に定める定義は狭すぎるという理由で削除したということです 12。
「実際に、見
本は取引の目的物を説明する簡単な方法であり、記述による売買または売買契約に適用される
規則がこの売買契約にも適用される」とWillistonは述べています 13。多くの場合に、見本に関
する契約条項は、
“as per sample”14というように明示的ですが、他方、見本を相手方に提供し
ても、必ずしもその売買が見本による売買でないこともあります 15。また、その種の売買が取引慣
6 Tye v. Fynmore (1813) 3 Camp. 462; Meyer v. Everth (1814) 4 Camp. 22; Gardiner v. Gray (1815) 4 Camp. 144.
7 R. W. Cameron & Co. v. L. Slutzkin Pty Ltd. (1923) 32 C.L.R. 81.
8 L. G. Thorne & Co. Pty Ltd. v. Thomas Borthwick & Son Ltd. [1956] S.R. (N.S.W.) 81.
9 Syers v. Jonas (1848) 2 Exch. 111.
10 M. Bridge, Benjamin’
s Sale of Goods , 10th ed., 2010, para. 11-076.
11 M. Bridge, op. cit ., para. 11-074. 次の判 例 から引 用。Parkinson v. Lee (1802) 2 East. 314. 最 近の判 例では、
Trelise Cooper Ltd. v. Cooper Watson Textile Ltd . [2008] N.Z.H.C. 961.
12 S. Williston, The Law Governing Sales of Goods , rev. ed., 1948, para. 249.
13 Ibid ., para. 250.
14 Re Walkers, Winser and Hamm and Shaw Son & Co. [1904] 2 K.B. 152;Ceramic Brickworks (S.) Pte Ltd. v.
Asia-Teck Construction & Engineering Pte Ltd. [1996] 1 Shingapore L.R. 200.
15 Gardiner v. Gray (1815) 4 Camp. 144; Ginner v. King (1890) 7 T.L.R. 140; Re Faulkners Ltd. (1917) 38 D.L.R. 84;
W. & J. Sharp v. Thompson (1915) 20 C.L.R. 127; East Asiatic Co. Inc. v. Canada Rice Mills Ltd. [1939] 3 D.L.R.
695; Engineering and Plastics Ltd. v. Mercer & Sons Ltd. [1985] 2 N.Z.L.R. 72,
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習により見本売買であることが証拠により認められた例もあります 16。一般原則として、明白なこと
は、
「見本によって売買するという実際の意思表示は不要である」ことです 17。
5.4 物品全体が品質について見本に合致すること
5.4.1 物品全体と見本の関係
物品が不特定物 18 であっても、あるいは特定物 19 であっても、見本売買があり得ることは明ら
かです。これらの判例では、
「物品全体(bulk)
とは、契約の目的物である物品(goods)から見
本を差引いたもの」
を意味すると説明されています。
Willistonは「
“the bulk of the goods”
