Comments
Description
Transcript
A-4-3 シミュレーションによる電気自動車用モータの 性能評価に関する
A-4-3 シミュレーションによる電気自動車用モータの 性能評価に関する基礎的研究 我妻 純子 (高木・家名田研究室) 1. はじめに 近年、電気自動車[1]に関する研究は自動車業界だ けでなく、様々な分野で行われており、その中でも、 ドライブシステムを含めたモータに関する研究は 特に注目を集めている。既に数社から電気自動車が 市販され話題を集めているが、従来のガソリン車と エネルギー供給の面で比較した場合、ガソリン車へ の燃料補給は短時間で行えるが、電気自動車では充 電に長時間を要し、性能で劣る面が存在する。しか しながら、大気汚染や騒音問題を引き起こさない電 気自動車は、地球温暖化や化石燃料の枯渇など環境 問題が騒がれている現代社会において、今後ますま す需要は高くなることが予測される。 電気自動車に関する実験は大規模かつ高額な実 験装置が必要になるが、近年のシミュレーション技 術の発達に伴い、シミュレータを利用した研究も行 われつつある。本研究では、MATLAB/Simulink を 使用し、モータのシミュレーションを行い、電気自 動車用モータとしての性能評価を行う。 2. モータの選択 ガソリン自動車においてエンジンが欠かせない ように、電気自動車ではモータ[2]~[6]が重要にな ってくる。モータは大別すると、直流(DC)モータと 交流(AC)モータになるが、それぞれに得失が存在し、 一概に最適なモータは決定できない。ここで、電気 自動車用モータとして要求される事項を考えると、 ①電池の直流を電源とすること、②起動時のトルク が大きいこと、③構造が簡単で機械的耐久性が高い こと、④速度制御が容易であること、⑤危険性がな いこと、⑥小型軽量であることなどが挙げられるが、 本研究では主に速度制御性に着目し、交流モータを 対象に MATLAB/Simulink を用いてシミュレーショ ンによる検討を行った。 3. シミュレーションによる検討 3.1 誘導電動機(インダクションモータ) モータの出力が電源からの誘導作用にだけ依存 しているモータで、構造が簡単で、保守が容易であ り、堅牢であるため広く一般に使用されている。回 転磁界の速度を同期速度といい、一般に 1 分間の回 転数 N s [rpm]で表す場合が多い。 Ns = 120 f p [rpm] ここで、p は極数、f は電源周波数である。回転 子の回転速度を N [rpm]とすると、同期速度よりも 数%遅く回転する。これをすべりといい、誘導電動 機特有の性質である。最初に誘導電動機に関して検 討を行った。 誘導電動機は固定子に単相または 3 相交流電源 を流すことによって、磁界ができるしくみになって いる。3 相誘導電動機の場合は、3 組のコイルが必 要であり、各コイルは空間的に 120 度隔てて巻かれ ている。それらに時間的に 120 度位相差をもつ 3 相 交流を流せば、円形回転磁界を生じる。インバータ を用いる場合には、単相誘導電動機では速度制御が うまくできず使用できない。また、クローズドルー プ制御で回転子の位置情報を知らせる必要がある。 シミュレーションに使用したブロック図を図 1 に示す。周波数特性を図 2 に、速度-トルク特性を 図 3 に示す。 図 3 の電圧はモータの入力電圧であり、 電圧が高いほど、トルクが大きいことが分かる。 3.2 同期電動機(シンクロナスモータ) 同期電動機の場合、固定子の磁界は誘導電動機と 同様、3 相、2 相、またはコンデンサなどを用いて 単相交流によって作られる回転磁界の同期速度で 回転する。一方、回転子の磁界は誘導電動機と異な り固定子からの誘導作用ではなく、固定子として用 いている電磁石や永久磁石によって発生している。 図 1. 誘導電動機(インダクションモータ)のブロック図 回転数 [rpm] 3600 最近の電気自動車の研究では、永久磁石型同期電 動機が数多く使用されている。このモータの始動は、 かご形導体による誘導電動機としてのトルクを利 用して行う。回転子が同期速度近くになると、回転 磁界の速度 N s と回転磁石の速度 N r との相対速度 3000 2400 1800 1200 がきわめて小さくなり、固定子で作られる磁界 H s 600 に回転子で作られる磁界 H r が引っ張り込まれて同 0 0 20 40 60 80 100 120 周波数 [Hz] 図 2. 周波数特性 なる。この後、周波数を上昇させて希望の速度まで 速度制御することができる。シミュレーションに使 用したブロック図を図 4 に示し、速度制御した結果 を図 5 に示す。図 5 の基準値は速度指令値であり、 所望の回転数の 1/10 の値としている。同図を見る と、速度指令値に回転数が追従していることが了解 される。 80 70 200[V] トルク [Nm] 60 50 40 150[V] 30 20 100[V] 10 50[V] 0 1000 期電動機となる。 インバータを用いて、極低周波の交流にすると、 N s を小さくできるため、同期状態になるのが早く 1200 1400 回転数 [rpm] 図 3. 速度-トルク特性 12000 4. まとめ 電気自動車用として考えた場合、様々な面からの 評価が必要になるが、本研究では、誘導電動機と同 期電動機を取り上げ、各々のモータの特性について 主に速度制御性に関して検討を行った。 誘導電動機は、すべりが存在するため走行状況に より回転数を予測する必要がある。その反面、同期 電動機においては、速度制御が容易になると考えら れる。 回転数 [rpm] 10000 8000 6000 4000 2000 0 0 200 400 600 800 1000 文献 [1] 田中雄治,館山輝夫,吉川真利:自動車電気装置(明現 社 ,1977) , [2] 野 中 作 太 郎 : 電 気 機 器 ( 森 北 出 版 株 式 会 社,1971),[3] 新村佳久,坪井和男,小沢彰:小型モータの基礎知識 (オーム社,1985), [4] 松谷守康:制御システムと制御モータの 選び方・使い方(技術書院,1989),[5] 村上孝一:電気機器工 学(オーム社,1990),[6] 内田隆裕:モータがわかる本(オー ム社,2000), 基準値 図 5. 速度制御 図 4. 同期電動機(シンクロナスモータ)のブロック図