と
“the
goods”は同じ意味であり、物品全体から見本を除いたものをいう」と述べています 20。しかし、
契約成立後に物品が製造される場合でも、見本による売買があり得ます 21。このような場合には、
bulkはgoodsそのものを意味しています。また、見本と同じ商品を1個または数個だけ売買する
契約が見本による売買であると推定されることもありますが、このような場合にbulkという言葉を用
いるのは適切ではありません。
5.4.2 第 61 条に定めるbulk の定義
1979 年 SGA 第 61 条第 1 項に
“bulk”の定義が規定されています。この定義は、the Sale of
Goods(Amendment)Act 1995の第 2 条により挿入もので、
「特定された大量貨物(bulk)の
一部分である特定された数量の不特定物の売買契約で、その代金を支払った買主がその大量
貨物について未分割の持分を取得することができる」旨を規定しています 22。この“bulk”の定義
は、海上運送中の特定された大量貨物(バラ積み貨物)の売買に関するもので、見本売買とは
関係ありません。強いて見本売買と関係づけるならば、
「引渡された物品全体のどの部分も相互
に交換できること」という要素(同定義の(b)項)は無関係ではありませんが、見本に合致する物
品全体が「特定の場所に蔵置されていなければならない」という要素(同定義の(a)項)は全く
不適切です。
5.4.3 品質について見本に合致すること
第 15 条第 2 項(a)号は、
「物品全体が品質について見本に合致しなければならない」という黙
示条項が存在すると定めています。これに対して、第 13 条第 2 項は、
「記述に加えて見本による
16 Syers v. Jones (1848) 2 Exch. 111.
17 M. Bridge, op. cit ., para. 11-074.
18 Re Walkers, Winser and Hamm and Shaw Son & Co . [1904] 2 K.B. 152 (barley).
19 Azemar v. Casella (1867) L.R. 2 C.P. 677 (cotton bales).
20 S. Williston, op. cit., para. 226.
21 Heilbutt v. Hickson (1872) L.R. 7 C.P. 438 (shoes) ; Drummond & Sons v. Van Ingen & Co. (1887) L.R. 12 App.
Cas. 284 (cloth) ; Jones v. Padgett (1890) 24 Q.B.D. 650 (cloth).
22 拙稿「9.7 1995 年物品売買 ( 改正 ) 法」
『 JASTPRO』399 号 (2011-12), 14 頁を参照。
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売買の場合には、物品全体が見本に合致するだけでなく、記述にも合致しなければ十分でない」
と定めています。また、第 15 条第 2 項(c)号では、
「見本の合理的な検査によっても発見するこ
とのできないような、物品の品質を不満足なものにする瑕疵がない」旨の黙示条項が存在すると
規定しています。第 13 条の場合には、物品が見本に合致しないが、僅かな費用と手間で修理
できる場合には、この規定は守られません 23。また、第 15 条の場合でも、瑕疵がいわゆる「法は
些事に関せず」
(de minimis)
という原則が適用される場合には、正当に拒絶されることはありま
せん 24。しかし、SGA 第 15A 条は適用されます。
5.4.4 見本への合致の範囲
物品全体が見本に合致しなければならないと一口に述べても、
「見本がそれ自体を語る範囲
は、契約および見本に関する当事者の意図により異なるものである」25 ので、どの程度の合致を
要するかという点に注意しなければなりません。したがって、単に見本と物品全体を外見上比較
するだけという場合には、このように見本と物品とを見比べることにより特に異常がなければ、たと
え他に重大な相違点があったとしても、第 15 条第 2 項(b)号に定める黙示条項の違反にはなり
ません 26。しかし、この場合でも、第 15 条第 2 項(c)号または第 13 条の違反ということがあり得
ます。他の状況では、感触による検査、化学分析検査、顕微鏡検査などの方法で検査が行わ
れます。しかし、Devlin 判事は、
「買主は、その取引において、何らかの固有の瑕疵または隠
れた瑕疵を発見するために、専門機関に分析を依頼することは通常行わず、一般的には、契
約の見本条項にしたがって、物品全体が品質について見本に合致するか否かの検査を行う」と
述べています 27。また、必要な場合には、物品全体が見本に合致するか否かに関して、取引
慣習にしたがって、証明書を提出することが認められています。例えば、Re Walkers, Winser
and Hamm and Shaw Son & Co. 事件 28 において、大量の大麦の売買契約の引渡条件に
“about as per sample”
と記載されていました。引渡された大麦の品質に見本との相違があり、
買主はこれを理由に拒絶しましたが、変質は僅かなものであり、大麦の拒絶は認められない旨の
証明書が承認されました。
23 E and S Rubin Ltd. v. Faire Bros. & Co. Ltd. [1949] 1 K.B. 254 (rubber material) ; Aitken, Campbell & Co. Ltd. v.
Boullen and Gatenby, 1908 S.C. 490 (twill).
24 Joe Lowe Food Products Co. Ltd. v. J. A. and P. Holland Ltd, [1954] Lloyd’
s Rep. 71.
25 Steels & Busks Ltd. v. Bleecker Bik & Co. Ltd. [1956] 1 Lloyd’
s Rep. 228, at p.239 (rubber).
26 F. E Hookway & Co. Ltd. v. Alfred Isaacs & Sons [1956] 1 Lloyd’
s Rep. 491 (shellac) ; Steels & Busks Ltd. v.
Bleecker Bik & Co. Ltd., supra. この2つの判例は見本売買に関するものではありませんが、
“quality equal to London
standard”
および
“quality as previously delivered”
という契約条項によるものです。
27 F. E. Hookway & Co. Ltd. v. Alfred Isaacs & Sons., supra, at p.512, per Devlin J.
28 Re Walkers, Winser and Hamm and Shaw Son & Co. [1904] 2 K.B. 152.
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5.5 契約条項としての見本
典型的な見本による売買契約では、売主は、引渡された物品全体が見本に合致する旨を明示
的に合意または約束します。このような物品を引渡す売主の義務、または不履行の場合における
責任は全く疑問がありません。Parkinson v. Lee 事件 29 において、Lawrence 判事は、このような
取引について、
「この契約は、物品全体が見本に合致する以外のなにものでもない」と述べていま
す。また、Parker v. Palmer 事件 30 において、Abbott C.J.は次のように述べています。
「この契
約に述べられている
“the sample”
という言葉は、この明示条項に関連して売買された物品が、売
買契約の成立時に示された小包(parcel)に関する記述に合致する旨を保証したことと同じ効力を
有するものとみなされている。
」提供された物品全体が見本に合致しない場合、買主はその受理を
拒絶することができます。Hibbert v. Shee 事件 31 において、Lord Ellenboroughは、見本売買
について、
「(見本によって)購入する契約をしたものと全く異なる商品が引渡された場合、私は、相
違することに対する補償を受理する義務が全くないと考える。それは契約の履行ではないからだ」と
述べています。このような判例にもとづいて、1893 年 SGAは、売主の義務を黙示条件と規定する
ことにより、物品が特定物であっても、見本以外の方法によって特定される場合でも例外なく、すべ
ての場合に、買主は物品の受理を拒絶することができると定めています。見本に合致しない物品を
買主が受理し、かつこれを受領した場合、買主は、売主の義務が完全に満足されるものであると
して、この物品の受理に同意したものとみなされます。しかし、売主の義務に満足しないが、この
物品を受理する場合、買主は、救済方法として、契約した代金から、契約した物品の価額と受取っ
た物品の価額との差額を差引くことができます。売主の物品引渡の義務は、単に見本に合致する
ことだけでなく、物品の記述にも合致しなければなりません 32。
5.6 挙証責任
売主が売買契約にしたがって見本と同じ物品を引渡したが、買主がその物品を拒絶した場合、
売主は、買主の物品拒絶が違反であることを証明し、かつ、物品が品質について見本に合致す
ることを証明しなければ、契約にもとづく請求を行うことができません。したがって、これらの事実に
ついての挙証責任は売主にあります。他方、売主は見本と同じ物品を引渡す約束を実際にしてお
らず、単に物品が見本と「同じであった」と述べただけで、買主は見本によって契約を締結したの
ではない場合には、見本に関する売主の義務は付随的なもので、他の付随的義務の場合と同様
に、不履行に対する免責を主張する際に、見本に関する保証の違反がないことについて証明する
責任があります。買主が、検査のためでなく、物品の引渡を受理した場合には、それにもとづいて
29 Parkinson v. Lee (1802) 2 East. 314.
30 Parker v. Palmer (1821) 4 B. & A. 387.
31 Hibbert v. Shee (1807) 1 Camp. 113.
32 1979 年 SGA 第 13 条第 2 項。
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買主は代金を支払わなければなりません。買主が、請求額減殺(recoupment)その他の理由によ
り、代金の全額または一部の支払を拒絶し得る権利を主張する場合に、自分の権利が「物品が見
本に合致しない」という事実にもとづくものであるときは、その物品が見本に合致しないことを証明す
る責任があります 33。
5.7 買主の物品検査権
1979 年 SGA 第 34 条は、買主の物品検査権について、
「物品が買主に引渡され、まだそれを検
査していない場合には、その物品が契約に合致するか否かを確認する目的をもって、その物品を
検査するための合理的な機会を持つまでは、買主は物品を受領したものとみなされない」と規定し
ています(第 1 項)
。また、
「別段の合意がないかぎり、売主は買主に物品の引渡を提供するとき、
買主の要求によりその物品が契約に合致するか否かを確認する目的を持って、その物品を検査す
るための合理的な機会を買主に与えなければならない」と規定しています(第 2 項)。1979 年 SGA
第 15 条第 2 項(b)号に、
「買主は、物品全体を見本と比較検査する合理的な機会を有する旨の
黙示条件が存在する」と規定していましたが、the Sale and Supply of Goods Act 1994により削
除されました。また、1994 年の制定法の第 2 条第 2 項(a)号により、上記の第 34 条第 1 項が削除
されました。したがって、現行の第 34 条は、上記の第 2 項になりますが、
「その物品が契約に合致
するか否かを確認する目的をもって」の後に「また見本による売買契約の場合には、物品全体を見
本と照合する目的をもって」という文言が挿入されました。見本売買の場合、引渡の場所をもって検
査の場所と一応推定することは裁判所が判示しています 34。見本売買における買主の物品検査権
は、買主の要請があった場合にのみ生じるものであり、明示または黙示の合意により排除すること
ができます。買主の物品検査権の主要な意義は、原則として、買主が物品を受領する義務の停
止条件を課することです。そして、所有権がすでに移転している場合には、買主の支払義務の停
止条件を課することになります。売主が買主に対して物品を検査する機会を拒絶した場合、買主
が物品の引渡受理を拒絶しても、買主は原則として違反になりません 35。反対に、買主が物品の
検査を拒んだ場合には、売主が引渡を行わなくても、売主は違反を問われません 36。
5.8 物品が見本に合致しない場合の救済
5.8.1 見本売買である場合の問題
上述のように、売買契約の交渉の過程において見本を見せたことは、必ずしもこれが見本によ
る売買を意味するものではありません。見本によって同意された物品について契約が成立した場
33 S. Williston, op. cit ., para. 255.
34 Perkins v. Bell [1893] 1 Q.B. 198, C.A.
35 Lorymer v. Smith (1822) 1 B. & C. 1; Pettitt v. Mitchell (1842) 4 Man. & G. 819; Isherwood v. Whitmore (1843)
11 M. & W. 347.
36 Walter Potts & Co. Ltd. v. Brown Macfarlane & Co. Ltd . (1934) 30 Com.Cas. 64.
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合にのみ、それが見本による売買になります 37。また、売買の目的物である物品の性質を示すた
めに見本を使用することがあります。
「見本を見せた売主が、物品全体が見本に合致することを
保証するのか、あるいは、見本は適当に選出されたもので、物品全体について買主が責任を負
わなければならないかは、それぞれの場合における事実問題である」ということです 38。 5.8.2 消費者売買の場合
見本の機能を決定する際に、次の点に注意することが大切です。見本売買の場合には、
「満
足される品質」に関する規則は、見本以外の売買における規則と異なるということです。見本を
検査したと否とにかかわりなく、合理的な検査によって発見することができないような瑕疵が物品
に存在しないというのが見本売買における条件です 39。この規則を適用するのは不適切であると
主張する売主が、検査が予定されていないという理由で、見本売買とみなすことに反対すること
が考えられます。買主が消費者である場合の見本売買では、これを除外することはできません 40。
しかし、この理由で、消費者に対する売買が見本売買でないとみなされる場合があります。例え
ば、消費者がワインを試飲した後、これと同じワインを購入した場合、ワイン業者が同じ方法でワ
インを購入したときは見本売買になりますが、消費者が購入したときには見本売買になりません。
消費者である買主が店頭で見本(specimen)を調べて、包装された同種類の物品を店員が倉
庫から出してこれを買主に提供する場合、このような店頭における検査が瑕疵の有無を調べる目
的で行われたか否かは極めて疑わしいので、このような売買はおそらく見本売買とみなされないと
思われます 41。売買が見本売買でないことが明らかなのは、売主は見本による売買をしたいので、
買主に見本の検査を要求した場合、または買主が見本による購入を拒んだにもかかわらず、物
品が見本に合致する旨の明示の保証を要求した場合です 42。
5.8.3 非消費者の条件違反に対する救済
(SGA 第 15A 条)
The Sale and Supply of Goods Act 1994(1995 年 1月3日発効)の第 4 条(2)項により、次
の第 15A 条が挿入されました。
「第 15A 条 非消費者の場合における条件違反に対する修正
第 1 項 売買契約において、
(a)
買主が、本項の規定とは別に、第 13 条、第 14 条または第 15 条に黙示されている条件
を売主が違反したという理由で、物品を拒絶する権利を有するが、
37 Gardiner v. Gray (1815) 4 Camp. 144; Ginner v. King (1890) 7 T.L.R. 140; Re Faulkners Ltd . (1917) 38 D.L.R. 84;
W. & J. Sharp v. Thompson (1915) 20 C.L.R. 127; East Asiatic Co. Inc. v. Canada Rice Mills Ltd . [1939] 3 DL.R.
695; Engineering Plastic Ltd. v. J. Mercer & Sons Ltd . [1985] 2 N.Z.L.R. 72.
38 S. Williston, op. cit ., para. 255.
39 SGA 第 15 条第 2 項 (c) 号。
40 The Unfair Contract Terms Act 1977, s.6 (2).
41 M. Bridge, op. cit ., para. 11-082.
42 Ibid., para. 11-075.
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(b)
その違反が僅かなので、買主が物品を拒絶することが不合理である場合には、
買主が消費者として取引するのではないとき、その違反を条件の違反(breach of condition)
でなく、保証の違反(breach of warranty)
として扱うことができる。
第 2 項 本条は、別段の意思表示が契約に明示または黙示されていない限り、適用される。
第 3 項 違反が上記第 1 項(b)号の範囲内にあることを証明するのは売主である。」
非消費者による見本売買において、見本との相違が僅か(slight)
または技術的(technical)
である場合に、条件違反による物品拒絶権を制限することを目的としています 42。第 15A 条の草
案では、物品の拒絶権と契約の解除権を一緒に規定していましたが、契約の解除権は条件の
違反によってカバーすることになりました。第 15A 条は、1979 年 SGA 第 13 条、第 14 条および第
15 条に黙示されている記述、品質、目的への適合性および見本への合致に関する黙示条項の
違反に適用されます。しかし、本条は、時期(time)に関する明示条項には適用されません。
異なる意思表示が明示または黙示されている場合には、本条は適用されません。また、SGA 第
12 条に黙示されている権原に関する黙示条項、買主の義務 43、あるいは買主が消費者として
取引する場合などにも適用されません。
5.8.4 スコットランドおける契約違反に対する救済(SGA 第 15B 条)
The Sale and Supply of Goods Actの第 5 条(1)項により、次の第 15B 条が挿入されました。
「第 15B 条 スコットランドにおける契約違反の救済
第 1 項 売買契約において、
(明示または黙示を問わず)いかなる契約条項といえども、売主
がこれに違反した場合には、買主は、
(a)損害賠償を請求し、かつ
(b)
その違反が重要なものであるときは、契約にもとづいて引渡された物品をすべて拒絶し、
契約が履行拒絶されたものとして扱うことができる。
第 2 項 売買契約が消費者契約である場合には、上記第 1 項(b)号の目的のために、売主
による契約条項(明示または黙示を問わず)の違反は、
(a)物品の品質または特定の目的への適合性に関するもので、
(b)物品が記述により
(by description)売買された、または売買されることになっている場合
は、その物品が記述に合致することになっているとき、
(c)物品が見本を参照して
(by reference to a sample)
売買された、または売買されること
になっている場合は、その物品全体
(the bulk)が品質について見本に合致することに
43 The Law Commission and the Scottish Law Commission, The Sale and Supply of Goods , (Law Com. No.160)
(Scot. Law Com. No. 104), 1987, paras. 4.1 et seq .
44 Bunge Corp. v. Tradax Export S.A. [1981] 1 W.L.R. 711.
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なっているとき、
それは重要な違反(material breach)
とみなされる。
第 3 項 本条はスコットランドにのみ適用される。」
5.9 他の制定法における見本売買に関する規定
5.9.1 ULIS 第 33 条、UCC 2-313 条、UCC 2-317 条
(1)ULIS 第 33 条第 1 項 売主は、以下に掲げる物品を交付した場合には、引渡の義務を履
行したものとみなされない。
(c)売主が買主に送付した見本または雛型の品質に適合しない物品。
(2)UCC 2-313 条第 1 項
(c)見 本または雛 型で取引の基 礎をなすものは、その物 品の全 体(the whole of the
goods)
がその見本または雛型に合致する旨の明示の保証を生ぜしめる。
(3)UCC 2-317 条
(a)正確なまたは専門技術的な明細書と見本または一般的な記述文言とが矛盾するときは、
前者(による保証)
が優先する。
(b)現存する物品全体から選出した見本と一般的な記述文言とが矛盾するときは、前者
(に
よる保証)
が優先する。
以上の規定については、本誌(第 405 号)
を参照されたい。
5.9.2 1980 年ウィーン条約第 35 条
「第 35 条(契約への適合)
第 2 項 当事者が別段の合意をした場合を除き、物品は、次の要件を充たさない限り、契約
に適合していないものとする。
(a)
同種類の物品が通常使用される目的に適合していること。
(b)契約締結時に、売主に明示的または黙示的に知らされていた特定の目的に適合してい
ること。ただし、状況からみて、買主が売主の技能および判断に依存しなかったか、
依存することが不合理であった場合を除く。
(c)売主が買主に示した見本または雛型の品質を物品が有すること。
(d)
その物品にとって通常の方法により、またはそのような方法がないときは、その物品を保
存し、保護するのに十分な方法により、容器に収められまたは包装されていること。
」
(続)
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記事3. 国連CEFACTからのお知らせ
3.1 2012 年 9月7日
国連 CEFACTビューロは、シングルウィンドウの相互運用性のための諸要件に関する勧告及びガイ
ドラインの作成を目指したプロジェクトの立上げを決定しました。
シングルウィンドウについては、2005 年から2010 年の間に、「シングルウィンドウの設置に関する勧告
とガイドライン」
( 勧告第 33 号)、「シングルウィンドウのデータ整合化に関する勧告とガイドライン」
(勧
告第 34 号)及び「国際貿易におけるシングルウィンドウのための法的枠組み
(勧告第 35 号)
と連続的
に勧告とガイドラインが出されて、多くの国々や国家連合が、シングルウィンドウを採用する事を促して
きました。
一方、域内の連携が確立されている場合を除いて、各国がそれぞれのニーズに即して開発したシ
ングルウィンドウを相互接続する場合に困難に直面するという問題が出てきました。
従って、今回の勧告は、今後シングルウィンドウを採用する国々に、その導入当初から、相互運用
性の確立の為のベストプラクテイスに沿った導入を推奨しようとするものです。
● シングルウィンドウの相互運用性に関する勧告
● シングルウィンドウの相互運用性に関するガイドライン
● シングルウィンドウに係るケースのレポジトリの作成
本プロジェクトの内容やその背景については、以下のウェブページをご参照ください。
http://www1.unece.org/cefact/platform/display/CNP/P1002+-+ODP+1+-+Project+Inception
http://www1.unece.org/cefact/platform/pages/viewpageattachments.action?pageId=48562923
また、このプロジェクトへの参加をご希望の方は、プロジェクト・マネジャー Mr.Remy Marchand 氏
([email protected])
までご連絡ください。
3.2 2012 年 9月5日
UN/EDIFACTデイレクトリ2012 年前期版(D12. A)が機関承認され、公式ウェブの下記ページに
て閲覧可能となりました。
http://www.unece.org/tradewelcome/areas-of-work/un-centre-for-trade-facilitationand-e-business-uncefact/outputs/standards/unedifact/directories/download.html
3.3 2012 年 8月30日
国連 CEFACT の貿易及び運輸円滑化 PDA(企画開発領域)が開発した
“貨物追跡プロジェクト”
に係る仕様の最新版が、期間 60日間のパブリックレビューとして公開されました。
本プロジェクトは、物流活動を扱うビジネスプロセスに係る情報システムの分析や各システムにおける
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様々な物流活動を結び付けるインタフェース
(データモデル)
の標準化を通じて、輸送に重点を置い
た一貫した物流のビジネス標準仕様を作り上げようとするものです。
最終的には、物流のための一貫した標準的なインタフェース・モデルを提供することにあります。以
下に引用の public review 及び comment logを参照いただき、コメントがあれば、プロジェクト
・
リー
ダーの Kerri Ahn 氏([email protected])宛に11月3日までにご連絡ください。
http://www1.unece.org/cefact/platform/pages/viewpageattachments.action?pageId
=46465199
3.4 2012 年 8月30日
国連 CEFACTビューロは、勧告第 14 号(署名以外の方法による貿易書類の認証)
を改訂するプ
ロジェクトの立上げを決定致しました。
上記勧告第 14 号は1979 年に起草、公開されたものですが、今や、全く時代遅れのものになってし
まったことから、国連 CEFACT の作業グループが勧告第 14 号を、今の時代のニーズに耐えうる勧
告として、その内容を書き改める改訂を提案しました。
当該プロジェクトの予定作業内容は、
1. 1979 年以降の法令上の及び技術的な変更を反映させた勧告とすること
2. 各国の事例(法令整備や具体的施策)
を収容したレポジトリ
(データベース)
を作成
3. 手書き署名以外の方法による認証の具体例についてのレポジトリを作成すること
(技術的解決
方法)
国連 CEFACTとしては、数か月以内に勧告の改訂版を作成の後、出来れば 2 つのレポジトリを作
成する予定です。本プロジェクトについては、来る9月17日からの国連 CEFACTフォーラムでも議
論される予定となっています。
プロジェクトの概要及び背景については、以下の URLをご参照ください。
http://www1.unece.org/cefact/platform/display/CNP/Revision+ofRecommendation+
14%2C+Authentication+of+Trade+Documents+by+Means+other+than+Signature
なお、本プロジェクトに参 加をご希 望の方は、プロジェクト・リーダーの Lance Thompson 氏
([email protected])
までご連絡ください。
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̶ 協会ホームページのリンク集のご案内 ̶
http://www.jastpro.org/link/index.html
当協会のホームページのリンク集には、当協会の活動と日本輸出入者コードのユーザの方々の
お役に立つと思われる関係諸機関・団体のホームページへのリンクを下記の分類で掲載しており
ますので、ご活用下さい。
s 当協会に関係する我国の官公庁・公的機関(独立行政法人を含む)
s 輸出入関係手続きに関係する業界団体等
s 輸出入関係手続きに〔国内物流〕関係する情報源と用語集
s 国際空港の公式ページ
s 国際貿易港の公式ページ
s 貿易振興・簡易化や電子商取引の標準化活動を行なっている国内組織・団体
s 貿易振興・簡易化や電子商取引の標準化活動を行なっている海外組織・団体
s 貿易振興・簡易化や電子商取引の標準化に関係する国際機関
sその他の組織・機関
JASTPRO 第38巻 第6号 通巻第408号
本協会の事業は、財団法人JKA、
日本財団、一般財団法人貿易・産
業協力振興財団からの助成金等、
・禁無断転載
平成24年9月26日発行 JASTPRO刊12-06
発 行 所 (財)日本貿易関係手続簡易化協会
東京都中央区八丁堀2丁目29番11号
八重洲第五長岡ビル4階
電 話 03- 3555- 6031
(代)
ファクシミリ 0 3- 3555- 6032
http://www.jastpro.org
関係業界からの寄付金および賛助
会費ならびにコード事業の収入に
よって行われております。
編 集 人
山 本 達 見
本誌は再生紙を使用しております。
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̶ JASTPRO広報誌電子版への切り替えのご案内 ̶
当協会の広報誌は 2007 年 4 月より印刷版と電子版の 2 つのメディアを提供しております。
印刷版と電子版は二者択一ではございませんが、印刷版につきましては賛助会員の方々には、
これまで通りの口数を配布部数の上限とさせて頂きます。
( 電子版には制限はございません。)
電子版への切り替えと、配布部数の追加方法:
毎月20日までに、次の項目を下記のアドレスへ送信してください。
sご所属の組織名称 s 所属されている部署
s申込者氏名
s 連絡先電話番号
s 送達をご希望のメールアドレス
【申込み宛先】
(財)日本貿易関係手続簡易化協会
業務第三部長 石垣 充
E-mail address: [email protected]
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